説明

オープンカーのフロントピラー構造

【課題】インナパネルとアウタパネルとで閉断面をなし、車体側面に沿ってほぼ垂直に起立するピラー下部と、その上端から屈曲して後斜め上方へ後傾するピラー上部とでく字形に屈曲するオープンカーのフロントピラーの上記屈曲部の剛性を強化すること。
【解決手段】上記インナパネル1のピラー下部側を構成する下部インナパネル1aの上端に上端屈曲部11を形成する一方、下部インナパネル1aとは別部材からなり、インナパネル1のピラー上部側を構成する上部インナパネル1bの下端に上記上端屈曲部11に対応する下端屈曲部14を形成し、下部インナパネル1aと上部インナパネル1bとを、上記上端屈曲部11と下端屈曲部14とを重ね合わせて結合せしめ、かつ両者11,14の重合部にリィンフォースメント2を重ね合わせ結合せしめた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオープンカーのフロントピラー構造、特にピラーの上下中間に位置する屈曲部の剛性を強化したフロントピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、一般に、オープンカーのフロントピラーPは、車体側面のフェンダーパネルFの後縁に沿ってほぼ垂直に起立するピラー下部P1と、その上端から屈曲して後斜め上方へ後傾姿勢で立ち上がるピラー上部P2とでほぼく字形に形成されている。ところでオープンカーのフロントピラーPは、上端が固定のルーフに結合されずに自由端となっているので、ピラー上部P2は上方からの外力に対して倒れやすい。万一、車両が転倒した場合を想定すると、地面からの反力でピラー上部P2が車室側へ倒れ込み、地面と車体間に必要な空間が確保できないおそれがある。そこでフロントピラーPは、屈曲する上下中間の屈曲部P3の剛性を強化することが行なわれている。
【0003】
図5は屈曲部の剛性が強化された従来のフロントピラーの一例を示す分解図、図6は屈曲部の断面図を示すもので、フロントピラーPは、上下に連結された別部材からなる下部インナパネル1aおよび上部インナパネル1bと、車外側のアウタパネル3とで閉断面構造をなす。下部インナパネル1aは比較的厚板(厚さ約2mm)で形成され、その上端には屈曲状に後斜め上方へ延びる上端屈曲部11が一体に形成されている。上部インナパネル1bは下部インナパネル1aよりも薄板(厚さ約1.2mm)で形成され、下部インナパネル1aの上端屈曲部11の上端縁に上部インナパネル1bの下端縁を衝き合わせてレーザー溶接等で面一に連結されている(図5のV−V線に沿う位置)。
【0004】
そして上端屈曲部11には車外側に、下部インナパネル1aよりも厚板(厚さ約3.2mm)のインナリィンフォースメント2が重ね合わされ、スポット溶接されて2重のパネル構造をなし、下部インナパネル1aの一般部や上部インナパネル2よりも上端屈曲部11の剛性が強化されている。更に、上端屈曲部11とアウタパネル3とで閉断面をなす屈曲部P3内には、アウタパネル3側に、アウタパネル3とで閉断面を構成するアウタリィンフォースメント4が内設されて剛性を強化することが行なわれている。図5、6の40はアウタリィンフォースメント4に重合結合された補強板である。
【0005】
ところで従来のフロントピラー構造では、更に屈曲部P3の剛性を強化しようとする場合、アウタパネル3とアウタリィンフォースメント4とで閉断面をなすピラー車外側に比べて、下部インナパネル1aにインナリィンフォースメント2が重合結合された車内側の剛性が低いので、下部インナパネル1aやインナリィンフォースメント2の板厚をアップすることが考えられるが、今までよりも板厚の厚い下部インナパネル1aとインナリィンフォースメント2とを重合溶接すると部材間の接合不良が生じるおそれがあり、これらを溶接するには厚板が溶接可能な溶接性能の高い溶接機が必要で、工場の生産ラインに溶接性能の高い溶接機を設備しなければならず、大掛かりな設備投資になると言った問題が生じる。
