説明

カチオン電着塗料組成物

【課題】 仕上り性、耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性に優れるカチオン電着塗料組成物を提供すること。
【解決手段】
エポキシ当量が180〜2,500の水酸基含有エポキシ樹脂にカプロラクトンを付加して得られる変性エポキシ樹脂(a1)に、複数の活性水素基を有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)を反応させてなるポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を含有するカチオン電着塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上り性、耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性に優れるカチオン電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗料は、塗装作業性が優れ防食性が良好なことから、自動車ボディなどの金属製品の下塗り塗料として広く使用されてきている。最近、自動車産業分野では、車体外板の腐食環境(例えば、寒冷地での道路への岩塩散布等)における耐久性向上の要求が高まっており、そのため車体外板の材質として従来の冷延鋼板に代えて、防錆性に優れる亜鉛メッキ鋼板が使用されている。 一方、これらの車体外板に塗装した塗膜において、走行時にはねあげられた岩塩粒子や小石等が塗膜面に衝突して該塗膜が剥離する、いわゆる“チッピング”を起こすという問題がある。
【0003】
特に寒冷地等での低温環境下では、塗膜が硬くなり弾性を失うのでその衝突を殆ど緩和できず、鋼板に直接衝撃が加わることになり、鋼板とその表面の化成処理皮膜間、鋼板と亜鉛メッキ層間で剥離を起こしやすく、低温環境下でのチッピング対策の検討が急務となっている。
この対策として、例えば、塗膜に可とう性、耐衝撃性等が付与されたものとして、アミン−エポキシ樹脂アダクトとウレタン樹脂アダクトを含有するカチオン性電着塗料組成物が開示されている(特許文献1)。しかし、この塗料組成物に配合されるウレタン樹脂アダクトとして具体的に開示されているものを単にカチオン電着塗料組成物中に配合したとしても耐チッピング性や耐温塩水浸漬性の両立には不十分であった。
【0004】
他に、耐チッピング性、防錆性の向上のため塗膜に可とう性を付与したものとして、電着樹脂と相溶性が良い数平均分子量が少なくとも15,000の高分子量ポリウレタンを配合してなるカチオン電着塗料組成物がある(特許文献2)。しかし、該ポリウレタンは高分子量であるため水分散安定性やカチオン電着塗料中に配合した場合の塗料安定性、仕上り性や耐温塩水浸漬性などを低下させる問題点があった。
【0005】
他に、溶解性パラメーターがδaである樹脂aを含む粒子Aと、溶解性パラメーターがδbである樹脂bと硬化剤を含む粒子Bを含む電着塗料組成物であって、(δ−δ)の値が1以上で、粒子Aの動的ガラス転移温度が−110〜10℃、粒子Bの動的ガラス転移温度が60〜150℃であり、かつ粒子Aのみから造膜して得られる膜の伸び率が200%以上である耐チッピング性の向上を目的とし、粒子Aと粒子Bを電着塗膜中で層分離させることによって防食性や耐チッピング性に優れた塗膜を得る発明が開示されている(特許文献3)。
しかし、相溶性のない2種類の粒子を含有することから、仕上り性低下や温塩水浸漬性低下の問題があった。
【0006】
また、エポキシ当量が400〜3000のエポキシ樹脂(a−1)にアミノ基含有化合物(a−2)を付加させてなるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)、エポキシ当量180〜2500のエポキシ樹脂(b−1)にアミノ基含有化合物(b−2)及び複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(b−3)を反応させてなるポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(B)、及びブロック化ポリイソシアネート硬化剤(C)を含み、上記成分(A)、(B)及び(C)の合計固形分を基準にして、成分(A)を40〜70重量%、成分(B)を5〜40重量%、そして成分(C)を10〜40重量%含有する防食性に優れたカチオン性樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。しかし、仕上り性や耐チッピング性は不十分であった。このような背景から仕上り性、耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性に優れるカチオン電着塗料組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−89578号公報
【特許文献2】特開平7−150079号公報
【特許文献3】特開2002−129105号公報
【特許文献4】特開2002−60454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明が解決しようとする課題は、仕上り性、耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性に優れるカチオン電着塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を含有するカチオン電着塗料組成物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1.エポキシ当量が180〜2,500の水酸基含有エポキシ樹脂にカプロラクトンを付加して得られる変性エポキシ樹脂(a1)に、複数の活性水素基を有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)を反応させてなるポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を含有するカチオン電着塗料組成物、
2.複数の活性水素基を有する化合物における活性水素基が、アルコール性水酸基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基よりなる群から選ばれる1項に記載のカチオン電着塗料組成物、
3.ブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する1項又は2項に記載のカチオン電着塗料組成物、
4.1〜3項のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を用いて塗装された物品、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカチオン電着塗料組成物によって、仕上り性、耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性に優れる塗装物品が得られる。該カチオン電着塗料組成物による塗膜は、石跳ねに対して塗膜が剥がれず、かつ腐食を抑制できる為、自動車ボディの強度低下を抑制し安全面での向上が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、エポキシ当量が180〜2,500の水酸基含有エポキシ樹脂にカプロラクトンを付加して得られる変性エポキシ樹脂(a1)に、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)を反応させてなるポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を含有するカチオン電着塗料組成物である。以下、詳細に述べる。
[ポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)]
変性エポキシ樹脂(a1)は、エポキシ当量が180〜2,500の水酸基含有エポキシ樹脂に、カプロラクトンを付加して得られる。
【0013】
水酸基含有エポキシ樹脂
水酸基含有エポキシ樹脂は、水酸基及びエポキシ基を1分子中にそれぞれ2個以上有する化合物であり、180〜2,500、好ましくは200〜2,000、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有することができ、また少なくとも350、特に400〜4,000、さらに特に800〜2,000の範囲内の数平均分子量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
【0014】
ここで「数平均分子量」は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとして「TSK GEL4000HXL」、「TSK GEL3000HXL」、「TSK GEL2500HXL」、「TSK GEL2000HXL」(東ソー株式会社製)の4本を用いて、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めた。
【0015】
該エポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−2もしくは3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0016】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式(1)
【0017】
【化1】

【0018】
式(1)中、n=1〜5で示されるものが好適である。
【0019】
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)からjER828EL、jER1001、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0020】
カプロラクトン
カプロラクトンとしては、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ラクトン、バレロラクトンなどが挙げられ、特にε−カプロラクトンが好適である。
【0021】
変性エポキシ樹脂(a1)
上記の水酸基含有エポキシ樹脂とカプロラクトンの付加反応はそれ自体既知の方法で行うことができる。具体的には、カプロラクトンは、水酸基含有エポキシ樹脂の水酸基1当量あたり、一般に1〜15モル、好ましくは1〜10モル、さらに好ましくは1〜7モルの範囲内で、例えば、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のチタン化合物、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ラウレート等の有機錫化合物;塩化第1錫などの金属化合物のような触媒の存在下に、水酸基含有エポキシ樹脂とカプロラクトンとを100〜250℃の温度で約1〜約15時間加熱することにより、変性エポキシ樹脂(a1)を製造することができる。
得られた変性エポキシ樹脂(a1)は、700〜5,000、好ましくは1,000〜4,500の範囲内の数平均分子量である。この変性エポキシ樹脂(a1)は、耐チッピング性と耐温塩水浸漬性の両立に極めて有用である。
【0022】
ポリオール化合物(a2)
ポリオール化合物(a2)は、前記変性エポキシ樹脂(a1)の内部可塑化(変性)のために使用されるものであり、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られる。
【0023】
活性水素基は少なくとも1個の活性水素を含有する原子団を意味し、例えば、アルコール性水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基などが包含される。しかして、かかる活性水素基を1分子中に複数個含有する化合物としては、例えば、(i)低分子量ポリオール、(ii)線状又は分岐状のポリエーテルポリオール、(iii)線状又は分岐状のポリエステルポリオール、(iv)第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を含有するアミン化合物、或は第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基と水酸基とを併有するヒドロキシアミン化合物などが挙げられる。これらの複数の活性水素基を含有する化合物は、62〜5,000、好ましくは62〜4,000、さらに好ましくは62〜1,500の範囲内の数平均分子量を有することができる。また、複数の活性水素基を含有する化合物は、1分子あたり、平均して、少なくとも2個かつ30個未満、特に2〜10個の活性水素基を有するものが好適である。
【0024】
上記の低分子量ポリオール(i)は、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有する化合物であり、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール、α−メチルグリコシドなどのテトロール類;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどのヘキソール類;シュークロースなどのオクトール類等が挙げられる。
【0025】
上記の線状又は分岐状のポリエーテルポリオール(ii)は、通常62〜10,000、好ましくは62〜2,000の範囲内の数平均分子量を有することができ、具体的には、例えば、アルキレンオキサイド(具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなど)の開環付加反応によって製造される、ポリチエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテルなどが挙げられる。
【0026】
上記の線状又は分岐状のポリエステルポリオール(iii)は、通常200〜10,000、好ましくは200〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することができ、具体的には、有機ジカルボン酸又はその無水物と有機ジオールとの、有機ジオール過剰の条件下での重縮合反応によって得られるものが挙げられる。ここで使用される有機ジカルボン酸としては、炭素数が2〜44、特に4〜36の脂肪族系、脂環式又は芳香族系ジカルボン酸、例えば、コハク酸アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。また、これらジカルボン酸に加えて、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の無水物や不飽和脂肪酸の付加物などを少量併用することができる。
【0027】
