説明

カチオン硬化型インクによる印刷方法

【課題】柔軟性に優れ、しわの発生が改良されたカチオン硬化型インクによる印刷方法を提供すること。
【解決手段】光酸発生剤、光重合性化合物を含むカチオン硬化型組成物からなるインクを記録材料に印刷するカチオン硬化型インクによる印刷方法において、印刷したインクの膜厚が15μm以下で、インクを硬化するための光源の消費電力が1kW未満であることを特徴とするカチオン硬化型インクによる印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン硬化型インクによる印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題からインク分野では水系化、紫外線硬化性インク化が注目されている。水系インクはインク非吸収性基材では使用困難で、乾燥に大きなエネルギーと時間がかかる。一方、紫外線硬化性インクは無溶剤化が可能で、省エネルギー、工数削減が達成できる。
【0003】
従来の印刷機は高圧水銀灯など消費電力の大きい光源を用いていた。高照度のエネルギーを当てることにより、高速で硬化し、特にパッケージ用途では次工程へ短時間で移行できる。パッケージ用途では、印字後、包装のために折り曲げたり、シュリンクフィルムを用いる場合は収縮させる。その為に、印字膜はできるだけ薄膜であることが好ましい。しかしながら、ラジカル硬化型インクでは薄膜にすることで酸素による重合阻害が著しく大きくなり、その為より強力な光源を用いたり、開始剤を増量したりする必要があった。これに対し、カチオン硬化型インクを用いることで、薄膜化による重合阻害はなく、高い硬化性が得られる。
【0004】
しかしながら、カチオン硬化型インクを用いる印刷において、従来の高圧水銀灯を用いると濃度が十分上がらなかったり、光沢が落ちるという課題を抱えていた。本発明では、従来の高圧水銀灯よりも低出力の消費電力1kW未満の光源を用いることにより、薄膜で十分な硬化性が得られ、高光沢の印刷物を得ることができた。
【0005】
更にパッケージ用のフィルム材料(ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等)に対し、密着性が悪いという問題点がある。一方、特に多色印刷時に硬化のために高消費電力の光源が必要という問題、更には発熱によるフィルム材料の収縮、変形等の課題がある。かかる問題、課題に対し、これを改良する技術が発表されている(例えば、特許文献1、2参照。)が、その改良の程度は十分とは言えない。また紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録装置において、集光光源として低圧水銀灯を用いているが、やはり十分な改良とは言えない(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2004−269690号公報
【特許文献2】国際公開第00/031189号パンフレット
【特許文献3】特開2005−103854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は柔軟性に優れ、しわの発生が改良されたカチオン硬化型インクによる印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記構成により達成された。
【0008】
1.光酸発生剤、光重合性化合物を含むカチオン硬化型組成物からなるインクを記録材料に印刷するカチオン硬化型インクによる印刷方法において、印刷したインクの膜厚が15μm以下で、インクを硬化するための光源の消費電力が1kW未満であることを特徴とするカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【0009】
2.前記インクの膜厚において、1色あたりの最大のインクの膜厚が5μm以下であることを特徴とする前記1に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【0010】
3.前記光酸発生剤がスルホニウム塩であることを特徴とする前記1または2に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【0011】
4.前記光重合性化合物がオキシラン化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のいずれかであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【0012】
5.前記光源が210〜280nmに最高照度を持つことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【0013】
6.前記印刷がフレキソ印刷方式またはグラビア印刷方式であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、柔軟性に優れ、しわの発生が改良されたカチオン硬化型インクによる印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0016】
従来の紫外線硬化型インクを用いる印刷装置は、インク硬化用光源に高圧水銀灯、メタルハライドランプ、無電極ランプなど高消費電力の光源を用いている。また、消費電力の少ないものを用いる場合や電子線による効果の場合、不活性ガス置換等が必要となり、装置が高価になったり、大規模な装置になるというような課題があった。更に消費電力が大きいものは発熱量が多く、熱により収縮・変形しやすいフィルム基材では熱対策を十分する必要があった。
【0017】
本発明は、光酸発生剤、光重合性化合物を含むカチオン硬化型組成物からなるインクを記録材料に印刷するカチオン硬化型インクによる印刷方法において、印刷したインクの膜厚が15μm以下で、インクを硬化するための光源の消費電力が1kW未満であることを特徴とする。なお、インクの膜厚は薄い方が望ましいが、1μmを下限とするのが望ましい。また消費電力は50kW以上が好ましく、50kW以下では、生産性が低減する。
【0018】
そして、インクの膜厚が15μm以下において、1色あたりのインク膜厚は5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.2〜3μmが好ましい。0.2μmより薄いと一定の濃度を得るために顔料等の色材を高濃度で含有させる必要があり、インクの安定性が下がる。
【0019】
本発明において、光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0020】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。
【0021】
特に、スルホニウム塩が感度、保存安定性のバランスの点で好ましい。スルホニウム塩系光酸発生剤の具体例を以下に示す。
【0022】
【化1】