【0006】
また従来の他のフロントピラーの補強構造として、下記特許文献1に記載されたように、ピラー閉断面内に長手方向に沿ってパイプ状の補強部材を設けることが提案されている。特許文献1では固定ルーフのある車両のフロントピラーからルーフサイドレールにかけてパイプ状の補強部材で補強することが記載されているが、オープンカーではフロントピラーの上下中間の屈曲部をパイプ状の補強部材で補強することが行なわれる。しかしながらフロントピラーの閉断面内にパイプ状の補強部材を固定する構造が複雑となり、作業工程および生産コストが増加する。
【特許文献1】特開2003−118635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、構造簡素で、生産ラインの大がかりな設備投資が不要で、かつ作業工程および生産コストの増加が最小限ですみ、フロントピラーに作用する上下方向の外力に対して屈曲部が変形せず、剛性の高いオープンカーのフロントピラー構造を実現することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インナパネルとアウタパネルとで閉断面をなし、車体側面に沿ってほぼ垂直に起立するピラー下部と、ピラー下部の上端から屈曲して後斜め上方へ後傾するピラー上部とで構成されたオープンカーのフロントピラーであって、上記インナパネルは、下部インナパネルと、これとは別部材の上部インナパネルとからなり、フロントピラーの中間屈曲部で上記両パネルの上下端を連結せしめたフロントピラー構造において、上記下部インナパネルには上端屈曲部を形成するとともに、上記上部インナパネルには下端屈曲部を形成する。上記上端屈曲部と下端屈曲部とを重ね合わせて結合せしめ、かつ上記上端屈曲部と下端屈曲部との重合部にリィンフォースメントを重ね合わせ結合せしめて上記中間屈曲部の剛性を強化する(請求項1)。中間屈曲部において、下部インナパネルの上端屈曲部と上部インナパネルの下端屈曲部とで2重のパネル構造とし、これらにリィンフォースメントを重ね合わせたから中間屈曲部の剛性を強化できる。
【0009】
上記上部インナパネルの下端屈曲部の外面側に、上部インナパネルよりも厚板の上記下部インナパネルの上端屈曲部を重ね合わせて両者の外周の結合フランジを溶接結合せしめる。上記上部インナパネルの下端屈曲部の内面側に、上部インナパネルよりも厚板の上記リィンフォースメントを重ね合わせ、上記下部インナパネルの上端屈曲部に形成した複数の溶接逃げ孔の位置で上記上部インナパネルの上端屈曲部と上記リィンフォースメントとを一体に溶接結合せしめる。(請求項2)。中間屈曲部では、下部インナパネルの上端屈曲部と上部インナパネルの下端屈曲部とリィンフォースメントとで3重のパネル構造となるが、下部インナパネルの逃げ孔位置で上部インナパネルとリィンフォースメントとを溶接するので溶接が容易にできる。
【0010】
上記下部インナパネルの上端屈曲部の上縁は、屈曲外径側よりも屈曲内径側を高くして段差状に形成して、上記下部インナパネルの上端屈曲部と上部インナパネルの下端屈曲部との重合部の屈曲内径側の長さを屈曲外径側よりも長くする(請求項3)。上記上部インナパネルの下端屈曲部の下縁は、屈曲外径側よりも屈曲内径側を低くして段差状に形成して、上記下部インナパネルの上端屈曲部と上部インナパネルの下端屈曲部との重合部の屈曲内径側の長さを屈曲外径側よりも長くする(請求項4)。屈曲方向の外力に対して屈曲部の高い剛性が発揮できる。
【0011】
