説明

カウンタバランス弁

【課題】作動流体の流れを遮断する密封性が高いカウンタバランス弁を提供する。
【解決手段】アクチュエータ(モータ5)の負荷圧力に応じてアクチュエータ(モータ5)から流出する作動流体の流れを絞るカウンタバランス弁20であって、環状のシート28と、このシート28に着座するポペット弁部34を有するポペット31とを備え、このポペット31がアクチュエータ(モータ5)の負荷圧力が高まるのに伴って軸方向に変位することによってシート28とポペット弁部34との間に画成される可変絞り部の流路断面積が増大する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの負荷圧力に応じてアクチュエータから流出する作動流体の流れを絞るカウンタバランス弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カウンタバランス弁は、例えばウィンチの吊荷荷重によって生ずるアクチュエータの負荷圧をパイロット圧力として用い、制御速度以上にアクチュエータが作動することを防止する(特許文献1参照)。
【0003】
従来、この種の流体圧回路として、例えば図6に示すものがある。これについて説明すると、ウィンチ1を駆動するモータ5は、作動油が給排される二つのポート(出入口)を備え、この各ポートに第一給排通路11と第二給排通路12とがそれぞれ接続される。この第一給排通路11と第二給排通路12とは、方向切換弁14を介してポンプ15とタンク16に選択的に連通される。
【0004】
第一給排通路11にカウンタバランス弁50が介装される。このカウンタバランス弁50は、第二給排通路12に生じるモータ5の負荷圧力をパイロット圧力としてモータ5から第一給排通路11に流出する作動油の流れを絞るものである。
【0005】
カウンタバランス弁50は、バルブボディ51に形成される環状のシート58と、このシート58に嵌合するランド部62を有するスプール61と、ランド部62をシート58に嵌合させるようにスプール61を付勢するリターンスプリング57とを備える。
【0006】
カウンタバランス弁50のユニットには、シート58と並列にチェック弁55が介装される。
【0007】
ウィンチ1がワーク4を上昇させる作動時、方向切換弁14が巻き取りポジションaに切換えられる。これによって、ポンプ15から吐出される作動油は、第一給排通路11のチェック弁55を通ってモータ5に供給され、モータ5が正方向に回転作動し、モータ5から流出する作動油が第二給排通路12を通ってタンク16に戻される。これにより、ウィンチ1が作動し、ワーク4が上昇する。
【0008】
ウィンチ1がワーク4を下降させる作動時、方向切換弁14が繰り出しポジションbに切換えられる。これによって、ポンプ15から吐出される作動油は、第二給排通路12を通ってモータ5に供給され、モータ5が逆方向に回転作動し、モータ5から流出する作動油が第一給排通路11のカウンタバランス弁50を通ってタンク16に戻される。これにより、ウィンチ1が作動し、ワーク4が下降する。
【0009】
上記のウィンチ1がワーク4を下降させる作動時、カウンタバランス弁50は、第二給排通路12からオリフィス63を介してパイロット圧力室56に導かれるパイロット圧力が所定値より高くなるとスプール61が変位し、シート58とランド部62から構成される開口部によりモータ5から流出する作動油の流れを絞り、モータ5の作動速度を調節する。
【0010】
パイロット圧力が所定値より低い状態では、スプール61はランド部62をシート58に嵌合させ、第一給排通路11を遮断する。これにより、モータ5が停止位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−89079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来のカウンタバランス弁50にあっては、円柱状のランド部62がシート58に隙間を持って嵌合する構成のため、作動油の流れを遮断する密封性が十分に得られない可能性がある。例えば、作動油の代わりに、粘性の低い水等の作動流体が用いられた場合に、ランド部62とシート58の隙間から作動流体が洩れるため、長時間に渡ってモータ5を停止位置に保持することができない。
【0013】
また、カウンタバランス弁50のユニットには、シート58と並列にチェック弁55が介装されているため、チェック弁55の介装スペースが必要となり、カウンタバランス弁50のユニットの大型化を招くという問題点があった。
