説明

カテーテルハンドル及びこのようなハンドルを含むカテーテルアセンブリ

【課題】所望の位置へのカテーテルの操向が容易で、電極シースが大きな柔軟性を得ることができることにより、電極−組織接触を高めることができ、不適切に位置された部位へのアクセス可能性を向上させることができる。また、被処置部位での電極の細かい位置決めも可能になり、接触促進領域を設けることにより、電極−組織接触を高めることができる。
【解決手段】カテーテルハンドル10はハンドル本体12を含む。ハンドル本体12上にはステアリング制御機構14が移動可能に支持されている。ハンドル本体12上には電極シースキャリア16が支持されており、電極シースキャリア16は少なくともステアリング制御機構14に対して移動できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することによりその内容が本願に組み入れられる2005年3月4日に出願された米国仮特許出願第60/659,020号による優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般にカテーテルに関し、特に、カテーテルハンドル及び当該ハンドルを含むカテーテルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルは、患者の診断及び処置で様々な機能を果たすべく益々使用されている。多くの場合、カテーテルは、患者の脈管系を介して患者の身体内に挿入され、所望の位置へ操向される。
【0004】
カテーテルの操向が脈管系を損傷させないように注意深い操作を伴うことは言うまでもない。この結果として、カテーテル内に組み込まれるステアリング機構は、一般に、適度に大きい曲率半径を与える。
【0005】
また、装置の位置決めでは、信号検出及び心臓処置の両方において、偏向時の装置の形状は、時として、身体の特定の部分へのアクセスを困難にする。例えば心臓の冠状静脈洞内にカテーテルを配置することが難しい。
【0006】
更に、カテーテルを使用して処置される部位は少なからず表面凹凸を有しており、このような表面凹凸は、例えば適切な電極−組織接触を得るために克服されなければならない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
ハンドル本体と、
上記ハンドル本体に移動可能に支持されたステアリング制御機構と、
上記ハンドル本体に支持され、少なくとも上記ステアリング制御機構に対して移動可能な電極シースキャリアと、
を含むカテーテルハンドルが提供される。
【0008】
上記ハンドル本体が基端と先端とを有する細長い管状部材であり、上記ハンドル本体の基端又は基端近傍には電気コネクタが配置されていてもよい。
【0009】
都合良く、上記ステアリング制御機構が、上記ハンドル本体に支持された移動可能ユニットを備えていてもよい。上記移動可能ユニットが、上記ハンドル本体内に受けられたスライダに固定された円筒要素を備えていてもよい。
【0010】
上記ハンドル本体に対する上記ステアリング制御機構の移動を容易にするため、上記ステアリング制御機構が操作要素を支持していてもよい。上記操作要素が、上記ステアリング制御機構の上記円筒要素から径方向外側へ延びるフランジであってもよい。
【0011】
上記ハンドル本体及び上記スライダは、上記ハンドル本体に対する上記ステアリング制御機構の移動を案内するための相補的ガイド体を含んでいてもよい。上記相補的ガイド体が、ハンドル本体によって画成される少なくとも1つのガイド体を含み、上記スライダがガイド体内に受けられる少なくとも1つのガイド要素を画成していてもよい。上記ハンドル本体の上記ガイド体は、縦方向に延びる一対の互いに正反対のガイドスロットを備え、スロット内に受けられる一対の径方向外側に延びるガイド要素をスライダが有していることが好ましい。したがって、上記ステアリング制御機構は、上記ハンドル本体に対して少なくとも縦方向に移動できてもよい。
【0012】
上記電極シースキャリアが、上記ステアリング制御機構の上記円筒要素と協働するスリーブを備えていてもよい。上記スリーブが、上記キャリアに接続可能な電極シースの電極に対する電気的接続のための電極コネクタを支持していてもよい。上記コネクタが、上記スリーブに対して上記電極シースを保持するための保持体を支持していることが好ましい。
【0013】