フロントピラーの上記中間屈曲部には、上記アウタパネルの内面側に沿って上記アウタパネルとで閉断面を形成するアウタリィンフォースメントを設けて、該リィンフォースメントおよびアウタパネルの外周の結合フランジを重ね合わせて溶接せしめる。上記アウタリィンフォースメントの外周の結合フランジに溶接結合されたアウタパネルの外周の結合フランジには溶接点間の位置に切欠きを形成する。上記上部インナパネルの下端屈曲部に溶接された上記下部インナパネルの上端屈曲部には溶接点間の位置に切欠きを形成し、上記両切欠き位置で上記インナパネルの上端屈曲部と上記アウタリィンフォースメントの結合フランジを溶接せしめる(請求項5)。結合フランジでは、インナパネルの上端屈曲部と下端屈曲部、アウタリィンフォースメントとアウタパネル、インナパネルの下端屈曲部とアウタリィンフォースメントを結合するようになし、いずれもパネル2重構造の結合であるから溶接が容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図4に示したオープンカーのフロントピラーに本発明を適用した実施形態を説明する。フロントピラー(以下、単にピラーという)Pは、車体の側面に沿ってほぼ垂直に起立するピラー下部P1と、その上端から屈曲して後斜め上方へ後傾するピラー上部P2とでほぼく字形に形成してある。図1ないし図3に示すように、ピラーPは、インナパネル1とアウタパネル3とで閉断面構造をなす。
【0013】
インナパネル1は上下に別部材からなる下部インナパネル1aと上部インナパネル1bとが連結してある。下部インナパネル1aは、厚さ約2mmの比較的厚めの金属板からなるプレス成形品で、ほぼ垂直起立状に延びる幅広の一般部と、その上端に後斜め上方へ向けて屈曲する上端屈曲部11が一体に形成してある。上端屈曲部11は上記幅広の一般部より先端方向へ向かって漸次幅が狭くして形成してある。また上端屈曲部11は、その上縁が前部111と後部112との間に後部112が高くなる段差113を形成して段差状にしてあり、屈曲外径側の前縁上端よりも屈曲内径側の後縁上端を高く形成してある。上端屈曲部11の板面には小型の円形状をなす孔10が複数形成してある。
【0014】
下部インナパネル1aの外周たる一般部の前縁および上端屈曲部11の前縁には一連に結合フランジ12が形成してある。また下部インナパネル1aの外周たる一般部の後縁および上縁屈曲部11の後縁には一連に結合フランジ13が形成してある。上端屈曲部11の前縁の結合フランジ12には、その複数箇所を凹状に切欠いた切欠き18を設けて、凸部と凹部とが交互に連続する波形状に形成してある。また上端屈曲部11の後縁の結合フランジ13も、前縁の結合フランジ12と同様、切欠き18により凸部と凹部とが交互に連続する波形状に形成してある。
【0015】
上部インナパネル1bは、下部インナパネル1aよりも薄い(厚さ約1.2mm)の金属板からなるプレス成形品で、一般部が下部インナパネル1aの上端屈曲部11から後傾姿勢で斜め上方へ延びる細幅状に形成してある。
【0016】
上部インナパネル1bの下端には、下部インナパネル1aの上端屈曲部11に対応して、上部インナパネル1bの傾斜状の一般部の下端から屈曲して下方へ向かう下端屈曲部14が形成してある。下端屈曲部14は上端屈曲部11とほぼ同じ断面形状に形成してあり、上端屈曲部11に合わせて下方へ向けて漸次幅広に形成してある。下端屈曲部14は、下縁の前部141と後部142との間に後部142が低くなる段差143を形成して段差状にしてあり、屈曲外径側の前縁下端よりも屈曲内径側の後縁下端を低く形成して段差状にしてある。
【0017】
上部インナパネル1bの外周には、一般部の前縁と下端屈曲部14の前縁に一連に結合フランジ15が形成してあり、一般部の後縁と下縁屈曲部14の後縁には一連に結合フランジ16が形成してある。
【0018】
上部インナパネル1bは、その下端屈曲部14のピラー外面側に下部インナパネル1aの上端屈曲部11を互いに重ね合わせて、下部屈曲部14の前縁の結合フランジ15と上端屈曲部11の前縁結合フランジ12の切欠き18間の凸部とを複数箇所でスポット溶接W1し、下部屈曲部14の後縁の結合フランジ16と上端屈曲部11の後縁結合フランジ13の切欠き18間の凸部とを複数箇所でスポット溶接W1して下部インナパネル1aと上下に連結してある。
【0019】