【0014】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、作動流体の流れを遮断する密封性が高いカウンタバランス弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、アクチュエータの負荷圧力に応じてアクチュエータから流出する作動流体の流れを絞るカウンタバランス弁であって、環状のシートと、このシートに着座するポペット弁部を有するポペットとを備え、このポペットがアクチュエータの負荷圧力が高まるのに伴って軸方向に変位することによってシートとポペット弁部との間に画成される可変絞り部の流路断面積が増大することを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、アクチュエータの負荷圧力が所定値より低い状態では、ポペットはポペット弁部をシートに着座させ、アクチュエータから流出する作動流体が通る通路を遮断する。このとき、ポペット弁部がシートに隙間無く当接するため、作動流体の流れを遮断する密封性を高められる。これにより、作動流体として、例えば水等の粘性の低い液体が用いられた場合にも、ポペット弁部とシートの当接部から作動流体が洩れることを抑えられ、長時間に渡ってアクチュエータを停止位置に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態を示す流体圧回路図。
【図2】本発明の他の実施の形態を示すカウンタバランス弁の一部断面図。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態を示すカウンタバランス弁の一部断面図。
【図4】同じくカウンタバランス弁の開弁特性を示す線図。
【図5】本発明の他の実施の形態を示すカウンタバランス弁の一部断面図。
【図6】従来例を示す油圧回路図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、ウィンチ1に設けられる流体圧回路を示している。このウィンチ1は、モータ5によって回転駆動されるドラム2を備え、このドラム2に巻き取られるロープ3を介してワーク(吊り荷)4を吊り下げる。ドラム2はモータ5によって正逆両方向に回転駆動され、ワーク4を昇降させる。
【0020】
作動流体としては、例えばオイル(作動油)または水等の液体が用いられる。
【0021】
モータ5は、作動流体が給排される二つのポート(出入口)を備え、この各ポートに第一給排通路11と第二給排通路12とがそれぞれ接続される。この第一給排通路11と第二給排通路12とは、方向切換弁14を介してポンプ15とタンク16に選択的に連通される。
【0022】
第一給排通路11にはカウンタバランス弁20が介装される。このカウンタバランス弁20は、ウィンチ1の繰り出し作動時に、第二給排通路12から導かれる負荷圧力に応じてモータ5(アクチュエータ)から流出する作動流体の流れを絞ってワーク4の下降速度を調節する。
【0023】
カウンタバランス弁20は、バルブボディ21に形成される環状のシート28と、このシート28に対してその軸方向に変位可能に介装されるポペット31と、このポペット31をシート28に押し付けるリターンスプリング41と、後述するパイロット圧力(モータ5の負荷圧力)によってリターンスプリング41に抗してポペット31を開弁方向に駆動するピストン30とを備える。
【0024】
ポペット31は、外径Dの円柱状をした大ランド部32と、この外径Dより小さい外径dの円柱状をした小ランド部33とが同軸上に形成され、大ランド部32と小ランド部33との間に円錐状のポペット弁部34が同軸上に形成される。
【0025】
バルブボディ21には、大ランド部32を摺動可能に嵌合させる大シリンダ22と、小ランド部33を摺動可能に嵌合させる小シリンダ23とが形成される。大シリンダ22の開口径は、大ランド部32の外径Dに対して所定のハメアイ隙間を持つように設定される。小シリンダ23の開口径は、小ランド部33の外径dに対して所定のハメアイ隙間を持つように設定される。大シリンダ22と小シリンダ23は同軸上に形成され、ポペット31はその軸方向に摺動可能に支持される。
【0026】
バルブボディ21には、大シリンダ22と小シリンダ23の間にバルブ穴24が形成され、このバルブ穴24を挟むようにして環状溝25、26が形成される。環状溝25はモータ5のポート(出入口)に連通し、環状溝26は方向切換弁14のポート(出入口)に連通する。これによって、環状溝25、バルブ穴24、環状溝26は、第一給排通路11を構成する。
