説明

カップラー

【課題】メタノール燃料電池の場合のように簡単に着脱して金属と接触させずに液体などを供給したり、取り出したり、あるいは容器ごと交換することができるカップラーを提供する。
【解決手段】弁体15を備えるソケットS10と、弁体24を備えソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグP10とから構成されるカップラー10で、弁体15,24の外側のハウジング13,22内に、弁体を開閉方向に往復移動可能かつ両端部でシール可能に装着し、このハウジング13,22内の弁体の外側に弁体を付勢する付勢手段を構成する金属製コイルばね16,25を圧力変化が生じないように収納し、その内側のシールされた部分に流路13e,13f,22fを形成する。 これにより、金属製コイルばね16,25が収納されたハウジング13,22内に液体が吸引されることを防止でき、液体との接触を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はソケットとプラグとで構成され着脱可能に連結されるカップラーに関し、液体などを容器から簡単に本体側の容器などに移したり、容器ごと交換することができるようにするもので、特にメタノール燃料電池のカートリッジ容器と燃料電池本体との間に設けて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から機器の運転や使用にともなって減少する原料などの液体を補充する必要がある場合も多く、機器本体側に設けた容器にカートリッジ容器を連結して原料などの液体を移すことで供給したり、機器本体側の容器と別の容器を付け替えることで供給することが行われている。
【0003】
このような容器同士の連結や容器の付け替えを簡単にするため着脱可能な種々のカップラーが用いられている。
【0004】
例えば特許文献1には、図3に示すように、連結装置が開示されており、主流路と副流路とを備えたプラグPと、主流路と副流路とを備えプラグと嵌合可能であるとともに、嵌合した状態でプラグの主流路と副流路とを連通可能なソケットSとから構成されている。
【0005】
そして、この連結装置では、ソケットSは保持体1に固定された弁押体2の外周に形成された主流路2aと、さらに主流路2aの外側に形成された副流路2bと、それらの流路2a,2bを閉じるバルブ3a、3bを有し、各バルブ3a、3bはスプリング4a,4bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路2aおよび副流路2bを閉じることができる構成となっている。
【0006】
一方、プラグPは弁保持体5に摺動自在に保持された弁本体6の外周に形成された主流路6aと、さらに主流路6aの外側に形成された副流路6bと、それらの流路6a,6bを閉じるバルブ7a,7bを有し、各バルブ7a,7bはスプリング8a,8bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路6aおよび副流路6bを閉じることができる構成となっている。
【0007】
このようなソケットSとプラグPの接続がなされると、まず、ソケットSの副バルブ3bとプラグPの副バルブ7bが当接し、両者がそれぞれスプリング4b,8bの付勢力に抗して互いに離れる方向に移動し、副流路2b,6bが連通する。
【0008】
さらに、ソケットSとプラグPの接続がなされると、ソケットSの主バルブ3aがプラグPの内筒体の端面によって押され、スプリング4aに抗して後退して弁体が弁押体2の弁座から離れ、弁押体2との主流路2aを開くとともに、ソケットS側の弁押体の先端部平面とプラグP側の弁本体6に設けた弁部材の平面とが当接しプラグP側の弁本体6をスプリング8aの付勢力に抗して押圧し、弁本体を後退させてプラグP側の主バルブ7aを開き主流路6aと連通する。
【0009】
これにより、副流路が連通すると気体供給源から容器内に気体が供給され、その気体圧によって内袋を収縮させ、内袋内の液体がプラグ側の主流路からソケット側の主流路を介して液体を容器外に送出することができる。
【特許文献1】特開2003−172487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような連結装置によれば、容器内に中袋を設けてその中の液体を取り出す場合に、副流路から中袋の外側に加圧気体を入れ、主流路から液体を取り出すようにすることで中袋の中の液体を他の気体と接触させずに取り出すことができる。