また、有機ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコールや、ジメチロールシクロヘキサンなどが挙げられ、これらは場合により、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのポリオールの少量と併用してもよい。
【0028】
上記の1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を含有するアミン化合物、或は第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基と水酸基を併有するアミン化合物(iv)としては、例えば、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどのアルカノールアミン類;1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサノン、イソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン類;キシリレンジアミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン類;さらに、ピペラジンやこれらのポリアミン類から誘導される、ポリアミド、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、ケチミン、アルジミンなどのその他のアミン化合物を挙げることができる。
【0029】
以上に述べた複数の活性水素基を含有する化合物のうち、上記(i)、(ii)及び(iv)の化合物、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンよりなる群から選ばれるものが好適である。
【0030】
他方、複数の活性水素基を含有する化合物に付加しうるカプロラクトンとしては、前記カプロラクトンと同様のものが使用でき、具体的には、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどが挙げられ、特にε−カプロラクトンが好適である。 上記の複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンの付加反応はそれ自体既知の方法で行うことができる。具体的には、例えば、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のチタン化合物、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ラウレート等の有機錫化合物;塩化第1錫などの金属化合物のような触媒の存在下に、複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンとを100〜250℃の温度で約1〜約15時間加熱することにより行うことができる。
【0031】
上記触媒は、複数の活性水素基を有する化合物とカプロラクトンとの合計量に基づいて0.5〜1,000ppmの量で使用することができる。また、カプロラクトンは、複数の活性水素基を有する化合物の活性水素基1当量あたり(すなわち、活性水素1個あたり)、一般に1〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは1〜15モルの範囲内で使用することができる。
【0032】
かくして得られるポリオール化合物(a2)は、複数の活性水素基を有する化合物に基づく水酸基含有エポキシ樹脂(a1)に対する高い相溶性と、カプロラクトンに基づく高い可塑化性能と末端水酸基による高い反応性とを兼備しており、得られた塗膜の耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性の向上に有用である。
【0033】
ポリオール化合物(a2)は、一般に、カプロラクトンに由来する単位を合計で20〜95質量%、好ましくは25〜90質量%の範囲内で含有することができ、また、一般に300〜10,000、好ましくは400〜5,000の範囲内の数平均分子量を有することができる。
【0034】
アミノ基含有化合物(a3)
本発明において、ポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を得るために、前記変性エポキシ樹脂(a1)とポリオール化合物(a2)とともに反応せしめられるアミノ基含有化合物(a3)は、変性エポキシ樹脂(a1)にアミノ基を導入して、該変性エポキシ樹脂(a1)をカチオン化するためのカチオン性付与成分であり、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するものが用いられる。
【0035】
そのような目的で使用されるアミノ基含有化合物(a3)としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−、もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン及びこれらのポリアミンのケチミン化物;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジンなどの環状アミンなどが挙げられる。これら上記のアミンのうち、1級アミンをケチミン化したアミンも併せて用いることができる。
【0036】
本発明のカチオン電着塗料組成物において使用されるポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、前記の変性エポキシ樹脂(a1)に、カプロラクトン由来の末端水酸基を有するポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)をそれ自体既知の方法で付加反応させることにより製造することができる。
【0037】
変性エポキシ樹脂(a1)に対するポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)の反応は任意の順序で行うことができるが、変性エポキシ樹脂(a1)に対して、ポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)を同時に反応させるのが好適である。また、変性エポキシ樹脂(a1)の骨格にポリオール化合物(a2)の片末端が付加しているのが好ましい。
【0038】
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約90〜約170℃、好ましくは約100〜約150℃の温度で1〜5時間、好ましくは2〜4時間行うことができる。
上記の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0039】
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、カチオン電着塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、変性エポキシ樹脂(a1)、ポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)の3成分の合計固形分質量を基準にして以下の範囲内が適当である。
【0040】
