説明

カッター装置及びカッターホルダ

【課題】樹脂等を切断するカッター装置において、カッターホイールの交換を容易にすること。
【解決手段】カッターホイール34Aをカッターホルダ30Aの下端に保持する。ホルダジョイント40Aにはカッターホルダ30Aを保持する保持孔部43を設ける。カッターホルダ30Aの上部には取付部36を設け、ホルダジョイント40Aに装着する。これによってカッター装置にカッターホルダを着脱自在とすることができ、カッターホイールの交換を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカッターを用いてガラス等の脆性材料基板や金属材料以外の樹脂フィルム等を切断するカッター装置及びカッター装置に用いられるカッターホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にガラス等の脆性材料基板から成る被加工物を切断する場合には、外周面に刃先が形成されたスクライビングホイールを用い、スクライビングホイールを回転させながら圧接するようにしてガラス基板にスクライブラインを形成し、その後ブレイク装置にてブレイクすることによって切断していた。
【0003】
一方樹脂材料やフィルム材料等の可撓性を有する被加工物を切断する場合には、スクライビングホイールを用いず、鉄、ステンレス製等の直線状の刃先を有するカッターを被加工物上に圧接しながら移動して切断するカッター装置が用いられている。その場合カッター装置を使用して切断を繰り返すと刃先が摩耗して切れ味が悪くなるため、カッターを交換する必要がある。
【0004】
しかるにカッターが摩耗する毎に新しいカッターに交換する場合には、カッターの寿命が短く利用効率が低い。そこで特許文献1では円板形のカッターホイールを回転しないように固定し、刃先の一部で切断を行い、その部分が摩耗した時点でカッターホイールを少し回転させ、新たな刃先の一部で切断を行うようにしたカッター装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2922221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカッター装置では、係止ピンが入り込む位置決め孔を変えることで所定角度をずらせてカッターホイールを使用している。しかしカッターホイールの側面と切り刃ベースの表側の面とはねじで押しつけて固定しているだけであり、ねじが緩みやすく、ねじの緩みがあれば使用する刃先部分も変わってしまうという欠点があった。
【0007】
又カッターホイールの大きさは用途により異なるが、例えば直径2mm〜7mm程度と小さく取り扱い難い。従ってカッターホイールの角度の切り換えや交換には手間がかかるという欠点があった。又多種類の刃先を夫々の装置に付けて使用する工場内では、誤って異なった種類のカッターホイールを取付けてしまう可能性がある。
【0008】
本発明は従来のカッター装置やカッター方法の問題点に着目してなされたものであって、カッターホイールと一体化したカッターホルダを用いることによって、このような欠点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明のカッター装置は、被加工物が設置される設置手段と、前記設置手段上の被加工物に対向するように設けられるカッターヘッドと、前記カッターヘッドの先端に設けられるホルダジョイントと、取付部を有し、前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けられ、外周面に刃先が形成されたカッターホイールを固定するカッターホルダと、前記カッターヘッドを前記設置手段上の被加工物の面に垂直に上下動させる昇降手段と、前記カッターヘッド及び前記被加工物を相対的に被加工物の平面に沿った面内で移動させる相対移動部と、を具備し、前記カッターホイールを被加工物に圧接しながら走査することにより被加工物を切断するものである。
【0010】
ここで前記カッターホルダは、前記カッターホイールの取付方向を180°異ならせて前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けるため2箇所の取付部を有するようにしてもよい。
【0011】
ここで前記カッターホルダの取付部は、前記カッターホルダの上部に形成された切欠き部であり、前記ホルダジョイントは、前記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記切欠き部に係合するピンを有するようにしてもよい。
【0012】
ここで前記カッターホルダの取付部は、側方に突出する操作バーであり、前記ホルダジョイントは、前記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記操作バーが挿入されるバー導入溝を有するようにしてもよい。
【0013】
ここで前記カッターホイールは、前記カッターホルダより突出する部分に前記被加工物の面に平行な直線状の切欠きを有するようにしてもよい。
【0014】
ここで前記カッターホイールは円板状であって、その外周部に刃先角度が10°〜80°の刃を形成したものとしてもよい。
【0015】