上記スリーブ及び上記ステアリング制御機構は、上記ステアリング制御機構の上記円筒要素に対する上記スリーブの移動を制御するための相補的協働体を含んでいてもよい。上記協働体は、上記円筒要素及び上記スリーブのうちの一方の壁に形成された軸方向に延びる少なくとも1つのスロットと、上記円筒要素及び上記スリーブのうちの他方によって形成され且つ上記スリーブ及び上記円筒要素の互いに対する移動を制限するための追従体とを備えていてもよい。
【0014】
先と同様に、上記ハンドル本体内への異物の侵入を妨げるため、上記スロットの両端には上記円筒要素と上記スリーブとの間にシール構造が配置されてもよい。
【0015】
上記ハンドル本体及び上記ステアリング制御機構のうちの少なくとも一方は、ハンドルに取り付けられるカテーテルで使用されるステアリングシャフトを固定するための固定体を含んでいてもよい。上記ハンドル本体及び上記ステアリングシャフトの両方が固定体を含み、各固定体がステアリングシャフトの異なる部分に関連付けられることが好ましい。上記ハンドル本体の固定体は、上記ハンドル本体内に配置されたボスを備えていてもよい。上記ボスには軸方向に延びる通路が画成され、この通路内に上記ステアリングシャフトの第1の部分を受けることができ、上記ステアリングシャフトの第1の部分が使用時に固定要素により所定位置に保持されてもよい。上記ステアリング制御機構の上記スライダがステアリングシャフトの第2の部分を受けることができる固定体を画成し、上記ステアリングシャフトの第2の部分が使用時に固定要素によって所定位置に保持されてもよい。上記ステアリング制御機構のスライダ及び上記ハンドル本体のボスの両方における上記固定要素は、上記スライダ及び上記ハンドル本体のボスのそれぞれに設けられた軸方向に延びる孔内に受けられるグラブネジの形態を成していてもよい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、
ハンドル本体と、上記ハンドル本体に対して移動可能に配置されたステアリング制御機構と、上記ステアリング制御機構及び上記ハンドル本体に対して移動可能に配置された電極シースキャリアとを有するカテーテルハンドルと、
少なくともステアリング制御機構に対して接続されるステアリングシャフトと、
上記電極シースキャリアによって支持される電極シースと、
を備えるカテーテルアセンブリが提供される。
【0017】
上記ステアリングシャフトは、少なくとも上記ステアリング制御機構に対して取り外し可能に接続されていてもよい。上記ステアリングシャフトは、上記ステアリング制御機構と上記ハンドル本体との間の相対的な移動が上記ステアリングシャフトの先端領域の操向、したがって上記ステアリングシャフト上に受けられた上記カテーテルの電極シースの操向をもたらすように、上記ステアリング制御機構及び上記ハンドル本体の両方に対して取り外し可能に接続されていることが好ましい。
【0018】
上記カテーテルハンドルと共に使用される上記ステアリングシャフトは、“A steerable catheter”と題された2005年2月18日付けの出願人の同時係属の国際出願PCT/AU2005/000216号に記載されたタイプのものであってもよい。この国際出願の内容は、参照として本明細書中に組み入れられる。
【0019】
したがって、上記ステアリングシャフトが湾曲促進領域を有する管状部材を含んでいてもよく、この管状部材内にアクチュエータがスライド可能に受けられていてもよく、上記アクチュエータ及び上記管状部材が先端で互いに取り付けられ、上記管状部材及び上記アクチュエータのうちの一方の基端が上記ステアリング制御機構に接続され、上記管状部材及び上記アクチュエータのうちの他方の基端が上記ハンドル本体に接続される。モジュール化を容易にするため、上記ステアリングシャフトの一部は、それらの対応する上記ハンドル本体の部品に対して取り外し可能に接続できてもよい。
【0020】
上記ステアリングシャフトの先端領域は、電極シースに対するステアリングシャフトの適切な操作により被処置部位で電極を付勢して組織と接触させるための複数の接触促進領域を含み、電極シースが複数の離間した電極を支持していてもよい。ステアリングシャフトの接触促進領域は、アクチュエータと管状部材との先端取り付け部よりも先端側に配置されていてもよい。上記接触促進領域は、上記ステアリングシャフトの上記アクチュエータの先端領域の一部を形成していることが好ましい。
【0021】