尚、上端屈曲部11と下端屈曲部14との重合結合部では、下部インナパネル1aの一般部に対して上端屈曲部11を段差により上部インナパネル1b板厚分、ピラー外側位置に形成しておき、これに上部インナパネル1bの下端屈曲部14を重合結合することで、下部インナパネル1aの一般部と上部インナパネル1bとが面一に結合できる。また、上端屈曲部11と下端屈曲部14の重合結合部は、上端屈曲部11および下端屈曲部14との屈曲内径側の後縁がともに屈曲外径側の前縁よりも長くしてある分、重合結合部の屈曲内径側の後縁が長くできる。
【0020】
下部インナパネル1aの上端屈曲部11と上部インナパネル1bの下端屈曲部14の重合結合部はインナリィンフォースメント2を重ね合わせて補強してある。インナリィンフォースメント2は、下部インナパネル1aや上部インナパネル1bよりも板厚の厚い(厚さ約3.2mm)の金属板で、上記重合結合部に沿う屈曲状に形成してあり、インナリィンフォースメント2の幅は下端屈曲部14の前後の結合フランジ15,16を除いた平坦部の幅に合わせてあり、下方へ向けて漸次幅広に形成してある。またインナリィンフォースメント2の長さは上記重合結合部の長さよりも長く形成してある。
【0021】
インナリィンフォースメント2は、上下中央部を上記重合結合部の下端屈曲部14のピラー内面側に重ね合わせて配置してある。このように上端屈曲部11と下端屈曲部14とインナリィンフォースメント2を重ね合わせた3重のパネル構造部を一体にスポット溶接することは困難で、この場合、上端屈曲部11に形成した複数の孔10をスポット溶接の逃げ孔として、これら逃げ孔10を貫通する溶接ガンにより下端屈曲部14の板面とインナリィンフォースメント2の板面とを重ね合わせて一体にスポット溶接W2してある。逃げ孔10は上記溶接ガンの直径に合わせてこれを貫通可能な大きさに形成してある。
【0022】
またインナリィンフォースメント2の上端は上端屈曲部11と下端屈曲部14との重合結合部の上縁よりも上部インナパネル1bの一般部側へ延び、上端は上部インナパネル1bの一般面に重ね合わせてスポット溶接してある。インナリィンフォースメント2の下端は上記重合結合部の下縁よりも下部インナパネル1aの一般部側へ延び、下端は下部インナパネル1aの一般面に重ね合わせてスポット溶接して結合してある。
【0023】
下部インナパネル1aと上部インナパネル1bとからなるインナパネル1はアウタパネル3とで閉断面構造をなす。また、この閉断面内にはアウタパネル3側にアウタリィンフォースメント4を設けて上記閉断面を車幅方向に仕切ってある。
【0024】
アウタパネル3は薄板(厚さ約1.2mm)からなり、外面側へ膨出する断面ほぼハット形に形成してある。アウタパネル3の外周たる前縁および後縁には、インナパネル1の前後両縁の結合フランジ12,13,15,16に対応する結合フランジ31,32が形成してある。前後の結合フランジ31,32はともにアウタリィンフォースメント4の設置位置において、下部インナパネル1aの波形にした結合フランジ12,13と同様に、切欠き35,35を設けて、切欠き35,35により凸部と凹部とが交互に連続する波形状に形成してある。
【0025】
アウタリィンフォースメント4は厚板(厚さ約3.2mm)からなり、アウタパネル3の内部に収まる断面ほぼハット形に形成してある。アウタリィンフォースメント4の内面には厚板の補強板40が互いに重合結合してある。
【0026】
アウタリィンフォースメント4は、アウタパネル3をインナパネル1と結合する前に、予めアウタパネル3の内面に取付けておく。この場合、アウタリィンフォースメント4の前後両縁の接合フランジ41,42をそれぞれアウタパネル3の前後両縁の結合フランジ31,32に重ね合わせて、アウタリィンフォースメントの結合フランジ41,42とアウタパネル3の結合フランジ31,32の波形状の複数の凸部とをスポット溶接W4して結合してあり、アウタパネル3とアウタリィンフォースメント4とで閉断面をなす。
【0027】
