説明

カチオン電着塗料組成物、電着浴の管理方法および電着塗装システム

【課題】 自動車などの大型被塗物の塗装における、電着塗料組成物の顔料沈降を解消する再分散性困難の問題を解決すること。
【解決手段】 顔料内包樹脂粒子を含有するカチオン電着塗料組成物、ならびにこれを用いた電着浴の管理方法および電着塗装システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再分散性に優れる、カチオン電着塗料組成物、ならびにそれを用いた電着浴の管理方法および電着塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬させ、電圧を印加することにより行なわれる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。
【0003】
一般に電着塗料組成物には、多量の防錆顔料および体質顔料が、防錆効果および塗膜物性の向上を目的として加えられている。これらの顔料は、塗料組成物中において水性媒体中に分散した状態にある。これらの顔料は一般に無機顔料であって比重が高く、そのため電着塗料組成物中において沈降が生じやすい。例えば無機顔料を含む従来の電着塗料組成物は、ほんの数時間の静置によって無機顔料が沈降する。そして沈降した顔料は強固に凝集するため、再び攪拌を行なっても元の分散状態に戻すことは非常に困難である。このような凝集を防ぐため、電着塗料組成物を含む電着槽および補給タンクは常時攪拌が必要となり、これが塗装業者の設備およびエネルギー費用における負担となっている。
【0004】
特開平6−73314号公報(特許文献1)には、ラジカル重合性モノマーを共重合して得られる架橋微小樹脂粒子を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が記載されている。この塗料組成物は、酸化チタンおよびカオリンなどの無機顔料を30重量%以上含むものである。電着塗料組成物中に無機顔料が多く含まれる場合は沈降が生じ易く、また無機顔料の沈降物は強固に凝集するため、再分散は非常に困難となる。
【0005】
また特開平6−340832号公報(特許文献2)には、電着塗料の樹脂固形分100重量部に対して、球状の高純度アモルファスシリカ粉を0.1〜40重量部含有することを特徴とする電着塗料組成物が記載されている。この球状の高純度アモルファスシリカ粉を用いることによって、電着塗料浴中におけるチタン白や防錆性顔料などの沈降を防止できると記載されている。しかしこのような塗料組成物は、放置等により一旦顔料等が沈降した場合に再分散させるのが困難であるという欠点がある。
【0006】
特開平9−202995号公報(特許文献3)には、電気絶縁縁性分散媒中に、無機蛍光体を包含した樹脂粒子を分散させたことを特徴とする蛍光体電着液が記載されている。この蛍光体電着液は、ディスプレイパネルの蛍光体層形成用の電着液であることが記載されており、そしてこの蛍光体電着液は帯電安定性に優れるなどといったこの分野に特有の性能を有するものである。そのため、本発明のカチオン電着塗料組成物とは、用いられる分野が異なるものである。
【0007】
また特開2002−121417号公報(特許文献4)には、単量体組成物および色剤からなる着色組成物を重合してなる着色微粒子が水性媒体中に分散している着色微粒子エマルジョンが記載されている。この着色微粒子エマルションは、色濃度の高さおよび衝撃安定性などが求められるインクジェット用インクなどの分野で用いることができるエマルションであり、本発明のカチオン電着塗料組成物とは、用いられる分野が異なるものである。
【0008】
【特許文献1】特開平6−73314号公報
【特許文献2】特開平6−340832号公報
【特許文献3】特開平9−202995号公報
【特許文献4】特開2002−121417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、顔料沈降を解消する再分散性困難の問題を解決するものであり、その目的とするところは、再分散性に優れる、カチオン電着塗料組成物、ならびにそれを用いた電着浴の管理方法および電着塗装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、顔料内包樹脂粒子を含有する、カチオン電着塗料組成物を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0011】
上記カチオン電着塗料組成物は、さらにカチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むのが好ましい。
【0012】
また、上記顔料内包樹脂粒子が着色された樹脂粒子であるのが好ましい。
【0013】
さらには、上記顔料内包樹脂粒子の平均粒径が0.1〜10.0μmであるのが好ましい。
【0014】
さらには、上記カチオン電着塗料組成物が自動車塗装用であるのが好ましい。
【0015】
さらに本発明は、電着浴の管理方法も提供する。電着浴の管理方法として、電着塗装時には、電着浴の一部を取りだしてポンプで電着浴中に戻すことにより電着浴を循環攪拌し、電着塗装を行っていないときはこの循環用ポンプを停止する電着浴管理方法であって、電着浴中の電着塗料組成物が上記カチオン電着塗料組成物である、電着浴の管理方法が含まれる。
【0016】
更に本発明は、電着塗装システムも提供する。電着塗装システムとして、上記カチオン電着塗料組成物を含む、被塗物を電着塗装する電着浴を有する電着塗装システムであって、この電着浴における電着浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替えることによりエネルギーが節約される、電着塗装システムが含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、電着塗料組成物を長時間静置させた場合に生じる沈殿物の凝集の度合いが低減されている。そのため、長時間静置させた後であっても再分散が容易であり、かつこの生じた沈殿物は弱いせん断力の再攪拌によっても容易に再分散させることができる。従って、本発明の電着塗料組成物は、貯蔵における常時攪拌、および電着塗装における電着槽の常時攪拌を必要せず、攪拌を省略したり断続的に攪拌させたりすることができる。本発明の電着塗料組成物を用いることにより、電着塗装における塗装コストを削減することができる。この電着塗料組成物は、自動車などの大型被塗物の電着塗装における塗装コスト削減に特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