上記電極シースキャリアは、上記ステアリング制御機構に対して移動可能に支持されていてもよい。一実施形態において、上記電極シースキャリアは、上記ステアリング制御機構上に移動可能に支持されていてもよい。また、上記電極シースキャリア及びステアリング制御機構は、互いに対して軸方向に且つ回転方向に相対的に移動できてもよい。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、カテーテルの動作を制御する方法であって、
電極シースを当該電極シースのルーメン内に受けられるステアリングシャフトに対して軸方向に移動させることにより、上記電極シースの先端部が上記ステアリングシャフトの先端によって支持されないようにするステップと、
上記ステアリングシャフトの先端に対する上記電極シースの支持されていない先端部の屈曲を可能にするステップと、
を含む方法が提供される。
【0023】
上記方法は、上記ステアリングシャフトに対して上記電極シースを回転させて、上記電極シースの屈曲部を所定の円弧にわたって回転させるステップを含んでいてもよい。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、
基端と先端とを有する長尺要素と、
上記長尺要素の先端に配置される複数の離間した接触促進領域と、
を含むカテーテルスタイレット(探り針)が提供される。
【0025】
上記接触促進領域は、複数の電極を支持し且つ使用時にそのルーメン内にスタイレットを受けることができる電極シースに対する上記スタイレットの適切な操作により、電極を被処置部位で組織と接触させる働きをしてもよい。
【0026】
上記接触促進領域は、電極シースの各電極の中心間距離に近い「波長」を有する一連の波状部の形態を成していてもよい。
【0027】
都合良く、スタイレットは、カテーテルステアリングシャフトのアクチュエータとして実施されてもよい。したがって、スタイレットの接触促進領域に対して電極シースを移動させることにより、電極−組織接触を高めることができ、或いは、特定の身体上の場所への容易なアクセス可能性を得ることができてもよい。上記接触促進領域が上記ステアリングシャフトの上記管状部材に対する上記アクチュエータの取付点の先端側に配置されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルハンドルの第1の位置における立体図を示している。
【図2】第1の位置におけるカテーテルハンドルの更なる立体図を示している。
【図3】第2の位置におけるカテーテルハンドルの立体図を示している。
【図4】第1の位置におけるカテーテルハンドルの側断面図を示している。
【図5】第2の位置におけるカテーテルハンドルの側断面図を示している。
【図6】カテーテルハンドルの他のバージョンの一部の概略平面図を示している。
【図7A】本発明の他の実施形態に係るカテーテルアセンブリのカテーテル形成部の先端部の概略図であって、アセンブリのカテーテルハンドルがその第1の位置にある概略図を示している。
【図7B】カテーテルハンドルがその第2の位置にあるときのカテーテルの先端部の概略図を示している。
【図8】本発明の更なる実施形態に係るカテーテルスタイレットの先端部の概略図を示している。
【図9】カテーテルアセンブリのステアリングシャフトの一部として実施される図8のカテーテルスタイレットの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に図面の図1〜図6を参照すると、本発明の一実施形態に係るカテーテルハンドルが全体的に参照符号10によって示されている。
【0030】
ハンドルは、ハンドル本体12と、ハンドル本体12上に移動可能に支持されたステアリング制御機構14と、ステアリング制御機構14に対して移動可能に支持された電極シースキャリア16とを含む。
【0031】
図面の図4に更に詳しく示されるように、ハンドル本体12は基端18と先端20とを有している。ハンドル本体12の基端18内には、電気制御ユニット(図示せず)の患者ケーブルに対する接続のため、電気コネクタ22が収容されており、この電気コネクタを介してカテーテル24(図7A、7B)の電極が制御される。
【0032】
ハンドル本体12はそれを貫通して延びる通路26を有しており、この通路を通じてコネクタ22からコネクタ28へとリード線(図示せず)が延びている。コネクタ28はキャリア16の一部を形成しており、キャリア16の先端からコネクタ28が突出している。
【0033】
通路26内には、ハンドル本体20の先端20よりも基端側に、ボス30が配置されている。ボス30は、軸方向に貫通して延びる通路32を有している。ボス30には、横方向に延びる一対の孔34が通路32と交差して形成されている。