そしてアウタリィンフォースメント4を付設したアウタパネル3は、前後の結合フランジ31,32をそれぞれ、インナパネル1の前後の結合フランジ12,15,13,16に重ね合わせて溶接してある。この場合、インナパネル1の上端屈曲部11と下端屈曲部14の重合結合部およびアウタリィンフォースメント4を設けた位置では、インナパネル1の上端屈曲部11、下端屈曲部14、アウタリィンフォースメント4およびアウタパネル3とで4重のパネル構造となるが、インナパネル1とアウタパネル3との結合は、下部インナパネル1aの結合フランジ12,13の切欠き18,18とアウタパネル3の結合フランジ31,32の切欠き35,35内の位置で、上部インナパネル1bの結合フランジ15,16とアウタリィンフォースメント4の結合フランジ41,42をスポット溶接W3してある。
【0028】
本実施形態によれば、インナパネル1の屈曲部において、下部インナパネル1aの上端屈曲部11と上部インナパネル1bの下端屈曲部14とを重ね合わせて2重のパネル構造とし、更に、これらの内面側にインナリィンフォースメント2を重ね合わせて3重のパネル構造とした簡素な構造で、屈曲部を構成する各パネル部材の板厚をアップすることなく、従来構造に比べて屈曲部の総板厚を厚くでき、屈曲部から車室側へ倒れ込み変形させようとする外力に対して屈曲部の剛性を強化することができる。
【0029】
また、下部インナパネル1aと上部インナパネル1bとの重合結合部は、屈曲内径側の重合結合部の長さを屈曲外径側よりも長くしたので、上記外力に対する屈曲部の剛性をより強化することができる。更に、上記重合結合部と上下の各部インナパネル1a,1bとの境界では境界線を直線状とせず、段差状にして境界線の長さを長めに設定したので、直線上の境界線に比べて上記外力による境界線への応力集中を緩和でき上記境界での変形を防ぐことができる。
【0030】
インナパネル1側の上記屈曲部の重合結合部では、下部インナパネル1a、上部インナパネル1bおよびインナリィンフォースメント2とで3重のパネル構造となるが、下部インナパネル1aと上部インナパネル1bとを両者の外周の結合フランジ12,13,15,16でスポット溶接W1するようになし、上部インナパネル1bとインナリィンフォースメント2とは、下部インナパネル1aの板面の逃げ孔10に対応する位置でスポット溶接W2するようにして、いずれも2重のパネル構造部でスポット溶接するようにしたので溶接が容易にでき、接合不良が生じない。
【0031】
更に、インナパネル1とアウタパネル3との溶接結合は、下部インナパネル1aの結合フランジ12,13の切欠き18,18内、およびこれらと合致するアウタパネル3の結合フランジ31,32の切欠き35,35内の位置で、上部インナパネル1bの結合フランジ15,16とアウタリィンフォースメント4の結合フランジ41,42を重ね合わせた2重のパネル構造部を結合するようにしたので容易にスポット溶接できる。なお、下部インナパネル1aと上部インナパネル1bとの溶接部W1、アウタパネル3とアウタリィンフォースメント4との溶接部W4、およびインナパネル1側とアウタパネル3側との溶接部W3とは、図2に示すように長手方向に沿って交互に溶接したので各パネル1a,1b,3,4間の結合力は充分に確保できる。各溶接部では溶接する部材の枚数や板厚が従来と変らず、容易に溶接でき接合不良等が起こらないので、溶接性能の高い溶接機を準備しなくてすむ。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用したフロントピラー構造を示す分解斜視図である。
【図2】上記フロントピラー構造の下部インナパネルと上部インナパネルとの重合結合部を示す要部拡大図である。
【図3】図1のIII―III線に沿う位置での断面図である。
【図4】本発明を適用するオープンカーのフロントピラーを示す側面図である。
【図5】従来のフロントピラー構造を示す分解斜視図である。
【図6】図5のVI―VI線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0033】
P フロントピラー
