説明

カッタヘッドおよびカッタヘッドシステム

【課題】アーバに強固に保持されるカッタヘッドおよびカッタヘッドとアーバとの結合を強固に維持できるカッタヘッドシステムを提供する。
【解決手段】一方の側に設けられインサートチップ6が取り付けられた切削刃5と、他方の側に設けられ工作機械の主軸に取付可能なアーバ2に一体化するために突出する結合部4と、結合部と切削刃との間に設けられ結合部の軸心の延長上に軸心を有する円柱の周面として形成された切削刃の心振れを確認するための面15と、を有し、結合部は、突出する先端側の雄ネジと、雄ネジに直接または間接に連続し先端側から一方の側に向かうにしたがって一定の割合で外径が大きくなるテーパ付き凸型インロー部8と、からなるカッタヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ等で用いられるカッタヘッドおよびカッタヘッドとアーバとが一体化され工作機械に取り付けられるカッタヘッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタでは、回転して被切削物を削るカッタヘッドは、アーバに保持されて回転する主軸に取り付けられる。
カッタヘッドをアーバに保持させる方式の1つに、ネジ固定方式がある。
このようなネジ固定方式では、従来、凸型インロー部および孔型インロー部は、それぞれの外径および内径を略等しくし、いずれも軸方向において一定のストレート形状とするのが一般的であった(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−14205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ネジ固定方式において、凸型インロー部の外径および孔型インロー部の内径を軸方向において一定とすると、凸型インロー部は孔型インロー部により保持されず、密着している両端面だけで保持されるため、カッタヘッドとアーバとの結合力に限界がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、アーバに強固に保持されるカッタヘッドおよびカッタヘッドとアーバとの結合を強固に維持できるカッタヘッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係るカッタヘッドは、一方の側に設けられインサートチップが取り付けられた切削刃と、他方の側に設けられ工作機械の主軸に取付可能なアーバに一体化するために突出する結合部と、前記結合部と前記切削刃との間に設けられ前記結合部の軸心の延長上に軸心を有する円柱の周面として形成された前記切削刃の心振れを確認するための面と、を有し、前記結合部は、突出する先端側の雄ネジと、前記雄ネジに直接または間接に連続し前記先端側から前記一方の側に向かうにしたがって一定の割合で外径が大きくなるテーパ付き凸型インロー部と、からなる。
【0005】
本発明に係るカッタヘッドシステムは、カッタヘッドとアーバとからなり、前記カッタヘッドは、一方の側に設けられインサートチップが取り付けられた切削刃および他方の側に設けられ前記切削刃の心振れを確認するための前記切削刃の軸心を中心とする断面円形の周面を備える本体と、前記本体の他方の側に突出しその先端側に雄ネジおよび前記雄ネジに直接または間接に連続し前記雄ネジ側から前記本体側に向かうにしたがって一定の割合で外径が大きくなるテーパ付き凸型インロー部とを備える結合部と、を有し、前記アーバは、一方の端面に開口し全長に渡り前記テーパ付き凸型インロー部の前記雄ネジ側の始点における外径と略等しい内径の孔である孔型インロー部と、前記孔型インロー部の深部に前記孔型インロー部に直接または間接に連続し前記雄ネジに螺合可能な雌ネジと、を有し、前記雄ネジと前記雌ネジとを螺合させたときに前記本体における前記他方の側の端面と前記アーバにおける前記一方の端面とが密着可能に構成される。
【0006】
好ましくは、前記カッタヘッドには、前記結合部の先端側の端面に開口し前記切削刃の刃先に切削液を供給するための内部流路が設けられており、前記アーバには、
前記雌ネジに前記雄ネジが螺合されたときに前記内部流路に連通する切削液供給路が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、アーバに強固に保持されるカッタヘッドおよびカッタヘッドとアーバとの結合を強固に維持できるカッタヘッドシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係るカッタヘッド1の正面図、図2はカッタヘッド1が保持されるアーバ2の正面断面図である。