【0034】
ステアリング制御機構14は、ハンドル本体12の先端20上にわたってスライド可能に取り付けられた円筒要素36の形態を成す移動可能なユニットを含む。円筒要素36の基端には、径方向外側に延びるフランジ38の形態を成す操作要素が設けられている。
【0035】
円筒要素にはスライダ40が固定されている。スライダ40は、ハンドル本体12の通路26内に受けられており、円筒要素36と共に軸方向にスライドする。スライダ40は、径方向外側に突出する互いに正反対のタブ42の形態を成すガイド要素を有している。タブ42は、ハンドル本体12に形成された一対の互いに正反対の軸方向に延びるスロット44内に受けられている。スロット44内に受けられたタブ42は、ハンドル本体12に対するステアリング制御機構14の軸方向移動を制御する。
【0036】
スライダ40は、それを貫通して延びる軸方向通路46を有している。横方向に延びる一対の孔48が通路46と交差している。スライダ40は、リード線をコネクタ22からスライダ40の側面を通り過ぎてコネクタ28へと通過させることができる長方形の断面形状を成している。ボス30も同様の構造を有している。
【0037】
カテーテル24は、ルーメン52を形成する電極シース50を含む(図7A)。カテーテル50のルーメン52内にはステアリングシャフト54が受けられている。前述したように、ステアリングシャフト54は、出願人の同時係属の国際出願PCT/AU2005/000216号に記載されるタイプのものである。したがって、ステアリングシャフト54は、図面の図4に56で概略的に示される細長い管状部材を有するタイプのものであり、当該管状部材内には、図面の図4に58で概略的に示される中実又は中空のワイヤアクチュエータが受けられる。アクチュエータ58の先端は、管状部材56の先端領域(図面の図9に104で示されている)と固定されている。管状部材56とアクチュエータ58との間の相対的な移動は、ステアリングシャフト54の先端の操向を行う。したがって、管状部材56は、使用時、各孔48内で受けられるグラブネジ(図示せず)によってスライダ40の通路46内に捕捉されて保持される。同様に、アクチュエータ58は、ボス30の各孔34内に受けられるグラブネジ(これも図示せず)によってハンドル本体12のボス30の通路32内に捕捉されて保持される。ハンドル本体12に対してステアリング制御機構14を軸方向にスライド移動させることにより、アクチュエータ58に対してステアリングシャフト54の管状部材56が軸方向に移動し、ステアリングシャフト54の先端、したがってカテーテル24の先端の操向がなされる。
【0038】
ハンドル本体12内への異物の侵入を妨げるため、Oリング60の形態を成すシール体が、スロット44の両端に形成された座部内に受けられる。
【0039】
電極シースキャリア16は、ステアリング制御機構14の円筒要素36の先端部上に装着されたスリーブ62を含む。スリーブ62は腰状先端領域64を有しており、この腰状先端領域内にコネクタ28が固定される。
【0040】
スリーブ62及びステアリング制御機構14の円筒要素は、ステアリング制御機構14に対するスリーブ16の移動を制御するための相補的な協働体66を有している。協働体66は、ステアリング制御機構14の円筒要素36の壁に形成された軸方向に延びるスロット68、及び、スリーブ62の壁から径方向内側に突出する追従体70の形態を成している。カテーテルハンドル10の組み立てを容易にするため、追従体70は都合良く除去できるグラブネジである。
【0041】
先と同様に、ハンドル10の内部への異物の侵入を妨げるため、スロット68の両端には一対の座部が形成されており、各座部内にはOリング72の形態を成すシールが受けられている。
【0042】
ハンドル本体12の先端20からはガイドチューブ74が突出しており、このガイドチューブ内にステアリングシャフト54が受けられて支持されている。
【0043】
カテーテル24の電極シース50は、クリップ76によってキャリア16のコネクタ28に対して取り外し可能に接続されている。
【0044】
特定の状況では、ステアリングシャフト54に対して電極シース50を回転移動させることが望ましい場合がある。したがって、図6には、ハンドル10の他の実施形態が示されている。この実施形態では、相補的な協働体66の軸方向に延びるスロット68に加えて、縦方向に離間して横方向に延びる複数のスロット78も形成されている。これにより、場合によってはステアリング制御機構14の円筒要素36に対する電極シースキャリア12のスリーブ62の軸方向移動が行われた後に、電極シース54をステアリングシャフト54に対して所定の円弧にわたって回転させることができる。