【0027】
バルブボディ21には、バルブ穴24の開口縁部に環状のシート28が形成され、このシート28とポペット31のポペット弁部34が着座する。
【0028】
バルブ穴24とシート28の開口径は、小シリンダ23の開口径と等しく形成される。ポペット弁部34の最大外径は、シート28の開口径より大きく形成される。カウンタバランス弁20は、ポペット弁部34がシート28に着座することにより閉弁し、第一給排通路11を遮断する。
【0029】
カウンタバランス弁20は、ポペット31がその軸方向に移動して、シート28からポペット31のポペット弁部34が離れると、両者の間に可変絞り部が断面環状の流路として画成される。カウンタバランス弁20は、ポペット弁部34がシート28に対して軸方向に変位することにより、可変絞り部の流路断面積が増減し、第一給排通路11を通る作動流体の流量を調節する。
【0030】
ピストン30は小ランド部33より小さい外径を有する。ピストン30は、ポペット31と別体で形成され、バルブボディ21にポペット31と並んで摺動可能に嵌合するように設けられる。
【0031】
バルブボディ21には、ピストン30を摺動可能に嵌合させるシリンダ27が形成され、る。これにより、ピストン30はその軸方向に変位可能に支持される。
【0032】
バルブボディ21には、ポペット31を図にて左方向に付勢するコイル状のリターンスプリング41が圧縮して介装されるとともに、ピストン30を介してポペット31を図にて右方向に付勢するコイル状のスプリング42が圧縮して介装される。リターンスプリング41のバネ力がスプリング42のバネ力より大きくなるように設定される。これにより、リターンスプリング41とスプリング42のバネ力によってポペット弁部34がシート28に着座するように付勢される。
【0033】
バルブボディ21には、第二パイロット圧力室36、第一パイロット圧力室37、圧力室38、背圧室39が、それぞれポペット31と同軸上に形成される。
【0034】
背圧室39は、大ランド部32の背後に画成され、リターンスプリング41が介装される。背圧室39には大ランド部32に作用する背圧として大気圧が導かれる。また、背圧室39をタンク16に連通させてもよい。
【0035】
圧力室38は、大ランド部32と小ランド部33との間に画成される。圧力室38は、シート28より方向切換弁14側の第一給排通路11を画成し、モータ5に給排される作動流体が流れる。
【0036】
大ランド部32の外周には環状のシール29が設けられる。このシール29は、Oリングが用いられる。シール29は、大ランド部32の外周に形成された環状溝44に介装され、大シリンダ22に摺接する。シール29によって圧力室38と背圧室39との間が密封される。
【0037】
第二パイロット圧力室36と第一パイロット圧力室37とは、ピストン30によって仕切られる。
【0038】
第二パイロット圧力室36は、シリンダ27とピストン30の基端部(端面)とによって画成される。パイロット圧力として第二給排通路12の負荷圧力がオリフィス35を介して第二パイロット圧力室36に導かれる。第二給排通路12から第二パイロット圧力室36に導かれる負荷圧力が所定値以上に上昇すると、リターンスプリング41とスプリング42のバネ力に抗してポペット31が図にて右方向に移動し、第一給排通路11が開通する。
【0039】
オリフィス35は、これを通過する作動流体に粘性減衰力を付与し、圧力変動や外乱により発生するポペット31の振動を抑制し、カウンタバランス弁20の作動を安定化させる機能を果たす。
【0040】
第一パイロット圧力室37は、小シリンダ23と小ランド部33の端面とピストン30の先端部とによって画成される。第一パイロット圧力室37は、連通路13を介して圧力室38と連通し、第一給排通路11のシート28より方向切換弁14側の圧力が導かれる。
【0041】
次に作用を説明する。
【0042】