P1 ピラー下部
P2 ピラー上部
P3 中間屈曲部
1 インナパネル
1a 下部インナパネル
10 逃げ孔
11 上端屈曲部
12,13 結合フランジ
1b 上部インナパネル
15,16 結合フランジ
18 切欠き
2 インナリィンフォースメント(リィンフォースメント)
3 アウタパネル
31,32 結合フランジ
35 切欠き
4 アウタリィンフォースメント
41,42 結合フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルとアウタパネルとで閉断面をなし、車体側面に沿ってほぼ垂直に起立するピラー下部と、ピラー下部の上端から屈曲して後斜め上方へ後傾するピラー上部とで構成されたオープンカーのフロントピラーであって、上記インナパネルは、下部インナパネルと、これとは別部材の上部インナパネルとからなり、フロントピラーの中間屈曲部で上記両パネルの上下端を連結せしめたフロントピラー構造において、
上記下部インナパネルには上端屈曲部を形成するとともに、上記上部インナパネルには下端屈曲部を形成し、
上記上端屈曲部と下端屈曲部とを重ね合わせて結合せしめ、かつ上記上端屈曲部と下端屈曲部との重合部にリィンフォースメントを重ね合わせて結合せしめて上記中間屈曲部の剛性を強化したことを特徴とするオープンカーのフロントピラー構造。
【請求項2】
上記請求項1に記載のオープンカーのフロントピラー構造において、
上記上部インナパネルの下端屈曲部の外面側に、上部インナパネルよりも厚板の上記下部インナパネルの上端屈曲部を重ね合わせて両者の外周の結合フランジを溶接結合せしめ、
上記上部インナパネルの下端屈曲部の内面側に、上部インナパネルよりも厚板の上記リィンフォースメントを重ね合わせ、上記下部インナパネルの上端屈曲部に形成した複数の溶接逃げ孔の位置で上記上部インナパネルの上端屈曲部と上記リィンフォースメントとを一体に溶接結合せしめたオープンカーのフロントピラー構造。
【請求項3】
上記請求項1または2に記載のオープンカーのフロントピラー構造において、
上記下部インナパネルの上端屈曲部の上縁は、屈曲外径側よりも屈曲内径側を高くして段差状に形成して、上記下部インナパネルの上端屈曲部と上部インナパネルの下端屈曲部との重合部の屈曲内径側の長さを屈曲外径側よりも長くしたオープンカーのフロントピラー構造。
【請求項4】
上記請求項1ないし3に記載のオープンカーのフロントピラー構造において、
上記上部インナパネルの下端屈曲部の下縁は、屈曲外径側よりも屈曲内径側を低くして段差状に形成して、上記下部インナパネルの上端屈曲部と上部インナパネルの下端屈曲部との重合部の屈曲内径側の長さを屈曲外径側よりも長くしたオープンカーのフロントピラー構造。
【請求項5】
上記請求項2ないし4に記載のオープンカーのフロントピラー構造において、
フロントピラーの上記中間屈曲部には、上記アウタパネルの内面側に沿って上記アウタパネルとで閉断面を形成するアウタリィンフォースメントを設けて、該リィンフォースメントおよびアウタパネルの外周の結合フランジを重ね合わせて溶接せしめ、
上記アウタリィンフォースメントの外周の結合フランジに溶接結合されたアウタパネルの外周の結合フランジには溶接点間の位置に切欠きを形成するとともに、
上記上部インナパネルの下端屈曲部に溶接された上記下部インナパネルの上端屈曲部には溶接点間の位置に切欠きを形成し、
上記両切欠き位置で上記インナパネルの上端屈曲部と上記アウタリィンフォースメントの結合フランジを溶接せしめたオープンカーのフロントピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−114728(P2008−114728A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300028(P2006−300028)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】