説明

カウルトップカバー

【課題】ボンネットフードの荷重やカウルトップカバーに手を着いた際の荷重をそれぞれ十分に支えておくことができ、衝撃荷重が加わったときの衝撃吸収性能が、カウルトップカバーの変形途中から急激に低下し、その後、底着きによる過大な反力の発生が生じるのを防止できるカウルトップカバーを提供する。
【解決手段】ボンネットフードを支えるフード当接部3と車体パネルに取り付けられる底壁4との間に、上下方向の中央部が後方に屈曲した縦壁5を形成する。縦壁5の前面側に補強リブ6を車幅方向に沿って複数配設し、各補強リブ6の上下方向の中央部を車幅方向に屈曲したリブ用屈曲部6aを形成する。ボンネットフードの荷重やカウルトップカバーに手を着いた際の荷重を縦壁5と複数の補強リブ6とによって十分に支えておくことができ、上方から衝撃荷重が加わったときには、縦壁5の変形と補強リブ6の変形とによって衝撃荷重を吸収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者保護性能に優れた、自動車における衝撃吸収構造を備えたカウルトップカバーに関する。尚、本願発明で用いている前後方向、上下方向、車幅方向に関して、前後方向は、車両が直進する前進方向を基準として、車両の後方から車両の前進方向を向いたときの方向としている。上下方向は、車両に対して天地の方向を上下方向としており、車幅方向は、車両を正面から見たときの左右方向を車幅方向としている。
【背景技術】
【0002】
車両走行時に障害物などが衝突した拍子に、ボンネット上に衝突物などが乗り上げると、衝突物からの衝撃によってボンネットは下方に撓むことになる。このとき、ボンネットの下方に剛性の高い車両搭載部品等が配置されていると、衝突物はボンネットを撓ませながら車両搭載部品等に強く衝突してしまうことになる。これを防止するため、衝突物からの衝撃力を緩和できる衝撃吸収構造を、カウルパネルやカウルトップカバーに構成しておくことが求められている。
【0003】
衝撃吸収構造を備えたカウルトップカバーとしては、特許文献1に記載された車両のデッキガーニッシュ構造などが提案されている。特許文献1に記載された車体構造を、本願発明における従来例として、図9には、車幅方向から見たデッキガーニッシュ(本願発明におけるカウルトップカバーに相当)の断面図を示している。
【0004】
図9に示すように、フロントウィンドガラス38とフロントフード40との間に配置されたデッキガーニッシュ30は、車幅方向に延設されたデッキガーニッシュアッパ31とデッキガーニッシュロア32とから構成されている。デッキガーニッシュアッパ31の前端側は、フロントフード40の下方まで延ばされて別体に構成したデッキガーニッシュロア32と結合し、フロントフード40を下方から支持している。そして、デッキガーニッシュロア32は、フロントフード40の後端40aの下方において、デッキガーニッシュアッパ31とカウルトップインナ39との間に挟まれた配置構成になっている。
【0005】
デッキガーニッシュロア32は、デッキガーニッシュアッパ31側に位置する上壁部33と、上壁部33の下方でカウルトップインナ39側に位置する下壁部34と、上壁部33と下壁部34とを連結する縦壁状の側壁部35とから構成されている。そして、車幅方向側方向からデッキガーニッシュロア32を見たときには、即ち、車両前後方向における断面形状が、車体前方に開口した略U字状に形成されている。
デッキガーニッシュロア32の上壁部33と下壁部34との間には、リブ36が立設されている。リブ36は、平板状に形成されており、上壁部33と下壁部34との間で上下方向に対して斜めに配置されている。また、リブ36の前端面における上下方向略中央部には、切り欠き部37が形成されている。即ち、切り欠き部37の頂点部分37aは、上方からの衝撃に対して脆弱部として構成されている。
【0006】
デッキガーニッシュロア32に対して上方から衝撃荷重Pが作用したときには、上壁部33、下壁部34、側壁部35との連結部Xが変形もしくは破壊されて倒れたり、もしくは切り欠き部37の頂点部分37aの近傍が破壊されたり変形したりする。そして、リブ36が衝撃荷重Pを吸収すると、リブ36は倒れるなどの変形を行う。
