説明

カドヘリン介在過程を調節する化合物及び方法

細胞接着認識(CAR)配列を含むペプチド、及びかかるペプチドを含む組成物が提供される。多様な治療背景において、カドヘリン介在過程を調節するためにかかるペプチドを使用する方法も提供される。カドヘリン介在過程を調節することができる化合物を同定する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にはカドヘリン介在過程を調節(modulate)する方法に関し、より具体的にはカドヘリン介在過程を調節するペプチドの使用に関する。本発明は、カドヘリン介在過程を調節することができるペプチジル及び非ペプチジル化合物を同定する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
古典的カドヘリンは、カルシウム依存性細胞接着に介在する1回膜貫通型糖タンパク質のファミリーを構成する。このファミリーのメンバーには、E-カドヘリン、N-カドヘリン、R-カドヘリン、及びP-カドヘリンが含まれる。カドヘリンは、ホモフィリックな様式で細胞接着を促進する(ある細胞の表面上のカドヘリンが、別の細胞の表面上の同じカドヘリンと結合する)(Takeichi, (1990) Ann. Rev. Biochem., 59, 237-252)。カドヘリンは、単なる「生物学的接着剤」ではない。カドヘリンは、多様な受容体プロテインキナーゼ(例えば、線維芽細胞成長因子受容体)と相互作用するその能力に加え、β-カテニンとして知られる細胞内シグナル伝達タンパク質と結合する能力により、様々なシグナル伝達経路を制御することもできる(Qian et al., (2004) EMBO J., 23, 1739-1748)。
【0003】
古典的カドヘリンの細胞外部分は、約110アミノ酸のドメイン5個(EC1-EC5)(そのそれぞれがカルシウム結合部位により隔てられている)からなる。カドヘリンの正しいフォールディングにはカルシウムが絶対的に必要であり、カルシウムは、別のカドヘリン分子との接着に不可欠なロット様構造をもたらす(Nagar et al., (1996) Nature, 380, 360-364)。カドヘリンはまた、単一の疎水性膜貫通ドメイン、並びに、カドヘリン分子をβ-カテニン、γ-カテニン及びp120-カテニンのような様々な細胞内タンパク質と連結する2つの細胞質ドメインから構成される。それらの細胞内タンパク質は、次にカドヘリンを細胞骨格及び他のシグナル伝達分子に連結させる(Blaschuk et al., (2002) Mol. Membr. Biol., 19, 75-80)。
【0004】
特定の細胞による不適当なカドヘリン発現は、癌の発生、細胞浸潤及び転移のメカニズムの1つである。E-カドヘリンは、主に上皮細胞で発現され、腫瘍サプレッサーとして機能する。癌腫では、遺伝的又は後成的事象により、E-カドヘリン発現が低下又は喪失しており(Van Aken et al., (2001) Virchows Arch., 439, 725-751)、さらにそれは細胞極性の喪失及び細胞の脱分化を伴っている。そのうえ、E-カドヘリンcDNAによる癌細胞のトランスフェクションによって、さらに分化し浸潤性が低下した表現型が生じる(Vleminckx et al., (1991) Cell, 66, 107-119)。N-カドヘリンは、神経細胞、血管平滑筋細胞及び内皮細胞を含む多くの正常な細胞型で発現されるが、正常な上皮細胞では発現されない。N-カドヘリンは、多くの種類の癌において不適当に発現される。癌腫では、E-カドヘリンの喪失が、N-カドヘリンのde novo発現を伴うことが報告されている(Van Aken et al., (2001) Virchows Arch., 439, 725-751)。癌細胞では、N-カドヘリンが腫瘍細胞の浸潤及び転移に関して重要な役割を果たす(Hazan et al., (2000) J. Cell. Biol., 148, 779-790)。幾つかの癌細胞では、E-及びN-カドヘリンを共発現しているが、浸潤能力に対するN-カドヘリンの寄与は、E-カドヘリンの機能よりも勝っている(Nieman et al., (1999) J. Cell. Biol., 147, 631-644)。さらに、腫瘍血管新生は、腫瘍の発達及び転移において必須であり(Folkman et al., (1992) J. Biol. Chem., 267, 10931-10934)、腫瘍血管系の標的化は、癌治療に対する新たなアプローチとなる(Kelland, (2005) Cur. Cancer Therapy Rev., 1, 1-9)。N-カドヘリンは、周皮細胞(平滑筋様細胞)及び内皮細胞により発現され、それによりこれらの細胞間の相互作用を確保するので、血管形成及び血管安定性の維持において不可欠な役割を果たす(Gerhardt et al., (2003) Cell Tissue Res., 314, 15-23; Paik et al., (2004) Genes Dev., 18, 2392-2403)。N-カドヘリンアンタゴニストは、正常血管に影響を与えることなく、腫瘍血管系を選択的に破壊する可能性を有する。したがって、かかるアンタゴニストは抗癌剤として有望である。
【0005】
細胞接着がもたらす透過性バリアは、体内の特定組織及び腫瘍に対する薬物の送達を困難にする。例えば、皮膚パッチは、皮膚を介して薬物を投与するのに便利なツールである。しかしながら、皮膚パッチの使用は、上皮及び内皮細胞バリアのせいで、疎水性小分子に限定されている。同様に、内皮細胞は、毛細血管の多くを薬物に対し不透過性にし、血液脳関門は中枢神経系に対する薬物の標的化を阻んでいる。しかも多くの固形癌は、内部細胞に対する抗腫瘍剤及び抗体の送達を制限する内部バリアを発達させる。透過性バリアはまた、ウイルス(例えば、アデノウイルス)を組織(例えば、肺)に送達し難くすることで、疾患の治療に対する遺伝子治療アプローチを妨げる。
【0006】
かかるバリアの薬物通過を促進する試みは、一般に、in vivoでバリアを横切って分子を輸送する特定の受容体又はキャリアタンパク質に依存している。しかしながら、かかる方法は、低い内在性輸送速度及び/又は薬物と結合させた場合のキャリアタンパク質の機能不良のせいで、多くは非効率的である。細胞接着を破壊する様々な化学薬剤を用いることにより、効率性は改善されてきたが、かかる薬剤は通常、望ましくない副作用を伴い、侵襲的な投与方法を必要とすることがあり、また不可逆的な効果をもたらし得る。
【0007】
したがって、古典的カドヘリン、例えば、N-カドヘリン及びE-カドヘリンが介在する様々な過程のうち1以上を調節することができる薬剤が、依然として求められている。本発明は、ファージディスプレイ技術を用いて、古典的カドヘリン介在過程を調節するのに有効な新しいクラスのペプチド組成物を同定し、さらに他の関連する利点をもたらす。本発明は、カドヘリン介在過程を調節することができる新しい化合物を同定及び使用する方法も提供する。
【非特許文献1】Takeichi, (1990) Ann. Rev. Biochem., 59, 237-252
【非特許文献2】Qian et al., (2004) EMBO J., 23, 1739-1748
【非特許文献3】Nagar et al., (1996) Nature, 380, 360-364
【非特許文献4】Blaschuk et al., (2002) Mol. Membr. Biol., 19, 75-80
【非特許文献5】Van Aken et al., (2001) Virchows Arch., 439, 725-751
【非特許文献6】Vleminckx et al., (1991) Cell, 66, 107-119
【非特許文献7】Van Aken et al., (2001) Virchows Arch., 439, 725-751
【非特許文献8】Hazan et al., (2000) J. Cell. Biol., 148, 779-790
【非特許文献9】Nieman et al., (1999) J. Cell. Biol., 147, 631-644
【非特許文献10】Folkman et al., (1992) J. Biol. Chem., 267, 10931-10934
【非特許文献11】Kelland, (2005) Cur. Cancer Therapy Rev., 1, 1-9
【非特許文献12】Gerhardt et al., (2003) Cell Tissue Res., 314, 15-23
【非特許文献13】Paik et al., (2004) Genes Dev., 18, 2392-2403
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
一態様では、本発明は、カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-X-L/I/V/F/M/A(配列番号1)
[式中、Xはアミノ酸であり、L/I/V/F/M/AはLeu又はIle又はVal又はPhe又はMet又はAlaである]
を有する細胞接着認識(CAR)配列を含む、細胞接着調節剤(cell adhesion modulating agent)を提供する。
【0009】
本発明のこの態様の一実施形態では、XがE、T、Y、Q、M、F、D、又はLから選択されるアミノ酸を含む。
【0010】
別の実施形態では、上記式のCAR配列は、WEL、WTL、WYI、WEF、WQM、WEV、WTV、WYV、WQV、WTM、WQF、WTF、WMI、WDF、WTI、WFI、WQL、WEI、及びWLAからなる群から選択される。
【0011】
より具体的な実施形態では、CAR配列は、WEFSICETC (配列番号2)、WTVCPIGNC (配列番号3)、WEVCLTEKC (配列番号4)、WELCVSSSC (配列番号5)、WEVRLTEKC (配列番号6)、WELRVSSPC (配列番号7)、WYVCVGAHC (配列番号8)、WQVCVGAHC (配列番号9)、WTMCYPDTC (配列番号10)、WQFCYAQHC (配列番号11)、WQMVLCPAC (配列番号12)、WELVQCLTC (配列番号13)、WTFNFCTAC (配列番号14)、HWYITTGPVREK (配列番号15)、SWTLYTPSGQSK (配列番号16)、NWFIDFPVYPPL (配列番号17)、KWELTYFANSFP (配列番号18)、EWMIHYDSALTS (配列番号19)、AWQVHYSYVASS (配列番号20)、SWLAVWPATGAS (配列番号21)、SWTFYWPDAQLG (配列番号22)、EWTFQWNSYPAD (配列番号23)、EWDFFWPPTQTP (配列番号24)、QWQLHWPASKQA (配列番号25)、QWTITYPKPPAL (配列番号26)、GWTVFYPDNLRP (配列番号27)、SWELYYPLRANL (配列番号28)、及びQWEIRYPWPSMG (配列番号29)からなる群から選択されるものであるか、又はWEL、WTL、WYI、WEF、WQM、WEV、WTV、WYV、WQV、WTM、WQF、WTF、WMI、WDF、WFI、WQL、WTI、WEI、及びWLAから選択されるアミノ酸配列を少なくとも含むその一部である。
【0012】
別の態様では、本発明は、カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-E-V/L/F-C/S/R-V/L/I-S/T/C-S/E-S/K/P/T(配列番号30)
[式中、V/L/FはVal又はLeu又はPheであり、C/S/RはCys又はSer又はArgであり、V/L/IはVal又はLeu又はIleであり、S/T/CはSer又はThr又はCysであり、S/EはSer又はGluであり、S/K/P/TはSer又はLys又はPro又はThrである]
を有するCAR配列を含む、細胞接着調節剤を提供する。
【0013】
本発明のこの態様のより具体的な実施形態では、CAR配列は、WEFSICETC (配列番号2)、WEVCLTEKC (配列番号4)、WELCVSSSC (配列番号5)、WEVRLTEKC (配列番号6)及びWELRVSSPC(配列番号7)からなる群から選択されるものであるか、又はWEF、WEV及びWELからなる群から選択されるアミノ酸配列を少なくとも含むその一部である。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-L/H-Q/T-P/S-Y/W-F/S-P/D-S/T-Y(配列番号31)
[式中、L/HはLeu又はHisであり、Q/TはGln又はThrであり、P/SはPro又はSerであり、Y/WはTyr又はTrpであり、F/SはPhe又はSerであり、P/DはPro又はAspであり、及びS/TはSer又はThrである]
を有するCAR配列を含む、細胞接着調節剤が提供される。
【0015】
本発明のこの態様のより具体的な実施形態では、CAR配列が、WLQPYFPSY (配列番号32)及びWHTSWSDTY (配列番号33)からなる群から選択されるものであるか、又はWLQ及びWHTからなる群から選択されるアミノ酸配列を少なくとも含むその一部である。
【0016】
本発明の別の態様では、カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-Y/Q-VCVGAH(配列番号34)
[式中、Y/QはTyr又はGlnである]
を有するCAR配列を含む、細胞接着調節剤が提供される。
【0017】
本発明のこの態様のより具体的な実施形態では、CAR配列が、WYVCVGAHC (配列番号8)及びWQVCVGAHC (配列番号9)からなる群から選択されるるものであるか、又はWYV及びWQVからなる群から選択されるアミノ酸配列を少なくとも含むその一部である。
【0018】
本発明の別の態様では、カドヘリン介在過程を調節し、WTMCYPDTC (配列番号10)、WQFCYAQHC (配列番号11)、WQMVLCPAC (配列番号12)、WELVQCLTC (配列番号13)、WQWCFKATC (配列番号35)、WTFNFCTAC (配列番号14)、WTWHWPPCC (配列番号36)、HWYITTGPVREK (配列番号15)、SWTLYTPSGQSK (配列番号16)、NWFIDFPVYPPL (配列番号17)、KWELTYFANSFP (配列番号18)、EWMIHYDSALTS (配列番号19)、AWQVHYSYVASS (配列番号20)、SWLAVWPATGAS (配列番号21)、SWTWHFPESPPP (配列番号37)、SWTFYWPDAQLG (配列番号22)、EWTWVFPTTHTS (配列番号38)、EWTFQWNSYPAD (配列番号23)、EWDFFWPPTQTP (配列番号24)、EWQYHWPTLQSR (配列番号39)、QWQLHWPASKQA (配列番号25)、QWTITYPKPPAL (配列番号26)、GWTVFYPDNLRP (配列番号27)、QWEWHYMAGYLA (配列番号40)、SWELYYPLRANL (配列番号28)、QWEIRYPWPSMG (配列番号29)、QWTYYLPLTPRW (配列番号41)、EWTYTFPTAHSI (配列番号42)、EWFWSWPGYSNT (配列番号43)、SWEWYIPYLNRT (配列番号44)及びAWTWSLPTLPQS (配列番号45)からなる群から選択される1以上のCAR配列を含む、細胞接着調節剤が提供される。
【0019】
本発明の別の実施態様では、カドヘリン介在過程を調節し、WYVCVGAH (配列番号46)、HWYITTGPVREK (配列番号15)、SWTLYTPSGQSK (配列番号16)、EWMIHYDSALTS (配列番号19)、SWELYYPLRANL (配列番号28)、及びWELRVSSP (配列番号47)からなる群から選択される1以上のCAR配列を含む、細胞接着調節剤が提供される。
【0020】
別の態様では、本発明は上記に規定されるCAR配列の保存的類縁体(conservative analog)を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は上記に規定されるCAR配列に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は上記に規定されるCAR配列のペプチド擬似体(peptidomimetic)を提供する。
【0023】
ある実施形態では、細胞接着調節剤は、3〜50アミノ酸残基、3〜25アミノ酸残基、又は3〜10アミノ酸残基のサイズのペプチドである。
【0024】
本発明は、上記の細胞接着調節剤を、製薬上許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物をさらに提供する。かかる組成物は、薬物をさらに含んでもよい。あるいは、又はさらに、かかる組成物は以下:(a)本発明に従って同定されたCAR配列と異なるCAR配列を含むペプチド及び/又は(b)本発明のCAR配列と異なるCAR配列に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメント、を含み得る。
【0025】
さらなる態様では、細胞接着を調節する方法であって、カドヘリン発現細胞(cadherin-expressing cell)を、上記の細胞接着調節剤と接触させることを含む方法が提供される。
【0026】
さらなる態様では、細胞増殖を調節する方法であって、カドヘリン発現細胞を、上記の細胞接着調節剤と接触させることを含む方法が提供される。
【0027】
さらなる態様では、細胞遊走を調節する方法であって、カドヘリン発現細胞を、上記の細胞接着調節剤と接触させることを含む方法が提供される。
【0028】
さらなる態様では、細胞の生存を調節する方法であって、カドヘリン発現細胞を、上記の細胞接着調節剤と接触させることを含む方法が提供される。ある実施形態では、例えば、本発明のCAR配列の二量体又は多量体を含む環状ペプチドが、細胞の生存を増強するために提供される。
【0029】
さらなる態様では、哺乳動物における好ましからざる細胞接着を減少させる方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0030】
さらなる態様では、例えば哺乳動物における腫瘍に対する、薬物の送達を促進する方法であって、上記の細胞接着調節剤と薬物とを、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0031】
関連する実施形態では、本発明は、哺乳動物の皮膚を介した薬物の送達を促進する方法であって、哺乳動物の上皮細胞を、薬物、及びカドヘリン介在細胞接着を抑制する調節剤と接触させて、それにより、皮膚を介した薬物の送達を促進することを含む前記方法も提供する。皮膚パッチ及び1以上の調節剤を含み、経皮送達を促進するためのキットも提供される。
【0032】
関連する態様では、哺乳動物において癌を治療する及び/又は腫瘍細胞の転移を抑制する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は癌に罹患した哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである前記方法が提供される。
【0033】
さらなる態様では、カドヘリン発現細胞におけるアポトーシスを誘導する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0034】
さらなる態様では、カドヘリン発現細胞におけるアポトーシスを抑制する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0035】
本発明は、他の態様では、哺乳動物における血管新生を抑制する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法も提供する。
【0036】
本発明は、他の態様では、哺乳動物における血管新生を促進する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を増強するものである、前記方法も提供する。
【0037】
他の態様では、血管退行を促進する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法がさらに提供される。
【0038】
さらなる実施形態では、本発明は、哺乳動物の中枢神経系への薬物送達を促進する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法を提供する。
【0039】
さらに他の態様では、細胞接着を増強する方法が提供される。かかる態様の1つでは、例えば、哺乳動物における創傷治癒を促進する方法であって、哺乳動物における創傷を、上記の細胞接着調節剤と接触させることを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を増強するものである、前記方法が提供される。
【0040】
関連する態様では、本発明は、哺乳動物内に移植された外来組織の接着性を増強する方法であって、哺乳動物内の外来組織の移植部位を、上記の細胞接着調節剤と接触させることを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を増強するものである、前記方法を提供する。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物における脱髄性神経疾患を治療する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法を提供する。