【0011】
ところが、容器内の液体を取り出したり、他の容器などに供給する場合に液体と金属との接触を防止する必要がある場合があり、例えばメタノール燃料電池では、燃料となるメタノールを燃料電池本体に供給する場合にメタノールが金属と接触すると、溶出した金属イオンが、アノード側で発生した水素イオン(プロトン)が移動するはずの場所を先に占有して移動量を減少させ、アノード側反応速度を低下させ、その結果として燃料電池としての機能を低下させてしまう。
【0012】
このため、上記の連結装置を燃料電池本体とメタノール容器との間のカップラーとして用いると、弁体を閉方向に付勢する金属製のばねが主流路および副流路内に設けられるため、液体と金属との接触が避けられず、使用できないという問題がある。
【0013】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、メタノール燃料電池の場合のように簡単に着脱して金属と接触させずに液体などを供給したり、取り出したり、あるいは容器ごと交換することができるカップラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方の前記弁体の基端部外側に当該弁体が開閉方向に往復移動可能かつ当該弁体の両端部でシール可能に収納するハウジングを設け、このハウジング内の前記弁体の外側に当該弁体を付勢する前記付勢手段を構成する弾性体を装着する一方、前記弁体の内側に流路を形成したことを特徴とするものである。
【0015】
このカップラーによれば、弁体の外側のハウジング内に、弁体を開閉方向に往復移動可能かつ両端部でシール可能に装着し、このハウジング内の弁体の外側に弁体を付勢する付勢手段を構成する弾性体を収納してその内側のシールされた部分に流路を形成するようにしており、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、弾性体をハウジング内に収納することで、液体との接触を防止できるようにしている。
【0016】
また、この発明の請求項2記載のカップラーは、請求項1記載の構成に加え、前記ハウジング内の前記弁体の外側の前記弾性体が装着された空間を、圧力変化を防止可能に構成したことを特徴とするものである。
【0017】
このカップラーによれば、ハウジング内の弁体の外側の弾性体が装着された空間を、圧力変化を防止可能に構成しており、弁体の開閉にともなう往復動によっても弾性体を装着した空間の圧力変化を防止でき、負圧による液体の吸引や加圧による液体の排出が生じないようにし、例え弾性体として金属ばねなど使用しても一層確実に液体と金属との接触を防止できるようにしている。
【0018】
さらに、この発明の請求項3記載のカップラーは、請求項1または2記載の構成に加え、前記ソケットと前記プラグとの嵌合連結部をシールするシール材を、前記プラグ側に装着したことを特徴とするものである。
【0019】
このカップラーによれば、前記ソケットと前記プラグとの嵌合連結部をシールするシール材を、前記プラグ側に装着するようにしており、機器の本体側のソケットに比べ、カートリッジ側のプラグにシール材を設けることで、シール材の疲労損傷等の問題を回避できるようにしている。
【0020】
また、この発明の請求項4記載のカップラーは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記ソケットと前記プラグとの間に、嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設けたことを特徴とするものであり、このカップラーによれば、連結保持手段で嵌合連結状態を保持でき、ソケットとプラグを連通状態とする場合の付勢手段の反力を支持できるようにしている。
【0021】
さらに、この発明の請求項5記載のカップラーは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記ソケットと前記プラグとの連通経路が外部に対しシールされた後、前記ソケットの前記弁体および前記プラグの前記弁体とが連通可能に構成してあることを特徴とするものであり、このカップラーによれば、ソケットとプラグを嵌合連結してから弁体同士を連通させることで、漏洩などを防止できるようにしている。
【0022】