変性エポキシ樹脂(a1):60〜90質量%、好ましくは62〜85質量%、さらに好ましくは62〜80質量%、ポリオール化合物 (a2):5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは5〜18質量%、アミノ基含有化合物(a3):5〜25質量%、好ましくは6〜19質量%、さらに好ましくは6〜18質量%である。これらの比率は、得られた塗膜の仕上り性、耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性の向上に有用である。
【0041】
ブロックポリイソシアネート硬化剤
本発明のポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)には、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤を組合せて使用することができる。組合わせて使用することにより、熱硬化性のカチオン電着塗料を調製することができる。
【0042】
上記のブロック化ポリイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。ブロック化ポリイソシアネート硬化剤で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0043】
特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI等の芳香族ポリイソシアネート化合物が防食性の為により好ましい。
【0044】
一方、前記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0045】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤で使用されるブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;等が挙げられる。
【0046】
本発明のカチオン電着塗料組成物におけるポリオール変性アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート硬化剤の配合割合としては、上記成分ポリオール変性アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート硬化剤の固形分合計質量を基準にして、ポリオール変性アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を50〜95質量%、好ましくは60〜90質量%、そしてブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)を5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内であることが好ましい。範囲を外れると、塗料特性、耐チッピング性、耐温塩水浸漬性のいずれかを損うことがある。
【0047】
なおポリオール変性アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を樹脂成分として含むカチオン電着塗料の製造は、例えば、下記のようにして行うことができる。ポリオール変性アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート硬化剤に加え、界面活性剤、表面調整剤等の各種添加剤や有機溶剤等を十分に混合して調合樹脂とした後、上記調合樹脂を有機カルボン酸等で中和し、水溶化又は水分散化してエマルションを得る。なお調合樹脂の中和には、一般的には、公知の有機カルボン酸を用いることができるが、中でも酢酸、ギ酸、乳酸又はこれらの混合物が好適である。次いで、エマルションに顔料分散ペーストを加え、水で調整することによってカチオン電着塗料を調製することができる。
【0048】
上記の顔料分散ペーストは、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などをあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤及び顔料類を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストを調製できる。
【0049】
上記顔料分散用樹脂としては、公知のものが使用でき、例えば水酸基及びカチオン性基を有する樹脂、界面活性剤等、又は3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂などの樹脂を使用できる。上記顔料分散剤の使用量は、顔料類100質量部あたり1〜150質量部、特に10〜100質量部の範囲内が好適である。
【0050】
上記顔料類には、特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料;を添加することができる。
【0051】
さらに、腐食抑制又は防錆を目的として、ビスマス化合物を含有させることができる。上記ビスマス化合物としては、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス及び有機酸ビスマス等を用いることができる。
また、塗膜硬化性の向上を目的として、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の有機錫化合物を用いることができるが、前記酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料及び/又はビスマス化合物である顔料類を、適用(増量)及び/又は微細化して用いることによって、有機錫化合物を含有せずに、塗膜硬化性の向上を図ることもできる。これらの顔料類の配合量は、ポリオール変性アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート硬化剤との合計固形分100質量部あたり1〜100質量部、特に10〜50質量部の範囲内が好ましい。
【0052】
なお本発明のカチオン電着塗料組成物に使用できる有機溶剤は、例えば、アルコール系、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール;エーテル系、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル;ケトン系、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトン;エステル系、例えば、エチレングルコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートやこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
本発明のカチオン電着塗料組成物の被塗物としては、自動車ボディ、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属であれば特に制限なく使用できる。被塗物としての金属板としては、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al板、Mg板など、並びにこれらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理等の表面処理を行ったものが挙げられる。
【0054】