【0045】
使用時、ステアリングシャフト54は、ステアリング制御機構14のスライダ40に対してステアリングシャフト54の管状部材56を固定するとともにハンドル本体12のボス30に対してアクチュエータ58を固定することにより、ハンドル10に対して取り外し可能に結合される。ステアリングシャフト54の管状部材56は、スライダ40の孔48内へグラブネジを挿入することによりスライダ40に対して固定される。同様に、アクチュエータ58は、ボス30の孔34内へグラブネジを挿入することによりボス30に対して所定位置に固定される。カテーテル24の電極シースは、ステアリングシャフト54を覆ってコネクタ28の先端上の所定位置にクリップ留めされる。
【0046】
カテーテル24が導入体(図示せず)内に挿入され、導入体が患者の脈管系内に挿入される。導入体は、患者の身体内、例えば患者の心臓の心房内の所望部位へとカテーテル24の先端を供給する。その部位で、カテーテル24の先端が導入体の先端を通じて推し進められる。これにより、カテーテル24の電極シース50の先端によって支持される電極80が露出される。電極80は、例えば心臓不整脈の治療において組織を焼灼して組織中に外傷部を形成するために使用できる。また、それにより、ステアリングシャフト54の管状部材56の湾曲促進領域106(図9)が解放される。ステアリングシャフト54の管状部材56とアクチュエータ58との間の相対的な軸方向移動により、湾曲促進領域106でステアリングシャフト4が湾曲し、それにより、患者の脈管系を通じてカテーテル24を操向することができる。
【0047】
ワイヤから成るステアリングシャフト54が所定の曲率半径を有していることは言うまでもない。これは、特定の状況においては、組織の焼灼を行うための電極−組織接触を妨げ、或いは、患者の身体内の部位の特定の部分へのアクセスを妨げる場合がある。すなわち、電極シース50の更に大きな柔軟性が必要とされる場合がある。
【0048】
この柔軟性を得るため、図面の図1、2、4に示される位置から図面の図3、5に示される位置へとスリーブ16が移動される。これが行われると、図面の図7Aに示される位置から図面の図7Bに示される位置へと電極シース50が移動する。これにより、図面の図7Bに破線で示されるように、ステアリングシャフト54によってもはや支持されない電極シース50の部分の柔軟性を更に大きくできる。
【0049】
言うまでもなく、この構造を用いると、ハンドル10を介して加えられ且つステアリングシャフト54によって支持されない電極シース50の部分のクランク状の曲げを引き起こす電極シース50に対する圧力により、基端電極80(図面の図7B)を組織と接触させることができる。その後、その基端電極80の基端側に圧力を加えて、少なくともその電極80を、場合によりその電極80の先端側の任意の電極を、その部位での表面凹凸を乗り越えて組織と更に密に接触させることができる。場所へのアクセスが困難な場合、電極シース50の支持されていない部分の大きな柔軟性がそのような場所へのアクセスを更に容易にする。
【0050】
また、図面の図6に示される実施形態の場合には、ハンドル10のステアリング制御機構14に対するスリーブ16の回転により、電極シース50の自由な支持されていない部分が所定の円弧を描くこともでき、それにより、更に長い外傷部の形成が可能になるとともに、その部位に対する電極80の細かい位置決めが可能になる。
【0051】
図面の図8を参照すると、カテーテルスタイレットが描かれて全体的に参照符号90で示されている。スタイレット90は、ニチノールなどの超塑性合金から成る長尺要素92を有している。長尺要素92は基端94と先端領域96とを有している。長尺要素92の先端領域96は、一連の波状部98の形態を成す複数の軸方向に離間する接触促進領域を伴っている。波状部98は、その上側を覆い且つスタイレット90をそのルーメン102内に受ける電極シース100の隣り合う電極間の中心間距離とほぼ同じ波長‘w’を有している。
【0052】
したがって、使用時、スタイレット90がカテーテルの電極シース100のルーメン102内に受けられるとともに、電極シース100に対してスタイレット90を軸方向に移動させることにより、スタイレット90の一部が、上側を覆って位置する電極と位置合わせされ、それにより、被処置部位での電極−組織接触が高められる。例えば、スタイレット90の「谷」が電極下に位置されてもよい。電極シース100に対してスタイレット90を軸方向に移動させることにより、波状部の「山」が上側を覆って位置する電極と位置合わせされ、それにより、電極−組織接触が高められる。