また、この発明の請求項6記載のカップラーは、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記カップラーがメタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられて構成されることを特徴とするものであり、このカップラーによれば、メタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられるカップラーとして必要な機能を全て満たすものとなる。
【0023】
すなわち、メタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられるカップラーとしては、以下の条件を満たすものである必要がある。
【0024】
1)簡単に着脱できること、
2)ソケットとプラグのいずれも、非接合時には弁体を閉じたシール状態にできること、
3)接合時に弁体を開くことができ、この状態を保持できること、
4)容器をスクイズするなどの簡便な方法で、容易に燃料を充填できること、
5)接合時には、シール状態が確立した後、弁体が開くこと、
6)接合を解除した際、接合部に付着する残液量が少ないこと、
7)内容液と金属が直接触れない構造であること
8)弁体の往復移動に伴う圧力変化の影響を回避できる構造であること。
【発明の効果】
【0025】
この発明の請求項1記載のカップラーによれば、弁体の外側のハウジング内に、弁体を開閉方向に往復移動可能かつ両端部でシール可能に装着し、このハウジング内の弁体の外側に弁体を付勢する付勢手段を構成する弾性体を収納してその内側のシールされた部分に流路を形成するようにしたので、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、弾性体をハウジング内に収納することで、液体との接触を防止することができる。
【0026】
また、この発明の請求項2記載のカップラーによれば、ハウジング内の弁体の外側の弾性体が装着された空間を、圧力変化を防止可能に構成したので、弁体の開閉にともなう往復動によっても弾性体を装着した空間の圧力変化を防止でき、負圧による液体の吸引や加圧による液体の排出が生じないようにでき、例え弾性体として金属ばねなど使用しても一層確実に液体と金属との接触を防止することができる。
【0027】
さらに、この発明の請求項3記載のカップラーによれば、前記ソケットと前記プラグとの嵌合連結部をシールするシール材を、前記プラグ側に装着するようにしたので、例えば機器の本体側のソケットに比べ、カートリッジ側のプラグにシール材を設けることで、シール材の疲労損傷等の問題を回避することができる。
【0028】
また、この発明の請求項4記載のカップラーによれば、嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設けたので、連結保持手段で嵌合連結状態を保持でき、ソケットとプラグを連通状態とする場合の付勢手段の反力を支持することができる。
【0029】
さらに、この発明の請求項5記載のカップラーによれば、ソケットとプラグの連通経路を外部に対しシールしてから弁体同士を連通させることができ、漏洩などを防止することができる。
【0030】
また、この発明の請求項6記載のカップラーによれば、メタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられるカップラーとして必要な機能を全て満たすものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1および図2はこの発明のカップラーの一実施の形態にかかる縦断面図で、図1は接続前の状態を、図2は接続状態をそれぞれ示すものである。
【0032】
このカップラー10は、ソケットS10と、このソケットS10と嵌合連結されるプラグP10とで構成され、例えばメタノール燃料電池の本体側FにソケットS10が設けられ、メタノール容器としてのカートリッジ側にプラグP10が設けられ、互いを連通させて本体側に燃料を補充したり、カートリッジごと交換するのに用いられ、主要部は、非金属材料、例えばポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなどの合成樹脂で作られる。
【0033】
以下の説明では、各図面上での上下を基準に説明するが、実際の容器本体への装着方向を何ら制限するものでなく、どのような方向で実施しても良い。
【0034】