【0023】
上記化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Vol.71 No.11,1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)に記載の光開始剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0024】
光酸発生剤の添加量は0.5〜10質量%が好ましく、0.5質量%未満では硬化性が劣化し、10質量%を超えるとインクの保存安定性が劣化する。
【0025】
本発明において、光重合性化合物としては各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用できる。例えば、特開平6−9714号公報、特開2001−31892号公報、同2001−40068号公報、同2001−55507号公報、同2001−310938号公報、同2001−310937号公報、同2001−220526号公報に例示されているオキシラン化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0026】
オキシラン化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0027】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0028】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0029】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
これらのエポキシドの内、速硬化性を考慮すると芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0031】
また、本発明においてはAMES及び感作性などの安全性の観点から、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方を含有することが好ましい。エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0032】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物は、特開2001−220526号公報、同2001−310937号公報に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。例えば、東亞合成社製OXT221、OXT121、RSOX、HQOX、BPOX、OXT212、OXT101、OXT213などが挙げられるが、この限りではない。
【0033】
更に、本発明においては、あらゆる公知のビニルエーテル化合物を用いることが好ましい。
【0034】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0035】
これらのビニルエーテル化合物の内、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明の特に好ましい構成としては、光重合性化合物として、オキセタン化合物を30〜95質量%、オキシラン化合物を5〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することで、前記硬化性及び吐出安定性ともに更に向上する。
【0037】
本発明に係るカチオン硬化型組成物には顔料を用いることができる。有機顔料及び/または無機顔料等の種々のものが使用できる。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン及び酸化アンチモン等の白色顔料、アニリンブラック、鉄黒及びカーボンブラック等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー及びパーマネントイエロー等の黄色顔料、クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ及びインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料、酸化鉄、パーマネントブラウン及びパラブラウン等の褐色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトファーストレッド及びキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー及びインジゴ等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン及びポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料の他、各種螢光顔料、金属粉顔料、体質顔料等が挙げられる。
【0038】
本発明において、顔料は十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、カチオン硬化型組成物中に3〜50質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0039】
本発明に係るカチオン硬化型組成物には、上記成分の他、用途に応じてカチオン硬化型組成物中、50質量%までの量で以下の材料を加えることができる。
【0040】
印刷インキ、缶、プラスチック、紙、木材等のコーティング塗料及び接着剤用途の場合は、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、処理剤、粘度調節剤、有機溶剤、潤滑性付与剤及び紫外線遮断剤のような不活性成分を配合することができる。無機充填材の例としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化マグネシウム及び酸化マンガン等の金属/非金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化第一鉄及び水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム及び硫酸カルシウム等の塩類、二酸化ケイ素等のケイ素化合物、カオリン、ベントナイト、クレー及びタルク等の天然顔料、天然ゼオライト、大谷石、天然雲母及びアイオナイト等の鉱物類、人工雲母及び合成ゼオライト等の合成無機物、並びにアルミニウム、鉄及び亜鉛等の各種金属等が挙げられる。
【0041】
これらの中には前記顔料と重複するものもあるが、これらは必要に応じて前記必須成分の顔料に加え、組成物に充填材として配合させることもできる。潤滑性付与剤は得られる塗膜の潤滑性を向上させる目的で配合されるものであり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックス等のワックス類を挙げることができる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸及びロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂並びに石油樹脂等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、様々な記録材料にカールや波打ち等なく画像を形成するために、1時間あたりの消費電力が1kW未満である光源によりインクを硬化することを特徴とする。1時間あたりの消費電力が1kW未満である光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード(LED)などがあるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明においては、様々な記録材料にエネルギー効率よく画像を形成するために、210〜280nmに最高照度を持つ光源を用いることを特徴とする。210〜280nmに最高照度を持つ光源の例としては、冷陰極管、熱陰極管、ダイヤモンド薄膜を用いたLEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0044】
また、本発明においては、様々な記録材料にエネルギー効率よく画像を形成するために、紫外線を発生する発光ダイオード(LED)を複数個配列した光源により硬化することを特徴とする。紫外線を発生する発光ダイオード(LED)は、近年消費電力を抑えつつ出力が飛躍的に向上しており、好ましい。
【0045】
上記により高精細な画像を形成でき、且つ記録材料のカールや波打ち等も実用上許容レベル内に収められる。