ここで前記カッター装置の被加工物は、脆性材料基板に可撓性を有する基板を貼り合わせた貼り合わせ基板であり、前記カッターホイールは、前記被加工物の脆性材料基板より硬度の低い材質で形成され、前記被加工物の可撓性を有する基板を切断するものであり、
前記カッター装置は、前記被加工物の脆性材料基板をスクライブするスクライブヘッドを更に有するようにしてもよい。
【0016】
この課題を解決するために、本発明のカッターホルダは、被加工物に対向するように設けられるカッターヘッド、及び前記カッターヘッドの先端に設けられるホルダジョイントを有し、カッターホイールを被加工物に圧接しながら走査することにより被加工物を切断するカッター装置に用いられるカッターホルダであって、取付部を有し、前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けられ、外周面に刃先が形成されたカッターホイールを固定するものである。
【0017】
ここで前記カッターホルダは、前記カッターホイールの取付方向を180°異ならせて前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けるため2箇所の取付部を有するようにしてもよい。
【0018】
ここで前記カッターホルダの取付部は、前記カッターホルダの上部に形成された切欠き部であり、前記ホルダジョイントは、前記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記切欠き部に係合するピンを有するようにしてもよい。
【0019】
ここで前記カッターホルダの取付部は、側方に突出する操作バーであり、前記ホルダジョイントは、記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記操作バーが挿入されるバー導入溝を有するようにしてもよい。
【0020】
ここで前記カッターホイールは、前記カッターホルダより突出する部分に前記被加工物の面に平行な直線状の切欠きを有するようにしてもよい。
【0021】
ここで前記カッターホイールは円板状であって、その外周部に刃先角度が10°〜80°の刃を形成したものとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
このような特徴を有する本発明によれば、カッターホイールはカッターホルダに一体化して取付けられており、カッターホルダをホルダジョイントに着脱自在としている。従ってカッターホルダの交換を極めて容易に行うことができる。又請求項2,9では、2箇所の取付部を有するため、使用によってカッターホイールが摩耗した場合にもカッターホイールの取付方向を反転させることによって新たな刃先で被加工物を切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は発明の実施の形態1によるカッター装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1によるカッターホルダの構成を示す図である。
【図3】図3は本実施の形態によるカッターホルダの斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態によるカッターホイールの構成を示す図である。
【図5】図5は本実施の形態によるホルダジョイントを示す図である。
【図6】図6は本実施の形態によるホルダジョイントのカッターホルダ挿入時の斜視図である。
【図7】図7はカッターホルダを挿入した状態を示すホルダジョイントの一部断面図である。
【図8】図8は本実施の形態によるカッター装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態2によるカッターホルダを示す図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態3によるカッターホイール、及びカッターホルダを挿入した状態を示すホルダジョイントの一部断面図である。
【図11】図11は実施の形態3によるカッターホイールを用いて積層された被加工物を加工する状態を示す図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態4によるカッターホイールの斜視図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態4によるカッターホルダを挿入した状態を示すホルダジョイントの一部断面図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態5によるカッターホイールの斜視図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態5によるカッターホルダを挿入した状態を示すホルダジョイントの一部断面図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態6によるカッター装置により切断及びスクライブしている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1によるカッター装置を示す斜視図である。本実施の形態によるカッター装置1は、移動台11が一対の案内レール12a、12bに沿って、y軸方向に移動自在に保持されている。ボ−ルネジ13は移動台11と螺合している。ボールネジ13はモータ14の駆動により回転し、移動台11を案内レール12a,12bに沿ってy軸方向に移動させる。移動台11の上面にはモータ15が設けられている。モータ15はテーブル16をxy平面で回転させて所定角度に位置決めするものである。被加工物17はこのテーブル16上に載置され、図示しない真空吸引手段などにより保持される。カッター装置1の上部には、被加工物17のアライメントマークを撮像する2台のCCDカメラ18が設けられている。ここで移動台11、テーブル16は被加工物17を設置する設置手段を構成している。