このカップラー10のソケットS10は、燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に装着孔11が形成され、ここでは先後2つの部材にそれぞれ装着孔11a,11bが形成され、その先端部側(各図中、下方側)の装着孔11aの内周に略円筒状のソケット本体12が装着されており、後端部側(各図中、上方側)の装着孔11bには、弾性体を収納する略底付き円筒状のハウジング13が装着されている。
【0035】
ソケット本体12には、中間部に仕切り部12aが形成されてその中心部に流路孔12bが形成されるとともに、流路孔12bの上方側に弁座となるシール部12cが形成してある。そして、ソケット本体12の仕切り部12aの上方には、小径円筒部12dと大径円筒部12eとが段差部12fを介して形成され、最上部外周には、固定用のフランジ部12gが形成され、後述するハウジング13のフランジ部13aとともに燃料電池の本体Fに固定されている。
【0036】
また、ソケット本体12の仕切り部12aの下方には、プラグ装着部12hが形成され、段差部12iおよび内径部12jでシールできるようにしてある。
【0037】
このソケット本体12の上方には、装着孔11bに装着された弾性体を収納する略底付き円筒状のハウジング13が底部分を上にし、その最下部外周に形成されたフランジ部13aを介してソケット本体12と連結されており、ハウジング13の上端部外周には、Oリング14が取り付けられて装着孔11bとシールされている。
【0038】
このハウジング13には、フランジ部13aの内側にソケット本体12の大径円筒部12eと同一径の大径円筒部13bが形成され、その上方に小径円筒部13cが段差部13dを介して形成してあり、小径円筒部13cと同心に管状のストッパ部13eが下方に突き出して形成され、後述するピストンバルブ15のストロークを規制するようにしてあり、この管状のストッパ部13eの中心部が貫通する流路孔13fとしてある。
【0039】
このようなソケット本体12とハウジング13とで形成される略円筒空間内には、弁体となるピストンバルブ15が装着され、ソケット本体12の仕切り部12aの上方の弁座となるシール部12cと接触してシールする弁部15aを下端部中央に備えるとともに、弁部15aの下端に開閉用の操作部15bが突き出して形成してある。
【0040】
そして、この操作部15bを流路孔12bから突出すようにすることで、後述する接続されるプラグP10の操作部と協働してソケット側及びプラグ側の弁体を開閉することができるようになっている。
【0041】
また、この弁体となるピストンバルブ15の上下外周部には、それぞれソケット本体12の小径円筒部12dと接触しながら往復移動する下部シール部15cが形成されるとともに、ハウジング13の小径円筒部13cと接触しながら往復移動する上部シール部15dが形成してある。さらに、このピストンバルブ15の内周部には、流路15eが形成され、弁部15aの上部外側と下部シール部15cの間に開口するとともに、上部シール部15dの上端に開口してハウジング13のストッパ部13eの流路孔13fと連通するようになっている。また、ピストンバルブ15の流路15eの上端部をハウジング13のストッパ部13eに当てることでピストンバルブ15のストロークが規制されるようにしてある。
【0042】
したがって、ソケット本体12の弁座となるシール部12cが開閉されると、ピストンバルブ15の下部シール部15cの内側からピストンバルブ15の内周の流路15eを介してハウジング13のストッパ部13eの流路孔13fで燃料電池本体F側の流路と連通したり、遮断されたりする。
【0043】
また、このピストンバルブ15の中間部には、ソケット本体12の大径円筒部12eの内周と隙間をあけて往復移動するリング状のばね係止部15fが外側に突き出して形成してある。
【0044】
そして、ハウジング13の段差部13dとピストンバルブ15のばね係止部15fとの間に付勢手段を構成する弾性体としての金属製コイルばね16が装着され、ピストンバルブ15を閉弁方向に付勢するようになっている。
【0045】
したがって、ピストンバルブ15が閉じられた状態では、図1に示すように、ピストンバルブ15のばね係止部15fの下面とソケット本体12の段差部12fとはわずかな隙間が形成されて弁部15aが弁座であるシール部12cに着座した状態となり、金属製コイルばね16はピストンバルブ15の下部シール部15cと上部シール部15dとでシールされた空間17内に位置するようになっており、ピストンバルブ15の流路15e内などを流れるメタノールなどの液体とは完全にシールされている。
【0046】