【0053】
スタイレット90は、前述した実施形態のカテーテル24のステアリングシャフト54の一部として実施することができる。そのため、図面の図9に示されるように、管状部材56に対するアクチュエータ58の取付点104の先端側に位置するステアリングシャフトのアクチュエータ58の先端部は一連の波状部98を有している。
【0054】
ステアリングシャフト54のこの構造を用いると、電極シースキャリア16に対するステアリング制御機構14の相対的な軸方向移動により、波状部98のうちの1つの「山」を電極80のうちの1つと位置合わせすることができる。このようにすれば、電極−組織接触を促進させて、被処置部位で表面凹凸を乗り越えることにより形成される外傷部の質を高めることができる。カテーテル24を回転させることにより電極−組織接触が更に高められてもよい。
【0055】
波状部のうちの1つの所望部分を電極80と位置合わせさせるために電極シース50をステアリングシャフト54に対して数ミリメートル移動させるだけで済むように、各電極が10mm以下の長さを有していることは言うまでもない。
【0056】
このように、本発明の利点は、所望の位置へのカテーテルの操向が容易なカテーテルハンドル10が提供されるという点である。電極シース50の大きな柔軟性を得ることができ、それにより、電極−組織接触を高めることができ、不適切に位置された部位へのアクセス可能性を向上させることができるとともに、被処置部位での電極80の細かい位置決めも可能になると出願人は信じている。また、接触促進領域を設けることにより、電極−組織接触を高めることができる。
【0057】
本発明の他の利点はハンドル10のモジュール性である。ステアリングシャフト54はハンドル10に対して取り外し可能に取り付けることができ、また、電極シースは電極シースキャリア16に対して取り外し可能に取り付けることができる。このようにすることにより、特定の部品、例えばハンドル10及びステアリングシャフト54を再使用できるだけでなく、システムの汎用性が高められる。必要に応じて、電極シースを患者の身体内にそのまま残しておくことができることは言うまでもない。ハンドル10及びステアリングシャフト54を取り外し、要求に応じて異なるステアリングシャフト又は異なるスタイレットを支持する他のハンドルと交換することができる。
【0058】
当業者であれば分かるように、広く記載された本発明の思想又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示される本発明に対して多数の変形及び/又は改良を行ってもよい。したがって、本実施形態は、あらゆる点で、例示的とみなされるべきであり、限定的であると見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0059】
10…カテーテルハンドル、12…ハンドル本体、14…ステアリング制御機構、16…電極シースキャリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端(18)と先端(20)とを有する細長い管状部材であるハンドル本体(12)と、
前記ハンドル本体(12)に移動可能に支持されたステアリング制御機構(14)であって、ステアリングシャフト(54)の基端がハンドル(10)に取り付けられたときに、前記ステアリング制御機構(14)が移動すると前記ステアリングシャフト(54)の先端の操向をもたらすように構成されるステアリング制御機構(14)と、
前記ハンドル本体(12)の先端(20)に支持された電極シースキャリア(16)であって、前記ハンドル(10)に電極シース(50)を取り外し可能に取り付ける手段と、前記電極シース(50)が前記ハンドル(10)に取り付けられたときに、前記電極シース(50)の電極(80)に接続される電気コネクタ(28)と、を備え、前記ステアリングシャフト(54)及び前記電極シース(50)の両方が前記ハンドル(10)に取り付けられたときに、前記ステアリングシャフト(54)に対して前記電極シース(50)の軸方向の移動をもたらすように、少なくとも前記ステアリング制御機構(14)に対して移動可能な電極シースキャリア(16)と、
を含むカテーテルハンドル(10)。
【請求項2】