【0025】
カッター装置1には、移動台11とその上部のテーブル16をまたぐようにブリッジ20がx軸方向に沿って支柱21a,21bにより架設されている。カッターヘッド22はブリッジ20に設けられたガイド23に沿ってx軸方向に移動可能となっている。モータ24はカッターヘッド22をx軸方向に沿って移動させるものである。カッターヘッド22の先端部には、後述するカッターホルダ30Aがホルダジョイント40Aを介して取付けられている。ここでモータ14と案内レール12a,12b、ボールネジ13はテーブルをy軸方向に移動させる移動部であり、ブリッジ20、支柱21a,21b、ガイド23、モータ24はカッターヘッドをx軸方向に移動させる移動部であり、モータ15はテーブルを回転させる回転部であって、これらが相対移動部を構成している。
【0026】
次に本実施の形態によるカッターヘッド22に取付けられるカッターホルダ30Aの構成について説明する。図2は実施の形態1によるカッターホルダ30Aの本体部、図3はカッターホイールを取付けたカッターホルダ30Aを示す斜視図である。図4はカッターホイールを示す図である。これらの図に示すように、カッターホルダ30Aはカッターホイールを保持する略円筒形の部材である。カッターホルダ30Aの一端には平坦部31a,31bがいずれも中心軸に平行に設けられ、この平坦部31a,31bの中間に中心軸に沿った切欠き32を有している。平坦部31a,31bの中央部分には面に垂直な方向のピン溝33を有し、その側面は円弧状に形成されている。カッターホイール34Aは後述するように円板状であり、中心に貫通孔、円周部分の少なくとも一部に直線状の切欠き34aを有している。カッターホイール34Aは、中心の貫通孔にピン溝33に挿入されたピン35を貫通させ、直線状の切欠き34aを切欠き32の内壁に当接することによりカッターホルダ30Aに固定される。カッターホイール34Aを固定した後は、カッターホイールの交換を要する場合にもカッターホイールを取り外さず、カッターホルダ30Aと共に交換される。一方カッターホルダ30Aの他端には位置決め用の取付部36が設けられている。取付部36はカッターホルダ30Aを切欠いて形成され、傾斜部36a及びカッターホルダの軸と平行な平坦部36bを有する。又カッターホルダ30Aはその上部の一部分が磁性体金属で構成されている。
【0027】
次にカッターホイール34Aについて図4を用いて説明する。カッターホイール34Aは例えばホイール径が2.5mm、厚さ0.5mm程度の円板状の形状を有し、円周部分の断面が円錐形に形成される。又カッターホイール34は中心に貫通孔を有し、円周部分の少なくとも一部に直線状の切欠き34aを有している。ここでカッターホイールの円周部の刃先の角度は例えば10°〜80°、特に15°〜80°とすることが好ましい。又カッターホイールの材質は被加工物の種類によって適宜選択されるが、例えば超硬合金、焼結ダイヤモンド、SUS、SKH(工具鋼)、サファイア等が用いられる。又後述するように貼り合わせ基板の樹脂フィルムを加工対象とする場合には、脆性材料基板よりも硬度の低い材質が用いられる。
【0028】
次にホルダジョイント40Aについて説明する。図5はホルダジョイント40Aを示す図であり、図6はこのホルダジョイント40Aにカッターホルダ30Aを挿入する状態を示す斜視図である。これらの図に示すようにホルダジョイント40は上部にベアリング41a,41bを有しており、下方がカッターホルダを保持する保持部42となっている。ホルダジョイント40Aの保持部42には、図示のように円形の保持孔部43が形成されており、その内側にマグネット44が埋設されている。又この保持孔部43の内部には中心軸から隔てた位置に中心軸と垂直な平行ピン45が設けられる。平行ピン45はカッターホルダ30Aの傾斜部36aに接してカッターホルダ30Aを位置決めするものである。
【0029】
このカッターホルダ30Aをホルダジョイント40Aに取付ける際には、図6に示すようにホルダジョイント40Aの保持孔部43にカッターホルダ30Aをその取付部36から挿入する。そうすればカッターホルダ30Aの先端部がマグネット44によって吸引され、更に傾斜部36aが平行ピン45に接触して位置決め固定される。図7はカッターホルダ30Aが取付けられた状態を示す部分断面図である。カッターホルダ30Aはマグネット44によって吸引されているだけであるため、取付けが極めて容易であり、所定の位置に固定される。取り替える場合にもカッターホルダ30Aを引っ張るだけで容易に取り外すことができ、着脱が容易となる。
【0030】
