説明

カウンターとその製造方法

【課題】デッキ部上の水滴や水溜りを除去することができ、見栄えも良好なカウンターを提供すること。
【解決手段】デッキ部5と、このデッキ部5の上に配設された水栓3と、前記デッキ部5から凹状に窪み、立ち上がり壁部4aが形成され、前記水栓3からの水を受水可能な水受け部4とを備えたカウンター1であって、前記水栓3の付近の前記デッキ部5の表面から、前記立ち上がり壁部4aまたは前記立ち上がり壁部4a側に位置する前記デッキ部5の側面へと通じる導水部7が、前記立ち上がり壁部4a側へ向かって斜め下方向に傾斜して設けられているカウンター1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンターとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面化粧台や流し台等のカウンターは、デッキ部(カウンター上面)に水栓が配設され、この水栓からの水を水栓の手前に設けられたボウルやシンク等の水受け容器で受水している。
【0003】
洗面化粧台や流し台では、洗面や手洗い、食器等の洗浄等の際に飛び跳ねた水がデッキ部上に水滴として付着したり、水溜りが生じたりしてしまう場合がある。また、濡れた手で水栓を操作した場合や、水栓の結露等によってもデッキ部上に水溜りが生じてしまう場合がある。
【0004】
デッキ部上に水滴の付着や水溜りが生じると、後の使用者に不快感を与えるとともに、水垢やカビの発生の原因となる。このため、水栓の使用後には、デッキ部の水滴や水溜りの拭き取り等の手当てが必要となり、負担となっていた。
【0005】
このような問題を解決するため、デッキ部に水溜りが生じ難い水受け装置が提案されている(特許文献1)。この水受け装置では、水受け容器の上面側に、水切り可能な透水性を有する多孔質部を形成し、デッキ部にしたたり落ちた水が、多孔質部を通過して水受け容器の内部に流れ込む構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−206024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の水受け装置のようなデッキ上の多孔質部によっては、デッキ部上に付着した水滴を完全に除去することは難しかった。また、特許文献1の水受け装置では、多孔質部が外部に露出しているため見栄えが良好であるとは言い難かった。
【0008】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、デッキ部上の水滴や水溜りを除去することができ、見栄えも良好なカウンターを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のカウンターは、デッキ部と、このデッキ部の上に配設された水栓と、前記デッキ部から凹状に窪み、立ち上がり壁部が形成され、前記水栓からの水を受水可能な水受け部とを備えたカウンターであって、前記水栓の付近の前記デッキ部の表面から、前記立ち上がり壁部または前記立ち上がり壁部側に位置する前記デッキ部の側面へと通じる導水部が、前記立ち上がり壁部側へ向かって斜め下方向に傾斜して設けられていることを特徴としている。
【0010】
このカウンターでは、前記導水部は、中空部を有する筒体によって形成されていることが好ましい。
【0011】
このカウンターでは、前記筒体の中空部には、導水性材料が挿入されていることがより好ましい
【0012】
このカウンターでは、前記導水部は、導水性材料によって形成されていることが好ましい。
【0013】
このカウンターでは、前記導水部は、前記水栓の付近の前記デッキ部の表面から、前記立ち上がり壁部または前記立ち上がり壁部側に位置する前記デッキ部の側面へと通じる貫通孔の内部に導水性材料が充填されて形成されていることが好ましい。
【0014】
このカウンターでは、前記導水性材料は、中空糸繊維束であることがより好ましい。
【0015】
このカウンターでは、前記デッキ部および水受け部が樹脂製であることがより好ましい。
【0016】