電着塗料組成物
本発明のカチオン電着塗料組成物は、水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、有機溶媒および顔料内包樹脂粒子を含有する。
【0019】
顔料内包樹脂粒子
本発明のカチオン電着塗料組成物に用いられる顔料内包樹脂粒子は、樹脂成分によって顔料成分が内包された構造を有するものである。この顔料内包樹脂粒子はいわゆるコア・シェル構造を有する。顔料成分がコア部にそして樹脂成分がシェル部に該当し、樹脂粒子中に顔料成分が内包された構造を有する。そして本発明で用いられる顔料内包樹脂粒子は、内包される顔料成分全てが樹脂成分によって被覆される必要はなく、顔料の一部が被覆されていない状態であってもよい。すなわち、上記のようなコア/シェル構造を有していなくてもよい。本発明で用いられる顔料内包樹脂粒子は、顔料の凝集性が低減されており、この顔料内包樹脂粒子が沈降した後に再び攪拌した場合において、再分散が容易となる程度に被覆されていればよいからである。
【0020】
本発明の電着塗料組成物で用いられる顔料内包樹脂粒子において、内包される顔料成分は特に限定されず、例えば酸化チタン、カーボンブラック、べんがら、カオリン、タルク、クレー、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛などの無機顔料などが挙げられる。さらに、有機顔料を用いることもできる。これらの顔料成分は1種のみであってもよく、また2種以上の混合物であってもよい。
【0021】
本発明においては、顔料成分として、酸化チタン、カーボンブラックなどが内包された顔料内包樹脂粒子を用いるのが好ましい。これらの顔料成分は高い隠ぺい力を有し、本発明の用途に特に適しているからである。
【0022】
上記の顔料成分を内包する樹脂成分は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂(アクリル共重合樹脂も含む)、ビニル樹脂、オレフィン樹脂、芳香族樹脂などが挙げられる。
【0023】
顔料成分を内包する樹脂成分は、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂であるのが好ましい。これらを樹脂成分とする顔料内包樹脂粒子を含む電着塗料組成物は、物理的強度または塗膜外観などに優れるからである。
【0024】
これらの顔料内包樹脂粒子は、例えば樹脂成分がウレタン樹脂である場合は下記方法によって調製することができる:顔料を低粘度有機溶媒に予め分散させた分散液を調製する;この分散液にポリオール樹脂と多価イソシアネート化合物及び/又はウレタンプレポリマーとを混入する;得られた混合液を、乳化剤、保護コロイド剤を単独又は併用にて添加した水あるいはパラフィン系溶剤中に混入して乳化分散させる。このような調製方法は顔料内包樹脂粒子の製造方法の一例である。上記調製方法は、特開平5−230225号公報などに記載されている公知の調製方法である。
【0025】
本発明においては、平均粒径が下限0.1μm上限10.0μmである顔料内包樹脂粒子を用いるのが好ましい。上記下限は1.0μmであるのがより好ましく、また上記上限は6.0μmであるのがより好ましい。上記範囲の平均粒径を有する顔料内包樹脂粒子を用いることによって、得られる電着塗膜の平滑性をより高くすることができる。なお「平均粒径」とは、一般に粒子の粒度(粒径が粗いか細かいか)を表わすために用いられるものであり、重量50%に相当するメジアン径や算術平均径、表面積平均径、体積面積平均径などが使用される。本明細書に示す平均粒径は、レーザー法によって測定された値で示している。レーザー法とは、粒子を溶媒に分散させ、その分散溶媒にレーザー光線を当て、得られた散乱光を捕捉、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。
【0026】
上記顔料内包樹脂粒子は、着色された樹脂粒子であってもよい。着色された樹脂粒子を用いることによって、より隠ぺい力の高い電着塗料組成物を調製することができる。着色された樹脂粒子として、例えば染料などを用いて着色された樹脂粒子であってもよい。なおここでいう「着色された」とは、有彩色を有するものであるという狭義の意味ではなく、無彩色であって明度が低い色を有するものも含まれる。従って、灰色または黒色などの顔料内包樹脂粒子も、ここにいう「着色された樹脂粒子」に含まれる。
【0027】
顔料内包樹脂粒子の比重は0.95〜1.2の範囲であるのが好ましい。比重が1.2を超える場合は、貯蔵などによって顔料内包樹脂粒子が沈降した後の樹脂粒子の再分散性が低下する恐れがある。また比重が0.95未満である場合は、電着槽中において顔料内包樹脂粒子が塗料表面に浮上してしまう恐れがある。
【0028】
上記のような顔料内包樹脂粒子を用いることによって、再分散性の高い電着塗料組成物を調製することができる。また、これらの顔料内包樹脂粒子は、その粒子の表面が樹脂成分で内包されているため、電着塗膜においては、一般に使用される無機顔料と比べて塗膜表面に配向する傾向がある。樹脂成分が塗膜表面に配向することは、塗膜のグロス値に大きく影響する。そのため、このような顔料内包樹脂粒子を使用することにより、塗膜の表面粗度を損なうことなく、言いかえると塗膜の平滑性を保持しつつ、塗膜のグロス値を任意に調整することが可能となる。
【0029】
ところで、電着塗料組成物に含まれる顔料は、一般に、顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)に調製され、ペースト状態で顔料中に添加される。こうすることにより、電着塗料組成物に顔料を低濃度均一状態に分散させるのが容易となるからである。しかしながら、本発明の顔料内包樹脂粒子は既に樹脂によって被覆されているため、このペースト状に調製する工程を省略することができる。また、顔料内包樹脂粒子が既に溶媒中に分散されたエマルションの形態である場合には、このエマルションを直接電着塗料組成物に加えることもできる。これにより、電着塗料組成物の調製における工程が少なくなり、調製が容易となるという利点が得られる。