次に本実施の形態によるカッター装置1の構成について、ブロック図を用いて説明する。図8はカッター装置1の制御系を示すブロック図である。本図において2台のCCDカメラ18からの出力は画像処理部51を介して制御部52に与えられる。制御部52はXモータ駆動部53、Yモータ駆動部54を介して夫々モータ24,14を駆動するものである。又回転用モータ駆動部55はモータ15を駆動し、テーブル16上に配置された被加工物17を回転させると共に、角度ずれがあるときにその角度ずれを打ち消すものである。更に制御部52にはカッターホルダ昇降部56やモニタ57が接続される。カッターホルダ昇降部56は、カッターホルダ30Aを昇降させ、カッターホイール34Aが被加工物の表面を適切な荷重にて圧接するように駆動する昇降手段である。
【0031】
カッターホルダ昇降部56はカッターヘッド22の内部に設けられ、例えば空気圧制御を用いるエアーシリンダーやリニアモータによる電動昇降部などで構成されている。カッターホルダ昇降部56により、カッターホイール34Aを樹脂基板等の被加工物の表面に接触させて適切な荷重で圧接することができる。
【0032】
次に実施の形態1によるカッター装置の動作について説明する。被加工物として樹脂フィルム、その積層物、低焼成セラミックス(LTCC)、高温焼成セラミックス(HTCC)、シリコンウエハ等が考えられる。又ガラス基板等の被加工物に樹脂フィルム等が積層された貼り合わせ基板のうち樹脂フィルムを対象とする場合もある。まず被加工物17をテーブル16上に設置し、図示しない真空吸着手段等で保持する。そして制御部52はカッターヘッドを切断位置に移動するように相対移動部によりX軸又はY軸方向に移動すると共に回転制御し、所望の位置でカッターホルダ昇降部56を制御してカッターヘッド22を降下させる。こうすればカッターヘッド22の先端に保持されているカッターホイール34Aが被加工物の表面に圧接される。これにより被加工物17の内部にくい込むこととなる。こうした状態で相対移動部を移動させることで切断することができる。例えば、ガラス基板等の脆性材料基板に樹脂フィルム等が積層された貼り合わせ基板のうち樹脂フィルムを切断する場合、カッターホイール34Aの材質等にもよるが、カッターホイール34Aが樹脂フィルムを貫通し、脆性材料基板と接触するまで、カッターホイール34Aをくい込ませると、樹脂フィルムを切断する工程で、脆性材料基板にも傷をつけてしまう場合がある。これを未然に防止したい場合、カッターホイール34Aが樹脂フィルムを貫通する直前のところ(例えば、樹脂フィルム厚さの99%の深さ)までくい込ませた状態で切断することもできる。結果として、樹脂フィルムを切断する工程では樹脂フィルムが完全には切断されないことになるが、樹脂フィルムの材質に応じて切断されない部分の厚みを小さくすることにより、多くの場合、後工程での貼り合わせ基板全体の分離に対する悪影響をなくすことができる。
【0033】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1によるカッターホルダ30Aは円筒部の一面に取り付け部36の切欠きを有しているが、実施の形態2のカッターホルダ30Bは、図9に示すように左右に対称に取付部36A,36Bを形成する。その他の構成は前述した実施の形態1と同様である。この場合も実施の形態1と同様にカッターホルダ30Bをホルダジョイント40Aに取付けて使用することができる。この場合に取付部36Aが平行ピン45に接触して取付けられたとする。そして使用によって、カッターホイール34Aの刃先に摩耗が生じた場合に、カッターホルダ30Bをその中心軸に沿って180°回転させて、取付部36Bを平行ピン45に接触させてホルダジョイント40Aに取付ける。こうすれば新たなカッター面とすることができ、カッターホイールの2箇所を切断に用いることができる。この切換えはカッターホイール自体を取り外す必要はないので、極めて容易に行うことができ、カッターホイールを一体化したカッターホルダを長寿命化することができる。
【0034】
(実施の形態3)
次に実施の形態3におけるカッター装置について説明する。実施の形態3によるカッター装置はガラス基板の脆性材料基板と、樹脂フィルム等が積層された貼り合わせ基板を被加工物とし、そのうちの樹脂フィルム等を切断する用途に適したものである。実施の形態3では図10(a)にカッターホイール34Bを示すように、カッターホイール34Bの直線状切欠き部34aに加えて下面に平坦に切欠き34bを形成しておく。又貼り合わせ基板の樹脂フィルムを加工対象とするため、カッターホイール34Bには脆性材料基板よりも硬度の低い材質が用いられる。例えば、ガラス基板等の脆性材料基板に樹脂フィルム等が積層された貼り合わせ基板のうち樹脂フィルムを実施の形態3によるカッター装置のカッターホイール34Bを用いて切断する場合について説明する。この場合、カッターホイール34Bが樹脂フィルムを貫通するまで、カッターホイール34Bをくい込ませても、下面の平坦な切欠き34bが脆性材料基板の表面に接触し、滑るような状態で移動することになるので、脆性材料基板に傷をつけることなく、樹脂フィルムを完全に切断することができる。
【0035】