【0046】
本発明においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0047】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射はインク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらのいずれの照射方法も用いることができる。
【0048】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、且つ全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0049】
一般にフレキソ印刷とは、フレキシブルなゴムまたは樹脂からなる凸版と水またはアルコールを主とする溶剤系の蒸発乾燥型のインクを用いた印刷方法である。被印刷体は紙の他にポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの延伸、または未延伸樹脂フィルムなど吸収性、非吸収性のフィルムの印刷に多用されていた。一方、ドラム型の印刷機(単胴型、共通圧胴型)は、中央の大きい単一の圧胴の周囲に4〜6個の印刷ユニットを設けたもので、長尺帯状の被印刷体は圧胴に巻かれた状態で走行・印刷される特徴がある。従って、薄くて伸縮しやすいプラスチックフィルムやアルミニウム箔などの印刷にも適するものである。
【0050】
一方、グラビア印刷は凹版印刷の1種で、細かい凹点(グラビアセル)内に詰められたインクの量によって濃淡を表現する。製版方式によって、コンベンショナルグラビア、網グラビア、電子彫刻グラビアの3つに大別される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例1
《分散液Aの調製》
以下の組成で顔料を分散した。以下2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃でホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
【0053】
PB822(味の素ファインテクノ社製、分散剤) 9部
OXT−221(東亞合成社製) 71部
室温まで冷却した後、これに下記顔料20部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて下記時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0054】
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製、#52) 10時間
顔料2:Pigment Blue 15:4(山陽色素株式会社製、シアニンブルー4044) 6時間
顔料3:Pigment Yellow 150(LANXESS社製、E4GN−GT CH20003) 10時間
顔料4:Pigment Red 122(大日精化社製、特注) 10時間
顔料5:酸化チタン(アナターゼ型:粒径0.2μm) 10時間
《分散液Bの調製》
以下の組成で顔料を分散した。以下2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃でホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
【0055】
PB822(味の素ファインテクノ社製、分散剤) 9部
OXT−221(東亞合成社製) 71部
室温まで冷却した後、これに下記顔料20部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて下記時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0056】
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製、#52) 10時間
顔料2:Pigment Blue 15:4(大日精化社製、ブルーNo.32)
6時間
顔料3:Pigment Yellow 180(大日精化社製、特注) 10時間
顔料4:Pigment Red 19(大日精化社製、特注) 10時間
顔料5:酸化チタン(アナターゼ型:粒径0.2μ) 10時間
《インク組成物の調製》
表1〜4に記載のインク組成1〜4でインクを作製し、ロキテクノ社製PP3μmディスクフィルターで濾過を行った。各インク粘度は表に示す通りである。なお、表中の各成分の数字は質量%である。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
表中、インクの記号は下記の通り。
【0062】
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク。
【0063】
《画像形成》
JIS K 5600で定めるバーコーターを用いて、コーター用のバーは第一理化社製のNo.6(膜厚=6μm)及びNo.3(膜厚=3μm)を用い、合成紙(ユポコー尾レーション社製 ユポFG)支持体上にインク塗布し、その後、硬化した。複数色を重ねる場合、1色毎に硬化した。
【0064】
光源A:高圧水銀ランプVZero085(INTEGRATION TECHNOLOGY社製、3kW)
光源B:低圧水銀灯(岩崎電気社製、特注品、200W)
光照射は光源の下を300mm/secの速度で試料を通過させた。
【0065】
ラジカル硬化型インクであるインク組成1を用い、低圧水銀灯を用いた場合、表面のべたつきは残ったままだった。
【0066】
表5のようにNo.1〜10の画像を形成した。
【0067】
《評価》
(柔軟性の評価)
膜厚10μmになるように塗布し、硬化させたサンプルを3mmφの棒に巻きつけた時、更に折り曲げた時のヒビを評価。
【0068】
◎:折り曲げてもヒビが入らない
○:折り曲げるとヒビが入るが、3mmφ棒に巻きつけた時はヒビが入らない
△:3mmφの棒に巻きつけた時に、僅かにヒビが入る
×:3mmφ棒に巻きつけた時に、ヒビが入る。
【0069】
(しわの評価)
基材の収縮などによるしわを目視で評価した。
【0070】
○:しわの発生なし
△:僅かにしわがある
×:基材のゆがみが確認できる。
【0071】
(凹凸感の評価)
塗布部と未塗布部の凹凸感を目視で評価した。
【0072】
○:凹凸感はない、あるいは気にならない
△:凹凸感が僅かにある
×:凹凸が気になる。
【0073】
【表5】

【0074】
表5より、カチオン硬化型インクであって、インク膜厚が15μm以下で、消費電力200Wの光源Bを用いた本発明のNo.8、9、10は、柔軟性、しわの評価、更には凹凸感の評価のいずれにおいても、比較に対して優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光酸発生剤、光重合性化合物を含むカチオン硬化型組成物からなるインクを記録材料に印刷するカチオン硬化型インクによる印刷方法において、印刷したインクの膜厚が15μm以下で、インクを硬化するための光源の消費電力が1kW未満であることを特徴とするカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【請求項2】
前記インクの膜厚において、1色あたりの最大のインクの膜厚が5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【請求項3】
前記光酸発生剤がスルホニウム塩であることを特徴とする請求項1または2に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【請求項4】
前記光重合性化合物がオキシラン化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【請求項5】
前記光源が210〜280nmに最高照度を持つことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。
【請求項6】
前記印刷がフレキソ印刷方式またはグラビア印刷方式であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン硬化型インクによる印刷方法。

【公開番号】特開2007−118411(P2007−118411A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314265(P2005−314265)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】