【0030】
なお、必要に応じて、上記顔料内包樹脂粒子を分散ペーストに調製してから加えてもよい。この分散ペーストは、下記する顔料分散ペーストと同様にして調製することができる。
【0031】
好ましい顔料内包樹脂粒子として、ラブコロール(大日精化工業社製)、アートパール(根上工業社製)、バーノック(大日本インキ化学工業社製)などが挙げられる。
【0032】
上記顔料内包樹脂粒子は、電着塗料組成物の塗料固形分に対して2.0〜50.0固形分重量%の範囲で含まれるのが好ましい。顔料内包樹脂粒子の含有量が2.0固形分重量%未満である場合は、十分な隠ぺい力が確保できない恐れがある。一方、含有量が50.0固形分重量%を超える場合は、塗膜外観または塗膜性能を低下させる恐れがある。
【0033】
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。このカチオン性エポキシ樹脂は、特開昭54−4978号、同昭56−34186号などに記載されている公知の樹脂でよい。
【0034】
カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部を、カチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0035】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
【0036】
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
【0037】
【化1】

【0038】
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
【0039】
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
【0040】
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
【0041】
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
【0042】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0043】
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
【0044】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0045】
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用して用いてもよい。
【0046】
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤で使用するポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれであってもよい。
【0047】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0048】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0049】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0050】
ブロック剤としては、通常使用されるε−カプロラクタムやブチルセロソルブ等を用いることができる。
【0051】
顔料
本発明の電着塗料組成物には通常用いられる顔料を含有させてもよい。但し、本明細書でいう「顔料」には、前述の顔料内包樹脂粒子は含まれない。そしてこれらの顔料の含有量は、再分散性を低下させない量に限定される。使用し得る顔料の例としては、通常使用される顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、さらにはカーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロンエロー、キナクリドンレッド、モノアゾレッド、ボリアゾレッド、またはベリレンレッド等の有機顔料等が挙げられる。
【0052】
上記顔料が電着塗料組成物中に含まれる場合の含有量は、上記のとおり再分散性を低下させない量に限定される。具体的にはこれらの顔料は、電着塗料組成物の塗料固形分に対して5.0重量%以下の範囲で含まれ得る。顔料濃度が5.0重量%を超える場合は、電着組成物の再分散性および得られる塗膜の水平外観が劣ることとなる。
【0053】
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0054】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂ワニスと共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。
【0055】
一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂ワニスと顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
【0056】
本発明の電着塗料組成物は、上記成分の他に、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩を触媒として含んでもよい。これらは、硬化剤のブロック剤解離のための触媒として作用し得る。触媒の濃度は、電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂と硬化剤合計の100固形分質量部に対して0.1〜6質量部であるのが好ましい。
【0057】
電着塗料組成物の調製
本発明の電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料内包樹脂粒子、及び必要に応じた顔料分散ペーストおよび触媒を水性媒体中に分散することによって調製できる。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂のエマルション(メインエマルション)の分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0058】