【0042】
関連する態様では、本発明は、星状細胞上のカドヘリン発現細胞の遊走を促進する方法であって、カドヘリン発現細胞を(a)上記の細胞接着調節剤;及び(b)1以上の星状細胞;と接触させることにより、星状細胞上のカドヘリン発現細胞の遊走を促進することを含む、前記方法を提供する。
【0043】
本発明は、哺乳動物の免疫系を調節する方法であって、哺乳動物に上記の細胞接着調節剤を投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法も提供する。
【0044】
さらに別の態様では、哺乳動物において妊娠を予防する方法であって、哺乳動物に上記の細胞接着調節剤を投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0045】
さらなる態様では、哺乳動物における血管透過性を亢進させる方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0046】
本発明は、哺乳動物におけるシナプス安定性を阻害する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法をさらに提供する。
【0047】
本発明の他の実施形態では、血管平滑筋細胞(VSMC)又は周皮細胞の、例えば細胞接着、増殖、遊走及び/又は生存などの挙動を調節する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現VSMC又は周皮細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0048】
関連する実施形態では、血管平滑筋細胞又は周皮細胞の過剰増殖及び/又は遊走を制御する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着のインヒビターである、前記方法が提供される。この実施態様に従う具体的な使用例は、再発狭窄症、静脈バイパス移植不全、同種移植血管障害、透析グラフト機能不全、フィブリンキャップ(thin cap fibroatheroma)、及び他の血管狭窄症の成立又は進行を予防することに関する。関連する実施形態には、本態性及び二次性高血圧症、アテローム、動脈硬化症、又は内皮損傷又は外傷が生じている他の適応症を治療する方法が含まれる。
【0049】
別の関連する実施形態では、血管外傷の後に血管内腔面積を維持する方法であって、本発明で提供される細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着のインヒビターである、前記方法が提供される。
【0050】
別の関連する実施形態では、外傷を受けた血管を治療する方法であって、本発明で提供される細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着のインヒビターである、前記方法が提供される。この実施形態に従う具体的な使用例には、ステント留置、臓器移植、静脈バイパス術、血管形成術、透析グラフト留置術等の際に起こり得る外傷の治療が含まれる。
【0051】
さらに他の実施形態では、1以上の調節剤は、医療デバイス(例えば、バルーン、ステント、シャント、カテーテル、ステントグラフト、グラフト、血管グラフト、血管パッチ、フィルター、外膜ラップ、腔内敷詰め(paving)システム、脳ステント、脳動脈瘤フィルターコイル、心筋プラグ、ペースメーカー・リード、透析アクセスグラフト、心臓弁等)の能動部品として提供される。例えば、本発明の調節剤を、公知技術を用いて、基本的に任意の医療デバイスと結合、該医療デバイスにコーティング、又は該医療デバイス内に分散させることにより、所望の生理学的状態及び/又は解剖学的状態で、調節剤を提供又は送達することができる。
【0052】
これらの実施形態及び他の実施形態では、本発明の調節剤を、所与の適応症に好適でかつ本発明で提供される調節剤の送達に適合する基本的に任意の送達法により、カドヘリン発現細胞又は被験体に送達することができる。一実施形態では、本発明で提供される調節剤の投与は、カテーテルを通じて達成される。別の実施形態では、該調節剤の投与は、輸液針を用いて達成される。
【0053】
本発明では、神経細胞の生存を増加させる方法及び/又は、例えば脳卒中又は他のタイプの脳虚血の結果として生じる神経損傷を抑制する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現神経細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着を増強するものである、前記方法も提供される。
【0054】
本発明の関連する実施形態は、ニューロパシーの治療だけでなく、脳卒中の回復のため、認知症での改善又は安定状態の確立のための治療、CNS、脊椎及び末梢神経系に対する外傷の治療のために提供される。
【0055】
別の実施形態では、神経突起伸長を増強する方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現神経細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着を増強するものである、前記方法が提供される。
【0056】
別の実施形態では、皮膚からの毛包の除去、例えば生きているすなわち無傷の毛包の除去を促進する方法であって、本発明の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。この実施形態のある態様では、望ましからざる毛包の除去及び/又は元々発生した部位とは異なる身体部位への毛包の再移植に、特に有用であることがわかった。
【0057】
他の実施形態では、血管新生を促進する方法であって、本発明で提供される調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を増強するものである、前記方法が提供される。
【0058】
さらに他の実施形態では、内皮細胞の挙動、例えば、内皮細胞の遊走、増殖、生存及び/又は接着を調節する方法であって、本発明で提供される細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0059】
さらなる実施形態では、内皮細胞接着を調節する方法であって、本明細書に記載された細胞接着調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。ある好ましい実施形態では、該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制することにより、哺乳動物における望ましからざる内皮細胞接着を減少させる。
【0060】
さらなる態様では、哺乳動物における血管透過性を亢進させる方法であって、上記の細胞接着調節剤を、カドヘリン発現内皮細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0061】
さらなる態様では、哺乳動物における新血管系を破壊する方法であって、上記の調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤はカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法も提供される。
【0062】
さらなる態様では、哺乳動物における子宮内膜症の発症を抑制する方法であって、上記の調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0063】
別の実施形態では、脂肪形成(血管新生に依存する過程)を調節する方法であって、本明細書に記載の調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法が提供される。
【0064】
別の実施形態では、腫瘍血流を調節する方法であって、本明細書に記載の調節剤を、カドヘリン発現内皮細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。その適用により、ある種の実施形態においては、調節剤は好ましくは、カドヘリン介在細胞接着を増強するものであり、別の場合には、該調節剤は好ましくは、カドヘリン介在細胞接着を抑制するものである。
【0065】
さらに他の実施形態では、血管新生及び新血管形成に依存する疾患状態の治療方法が提供される。新血管系の破壊は、新たに形成された血管の存在が、その根本的な障害、その症候又はその合併症と関連するような状態に対して治療効果がある。例えば、治療され得る障害には、良性前立腺過形成、糖尿病性網膜症、血管再発狭窄症、動静脈奇形、髄膜腫、血管腫、血管新生緑内障、乾癬、血管線維腫、関節炎、アテローム斑、角膜移植片新血管形成、血友病関節症、肥厚性瘢痕、出血性毛細血管拡張、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、硬皮症トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、子宮内膜症、黄斑変性症及び滲出性黄斑変性症が含まれるが、これらに限定されない。これらの方法は、本明細書に記載の調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含み、ここで該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着を抑制するものである。
【0066】
他の実施形態では、FGF受容体活性を調節する方法が提供される。かかる一実施形態では、好ましくはカドヘリン介在細胞接着を抑制する調節剤が、FGF受容体単量体同士の相互作用を阻害するために使用される。別の実施形態では、カドヘリン介在細胞接着を増強する調節剤は、好ましくはFGF受容体単量体同士の相互作用を促進するその能力のために用いられる。
【0067】
さらに別の実施形態では、薬物、例えば化学療法剤に対する腫瘍透過性バリアを調節する方法であって、本明細書に記載の調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0068】
別の実施形態では、例えば骨移植片の場合に、骨癒合を調節する方法であって、本明細書に記載の調節剤、好ましくはカドヘリン介在細胞接着を増強する調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。本発明の調節剤は、例えば、移植片に対する骨癒合を促進する上で有効でありうる。固相支持体と結合した単一のCAR含有ペプチドは、本発明のこの実施形態及び他の実施形態において、アゴニストとして作用し得る。
【0069】
別の実施形態では、創傷治癒を促進する方法であって、本明細書に記載の調節剤を、カドヘリン発現細胞と接触させること、又は哺乳動物に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0070】
本発明は、哺乳動物における血液サンプリングを容易にする方法であって、哺乳動物の上皮細胞を、カドヘリン介在細胞接着を抑制する細胞接着調節剤と接触させることにより、哺乳動物における血液サンプリングを促進する、前記方法も提供する。
【0071】
本発明は、哺乳動物において吸入した化合物の送達を促進する方法であって、哺乳動物の肺上皮細胞を、カドヘリン介在細胞接着を抑制する細胞接着調節剤と接触させることにより、吸入した化合物の送達を促進することを含む、前記方法も提供する。
【0072】
本発明は、哺乳動物における脊髄損傷を改善する方法であって、脊髄損傷を患う哺乳動物に、カドヘリン介在細胞接着を増強する細胞接着調節剤を投与することにより、脊髄損傷を改善することを含む、前記方法も提供する。
【0073】
別の態様では、本発明は、カドヘリン介在過程を調節する能力について、候補化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物の三次元構造を、本明細書に記載のCAR配列の三次元構造と比較し、カドヘリン介在過程を調節する候補化合物の能力を評価することを含む、前記方法を提供する。かかる方法では、候補化合物の構造とペプチドの構造との間の類似性により、カドヘリン介在過程を調節するその候補化合物の能力が示されうる。
【0074】
本発明の別の態様では、カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって:固相支持体のウェル、例えばプラスチック皿(又は他のポリマー系支持体)を、キメラタンパク質、例えばE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質又はN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングし;該キメラタンパク質を、ファージディスプレイライブラリー、例えばペプチドファージディスプレイライブラリーと接触させ;非特異的に結合したファージを除去し;特異的に結合したファージを溶出させ;さらにファージDNAを配列決定して該ペプチド配列を決定することを含む、前記方法が提供される。
【0075】
本発明の別の態様では、カドヘリン介在過程を調節することができる化合物(アンタゴニスト又はアゴニストのいずれか)を同定する方法であって:固相支持体のウェル、例えばプラスチック皿(又は他のポリマー系支持体)を、キメラタンパク質、例えば、カドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングし、ここで該キメラタンパク質は古典的カドヘリンであるP-カドヘリン及びR-カドヘリンだけでなく、他のタイプのカドヘリン、例えば非古典的カドヘリンであるVE-カドヘリン及びOB-カドヘリンを含む任意のカドヘリンを含んでよく;該キメラタンパク質を、ファージディスプレイライブラリー、例えばペプチドファージディスプレイライブラリーと接触させ;非特異的に結合したファージを除去し;特異的に結合したファージを溶出させ;さらにファージDNAを配列決定して該ペプチド配列を決定することを含む、前記方法が提供される。
【0076】
本発明の別の態様は、ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーを迅速にスクリーニングして、E-カドヘリン及び/又はN-カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体、例えばプラスチック皿のウェル(又は他のポリマー系支持体)を、キメラタンパク質、例えばE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質又はN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質で、コーティングし;テスト化合物の存在下で、該キメラタンパク質を、該キメラタンパク質と結合するファージと接触させ;さらにテスト化合物が、ファージとキメラタンパク質との結合を調節するかどうかを、例えばファージに対する抗体を利用するELISAで、決定することを含む、前記方法を提供する。
【0077】
本発明の別の態様は、ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーを迅速にスクリーニングして、カドヘリン介在過程を調節することができる化合物を同定する方法であって:固相支持体、例えばプラスチック皿のウェル(又は他のポリマー系支持体)を、キメラタンパク質、例えばカドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングし;テスト化合物の存在下で、該キメラタンパク質を、該キメラタンパク質と結合するファージと接触させ;さらにテスト化合物が、ファージとキメラタンパク質との結合を調節するかどうかを、例えばファージに対する抗体を利用するELISAで、決定することを含む、前記方法を提供する。
【0078】
本発明の別の態様は、ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーを迅速にスクリーニングして、カドヘリン介在過程を調節することができる化合物を同定する方法であって:固相支持体、例えばプラスチック皿のウェル(又は他のポリマー系支持体)を、カドヘリンの細胞外ドメイン又はその一部でコーティングし;カドヘリンを、該カドヘリンと結合するファージと接触させ;さらにテスト化合物の存在下で、ファージとカドヘリンタンパク質との結合が調節されるかどうかを、例えばファージに対する抗体を利用するELISAで、決定することを含む、前記方法を提供する。カドヘリン細胞外ドメインは、別のタンパク質ドメイン、例えば免疫グロブリンのFcドメインと連結してもよいが、結合される必要はない。カドヘリン細胞外ドメインは、二量体を形成するように別のカドヘリン細胞外ドメインと連結されてもよいが、そのように連結される必要はない。例えば、単量体については、細胞外ドメイン又はその一部を含むカドヘリンタンパク質は、固相支持体又はビーズに、例えばそのN末端を介して、共有結合されてもよい。
【0079】
本発明の別の態様は、ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーを迅速にスクリーニングして、古典的カドヘリンアンタゴニスト、例えばE-カドヘリン又はN-カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって:固相支持体、例えばプラスチック皿のウェル(又は他のポリマー系支持体)を、カドヘリン/Fcキメラタンパク質のようなキメラタンパク質でコーティングし;該キメラタンパク質を、該キメラタンパク質と結合するレポーター基(例えば、FITCで標識したペプチド)を含むペプチドと接触させ;さらにテスト化合物の存在下で、その標識したペプチドとキメラタンパク質との結合が調節されるかどうかを決定することを含む、前記方法を提供する。
【0080】
本発明の別の態様は、ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーを迅速にスクリーニングし、カドヘリン介在過程を調節することができる化合物を同定する方法であって:固相支持体、例えばプラスチック皿のウェル(又は他のポリマー系支持体)を、キメラタンパク質(例えばカドヘリン/Fcキメラタンパク質)でコーティングし;該キメラタンパク質を、該キメラタンパク質と結合するレポーター基(例えば、FITCで標識したペプチド)を含むペプチドと接触させ;さらにテスト化合物の存在下で、標識したペプチドとキメラタンパク質との結合が調節されるかどうかを決定することを含む、前記方法を提供する。
【0081】
本発明の別の態様は、ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーを迅速にスクリーニングし、カドヘリン介在過程を調節することができる化合物を同定する方法であって:固相支持体、例えばプラスチック皿のウェル(又は他のポリマー系支持体)を、キメラタンパク質、例えばカドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングし;該キメラタンパク質を、該キメラタンパク質と結合するファージと接触させ;さらにテスト化合物の存在下で、ファージとキメラタンパク質との結合が調節されるかどうかを、例えばファージに対する抗体を利用するELISAで、決定することを含む、前記方法を提供する。
【0082】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の発明の詳細な説明及び添付の図面を参照することにより明らかとなる。本明細書に開示された全ての引用文献は、引用によって、あたかもそれぞれが個別に組み込まれるように記載されているのと同様に、その全体が本明細書に組み入れられるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
発明の詳細な説明
本発明では、ファージディスプレイ技術を用いて、カドヘリン介在過程を調節することができる新規のペプチド配列を同定する。ファージディスプレイ系は、標的に特異的にかつ高い親和性で結合することができる化合物の同定を促進することが証明されてきた。この技術は、George Smithにより1980年代中頃に初めて報告された(Smith, 1985)。該技術により、ファージ粒子の表面上に提示された抗体、タンパク質又はペプチドのレパートリーを、選択した任意の標的に対してスクリーニングすることが可能になる。ファージライブラリーは、何百万もの多様な順列組み合わせから構成されるので、とり得る全ての組み合わせを提供するのに十分な大きさを有する(Scott et al., (1990) Science, 249, 386-390)。ペプチドファージライブラリーは、精製した標的又は細胞表面受容体のいずれかと結合することができる小分子を同定するために使用されてきた(Landon et al., (2003) J. Cell. Biochem., 90, 509-517)。
【0084】