ウィンチ1の巻き取り作動時(アクチュエータの正作動時)に、方向切換弁14が巻き取りポジションaに切換えられる。これによって、ポンプ15の吐出圧力が第一パイロット圧力室37と圧力室38に導かれ、第一パイロット圧力室37に面するポペット31の受圧部に作用する流体圧力とスプリング42の付勢力とによってリターンスプリング41に抗してポペット31が図にて右方向に移動し、ポペット弁部34がシート28から離れて第一給排通路11を開通させる。このとき、第二パイロット圧力室36には第二給排通路12を介してタンク16の圧力が導かれているため、ポペット31はもっぱら第一パイロット圧力室37の圧力のみに依存して開弁方向に移動する。これに伴って、ポンプ15から吐出される加圧作動流体が第一給排通路11を通ってモータ5に供給され、モータ5が正方向に回転作動し、モータ5から流出する作動流体が第二給排通路12を通ってタンク16に戻される。これによって、ウィンチ1は、このモータ5の作動によってドラム2を巻き取り方向に回転駆動し、ドラム2にロープ3を巻き取り、ワーク4を上昇する。
【0043】
こうしてカウンタバランス弁20が第一給排通路11をその圧力上昇に伴って開くチェック弁の機能を果たす。
【0044】
ウィンチ1の繰り出し作動時(アクチュエータの逆作動時)に、方向切換弁14が繰り出しポジションbに切換えられる。これによって、ポンプ15の吐出圧力(モータ5の負荷圧力)がオリフィス35を介して第二パイロット圧力室36に導かれ、第二パイロット圧力室36に面するピストン30の受圧部に作用する流体圧力とスプリング42の付勢力とによってリターンスプリング41に抗してポペット31が図にて右方向に移動し、ポペット弁部34がシート28から離れて第一給排通路11を開通させる。これに伴って、ポンプ15から吐出される加圧作動流体が第二給排通路12を通ってモータ5に供給され、モータ5が逆方向に回転作動し、モータ5から流出する作動流体が第一給排通路11を通ってタンク16に戻される。これによって、ウィンチ1は、このモータ5の作動によって、ドラム2を繰り出し方向に回転駆動し、ドラム2からロープ3を繰り出され、ワーク4を下降させる。
【0045】
上記したウィンチ1の繰り出し作動時にて、第二給排通路12からオリフィス35を介して第二パイロット圧力室36に導かれるパイロット圧力が所定値より低下すると、リターンスプリング41の付勢力によってスプリング42に抗してポペット31が図にて左方向に移動し、ポペット弁部34とシート28の間に画成される可変絞り部の流路断面積が減少し、第一給排通路11を通ってタンク16に戻される作動流体の流量が減少する。こうしてカウンタバランス弁20が第二給排通路12から第二パイロット圧力室36に導かれるパイロット圧力(モータ5の負荷圧力)に応じてモータ5の回転速度を適度に調節する。このとき、第一パイロット圧力室37には第一給排通路11を介してタンク16の圧力が導かれているため、ポペット31はもっぱら第二パイロット圧力室36の圧力のみに依存して開弁方向に移動する。なお、ポペット31の作動位置は、オリフィス35の開口面積と、リターンスプリング41、42の付勢力のバランス調整によって変えられる。これによって、ワーク4の下降速度が適度に調節される。
【0046】
上記したウィンチ1の繰り出し作動時にて、パイロット圧力(モータ5の負荷圧力)が所定値より低い状態では、リターンスプリング41の付勢力によってスプリング42に抗してポペット31が図にて左方向に移動し、ポペット弁部34がシート28に着座し、第一給排通路11を遮断する。このとき、円錐状のポペット弁部34がシート28に隙間無く当接するため、第一給排通路11を遮断する密封性が確保される。これにより、ポペット弁部34とシート28の当接部から作動流体が洩れることを抑えられ、長時間に渡ってモータ5の回転が止められ、ワーク4を停止位置に保持することができる。
【0047】
こうしてウィンチ1の繰り出し作動時に、カウンタバランス弁20は、パイロット圧力(モータ5の負荷圧力)に応じてワーク4の下降速度を制限する速度調節機能とワーク4の落下防止機能とを果たす。
【0048】
ウィンチ1の停止時に、方向切換弁14が中立ポジションcに切換えられる。これによって、第一給排通路11と第二給排通路12がそれぞれ遮断され、モータ5に対する作動流体の給排が止められる。これにより、ドラム2の回転が停止し、ワーク4が停止位置に保持される。
【0049】