カチオン電着塗料組成物は、電着塗装によって所望の基材表面に塗装することができる。カチオン電着塗装は、一般的には、脱イオン水等で希釈して固形分濃度が約5〜40質量%とし、さらにpHを5.5〜9.0の範囲内に調整した電着塗料組成物からなる電着浴を、通常、浴温15〜35℃に調整し、負荷電圧100〜400Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行うことができる。電着塗装後、通常、被塗物に余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗する。
【0055】
電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5〜40μm、好ましくは12〜30μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼き付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で110℃〜200℃、好ましくは140〜180℃にて、時間としては10分間〜180分間、好ましくは20分間〜50分間、電着塗膜を加熱して行う。上記焼付け乾燥により塗膜を硬化させることができる。
【実施例】
【0056】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0057】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)の製造
製造例1 基体樹脂No.1の製造例
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部、ε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を得た。
次に、別のフラスコに、jER828EL(注1)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、ε−カプロラクトン100部、テトラブトキシチタン0.05部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却した。次にこのものに変性剤1を100部、ジエタノールアミンを140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部(純度84%)gを加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルを400部加え、アミン価56、樹脂固形分80%の基体樹脂No.1を得た。
(注1)jER828EL:ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂 エポキシ当量190、分子量350。
【0058】
製造例2 基体樹脂No.2の製造例
PP−1000(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量1000)1000部にε−カプロラクトンを300部を加えて130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤2を得た。
次に、別のフラスコに、jER828EL(注1)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、ε−カプロラクトン100部、テトラブトキシチタン0.05部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却した。次に、このものに変性剤2を100部、ジエタノールアミンを140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部(純度84%)を加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルを400部加え、アミン価56、樹脂固形分80%の基体樹脂No.2を得た。
【0059】
製造例3 基体樹脂No.3の製造例
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部にε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を得た。
次に、別のフラスコに、jER828EL(注1)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。次に、変性剤1を200部、ジエタノールアミンを140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部を加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルを400g加え、アミン価56、樹脂固形分80%の基体樹脂No.3を得た。
【0060】
製造例4 基体樹脂No.4の製造例
jER828EL(注1)1010部にビスフェノールA390部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量800になるまで反応させた。次に、ジエタノールアミン160g及びジエチレントリアミンのケチミン化物65部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル355部を加え、アミン価67、固形分80%の基体樹脂No.4を得た。
【0061】
製造例5 基体樹脂No.5の製造例
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部にε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を得た。
次に、別のフラスコに、jER828EL(注1)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。次に、変性剤1を333部、ジエタノールアミンを126部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部を加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルを425g加え、アミン価48、樹脂固形分80%の基体樹脂No.5を得た。
【0062】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)の製造
製造例6 硬化剤の製造例
反応容器中に、コスモネートM−200(商品名、三井化学社製、クルードMDI)270部及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後、100℃に昇温し、この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%の硬化剤を得た。
【0063】
エマルションの製造
製造例7 エマルションNo.1の製造例
製造例1で得られた基体樹脂No.1を75部(固形分70部)、製造例6で得られた硬化剤を37.5部(固形分30部)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水156部を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下し、固形分34%のエマルションNo.1を得た。
【0064】
製造例8〜11 エマルションNo.2〜No.5の製造例
表1の配合内容とする以外は、製造例7と同様にして、エマルションNo.2〜No.5を得た。
【0065】
【表1】

【0066】
製造例12 顔料分散用樹脂の製造例