【0007】
また、衝撃荷重Pは、リブ36に作用すると同時に、側壁部35の中央部35aにも作用して、中央部35aを破壊もしくは変形させる。中央部35aが破壊したり、もしくは変形したりすることによっても、衝撃荷重Pは吸収されることになる。このように、上壁部33、下壁部34
、側壁部35及びリブ36の変形によって、デッキガーニッシュ30のエネルギー吸収部が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−30632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された発明では、デッキガーニッシュ30のエネルギー吸収部を構成するため、デッキガーニッシュ30の構成として、デッキガーニッシュアッパ31と、デッキガーニッシュアッパ31とは別体に構成したデッキガーニッシュロア32と、を用いた構成になっている。
【0010】
そのため、デッキガーニッシュ30を製造するためには、デッキガーニッシュアッパ31を成型するための金型とデッキガーニッシュロア32を成型するための金型とが、それぞれ必要になる。また、別体に構成したデッキガーニッシュロア32とデッキガーニッシュアッパ31とを結合させて組み立てるための組立工程が必要になる。
このため、デッキガーニッシュ30を製造する上において、製造価格の上昇と作業時間の増加とが生じることになる。
【0011】
また、リブ36には切り欠き部37が形成されており、切り欠き部37の頂点部分37aは上方向からの衝撃荷重Pに対して脆弱部として構成されている。このため、上方向からの衝撃荷重に対しての十分な強度をリブ36に持たせておくことは難しい構成になっている。そして、通常時におけるフロントフード40の荷重やデッキガーニッシュ30に手を着いた際の荷重を十分に支えておくだけの強度を、リブ36に持たせておくことは難しい構成になっている。
【0012】
更に、上方から衝撃荷重Pがフロントフード40を介してデッキガーニッシュ30に対して作用したときに、上壁部33、下壁部34、側壁部35との連結部Xが破壊されて倒れたり、切り欠き部37の頂点部分37aの近傍が破壊されることになる。このような状態になると、デッキガーニッシュ30においてはそれ以上の衝撃荷重Pを支えきれなくなる。特に、リブ36は、切り欠き部37を境にして二分割されて分離してしまうことになり、リブ36によってデッキガーニッシュ30の下方への変形を支えることはできなくなる。
【0013】
即ち、特許文献1のデッキガーニッシュ30では、連結部Xが破壊されて倒れたり、切り欠き部37の頂点部分37aの近傍が破壊されるまでの間は、フロントフード40に作用している衝撃荷重Pを吸収することができる構成になっている。しかし、連結部Xが破壊されて倒れたり、切り欠き部37の頂点部分37aの近傍が破壊された後においては、フロントフード40に作用している衝撃荷重Pをデッキガーニッシュ30によって支えて吸収することはできなくなり、デッキガーニッシュ30の衝撃吸収性能は急激に低下してしまうことになる。そして、デッキガーニッシュ30は、底着きによる過大な反力が発生することになる。
【0014】
本願発明では、従来におけるこれらの問題点を解決し、ボンネットフードの荷重やカウルトップカバーに手を着いた際の荷重をそれぞれ十分に支えておくことができ、ボンネットフード上に衝撃力が加わったときにおけるカウルトップカバーの衝撃吸収性能が、途中から急激に低下し、その後、底着きによる過大な反力の発生を防止し、衝撃吸収ストロークを確保して衝撃を滑らかに減少させることのできるカウルトップカバーの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明の課題は請求項1〜5に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明ではフロントガラスの下端部に接続する接続部を一端部に配し、ボンネットフードの下方に配設され、前記ボンネットフードに当接するフード当接部を他端部に配し、前記フロントガラスと前記ボンネットフードとの間を車幅方向に亘って覆うカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーは、前記フード当接部から下方に向かって延設され、車幅方向に沿って突設された縦壁と、前記縦壁の下端から車両の前方方向に向かって延設され、車体パネルに取り付けられる底壁と、少なくとも前記底壁と前記縦壁との間を連結する補強リブと、を有し、前記縦壁は、車幅方向に沿って形成された屈曲部を有し、前記屈曲部は、車両の上下方向からの衝撃力に対して前記屈曲部を中心とした変形が生じ易い形状に構成され、
前記補強リブは、車幅方向に突出しかつ車両の前後方向に亘って形成されたリブ用屈曲部を有して、車幅方向に沿って複数配設され、前記各リブ用屈曲部は、車両の上下方向からの衝撃力に対して前記各リブ用屈曲部を中心とした変形が生じ易い形状に構成され、車両の上下方向からの衝撃力の作用時に前記縦壁の屈曲部を基点とした形状に変形してなることを最も主要な特徴としている。
【0016】
また、本願発明に係わるカウルトップカバーでは、前記屈曲部は、前記縦壁における上下方向の中間部を車両の後方側に突出させた形状に形成され、前記各補強リブは、前記縦壁の車両前方側に配され、前記底壁と前記縦壁と前記フード当接部との間を連結してなり、前記各リブ用屈曲部は、前記各補強リブにおける上下方向の中間部に形成され、前記リブ用屈曲部の屈曲線と前記屈曲部の屈曲線とは、交差してなることを主要な特徴としている。
【0017】
更に、本願発明に係わるカウルトップカバーでは、前記縦壁は、前記フード当接部から前記底壁に向けて車両後方側に傾斜した傾斜面として構成され、前記屈曲部は、前記底壁と前記縦壁との境界部に形成され、前記各補強リブは、前記底壁と前記縦壁との間を連結して前記縦壁の車両前方側に配され、前記各リブ用屈曲部は、前記底壁と前記縦壁との成す角度を二等分する方向にそれぞれ形成されてなることを主要な特徴としている。
【0018】
更にまた、本願発明に係わるカウルトップカバーでは、前記屈曲部には、薄肉部が形成されてなることを主要な特徴としている。
また、本願発明に係わるカウルトップカバーでは、前記屈曲部及び前記各リブ用屈曲部は、それぞれ屈折部として構成されてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本願発明における補強リブは、特許文献1のように切り欠きが形成された形状には構成されていない。このため、ボンネットフードの荷重やカウルトップカバーに手を着いた際の荷重を、各補強リブによって十分に支えておくことができる。しかも、補強リブとしては、車幅方向に突出しかつ車両の前後方向に亘って形成されたリブ用屈曲部を有した構成になっている。
【0020】
上方から衝撃荷重がボンネットフードを介してカウルトップカバーに対して作用したときには、屈曲部を中心とした縦壁の変形とリブ用屈曲部を中心とした補強リブの変形によって、衝撃荷重を十分に受け止めて吸収することができる。
【0021】
しかも、車両の上方向からの衝撃力の作用時に、縦壁の屈曲部を基点とした形状にリブ用屈曲部が変形するので、屈曲点を縦壁と補強リブとで共有することができ、カウルトップカバーに作用した応力を分散させることができる。このようにして、カウルトップカバ
ーの剛性を向上させることができる。
【0022】
また、衝撃荷重が加わったボンネットフードの下方への変形に伴って、縦壁の屈曲部を基点とした形状にリブ用屈曲部が変形することになるので、補強用リブが突っ張らずに縦壁は、屈曲部を中心として変形することができる。そして、カウルトップカバーは、突っ張り状態がなく、整然と折畳まれるように変形することができる。
【0023】
このように、カウルトップカバーはスムーズに変形することができるので、衝撃吸収ストロークを確保することができ、底着きによる過大な反力の発生を抑制することができる。しかも、縦壁や補強リブの変形が進行するのに伴って、補強リブの付け根部に順次荷重が作用していくので、カウルトップカバーによる反力のピークを発生させず、カウルトップカバーによる反力の上昇を抑えることができる。
【0024】