以上のように本実施の形態では、アクチュエータ(モータ5)の正作動時に圧力源(ポンプ15)から第一給排通路11を通ってアクチュエータ(モータ5)に作動流体が供給されるとともに、アクチュエータ(モータ5)から作動流体が第二給排通路12を通って流出する一方、アクチュエータ(モータ5)の逆作動時に圧力源(ポンプ15)から第二給排通路12を通ってアクチュエータ(モータ5)に作動流体が供給されるとともに、アクチュエータ(モータ5)から作動流体が第一給排通路11を通って流出する作動流体圧回路にあって、第一給排通路11に介装される環状のシート28と、このシート28に着座するとともにシート28との間で可変絞り部を構成するポペット弁部34を有するポペット31と、ポペット31を閉弁方向に付勢するリターンスプリング41と、アクチュエータ(モータ5)の正作動時に第一給排通路11のシート28より圧力源(ポンプ15)側に生じる圧力がポペット31を開弁方向に駆動するパイロット圧力として導かれる第一パイロット圧力室37と、アクチュエータ(モータ5)の逆作動時に第二給排通路12からアクチュエータ(モータ5)に供給される負荷圧力がポペット31を開弁方向に駆動するパイロット圧力として導かれる第二パイロット圧力室36とを備え、アクチュエータ(モータ5)の正作動時に圧力源(ポンプ15)から導かれる供給圧力に応じて第一給排通路11を開通させる一方、アクチュエータ(モータ5)の逆作動時に第二給排通路12からアクチュエータ(モータ5)に供給される負荷圧力に応じてアクチュエータ(モータ5)から第一給排通路11を通って流出する作動流体の流れを絞る構成とした。
【0050】
上記構成に基づき、アクチュエータ(モータ5)の正作動時において、第一給排通路11のシート28より上流側から第一パイロット圧力室37に導かれるパイロット圧力に応じてポペット31がリターンスプリング41に抗して開弁方向に移動し、ポペット弁部34がシート28から離れ、アクチュエータ(モータ5)に作動流体を供給する。
【0051】
アクチュエータ(モータ5)の正作動時において、第一給排通路11のシート28より圧力源(ポンプ15)側に生じる圧力がが所定値より低い状態では、ポペット31はポペット弁部34をシート28に着座させ、第一給排通路11を遮断する。
【0052】
このとき、ポペット弁部34がシート28に隙間無く当接するため、作動流体の流れを遮断する密封性を高められる。これにより、作動流体として、例えば水等の粘性の低い液体が用いられた場合にも、ポペット弁部34とシート28の当接部から作動流体が洩れることを抑えられ、長時間に渡ってアクチュエータ(モータ5)を停止位置に保持することができる。
【0053】
こうしてカウンタバランス弁20はアクチュエータ(モータ5)に供給される作動流体の圧力に応じて開弁するチェック弁の機能を果たす。これにより、従来のカウンタバランス弁のユニットのようにスプールと並列に介装されるチェック弁を設ける必要がなく、カウンタバランス弁20のユニットの構造を簡素化し、カウンタバランス弁20のユニットのコンパクト化がはかれる。
【0054】
アクチュエータ(モータ5)の逆作動時において、アクチュエータ(モータ5)の負荷圧力が所定値以上に高い状態では、ポペット弁部34がシート28から離れ、アクチュエータ(モータ5)の負荷圧力が高まるのに伴ってシート28とポペット弁部34との間に画成される可変絞り部の流路断面積を増大する。換言すると、カウンタバランス弁20は、アクチュエータ(モータ5)の負荷圧力が低下するのに伴ってシート28にポペット弁部34が近づいてアクチュエータ(モータ5)から流出する作動流体の流れを絞り、アクチュエータ(モータ5)の作動速度を調節する。
【0055】
アクチュエータ(モータ5)の逆作動時において、アクチュエータ(モータ5)の負荷圧力が所定値より低い状態では、ポペット31はポペット弁部34をシート28に着座させ、第一給排通路11を遮断する。
【0056】
本実施の形態では、ポペット31と軸方向に並んで設けられるピストン30を備え、このピストン30の先端部とポペット31によって第一パイロット圧力室37を画成し、ピストン30の基端部によって第二パイロット圧力室36を画成する構成とした。
【0057】
上記構成に基づき、アクチュエータ(モータ5)の正作動時に、第一給排通路11のシート28より上流側から第一パイロット圧力室37に導かれるパイロット圧力がピストン30の先端部とポペット31の端面に作用し、ポペット31がパイロット圧力に応じて開弁方向に移動し、アクチュエータ(モータ5)に作動流体を供給する。こうしてカウンタバランス弁20はアクチュエータ(モータ5)に供給される作動流体の流れに対して開弁するチェック弁の機能を果たす。
【0058】
本実施の形態では、シート28が開口するバルブボディ21を備え、ポペット31は、バルブボディ21に摺動可能に嵌合する円柱状の大ランド部32と、バルブボディ21に摺動可能に嵌合し大ランド部32より外径が小さい円柱状の小ランド部33とを有し、大ランド部32と小ランド部33との間にポペット弁部34が形成される構成とした。
【0059】