前記電極シースキャリア(16)が、前記ステアリング制御機構(14)に対して軸方向に移動可能である、請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項3】
前記ステアリング制御機構(14)が、軸方向に移動可能に前記ハンドル本体(12)に支持された移動可能ユニットを備える、請求項1又は2に記載のカテーテルハンドル。
【請求項4】
前記移動可能ユニットが、前記ハンドル本体内に受けられたスライダ(40)に固定された円筒要素(36)を備える、請求項3に記載のカテーテルハンドル。
【請求項5】
ステアリング制御機構(14)が操作要素(38)を支持している、請求項4に記載のカテーテルハンドル。
【請求項6】
前記操作要素(38)が、前記ステアリング制御機構(14)の前記円筒要素(36)から径方向外側へ延びるフランジである、請求項5に記載のカテーテルハンドル。
【請求項7】
前記ハンドル本体(12)及び前記スライダ(40)が、前記ハンドル本体(12)に対する前記ステアリング制御機構(14)の移動を案内するための相補的ガイド体(42,44)を含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載のカテーテルハンドル。
【請求項8】
前記相補的ガイド体が、前記ハンドル本体(12)によって画成される少なくとも1つのガイド体(44)を含み、前記スライダ(40)が前記ガイド体(44)内に受けられる少なくとも1つのガイド要素(42)を画成している、請求項7に記載のカテーテルハンドル。
【請求項9】
前記電極シースキャリア(16)が、前記ステアリング制御機構(14)の前記円筒要素(36)と協働するスリーブ(62)を備える、請求項4〜8のいずれか一項に記載のカテーテルハンドル。
【請求項10】
前記スリーブ(62)が、前記電極コネクタ(28)を支持している、請求項9に記載のカテーテルハンドル。
【請求項11】
前記コネクタ(28)が、前記スリーブ(62)に対して前記電極シース(50)を保持するための保持体を支持している、請求項10に記載のカテーテルハンドル。
【請求項12】
前記スリーブ(62)及び前記ステアリング制御機構(14)が、前記ステアリング制御機構(14)の前記円筒要素(36)に対する前記スリーブ(62)の移動を制御するための相補的協働体(68,70)を含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載のカテーテルハンドル。
【請求項13】
前記ハンドル本体(12)及び前記ステアリング制御機構(14)のうちの少なくとも一方が、ハンドル(10)に取り付けられるカテーテル(24)で使用されるステアリングシャフト(54)を固定するための固定体を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のカテーテルハンドル。
【請求項14】
前記ハンドル本体(12)の固定体が、前記ハンドル本体(12)内に配置されたボス(30)を備える、請求項13に記載のカテーテルハンドル。
【請求項15】
ステアリングシャフト(54)及び電極シース(50)と、
カテーテルハンドル(10)と、
を備え、
前記ステアリングシャフト(54)が前記電極シース(50)のルーメン内に受けられ、
前記カテーテルハンドル(10)が、ハンドル本体(12)と、前記ハンドル本体(12)に移動可能に支持されたステアリング制御機構(14)であって、前記ステアリング制御機構(14)が移動すると、少なくとも前記ステアリング制御機構(14)に接続される前記ステアリングシャフト(54)の先端の操向をもたらすように動作するステアリング制御機構(14)と、前記ハンドル本体(12)の先端(20)に支持された電極シースキャリア(16)と、を含み、
前記電極シースキャリア(16)が、前記電極シースキャリア(16)によって支持される電極シース(50)の電極(80)に接続される電気コネクタ(28)を備え、前記電極シースキャリア(16)が、前記ステアリングシャフト(54)に対して前記電極シース(50)の軸方向の移動をもたらすように、少なくとも前記ステアリング制御機構(14)に対して移動可能である、カテーテルアセンブリ(24)。
【請求項16】
前記ステアリングシャフト(54)が、少なくとも前記ステアリング制御機構(14)に対して取り外し可能に接続されている、請求項15に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項17】