本発明のカウンターの製造方法は、樹脂製のデッキ部と、このデッキ部の上に配設された水栓と、前記デッキ部から凹状に窪み、立ち上がり壁部が形成され、前記水栓からの水を受水可能な樹脂製の水受け部とを備え、前記水栓の付近のデッキ部から前記水受け部の立ち上がり壁部へと通じる導水部が立ち上がり壁部側へ向かって斜め下方向に傾斜して設けられているカウンターの製造方法であって、前記デッキ部の表面側を成形するデッキ部型と、このデッキ部型と接続し、水受け部の表面側を成形する水受け部型とが、前記デッキ部および水受け部の裏面側を成形する裏面型と対向している金型の内部空間において、前記デッキ部型の内面から前記水受け部の立ち上がり壁部を成形する前記水受け部型の内面へ向かって前記導水部を傾斜させて配置した後、前記金型の内部空間に樹脂を供給して前記デッキ部および前記水受け部を成形する工程を含むことを特徴としている。
【0017】
このカウンターの製造方法では、前記金型は、前記デッキ部型と前記裏面型の間に水栓取付穴型が配設されており、この水栓取付穴型の付近の前記デッキ部型の内面から前記水受け部の立ち上がり壁部を成形する前記水受け部型の内面へ向かって導水部を傾斜させて配置することが好ましい。
【0018】
本発明のカウンターの製造方法は、樹脂製のデッキ部と、このデッキ部の上に配設された水栓と、前記デッキ部から凹状に窪み、立ち上がり壁部が形成され、前記水栓からの水を受水可能な水受け部とを備え、前記デッキ部は、前記水栓の付近の表面から、前記水受け部の立ち上がり壁部側に位置する前記デッキ部の側面へと通じる導水部が前記側面側へ向かって斜め下方向に傾斜して設けられているカウンターの製造方法であって、(1)前記デッキ部を成形する金型の内部に導水部を配置した後、樹脂を供給して、前記導水部が前記デッキ部の表面から前記側面へと向かって斜めに傾斜して通じている前記デッキ部を成形する工程と、(2)前記工程(1)で成形された前記デッキ部の側面の導水部が前記水受け部の立ち上がり壁部側に現れるように、前記水受け部の立ち上がり壁部の上端部に前記デッキ部を接続する工程と、を含むことを特徴としている。
【0019】
このカウンターの製造方法では、前記金型は、前記デッキ部の表面側を成形する表面成形部と、この表面成形部と対向し、前記デッキ部の裏面側を成形する裏面成形部と、前記デッキ部の側面を成形する側面成形部とを有し、前記工程(1)は、前記金型の内部空間において、前記表面成形部の内面から前記側面成形部の内面へ向かって前記導水部を傾斜させて配置した後、前記金型の内部空間に樹脂を供給することが好ましい。
【0020】
このカウンターの製造方法では、前記金型は、前記表面成形部と前記裏面成形部との間に水栓取付穴型が配設されており、この水栓取付穴型の付近の前記表面成形部の内面から前記側面成形部の内面へ向かって導水部を傾斜させて配置することが好ましい。
【0021】
このカウンターの製造方法では、前記導水部として、中空部を有する筒体を配置することがより好ましい。
【0022】
このカウンターの製造方法では、前記筒体の中空部に導水性材料を挿入する工程を含むことがさらに好ましい。
【0023】
このカウンターの製造方法では、前記導水部として、導水性材料を配置することがより好ましい。
【0024】
このカウンターの製造方法では、前記導水性材料は、中空糸繊維束であることが一層好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のカウンターによれば、デッキ部上の水滴や水溜りを効果的に除去することができ、カウンターの見栄えも良好となる。また、本発明のカウンターの製造方法によれば、デッキ部上の水滴や水溜りを効果的に除去することができ、見栄えも良好なカウンターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のカウンターの一実施形態を例示した斜視図である。
【図2】図1のA−A’矢視断面図である。
【図3】(A)は、図2のS部の拡大図であり、導水部の第1の形態を例示している。(B)は、図2のS部の拡大図であり、導水部の第2の形態を例示している。
【図4】本発明のカウンターの一実施形態を例示した部分断面図である。