上記構成に基づき、大ランド部32と小ランド部33とがバルブボディ21に摺動可能に嵌合することによって、ポペット弁部34がシート28と同軸上で変位し、ポペット弁部34をシート28に隙間無く当接させることができ、作動流体の流れを遮断する密封性を高められる。
【0060】
本実施の形態では、大ランド部32と小ランド部33との間にアクチュエータ(モータ5)から流出する作動流体の流れる圧力室38が画成され、大ランド部32の背後に背圧室39が画成され、大ランド部32の外周に環状のシール29を設け、このシール29がバルブボディ21に摺接することによって圧力室38と背圧室39との間が密封される構成とした。
【0061】
上記構成に基づき、シール29によって圧力室38の密封性を高められる。これにより、作動流体として、例えば水等の粘性の低い液体が用いられた場合にも、作動流体が圧力室38から背圧室39へと洩れることが抑えられる。
【0062】
次に図2に示す他の実施の形態を説明する。これは基本的には図1の実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を用いる。
【0063】
バルブボディ21には、バルブ穴24の開口縁部に円錐面状のシート28が形成される。
【0064】
ポペット31のポペット弁部34は、円錐状のポペットテーパ部71と、この円錐状のポペットテーパ部71から外径方向に拡がる環状のポペットシート部72とが同軸上に形成される。
【0065】
ポペットシート部72は、ポペット31の中心線Oを含む縦断面が円弧状に湾曲する曲面に形成される。
【0066】
カウンタバランス弁20は、ポペットシート部72がシート28に着座することにより閉弁し、第一給排通路11を遮断する。断面円弧状のポペットシート部72が円錐面状のシート28に着座することにより、ポペット31とシート28の当接部の面圧が低減される。これにより、カウンタバランス弁20は、繰り返し開閉動作が行われてもポペット31とシート28の当接部が磨耗することが抑えられ、耐久性を高められる。
【0067】
ポペット31がその軸方向に移動して、シート28からポペットシート部72が離れると、シート28と円錐状のポペットテーパ部71の間に可変絞り部が断面環状の流路として画成される。
【0068】
本実施の形態では、ポペット弁部34は、シート28との間に可変絞り部を画成するポペットテーパ部71と、このポペットテーパ部71から外径方向に拡がりシート28に着座する環状のポペットシート部72とが同軸上に形成される構成とした。
【0069】
上記構成に基づき、ポペットテーパ部71から外径方向に拡がる環状のポペットシート部72がシート28に着座することにより、ポペット31とシート28の当接部の面圧が低減される。これにより、カウンタバランス弁20は、繰り返し開閉動作が行われてもポペット31とシート28の当接部が磨耗することが抑えられ、耐久性を高められる。
【0070】
本実施の形態では、ポペットシート部72が断面円弧状に湾曲する曲面に形成され、ポペットシート部72を着座させるシート28が円錐面状に形成される構成とした。
【0071】
上記構成に基づき、断面円弧状のポペットシート部72が円錐面状のシート28に着座することにより、ポペット31とシート28の当接部の面圧が低減される。これにより、カウンタバランス弁20は、繰り返し開閉動作が行われてもポペット31とシート28の当接部が磨耗することが抑えられ、耐久性を高められる。
【0072】
次に図3に示す他の実施の形態を説明する。これは基本的には図1の実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を用いる。
【0073】
ポペット31のポペット弁部34は、ポペット31の中心線Oを含む縦断面が放物線状に湾曲するポペットテーパ部73と、このポペットテーパ部73から外径方向に平面状に拡がるポペットシート部74とが同軸上に形成される。
【0074】
ポペットテーパ部73は、その外径がポペットシート部74から離れるのにしたがって次第に小さくなり、その外径の変化率(ポペット31の軸方向についてポペットテーパ部73の外径が小さくなる度合い)がポペットシート部74から離れるのにしたがって次第に大きくなるように形成される。
【0075】
ポペットシート部74はポペット31の中心線Oについて直交する平面状に形成される。
【0076】
バルブボディ21には、バルブ穴24の開口縁部に平面状のシート28が形成される。このシート28はポペット31の中心線Oについて直交する平面状に形成され、ポペットシート部74に平行に対峙する。