jER828EL(注1)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、商品名、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1,090になるまで反応させた。
次に、ジメチルエタノールアミン134部及び90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。上記分散用樹脂のアンモニウム塩濃度は、0.78mmol/gであった。
【0067】
製造例13 顔料分散ペーストの製造例
製造例12で得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド1部、水酸化ビスマス1部及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストNo.1を得た。
【0068】
[カチオン電着塗料の製造]
実施例1
製造例7で得たエマルションNo.1を294部(固形分100部)、製造例13で得た55%の顔料分散ペーストを52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水297.6部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料No.1を製造した。
【0069】
実施例2、比較例1〜3
実施例1と同様にして、表2で示されるような配合内容にてカチオン電着塗料No.2〜No.5を製造した。
【0070】
【表2】

【0071】
[試験板について]
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛化成処理剤)による化成処理を施した冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)又は合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(0.8mm×150mm×70mm)を試験板とした。得られた試験板を用いて実施した試験結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
(注2)仕上り性:冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)の試験板を、各カチオン電着塗料に浸漬し、電着塗装を行って得た塗膜を熱風乾燥機によって170℃で20分間焼き付けて、外板部の電着塗膜の表面粗度を、サーフテスト301(株式会社 ミツトヨ社製、商品名、表面粗さ測定機)でRa値を測定した。
○は、Ra値が0.25μm未満
△は、Ra値が0.25μm以上で、かつ0.35μm未満
×は、Ra値が0.35μmを越える。
【0074】
(注3)耐チッピング性:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(0.8mm×150mm×70mm)の試験板に、各々のカチオン電着塗料を用いて乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装を行い、熱風乾燥機によって170℃で20分間焼き付けた。次いで、WP−306(関西ペイント株式会社製、水性中塗塗料)を、硬化膜厚が25μmとなるようにスプレー塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃で30分間焼き付けを行なった。
さらに、上記中塗塗膜上に、ネオアミラック6000(関西ペイント株式会社製、上塗り塗料)を、硬化膜厚が35μmとなるようにスプレー塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃30分間焼き付け、複層塗膜板を作製した。
複層塗膜板を、チッピング試験装置(スガ試験機社製、飛石試験機「JA−400型」)の試片保持台に、石の吹き出し口に対して塗面が直角になるように固定し、−20℃において、0.294MPa(3kgf/cm)の圧縮空気により粒度7号の花崗岩砕石50gを塗面に吹き付けた後、塗面に布粘着テープ(富士工業社製)を貼着し、それを急激に剥離後、塗膜のキズの発生程度等を、目視で観察し、下記基準により評価した。
◎は、キズの大きさは直径1.0mm以下であり、上塗り塗膜の一部に傷が付いている程度である、
〇は、キズの大きさは直径1.0mmを超えて1.5mm以下であり、中塗り塗膜が一部露出している、
△は、キズの大きさは直径1.5mmを超えて2.0mm以下であり、中塗り塗膜の一部が欠損し、電着塗膜又は鋼板が露出している、
×は、キズの大きさは直径2.0mmを超えており、中塗り塗膜が大きく露出し、又は中塗り塗膜が欠損して電着塗膜又は鋼板が露出し、外観を著しく損なっている。
【0075】
(注4)耐温塩水浸漬性:冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)の試験板に、各々のカチオン電着塗料を用いて乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装を行い、得られた塗装板を50℃で5質量%の塩水に840時間浸漬し、セロテープ(登録商標)剥離試験を行って剥がれた割合(%)を評価した。
◎は、塗膜全体の割合に対して塗膜の剥がれた割合が5%未満
〇は、塗膜全体の割合に対して塗膜の剥がれた割合が5%以上で、かつ10%未満、
△は、塗膜全体の割合に対して塗膜の剥がれた割合が10%以上で、かつ20%未満、
×は、塗膜全体の割合に対して塗膜の剥がれた割合が20%以上、
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、仕上り性、耐チッピング性及び耐温塩水浸漬性に優れる塗装物品を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ当量が180〜2,500の水酸基含有エポキシ樹脂にカプロラクトンを付加して得られる変性エポキシ樹脂(a1)に、複数の活性水素基を有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(a2)及びアミノ基含有化合物(a3)を反応させてなるポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を含有するカチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
複数の活性水素基を有する化合物における活性水素基が、アルコール性水酸基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基よりなる群から選ばれる請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
ブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する請求項1又は2項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を用いて塗装された物品。

【公開番号】特開2012−116953(P2012−116953A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267970(P2010−267970)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】