【図5】(A)(B)(C)は、本発明のカウンターの製造方法の一実施形態を例示した概要図である。
【図6】(A)(B)(C)(D)は、本発明のカウンターの製造方法の別の実施形態を例示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明のカウンターの一実施形態を例示した斜視図である。図2は、図1のA−A’矢視断面図である。
【0028】
カウンター1は、住宅の洗面所等に設置される洗面化粧台であり、キャビネット2と、水栓3と、水受け部4としてのボウル41とを備えている。
【0029】
キャビネット2は、上部に樹脂製のデッキ部5を備えている。このデッキ部5は、略水平に設計されている。
【0030】
水栓3は、水栓本体3aが封水パッキン6を介して、デッキ部5上に垂直に据え付けられている。具体的には、水栓3は、デッキ部5上に設けられた水栓取付穴5aに基部3bが挿入されて、デッキ部5の裏面側に突出した基部3bを固定部材Tによって固定することで、デッキ部5を上下に挟み込むようにして取り付けられている。水栓3は、シングルレバー3cと蛇口3dとを備え、水栓本体3aの内部には、湯、水を混合するためのカートリッジが内蔵されている。水栓3は、シングルレバー3cを左右に回転させることで湯と水の混合割合を調整することができ、シングルレバー3cを上下に移動することで混合水量を調整することができる。このようなシングルレバー3cの操作によって、水栓3の蛇口3dから温度と混合水量が調整された混合水(湯水)をボウル41に吐水することができる。
【0031】
ボウル41は樹脂製であり、デッキ部5から凹状に窪んでいる。具体的には、ボウル41は、排水栓41aが設けられた中央部から外側へ、上方に向かって立ち上がる立ち上がり壁部4aが形成された滑らかな凹状に設計されている。そして、ボウル41は、裏面がキャビネット2の上方から嵌め込まれ、水栓3からの湯水が受水可能とされている。
【0032】
そして、カウンター1は、水栓3の付近のデッキ部5からボウル41の水栓3側の立ち上がり壁部4aへと通じる導水部7が設けられている。
【0033】
ここで、「水栓の付近のデッキ部」とは、水栓3の使用等に伴う水滴の付着や、水溜りの発生が想定される水栓本体3aの外周囲のデッキ部5の領域をいう。具体的には、例えば、水栓本体3aからおよそ100mm以内、好ましくは、水栓本体3aからおよそ5mm以内の領域を例示することができる。
【0034】
本発明のカウンター1における導水部7は、例えば以下の第1、第2の形態を例示することができる。以下、図1および図2に加え、図3を用いて本発明のカウンター1の実施形態について説明する。
【0035】
図3(A)は、図2のS部の拡大図であり、導水部の第1の形態を例示している。図3(B)は、図2のS部の拡大図であり、導水部の第2の形態を例示している。
【0036】
図3(A)に例示したように、導水部7の第1の形態では、導水部7が内側に中空部を有する筒体71によって形成されている。筒体71は、デッキ部5から立ち上がり壁部4a側へ向かって斜め下方向に傾斜するように埋設されている。カウンター1は、洗面や手洗い等の際に水が飛び跳ねた場合や、濡れた手で水栓3を操作した場合、水栓3が結露した場合等に、水栓3の付近のデッキ部5上に水滴が付着したり水溜りが生じたりする場合がある。第1の形態では、このような場合にも、筒体71の中空部を通じてデッキ部5上の水滴や水溜りがデッキ部5上からボウル41の立ち上がり壁部4a側へ向かって導水され、デッキ部5上の水滴や水溜りを除去することができる。導水部7としての筒体71は、その両端部(デッキ部5側の端部7aと立ち上がり壁部4a側の端部7b)が露出しているのみであるため、カウンター1の見栄えが良好に維持されている。
【0037】
第1の形態では、筒体71の中空部の断面形状は、例えば、円形、矩形等に適宜設計することができる。例えば、筒体の中空部の断面形状が円形の場合には、中空部の径として、およそ1mm〜3mmの範囲を例示することができる。
【0038】