【0077】
なお、これに限らず、図2に示すように、ポペットシート部74がポペット31の中心線Oを含む縦断面が円弧状に湾曲する曲面に形成され、このポペットシート部74を着座させるシート28を円錐面状に形成してもよい。
【0078】
ポペット31のポペット弁部34は、円錐状のポペットテーパ部71と、この円錐状のポペットテーパ部71から外径方向に拡がる環状のポペットシート部72とが同軸上に形成される。
【0079】
ポペットシート部72は、ポペット31の中心線Oを含む縦断面が円弧状に湾曲する曲面に形成される。
【0080】
ポペット弁部34のポペットシート部74がシート28に着座することにより閉弁し、第一給排通路11を遮断する。
【0081】
ポペット31がその軸方向に移動して、シート28からポペット弁部34のポペットシート部74が離れると、シート28とポペットテーパ部73の間に可変絞り部が断面環状の流路として画成される。
【0082】
図4は、ポペット31の変位(ストローク)に対するシート28とポペットテーパ部73の間に画成される可変絞り部の開口面積との関係を示す特性図である。ワーク4を低速で降下させる低速巻下時にポペット31の変位に対する可変絞り部の開口面積の変化が小さくなるため、この開口面積の二乗に比例する圧力の変化を少なくし、低速巻下時におけるカウンタバランス弁20の制御性を高められる。ワーク4が無い無負荷状態で高速でウィンチ1の繰り出し作動が行われる高速巻下時にポペット31の変位に対する可変絞り部の開口面積の変化が大きくなるため、カウンタバランス弁20を大流量の作動流体が流れ、巻下速度を高められる。
【0083】
本実施の形態では、ポペット弁部34は、断面が放物線状に湾曲するポペットテーパ部73を有する構成とした。
【0084】
上記構成に基づき、アクチュエータ(モータ5)の低速作動時における制御性を高めることと、高速作動性を確保することを両立できる。
【0085】
次に図5に示す他の実施の形態を説明する。これは基本的には図1の実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を用いる。
【0086】
第二給排通路12の負荷圧力を第二パイロット圧力室36に導く手段として、第二給排通路12に連通する上流圧力室81と、この上流圧力室81を第二パイロット圧力室36に連通する中間圧力室83と、上流圧力室81と中間圧力室83との間に介装される上流オリフィス82と、中間圧力室83と第二パイロット圧力室36の間に介装される中間オリフィス84とを備える。
【0087】
中間圧力室83は、上流圧力室81から上流オリフィス82を通過したときの動圧が静圧に回復するのに必要な容積を持つ。
【0088】
この場合、ピストン30を駆動するパイロット圧力として第二給排通路12の負荷圧力が上流圧力室81と上流オリフィス82と中間圧力室83と中間オリフィス84とを介して第二パイロット圧力室36に導かれる。上流オリフィス82がこれを通過する作動流体に粘性減衰力を付与し、中間圧力室83にて上流オリフィス82を通過したときの動圧が静圧まで回復した後、中間オリフィス84がこれを通過する作動流体に粘性減衰力を付与する。これにより、例えば水のような低粘性の作動流体が用いられた場合にも、上流オリフィス82と中間オリフィス84は、これを通過する作動流体に粘性減衰力を付与し、圧力変動や外乱により発生するポペット31の振動を抑制し、カウンタバランス弁20の作動を安定化させる機能を果たす。
【0089】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0090】
1 ウィンチ
2 ドラム
3 ロープ
4 ワーク
5 モータ
11 第一給排通路
12 第二給排通路
13 連通路
14 方向切換弁
15 ポンプ
16 タンク
20 カウンタバランス弁
21 バルブボディ
22 大シリンダ
23 小シリンダ
24 バルブ穴
25 環状溝
26 環状溝
27 シリンダ
28 シート
29 シール
30 ピストン
31 ポペット
32 大ランド部
33 小ランド部
34 ポペット弁部
35 オリフィス
36 第二パイロット圧力室
37 第一パイロット圧力室
38 圧力室
39 背圧室
41 リターンスプリング
42 スプリング
71 ポペットテーパ部
72 ポペットシート部
73 ポペットテーパ部
74 ポペットシート部
81 上流圧力室
82 上流オリフィス
83 中間圧力室