このカッターホイール34Bは図10(b)に示すように、カッターホルダ30Cに取付けられ、更にホルダジョイント40Aに取付けられる。その他の構成は実施の形態1と同様である。こうすれば図11に示すようにガラス基板Gと樹脂フィルムFとが積層された被加工物の樹脂フィルム側に切り込みを入れる際に、カッターホイール34Bが樹脂フィルムFに圧入されるが、ガラス基板Gの面にはくい込むことはない。従ってガラス基板の樹脂フィルム面側を傷つけることなく樹脂フィルムのみを切断することができ、ガラス面の損傷を防止することができる。
【0036】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4によるカッター装置について説明する。図12は本実施の形態4によるカッターホルダ30Dの斜視図である。図13は本実施の形態のカッターホルダ30D、及びホルダジョイント40Bの断面を示す図である。なお、図13におけるホルダジョイント40Bの断面は、多角形状の両側面の間を両側面に平行な面で切ったときの面である。
【0037】
カッターホルダ30Dは、略円柱形の磁性体金属でできており、外周面部の全周にわたって円環状に形成された窪み37を有している。またカッターホルダ30Dは、実施の形態1と同様にカッターホイール34Aを固定的に保持しており、またホルダジョイント40Bへの挿入を容易にすると共に固定するために、側面から突出した操作バー38を取付部として有している。
【0038】
ホルダジョイント40Bは、カッターホルダ30Dを挿入し保持するための略円柱状の保持孔部46、及びカッターホルダ30Dの操作バー38を導入するためのバー導入溝47を有するものである。バー導入溝47は、図13におけるホルダジョイント40Bの断面に一部分だけが図示されている。図13に示すように、保持孔部46には、例えばバネ部材などの弾性部材48が設けられている。
【0039】
カッターホルダ30Dは、操作バー38をバー導入溝47に導入しながら、保持孔部46に挿入される。カッターホルダ30Dが保持孔部46に挿入されて操作バー38がバー導入溝47の最上部にまで引き上げられたとき、図13に示すようにカッターホルダ30Dの窪み37が保持孔部46の弾性部材48と係合し、カッターホルダ30Dはホルダ取付け部40Bに固定される。また、操作バー38はバー導入溝47で回転方向の動きが抑止されるので、カッターホルダ30Dは、ホルダ取付け部40Bの保持孔部46内で正確に位置決めされる。その他の構成は前述した実施の形態1と同様であり、同様の効果が得られる。
【0040】
(実施の形態5)
次に本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態4ではカッターホルダ30Dに1つの操作バーを設けているが、実施の形態5のカッターホルダ30Eにおいては、図14に示すように、2つの操作バー38A,38Bを左右に対称に形成する。この場合にはホルダジョイント40Cについてもバー導入溝47A,47Bを左右に形成する。又カッターホルダ30Eを保持する弾性部材は図示しない側方に設けておく。こうすればカッターホルダ30Eを挿入して被加工物の切断を行った後、カッターホイールの刃先が摩耗すると、実施の形態2と同様に挿入方向を180°回転させてカッターホルダ30Eをホルダジョイント40Cに取付けることができる。このためカッターホイールの2箇所を切断に用いることができる。この切換えはカッターホイール自体を取り外す必要はないので、極めて容易に行うことができ、カッターホイールを一体化したカッターホルダを長寿命化することができる。
【0041】
(実施の形態6)
尚前述した各実施の形態では、1つのカッターヘッドを有するカッター装置について説明した。被加工物をスクライブするためのスクライブ装置に、図5等に示すホルダジョイントを取付けることができる場合には、そのままカッターホルダを取付けてカッター装置とすることができる。更に複数のヘッドを有するマルチスクライブ装置にも本発明のカッターホルダを適用して、切断機能とスクライブ機能を有するカッター装置とすることもできる。以下このようなカッター装置を実施の形態6として説明する。
【0042】
スクライブ機能とカッター機能を有するカッター装置の場合には、貼り合わせ基板を被加工物とし、被加工物のうち脆性材料基板をスクライブし、樹脂フィルムをカッター機能によって切断する。例えば被加工物はガラス基板に樹脂フィルムが貼合わされたパネル基板が考えられる。この場合には上下に夫々カッターヘッドとスクライブヘッドが搭載されたカッター装置を用いて、図16に示すように下方よりスクライブヘッド61によってスクライブすると共に、カッターヘッド34Bによって切断する。これによって貼り合わせ基板を容易に切断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は樹脂フィルム及びこれらが積層された基板等の被加工物をカットするカッター装置及びこれに用いるカッターホルダに関し、カッターホイールをカッターホルダと一体化しているため、交換容易にカッターホルダを実現することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 カッター装置
11 移動台
16 テーブル
22 カッターヘッド
30A,30B,30C,30D,30E カッターホルダ
31a,31b,36b 平坦部
32 切欠き
33 ピン溝
34,34A,34B カッターホイール