本発明は、古典的カドヘリン介在過程、例えば、細胞接着、細胞増殖、細胞遊走及び/又は細胞生存を調節することができる細胞接着認識(CAR)配列を含む1以上のペプチドを含む細胞接着調節剤を提供する。かかる調節剤は、概して、例えば望ましからざる細胞接着を特徴とする疾患若しくは他の状態を治療するために、又は特定組織や腫瘍に対する薬物送達を促進するために使用できる。あるいは、ある種の調節剤は、細胞接着を増強するために(例えば、継ぎ目を補完又は置換するために、又は創傷治癒若しくは移植物の付着を促進するために)、又は神経突起伸長を増強若しくは指向させるために、又は神経細胞の生存を促進するために使用できる。
【0085】
本明細書で使用される用語「CARペプチド」又は「CAR配列」は、別途規定しない限り、本発明により同定された古典的CAR配列を少なくとも1つ含むペプチド又はその塩を意味する。本発明のCAR配列に加えて、調節剤は、本発明で定義される配列とは別の1以上の追加の公知CAR配列(古典的カドヘリンCAR配列であってもそうでなくてもよい)を、本明細書にさらに記載されるように含んでもよい。本発明の調節剤は、かかる公知CAR配列を特異的に認識する抗体又はそのフラグメントをさらに含んでもよい。これらの追加のCAR配列又はそれに対する抗体は、本発明のCAR配列と直接連結させてもよいし、又は調節剤の別個の成分としてもよい。
【0086】
ある実施形態では、CAR配列は、修飾された末端基、例えば、N-アセチル基(すなわち、ペプチドのアミノ末端残基に存在するアミノ基がアセチル化されている)若しくはN-ホルミル基(すなわち、ペプチドのアミノ末端残基に存在するアミノ基がホルミル化されている)を含んでもよいし、又はペプチドのアミノ末端残基に存在するアミノ基がメシル化されていてもよい。本発明においては、特定の末端基の存在によりペプチド活性を増強できることが見出された。
【0087】
ある関連する実施形態では、調節剤の活性及び/又は安定性は、当技術分野で公知かつ利用可能な1以上の方法を用いて、例えばマトリックスや粒子(例えば、ハイドロゲル、移植物又はナノ粒子)内に調節剤を封入することにより、又は他の分子(例えば、ポリエチレングリコール及びその誘導体)とコンジュゲートさせることにより、増強することができる。ポリエチレングリコール(PEG)及びその誘導体を、高度の生体適合性を与える薬物担体として、利用することができる。さらに、PEG化は、ペプチドの薬物動態に有利な効果をもたらし、特にペプチドベースの薬剤の半減期を延長することができる(例えば、Caliceti and Veronese M (2003), Adv. Drug Deliv. Rev, 55, 1261-1277)。
【0088】
本発明のCAR配列は、概して、3〜約50残基、3〜25残基又は3〜10アミノ酸残基を含む。ある実施形態では、CAR配列と隣接して重要な配列を含まない比較的小さなペプチドが、N-カドヘリン及びE-カドヘリン介在細胞接着を調節するのに好ましい。本発明の所定の実施形態において、かかる比較的小さなペプチドが、カドヘリン介在過程(例えば細胞接着)の有効かつ万能な調節剤であり得るという知見は、予想外の発見である。かかるペプチドは、多様な古典的カドヘリンの各ペプチド結合部位に合致する「マスターキー」であると考えられ、例えば、神経細胞、内皮細胞、上皮細胞及び/又はある種の癌細胞の細胞接着を調節することができる。小ペプチドは、本明細書で検討したように、全体的には、ペプチドに対する標的化剤と結合させても結合させなくても、例えば局所投与、全身投与、及び/又は所与の適応症に適した他の任意の投与形態で、神経細胞及び/又は他の細胞型の細胞接着を特異的に調節するために使用できる。
【0089】
所望の特異性を有するペプチドの調製を促進するために、核磁気共鳴(NMR)及びコンピューター技術を利用して、既知の特異性を付与するペプチドのコンホメーションを決定することができる。NMRは、分子の構造分析のために広く利用されている。核オーバーハウザー増強(NOE)スペクトルにおける交差ピーク強度、結合定数及び化学シフトは、化合物のコンホメーションに依存する。NOEデータは、ペプチドの空間を通じたそしてその環を横切ったプロトン同士のプロトン間距離を与える。この情報を利用することにより、CAR配列の低エネルギーのコンホメーションの計算を容易にすることができる。そして、コンホメーションは組織特異性と相関するので、同程度に組織特異的であるか又は組織特異性がより高度なペプチドを同定することが可能になる。
【0090】
本明細書に記載のペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、又はそれらの任意の組合せの残基を含む。アミノ酸は、少なくとも1つのアミノ基及び少なくとも1つのカルボキシル基がその分子内に存在する限り、天然源由来でも非天然源由来でもよいが、α-及びβ-アミノ酸が一般的には好ましい。タンパク質に通常見られる20種のL-アミノ酸は、本明細書では、表1に示した慣用される3文字又は1文字の略語で特定され、対応するD-アミノ酸は小文字の1文字記号で表される。調節剤及びペプチドは、1以上の、稀なアミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン又はヒドロキシリジン)、有機酸又はアミド及び/又は一般的なアミノ酸の誘導体、例えばC末端カルボキシル酸がエステル化(例えば、ベンジル、メチル又はエチルエステル)又はアミド化されたアミノ酸、及び/又はN末端アミノ基の修飾を有するアミノ酸(例えば、アセチル化又はアルコキシカルボニル化)であって、多種多様な側鎖修飾及び/又は置換(例えば、メチル化、ベンジル化、t-ブチル化、トシル化、アルコキシカルボニル化等)のうち任意のものを有するか若しくは有さないアミノ酸も含んでもよい。好ましい誘導体には、N-アセチル基(環化される前に、直鎖状ペプチドのN末端となるアミノ基がアセチル化されたもの)及び/又はC末端アミド基(すなわち、環化される前に直鎖状ペプチドのカルボキシ末端がアミド化されたもの)を有するアミノ酸が含まれる。ペプチドと共に存在しうる一般的なアミノ酸以外の残基としては、ペニシラミン、β,β-テトラメチレンシステイン、β,β-ペンタメチレンシステイン、β-メルカプトプロピオン酸、β,β-ペンタメチレン-β-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトベンゼン、2-メルカプトアニリン、2-メルカプトプロリン、オルニチン、ジアミノブチル酸、α-アミノアジピン酸、m-アミノメチル安息香酸及びα,β-ジアミノプロピオン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
表1
アミノ酸1文字略語及び3文字略語
A Ala アラニン
R Arg アルギニン
D Asp アスパラギン酸
N Asn アスパラギン
C Cys システイン
Q Gln グルタミン
E Glu グルタミン酸
G Gly グリシン
H His ヒスチジン
I Ile イソロイシン
L Leu ロイシン
K Lys リジン
M Met メチオニン
F Phe フェニルアラニン
P Pro プロリン
S Ser セリン
T Thr スレオニン
W Trp トリプトファン
Y Tyr チロシン
V Val バリン
【0092】
本明細書に記載のペプチドは、組換えDNA法及び化学合成を含む当技術分野で周知の方法により合成できる。化学合成は、一般に、標準的な液相又は固相ペプチド合成法を用いて行うことができ、ペプチド結合は、水分子の脱離を伴う一のアミノ酸のα-アミノ基と他のアミノ基のα-カルボキシル基との直接縮合を通じて生じる。上記のとおり形成される直接縮合によるペプチド結合合成では、第1のアミノ酸のアミノ基と第2のアミノ酸のカルボキシル基の反応性を抑えることが必要である。マスキングされている置換基は、不安定なペプチド分子の崩壊を誘導することなく、それらの容易な除去を可能としなければならない。
【0093】
液相合成法では、多種多様なカップリング方法及び保護基を使用できる(Gross and Meienhofer著, 「The Peptides:Analysis, Synthesis, Biology」, Vol. 1-4 (Academic Press, 1979);Bodansky and Bodansky, 「The Practice of Peptide Synthesis」, 第2版(Springer Verlag, 1994)を参照されたい)。さらに、中間体の精製及び線形的なスケールアップが可能である。固相及び液相合成法では、主鎖及び側鎖の保護基及び活性化方法の検討が必要であることは、当業者には明らかである。さらに、慎重なセグメントの選択が、セグメント縮合時のラセミ化を最小化するために必要である。可溶性の考慮も1つの要素である。
【0094】
固相ペプチド合成法では、有機合成の際に、支持体として不溶性ポリマーを使用する。ポリマーで支持されたペプチド鎖は、中間ステップにおいて面倒な精製の代わりに、単純洗浄及び濾過ステップを利用できる。固相ペプチド合成法は、一般的に、Merrifield et al., J. Am. Chem. Soc. 85:2149, 1963の方法のとおり行うことができ、保護されたアミノ酸を用いて、樹脂支持体上で直鎖状ペプチド鎖を組み立てることを含む。固相ペプチド合成法は、典型的にはBoc又はFmoc法のいずれかを利用する。Boc法では、1%の架橋ポリスチレン樹脂を用いる。α-アミノ基の標準的な保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)基である。この基は、強酸、例えば25%トリフルオロ酢酸(TFA)の希釈溶液を用いて除去することができる。次の、Boc-アミノ酸を、典型的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて、アミノアシル樹脂とカップリングさせる。構築完了後、ペプチド-樹脂は、無水HFで処理されて、ベンジルエステル結合を切断され、そして遊離ペプチドが遊離される。側鎖官能基は通常、ベンジル誘導ブロッキング基により合成の間ブロックされ、HFによってまた切断される。次いで、遊離ペプチドを、好適な溶媒を用いて樹脂から抽出し、精製し、そして特性付けする。新たに合成されたペプチドは、例えば、ゲル濾過、HPLC、分配クロマトグラフィー及び/又はイオン交換クロマトグラフィーによって精製することができ、例えば、質量分析又はアミノ酸配列解析によって、特性付けることができる。Boc法では、C末端がアミド化されたペプチドがベンズヒドリルアミン又はメチルベンズヒドリルアミン樹脂を用いて得られ、そしてHFでの切断により直接ペプチドアミドを得る
上記で述べた手順では、側鎖ブロッキング基及びペプチド-樹脂結合の選択性は、酸分解性切断の速度の差に依存する。側鎖ブロッキング基及びペプチド-樹脂結合が、合成の各ステップにおいてα-保護基を除去するために使用される試薬に対し完全に安定である、直交系が導入されてきた。これらのうち最も一般的な方法では、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法を用いる。この方法では、側鎖保護基及びペプチド-樹脂結合は、N-α-Fmoc基を切断するのに使用される第2級アミンに対して完全に安定である。側鎖の保護及びペプチド-樹脂結合は、穏やかな酸分解により切断される。塩基との反復接触は、Merrifield樹脂をFmoc化学に不適なものにするので、樹脂に関連するp-アルコキシベンジルエステルが一般には用いられる。脱保護及び切断は、一般にTFAを用いて達成される。
【0095】
固相合成法では、脱保護及びカップリング反応を完全に進行させねばならず、側鎖ブロッキング基は合成法全体を通じて安定でなければならないことが、当業者には明らかである。さらに、固相合成法は一般に、ペプチドを小規模で作製するのに最も適している。
【0096】
N末端のアセチル化は、最終ペプチドを樹脂から切断する前に無水酢酸と反応させることにより達成され得る。Cアミド化は、適切な樹脂(例えば、メチルベンズヒドリルアミン樹脂)を用いて、Boc技術を利用して達成される。
【0097】
本明細書で言及する構造及び式は、説明の目的でのみ提供され、本明細書に記載のペプチドの範囲を制限するものではない。
【0098】
細胞接着調節剤
本明細書で使用される用語「細胞接着調節剤(cell adhesion modulating agent)」は、1以上の古典的カドヘリン介在過程を調節(modulate)し、本発明で同定されたカドヘリン細胞接着認識(CAR)配列又は本発明で同定されたCAR配列に特異的な抗体若しくはその抗原結合性フラグメントを含有する少なくとも1つのペプチドを含む薬剤を意味する。上記のとおり、調節剤中には複数のCAR配列が存在し得る。さらに、当技術分野で公知な追加CAR配列であって、本発明に従って同定された配列とは異なるもの(すなわち、接着分子により特異的に結合される任意の配列)が、調節剤中に含められうる。本明細書で使用される場合、「接着分子」とは細胞表面上の受容体を介した細胞接着を媒介する任意の分子である。接着分子には、例えば、カドヘリン遺伝子スーパーファミリーのメンバー、例えば、デスモグレイン(Dsg)及びデスモコリン(Dsc);インテグリン;免疫グロブリン超遺伝子ファミリーのメンバー、例えばN-CAM;並びに他の膜貫通タンパク質(例えばオクルジン及びクラウジン)の他、細胞外マトリックスタンパク質、例えばラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクトン、エンタクチン及びテナシンが含まれる。
【0099】
本発明の調節剤中に含まれ得る公知のCAR配列には、例えば(a)インテグリンと結合するRGD(Cardarelli et al., J. Biol. Chem. 267:23159-64, 1992を参照されたい);(b)α6β1インテグリンと結合するYIGSR (配列番号48);(c)N-CAMと結合するKYSFNYDGSE (配列番号49);(d)N-CAMへパリン硫酸結合部位IWKHKGRDVILKKDVRF (配列番号50);(e)オクルジンCAR配列LYHY (配列番号51);(f)式:Trp-Lys/Arg-Aaa-Baa-Ser/Ala-Tyr/Phe-Caa-Gly(配列番号52)[式中、Aaa、Baa及びCaaは独立して選択されるアミノ酸残基を表し;Lys/Argはアミノ酸のリジン又はアルギニンであり;Ser/Alaはアミノ酸のセリン又はアラニンであり;及びTyr/Pheはアミノ酸のチロシン又はフェニルアラニンである]を有するクラウジン領域内に存在する少なくとも4個連続したアミノ酸を含むクラウジンCAR配列;並びに(g)式:Aaa-Phe-Baa-Ile/Leu/Val-Asp/Asn/Glu-Caa-Daa-Ser/Thr/Asn-Gly (配列番号53)[式中、Aaa、Baa、Caa及びDaaは独立して選択されたアミノ酸残基であり;Ile/Leu/Valはイソロイシン、ロイシン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸であり、Asp/Asn/Gluはアスパラギン酸、アルパラギン及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸であり;またSer/Thr/Asnはセリン、スレオニン又はアスパラギンからなる群から選択されるアミノ酸である]を有する非古典的カドヘリン領域内に存在する少なくとも3個連続したアミノ酸を含む非古典的カドヘリンCAR配列、が含まれ得る。代表的なクラウジンCAR配列には、IYSY (配列番号54)、TSSY (配列番号55)、VTAF (配列番号56)及びVSAF (配列番号57)が含まれる。代表的な非古典的カドヘリンCAR配列には、VE-カドヘリン(カドヘリン-5)CAR配列 DAE;カドヘリン-6 CAR配列 EEY、NEN、ESE及びDSG;カドヘリン-7 CAR配列 DEN、EPK及びDAN;カドヘリン-8 CAR配列 EEF及びNDV;OB-カドヘリン(カドヘリン-11)CAR配列 DDK、EEY及びEAQ;カドヘリン-12 CAR配列 DET及びDPK;カドヘリン-14CAR配列 DDT、DPK及びDAN;カドヘリン-15 CAR配列 DKF及びDEL;PB-カドヘリンCAR配列 EEY、DEL、DPK及びDAD;プロトカドヘリンCAR配列 DLV、NRD、DPK及びDPS;dsg CAR配列 NQK、NRN及びNKD;dsc CAR配列 EKD及びERD、並びにカドヘリン関連ニューロン受容体CAR配列 DPV、DAD、DSV、DSN、DSS、DEK及びNEKが含まれる。
【0100】
ある好ましい実施形態では、本発明の調節剤中に含まれる公知のCAR配列には、N-カドヘリンCAR配列(例えばHAV)、又はINPのようなHAV結合性モチーフ配列を含む配列(古典的カドヘリンと結合するもの)が含まれる。上記の公知CAR配列及び他の関連する配列は、当業者に公知であり入手可能であるので、本発明と組み合わせて容易に用いることができる。
【0101】
本発明の調節剤又はその組成物に関して使用されうる特定の好ましい公知カドヘリンCAR配列には、例えば米国特許番号6,031,072、6,169,071、6,207,639、6,562,786、6,346,512、6,333,307、6,417,325、6,465,427、6,610,821、6,326,352、6,780,845号に記載のHAV含有CAR配列が含まれる。例示的な公知のHAV結合性モチーフ含有配列には、米国特許番号6,272,824、6,472,368、6,806,255号に記載のものが含まれる。例示的な公知のオクルジンCAR含有配列には、米国特許番号6,248,864、6,110,747、6,797,807、6,310,177号に記載のものが含まれる。例示的な公知の非古典的カドヘリンCAR含有配列には、米国特許番号6,472,367、6,358,920、6,680,175、6,593,297、6,682,901、6,433,149、6,638,911、6,569,996号に記載のものが含まれる。例示的な公知のクラウジンCAR含有配列には、米国特許番号6,756,356、6,723,700、6,830,894号に記載のものが含まれる。例示的な公知の接合部接着分子(JAM)CAR含有配列には、米国特許番号第6,203,788号に記載のものが含まれる。1以上のかかるCAR配列に特異的な抗体を、本発明の調節剤に関して使用することもできる。それぞれの上記米国特許は、引用により本明細書に具体的に組み入れられるものとする。
【0102】
リンカーは、調節剤中のCAR配列及び/又は抗体配列を分離するために使用できるが、これに限定されない。リンカーは、さらに又はその代わりに、1以上の調節剤を下記のとおり支持体分子又は材料と結合させるために使用することができる。リンカーは、CAR配列を含まず、かつ少なくとも2つのペプチド配列と共有結合できる任意の分子(ペプチド及び/又は非ペプチド配列だけでなく、単一のアミノ酸又は他の分子も包含する)であってもよい。リンカーを用いて、CAR含有ペプチドと、他のペプチド又はタンパク質配列とを、頭-尾結合(すなわち、リンカーを各ペプチド配列のカルボキシル基又はアミノ基と共有結合すればよい)、頭-側鎖結合及び/又は尾-側鎖結合させ得る。1以上のリンカーを含む調節剤は、直鎖状構造又は分岐構造を形成し得る。一実施形態では、分岐構造を有する調節剤は、本明細書に記載のCARに加え、RGD、YIGSR(配列番号48)及びHAVのような3個の異なるCAR配列を含み、そのうち1以上はペプチド中に存在する。別の実施形態では、分岐構造を有する調節剤は、本明細書に記載のCARに加え、例えば、RGD、YIGSR(配列番号48)、HAV及びKYSFNYDGSE(配列番号49)を含む。別の例示的な実施形態では、本明細書に記載のCARを含む調節剤は、分岐構造を有していてもよく、例えばHAV及びLYHY(配列番号51)を、NQK、NRN、NKD、EKD及びERDのうち1以上と共にさらに含み得る。
【0103】
リンカーは好ましくは、CAR配列間の距離を0.1〜10,000 nm、より好ましくは約0.1〜400 nmとする。認識部位間の分離距離は一般に、調節剤の所望の機能に応じて決定されうる。ある実施形態では、細胞接着のインヒビターについて、短いリンカー距離(例えば0.1-400 nm)が望ましい。ある他の実施形態では、細胞接着の増強剤について、より長いリンカー距離(例えば、400-10,000 nm)が望ましい。しかしながら、これらのリンカー距離は、所望の活性レベルをなお示しつつも、実質的に、あるアンタゴニストを別のアンタゴニストに変更し、またあるアゴニストを別のアゴニストに変更することがありうる。かかる目的で使用できるリンカーの1つは、(H2N(CH2)nCO2H)m又はその誘導体であり、ここでnは1〜10であり、mは1〜4000である。例えば、グリシン(H2NCH2CO2H)又はその多量体をリンカーとして使用する場合、他のアミノ酸と連結させた場合に最も低いエネルギーのコンホメーションを、分子モデリング技術を用いて計算することによって求めると、各グリシン単位は、2.45オングストローム又は0.245 nmの結合距離に相当する。同様に、アミノプロパン酸は3.73オングストロームの結合距離に相当し、アミノブタン酸は4.96オングストロームの結合距離に相当し、アミノペンタン酸は6.30オングストロームの結合距離に相当し、そしてアミノヘキサン酸は6.12オングストロームの結合距離に相当する。使用できる他のリンカーは当業者には明らかであり、例えば、2,3-ジアミノプロパン酸、リジン及び/又はオルニチンの反復単位をベースにしたリンカーが挙げられる。2,3-ジアミノプロパン酸は、側鎖アミノ又は末端アミノが結合に使用されるかどうかに応じて、2.51又は3.11オングストロームのいずれかの結合距離をもたらす。同様に、リジンは、2.44又は6.95オングストロームのいずれかの結合距離をもたらすことができ、オルニチンは2.44又は5.61オングストロームのいずれかの結合距離をもたらすことができる。ペプチド及び非ペプチドリンカーは、一般に、当技術分野で公知の好適な任意の方法を用いて、調節剤に組み入れることができる。