前記ステアリングシャフト(54)が、前記ステアリング制御機構(14)と前記ハンドル本体(12)との間の相対的な移動が前記ステアリングシャフト(54)の先端の操向、したがって前記ステアリングシャフト(54)上に受けられたカテーテル(24)の前記電極シース(50)の操向をもたらすように、前記ステアリング制御機構(14)及び前記ハンドル本体(12)の両方に対して取り外し可能に接続されている、請求項15又は16に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項18】
前記ステアリングシャフト(54)が湾曲促進領域(106)を有する管状部材(56)を含み、この管状部材(56)内にアクチュエータ(58)がスライド可能に受けられ、前記アクチュエータ(58)及び前記管状部材(56)が先端で互いに取り付けられ、前記管状部材(56)及び前記アクチュエータ(58)のうちの一方の基端が前記ステアリング制御機構(14)に接続され、前記管状部材(56)及び前記アクチュエータ(58)のうちの他方の基端が前記ハンドル本体(12)に接続される、請求項17に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項19】
前記ステアリングシャフト(54)の先端領域が、前記電極シース(50)に対する前記ステアリングシャフト(54)の適切な操作により被処置部位で電極(80)を付勢して組織と接触させるための複数の接触促進領域を含み、前記電極シース(50)が複数の離間した電極(80)を支持している、請求項18に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項20】
前記ステアリングシャフトの前記接触促進領域が、前記アクチュエータ(58)と前記管状部材(56)との先端取り付け部よりも先端側に配置されている、請求項19に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項21】
前記接触促進領域が、前記ステアリングシャフト(54)の前記アクチュエータ(58)の先端領域の一部を形成している、請求項20に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項22】
前記電極シースキャリア(16)が、前記ステアリング制御機構(14)上に移動可能に支持されている、請求項15に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項23】
前記電極シースキャリア(16)及び前記ステアリング制御機構(14)が、互いに対して軸方向に且つ回転方向に相対的に移動できる、請求項22に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項24】
前記電極シースキャリア(16)及び前記ステアリング制御機構(14)が、互いに対して回転方向に相対的に移動できる、請求項22に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項25】
カテーテル(24)の動作を制御する方法であって、
電極シース(50)を当該電極シース(50)のルーメン内に受けられるステアリングシャフト(54)に対して軸方向に移動させることにより、前記電極シース(50)の先端部が前記ステアリングシャフト(54)の先端によって支持されないようにするステップと、
前記ステアリングシャフト(54)の先端に対する前記電極シース(50)の支持されていない先端部の屈曲を可能にするステップと、
を含む方法。
【請求項26】
前記ステアリングシャフト(54)に対して前記電極シース(50)を回転させて、前記電極シース(50)の屈曲部を所定の円弧にわたって回転させるステップを含む請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177531(P2011−177531A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−102035(P2011−102035)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2007−557282(P2007−557282)の分割
【原出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(503146955)カソリック リミテッド (36)
【Fターム(参考)】