さらに、第1の形態では、筒体71の中空部に、デッキ部5から立ち上がり壁部4aに亘って導水性材料8を挿入することが好ましい。「導水性材料」とは、接触した水を引き込んで、所定の方向へ導くことが可能な材料であり、具体的には、吸水性を有する材料や、毛細管現象を生じさせる材料等を例示することができる。導水性を高めるため、導水性材料8は、筒体71の中空部の内側を満たすように充填されていることがより好ましい。
【0039】
吸水性を有する材料としては、例えば、撚り糸、布等の繊維類、テッシュペーパー、キッチンタオル等の紙類、吸水性の袋に封入された微細粒子等を例示することができ、これらのうちの1種または2種以上の混合物を適宜使用することができる。
【0040】
そして、導水性材料8としては、特に毛細管現象を生じさせる材料が好ましく、具体的には束状の中空糸繊維(以下、中空糸繊維束という)を例示することができる。中空糸繊維束の材料は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチロール(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PSU)、ポリウレタン(PU)等のポリマーのうちの1種または2種以上を適宜使用することができる。
【0041】
また、中空糸繊維束の孔径は、例えば、0.1〜30μm程度の範囲を例示することができる。
【0042】
第1の形態において、筒体71の中空部に導水性材料8を挿入する場合、導水部7としての筒体71の両端部(デッキ部5側の端部7aと立ち上がり壁部4a側の端部7b)において導水性材料8を露出させる。これによって、水栓3の付近の水滴、水溜りは導水性材料8によって筒体71の中空部内へ引き込まれる。そして、図2、図3(A)中の矢印に例示したように、筒体71の中空部内へ引き込まれた水は、導水性材料8を通じてボウル41側へ流れ出て排水される。導水性材料8の吸水性や毛細管現象によって、デッキ部5上の水滴、水溜りがゆっくり引き込まれるため、デッキ部5上の水滴、水溜りをほぼ完全に除去することができる。このため、カウンター1は、デッキ部5上に水垢やカビが発生し難く、清潔に保たれる。なお、水滴、水溜りが急速に引き込まれるような構造の場合、途中で水切れが生じやすく、デッキ部5上の水滴、水溜りを完全に除去することは困難となるため、導水部7は、ゆっくり引き込まれるような構造とするのが好ましい。
【0043】
特に、導水性材料8として毛細管現象を生じさせる中空糸繊維束を使用した場合には、より効果的にデッキ部5上の水滴、水溜りを除去することができる。デッキ部5上の水滴や水溜りは、デッキ部5上で露出する中空糸繊維束の毛細管現象によってその内部へと引き込まれ、デッキ部5側からボウル41側へ流れ出て排水される。
【0044】
このとき、水栓3が使用されて、ボウル41の立ち上がり壁部4a側の中空糸繊維束の端部が濡れると、中空糸繊維束の毛細管現象によって、水が立ち上がり壁部4a側からデッキ部5側へ上昇する。このため、立ち上がり壁部4a側からデッキ部5側へ上昇した水が、デッキ部5上の水滴や水溜りと接触して、中空糸繊維束の孔内で接続した状態となる。そして、筒体71は、ボウル41の立ち上がり壁部4a側へ向かって下方に傾斜しているため、デッキ部5上の水滴、水溜りがボウル41側へ引き出されてボウル41の内部に流れ落ちる。このため、より効果的にデッキ部5上の水滴、水溜りを除去することができる。
【0045】
この場合にも、カウンター1は、外見上、デッキ部5の上および立ち上がり壁部4aに導水性材料8の端部がわずかに露出しているだけであり、カウンター1の全体、特にデッキ部5の上の見栄えが良好に設計されている。
【0046】
図3(B)に例示したように、導水部7の第2の形態では、導水部7が導水性材料8によって形成されている。すなわち、第1の形態における筒体71(図3(A))は埋設せず、導水性材料8がデッキ部5から立ち上がり壁部4a側へ向かって斜め下方向に傾斜するように埋設されている。導水性材料8については、第1の形態と同様の材料を使用することができる。導水部7としての導水性材料8は、両端部(デッキ部5側の端部7aと立ち上がり壁部4a側の端部7b)が露出している。これによって、水栓3の付近の水滴、水溜りは、導水性材料8の内部へと引き込まれる。そして、図2、図3(B)中の矢印に例示したように、導水性材料8の吸水性や毛細管現象によって、デッキ部5上の水滴、水溜りがゆっくり引き込まれ、ボウル41側へ流れ出て排水される。このため、デッキ部5上の水滴、水溜りをほぼ完全に除去することができる。したがって、カウンター1は、デッキ部5上に水垢やカビが発生し難く、清潔に保たれる。