また、歩行者保護の性能上でカウルトップカバーによる反力の調整が必要な場合には、補強リブの板厚を調整することで対応が可能になる。更に、補強リブを車幅方向に複数配設しているので、衝撃荷重が加わった部位近傍に配されている補強リブが変形していくと、変形した補強リブに隣接した補強リブも徐々に変形することになる。そして、複数の補強リブが順次変形を開始することになり、また、順次補強リブが変形を開始した領域にある縦壁の部位も屈曲部を中心に変形していくことになるので、衝撃荷重をカウルトップカバーによって滑らかに吸収していくことができる。
【0025】
本願請求項2の発明のように構成した場合には、屈曲部の屈曲線と、リブ用屈曲部の屈曲線とは、交差する配置関係に構成されている。屈曲線同士が交差して配されることによって、縦壁の変形時には縦壁の変形に伴って縦壁の変形方向に補強リブを引っ張り込むことになり、これによって、補強リブには捻じれ力が生じることになる。この捻じれ力によって補強リブは、少なくとも底壁及びフード当接部とのそれぞれの連結部、即ち、補強リブの付け根部において、捻じれ現象を生じさせながら、リブ用屈曲部を中心とした変形が生じることになる。
【0026】
この補強リブの付け根部に生じる捻じれ現象によっても、上方から衝撃荷重Pを吸収することができる。即ち、補強リブとしては、リブ用屈曲部を中心とした変形による衝撃エネルギーの吸収と捻じれ現象による衝撃エネルギーの吸収とを行うことができる。また、縦壁においては、屈曲部を中心とした変形による衝撃エネルギーの吸収と補強リブに対して作用する捻じれ力による衝撃エネルギーの吸収とを行うことができる。
【0027】
このようにして、縦壁の屈曲部や補強リブのリブ用屈曲部の変形に伴う衝撃エネルギーの吸収以外にも、捻じれ力に伴う衝撃エネルギーの吸収を行うことができるので、カウルトップカバーの衝撃吸収性能を長期に亘って維持させておくことができる。
【0028】
また、縦壁の屈曲部としては、縦壁における上下方向の中間部を車両の後方側に突出させた形状に形成されているので、屈曲部をカウルトップカバーと乗員室との間に設けた空気取り入れ口方向に向かって変形することができ、他部材に当接せずに縦壁を変形させることができる。このように構成することによって、縦壁の変形ストロークを確保することができる。
【0029】
本願請求項3の発明のように構成した場合には、補強用リブが突っ張らずに縦壁は、屈曲部を中心として変形することができる。そして、カウルトップカバーは、突っ張り状態がなく、整然と折畳まれるように変形することができる。
【0030】
本願請求項4の発明のように薄肉部を形成した場合には、薄肉部の厚さを調整すること
によって、カウルトップカバーの変形強度を調整することが容易になる。
本願請求項5の発明のように、屈曲部及びリブ用屈曲部をそれぞれ屈折部として構成した場合には、縦壁及び補強リブの屈折方向を予め所定の方向に設定しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】カウルトップカバーの斜視図及び要部の拡大斜視図である。(実施例1)
【図2】図1(b)のII−II断面図である。(実施例1)
【図3】カウルトップカバーのフロントビューを示す正面図及び要部の拡大図である。(実施例1)
【図4】衝撃荷重が加わった際のイメージ断面図である。(実施例1)
【図5】衝撃荷重が加わった際のフロントビューからのイメージ正面図である。(実施例1)
【図6】他のカウルトップカバーに係わる斜視図である。(実施例2)
【図7】図6のVII−VII断面図である。(実施例2)
【図8】他のカウルトップカバーに係わるフロントビューを示す正面図である。(実施例2)
【図9】車幅方向から見たデッキガーニッシュの断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明のカウルトップカバーの構成としては、以下で説明する形状、配置構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を本願発明のカウルトップカバーとして採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0033】