カッタヘッド1は、本体3、および結合部4からなる。
本体3は、一端側にインサートチップ6がネジ止めされている切削刃5,5,5を有する。
結合部4は、本体3の他端側の端面7から軸方向の外方に突出し、他端側の端面7から続くテーパ付き凸型インロー部8と、テーパ付き凸型インロー部8に連続し雄ネジが設けられた雄ネジ部9とからなる。
【0009】
テーパ付き凸型インロー部8は、軸心に直交する断面が円形であり、本体3の端面7に接続される一端の外径(「後端径」という)d1が雄ネジ部9に連続する他端の外径(「先端径」という)d2よりも大きくなっている。また、テーパ付き凸型インロー部8は、その外径が雄ネジ部9から本体3に向かうにしたがって一定の割合で大きくなり、その外周面10が傾斜するテーパ状になっている。
外周面10のテーパ状の程度は、図1の正面図において外周面10の傾斜角度θが軸心に対して0(度)<θ≦0.5(度)の範囲である。また、テーパ付き凸型インロー部8の長さは、先端径d2の1倍未満である。
【0010】
なお、後端径d1および先端径d2は、テーパ付き凸型インロー部8の外周面10における軸心を含む断面で直線となる部分の後端における直径および先端における直径である。例えば、テーパ付き凸型インロー部8と本体3の他端側の端面7とが接続される部分に隅肉部があるときは、後端径d2は、この隅肉部の先端側の終点における外径である。
カッタヘッド1内には、切削刃5,5,5のそれぞれの刃先に切削液を供給するための流路11が設けられている。流路11は、ネ雄ジ部9の先端面12における開口部分から結合部4の軸心を通って本体3内に延び、本体3内で複数に分岐して、それぞれが切削刃5,5,5に設けられた吐出口13,13,13に続いている。
【0011】
また、カッタヘッド1には、本体3の端面7から切削刃5側に長さ数mmの間、結合部4の軸心の延長上に軸心を有する円柱の周面を周面とする(軸心に流路が設けられた)円筒状の円筒部14が設けられている。円筒部14は、カッタヘッド1が切削工具の主軸に取り付けられて切削作業に使用されるときの振れを確認する目的で、カッタヘッド1がアーバ2に取り付けられたのちにその周面15にダイヤルゲージを当てるためのものである。
アーバ2は、テーパシャンク部16、カッタ取付部17およびフランジ部18からなる。また、アーバ2には、軸心を貫通する貫通孔19が設けられている。
【0012】
テーパシャンク部16は、端面20を上面(面積の小さい面)とする円錐台(テーパ形状)の形状を呈する。テーパシャンク部16は、カッタヘッド1を保持するアーバ2を、例えばマシニングセンタの主軸に取り付けるためのものである。テーパシャンク部16の内方における貫通孔19の端面20側は、プルスタッド取付部21となっている。
プルスタッド取付部21は、その内周面に、挿入されたプルスタッドを螺合させるための雌ネジが設けられている。
カッタ取付部17は、その内方における貫通孔19が径大となっており、径大となった貫通孔19には、アーバ2の他方の端面22における開口部分に向かって順に雌ネジ23および孔型インロー部24が設けられている。
【0013】
孔型インロー部24は、開口部分がカッタヘッド1の挿入を容易にするために若干径大となっている他は、全長に渡りカッタヘッド1におけるテーパ付き凸型インロー部8の先端径d2に略等しい内径を有する。孔型インロー部24は、軸方向におけるその長さがテーパ付き凸型インロー部8の長さに等しいかまたはそれよりも若干長く形成される。
フランジ部18は、マシニングセンタにおいて主軸に取り付けるカッタヘッド1を交換するときに、マニピュレータがアーバ2を掴むための部分として設けられている。
カッタヘッド1のアーバ2への取り付けは、次のようにして行われる。
【0014】
カッタヘッドの結合部4がアーバ2のカッタ取付部17に設けられた孔型インロー部24に挿入される。続いて結合部4の雄ネジがカッタ取付部17の雌ネジ23に螺合され、その他端側の端面7がカッタ取付部17の端面22に密着するまで締め付けられる。このようにして、カッタヘッド1は、アーバ2と一体化される。