【0047】
この場合にも、カウンター1は、外見上、デッキ部5の上および立ち上がり壁部4aに導水性材料8の端部がわずかに露出しているだけであり、カウンター1の全体、特にデッキ部5の上の見栄えが良好となっている。
【0048】
なお、導水部7は、成形されたカウンターにおいて、水栓3の付近のデッキ部5からボウル41の水栓3側の立ち上がり壁部4aへと通じる貫通孔72を設け、この貫通孔72の内部に導水性材料8を充填することができる。この貫通孔72は、デッキ部5から立ち上がり壁部4a側へ向かって斜め下方向に傾斜する直線状の孔とすることができる。貫通孔の断面形状は、円形、矩形等に適宜設計することができる。また、貫通孔72を設けずに、導水性材料8を埋設する形態については、図5および図6を用いて後述する。
【0049】
図4は、本発明のカウンターの一実施形態を例示した断面図である。以下では、図1および図2に示した形態と共通する部分には同一の符号を付し、一部説明は省略する。図4では、図3で示した筒体71および導水性材料8を図示していないが、導水部については、図3を用いて説明した形態とすることができる。
【0050】
カウンター1は、デッキ部5と水受け部4が別体として設計されている。デッキ部5は、平板状であり、表面51と裏面53の間(側面52)の厚さは、5mm〜40mm程度に設計されている。水受け部4は、立ち上がり壁部4aの上端部に、水受け部4の外側に突出する水平部4bが設けられており、この水平部4bの上にデッキ部5が載置されて接続されている。デッキ部5の表面51から、水受け部4の立ち上がり壁部4a側に位置するデッキ部5の側面52(水受け部4を取り付ける開口穴の端面)へ向かって斜め下方向に傾斜して通じる導水部7が埋設されている。デッキ部5の側面52に現れる導水部7の端部7bは、立ち上がり壁部4aの上方に位置している。導水部7は、図3(A)(B)で示したように、筒体71、導水性材料8によって形成することができる。カウンター1は、外見上、デッキ部5の表面51および側面52に導水部7の端部7a、7bがわずかに露出しているだけであり、カウンター1の全体、特にデッキ部5の上の見栄えが良好となっている。また、導水部7の端部7bが現れているデッキ部5の側面52は、立ち上がり壁部4aの内側に突出しないように接続され、接続部の段差が少ないように設計されている。
【0051】
図4の矢印に例示したように、カウンター1は、デッキ部5上の水滴や水溜りが、デッキ部5の表面51から導水部7を通じてデッキ部5の側面52側へと流れ出て、立ち上がり壁部4aを伝って排水される。このため、デッキ部5上の水滴、水溜りをほぼ完全に除去することができる。したがって、カウンター1は、デッキ部5上に水垢やカビが発生し難く、清潔に保たれる。
【0052】
なお、図4で例示したカウンターは、図1、図2に例示した形態とは異なり、水栓3は、水栓本体3aから水平に延びる蛇口3dを備え、水平方向に回動可能なつまみ3eを備えている。このつまみ3eを回動させることで、蛇口3dからの吐水および吐水の停止が可能とされている。
【0053】
図5(A)(B)(C)は、本発明のカウンターの製造方法の一実施形態を例示した概要図である。図5では、図3で示した筒体71および導水性材料8を図示していないが、導水部については、図3を用いて説明した形態とすることができる。
【0054】
図5(A)(B)に例示したように、デッキ部5および水受け部4を成形する金型9Aは、デッキ部5の表面51側を成形するデッキ部型91と、このデッキ部型91と接続し、水受け部4の表面4A側を成形する水受け部型92とが、デッキ部5の裏面53および水受け部4の裏面4B側を成形する裏面型93と対向している。さらに、デッキ部型91と裏面型93との間には、水栓取付穴5aを成形するための水栓取付穴型94が配設されている。この金型のデッキ部型91の内面には、水栓取付穴型94の付近に凹部91aが形成されている。また、水受け部型92にも、立ち上がり壁部4aを成形する部分の内面に凹部92aが形成されている。これらの凹部91a、92aはいずれも、導水部7の端部7a、7bを保持可能な湾曲形状に設計されている。