カウルトップカバー1は、図1(a)、(b)に示すような構成を有しており、図2に示すように一端部側には、フロントガラス13の下端部13aに接続する接続部2を有している。接続部2によって、フロントガラス13の下端部13aが挟持されるようになっている。また、他端側には、ボンネットフード12のフードインナー12aの下面に当接するフード当接部3を備えている。
【0034】
図2に示すように、フード当接部3の上面には、フードインナー12aが圧接するシール部材9が設けられている。シール部材9によって、雨水等が、ボンネットフード12の下方に配されている図示せぬフロントコンパートメント内に浸入するのが防止されている。
【0035】
図1(a)、図3に示すように、カウルトップカバー1には、図示せぬワイパーアームの駆動軸部を収納するワーパー取付部7が形成されており、フード当接部3には、エアボックス内に外気を取り込む空気取り入れ口8が形成されている。図1(a)、図3(a)では、空気取り入れ口8が一箇所だけ形成されている図を示しているが、図1(a)における向かって左側におけるカウルトップカバー1の部位にも、空気取り入れ口8が形成されている。
【0036】
図1〜図3に示すように、縦壁5は、フード当接部3から下方に向かって延設され、車幅方向に沿って突設された構成になっている。また、図2に示すように、縦壁5の下端から車両の前方方向に向かって底壁4が延設されており、底壁4は車体パネル11に取り付けられている。図1〜図3に示すように、縦壁5の前面側には、底壁4と縦壁5とフード当接部3との間を連結している補強リブ6が車幅方向に沿って複数形成されている。
【0037】
カウルトップカバー1における接続部2から底壁4までの本体部分及び補強リブ6は、比較的剛性の高い樹脂材料(例えばABS樹脂、変性PPO樹脂等)を用いて一体成型によって製造されている。そして、補強リブ6は、底壁4の上面、縦壁5の前面側の面、及びフード当接部3の下面に連結した構成になっている。
【0038】
図2に示すように、縦壁5は、縦壁5の中間部を車両の後方側である空気導入部10に向かって突出させ、車幅方向からの側面視が、く字状に屈折した形状に構成されている。空気導入部10は、カウルトップカバー1に形成した空気取り入れ口8から取り入れた空気が、供給される領域であり、空気導入部10内に取り入れられた空気は、コンパートメント等に供給される。
【0039】
また、縦壁5の屈曲部5aは、空気導入部10に向かって突出させた形状に構成されているので、縦壁5が上方からの衝撃荷重によって変形を開始して、更に変形が進行しても、屈曲部5aが他部材に当接して変形が停止してしまうことがなく、縦壁5が変形する上において十分な変形ストロークを確保することができる。
【0040】
また、縦壁5のく字状に屈折した屈曲部5aを薄肉部5bとして形成するため、屈曲部5aの車両前面側は、凹部として形成されている。また、屈曲部5aは、車両の車幅方向に沿って形成されている。
【0041】
板状形状の補強リブ6は、カウルトップカバー1の上述した本体部分における板厚よりも薄い板厚で構成されており、屈曲部5aの薄肉部5bにおける板厚と略同程度の板厚として構成しておくことができる。また、後述するように、歩行者保護の性能上でカウルトップカバー1による反力の調整が必要な場合には、補強リブ6の板厚と薄肉部5bの板厚とを適宜調整することで対応が可能になる。
尚、補強リブ6の板厚と薄肉部5bの板厚とは、必ずしも略同じ板厚に構成しておくことは必要なく、それぞれ板厚の異なった適宜の板厚として構成しておくことができる。
【0042】
図1、図3に示すように、補強リブ6は、補強リブ6の中間部を車幅方向に突出させ、車両正面側から見た正面視が、く字状に屈折した形状に構成されている。そして、く字状に屈折したリブ用屈曲部6aの屈曲線と、屈曲部5aの屈曲線とは互いに交差するように構成されている。
【0043】