使用される中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して10〜25mg当量、好ましくは15〜20mg当量である。中和酸の量が10mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、著しく安定性に欠ける状態となり、25mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
【0059】
カチオン性エポキシ樹脂、及び硬化剤としてブロックイソシアネートを配合し、水性媒体にこれらを分散させる方法として、カチオン性エポキシ樹脂にブロックイソシアネートを溶液状態で混合してメインエマルションとする方法がある。
【0060】
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂と、ブロックイソシアネート硬化剤との固形分質量比(エポキシ樹脂/硬化剤)で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
【0061】
有機溶媒は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶剤として必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
【0062】
塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0063】
塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
【0064】
本発明の電着塗料組成物は被塗物に電着塗装され、電着塗膜を形成する。被塗物としては導電性のあるものであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アルミニウム板及びこれらを表面処理したもの、これらの成型物等を挙げることができる。
【0065】
電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
【0066】
カチオン電着塗料組成物の電着過程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
【0067】
電着塗膜の膜厚は、好ましくは5〜25μm、より好ましくは20μmとする。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分であり、25μmを超えると、塗料の浪費につながる。
【0068】
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼き付けることにより硬化させる。
【0069】
電着浴の管理方法、電着塗装システム
本発明の電着塗料組成物は、電着浴の攪拌を停止しても、攪拌の停止により生じる沈降物の再攪拌が容易であるという利点を有する。そのため、非塗装時には電着浴の攪拌を停止しても問題がない。ただし、電着塗装時には塗膜析出中に発生する反応ガスを除去したり、塗膜析出時に発生する反応熱を拡散させたりする意味から槽内を攪拌させることが好ましい。従来の電着塗料組成物においては、非塗装時にも電着浴の攪拌を実施することが必要であるが、本発明の電着塗料組成物は夜間、休日等の非塗装時に攪拌を停止することが可能なため、電着浴の攪拌に要する電気エネルギーコストを大幅に減少させることが可能となる。
【0070】
電着浴の攪拌は一般に、図1に示すように、ポンプを利用して、電着浴の一部をとって、電着浴に戻すことにより行っているのが一般的である。図中、電着浴1には、オーバーフロー槽2が付いていて、電着塗料組成物が電着浴槽およびオーバーフロー槽の両方に存在する。電着浴1の一部およびオーバーフロー槽の一部もポンプ3に送られ、フィルター4を通って電着浴内に戻されるが、その際電着浴1内のライザー5のノズル6より、噴出して攪拌を行なう。しかし、もちろんこの方法に限定されるものではない。
【0071】
本発明の電着塗料組成物を用いる電着塗装システムにおいては、例えば図2に記載するように、攪拌のための羽(攪拌羽11)を電着浴に挿入する方法が考えられる。この場合には、従来、用いていた図1に記載する循環攪拌システムを利用する必要はない。従って、循環攪拌のための装置等が攪拌羽のみでよく、設備費やエネルギーコストの大幅な削減が可能となる。攪拌自体は、前述のように、反応ガスの除去や、反応熱の拡散のために必要であるが、本発明の電着塗料組成物を用いる場合は電着塗装時の攪拌羽による簡単な攪拌で十分である。しかも再攪拌性に優れる本発明の電着塗料組成物を用いると、非塗装時に攪拌を停止することができるので、エネルギーコストの削減に大きく寄与する。
【実施例】
【0072】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表わす。
【0073】
製造例1 ブロックイソシアネート硬化剤の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(コロネートHX:日本ポリウレタン(株)製)199部とメチルイソブチルケトン32部、およびジブチルスズジラウレート0.03部を秤りとり、攪拌、窒素をバブリングしながら、メチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより1時間かけて滴下した。温度は50℃からはじめ70℃まで昇温した。そのあと1時間反応を継続し、赤外線分光計によりNCO基の吸収が消失するまで反応させた。その後n−ブタノール0.74部、メチルイソブチルケトン39.93部を加え、不揮発分80%とした。
【0074】
製造例2 メインエマルション(カチオン性エポキシ樹脂を含むエマルション)の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管および滴下ロートを取り付けたフラスコに、2,4/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20重量%)71.34部と、メチルイソブチルケトン111.98部と、ジブチルスズジラウレート0.02部を秤り取り、攪拌、窒素バブリングしながらメタノール14.24部を滴下ロートより30分かけて滴下した。温度は室温から発熱により60℃まで昇温した。その後30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル46.98部を滴下ロートより30分かけて滴下した。発熱により70〜75℃へ昇温した。30分間反応を継続した後、ビスフェノールAプロピレンオキシド(5モル)付加体(三洋化成工業(株)製BP−5P)41.25部を加え、90℃まで昇温し、IRスペクトルを測定しながらNCO基が消失するまで反応を継続した。