【0055】
そして、デッキ部型91の内面に設けた凹部91aと水受け部型92の内面に設けた凹部92aに、それぞれ導水部7の両端部7a、7bを嵌め込んで保持する。導水部7の両端部7a、7bの固定には、テープ等の粘着材料を適宜使用することができる。導水部7は、デッキ部型91の内面から水受け部型92の内面へ向かって斜めに傾斜した状態となるように設置される。
【0056】
この金型9Aの内部に、例えばビニルエステル等の樹脂を供給して硬化させる。これによって、金型9Aを外した後、図5(B)に例示したように、金型9Aの内部形状と対応したデッキ部5および水受け部4を成形することができる。金型9Aに樹脂を供給して成形することで、デッキ部5の内部の導水部7の位置や傾斜角度等を精度良く仕上げることができる。このデッキ部5および水受け部4は、金型9Aに設けられた凹部91a、92aに対応する位置に凸部P1、P2が形成されており、この凸部P1、P2間には、導水部7がデッキ部5の表面51側から立ち上がり壁部4a側に向かって斜めに傾斜した状態で埋設されている。そして、図5(C)に例示したように、このデッキ部5および立ち上がり壁部4aの凸部P1、P2(図5(B)に図示)を削り取って面一になるように加工し、水栓取付穴5aから水栓3を嵌め込んでカウンター1を形成する。
【0057】
なお、図5で例示したカウンターは、図4に例示した形態とは異なり、水受け部の立ち上がり壁部が略垂直に起立している。
【0058】
図6(A)(B)(C)(D)は、本発明のカウンターの製造方法の別の実施形態を例示した概要図である。図6では、図3で示した筒体71および導水性材料8を図示していないが、導水部については、図3を用いて説明した形態とすることができる。
【0059】
図6(A)に例示したように、デッキ部5を成形する金型9Bは、表面成形部95と、この表面成形部95と対向する裏面成形部96と、表面成形部95と裏面成形部96の間の側面成形部97とを有している。金型9Bは、接続部98で上下に分離できる構造となっている。図6(B)に例示したように、表面成形部95は、デッキ部5の表面51側を成形し、裏面成形部96は、デッキ部5の裏面53側を成形し、側面成形部97は、デッキ部5の側面52を成形する。さらに、図6(A)に例示したように、この金型9Bの表面成形部95と裏面成形部96の内側には、水栓取付穴5aを成形するための水栓取付穴型94が設けられている。さらに、この金型9Bの表面成形部95の内面には、水栓取付穴型94の付近に凹部95aが形成され、側面成形部97の内面にも凹部97aが形成されている。この凹部95a、97aは、導水部7の端部7a、7bを保持可能な湾曲形状に設計されている。
【0060】
そして、この金型9Bの内部空間において、表面成形部95の凹部95aと側面成形部97の凹部97aに導水部7の端部7a、7bを保持し、表面成形部95の凹部95aと側面成形部97の凹部97aを結ぶように導水部7を傾斜させて配置する。凹部95a、97aによって導水部7の端部7a、7bを確実に保持することができ、導水部7の位置や傾斜角度等を精度良く仕上げることができる。そして、この金型9Bの内部に、例えばビニルエステル等の樹脂を供給して硬化させる。これによって、金型9Bを外した後、図6(B)に例示したように、金型9Bの内部形状と対応とした形状のデッキ部5を得ることができる。このデッキ部5は、金型9Bに設けられた凹部95a、97aに対応する位置に凸部P3、P4が形成されている。この凸部P3、P4間には、導水部7がデッキ部5の表面51側から側面52側に向かって斜めに傾斜した状態で埋設されている。そして、図6(C)に例示したように、このデッキ部5の凸部P3、P4を削り取り、表面51および側面52が面一になるように加工する。これによって、導水部7が、表面51側から側面52側に向かって斜めに傾斜した状態で埋設されたデッキ部5を成形することができる。