図示例では、複数の補強リブ6は、カウルトップカバー1の車幅方向の中央部を境にして、く字状に屈折したリブ用屈曲部6aが左右対称に配された構成になっている。しかし、リブ用屈曲部6aの屈折方向としては図示例に限定されるものではなく、例えば、車幅方向に隣接する各一組の補強リブ6におけるリブ用屈曲部6aが車幅方向に対して互いに逆向きとなるように配することも、他の適宜な配置構成とすることもできる。この場合においても、上方からの衝撃荷重によって変形した補強リブ6のリブ用屈曲部6a同士が当接しないように配設しておくことが必要である。
【0044】
図3に示すように、補強リブ6の両端部側にはそれぞれ立設部6cが形成されている。補強リブ6の両端部にそれぞれ立設部6cを形成しておくことによって、底壁4の上面及びフード当接部3の下面に対して略直交した状態で、補強リブ6をカウルトップカバー1の本体部分とともに一体成型することができる。これによって、補強リブ6の両端部における各付け根部6bと底壁4の上面及びフード当接部3の下面との連結強度を高めておくことができる。
【0045】
次に、上方から衝撃荷重体20による衝撃荷重Wがボンネットフード12に対して加わった
場合を例に挙げて、図4、図5を用いて説明する。以下では、上方からの衝撃荷重Wがボンネットフード12に対して加わった場合について説明を行うが、衝撃荷重Wがカウルトップカバー1に対して直接加わった場合であっても、以下で説明する変形と同様の変形をカウルトップカバー1が行って、衝撃荷重Wに対する衝撃吸収作用を奏することができる。
【0046】
図4、図5に示すように、上方からの衝撃荷重Wがボンネットフード12に対して加わると、ボンネットフード12の変形及びシール部材9の変形によって、カウルトップカバー1のフード当接部3は下方に向かっての変形が生じる。
即ち、カウルトップカバー1の底壁4は、車体パネル11に取り付けられているので、縦壁5は、屈曲部5aを中心として折り畳まれるように変形する。そして、フード当接部3と底壁4とが近づくように、屈曲部5aを中心として屈曲部5aが空気導入部10側に向かって変形することになる。
【0047】
縦壁5の変形に伴って、補強リブ6もリブ用屈曲部6aを中心として折り畳まれるように変形する。このとき、縦壁5の変形に伴って、補強リブ6と縦壁5との連結部は、縦壁5の変形方向に引張り込まれることになる。そして、補強リブ6には縦壁5の変形に伴う捻じれ力が生じることになる。この捻じれ力によって補強リブ6は、底壁4及びフード当接部3とのそれぞれの連結部、即ち、補強リブ6の付け根部6bにおいて、捻じれ現象を生じさせながら、リブ用屈曲部6aを中心とした変形も生じることになる。
【0048】
このように、縦壁5の変形及び補強リブ6の変形によって、ボンネットフード12に加わった上方からの衝撃荷重Wによる衝撃エネルギーを吸収することができる。しかも、補強リブ6の変形としては、単に折り畳まれる変形以外にも、捻じれ力による変形も生じるので、補強リブ6によるエネルギー吸収性能は、単に折り畳まれる変形だけによるエネルギー吸収性能に比べて高くすることができる。
【0049】
また、衝撃荷重Wが加わったときに、縦壁5の屈曲部5aを基点とした形状にリブ用屈曲部6aが変形するので、縦壁5の屈曲点と補強リブ6の屈曲点とを縦壁5と補強リブ6とで共有することができ、カウルトップカバー1に作用した応力を縦壁5と補強リブ6とで分散させることができる。このように構成されているので、カウルトップカバー1の剛性を向上させることができる。
【0050】
このように、衝撃荷重Wが加わったボンネットフード12が下方に向かって変形するのに伴って、縦壁5の屈曲部5aを基点とした形状に補強リブ6のリブ用屈曲部6aが変形することになるので、補強用リブ6が突っ張らずに縦壁5は、屈曲部5aを中心として変形することができる。そして、カウルトップカバー1は、突っ張り状態がなく、整然と折畳まれるように変形することができる。
【0051】
このように、カウルトップカバー1はスムーズに変形することができるので、衝撃吸収ストロークを確保することができ、底着きによる過大な反力の発生を抑制することができる。しかも、縦壁5や補強リブ6の変形が進行するのに伴って、補強リブ6の付け根部6bに順次荷重が作用していくので、カウルトップカバー1による反力のピークを発生させず、カウルトップカバー1による急激な反力の上昇を抑えることができる。