一方、ピストンバルブ15が操作部15bで押し上げられた開弁状態では、図2に示すように、ピストンバルブ15が金属製コイルばね16に抗して押し上げられ、弁部15aが弁座であるシール部12cから離れて開弁状態となり、ピストンバルブ15の下部シール部15cの内側からピストンバルブ15の内周の流路15eを介してハウジング13のストッパ部13eの流路孔13fで燃料電池本体F側の流路と連通した状態となる。
【0047】
この開弁状態でも金属製コイルばね16はピストンバルブ15の下部シール部15cと上部シール部15dとが移動するものの、ピストンバルブ15の下部シール部15cと上部シール部15dとでシールされた空間17内に位置することで、ピストンバルブ15の流路15e内などを流れるメタノールなどの液体とは完全にシールされている。
【0048】
そして、このピストンバルブ15の開弁及び閉弁の往復移動にともなって、ピストンバルブ15の下部シール部15cと上部シール部15dとでシールされた空間17内に位置するばね係止部15fが往復移動するが、ばね係止部15fの外周とソケット本体12の大径円筒部12eの内周との間に圧力変化を防止可能とするための隙間が形成してあるので、この空間17内の圧力変化が生じることがなく、この空間内にメタノールなどの液体が吸引されたり、押し出されることがない。
【0049】
このことは、仮に、ピストンバルブ15の下部シール部15cと上部シール部15dとでシールされた空間17内に位置するばね係止部15fがソケット本体12の大径円筒部12eの内周と接触しながら往復移動するとすれば、ばね係止部15fの移動でその上下の空間17の容積が変化することに伴って圧力が変化する。
【0050】
すると、この圧力変化によって上下のシール部15c、15dのシール破壊を招き、負圧状態でメタノールなどの液体を流路15eなどから吸引し、加圧状態で空間17内に吸引されたメタノールなどの液体を流路15eなどに押し出すことが生じ、流路15eなどを流れる液体に金属イオンが混入する恐れが生じる。
【0051】
ところが、このソケットS10では、空間17の圧力変化が生じることがなく、ソケットS10内を流れるメタノールなどの液体に、金属製コイルばね16の金属イオンが溶出して混入することを完全に防止できるのである。
【0052】
さらに、このカップラー10のソケットS10には、燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に形成された下方の装着孔11aの下方側にプラグP10との嵌合連結状態を保持する連結保持手段18の一方としてロック用溝19が形成され、例えば30度程度の範囲の円弧状の溝が中心軸を挟んで対向して設けられる。そして、このロック用溝19内に突出するソケット本体12の外周部の対角位置の半分に係止部12kを形成しておき、これら2つの係止部12kでフックを係止し、段差部のない部分でフックを開放できるように、軸方向の挿入・離脱と回動とを組み合わせて操作(ツイストロック)するようにしてある。
【0053】
次に、このようなソケットS10に嵌合連結されるプラグP10について説明する。
このカップラー10のプラグP10は、例えばソケットS10と同様に構成部品が非金属材料とされ、金属製コイルばねを使用しても流路を流れる液体と直接接することがないようにしたものが用いられる。
【0054】
このカップラー10のプラグP10は、燃料電池の燃料であるメタノールがいれられた容器BのノズルNの先端部(各図中、上端部)外周に装着される略2段円筒状のプラグ本体21を備えており、仕切り部21aの下方の大径円筒部21bの内周部に容器BのノズルNが装着されて下端部の係止リング部で固定される。
【0055】
このプラグ本体21には、仕切り部21aの上部にソケットS10のプラグ装着部12hに挿脱される小径円筒部21cが突き出して形成され、中間部外周に装着したOリング14aをソケット装着部12hの下方の内径部12jにて径方向のシールを行うとともに、段差部12iに当てることで軸方向のシールを合わせてできるようにしてある。
【0056】
このプラグ本体21の小径円筒部21cの上端部の中心に流路21dが形成され、この流路21dの下端内周部に弁座となるシール部21eが形成してある。
【0057】
そして、この小径円筒部21cの内周には、内側小径部21fと内側大径部21gとが内側段差部21hを介して形成してある。
【0058】