【0061】
そして、図6(D)に例示したように、デッキ部5とは別体とされた水受け部4は、立ち上がり壁部4aの上端部に水受け部4の外側に突出する水平部4bが設けられている。この水受け部4の水平部4bの上に成形したデッキ部5を載置して接続する。デッキ部5と水平部4bの接続には、接着剤等の材料を適宜使用することができる。このとき、デッキ部5の側面52の導水部7が、立ち上がり壁部4a側に現れるようにデッキ部5と水平部4bを接続する。導水部7が現れているデッキ部5の側面52は、立ち上がり壁部4aの内側に突出しないように接続することで、デッキ部5と水受け部4の間に段差が少なく、一体感が生まれ、カウンター1の見栄えが良好となる。そして、水栓取付穴5aから水栓3を嵌め込んでカウンター1を形成する。なお、図6(D)に例示したカウンター1は、図4に例示したカウンター1の形態に対応している。
【0062】
なお、本発明のカウンターおよびその製造方法は、以上の形態に限定されることはない。デッキ部や水受け部の材料は、樹脂の他、陶器や金属等の材料を適宜選択することができる。この場合、例えば、デッキ部や水受け部の成形後に、デッキ部の表面から立ち上がり壁部または立ち上がり壁部側に位置するデッキ部の側面へと通じる貫通孔を設け、この貫通孔の内部に導水部を配設することができる。また、カウンターの製造方法において金型を使用する場合には、水栓取付穴型を使用せず、成形後のデッキ部に開口部を設け、この開口部に水栓を配設することもできる。さらに、金型に樹脂を供給してデッキ部等を成形する際には、金型の上下を逆にして成形することもできる。
【0063】
カウンターの導水部は、水栓、デッキ部および水受け部の形態等を考慮して、適宜位置に1または2以上設けることができる。さらに、水受け部は、ステンレス製のシンク等であってもよい。さらに、カウンターには、台所に配設される流し台や、蛇口の代わりにシャワーヘッドを備えたドレッサータイプの台等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 カウンター
3 水栓
4 水受け部
4a 立ち上がり壁部
5 デッキ部
7 導水部
71 筒体
8 導水性材料
9A 9B 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキ部と、
このデッキ部の上に配設された水栓と、
前記デッキ部から凹状に窪み、立ち上がり壁部が形成され、前記水栓からの水を受水可能な水受け部と
を備えたカウンターであって、
前記水栓の付近の前記デッキ部の表面から、前記立ち上がり壁部または前記立ち上がり壁部側に位置する前記デッキ部の側面へと通じる導水部が、前記立ち上がり壁部側へ向かって斜め下方向に傾斜して設けられていることを特徴とするカウンター。
【請求項2】
前記導水部は、中空部を有する筒体によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカウンター。
【請求項3】
前記筒体の中空部には、導水性材料が挿入されていることを特徴とする請求項2に記載のカウンター。
【請求項4】
前記導水部は、導水性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカウンター。
【請求項5】
前記導水部は、前記水栓の付近の前記デッキ部の表面から、前記立ち上がり壁部または前記立ち上がり壁部側に位置する前記デッキ部の側面へと通じる貫通孔の内部に導水性材料が充填されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカウンター。
【請求項6】
前記導水性材料は、中空糸繊維束であることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のカウンター。
【請求項7】
前記デッキ部および前記水受け部が樹脂製であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のカウンター。
【請求項8】