【0075】
続いてエポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)製YD−7011R)475.0部を加え、均一に溶解した後、130℃から142℃まで昇温し、MIBKとの共沸により反応系から水を除去した。125℃まで冷却した後、ベンジルジメチルアミン1.107部を加え、脱メタノール反応によるオキサゾリドン環形成反応を行った。反応はエポキシ当量1140になるまで継続した。
【0076】
その後100℃まで冷却し、N−メチルエタノールアミン24.56部,ジエタノールアミン11.46部およびアミノエチルエタノールアミンケチミン(78.8%メチルイソブチルケトン溶液)26.08部を加え、110℃で2時間反応させた。その後エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル20.74部とメチルイソブチルケトン12.85部を加えて希釈し、不揮発物82%に調節した。数平均分子量(GPC法)1380、アミン当量94.5meq/100gであった。
【0077】
別の容器にイオン交換水145.11部と酢酸5.04部を秤り取り、70℃まで加温した上記アミン変性エポキシ樹脂320.11部(固形分として75.0部)および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤190.38部(固形分として25.0部)の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整し、メインエマルションを製造した。
【0078】
製造例3 顔料分散樹脂ワニスの製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコに、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J)382.20部と、ビスフェノールA111.98部を秤り取り、80℃まで昇温し、均一に溶解した後、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1.53部を加え、170℃で2時間反応させた。140℃まで冷却した後、これに2−エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネート(不揮発分90%)196.50部を加え、NCO基が消失するまで反応させた。これにジプロピレングリコールモノブチルエーテル205.00部を加え、続いて1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール408.00部、ジメチロールプロピオン酸134.00部を添加し、イオン交換水144.00部を加え、70℃で反応させた。反応は酸価が5以下になるまで継続した。得られた樹脂ワニスはイオン交換1150.50部で不揮発分35%に希釈した。
【0079】
製造例4 顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散樹脂ワニスを120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン72.0部、ジブチルスズオキシド8.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水184部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
【0080】
実施例1
顔料内包樹脂粒子(粒径3.0μm、樹脂成分:アクリル、大日精化工業社製ラブコロールシリーズ)25部を秤量した。これと、イオン交換水489部と、製造例2のメインエマルション 486部とを混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の塗料固形分は20.0%であった。なお、本明細書中における塗料固形分の測定は、JIS K5601に記載される電着塗料の試験条件(180℃で30分間加熱)に準じて行われた。
【0081】
実施例2
顔料内包樹脂粒子(粒径3.0μm、樹脂成分:アクリル、大日精化工業社製ラブコロールシリーズ)25部を秤量した。これと、イオン交換水489部と、製造例2のメインエマルション 486部とを混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の塗料固形分は20.0%であった(実施例1と同様に測定)。
【0082】
実施例3
顔料内包樹脂粒子(粒径2.0μm、樹脂成分:ウレタン、根上工業社製アートパールシリーズ)25部を秤量した。これと、イオン交換水489部と、製造例2のメインエマルション 486部とを混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の塗料固形分は20.0%であった(実施例1と同様に測定)。
【0083】
実施例4
顔料内包樹脂粒子(粒径6.0μm、樹脂成分:ウレタン、根上工業社製アートパールシリーズ)25部を秤量した。これと、イオン交換水489部と、製造例2のメインエマルション 486部とを混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の塗料固形分は20.0%であった(実施例1と同様に測定)。
【0084】
比較例1
製造例4の顔料分散ペースト63部と、イオン交換水503部と、製造例2のメインエマルション 500部とを混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった(実施例1と同様に測定)。
【0085】
上記実施例および比較例で得られたカチオン電着塗料組成物およびそれらを電着塗装して得られた電着塗膜について、以下の方法により評価を行なった。
【0086】