【0104】
細胞接着を抑制する調節剤は、1以上のCAR配列を含みうるが、但しそれらの配列は互いに隣接する(例えば、介在配列を含まずに)か又は近接している(例えば、ペプチド及び/又は非ペプチドリンカーで分離することにより、CAR配列間に距離をもたせ、ある実施形態では約0.1〜400 nmとしうる)。他の実施形態では、所望のレベルの阻害活性を生じさせつつ、CAR含有多量体中に存在するCARモチーフ間のスペースを変更することができる。そのうえ、所与のCAR含有多量体の阻害活性の程度は、所与のサンプル又は被験体中で標的となるカドヘリン分子の数に比した、用いられる薬剤濃度、すなわち、治療対象となる系の飽和度レベルに応じて、様々でありうる。CAR含有多量体のアンタゴニスト活性を評価する手段は、本明細書の他の箇所に示される。上記で検討したとおり他のCAR配列も含有され得ることは、明らかであろう。かかる調節剤は、複数の接着分子により介在される細胞接着を同時に破壊することが望ましい方法において、一般に使用できる。ある好ましい実施形態では、例えば、古典的カドヘリン以外の細胞接着分子に特異的な追加のCAR配列は、例えばインテグリンにより認識されるフィブロネクチン由来のCAR(すなわち、RGD;Cardarelli et al., J. Biol. Chem. 267:23159-23164, 1992を参照されたい)、又はオクルジンCAR配列(例えば、LYHY;配列番号51)に由来するCARである。同様に、1以上の抗体又はそのフラグメントを、かかる実施形態で使用できる。
【0105】
細胞接着を増強する調節剤は、複数のCAR配列モチーフを、2つのカドヘリン分子を結びつけるのに有効な相互の空間的配向で互いに隣接させて含み、それにより、カドヘリン介在接着及び他のカドヘリン依存性過程を増強することができる。例えば、CAR含有ペプチドの二量体型は、N-カドヘリン介在過程の増強が望ましいある実施形態において、有用である。配列C-CAR-X-CAR-C(式中、Xは4〜10アミノ酸長である)を含むペプチドは、ある実施形態において、特に好ましい。CAR含有多量体中に存在するCAR含有モチーフ間のスペースは、望ましいレベルのアゴニスト活性をなお生じつつ、変更され得る。CAR含有多量体中のCARモチーフ間の、1〜10アミノ酸残基、好ましくは4〜10アミノ酸残基のスペースが、例えば、特定の実施形態において望ましい。そのうえ、所与のCAR含有多量体のアゴニスト活性の程度は、所与のサンプル又は被験体中で標的とされるカドヘリン分子の数に比した、用いる薬剤濃度、すなわち治療対象となる系の飽和レベルに応じて、様々でありうる。CAR含有多量体のアゴニスト活性を評価する手段は、本明細書の他の箇所に示される。細胞接着の増強は、下記に検討するとおり、単一のCARモチーフ、複数のCARモチーフ及び/又は複数の調節剤を、支持体分子又は材料に結合させることによっても達成できる。かかる調節剤は、複数の接着分子により介在される細胞接着を増強するために、1以上の異なる接着分子の1以上のCAR配列(他のCAMを含むが、これに限定されない)及び/又はかかる配列に結合する1以上の抗体又はそのフラグメントを更に含み得る。
【0106】
上述のとおり、調節剤は、1以上のペプチド全体から構成されたものであってよく、又は追加のペプチド及び/又は非ペプチド配列を含み得る。ペプチド部分は、上記のとおり合成でき、又は組換え法を用いて調製できる。かかる方法では、調節剤の全部又は一部を、特定の宿主細胞に対し好適であることが当業者に公知の様々な発現ベクターのうち任意のものを用いて、生細胞中で合成できる。好適な宿主細胞には、細菌、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、藻類及び他の動物細胞(例えば、ハイブリドーマ、CHO、ミエローマ)が含まれる。該方法で発現させたDNA配列は、1又は複数のCARをコードし得る。調節剤のペプチド部分をコードする核酸部分を作製するために、周知技術を用いて配列を改変できる。例えば、1以上のCAR配列をコードする部分を、上記で検討したように、リンカーをコードする核酸領域で分離し又は分離せずに、結合し得る。あるいは、周知技術を用いて所望の核酸配列の部分を合成し、その後、調節剤の部分をコードする配列を形成するために1つに連結できる。
【0107】
上述のとおり、調節剤は、CAR配列に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントも含み得る。本明細書で使用される場合、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、その配列を含むペプチドとは検出可能なレベルで反応する(例えば、Newton et al., Develop. Dynamics 197:1-13, 1993に記載のように、ELISAにおいて)が、異なるCAR配列又はカドヘリンCAR配列及び/若しくは隣接配列におけるアミノ酸残基の順序が変更された配列を含有するペプチドとは検出可能なレベルで反応しない場合に、(隣接アミノ酸を含む又は含まない)CAR配列に「特異的に結合する」と言われる。
【0108】
抗体及びそのフラグメントは、標準技術を用いて調製できる。例えば、Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。かかる技術の1つでは、CAR配列を含む免疫原が、多種多様な哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ又はヤギ)のうち任意のものに、最初に注射される。小さな免疫原(すなわち、約20アミノ酸未満)は、担体タンパク質、例えばウシ血清アルブミン又はキーホールリンペットヘモシアニンと結合させるべきである。1以上の注射に続いて、動物から定期的に採血する。その後、例えば、好適な固相支持体に連結された調節剤又はその抗原部分を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、かかる抗血清からCAR配列に特異的なポリクローナル抗体を、精製することができる。
【0109】
CAR配列に特異的なモノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol. 6:511-519, 1976の技術及びそれらを改良した技術を用いて、調製することができる。簡潔にいうと、これらの方法には、上記のとおり免疫した動物から得た脾臓細胞由来の所望の特異性を有する抗体を作製することができる不死細胞系の調製が含まれる。脾臓細胞を、例えばミエローマ細胞融合パートナーとの融合により、好ましくは免疫した動物と同系のものとの融合により、不死化する。単一のコロニーを選択し、調節剤又はその抗原部分に対する結合活性について、その培養上清を試験する。高い反応性及び特異性を有するハイブリドーマが、好ましい。
【0110】
モノクローナル抗体は、当技術分野で収率を向上させることが知られている様々な技術を用いて又は用いずに、増殖するハイブリドーマコロニーの上清から単離することができる。混入物は、従来技術、例えばクロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿、及び抽出を用いて、抗体から除去することができる。
【0111】
抗体ファージライブラリー(scFv、Fabライブラリー)は、公知技術、例えば、工学的に作製したファージ又はファージミドベクターにクローニングした単一の抗体フラグメント(scFv)又はFab抗体遺伝子の大きなレパートリーを用いて、これらの抗体フラグメントがファージ表面上に提示されるように、構築できる。免疫グロブリン(Ig)可変領域遺伝子は、CAR配列を含有するタンパク質又はペプチドで免疫したドナーのB細胞(免疫ライブラリー)から、又は免疫していないドナーのB細胞(ネイティブライブラリー)から得ることができる。クローン化遺伝子は、生殖系V遺伝子及びランダムなCDRをコードする合成オリゴヌクレオチド配列の組み合わせ(半合成ライブラリー)の結果であるか、又は完全な合成起源(合成ライブラリー)のものでありうる。免疫及び非免疫ライブラリーは、最も一般的に使用されるライブラリーである。それらは、B細胞からmRNAを抽出することにより調製される。cDNAは、鎖に特異的なプライマー(V遺伝子)と共に逆転写酵素を用いて合成し、それを重鎖及び軽鎖可変領域の末端に相補的なプライマーと共に、抗体可変領域をPCR増幅するための鋳型として使用する(Barbas III and al., Phage Display: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, 2001)。重鎖及び軽鎖フラグメントは、フレキシブルなリンカーペプチドをコードするDNA配列を挿入することにより、PCRで、一本鎖Fv遺伝子に変換できる。その後、PCR断片を、ファージ又はファージミドベクターDNAに挿入し、エレクトロポーレーションにより大腸菌(E. Coli)に導入する。これらのライブラリーは、固定したカドヘリン又はCAR含有ペプチドを用いて、スクリーニングする。単離したクローンの親和性は、鎖シャッフリングにより増強できる。選択したファージクローンのIg遺伝子を、可溶形態のIgを発現する適切な宿主細胞に導入する。最後に、アフィニティークロマトグラフィーにより、Igを精製できる。
【0112】
ある実施形態では、抗体の抗原結合性フラグメントの使用が好ましい。かかるフラグメントは、標準技術を用いて調製し得るFabフラグメントを含む。簡潔にいうと、免疫グロブリンは、プロテインAビーズカラム上で、アフィニティークロマトグラフィーによりウサギ血清から精製でき(Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988;特に309ページを参照されたい)、パパインによる消化により、Fab及びFcフラグメントを生じる。該Fab及びFcフラグメントは、プロテインAビーズカラム上で、アフィニティークロマトグラフィーにより分離できる(Harlow and Lane, 1988、628-29ページ)。
【0113】
調節剤活性の評価
上述のとおり、本明細書に記載のペプチド及び他の調節剤は、カドヘリン介在細胞接着及び/又は他のカドヘリン依存性過程を調節する(すなわち、増強又は抑制する)ことができる。細胞接着を調節する調節剤の能力は、一般に、例えば以下:(1)神経突起伸長、(2)内皮細胞間の接着(3)上皮細胞間の接着(例えば、正常ラット腎細胞及び/又はヒト皮膚)及び/又は(4)癌細胞間の接着(例えば、SKOV3ヒト卵巣癌細胞及び/又はMCF-7ヒト乳癌細胞)のうち、1以上に対する効果をアッセイすることにより、in vitroで評価することができる。カドヘリン介在機能の評価に関する他のアッセイは、本明細書の開示に照らせば、容易に理解されるだろう。通常、これらの代表的なアッセイのうち1以上において、テスト細胞と調節剤との接触が、細胞接着又は他のカドヘリン介在機能の識別可能な破壊をもたらす場合には、調節剤は、細胞接着のインヒビターである。細胞接着を増強する調節剤は、組織培養プラスチックのような支持体材料に結合した調節剤に対する上皮細胞接着を評価するプレートアッセイで示したときに、1以上のカドヘリン介在機能(例えば、下記の神経突起伸長)を増強できる場合、及び/又は細胞接着を促進できる場合には、細胞接着の調節剤と考えられる。N-カドヘリン介在機能に影響を及ぼす調節剤については、内皮細胞又は癌細胞接着又は神経突起伸長を用いるアッセイが、好ましい。
【0114】
古典的カドヘリン介在細胞接着を調節する能力についてのスクリーニングの一例は、当業者に公知の任意の結合アッセイを用いて、調節剤が古典的カドヘリンに結合する能力を評価することにより実施できる。例えば、Jonsson et al., Biotechniques 11:520-27, 1991で検討のとおり、Pharmaciaバイオセンサー機器を用いることができる。ペプチドと分子との相互作用を測定する技術の具体例は、Williams et al., J. Biol. Chem. 272, 22349-22354, 1997に見ることができる。あるいは、リアルタイムBIA(生体分子の相互作用分析)は、光学現象の表面プラズモン共鳴法を使用して、生体分子の相互作用をモニターする。その検出は、生物特異性表面における巨大分子の質量濃度の変化に依存しており、すなわち、バイオセンサーチップ表面に標的分子を固定した後に、相互作用する分子(検体と呼ぶ)をリガンドと結合させることに依存する。チップとの結合は、共鳴の任意単位(RU)で、リアルタイムに測定される。
【0115】
一例として、表面プラズモン共鳴試験は、BIAcore XTMバイオセンサーを用いて行うことができる(Pharmacia Ltd., BIAcore, Uppsala, Sweden)。CM 5センサーチップの平行フローセルは、製造業者のプロトコールに従いアミンカップリング法を使用して、10mM酢酸ナトリウム pH 4.0中、ストレプトアビジン(200μg/ml)でコーティングできる。約2100〜2600共鳴単位(RU)のリガンドを、約2.1〜2.6 ng/mm2の濃度に相当するように固定し得る。その後、チップを古典的カドヘリン(又はその一部)でコーティングし、ビオチンに誘導体化する。非特異的に結合したタンパク質はいずれも除去する。
【0116】
結合を測定するために、テスト検体(例えば、CAR配列含有ペプチド)を、泳動バッファー中に置き、テスト及び対照フローセルを同時に通過させ得る。フリーの緩衝液が流れた時間の後、表面に結合したままのいかなる検体(すなわち、ペプチド)も、例えば、0.1%SDSのパルスを用いて取り除き、シグナルをベースラインに戻すことができる。該誘導体化したセンサーチップとの特異的な結合は、対照フローセルの反応からテストフローセルの反応を差し引く方式で自動的に測定できる。通常、調節剤は、かかるアッセイで検出可能なレベルで、古典的カドヘリンと結合する。結合のレベルは、同様の条件下で、少なくとも完全長の古典的カドヘリンで観察されるレベルであることが、好ましい。
【0117】
代表的な神経突起伸長アッセイでは、N-カドヘリンを発現する細胞(例えば、3T3)の単層上で、神経細胞を培養しうる。(好適な条件下で十分な時間をかけて)かかる細胞上で成長させた神経細胞は、N-カドヘリンを発現しない細胞上で培養した神経細胞よりも、長い神経突起を伸長する。例えば、Doherty and Walsh, Curr. Op. Neurobiol. 4:49-55, 1994;Williams et al., Neuron 13:583-594, 1994; Hall et al., Cell Adhesion and Commun. 3:441-450, 1996; Doherty 及び Walsh, Mol. Cell. Neurosci. 8:99-111, 1994;及びSafell et al., Neuron 18:231-242, 1997に実質的に記載のとおり、N-カドヘリンをコードするcDNAでトランスフェクトした3T3細胞の単層上で、神経細胞で培養し得る。簡潔にいうと、対照の3T3線維芽細胞とN-カドヘリンを発現する3T3線維芽細胞の単層は、8-チャンバーウェル組織培養スライドのそれぞれのウェル中で、80,000個の細胞を一晩培養することにより構築できる。出生後3日目のマウスの脳から単離した3000個の小脳ニューロンを、対照培地(SATO/2%FCS)又は様々な濃度の調節剤若しくは対照ペプチドを添加した培地中の様々な単層上で、18時間培養し得る。その後、培養物を固定し、神経細胞及びその神経突起に特異的に結合するGAP43で染色し得る。それぞれのGAP43陽性神経細胞上で最も長い神経突起の長さは、コンピューターによる形態計測で測定できる。
【0118】
N-カドヘリン介在神経突起伸長を調節する調節剤は、かかる神経突起伸長を抑制又は増強できる。少なくとも幾つかの実施形態では、上記条件下で、神経細胞接着を破壊する調節剤500μg/mLの存在により、神経突起の長さの平均値を、調節剤の存在下又は陰性対照ペプチドの存在下での長さと比べ、少なくとも50%減少させねばならない。あるいは、ある実施形態では、神経細胞接着を増強する調節剤500μg/mLの存在により、神経突起の長さの平均値を少なくとも50%増加させねばならない。
【0119】
1つの代表的な細胞接着アッセイでは、カドヘリンを発現する細胞への調節剤の添加により、細胞接着が破壊される。「カドヘリン発現細胞」は本明細書で使用される場合、標準技術、例えば免疫細胞化学プロトコール(Blaschuk及びFarookhi, Dev. Biol. 136:564-567, 1989)を用いて細胞表面上で検出可能なレベルで、少なくとも1つのカドヘリン、特にN-カドヘリン及び/又はE-カドヘリンを発現する任意のタイプの細胞である。カドヘリン発現細胞には、内皮細胞(例えば、ウシ肺動脈内皮細胞)、上皮細胞及び/又は癌細胞(例えば、ヒト卵巣癌細胞株SKOV3 (ATCC #HTB-77))が含まれる。例えば、かかる細胞は、調節剤(例えば、500μg/mL)の存在及び不在下で、細胞接着させる標準的な条件下で平板培養され得る。細胞接着の破壊は、視覚的に24時間、相互に細胞の収縮を観察することにより測定できる。
【0120】
かかるアッセイの1つで使用するために、ウシ肺動脈内皮細胞を、無菌剥離、及び0.1%コラゲナーゼ(タイプII;Worthington Enzymes, Freehold, NJ)中での消化により、回収してもよい。細胞は、10%ウシ胎児血清及び1%抗生物質-抗真菌物質を補充したダルベッコ最小必須培地中で、37℃、7%CO2雰囲気下で維持する。培養物は、トリプシン-EDTA中で毎週継代し、20,000細胞/cm2ずつ組織培養プラスチック上に播種する。内皮培養物は、培養物がコンフルエントに達してから約3日に当たる培養から1週間目に使用できる。細胞を、カバースリップ上に播種し、調節剤又は対照化合物(例えば、500μg/ml)で(例えば、30分間)処理し、その後1%パラホルムアルデヒドで固定する。上述のとおり、細胞接着の破壊は、視覚的に24時間、相互に細胞の収縮を観察することにより測定できる。このアッセイは、N-カドヘリン介在細胞接着における調節剤の効果を評価する。
【0121】
別のかかるアッセイでは、正常ラット腎(NRK)細胞における調節剤の効果を評価する。代表的な実施手順に従い、NRK細胞(ATCC #1571-CRL)を、10%FCSを含有するDMEMを含む35mm組織培養フラスコ当たり10〜20,000細胞ずつプレーティングし、定期的に継代培養する(Laird et al., J. Cell Biol. 131:1193-1203, 1995)。細胞を回収し、1 mmカバースリップを含む35mm組織培養フラスコ中に再びプレーティングし、50〜65%コンフルエントになるまで(24〜36時間)インキュベートする。この際、カバースリップを24-ウェルプレートに移し、新鮮なDMEMで1回洗浄し、例えば1mg/mLの濃度で24時間、調節剤に曝露させる。その後、新鮮な調節剤を加え、該細胞をさらに24時間放置する。細胞を100%メタノールで10分間固定した後、PBSで3回洗浄する。カバースリップを2%BSA/PBS中で1時間ブロックし、マウス抗E-カドヘリン抗体(Transduction Labs, 1:250希釈)の存在下で、さらに1時間インキュベートする。一次及び二次抗体は、2%BSA/PBSで希釈する。一次抗体中でインキュベート後、カバースリップをPBS中でそれぞれ5分間3回洗浄し、さらにフルオレセインとコンジュゲートしたロバ抗マウス抗体(1:200希釈)と共に、1時間インキュベートする。PBS中でさらに洗浄(3回×5分間)後、カバースリップをマウントし、共焦点顕微鏡で観察できる。
【0122】
調節剤の不在下では、NRK細胞は敷石形態を有する特徴的な緊密接着性単層を形成し、この際該細胞は多角形形状を示す。E-カドヘリン介在細胞接着を破壊する調節剤で処理されたNRK細胞は、1 mg/mLの調節剤による48時間の処理で、非多角形で細長い形態(すなわち、線維芽細胞様形状)となり得る。かかる細胞のコンフルエントな培養物間では、差異が生じる。さらに、免疫蛍光顕微鏡で示される通り、1 mg/mLのかかる調節剤は、E-カドヘリンの細胞表面染色において、48時間以内に少なくとも75%の容易に明らかな低下が、再現性をもって誘導される (Laird et al., J. Cell Biol. 131:1193-1203, 1995)。
【0123】
別の細胞接着アッセイは、接着性の上皮細胞及び/又は内皮細胞層の透過性における調節剤の効果を、評価することを含む。例えば、ヒト皮膚の透過性における効果を評価し得る。かかる皮膚は、天然源由来であるか又は合成され得る。かかるアッセイで使用されるヒト腹部皮膚は、一般に、死後24時間以内の剖検でヒトから入手される。簡潔にいうと、ペプチド及び試験マーカー(例えば、蛍光マーカーOregon GreenTM及びRhodamine GreenTMデキストラン)を無菌緩衝液中に溶解し、皮膚を通してレセプター液に浸透するマーカーの能力を、Franzセル装置を用いて測定する(Franz, Curr. Prob. Dermatol. 7:58-68, 1978; Franz, J. Invest. Dermatol. 64:190-195, 1975)。一般に、ヒト皮膚の透過性を増強する調節剤は、500μg/mL調節剤の存在下で、6〜48時間後にレセプター区画中のマーカー量を統計学的に有意に増加させる。このアッセイは、E-カドヘリン介在細胞接着における調節剤の効果を評価する。