84 中間オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの正作動時に圧力源から第一給排通路を通って前記アクチュエータに作動流体が供給されるとともに、
前記アクチュエータから作動流体が第二給排通路を通って流出する一方、
前記アクチュエータの逆作動時に前記圧力源から前記第二給排通路を通って前記アクチュエータに作動流体が供給されるとともに、
前記アクチュエータから作動流体が前記第一給排通路を通って流出する作動流体圧回路にあって、
前記第一給排通路に介装される環状のシートと、
このシートに着座するとともに前記シートとの間で可変絞り部を構成するポペット弁部を有するポペットと、
前記ポペットを閉弁方向に付勢するリターンスプリングと、
前記アクチュエータの正作動時に前記第一給排通路の前記シートより前記圧力源側に生じる圧力が前記ポペットを開弁方向に駆動するパイロット圧力として導かれる第一パイロット圧力室と、
前記アクチュエータの逆作動時に前記第二給排通路から前記アクチュエータに供給される負荷圧力が前記ポペットを開弁方向に駆動するパイロット圧力として導かれる第二パイロット圧力室とを備え、
前記アクチュエータの正作動時に前記圧力源から導かれる供給圧力に応じて前記第一給排通路を開通させる一方、
前記アクチュエータの逆作動時に前記第二給排通路から前記アクチュエータに供給される負荷圧力に応じて前記アクチュエータから前記第一給排通路を通って流出する作動流体の流れを絞る構成としたことを特徴とするカウンタバランス弁。
【請求項2】
前記ポペットと軸方向に並んで設けられるピストンを備え、
このピストンの先端部と前記ポペットによって前記第一パイロット圧力室を画成し、
前記ピストンの基端部によって前記第二パイロット圧力室を画成する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のカウンタバランス弁。
【請求項3】
前記シートが開口するバルブボディを備え、
前記ポペットは、
前記バルブボディに摺動可能に嵌合する円柱状の大ランド部と、
前記バルブボディに摺動可能に嵌合し前記大ランド部より外径が小さい円柱状の小ランド部とを有し、
前記大ランド部と前記小ランド部との間に前記ポペット弁部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカウンタバランス弁。
【請求項4】
前記大ランド部と前記小ランド部との間に前記アクチュエータから流出する作動流体の流れる圧力室が画成され、
前記大ランド部の背後に背圧室が画成され、
前記大ランド部の外周に環状のシールを設け、
このシールが前記バルブボディに摺接することによって前記圧力室と前記背圧室との間が密封されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のカウンタバランス弁。
【請求項5】
前記ポペット弁部は、前記シートとの間に前記可変絞り部を画成するポペットテーパ部と、このポペットテーパ部から外径方向に拡がり前記シートに着座する環状のポペットシート部とが同軸上に形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のカウンタバランス弁。
【請求項6】
前記ポペットシート部が断面円弧状に湾曲する曲面に形成され、
前記シートが円錐面状に形成されることを特徴とする請求項5に記載のカウンタバランス弁。
【請求項7】
前記ポペット弁部は、断面が放物線状に湾曲する前記ポペットテーパ部を有することを特徴とする請求項5または6に記載のカウンタバランス弁。
【請求項8】
前記第二給排通路の負荷圧力を前記第二パイロット圧力室に導く手段として、
この上流圧力室を前記第二パイロット圧力室に連通する中間圧力室と、
前記上流圧力室と前記中間圧力室との間に介装される上流オリフィスと、
前記中間圧力室と前記第二パイロット圧力室の間に介装される中間オリフィスとを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載のカウンタバランス弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−241572(P2010−241572A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93699(P2009−93699)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】