35 ピン
36 取付部
36a 傾斜部
37 窪み
38,38A,38B 操作バー
40A,40B,40C ホルダジョイント
41a,41b ベアリング
42 保持部
43 保持孔部
44 マグネット
45 平行ピン
46 保持孔部
47,47A,47B バー導入溝
51 画像処理部
52 制御部
53 Xモータ駆動部
54 Yモータ駆動部
55 回転用モータ駆動部
56 カッターホルダ昇降部
57 モニタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が設置される設置手段と、
前記設置手段上の被加工物に対向するように設けられるカッターヘッドと、
前記カッターヘッドの先端に設けられるホルダジョイントと、
取付部を有し、前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けられ、外周面に刃先が形成されたカッターホイールを固定するカッターホルダと、
前記カッターヘッドを前記設置手段上の被加工物の面に垂直に上下動させる昇降手段と、
前記カッターヘッド及び前記被加工物を相対的に被加工物の平面に沿った面内で移動させる相対移動部と、を具備し、前記カッターホイールを被加工物に圧接しながら走査することにより被加工物を切断するカッター装置。
【請求項2】
前記カッターホルダは、前記カッターホイールの取付方向を180°異ならせて前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けるため2箇所の取付部を有する請求項1記載のカッター装置。
【請求項3】
前記カッターホルダの取付部は、前記カッターホルダの上部に形成された切欠き部であり、
前記ホルダジョイントは、前記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記切欠き部に係合するピンを有する請求項1又は2記載のカッター装置。
【請求項4】
前記カッターホルダの取付部は、側方に突出する操作バーであり、
前記ホルダジョイントは、前記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記操作バーが挿入されるバー導入溝を有する請求項1又は2記載のカッター装置。
【請求項5】
前記カッターホイールは、前記カッターホルダより突出する部分に前記被加工物の面に平行な直線状の切欠きを有する請求項1〜4のいずれか1項記載のカッター装置。
【請求項6】
前記カッターホイールは円板状であって、その外周部に刃先角度が10°〜80°の刃を形成したものである請求項1〜5のいずれか1項記載のカッター装置。
【請求項7】
前記カッター装置の被加工物は、脆性材料基板に可撓性を有する基板を貼り合わせた貼り合わせ基板であり、
前記カッターホイールは、前記被加工物の脆性材料基板より硬度の低い材質で形成され、前記被加工物の可撓性を有する基板を切断するものであり、
前記カッター装置は、前記被加工物の脆性材料基板をスクライブするスクライブヘッドを更に有する請求項1〜6のいずれか1項記載のカッター装置。
【請求項8】
被加工物に対向するように設けられるカッターヘッド、及び前記カッターヘッドの先端に設けられるホルダジョイントを有し、カッターホイールを被加工物に圧接しながら走査することにより被加工物を切断するカッター装置に用いられるカッターホルダであって、
取付部を有し、前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けられ、外周面に刃先が形成されたカッターホイールを固定するカッターホルダ。
【請求項9】
前記カッターホルダは、前記カッターホイールの取付方向を180°異ならせて前記ホルダジョイントに着脱自在に取付けるため2箇所の取付部を有する請求項8記載のカッターホルダ。
【請求項10】
前記カッターホルダの取付部は、前記カッターホルダの上部に形成された切欠き部であり、
前記ホルダジョイントは、前記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記切欠き部に係合するピンを有する請求項8又は9記載のカッターホルダ。
【請求項11】
前記カッターホルダの取付部は、側方に突出する操作バーであり、
前記ホルダジョイントは、記カッターホルダが挿入される保持孔部、及び前記カッターホルダの前記操作バーが挿入されるバー導入溝を有する請求項8又は9記載のカッターホルダ。
【請求項12】
前記カッターホイールは、前記カッターホルダより突出する部分に前記被加工物の面に平行な直線状の切欠きを有する請求項8〜11のいずれか1項記載のカッターホルダ。
【請求項13】
前記カッターホイールは円板状であって、その外周部に刃先角度が10°〜80°の刃を形成したものである請求項8〜12のいずれか1項記載のカッターホルダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−158737(P2010−158737A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1454(P2009−1454)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】