【0124】
さらに別のアッセイは、細胞の単層を横切る電気抵抗に対する調節剤の効果を評価する。例えば、Madin Darbyイヌ腎(MDCK)細胞を、培地に溶解させた調節剤に(例えば、最終濃度0.5 mg/mlに、24時間)曝露する。電気抵抗における効果は、標準技術を用いて測定できる。このアッセイは、上皮細胞内のタイトジャンクションの形成における調節剤の効果を評価する。一般に、500μg/mLの調節剤の存在によって、24時間後に統計学的に有意に電気抵抗が減少するはずである。
【0125】
別の細胞接着アッセイは、血管新生(既存血管からの血管の成長)を阻止する調節剤の能力を評価する。この能力は、Iruela-Arispe et al., Molecular Biology of the Cell 6:327-343, 1995.により記載されるニワトリ漿尿膜アッセイを用いて、アッセイできる。簡潔にいうと、1以上の濃度(例えば、約1〜100μg/メッシュ)のビトロゲンからなるメッシュ中に、調節剤を埋め込む。その後、1又は複数のメッシュをニワトリ漿尿膜にアプライする。24時間後に、コンピューターによる形態解析を用いて、ペプチドの効果を測定する。調節剤は、33μg/メッシュの濃度で、血管新生を少なくとも25%抑制しなければならない。
【0126】
あるいは、Milesアッセイを利用して、血管透過性に対する効果を判定することにより、調節剤をin vivoで評価し得る(McClure et al., J. Pharmacological & Toxicological Methods 32:49-52, 1994)。簡潔にいうと、候補調節剤をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で100μg/mlに溶解する。成体ラットには、各ペプチド溶液の100μlの皮下注射液を該ラットの剃毛した背部に投与し、続いて15分後にPBS中で溶解した1%Evans blueの250μlの注射液を、ラットの尾静脈に単回投与する。皮下注射部位では、青色色素の出現を視覚的にモニターする。色素がいったん出現したら(注射から約15分後)、それぞれの皮下注射部位を切除し、重量をはかり、色素を抽出するために24時間、1 mlジメチルホルムアミド中に置く。その後、色素抽出物の吸光度を、620 nmで測定する。一般に、ラット背部への0.1 mlの調節剤(濃度0.1 mg/ml)の注射は、該注射部位の色素蓄積量を、PBSを注射した部位における色素蓄積量と比べ、少なくとも50%増加させる。
【0127】
血管平滑筋細胞の遊走を調節する薬剤の能力を評価する具体的なアッセイは、次のとおり(実施例23に記載のとおり)実施できる。ヒト伏在静脈の血管平滑筋細胞は、冠動脈バイパス手術を受ける患者の静脈の余剰部分から、外植(explant)される。細胞を、ペニシリン、ストレプトマイシン、L-グルタミン及び10%ウシ胎児血清を補充したダルベッコ改変必須培地中に維持し、1型コラーゲンの存在又は不在下で、ガラスカバースリップ上でコンフルエントになるまで増殖させる。その後、カバースリップを横断するように良好な細胞スクレーパーを引くことで、細胞層を掻きだして創傷させる。血管平滑筋細胞の増殖は、2mMヒドロキシウレアの培養液への添加により抑制される。この方法で処理される血管平滑筋細胞は、創傷への遊走により、コンフルエントな単層の創傷に反応する(Hammerle et al (1991) Vasa 20, 207-215)。血管平滑筋細胞の遊走能力は、創傷領域への遊走距離(創傷から最外側の100μmまで)を、損傷から24時間後に画像解析ソフトウェアを用いて測定することにより、評価される。
【0128】
アポトーシスの誘導の直接アッセイを、任意の標準技術を用いて実施できる。例えば、カドヘリン発現細胞(例えば、SKOV3ヒト卵巣癌細胞)を、ポリ-L-リジンでコーティングされたガラススライド上にプレーティングし、500μg/mLの調節剤と共に24〜48時間培養する。その後、細胞を固定し、多様な周知方法のうち任意のものを用いて、細胞死をアッセイする。例えば、in situ細胞死検出キットは、Boehringer Mannheim (Laval, Quebec)から購入し、製造業者の指示書に従い使用できる。
【0129】
調節剤修飾及び製剤
本明細書に記載の調節剤は、1以上の追加の分子に連結され得るが、必ずしもその必要はない。特に、本明細書で検討するとおり、複数の調節剤(同一であり得るが、その必要はない)を、支持体分子(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン)若しくはポリマーマトリックスのような固相支持体(膜又は微細構造、例えば超薄膜として形成され得る)、容器表面(例えば、組織培養プレートの表面又はバイオリアクターの内部表面)、又はガラス、プラスチック若しくはセラミクスを含む多様な物質から作製し得るビーズや他の粒子に連結させることが、ある用途では有用であり得る。ある用途では、生分解性支持体材料、例えばセルロース及びその誘導体、コラーゲン、クモの糸(spider silk)又は任意の多様なポリエステル(例えば、ヒドロキシ酸及び/又はラクトンから誘導されたもの)又は縫合糸が好ましい(米国特許番号第5,245,012号を参照されたい)。ある他の実施形態において、調節剤は、本発明で同定された1以上のCAR配列及び本発明のCAR配列とは異なる1以上の公知CAR配列(例えば、HAV、INP、RGD、LYHY(配列番号51)等のような本明細書に記載の公知のCAR配列)を、好ましくは交互にポリマーマトリックスのような支持体と連結させて、含み得る。
【0130】
調節剤を支持体材料に連結させる好適な方法は、支持体の組成及び意図される用途に依存し、当業者には容易に明らかであろう。結合は一般に、吸着又は親和のような非共有結合を介して、又は好ましくは共有結合(支持体上での調節剤と官能基間の直接結合、又は架橋剤若しくはリンカーを用いた結合であり得る)を介して、達成され得る。吸着による調節剤の結合は、適切な時間をかけて、好適な緩衝液中で固相支持体と接触させることにより達成できる。接触時間は、温度により変化するが、一般に約5秒〜1日で、典型的には10秒〜1時間である。
【0131】
調節剤と分子又は固相支持体との共有結合は、一般に、初めに支持体材料を、調節剤上の官能基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、ケトン基又はアミノ基)とも反応する二機能性試薬と、反応させることにより達成できる。例えば、調節剤は、好適なポリマー系支持体又はベンゾキノンを用いた被膜に、支持体上のアルデヒド基と調節剤上のアミン及び活性水素との縮合により又は支持体上のアミノ基と調節剤上のカルボン酸との縮合により、結合し得る。結合を生じさせる好ましい方法は、グルタルアルデヒドを用いてアミノ基を介するものである。調節剤は、エステル結合を介してセルロースに連結させる。同様に、アミド結合は、他の分子、例えばキーホールリンペットヘモシアニン又は他の支持体材料との連結に好適である。他のCAR配列を含む複数の調節剤及び/又は分子は、例えば、等モル濃度のかかる分子をマトリックス支持体と混合し、ランダムにカップリングさせるランダムカップリングにより、結合できる。
【0132】
本明細書に記載の調節剤は、特定の組織又は細胞に優先的に結合できるので、in vivoで所望の部位を標的化するのに十分であるが、ある用途では、追加の標的化剤を包含させることが有益である。よって、さらに又は代わりに、標的化剤が1以上の特定組織を指向するのを促進する調節剤に連結され得る。本明細書で使用される場合「標的化剤」は、調節剤と連結された場合に、標的組織への調節剤の輸送を増大させることにより、調節剤の局所濃度を増大させる任意の物質(例えば、化合物又は細胞)である。標的化剤には、標的組織の細胞又は近傍の細胞に結合する抗体又はそのフラグメント、受容体、リガンド及び他の分子が含まれる。公知の標的化剤には、血清ホルモン、細胞表面抗原に対する抗体、レクチン、接着分子、腫瘍細胞表面に結合するリガンド、ステロイド、コレステロール、リンホカイン、フィブリン分解酵素、並びに所望の標的部位に結合するそれらの薬物及びタンパク質が含まれる。標的化剤として機能し得る多くのモノクローナル抗体の中には、抗TAC、又は他のインターロイキン-2受容体抗体;250キロダルトンのヒトメラノーマ関連プロテオグリカンと反応性がある9.2.27及びNR-ML-05;膵臓癌腫(pancarcinoma)糖タンパク質と反応性があるNR-LU-10がある。抗体標的化剤は、インタクトな(全)分子、そのフラグメント、又はその機能性等価物であり得る。抗体フラグメントの例は、従来の方法により又は遺伝子若しくはタンパク質工学を利用して作製できるF(ab')2、-Fab'、Fab及びF[v]フラグメントである。一般に、結合は共有結合であり、例えば、直接縮合若しくは他の反応により、又は二機能性若しくは複数機能性リンカーを用いて達成される。他の実施形態では、調節剤をコードするポリヌクレオチドを、標的組織に指向させることにより、調節剤の局所濃度を増大させることもできる。かかる標的化は、レトロウイルス及びアデノウイルス感染を含む周知技術を用いて達成される。
【0133】
ある実施形態では、さらに又は代わりに、薬物を調節剤に連結させることが有用である。本明細書で使用される場合、用語「薬物(drug)」は、疾患又は他の望ましからざる状態を予防又は治療するために動物への投与が意図される任意の生物活性剤を意味する。薬物には、ホルモン、成長因子、タンパク質、ペプチド及び他の化合物が含まれる。本発明に関して、ある特定の薬物の使用が下記に検討される。
【0134】
本発明のある態様では、上記の1以上の調節剤が、医薬組成物中に存在する。医薬組成物は、1以上の調節剤を、1以上の製薬上又は生理学上許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含む。かかる組成物には、緩衝液(例えば、中性緩衝液生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水)、糖類(例えば、グルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド又はグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAやグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)及び/又は保存剤が含まれ得る。さらに他の実施形態では、本発明の組成物は、凍結乾燥物として製剤化される。調節剤(単独又は標的化剤及び/若しくは薬物との組み合わせ)は、周知技術を用いてリポソーム内に封入されるが、必ずしもその必要はない。本発明の組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、皮下、又は筋肉内投与を含む任意の好適な方法での投与のために製剤化できる。ある局所用途では、周知の構成成分を用いて、クリーム又はローションとして製剤することが好ましい。
【0135】
ある実施形態では、医薬組成物は、本発明のCAR配列又はその抗体を1以上含んでもよく、またカドヘリン及び/又は非カドヘリン介在過程を調節することができる公知のCAR配列又はそれに対する抗体をさらに1以上含み得る。かかる組成物は通常、公知方法を用いて調製でき、また、古典的又は非古典的なカドヘリンのいずれかであるカドヘリン超遺伝子スーパーファミリーの他のメンバー(例えば、VE-カドヘリン;OB-カドヘリン;デスモグレイン;デスモコリンを含む)だけでなく、複数の細胞接着分子(例えば膜貫通タンパク質、例えばオクルジン、クラウジン、インテグリン、免疫グロブリン超遺伝子ファミリーのメンバー、例えばN-CAM;さらには細胞外マトリックスタンパク質、例えばラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチン、エンタクチン及びテナシンを含む)により介在される細胞接着を抑制することが望ましい状況において、特に有用である。ある実施形態では、公知のCAR配列は本明細書に記載のものを含み、好ましくはCAR配列HAV、INP及び関連配列を含む。
【0136】
医薬組成物は、1以上の薬物を、調節剤と連結させて又は組成物中に遊離させて含みうる。実際、下記の多様な目的のために、任意の薬物を本明細書に記載のペプチドと組み合わせて投与できる。ペプチドと共に投与できる薬物の種類の例には、鎮痛剤、麻酔剤、抗狭心症薬、抗真菌剤、抗生物質、抗癌剤(例えば、タキソール又はマイトマイシンC)、消炎剤(例えば、イブプロフェン及びインドメタシン)、駆虫剤、抗うつ剤、解毒剤、鎮吐薬、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗マラリア剤、微小管阻害剤(例えば、コルヒチン又はビンカアルカロイド)、抗偏頭痛薬、殺菌剤、抗精神病薬(antipsychotics)、解熱剤、防腐剤、抗シグナル伝達剤(例えば、プロテインキナーゼC阻害剤又は細胞内カルシウム動員阻害剤)、抗関節炎剤、抗トロンビン剤、抗結核薬、鎮咳剤、抗ウイルス剤、食欲抑制剤、心臓作用薬、薬物依存性薬物、下剤、化学療法剤、冠動脈血管、脳内血管、又は末梢血管の拡張剤、避妊薬、抑制剤、利尿剤、去たん薬、成長因子、ホルモン剤、催眠薬、免疫抑制剤、抗麻薬拮抗剤、副交感神経興奮薬、鎮静剤、興奮剤、交感神経興奮薬、毒素(例えば、コレラ毒素)、抗不安薬及び尿路抗感染薬が含まれる。
【0137】
画像診断目的では、多様な診断薬のうち任意のものを、調節剤と連結させて又は組成物中に遊離させて、医薬組成物に含めてもよい。診断薬には、他の生理学的機能には通常は影響を及ぼさないままに、患者における生理学的機能を解明するために投与される任意の物質が含まれる。診断薬には、金属、放射性同位元素及び放射線不透過性剤(例えば、ガリウム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、臭素及びリン含有化合物)、放射線透過性剤、造影剤、色素(例えば、蛍光色素及び発色団)及び比色又は蛍光反応を触媒する酵素が含まれる。一般に、かかる薬剤は上記の多様な技術を用いて結合され、任意の配向におかれる。
【0138】
本明細書に記載の組成物は、持続性放出性製剤(すなわち、投与後にペプチドの徐放性に影響を与えるカプセル又はスポンジのような製剤)の一部として、投与できる。かかる製剤は一般に、周知技術を用いて調製でき、例えば経口、直腸、若しくは皮下埋め込みにより、又は所望の標的部位に移植することにより投与できる。持続性放出性製剤は、担体マトリックス中に分散させて、及び/又は、速度制御膜に囲まれたリザーバー中に含ませて、ペプチドを含み得る(例えば、欧州特許出願710,491Aを参照されたい)。かかる製剤中で使用される担体は生体適合性であり、生分解性でもあり得;好ましくは、該製剤は、比較的一定レベルでペプチド放出をもたらす。持続性放出性製剤中に含まれるペプチドの量は、注入部位、放出速度及び放出予測時間、並びに治療又は予防対象となる状態の性質によって決まる。
【0139】
本発明の医薬組成物は、治療対象となる(又は予防対象となる)疾患に適した方法で投与される。適切な投与量及び投与期間及び投与頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類及び重症度、並びに投与方法のような因子により、決定されるだろう。一般に、適切な投与量及び治療レジメンは、治療及び/又は予防上の利益をもたらすのに十分な量で、1又は複数の調節剤を提供する。本発明の特に好ましい実施形態では、本明細書に記載の調節剤又は医薬組成物は、単回又は複数回の一日用量レジメンで、0.001〜50 mg/kg(体重)、好ましくは0.1〜20 mg/kgの用量で投与される。局所投与用では、クリームは典型的には0.00001%〜1%、好ましくは0.0001%〜0.2%、より好ましくは0.0001%〜0.002%の量の調節剤を含む。流体組成物は、典型的には約10 ng/ml〜5 mg/ml、好ましくは約10μg〜2 mg/mLのペプチドを含む。適切な用量は一般に、実験モデル及び/又は臨床試験を用いて決定し得る。一般に、有効な治療を提供するのに十分な量でかつ最も少ない用量を使用することが好ましい。患者は通常、治療又は予防対象となる状態に好適なアッセイを用いて治療効果がモニターされ、該アッセイは当業者によく知られているだろう。
【0140】
調節剤の使用方法
一般に、本明細書に記載の調節剤及び組成物は、古典的カドヘリン発現細胞(すなわち、1以上のE-カドヘリン、N-カドヘリン、P-カドヘリン、及び/又はR-カドヘリンをin vitro及び/又はin vivoで発現する細胞)の接着を調節するために使用できる。古典的カドヘリン介在細胞接着を調節するために、in vivo又はin vitroのいずれかでカドヘリン発現細胞を調節剤と接触させる。上述のとおり、カドヘリン介在細胞接着の破壊に関与することを目的とした調節剤は、本明細書に記載の単一のCAR配列若しくは複数のCAR配列を隣接して含むペプチド又はカドヘリンCAR配列を認識する抗体(又はその抗原結合性フラグメント)を含みうる。他の接着分子により介在される細胞接着の破壊をも望ましい場合には、調節剤は、かかる接着分子と結合した1以上のCAR配列(及び/又はかかる配列を結合する抗体若しくはそのフラグメント)を、好ましくはリンカーにより分離させて、さらに含み得る。上述のとおり、かかるリンカーは1以上のアミノ酸を含んでも含まなくてもよい。細胞接着を増強するために、上記で検討したとおり、調節剤は複数のCAR配列又は抗体若しくはその抗原結合性フラグメントを、好ましくはリンカーにより分離させて含み得、及び/又は調節剤は上記の単一分子又は支持体材料に連結され得る。
【0141】
本明細書に記載の細胞接着の破壊を伴う特定の方法は、大きな及び/又は荷電した分子を、カドヘリン発現細胞のバリアを横断して通過させるのに、従来技術よりも利点を有する。下記により詳細に検討するとおり、本明細書に記載の調節剤は、多様な他の場合において、細胞接着を破壊又は増強するためにも使用できる。本明細書に記載の方法では、1以上の調節剤は一般に、単独で又は医薬組成物に入れて投与される。本明細書に記載のそれぞれの特定の方法では、上述のとおり、標的化剤を適用することにより、標的部位における調節剤の局所濃度を増大させることができる。
【0142】
かかる1態様において、本発明は、本明細書に記載の調節剤を投与することにより、望ましからざる細胞接着を減少させる方法を提供する。望ましからざる細胞接着は、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は細胞生存能若しくは機能を損なわせる他の状態の結果として、腫瘍細胞間、腫瘍細胞と正常細胞間、又は正常細胞間で生じることがある。
【0143】
さらに、調節剤は、インテグリンと結合した配列RGD及び/又はオクルジンと結合した配列LYHY(配列番号51)を、リンカーを介してCAR配列と分離させて含み得る。存在し得る他の公知CAR配列には、上記のとおり、OB-カドヘリン、デスモグレイン及びデスモコリンCAR配列が含まれる。あるいは、インテグリン-、オクルジン-、OB-カドヘリン-、デスモコリン-及び/又はデスモグレイン-介在細胞接着の別の調節因子を、1又は複数の調節剤とコンジュゲートさせて、同一の組成物中に入れて又は別個に投与し得る。1又は複数の調節剤の局所投与が一般に好ましいが、他の手段も適用できる。好ましくは、局所投与用の流体組成物(例えば、生理食塩水を含む)は、上記のペプチド量を含み、より好ましくは10μg/mL〜1mg/mLの量を含む。クリームは一般に、上記のとおり製剤される。外科領域での局所投与は、手術の最後に創傷の洗浄として1回行うか、術後期間の外科ドレナージの使用に伴う間欠性又は継続性の洗浄として行うか、又は手術を行う必要がない場合には、炎症、損傷若しくは疾患領域内に特別に挿入されたドレナージの使用で行われ得る。あるいは、非経口投与又は経皮投与を用いて、同様の効果を得ることもできる。
【0144】
別の態様では、哺乳動物の皮膚を介した薬物の送達を促進する方法が提供される。薬物の経皮送達は、比較的一定に薬物の血中濃度を維持するために利用可能な簡便で非侵襲性の方法である。一般に、皮膚を介した薬物送達を促進するためには、微小血管系の上皮細胞(ケラチノサイト)と内皮細胞間の接着を摂動させることが不可欠である。現在利用可能な技術を用いた場合、小さくて非荷電の分子しか、in vivoで皮膚を通過させて送達できない。一方、本明細書に記載の方法では、同程度の制限が課されない。したがって、全身又は局所投与目的で、多種多様な薬物を皮膚の上皮及び内皮細胞層を通過させて、輸送できる。かかる薬物をメラノーマに送達させることができ、又は体内の他の部位に送達させるために、哺乳動物の血流に滲出させることができる。
【0145】
皮膚を介した薬物の送達を促進するためには、本明細書に記載の調節剤及び薬物を、皮膚表面と接触させる。
【0146】