このプラグ本体21の下方には、略底付き円筒状のハウジング22が設けられ、上端フランジ部22aを容器BのノズルNの上端面にパッキン23を介して当てた状態でノズルN内に位置させてプラグ本体21で挟むように固定されている。
【0059】
このハウジング22には、上方に大径円筒部22bが形成され、段差部22cを介して下方に小径円筒部22dが形成してあり、この段差部22cがばね装着部となるようにしてある。また、このハウジング22の下端部には、小径円柱状のストッパ部22eが上方に突き出して形成され、後述するピストンバルブ24のストロークを規制するストッパとして機能するようにしてあり、このハウジング22の底部のストッパ部22eの外側に流路孔22fが形成され、容器B内と連通した状態となっている。
【0060】
このようなプラグ本体21とハウジング22とで形成される略円筒空間内には、弁体となるピストンバルブ24が装着され、このピストンバルブ24には、プラグ本体21の小径円筒部21cの上方の弁座となるシール部21eと接触してシールする弁部24aを先端部外周に備えるとともに、先端面に開閉用の操作凹部24bが形成してある。
【0061】
したがって、この操作凹部24bを、すでに説明したソケットS10の操作部15bで接続時に押すようにすることで、協働してソケット側及びプラグ側の弁体を開閉することができる。
【0062】
また、この弁体となるピストンバルブ24の上下外周部には、それぞれプラグ本体21の内側大径部21gと接触しながら往復移動する上部シール部24cが形成されるとともに、ハウジング22の小径円筒部22dと接触しながら往復移動する下部シール部24dが形成してある。さらに、このピストンバルブ24には、下端中央部から上部シール部24cの内側に貫通する流路24eが形成され、プラグ本体21の流路21dとシール部21eを介して連通するとともに、ハウジング22の流路孔22fと連通している。
【0063】
したがって、プラグ本体21の弁座となるシール部21eからピストンバルブ24の弁部24aが移動されて開閉されると、ピストンバルブ24の流路24eおよびハウジング22の流路孔22fを介して容器B内と連通したり、遮断されたりする。
【0064】
また、このピストンバルブ24の流路24eの下端部をハウジング22のストッパ部22eに当てることでピストンバルブ24のストロークが規制される。
【0065】
そして、ハウジング22のばね装着部となる段差部22cとピストンバルブ24のばね係止部24fとの間に付勢手段を構成する弾性体としての金属製コイルばね25が装着され、ピストンバルブ24を閉弁方向に付勢するようになっている。
【0066】
したがって、ピストンバルブ24が閉じられた状態では、図1に示すように、ピストンバルブ24のばね係止部24fの上面とプラグ本体21の仕切り部21aとはわずかな隙間が形成されて弁部24aが弁座であるシール部21eに着座した状態となり、金属製コイルばね25はピストンバルブ24の上部シール部24cと下部シール部24dとでシールされた空間26内に位置するようになっており、ピストンバルブ24の流路24e内などを流れるメタノールなどの液体とは完全にシールされている。
【0067】
一方、ピストンバルブ24が操作凹部24bで押し下げられた開弁状態では、図2に示すように、ピストンバルブ24が金属製コイルばね25に抗して押し下げられ、弁部24aが弁座であるシール部21eから離れて開弁状態となり、ピストンバルブ24の流路24eおよびハウジング22の流路孔22fを介して容器B内と連通した状態となる。
【0068】
この開弁状態でも金属製コイルばね25はピストンバルブ24の上部シール部24cと下部シール部24dとが移動するものの、ピストンバルブ24の上部シール部24cと下部シール部24dとでシールされた空間26内に位置することで、ピストンバルブ24の流路24e内などを流れるメタノールなどの液体とは完全にシールされている。
【0069】
そして、このピストンバルブ24の開弁及び閉弁の往復移動にともなって、ピストンバルブ24の上部シール部24cと下部シール部24dとでシールされた空間26内に位置するばね係止部24fが往復移動するが、ばね係止部24fの外周とプラグ本体21の大径円筒部22bの内周との間に圧力変化を防止可能とするための隙間が形成してあるので、この空間26内の圧力変化が生じることがなく、この空間内にメタノールなどの液体が吸引されたり、押し出されることがない。
【0070】