再分散性試験
上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料組成物85gを、100ml試験管に入れて96時間静置し、沈殿を生成させた。次いで、沈殿物が完全に分散するまで、試験管を上下方向に180度回転させた。この回転させた回数を測定し、以下の基準で評価した。
【0087】
【表1】

【0088】
水平外観
未処理リン酸亜鉛鋼板に、上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料を乾燥膜厚20μmになるように電着し、水洗後、160℃で10分間焼付けた。得られた硬化電着塗膜のRaを、JIS−B0601に準拠し、評価型表面粗さ測定機(Mitsutoyo社製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定した。2.5mm幅カットオフ(区画数5)を入れたサンプルを用いて7回測定し、上下消去平均によりRa値(μm)を得た。結果を表1に示す。なお、上記のRaとは、粗さ曲線の中心線平均粗さであり、JIS B 0601において規定されるパラメーターである。この値が小さい程、表面の凹凸が少なく表面状態が良好であることを示す。
【0089】
60°グロス
60°グロス JIS K−5400 7.6(1990)の60°グロスに従い、グロスメーター(BYK−Gardner社製、No.4460)を用いて測定した。塗膜の光沢の程度を、入射角と受光角とがそれぞれ60°のときの反射率を測定した。鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表す。
【0090】
端面防錆性
リン酸亜鉛処理した冷延鋼板に、上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料を、リン酸亜鉛処理したカッターナイフ刃に、乾燥塗膜の膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で10分間焼付けて、硬化塗膜を形成した。次いで、得られた塗装されたカッターナイフ刃に対して、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験を168時間行なった。この試験によって刃先に生じた錆の個数を数えて、下記の基準で評価を行った。
【0091】
【表2】

【0092】
上記評価結果を下記表1に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
下記表1に示されるとおり、本発明の電着塗料組成物は、比較例の電着塗料組成物と比較して、再分散性および被塗物端面部の防錆性に優れ、かつ良好な仕上り外観を有する塗膜を得ることができるものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、電着塗料組成物を長時間静置させた場合に生じる沈殿物の凝集の度合いが低減されており、そのため長時間静置させた後であっても再分散が容易であり、かつこの生じた沈殿物は弱いせん断力の再攪拌によっても容易に再分散させることができる。これにより、本発明の電着塗料組成物は、貯蔵における常時攪拌、および電着塗装における電着槽の常時攪拌を必要せず、攪拌を省略したり断続的に攪拌させたりすることができる。この電着塗料組成物は、自動車などの大型被塗物の電着塗装における塗装コスト削減に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】電着浴と循環攪拌システムとの関係を模式的に示す図である。
【図2】本発明の電着浴で、循環攪拌システムを用いずに、攪拌装置を用いる態様を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1・・・電着浴、
2・・・オーバーフロー槽、
3・・・ポンプ、
4・・・フィルター、
5・・・ライザー、
6・・・ノズル、
11・・・攪拌羽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料内包樹脂粒子を含有する、カチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
さらにカチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含む、請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
前記顔料内包樹脂粒子が着色された樹脂粒子である、請求項1または2記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
前記顔料内包樹脂粒子の平均粒径が0.1〜10.0μmである、請求項1〜3いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
自動車塗装用である、請求項1〜4いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項6】
電着塗装時には、電着浴の一部を取りだしてポンプで電着浴中に戻すことにより電着浴を循環攪拌し、電着塗装を行っていないときは該循環用ポンプを停止する電着浴管理方法であって、電着浴中の電着塗料組成物が請求項1〜5いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物である、電着浴の管理方法。
【請求項7】
請求項1〜5いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物を含む、被塗物を電着塗装する電着浴を有する電着塗装システムであって、該電着浴における電着浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替えることによりエネルギーが節約される、電着塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−257161(P2006−257161A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73442(P2005−73442)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】