本発明の古典的カドヘリンCAR配列を1以上含み、さらに上記で検討した公知のCAR配列を1以上含む多機能性調節剤は、上皮細胞接着を破壊するためにも利用できる。ここで使用される特定の具体的な公知CAR配列には、例えば、HAV CAR配列、HAV結合モチーフ配列(例えば、INP、IDP等)、非古典的CAR配列、デスモコリンCAR配列及び/又はデスモグレインCAR配列が含まれる。かかる調節剤は、さらに又は代わりに、インテグリンにより認識されるフィブロネクチンCAR配列RGD、オクルジンCAR配列LYHY(配列番号51)及び/又は上記のクラウジンCAR配列を含み得る。かかる公知のCAR配列は、本発明のCAR配列に連結され得る。あるいは、公知のCAR配列は、調節剤とコンジュゲートさせて、同一の医薬組成物内に入れて又は別個に投与し得る別個の構成成分として存在し得る。上述のとおり、当技術分野ではこれらのCAR配列及び関連する公知のCAR配列が利用可能であり、本発明の調節剤とコンジュゲートさせて、容易に利用できる。
【0147】
一般にはクリーム又はジェルとして製剤した組成物に入れて直接適用により、又は経皮投与用の多様な皮膚接触デバイスのうち任意のものを用いて(例えば、欧州特許出願番号566,816 A;米国特許番号第5,613,958号;米国特許番号第5,505,956号に記載されているようなもの)、接触させることができる。皮膚パッチは、(特に、徐放性製剤において)簡便な投与方法を提供する。かかるパッチは、薬物が拡散して通過する膜によって、皮膚とは分離されている調節剤及び薬物のリザーバーを含み得る。他のパッチデザインでは、調節剤及び薬物をポリマー又は接着性マトリックス中に溶解又は懸濁させ、その後、それらを患者の皮膚と直接接触するように配置する。すると、調節剤及び薬物がマトリックスから皮膚に拡散する。1又は複数の調節剤及び薬物は、同一組成物若しくは皮膚パッチ内に含めるか又は別々に投与し得るが、同時に同じ部位に投与するのが好ましい。一般に、皮膚を介して投与される調節剤の量は、治療又は予防対象となる状態の性質に応じて変更されるが、上記の通りに変更できる。かかる濃度は、使用されるデバイスの適当な調整により、又は上記のとおり製剤されたクリームを適用することにより、得ることができる。皮膚を介した標的組織への薬物の輸送は、例えばFranzセル装置を用いるin vitro試験に基づいて予測でき、当業者には明らかである適切な手段によりin vivoで評価することができる。例としては、投与した薬物の血清濃度を、時間をかけてモニターすることは、皮膚を介した薬物輸送の簡便な測定法を与える。
【0148】
上記の経皮薬物送達は、一定速度の薬物送達が望ましい状況において、薬物の血中濃度の変動を避けるために、特に有用である。例えば、モルヒネは手術直後に使用される一般的な鎮痛薬である。非経口(筋肉内、静脈内)剤形で間欠的に投与される場合、患者は通常、初めの1時間は眠気を感じ、次の2時間は快適であるが、最後の1時間は痛みを感じる。なぜなら、注射後は急激に血中濃度が上昇するが、再投与が処方される4時間を迎える前に、望ましいレベルを下回るからである。本明細書に記載の経皮投与は、一定濃度を長時間(例えば、数日)維持できるので、適切な疼痛管理及び気分変動を同時に得ることができる。インスリンは、別のかかる例を提供する。多くの糖尿病患者は、食事時に必要な量とは異なる一定のベースライン濃度のインスリンを維持する必要がある。ベースライン濃度は、本明細書に記載のとおり、インスリンの経皮投与を用いて維持できる。毒性の要因となることが多い高濃度(例えば、ゲンタマイシンの濃度が高すぎると、通常腎毒性を引き起こす)を避けるために、適切な殺菌血中濃度を維持するように一定速度で抗生物質を投与することもできる。
【0149】
本発明の方法による薬物送達は、薬物投与のより簡便な方法も提供する。例えば、非経口薬物を新生児及び幼児に投与することは、カテーテルを挿入できる径の静脈の発見が難しいために、特に困難であることが多い。しかしながら、新生児及び幼児は、成人と比べ比較的大きな皮膚表面を有することが多い。経皮薬物送達は、かかる患者の管理を容易にし、現時点では病院でしか行うことができない特別な処置を、自宅で行えるようにする。静脈カテーテル留置が通常、同様に困難である他の患者は、化学療法施行中の患者及び透析中の患者である。さらに、長期治療を受けている患者では、上記の経皮投与が、非経口投与よりも簡便である。
【0150】
本明細書に記載の経皮投与は、非経口での使用が実用的でない状況において、胃腸管を迂回させることもできる。例えば、通常は胃腸管内で消化される治療上有効な小さいペプチド及びタンパク質の投与に適した方法のニーズが高まってきている。本明細書に記載の方法により、かかる化合物の投与を行うことができ、長時間にわたり容易に投与することができる。長期間の腸閉塞又は薬物吸収を制限する特定の胃腸疾患のせいで、胃腸管を介した吸収に問題を抱える患者も、本明細書に記載の経皮投与用に製剤された薬物から利益を享受できる。
【0151】
さらに、コンプライアンスを維持することが難しい臨床状況が多く存在する。一定送達速度の薬物が、一日の特定の時間に薬剤を摂取する能力に頼らることなく提供されるならば、例えば、精神的な問題を抱える患者(例えば、アルツハイマー病又は精神病を患う患者又は精神病)を管理するのが容易となる。処方どおりに薬物を摂取するのを単に忘れる患者も、定期的に(例えば、3日毎に)皮膚パッチを貼ることのみが求められるのならば、そうするのをより忘れにくい。高血圧を患う患者のように、無症候性の疾患を患う患者は、処方どおりに薬剤を摂取するのを忘れるリスクが特に高い。
【0152】
複数の薬物を摂取する患者では、皮膚パッチのような経皮投与用のデバイスを、頻繁に同時に使用される薬物と組み合わせて、製剤化できる。例えば、多くの心不全患者は、フロセミドと組み合わせてジゴキシンを与えられる。単一の皮膚パッチに両方の薬物を結合させることは、投与を促進し、過誤のリスクを減らし(適切な時間に正しい錠剤を摂取することは、高齢者を混乱させることが多い)「こんなにも多くの錠剤」を摂取するのだという心理的負担を軽減し、不規則な活動のせいで投与をスキップすることを減らし、コンプライアンスを向上させる。
【0153】
本明細書に記載の方法は、特にヒトに対し適用できるが、(例えば、繁殖力抑制のための)成長因子又はホルモンの動物への投与のように、多様な獣医学的な用途も有する。
【0154】
上述のとおり、多種多様な薬物を本発明で提供される方法により投与できる。経皮的に投与し得る薬物分類の幾つかの例には、(例えば、関節炎及び他の状態に対する)抗炎症性薬、例えば全てのNSAID、インドメタシン、プレドニゾン等;(特に、術後のように経口吸収ができない場合に、及び非経口投与が不便又は望ましくない場合に)モルヒネ、コデイン、デメロール、アセトアミノフェン及びこれらの組み合わせ(例えば、コデインとアセトアミノフェン)を含む鎮痛薬;抗生物質、例えばバンコマイシン(胃腸管により吸収されず、静脈内投与により頻繁に投与される)又は(例えば、結核に対する)INH及びリファンピシンの組み合わせ;抗凝血剤、例えばヘパリン(胃腸管により十分に吸収されず、通常は非経口的に投与され、高濃度では出血リスクが増大し、低濃度では効果不十分のリスクがあるような血中濃度の変動をもたらす)及びワルファリン(胃腸管により吸収されるが、一般的な腸閉塞が原因で、手順どおりに腹部手術の直後に投与できない);抗うつ剤(例えば、アルツハイマー病によりコンプライアンスが問題となる状況、又は安定な血中濃度を維持することにより、抗コリン作動性の副作用の顕著な減少が得られる状況、及び患者にとって優れた認容性が得られる状況で)、例えばアミトリプチリン、イミプラミン、プロザック等;抗高血圧剤(例えば、コンプライアンスを改善し、血中濃度の変動に関連する副作用を減少させるために)、例えば利尿剤及びβブロッカー(同一のパッチで投与できる;例えば、フロセミド及びプロプラノロール);抗精神病薬(例えば、コンプライアンスを促進するために、またケア提供者及び家族メンバーにとって、薬物摂取を確保することが容易となるように)、例えば、ハロペリドール及びクロルプロマジン;及び抗不安薬又は鎮静薬(例えば、経口投与後の高い血中濃度に関連する覚醒の低下を避けるために、また治療レベルを一定に保持することにより一日を通じて継続的な効果が得られるように)が含まれる。
【0155】
天然及び合成ホルモン、成長因子、タンパク質及びペプチドを含む、数多くの他の薬物が、本明細書に記載のとおり投与できる。例えば、インスリン及びヒト成長ホルモン、エリスロポエチンのような成長因子、インターロイキン及びインターフェロンを、皮膚を介して送達できる。
【0156】
哺乳動物の皮膚を介して薬物を投与するキットも、本発明では提供される。かかるキットは通常、経皮投与用のデバイス(すなわち、皮膚パッチ)を、1以上の調節剤と組み合わせて又は含浸させて含む。薬物が、かかるキット内に追加で含まれ得る。
【0157】
関連する実施形態では、皮膚透過性を増大させるために、本明細書に記載の調節剤を使用して、受動拡散による血液区画のサンプリング、血中を循環する特定の分子濃度の検出及び/又は測定も促進できる。例えば、本明細書に記載の皮膚パッチを介して皮膚に1以上の調節剤を適用することにより、パッチをスポンジのように機能させて、血清の代表的なサンプルを含有する少量の液体を蓄積させることができる。その後、パッチを特定の時間経過後に除去し、好適な技術により、目的の化合物(例えば、医薬、ホルモン、成長因子、代謝産物又はマーカー)について分析する。あるいは、パッチを試薬と共に浸透させることにより、特定の物質(例えば、酵素)を検出するかどうかを、色の変化で観察できる。この方法で検出できる物質には、コカインのような違法薬物、HIV酵素、グルコース及びPSAが含まれるが、これに限定されない。この技術は、自宅用の試験キットで特に有用である。
【0158】
さらなる態様では、哺乳動物における腫瘍への薬物の送達を促進する方法であって、腫瘍を有する哺乳動物に、調節剤を薬物と組み合わせて投与することを含む、前記方法が提供される。かかる方法で使用される調節剤には、E-カドヘリン及び/又はN-カドヘリン介在細胞接着を阻害するようにデザインされた調節剤が含まれる。
【0159】
特に好ましい実施形態の1つでは、調節剤は、複数の接着分子により介在される細胞接着を阻害できる。例えば、単一の分岐(branched)調節剤(又は単一の分子又は支持体材料と連結された複数の薬剤)は、E-カドヘリン、N-カドヘリン、オクルジン、クラウジン、デスモグレイン及びデスモコリン介在細胞接着を阻害することにより、接着結合、強固な結合及びデスモソームを阻害できる。かかる薬剤は、カドヘリンCAR配列だけでなく、インテグリンにより認識されるフィブロネクチンCAR配列RGD;デスモグレインCAR配列;デスモコリンCAR配列;クラウジンCAR配列;オクルジンCAR配列及び/又はOB-カドヘリンCAR配列のうち1以上を含み得る。かかる薬剤は、細胞接着の多機能性インヒビターとして作用する。あるいは、非古典的カドヘリン介在細胞接着の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤と結合させて、同じ医薬組成物に入れて又は別個に投与され得る。カドヘリンCAR配列及び/又はオクルジンCAR配列に対する抗体又はFabフラグメントも、調節剤に含ませるか又は同時に投与される別個の調節剤に入れて、適用され得る。
【0160】
関連する実施形態では、1以上の本発明のCAR配列を、投与前に同一の組成物又は薬物送達デバイス中にいれて1以上の薬物と共に製剤化する。通常、ペプチドは任意の腫瘍への薬物送達を促進でき、その投与方法は、標的腫瘍の種類に基づいて選択できる。例えば、上記の注射又は局所投与が、メラノーマ及び他の接触可能な腫瘍では好ましい(例えば、原発性卵巣腫瘍からの転移は、腹膜腔を組成物でフラッシングすることにより治療できる)。他の腫瘍(例えば、膀胱腫瘍)は、ペプチド及び薬物(例えば、マイトマイシンC)を腫瘍部位に注射することにより治療できる。他の例では、組成物を全身投与でき、様々な特異的な標的化剤のうち任意のものを用いて、腫瘍に指向できる。好適な薬物は、治療対象となる癌の種類に基づいて、当業者は同定できる(例えば、膀胱癌に対するマイトマイシンC)。一般に、投与されるペプチドの量は、投与方法及び腫瘍の性質に応じて、上記の典型的な範囲で、好ましくは約1μg/mL〜約2 mg/mLで、より好ましくは約10μg/mL〜100μg/mLで変更される。標的腫瘍への薬物の輸送は、当業者には明らかな適切な手段、例えば、腫瘍サイズの減少により評価することができる。薬物を、(例えば、放射性核種を用いて)標識することにより、標準的な画像診断技術を用いて、標的腫瘍への輸送を直接観察することもできる。
【0161】
関連する態様では、本発明は、哺乳動物において癌の進行を抑制する(すなわち、癌を治療又は予防する、及び/又は転移を抑制する)方法を提供する。癌腫瘍は、増殖を制御できない細胞の固形の塊であり、血管を介した栄養供給を必要とする。腫瘍の増殖及び転移の出現には、新しい毛細血管の形成が必須である。本明細書に記載の調節剤の投与は、かかる血管の成長を阻害することにより、癌の有効な治療を提供し、及び/又は転移を抑制できる。本発明で提供される調節剤を用いて治療できる癌には、腫瘍細胞又は支持血管系がカドヘリン機能、特にN-カドヘリン機能に依存する任意の癌が含まれる。この実施形態で治療される典型的な癌には、N-カドヘリンを発現する癌が含まれ、癌腫、メラノーマ及び白血病が含まれるが、これに限定されない。好ましくは、調節剤は、当技術分野で公知のアッセイ及び/又は本明細書に記載のアッセイにおいて、検出可能な腫瘍成長を予防し、並びに/あるいは腫瘍サイズをかなり減少させ(すなわち、少なくとも50%の減少)及び/又は腫瘍細胞の増殖、遊走及び/若しくは生存をかなり減少させる。
【0162】
本発明のCAR配列を1以上含む調節剤は、例えば、白血病を治療するために使用できる。かかる方法で使用される好ましい調節剤には、N-カドヘリン介在細胞接着を阻害する調節剤が含まれる。さらに、調節剤は、インテグリンにより認識される配列RGD及び/又はオクルジンCAR配列LYHY(配列番号51)を、リンカーを介し分離させて含み得る。存在し得る他のCAR配列には、OB-カドヘリンCAR配列;デスモコリンCAR配列;デスモグレインCAR配列及び/又はクラウジンCAR配列が含まれる。あるいは、インテグリン-、OB-カドヘリン-、デスモコリン-、デスモグレイン-、クラウジン-及び/又はオクルジン-介在細胞接着の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤と結合させて、同一の医薬組成物に入れて又は別個に投与され得る。
【0163】
調節剤は、単独で(例えば、皮膚を介して)又は医薬組成物中にいれて、投与できる。メラノーマ及び特定の他の接触可能な腫瘍では、上記の注射又は局所投与が好ましい。卵巣癌では、腹膜腔を1以上の調節剤を含有する組成物でフラッシングすることにより、卵巣腫瘍細胞の転移を予防することができる。他の腫瘍(例えば、膀胱腫瘍、気管支腫瘍又は気管腫瘍)は、調節剤をその腔(cavity)に投与することにより、治療できる。他の例では、組成物を全身投与して、上記のとおり、多様な特定の標的化剤のうち任意のものを用いて、腫瘍に指向させることができる。一般に、投与される調節剤の量は、投与方法及び癌の性質により変更されるが、上記の範囲内で変更できる。癌の治療及び転移抑制の効果は、周知の臨床所見、例えば、血清マーカーのレベル(例えば、CEA又はPSA)を利用することにより、評価できる。
【0164】
さらに関連する態様では、哺乳動物において調節剤を使用することにより、血管新生(すなわち、既存血管からの血管の成長)を抑制できる。一般に、血管新生の阻害は、癌又は関節炎のような疾患を患う患者において有益であり得る。さらに、血管新生の抑制のために使用される調節剤は、古典的カドヘリンCAR配列HAV、古典的カドヘリン結合モチーフINP、VE-カドヘリンCAR配列DAE、インテグリンにより認識される配列RGD、オクルジンCAR配列LYHY(配列番号51)及び/又はクラウジンCAR配列を、リンカーを介して本発明のCAR配列と分離させて含む。あるいは、クラウジン-、VE-カドヘリン-、インテグリン-及び/又はオクルジン-介在細胞接着の別個の調節剤を、1又は複数の調節剤とコンジュゲートさせて、同一の医薬組成物に入れて又は別個に投与できる。
【0165】
血管新生における特定の調節剤の効果は、一般に、血管形成におけるペプチドの効果を評価することにより測定できる。かかる測定は、一般に、例えばニワトリ漿尿膜アッセイ(Iruela-Arispe et al., Molecular Biology of the Cell 6:327-343, 1995)を用いて実施できる。簡潔にいうと、調節剤を1以上の濃度(例えば、約1〜100μg/メッシュ)で、ビトロゲンからなるメッシュ中に埋め込む。その後、1又は複数のメッシュをニワトリ漿尿膜にアプライする。24時間後に、ペプチドの効果をコンピューターによる形態解析を用いて測定する。調節剤は、33μg/メッシュの濃度で、少なくとも25%血管新生を抑制しなければならない。
【0166】
投与が全身性である場合には特に、標的化剤の追加が有益である。好適な投与形態及び用量は、予防又は治療対象となる状態により決まるが、一般に、注射による投与が適している。用量は上記のとおり変更し得る。抑制の効果は、腫瘍の成長維持不能性を肉眼で、また腫瘍周辺の神経不在を顕微鏡で、評価することができる。
【0167】
別の実施形態では、癌、乾癬、関節炎、及び加齢による黄斑変性症のような状態の治療のために、血管の退行を生じさせる方法が提供される。癌腫瘍は、増殖を制御できない細胞の固形の塊であり、血管を通じた栄養供給を必要とする。腫瘍の増殖及び転移の出現には、新しい毛細血管の形成が必須である。本明細書に記載の調節剤の投与は、血管を阻害して退行させることにより、癌のような疾患を患う患者に対する有効な治療法を提供できる。かかる方法で使用される特定の好ましい調節剤には、本発明のCAR配列に加え、古典的カドヘリンCAR配列HAV、古典的カドヘリンHAV結合モチーフINP、非古典的カドヘリンCAR配列(好ましくはOB-カドヘリン又はVE-カドヘリンCAR配列)、クラウジンCAR配列、オクルジンCAR配列又は特定のインテグリンRGDにより認識されるCAR配列が含まれる。好ましくは、かかる調節剤の1又は複数のペプチド部分は、6〜16アミノ酸を含む。投与は、局所的に、注射を介して又は他の手段によりなされ、投与が全身性である場合には特に、標的化剤の追加が有益である。好適な投与形態及び用量は、細胞接着の阻害が望まれる内皮細胞及び/又は周皮細胞の場所及び性質に依存するが、通常、用量は上記のとおり変更される。投与が全身性である場合には特に、標的化剤の追加が有益である。好適な投与形態及び用量は、予防又は治療対象となる状態によって決まるが、一般に、注射による投与が適している。用量は上記のとおり変更される。
【0168】
さらに別の関連する態様では、本発明は、カドヘリン発現細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。一般に、癌を患う患者は、かかる治療から利益を得られる。第2の接着分子のCAR配列(例えば、RGD、LYHY(配列番号51)又はOB-カドヘリン、デスモグレイン、デスモコリン又はクラウジンのCAR配列)だけでなく、古典的カドヘリンCAR配列HAV及びHAV結合モチーフINPを含む調節剤も、好ましい。あるいは、カドヘリンではない接着分子により介在される細胞接着の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤とコンジュゲートさせて、同一の医薬組成物に入れて又は別個に投与できる。投与は、局所的に、注射を介して又は他の手段によりなされ、投与が全身性である場合には特に、標的化剤の追加が有益である。好適な投与形態及び用量は、アポトーシスの誘導が望まれる細胞の位置及び性質に依存するが、通常、用量は上記のとおり変更される。生検を実施することにより、アポトーシスの誘導のレベルを評価することができる。
【0169】
本発明は、哺乳動物の中枢神経系への薬物送達を促進する方法も提供する。血液脳関門は、ほとんどの神経活性剤に対し非常に不透過性であり、哺乳動物の脳への薬物の送達は、侵襲的処置を必要とすることが多い。しかしながら、本明細書に記載の調節剤を使用することにより、例えば、ペプチド-薬物-標的化剤の組み合わせの全身投与、頚動脈への(単独で又は薬物及び/又は標的化剤と組み合わせた)ペプチドの注射、又は調節剤を含む皮膚パッチの患者頭部への適用により送達し得る。かかる方法での使用に好ましい特定のペプチドは、比較的小さなものである(例えば、環のサイズが4〜10残基;好ましくは5〜7残基)。古典的カドヘリンCAR配列HAV、VE-カドヘリンCAR配列、オクルジンCAR配列LYHY(配列番号51)及び/又はクラウジンCAR配列を、好ましくはリンカーと結合させて含む多機能性調節剤も、好ましい。あるいは、(本明細書に記載のもの以外の)古典的カドヘリン、及び/又はVE-カドヘリン-、クラウジン、及びオクルジン-介在細胞接着の調節剤を、1又は複数の調節剤とコンジュゲートさせて、同一の医薬組成物に入れて又は別個に投与できる。オクルジンCAR配列に対するFabフラグメントも、調節剤に包含させるか又は別個の調節剤として同時に投与するかのいずれかにより、適用できる。
【0170】
一般に、投与される調節剤の量は、投与方法及び治療又は予防の対象となる状態の性質により変更されるが、典型的には上記のとおり変更される。中枢神経系への薬物の輸送は、当業者には明らかな適切な手段、例えば核磁気共鳴法(MRI)又はPETスキャン(陽電子トモグラフィー)により評価できる。