すなわち、ソケットS10で説明したように、仮に、ピストンバルブ24の上部シール部24cと下部シール部24dとでシールされた空間26内に位置するばね係止部24fがプラグ本体21の大径円筒部22bの内周と接触しながら往復移動するとすれば、ばね係止部24fの移動で空間26の上下の容積が変化することに伴って圧力が変化する。
【0071】
すると、この圧力変化によって上下のシール部24c、24dのシール破壊を招き、負圧状態でメタノールなどの液体を流路24eなどから吸引し、加圧状態で空間26内に吸引されたメタノールなどの液体を流路24eなどに押し出すことが生じ、流路24eなどを流れる液体に金属イオンが混入する恐れが生じる。
【0072】
ところが、このプラグP10では、空間26の圧力変化が生じることがなく、プラグP10内を流れるメタノールなどの液体に、金属製コイルばね25の金属イオンが溶出して混入することを完全に防止できるのである。
【0073】
また、このカップラー10のプラグP10には、プラグ本体21にソケットS10との嵌合連結状態を保持する連結保持手段18の相手側としてロックアーム27が設けられ、例えば2本のロックアーム27の先端内側にそれぞれフック27aを形成することで構成される。そして、すでに説明した燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に形成した連結保持手段18の一方としてのロック用溝19である、例えば30度程度の範囲の円弧状の溝が中心軸を挟んで対向して設けられ、このロック用溝19内に突出するソケット本体12の対角位置の半分に係止部12kが形成され、この係止部12kでフックを係止し、段差部のない部分でフックを開放できるようにして、軸方向の挿入・離脱と回動とを組み合わせて操作するようにしたロック用溝19に、このフック27aを挿入してロック用溝19の対角位置の半分のソケット本体12の係止部12kに回動して係止することで連結状態を保持することができ、係止部12kのない部分にフック27aを戻すように回動して引き抜くことで開放できるようにしてある。
【0074】
また、このプラグP10が設けられる容器Bには、図示しないカバーキャップがねじ込まれるようになっており、例えばカバーキャップの内側天面に取り付けたパッキンでシールできるようにしてある。
【0075】
このようなソケットS10とプラグP10とで構成したカップラー10では、互いを嵌合連結状態にすると、まず、プラグ本体21の小径円筒部21cの外周のOリング14aがソケット本体12のプラグ装着部12hの内径部12jの内周面に接触して互いがシール状態となり、この連結初期状態では、ソケットS10の操作部15bでプラグP10のピストンバルブ24の操作凹部24bが押し下げられることなく、ソケットS10では弁部15aがシール部12cに着座し、プラグP10では、弁部24aがシール部21eに着座した閉弁状態が保持される。
【0076】
さらに、プラグP10がソケットS10に押し込まれると、ソケットS10の操作部15bとプラグP10のピストンバルブ24の操作凹部24bとが当接して互いを押し戻すことで、ソケットS10とプラグP10のピストンバルブ15,24の弁部15a,24aがシール部12c、21eから離れることになり、連通状態となる。
このとき、ソケットS10とプラグP10のピストンバルブ15,24がそれぞれストッパ部13e、22eとでストロークが規制してあるので、金属製コイルばね16,25のばね力が互いに違っても弱い方が先に動いてストッパに当たって開弁状態となった後、強い方が動いて両方の弁が開くようになる。
したがって、ばね力を調整しておくことで、弁の開く順序を設定することができ、例えば本体などのソケットS10側を先に開き、容器などのプラグP10側を後に開くようにすることもできる。
【0077】
そして、このプラグP10とソケットS10との嵌合連結状態が連結保持手段18の一方側のロック用溝19内のソケット本体12の係止部12kに相手側のロックアーム27のフック27aを挿入後回動して係止することで保持することができる。
【0078】
これにより、容器B内のメタノールをスクイズすることで燃料電池Fのタンク内に加圧して供給することで、空間内の空気を一旦圧縮し、スクイズを止めることで、圧縮された空気を容器側に戻すようにしてメタノールを補充したり、容器ごと交換することもできる。
【0079】
以上、詳細に説明したように、このカップラー10によれば、メタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられるカップラーとして必要な以下の条件を満たすものとなる。
【0080】