【0052】
また、歩行者保護の性能上でカウルトップカバー1による反力の調整が必要な場合には、補強リブ6の板厚や縦壁5の屈曲部5aにおける板厚を調整することで対応が可能になる。更に、補強リブ6を車幅方向に複数配設しているので、衝撃荷重Wが加わった部位近傍に配されている補強リブ6が変形していくと、変形した補強リブ6に隣接した補強リブ6も徐々に変形することになる。そして、複数の補強リブ6が順次変形を開始することになり、また、順次補強リブ6が変形を開始した領域にある縦壁5の部位も屈曲部5aを中心に変形して
いくことになるので、衝撃荷重Wをカウルトップカバー1によって滑らかに吸収していくことができる。
【実施例2】
【0053】
実施例1では、縦壁5の上下方向の中央部に屈曲部5aを形成し、補強リブ6をフード当接部3と縦壁5と底壁4とに連結した構成について説明を行った。実施例2では、図6〜図8に示すように、縦壁15がフード当接部3から縦壁5にかけて後方側に向かって下り傾斜の傾斜面として構成され、屈曲部15aを縦壁15と底壁4との境界部に形成すると共に、補強リブ16を屈曲部15a側における縦壁15と底壁4とを連結する構成になっている。
【0054】
そして、図6に示すように、補強リブ16に形成したリブ用屈曲部16aは、車幅方向に突出すると共に、縦壁15と底壁4との成す角度を二等分する方向に形成されている。他の構成は、実施例1と同様の構成になっている。そのため、実施例2に関する説明では、実施例1と同様の構成に関して実施例1の説明で用いた部材名及び部材符号を用いることで、その部材の説明を省略する。
【0055】
車幅方向に沿って複数配設された補強リブ16のリブ用屈曲部16aは、縦壁15と底壁4との成す角度を二等分する方向に形成されているので、上方からの衝撃荷重が作用したときに縦壁15が屈曲部15aを中心として折り畳まれるとき、補強リブ16に対しては実施例1のように捻じれ力が作用せずに、縦壁15の折り畳まれと同じように折り畳まれることになる。
【0056】
即ち、縦壁15及び補強リブ16の折り畳まれ動作は、滑らかに行われることになる。そのため、カウルトップカバー1による衝撃吸収性能を実施例1のように高めて構成しておくためには、実施例1の場合に比べて、屈曲部15の薄肉部15bにおける板厚及び補強リブ16の板厚をそれぞれ多少厚めに構成しておくことができる。
【0057】
図8(a)に示すように、複数の補強リブ16は、カウルトップカバー1の車幅方向の中央部を境にして、く字状に屈折したリブ用屈曲部16aが左右対称に配された構成になっている。しかし、実施例1で説明したように、リブ用屈曲部16aの屈折方向としては図示例に限定されるものではなく、例えば、車幅方向に隣接する各一組の補強リブ16におけるリブ用屈曲部16aが車幅方向に対して互いに逆向きとなるように配することも、他の適宜な配置構成とすることもできる。
この場合においても、上方からの衝撃荷重によって変形した補強リブ16のリブ用屈曲部16a同士が当接しないように配設しておくことが必要である。
【0058】
図4に示したように、上方からの衝撃荷重Wが、例えば、図示せぬボンネットフード12に加わると、図8(b)に示したように、縦壁15とフード当接部3との間で成していた角度及び縦壁15と底壁4との間で成していた角度が狭まるとともに、補強リブ16はリブ用屈曲部16aを中心として折り畳まれるように屈折する。そして、縦壁15の変形と補強リブ16の変形によって、衝撃荷重Wを吸収することができる。
【0059】
以上、本発明にかかるカウルトップカバー1について、上記実施形態を例にして説明したが、本発明は、上記実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【0060】
例えば、上述した各実施例の説明では、屈曲部5a、15a及びリブ用屈曲部6a、16aは、屈折した形状について説明を行ったが、本願発明は、屈曲部5a、15a及びリブ用屈曲部6a、16aが屈折した形状に限定されるものではなく、屈曲部5a、15a及びリブ用屈曲部6a、16aが湾曲した形状も包含しているものである。そして、屈曲部5a、15a及びリブ用屈曲部6a、16aが湾曲した形状であっても、カウルトップカバー1としては、十分に衝撃吸収機能を奏
することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
変形することにより衝撃を吸収緩和するものに対して、本願発明の技術思想を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・カウルトップカバー、4・・・底壁、5・・・縦壁、5a・・・屈曲部、6・・・補強リブ、6a・・・リブ用屈曲部、12・・・ボンネットフード、15・・・縦壁、15a・・・屈曲部、15c・・・薄肉部、16・・・補強リブ、16a・・・リブ用屈曲部、20・・・衝突荷重体、30・・・デッキガーニッシュ、31・・・デッキガーニッシュアッパ、32・・・デッキガーニッシュロア、36・・・リブ、38・・・フロントウィンドガラス、40・・・フロントフード、P,W・・・衝撃荷重、X・・・連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの下端部に接続する接続部を一端部に配し、ボンネットフードの下方に配設され、前記ボンネットフードに当接するフード当接部を他端部に配し、前記フロントガラスと前記ボンネットフードとの間を車幅方向に亘って覆うカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーは、前記フード当接部から下方に向かって延設され、車幅方向に沿って突設された縦壁と、前記縦壁の下端から車両の前方方向に向かって延設され、車体パネルに取り付けられる底壁と、少なくとも前記底壁と前記縦壁との間を連結する補強リブと、を有し、
前記縦壁は、車幅方向に沿って形成された屈曲部を有し、前記屈曲部は、車両の上下方向からの衝撃力に対して前記屈曲部を中心とした変形が生じ易い形状に構成され、
前記補強リブは、車幅方向に突出しかつ車両の前後方向に亘って形成されたリブ用屈曲部を有して、車幅方向に沿って複数配設され、
前記各リブ用屈曲部は、車両の上下方向からの衝撃力に対して前記各リブ用屈曲部を中心とした変形が生じ易い形状に構成され、車両の上下方向からの衝撃力の作用時に前記縦壁の屈曲部を基点とした形状に変形してなることを特徴とするカウルトップカバー。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記縦壁における上下方向の中間部を車両の後方側に突出させた形状に形成され、
前記各補強リブは、前記縦壁の車両前方側に配され、前記底壁と前記縦壁と前記フード当接部との間を連結してなり、
前記各リブ用屈曲部は、前記各補強リブにおける上下方向の中間部に形成され、前記リブ用屈曲部の屈曲線と前記屈曲部の屈曲線とは、交差してなることを特徴とする請求項1に記載のカウルトップカバー。
【請求項3】
前記縦壁は、前記フード当接部から前記底壁に向けて車両後方側に傾斜した傾斜面として構成され、
前記屈曲部は、前記底壁と前記縦壁との境界部に形成され、
前記各補強リブは、前記底壁と前記縦壁との間を連結して前記縦壁の車両前方側に配され、
前記各リブ用屈曲部は、前記底壁と前記縦壁との成す角度を二等分する方向にそれぞれ形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のカウルトップカバー。
【請求項4】
前記屈曲部には、薄肉部が形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカウルトップカバー。
【請求項5】
前記屈曲部及び前記各リブ用屈曲部は、それぞれ屈折部として構成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカウルトップカバー。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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