【0171】
さらに他の態様では、本発明は、カドヘリン発現細胞の接着を促進する方法を提供する。ある実施形態では、調節剤を上記の支持体分子又は固相支持体と連結させることにより、複数の調節剤を含むマトリックスが得られる。かかる実施形態の1つでは、支持体は、他の1若しくは複数のCAR配列を含む調節剤及び分子が結合されたポリマーマトリックスである(例えば、HAV、INP、RGD、LYHY (配列番号51)又はOB-カドヘリン、VE-カドヘリン、デスモグレイン、デスモコリン若しくはクラウジンのCAR配列を含む調節剤及び分子は、同一のマトリックスに、好ましくは交互に連結され得る)。かかるマトリックスは、複数の細胞接着分子により介在される接着を促進することが望ましい状況で、使用できる。あるいは、調節剤自体は、複数のCAR配列及び/又は抗体(又はそのフラグメント)を、上記のリンカーで分離させて含み得る。いずれにしても、1又は複数の調節剤は、「生物学的接着剤」として機能することにより、多様な状況で、複数のカドヘリン発現細胞と結合する。
【0172】
別の実施形態では、調節剤は、哺乳動物において創傷治癒を促進し、及び/又は瘢痕組織を減少させるのに使用できる。ある好ましい実施形態では、調節剤は、N-カドヘリン-介在細胞接着、遊走及び/又は生存を増強させて所望のレベルとするために、2以上のCAR含有モチーフを適切に配置して含む。生体適合性及び生分解性マトリックス、例えばセルロース又はコラーゲンに連結された調節剤が、特に好ましい。特定の方法で使用するには、調節剤は遊離アミノ基又はヒドロキシル基をもたねばならない。インテグリンにより認識されるフィブロネクチンCAR配列のRGDだけでなく、OB-カドヘリン、クラウジン、dsc及び/又はdsgのCAR配列をさらに含む多機能性調節剤も、創傷治癒の候補促進剤として及び/又は瘢痕組織を減少させるために使用できる。かかる薬剤は、さらに又は代わりに、オクルジンCAR配列LYHY(配列番号51)を含み得る。あるいは、古典的カドヘリン(本明細書に記載したもの以外)、及び/又はインテグリン-、VE-カドヘリン、デスモコリン-、デスモグレイン-、クラウジン-、OB-カドヘリン-及び/又はオクルジン-介在細胞接着のうち1以上の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤と結合されて、同一の医薬組成物に入れて又は別個に投与され得る。
【0173】
調節剤は一般に、創傷に対し局所的に投与され、その場合、該調節剤は創傷の閉合を促進し、及び継ぎ目を補強又は置換することさえもある。同様に、マトリックスと連結させた調節剤の投与は、外来組織の移植物(例えば、皮膚移植物及び人工器官の移植物)における細胞接着を促進でき、コラーゲン注射の持続時間及び有用性を拡張することができる。一般に、創傷、グラフト又は移植部位に投与されるマトリックスと連結されたペプチドの量は、創傷の重症度及び/又は創傷、グラフト、又は移植物の性質に応じて変更されるが、上記で検討したとおり変更される。
【0174】
別の実施形態では、1以上の調節剤が、組織培養プレートの内部表面又は他の細胞培養支持体(例えば、バイオリアクター内で使用するもの)に連結される。かかる連結は、上記のとおり、任意の好適な技術を用いて行うことができる。この様式で連結された調節剤は、カドヘリン発現細胞を固定するために使用できる。例えば、1以上の調節剤でコーティングされた皿又はプレートは、多様なアッセイ及びスクリーニングにおいて、カドヘリン発現細胞を固定するのに使用できる。バイオリアクター(すなわち、細胞又はオルガノイドの大規模生産系)内で、調節剤は通常、細胞接着を改善し、細胞成長を安定化するために使用できる。調節剤はまた、バイオリアクター内で、例えば胎児の哺乳動物細胞の分散集団由来の高度に分化したオルガノイドの形成及び機能をサポートするために使用できる。1又は複数のペプチドのバイオマトリックスを含有するバイオリアクターを用いて、特定のタンパク質の生産を促進することもできる。
【0175】
本明細書に記載の調節剤は、多様なバイオリアクター配置にて利用できる。一般に、バイオリアクターは、数多くの接着細胞を支持するのに十分な内部表面領域を有するように設計される。この表面領域は、膜、チューブ、マイクロタイターウェル、カラム、ホローファイバー、回転ビン、プレート、皿、ビーズ又はそれらの組み合わせを用いて提供される。バイオリアクターは、区画化され得る。バイオリアクター中の支持体材料は、当技術分野で公知の任意の好適な物質であり得;好ましくは、支持体材料は水中で溶解せず膨張しない。好ましい支持体材料には、合成ポリマー、例えばアクリル類、ビニル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン類、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリスルホン類及びポリ(エチレンテレフタレート);セラミクス;ガラス及びケイ酸が含まれるが、これに限定されない。
【0176】
本発明の他の態様では、調節剤は、神経成長を増強及び/又は指向させるためにも、使用できる。一態様では、神経細胞を1以上の調節剤と接触させることにより、神経突起伸長が増強及び/又は指向できる。かかる方法で使用される好ましい調節剤は、ポリマーマトリックス又は他の支持体と連結されており、上記のとおり、実質的な隣接配列を含まずにそれらのペプチドを含有する。ある好ましい実施形態では、調節剤は、カドヘリン介在細胞接着、遊走及び/又は生存を増強させて所望のレベルとするために、2以上のCAR含有モチーフを、適切に配置させて含む。そのうえ、インテグリンと結合させたRGD及び/若しくはYIGSR (配列番号48)並びに/又はN-CAM CAR配列KYSFNYDGSE (配列番号49)を含有する調節剤は、神経突起伸長をさらに促進できる。さらに又は代わりに包含され得る他のCAR配列には、カドヘリン-7、カドヘリン-8、カドヘリン-12、カドヘリン-14、カドヘリン-15、PB-カドヘリン、プロトカドヘリン及びカドヘリン関連ニューロン受容体のCAR配列だけでなく、CAR配列HAV、INS及びINPが含まれる。抗体又はそのフラグメントを含む調節剤を、リンカー又は支持体材料を使用せずに、本発明のこの態様で使用できる。N-CAM CAR配列KYSFNYDGSE (配列番号49)及び/又は古典的カドヘリンCAR配列HAVに対するFabフラグメントも、調節剤中に包含させるか又は別個の調節剤として同時に投与することにより、適用できる。
【0177】
接触を行う方法及び使用される調節剤の量は、神経細胞の位置並びに所望の成長の程度及び性質によって決まる。例えば、神経細胞は、縫合糸、繊維神経ガイド又は他のプラスチックデバイスのような支持体材料と連結された1又は複数の調節剤と、支持体材料に沿って神経突起伸長が指向されるように(例えば、移植を介して)連結され得る。あるいは、管状神経ガイドは、神経ガイドの内腔に1又は複数の調節物を含有する組成物を含むように、利用される。in vivoでは、かかる神経ガイド又は他の支持された調節剤を、周知技術を用いて移植することにより、例えば、複数のニューロンの連結の成長を促進し、及び/又は脊髄損傷を治療することができる。支持体の構造及び組成は、治療対象となる特定の損傷に適したものとすべきことが当業者には明らかであろう。in vitroでは、同様にポリマー材料を利用することにより、例えば、米国特許番号第5,510,628号に記載のとおり、パターン表面上への神経細胞の成長を指示することができる。
【0178】
別のかかる態様では、1以上の調節剤が、哺乳動物における脱髄性神経疾患の治療のために使用できる。数多くの脱髄性疾患、例えば乏突起細胞死を特徴する多発性硬化症が存在する。本発明に関連して、星状細胞上のシュワン細胞遊走が、N-カドヘリンにより抑制されることがわかっている。上記のN-カドヘリン介在細胞接着を阻害する調節剤は、中枢神経系に、乏突起細胞集団、例えば、シュワン細胞、乏突起細胞又は乏突起細胞前駆細胞を補充することができる細胞と共に移植され得る。かかる治療法は、乏突起細胞集団を補充できる細胞を補助して、シュワン細胞又は乏突起細胞の置換療法の実施を可能とする。
【0179】
治療に適した多発性硬化症患者は、臨床的に確定又は推定されるMSの診断を実証する基準によって同定される(Poser et al., Ann. Neurol. 13:227, 1983を参照されたい)。予防的療法の候補患者は、遺伝的因子、例えばHLA-t型DR2a及びDR2bの存在により、又は再発寛解型の早期疾患の存在により、同定できる。
【0180】
シュワン細胞片は、1又は複数の調節剤と共に、標準技術を用いて脳に対し直接移植できる。かかる方法で使用される好ましい調節剤は、本明細書で提供される1以上のペプチドを含有するものを含む。抗体又はそのフラグメントを含有する調節剤は、本発明のこの態様でも使用できる。ペプチドの好適な量は、一般に上記範囲であり、好ましくは約10μg/mL〜約1 mg/mLである。
【0181】
あるいは、調節剤は、脱髄性疾患に罹患していないドナー由来の乏突起細胞前駆細胞(OP)と共に移植できる。CNSの髄性細胞は、乏突起細胞である。成熟した乏突起細胞及び乏突起細胞系統の未成熟細胞、例えば、2型乏突起細胞の星状細胞前駆体が移植に使用されてきたが、OPの方がより広く使用されている。OPは高運動性であり、移植部位から病変領域に遊走することで、成熟したミエリン形成乏突起細胞に分化させることができ、さらに、脱髄性軸策の修復に寄与する(例えば、Groves et al., Nature 362:453-55, 1993; Baron-Van Evercooren et al., Glia 16:147-64, 1996を参照されたい)。OPは、当技術分野で公知の慣用技術(例えば、Milner 及び French-Constant, Development 120:3497-3506, 1994を参照されたい)を用いて、脳、小脳、脊髄、視神経及び嗅球を含むCNSの多くの部分から、単離できる。胎児又は新生児から得たOPの収率は、成体の組織から得た場合よりも実質的に多い。OPは、ヒト胎児の脊髄及び樹立された神経球の培養株から単離できる。ヒト胎児組織は、将来的にはMSのような脱髄性疾患の長範囲の移植療法のために利用できる可能性があり、ドナーOPの組織は再生可能である。
【0182】
OPは「同種の凝集体(homotypic aggregate)」又は「球体(sphere)」として培養される場合、in vitroで伸長できる(Avellana-Adalid et al, J. Neurosci. Res. 45:558-70, 1996)。球体(「オリゴ球体(oligosphere)」又は「神経球体(neurosphere)」と呼ばれることもある)は、成長因子、例えばPDGF及びFGFの存在下で懸濁した状態で生育されるときに、形成される。OPは、機械的分離により球体から回収され、後続の移植又は培養で新しい球体を樹立するために使用できる。あるいは、球体そのものを移植することにより、OPの「焦点的リザーバー(focal reservoir)」を提供できる(Avellana-Adalid et al, J. Neurosci. Res. 45:558-70, 1996)。
【0183】
OPに代わる起源は、CNS幹細胞由来の球体である。最近、Reynolds及びWeiss, Dev. Biol. 165:1-13, 1996は、胚性神経上皮由来のEGF反応性細胞から形成された球体を報告しており、該球体は、神経上皮により示される多能性をin vivoで維持すると考えられている。これらの球体から解離された細胞は、EGFの不在下で接着性基質上に塗布された場合に、神経、乏突起細胞及び星状細胞に分化でき、このことは、未分化の胚性神経上皮由来のEGF反応性細胞は、CNS幹細胞を呈し得ることを示唆している(Reynolds及びWeiss, Dev. Biol. 165:1-13, 1996)。CNS幹細胞由来の球体は、in vivoでの移植用にin vitroで処理されるOPに代わる起源を提供する。CNS幹細胞からなる球体は、in vivoでOPを生存、遊走、及び分化を増加させるために伝導的である微小環境をさらに提供する。
【0184】
MSの治療のための神経球体の使用は、球体からの細胞遊走を増強する調製剤により補助され得る。調節剤の不在下では、球体内の細胞が互いに強固に接着し、球体外の遊走は妨げられる。上記のN-カドヘリン介在細胞接着を阻害する調節剤は、神経球体と共に中枢神経系に注射すると、細胞遊走を改善し、OP置換療法の効果を増強できる。神経球体グラフトは、1又は複数の調節剤と共に、標準技術を用いて中枢神経系に直接移植され得る。
【0185】
あるいは、調節剤は、単独で又は医薬組成物中に入れて投与され得る。投与期間及び投与頻度は、患者の状態といった因子及び患者の疾患の種類や重症度により、決定される。本発明の特に好ましい実施形態では、ペプチド又は医薬組成物は、0.1mg/kg〜20 mg/kgの用量で投与され得るが、適切な用量は臨床試験により決定される。投与方法には、静脈内注射又は髄腔内注射(すなわち、脳脊髄液への直接注射)が含まれる。
【0186】
多発性硬化症の有効な治療法は、次の基準のうち任意のものにより証明できる:EDSS (拡大知能障害状態評価スケール)、再燃の出現又はMRI(核磁気共鳴法)。EDSSは、MSによる臨床的機能障害を評価する手法であり(Kurtzke, Neurology 33:1444, 1983)、1ステップ全体の低下は、本発明の効果的な治療を定義する(Kurtzke, Ann. Neurol. 36:573-79, 1994)。再燃は、MSに起因する新たな症状の出現として定義され、適当な新しい神経性異常を伴う(Sipe et al., Neurology 34:1368, 1984)。治療群とプラセボ群との間で、再燃していない患者の程度又は比率に統計学的に有意な差が認められるか、又は対照群と比べ治療群において最初の再燃までの期間又は罹患期間及び重症度に統計学的な差が認められる場合、治療は効果的といえる。MRIを利用することにより、ガドリニウム-DTPA-増強画像診断法を用いて活性病変を測定し(McDonald et al. Ann. Neurol. 36:14, 1994)、又はT2-強調技術を用いて病変の場所及び程度を測定できる。MS病変の存在、場所、程度は、標準技術を用いて放射線科医により判断される。それぞれの患者においてベースラインと比べ、又は治療群をプラセボ群と比べ、統計学的に有意な改善が認められる場合、治療の改良が確定される。
【0187】
予防に関する調節剤の有効性は、臨床的な測定、例えば再発率及びEDSSに基づいて判断される。他の基準には、MRI上のT2画像の面積及び体積の変化、並びにガドリニウム増強画像診断により測定された病変の数及び体積が含まれる。
【0188】
関連する態様では、本発明は、星状細胞上でのN-カドヘリン発現細胞の遊走を促進する方法であって、(a)N-カドヘリン発現細胞を、カドヘリン介在細胞接着を抑制する1又は複数の細胞接着調節剤と接触させることを含み、ここで調節剤は本明細書に記載のCAR;及び(b)1以上の星状細胞を含むことにより、星状細胞上のN-カドヘリン発現細胞の遊走を促進する前記方法を提供する。好ましいN-カドヘリン発現細胞には、シュワン細胞、乏突起細胞及び乏突起細胞の前駆細胞が含まれる。
【0189】
別の態様では、本明細書に記載の調節剤は、任意のいくつかの方法で哺乳動物の免疫系を調節するために利用できる。カドヘリンは、未成熟のB及びT細胞(胸腺細胞及び骨髄B前駆細胞)上のみならず、活性化B及びTリンパ球の特定の部分集団並びに幾つかの血液悪性腫瘍上で発現される(Lee et al., J. Immunol. 152:5653-5659, 1994; Munro et al., Cellular Immunol. 169:309-312, 1996; Tsutsui et al., J. Biochem. 120:1034-1039, 1996; Cepek et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:6567-6571, 1996を参照されたい)。通常、調節剤を使用することにより、免疫応答における又は悪性リンパ球の播種における細胞間相互作用の特定のステップを調節することができる。
【0190】
例えば、本明細書に記載の調節剤を使用することにより、別の正常T細胞の過剰生成と関連する疾患を治療できる。いかなる特定の理論によっても拘束されないが、成熟T細胞及びB細胞の部分集団上のカドヘリン間の相互作用は、プログラムされた細胞死からこれらの細胞を防御するのに寄与すると考えられている。調節剤は、かかる相互作用を減少させることにより、プログラムされた細胞死の誘導を導くことができる。したがって、調節剤を用いることにより、特定の種類の糖尿病及び慢性関節リウマチ、特に胸腺のT前駆細胞上のカドヘリン発現が最大である若年の子供を治療し得る。
【0191】
調節剤を、ある皮膚障害(例えば、皮膚リンパ腫)、急性B細胞白血病、並びに体液性免疫系が関与する過剰免疫応答、並びに免疫グロブリンの生成、例えばアレルギー反応及び抗体介在移植物拒絶を患う患者に投与することもできる。さらに、(例えば、化学療法又は放射線療法が、骨髄及び他のリンパ系組織中の悪性細胞の大部分を除去するレジメンにおいて)カドヘリン陽性悪性細胞が循環している患者は、ペプチドによる治療から利益が得られる。かかる治療は、末梢血幹細胞を用いて移植を行う患者にも利益を付与できる。
【0192】
上記方法において、1又は複数の調節剤は、好ましくは全身的に(通常、注射により)又は局所的に投与される。ペプチドは、標的化剤と連結され得る。上述のとおり、調節剤は、さらに標的化剤と連結され得る。例えば、骨髄の標的化が有益である。好適な用量は、カドヘリンを発現するB及び/若しくはT細胞集団の統計学的に有意な減少、並びに/又は治療対象となる疾患の臨床症状の改善に影響を与えるのに十分なものである。典型的な用量は、上記の範囲にある。
【0193】
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物における妊娠を予防する方法及びキットを提供する。一般に、E-カドヘリン機能の阻害は、栄養芽細胞の接着及びそれに続く合胞体栄養細胞(syncytiotrophoblast)を形成する融合を予防する。一実施形態では、上記の1以上の調節剤を、任意の多様な周知の避妊具、例えば膣内挿入に好適なスポンジ(例えば、米国特許番号第5,417,224号を参照されたい)又は皮下移植用のカプセルに組み込むことができる。他の投与形態も可能であるが、適切な標的化剤と連結させた調節剤では経皮投与も含まれる。さらに、好ましい調節剤は、追加のCAR配列、例えばインテグリンと連結された配列RGD、及びOB-カドヘリンCAR配列を含み得る。上述のとおり、かかる追加の配列は、リンカーを介してCAR配列と分離され得る。あるいは、インテグリン介在細胞接着の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤と結合させて、同一の医薬組成物に入れて又は別個に投与され得る。
【0194】
避妊具への組み込みに適した方法は、避妊具の種類により決まるが、当技術分野ではよく知られている。かかる避妊具は、1又は複数のペプチドの子宮領域への投与を促進することにより、1又は複数のペプチドの持続性放出を提供できる。一般に、1又は複数のペプチドは、避妊具を介して0.1〜20 mg/kgの用量で投与され得るが、適切な用量は、尿中のhCGレベルをモニターすることにより決定できる。hCGは胎盤により産生され、このホルモンのレベルは妊娠女性の尿中で上昇する。尿hCGレベルは、周知技術を用いてラジオイムノアッセイにより、評価できる。妊娠を予防するためのキットには、一般に1以上のペプチドを含浸させた避妊具が含まれる。
【0195】
あるいは、1以上のペプチドの持続性放出性製剤は、典型的には哺乳動物の皮下に、妊娠を予防するために移植される。かかる移植は、周知技術を用いて実施できる。好ましくは、移植された製剤は上記用量を提供するが、最小効果用量は、例えば女性の尿中のhCGレベルの上昇を用いて、当業者により決定される。
【0196】
本発明は、1以上の調節剤又は医薬組成物を投与することにより、哺乳動物における血管透過性を増大させる方法も提供する。血管では、(N-カドヘリンを介した)内皮の細胞接着が、血管透過性を減少させる。したがって、本明細書に記載の調節剤を使用することにより、血管透過性を増大させることができる。ある実施形態では、かかる方法で使用される好ましい調節剤には、内皮及び腫瘍細胞接着の両方を低減させることができるペプチドが含まれる。かかる調節剤を使用することにより、内皮細胞透過性バリア及び腫瘍バリアを介した抗腫瘍治療薬又は診断薬(例えば、モノクローナル抗体)の浸透を促進することができる。さらに、好ましい調節剤には、オクルジンCAR配列LYHY (配列番号51)及び/又はVE-カドヘリン、OB-カドヘリン又はクラウジンのCAR配列が含まれ得る。上述のとおり、かかる追加の配列は、リンカーを介して本発明のCAR配列と分離され得る。あるいは、オクルジン介在細胞接着の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤とコンジュゲートされて、同じ医薬組成物に入れて又は別個に投与され得る。
【0197】