1)簡単に着脱できること、
2)ソケットとプラグのいずれも、非接合時には弁体を閉じたシール状態にできること、
3)接合時に弁体を開くことができ、この状態を保持できること、
4)容器をスクイズするなどの簡便な方法で、容易に燃料を充填できること、
5)接合時には、シール状態が確立した後、弁体が開くこと、
6)接合を解除した際、接合部に付着する残液量が少ないこと、
7)内容液と金属が直接触れない構造であること
8)弁体の往復移動に伴う圧力変化の影響を回避できる構造であること。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明のカップラーの一実施の形態にかかる縦断面図で、接続前の状態を示すものである。
【図2】この発明のカップラーの一実施の形態にかかる縦断面図で、接続状態を示すものである。
【図3】従来の連結装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 カップラー
S10 ソケット
P10 プラグ
F メタノール燃料電池の本体側
11 装着孔
11a 装着孔
11b 装着孔
12 ソケット本体
12a 仕切り部
12b 流路孔
12c シール部(弁座)
12d 小径円筒部
12e 大径円筒部
12f 段差部
12g フランジ部
12h プラグ装着部
12i 段差部
12j 内径部
12k 係止部
13 ハウジング
13a フランジ部
13b 大径円筒部
13c 小径円筒部
13d 段差部
13e ストッパ部
13f 流路孔
14 Oリング
14a Oリング
15 ピストンバルブ
15a 弁部
15b 操作部
15c 上部シール部
15d 下部シール部
15e 流路
15f ばね係止部
16 金属製コイルばね
17 空間
18 連結保持手段
19 ロック用溝(連結保持手段の一方側)
21 プラグ本体
21a 仕切り部
21b 大径円筒部
21c 小径円筒部
21d 流路
21e シール部(弁座)
21f 内側小径部
21g 内側大径部
21h 内側段差部
22 ハウジング
22a 上端フランジ部
22b 大径円筒部
22c 段差部(ばね装着部)
22d 小径円筒部
22e ストッパ部
22f 流路孔
23 パッキン
24 ピストンバルブ
24a 弁部
24b 操作凹部
24c 上部シール部
24d 下部シール部
24e 流路
24f ばね係止部
25 金属製コイルばね
26 空間
27 ロックアーム(連結保持手段の相手側)
27a フック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方の前記弁体の基端部外側に当該弁体が開閉方向に往復移動可能かつ当該弁体の両端部でシール可能に収納するハウジングを設け、このハウジング内の前記弁体の外側に当該弁体を付勢する前記付勢手段を構成する弾性体を装着する一方、前記弁体の内側に流路を形成したことを特徴とするカップラー。
【請求項2】
前記ハウジング内の前記弁体の外側の前記弾性体が装着された空間を、圧力変化を防止可能に構成したことを特徴とする請求項1記載のカップラー。
【請求項3】
前記ソケットと前記プラグとの嵌合連結部をシールするシール材を、前記プラグ側に装着したことを特徴とする請求項1または2記載のカップラー。
【請求項4】
前記ソケットと前記プラグとの間に、嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカップラー。
【請求項5】
前記ソケットと前記プラグとの連通経路が外部に対しシールされた後、前記ソケットの前記弁体および前記プラグの前記弁体とが連通可能に構成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカップラー。
【請求項6】
前記カップラーがメタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられて構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカップラー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−57007(P2007−57007A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243874(P2005−243874)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】