ここで、テーパ付き凸型インロー部8の先端径d2が孔型インロー部24の内径と略等しく、かつテーパ付き凸型インロー部8の外径が本体3側に向かうほど徐々に大きくなっている。したがって、カッタヘッド1は、アーバ2に締め付けられる時に、テーパ付き凸型インロー部8の外周面10が孔型インロー部24の内周面を強く押圧し、アーバ2に強固に固定される。また、カッタヘッド1およびアーバ2のそれぞれの端面7,22が密着するまで締め込まれるので、カッタヘッド1の端面7はアーバ2の端面22でその動きが強く拘束される。
【0015】
なお、カッタヘッド1がアーバ2に取り付けられると、カッタヘッド1の内部の流路11は、アーバ2における貫通孔19に連通され、マシニングセンタ等から供給される切削液は、切削刃5,5,5に設けられた吐出口13,13,13から吐出可能となる。
その他、カッタヘッド1およびアーバ2、ならびにカッタヘッド1およびアーバ2の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、マシニングセンタ等で用いられるカッタヘッドおよびカッタヘッドとアーバとが一体化され工作機械に取り付けられるカッタヘッドシステムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明に係るカッタヘッドの正面図である。
【図2】図2はカッタヘッドが保持されるアーバの正面断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 カッタヘッド
2 アーバ
3 本体
4 結合部
5 切削刃
6 インサートチップ
7 (本体の他端側の)端面
8 テーパ付き凸型インロー部
9 先端側の雄ネジ(雄ネジ部)
11 内部流路(流路)
12 結合部の先端側の端面(先端面)
15 振れを確認するための面、周面(周面)
19 切削液供給路(貫通孔)
22 一方の端面(カッタ取付部側の端面)
23 雌ネジ
24 孔型インロー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側に設けられインサートチップが取り付けられた切削刃と、
他方の側に設けられ工作機械の主軸に取付可能なアーバに一体化するために突出する結合部と、
前記結合部と前記切削刃との間に設けられ前記結合部の軸心の延長上に軸心を有する円柱の周面として形成された前記切削刃の心振れを確認するための面と、を有し、
前記結合部は、
突出する先端側の雄ネジと、
前記雄ネジに直接または間接に連続し前記先端側から前記一方の側に向かうにしたがって一定の割合で外径が大きくなるテーパ付き凸型インロー部と、からなる
ことを特徴とするカッタヘッド。
【請求項2】
カッタヘッドとアーバとからなり、
前記カッタヘッドは、
一方の側に設けられインサートチップが取り付けられた切削刃および他方の側に設けられ前記切削刃の心振れを確認するための前記切削刃の軸心を中心とする断面円形の周面を備える本体と、
前記本体の他方の側に突出しその先端側に雄ネジおよび前記雄ネジに直接または間接に連続し前記雄ネジ側から前記本体側に向かうにしたがって一定の割合で外径が大きくなるテーパ付き凸型インロー部を備える結合部と、を有し、
前記アーバは、
一方の端面に開口し全長に渡り前記テーパ付き凸型インロー部の前記雄ネジ側の始点における外径と略等しい内径の孔である孔型インロー部と、
前記孔型インロー部の深部に前記孔型インロー部に直接または間接に連続し前記雄ネジに螺合可能な雌ネジと、を有し、
前記雄ネジと前記雌ネジとを螺合させたときに前記本体における前記他方の側の端面と前記アーバにおける前記一方の端面とが密着可能に構成された
ことを特徴とするカッタヘッドシステム。
【請求項3】
前記カッタヘッドには、
前記結合部の先端側の端面に開口し前記切削刃の刃先に切削液を供給するための内部流路が設けられており、
前記アーバには、
前記雌ネジに前記雄ネジが螺合されたときに前記内部流路に連通する切削液供給路が設けられている
請求項2に記載のカッタヘッドシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−61548(P2009−61548A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231538(P2007−231538)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(591028072)株式会社日研工作所 (43)
【Fターム(参考)】