樹脂製のデッキ部と、
このデッキ部の上に配設された水栓と、
前記デッキ部から凹状に窪み、立ち上がり壁部が形成され、前記水栓からの水を受水可能な樹脂製の水受け部と
を備え、前記水栓の付近のデッキ部から前記水受け部の立ち上がり壁部へと通じる導水部が立ち上がり壁部側へ向かって斜め下方向に傾斜して設けられているカウンターの製造方法であって、
前記デッキ部の表面側を成形するデッキ部型と、このデッキ部型と接続し、水受け部の表面側を成形する水受け部型とが、前記デッキ部および前記水受け部の裏面側を成形する裏面型と対向している金型の内部空間において、前記デッキ部型の内面から前記水受け部の立ち上がり壁部を成形する前記水受け部型の内面へ向かって前記導水部を傾斜させて配置した後、前記金型の内部空間に樹脂を供給して前記デッキ部および前記水受け部を成形する工程を含むことを特徴とするカウンターの製造方法。
【請求項9】
前記金型は、前記デッキ部型と前記裏面型の間に水栓取付穴型が配設されており、この水栓取付穴型の付近の前記デッキ部型の内面から前記水受け部の立ち上がり壁部を成形する前記水受け部型の内面へ向かって前記導水部を傾斜させて配置することを特徴とする請求項8に記載のカウンターの製造方法。
【請求項10】
樹脂製のデッキ部と、
このデッキ部の上に配設された水栓と、
前記デッキ部から凹状に窪み、立ち上がり壁部が形成され、前記水栓からの水を受水可能な水受け部と
を備え、前記デッキ部は、前記水栓の付近の表面から、前記水受け部の立ち上がり壁部側に位置する前記デッキ部の側面へと通じる導水部が前記側面側へ向かって斜め下方向に傾斜して設けられているカウンターの製造方法であって、
(1)前記デッキ部を成形する金型の内部に前記導水部を配置した後、樹脂を供給して、前記導水部が前記デッキ部の表面から前記側面へと向かって斜めに傾斜して通じている前記デッキ部を成形する工程と、
(2)前記工程(1)で成形された前記デッキ部の側面の前記導水部が前記水受け部の立ち上がり壁部側に現れるように、前記水受け部の立ち上がり壁部の上端部に前記デッキ部を接続する工程と、を含むことを特徴とするカウンターの製造方法。
【請求項11】
前記金型は、前記デッキ部の表面側を成形する表面成形部と、この表面成形部と対向し、前記デッキ部の裏面側を成形する裏面成形部と、前記デッキ部の側面を成形する側面成形部とを有し、
前記工程(1)は、前記金型の内部空間において、前記表面成形部の内面から前記側面成形部の内面へ向かって前記導水部を傾斜させて配置した後、前記金型の内部空間に樹脂を供給することを特徴とする請求項10に記載のカウンターの製造方法。
【請求項12】
前記金型は、前記表面成形部と前記裏面成形部との間に水栓取付穴型が配設されており、この水栓取付穴型の付近の前記表面成形部の内面から前記側面成形部の内面へ向かって前記導水部を傾斜させて配置することを特徴とする請求項11に記載のカウンターの製造方法。
【請求項13】
前記導水部として、中空部を有する筒体を配置することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載のカウンターの製造方法。
【請求項14】
前記筒体の中空部に導水性材料を挿入する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載のカウンターの製造方法。
【請求項15】
前記導水部として、導水性材料を配置することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載のカウンターの製造方法。
【請求項16】
前記導水性材料は、中空糸繊維束であることを特徴とする請求項14または15に記載のカウンターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122312(P2012−122312A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283566(P2010−283566)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】