ある実施形態において、かかる方法で使用される好ましい調節剤には、内皮及び腫瘍細胞接着の両方を減少させることができるペプチドが含まれる。かかる調節剤を使用することにより、内皮細胞透過性バリア及び腫瘍バリアを介した抗腫瘍治療薬又は診断薬(例えば、モノクローナル抗体)の浸透を促進することができる。例えば、調節剤は、N-カドヘリン及びE-カドヘリンの両方を抑制するCAR配列を含み得、又はN-カドヘリンを抑制するCAR配列及びE-カドヘリンを抑制する別個のCAR配列を含み得る。
【0198】
1つの特に好ましい実施形態では、調節剤はさらに、複数の接着分子により介在される細胞接着を阻害することができる。かかる調節剤は、RGD配列、デスモコリンCAR配列、デスモグレインCAR配列、OB-カドヘリンCAR配列、VE-カドヘリン、クラウジンCAR配列及び/又はオクルジンCAR配列LYHY(配列番号51)をさらに含み得る。あるいは、非古典的カドヘリン介在細胞接着の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤とコンジュゲートさせて、同じ医薬組成物に入れて又は別個に投与され得る。上記CAR配列のうち任意のものに対するFabフラグメントもまた、調節剤に含ませて又は同時に投与される別個の調節剤に含ませて、用いられ得る。
【0199】
調節剤による治療は、例えば抗腫瘍治療薬若しくは診断薬(例えば、モノクローナル抗体又は他のマクロ分子)、抗菌剤、又は抗炎症性剤の投与前に、患者に対する総投与量を増加させることなく、標的腫瘍、生物また炎症の周辺におけるかかる薬剤の濃度を上昇させるのに適している。標的化剤の不在下での血管作用薬の全身投与も、他の組織と比べ特定の腫瘍の灌流を増加させるが、かかる方法で使用される調節剤を標的化剤と連結させることにより、調節剤の局所濃度をさらに増大させることができる。好適な標的化剤には、腫瘍細胞又は構造上異常な血管の構成成分に特異的に結合する抗体及び他の分子が含まれる。例えば、標的化剤は、フィブリン分解産物又は細胞酵素、例えば壊死性又は炎症性組織中の顆粒球又は他の細胞により放出されるペルオキシダーゼに結合する抗体であり得る。
【0200】
静脈内注射又は経皮投与を介する投与が、一般に好ましい。有効用量は、診断薬又は治療薬の投与後に、治療の臨床効果及び診断精度を改善して、統計学的に有意な差となる程度に局在を増加させるのに、通常十分なものである。等量の診断薬又は治療薬が投与された、処置された腫瘍宿主動物と未処置の腫瘍宿主動物が比較される。一般に、用量範囲は上記のとおりである。
【0201】
さらなる態様では、上記の調節剤を使用することにより、シナプス安定性の阻害を抑制することができ、シナプス可塑性を増大させることができる。この態様では、1以上の調節剤の投与は、脳内の修復プロセスだけでなく、神経可塑性がシナプスの再構築に重要な早期イベントとなる学習及び記憶において、有利である。細胞接着分子、特にN-カドヘリン及びE-カドヘリンは、シナプスを安定化させるために機能でき、この機能の喪失が学習及び記憶と関連するシナプスの再構築の最初のステップであると考えられている(Doherty et al., J. Neurobiology, 26:437-446, 1995; Martin 及び Kandel, Neuron, 17:567-570, 1996; Fannon 及び Colman, Neuron, 17:423-434, 1996)。カドヘリン機能を抑制する1以上の調節剤の投与によるカドヘリン機能の抑制は、学習及び記憶を促進できる。
【0202】
かかる方法で使用される好ましい調節剤には、E-カドヘリン及び/又はN-カドヘリン介在細胞接着を破壊する調節剤が含まれる。さらに、好ましい調節剤には、1以上の非古典的カドヘリンCAR配列、例えばインテグリンと結合した配列RGD、N-CAM CAR配列KYSFNYDGSE (配列番号49)及び/又はカドヘリン関連ニューロン受容体CAR配列が含まれ得る。上述のとおり、かかる追加の1又は複数の配列は、リンカーを介して本発明のCAR配列と分離され得る。あるいは、インテグリン、カドヘリン関連ニューロン受容体及び/又はN-CAM介在細胞接着の別個の調節剤は、1又は複数の調節剤と結合されて、同一の医薬組成物に入れて又は別個に投与され得る。かかる態様では、リポソームのような送達ビヒクルに標準技術を用いて封入することにより投与でき、例えば、頚動脈に注射される。あるいは、調節剤は、血液脳関門の阻害剤と連結され得る。一般に、用量範囲は上記のとおりである。
【0203】
別の実施形態では、創傷治癒を促進する方法であって、カドヘリン発現細胞を本明細書に記載の調節剤と接触させること、又は哺乳動物に本明細書に記載の調節剤を投与することを含む前記方法が提供される。ある疾患及び障害では、例えば、身体が組織損傷と不適切に反応し、過剰な創傷治癒反応が起こる。皮膚の場合には、これが過形成瘢痕及びケロイドの形成をもたらし得る(Tredget E.E., Nedelec B., Scott P.G.及び Ghahary A. Hypertrophic scars, keloids 及び contractures. Surgical Clinics of North America (1997) 77 (3) 701-730)。この機能障害性創傷治癒反応における重要な因子は、筋線維芽細胞の活性である。筋線維芽細胞は、平滑筋の収縮特性を有する特殊化された細胞である。それらの出現及び収縮性が、創傷の治癒には不可欠である(Tomasek J.J., Gabbiani G., Hinz B., Chaponnier C. and Brown R.A. Myofibrobflasts and mechanoregulaion of connective tissue remodelling. Nature Reviews Molecular Cell Biology (2002) 3 349-363; Singer A.J. and Clark R.A.F. Cutaneous wound healing. New England Journal of Medicine (1999) 341 (10) pp738-746)。それらは、損傷の周囲組織に存在する正常に静止した線維芽細胞からの変換によって形成される。正常な環境下では、創傷治癒が完了すると、筋線維芽細胞がその静止状態に戻るように変換されるが、それらは過形成状態を維持し得るか、真の平滑筋細胞表現型にさらに変換され得る。カドヘリンは、これらのタイプの細胞間の変換の制御因子として重要である。したがって、本発明で提供される調節剤は、創傷治癒を促進するために、又は過剰な創傷治癒反応を制限するために、特定の実施形態で使用される。
【0204】
さらなる態様では、本発明は新血管系(すなわち、新たに形成された血管)を破壊する方法を提供する。かかる方法を使用することにより、様々な場合において、正常又は異常な新血管系を破壊できる。新血管系の破壊は、新たに形成された血管の存在が基礎となる障害、その症候又はその合併症に関与する状態に対して治療効果がある。例えば、治療対象となる障害には、良性前立腺過形成、糖尿病性網膜症、血管再発狭窄症、動静脈奇形、髄膜腫、血管腫、血管新生緑内障、乾癬、血管線維腫、関節炎、アテローム斑、角膜移植片新血管形成、血友病関節症、肥厚性瘢痕、出血性毛細血管拡張、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、硬皮症トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、子宮内膜症、黄斑変性症及び滲出性黄斑変性症が含まれるが、これに限定されない。さらに、好ましい調節剤は、古典的CAR配列HAV及び/又はHAV結合モチーフINP及びINS、オクルジンCAR配列LYHY(配列番号51)及び/又はVE-カドヘリン、JAM又はクラウジンのCAR配列を、本発明で同定された1以上のCAR配列に加えて、含み得る。上述のとおり、かかる追加の配列は、リンカーを介して本発明のCAR配列から分離され得る。あるいは、古典的カドヘリン-、オクルジン-、VE-カドヘリン-、JAM及び/又はクラウジン-介在細胞接着の別個の調節剤は、本発明で同定された1又は複数の調節剤とコンジュゲートされて、同一の医薬組成物に含まれて又は別個に投与され得る。
【0205】
本発明の他の実施形態では、血管平滑筋細胞(VSMC)又は周皮細胞の細胞接着、増殖、遊走及び/又は生存といった挙動を調節する方法であって、カドヘリン発現細胞と上記の細胞接着調節剤を接触させること、又は哺乳動物に上記の細胞接着調節剤を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0206】
本明細書に記載のとおり、平滑筋細胞及び周皮細胞には、血管の内層及び外膜血管由来のそれらの細胞が含まれ、それらはPTCAの間に引き起こされるような損傷後に、内膜過形成血管部位内で増殖する。
【0207】
平滑筋細胞の特徴には、筋形質内に存在する核小体及び筋原線維を有する細胞中で、(光学顕微鏡下で)長方形の核を中央に配置するように有する紡錘型形状の組織学的形態が含まれる。電子顕微鏡検査によると、平滑筋細胞は、筋形質内の長く細いミトコンドリア、粗面小胞体のいくつかの管状要素及び遊離リボソームの数多くのクラスタを有する。小さなゴルジ複合体は、核の1つの極の傍にも配置され得る。筋形質の大部分は、場合によってはその大部分が筋細胞の長い軸索に向いている薄い平行の筋フィラメントで占有されている。筋原線維を含有するこれらのアクチンは、それらの間に散在したミトコンドリアと共に束として配列され得る。細胞の収縮性物質を介した散在は、楕円形の密集領域もとり得、細胞膜の内部面に沿って間隔をあけて分布する類似の密集領域もとり得る。
【0208】
周皮細胞の特徴には、(光学顕微鏡検査下で)不規則な細胞形態を特徴とする組織学的形態が含まれる。周皮細胞は、血管内皮細胞を包囲する基底膜内で観察され、その性質は、α平滑筋アクチンに特異的な抗体(例えば、anti-alpha-sm1, Biomakor, Rehovot, Israel)、HMW-MAA、及びMAb 3G5 (11)周皮細胞のようなガングリオシド抗原を用いた免疫染色では陽性であり;サイトケラチン(すなわち、上皮及び線維芽細胞マーカー)及びフォン・ウィルブランド因子(すなわち、内皮のマーカー)に対する抗体を用いた免疫染色で、陰性であることが確認される。血管平滑筋細胞及び周皮細胞は両方とも、NR-AN-01モノクローナル抗体を用いた免疫染色で陽性である。
【0209】
関連する実施形態では、血管平滑筋細胞又は周皮細胞の過剰成長及び/又は遊走を制御する方法であって、カドヘリン発現細胞と本明細書に記載の細胞接着調節剤を接触させること、又は哺乳動物に本明細書に記載の細胞接着調節剤を投与することを含み、該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着のインヒビターである、前記方法が提供される。この実施形態の具体例は、再発狭窄症、静脈バイパス移植不全、同種移植血管障害、透析グラフト機能不全、フィブリンキャップ及び他の血管狭窄症の形成又は進行を予防することに関する。
【0210】
したがって、本発明の調節剤は、例えば血管平滑筋細胞の活性を抑制するために、例えば、血管形成術後の狭窄を減少、遅延、又は除去するために有用である。本明細書で使用される場合、用語「減少」は、動物モデル又はヒトのどちらかにおける血管形成術後に、平滑筋細胞増殖の抑制の結果として生じる内膜の肥厚を減少させることを意味する。「遅延」は、血管形成術後に、可視できる(例えば、組織学的に又は血管造影検査により観察される)内膜の肥厚の発症までの時間を遅らせることを意味し、再発狭窄症を「減少」させることも伴うことがある。血管形成術後に再発狭窄症を「除去」するとは、患者における内膜の肥厚を完全に「減少」及び/又は完全に「遅延」させて、手術を介在させる必要がない程度とすることを意味し、すなわち、反復血管形成術、アテローム切除術(atheroectomy)又は冠動脈バイパス手術により、血管を通じた好適な血流を再確立することを意味する。狭窄を減少、遅延、又は除去する効果は、これに限定されないが、血管造影法、超音波評価法、蛍光画像診断法、光ファイバー内視鏡検査又は生検及び組織学的検査を含む当業者には日常的な方法により測定できる。本発明の治療用コンジュゲートは、平滑筋細胞及び周皮細胞の細胞膜に特異的に結合させることにより、これらの有利な効果を達成する。
【0211】
別の実施形態では、本発明の調節剤を、閉塞された動脈を開口するためには血管形成術では十分とはいえない状況において、例えば血管内ステントの挿入を必要とするような状況において使用できる。ステントに加えて本明細書に記載の他の医療デバイス及び移植物には、好ましくはその表面上に本発明の1以上の調節剤が結合されているか若しくは該調節剤でコーティングされているか、又はその中に該調節剤が分散されている。本発明の一実施形態では、金属製、プラスチック製又は生分解性の血管内ステントが、生分解性コーティング剤又は多孔性の非生分解性コーティング剤によりコーティングされ、持続性放出剤形内に分散している。代替的な実施形態では、生分解性ステントは、その中に、すなわちステント材料内に、治療薬を含浸させて有する。その中に調節剤を含浸させた生分解性ステントであって、生分解性コーティング剤又は多孔性の非生分解性コーティング剤によりコーティングされ、持続性放出剤形内に分散しているものの使用も意図される。
【0212】
別の関連する実施形態では、血管外傷後の血管内腔面積を維持する方法であって、カドヘリン発現細胞を本発明で提供される細胞接着調節剤と接触させること、又は哺乳動物に本発明で提供される細胞接着調節剤を投与することを含み、該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着のインヒビターである、前記方法が提供される。
【0213】
別の関連する実施形態では、外傷を受けた血管を治療する方法であって、カドヘリン発現細胞を本発明で提供される細胞接着調節剤と接触させること、又は哺乳動物に本発明で提供される細胞接着調節剤を投与することを含み、該調節剤は好ましくはカドヘリン介在細胞接着のインヒビターである、前記方法が提供される。この実施形態の具体的使用には、ステント留置、臓器移植、静脈バイパス、血管形成術、透析グラフト留置などにおいて生じ得る外傷の治療が含まれる。調節剤の投与は、血管外傷の前、その際、又はその後に行われる。
【0214】
これらの実施形態及び他の実施形態において、本発明の調節剤は、所与の適応症に好適で、かつ、本発明で提供される調節剤の送達に適合した実質的に任意の送達アプローチにより、カドヘリン発現細胞又は被験体に送達できる。ある実施形態では、本発明で提供される調節剤の投与は、カテーテルを介して達成される。他の実施形態では、薬剤の投与は、注射針を用いて達成される。
【0215】
本発明の他の態様では、本発明で提供される調節剤は、例えばポリマー材料又はマトリックスのような固相支持体に連結され、該支持体上をコーティングし、該支持体内に分散される。一実施形態では、ポリマー材料はin vivo移植に適した生分解性ポリマーである。別の実施形態では、ポリマー材料はプラスチックである。別の実施形態では、ポリマー材料は、微小粒子若しくはナノ粒子又はそれらの混合物である。多くのかかるポリマー、微小粒子及びナノ粒子が報告されており、本発明の調節剤を当技術分野で周知かつ確立された技術を用いて制御して放出及び送達するために選択及び使用できる。
【0216】
ある実施形態では、例えば公知の技術を用いて医療材料又はデバイスに連結された又はそれらをコーティングした又はその中に分散された本発明の調節剤を有する医療材料又はデバイスが提供される。かかる方法では、例えば該材料又はデバイスを哺乳動物に移植した後に、調節剤を送達することができる。これに関連する特別な例の医療デバイスには、バルーン、ステント、シャント、カテーテル、ステントグラフト、血管グラフト、血管パッチ、フィルター、外膜ラップ、腔内敷詰め(paving)システム、脳ステント、脳動脈瘤膜コイル、心臓プラグ、ペースメーカー導線、透析アクセスグラフト、心臓弁等を含む静脈内の、脈管間の、及び他の医療デバイスが含まれる。
【0217】
本発明の他の態様は、調節剤に対する抗体を、診断及びアッセイ目的で使用する方法を提供する。かかるポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、当業者に公知の従来技術を用いて、ペプチドに対して産生できる。例えば、Harlow and Lane, Antibody: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。かかる技術の1つでは、ペプチドを含有する免疫原を、多種多様な哺乳動物のうち任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ又はヤギ)に最初に注射する。ペプチドはサイズが小さいので、輸送タンパク質、例えばウシ血清アルブミン又はキーホールリンペットヘモシアニンと結合すべきである。1以上の注射のあとに、定期的に動物から採血する。その後、好適な固相支持体と結合したポリペプチドを用いて、例えばアフィニティークロマトグラフィーにより、かかる血清からペプチドに特異的なポリクローナル抗体を単離する。
【0218】
目的のペプチドに特異的なモノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol. 6:511-519, 1976の技術及びそれらを改良した技術を用いて調製できる。簡潔にいうと、これらの方法は、上記のとおり免疫された動物から入手した脾臓細胞から、所望の特性を有する抗体を産生できる不死細胞系を調製することを含む。脾臓細胞は、例えば、ミエローマ細胞の融合パートナー、好ましくは免疫した動物を用いて合成したものとの融合により、不死化される。単一のコロニーを選択し、それらの培養上清を免疫原に対する結合活性について調べる。高い反応性及び特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
【0219】
モノクローナル抗体は、収率を向上させることが当技術分野で知られている様々な技術を用いて又は用いずに、成長ハイブリドーマコロニーの上清から単離される。異物は、従来技術、例えばクロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿、及び抽出により、抗体から除去できる。所望の活性を有する抗体は一般に、標的カドヘリンが局在している組織切片、細胞又は他のサンプルの免疫蛍光分析を用いて同定される。
【0220】
ペプチドを使用することにより、上記のとおり特定のカドヘリンに特異的なモノクローナル抗体(例えば、E-カドヘリンと結合するが、N-カドヘリンとは特異的に結合しない抗体、又はその逆の抗体)も作製できる。かかる抗体は、一般に治療、診断及びアッセイ目的で使用され得る。
【0221】
アッセイは、典型的には、(遊離型又細胞表面上の)カドヘリンの存在又は不存在を検出するための抗体又は好適な生物学的サンプル中のEC1ドメイン含有タンパク質分解フラグメント、例えば、腫瘍や正常組織の生検検体、血液、リンパ節、血清若しくは尿サンプル、又は患者から入手した他の組織、それらのホモジネート、若しくは抽出物を使用することを含む。
【0222】
サンプル中の標的分子を検出するために抗体を使用する、当業者に公知の多様なアッセイ様式が存在する。例えば、Harlow and Lane, Antibody: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。例えば、アッセイはウェスタンブロット形式で実施でき、生物学的サンプル由来のタンパク質調製物をゲル電気泳動に供し、好適な膜にうつし、抗体と反応させる。その後、膜上の抗体の存在を、下記のような好適な検出試薬を用いて検出できる。
【0223】
別の実施形態では、アッセイは、固相支持体上に固定した標的カドヘリンと結合する抗体又はEC1ドメインを含有するタンパク質分解フラグメントの使用を含み、サンプルの残渣からそれらを取り出す。その後、結合したカドヘリンを、二次抗体又はレポーター基を含む試薬を用いて検出する。あるいは、カドヘリンをレポーター基で標識し、サンプルと共に抗体をインキュベートした後に、固定した抗体と結合させる競合アッセイを利用できる。サンプルの構成成分が標識したカドヘリンと抗体との結合を抑制する程度は、サンプルと固定した抗体との反応性を示すので、サンプル中のカドヘリンのレベルを表す。
【0224】
固相支持体は、抗体と結合される当業者に公知の任意の物質、例えばマイクロタイタープレート、ニトロセルロース膜又は別の好適な膜中の試験ウェルである。あるいは、支持体は、ガラス、ファイバーガラス、ラテックスのようなビーズ若しくはディスク、又はポリスチレン又はポリ塩化ビニルのようなプラスチックであり得る。抗体は、特許文献及び科学文献に十分に記載されている当業者に公知の多様な技術を用いて、固相支持体上に固定できる。
【0225】
ある実施形態では、サンプル中でカドヘリンを検出するアッセイは、二抗体サンドウィッチアッセイである。このアッセイは、固相支持体(通常はマイクロタイターのウェル)上に固定されている抗体を、サンプル中のカドヘリンが固定した抗体と結合できるように、生体サンプルとまず接触させることで行われる(室温で、30分間インキュベートすれば、通常は十分である)。その後、結合していないサンプルを固定したカドヘリン抗体複合体から除去し、カドヘリンの異なる部位に結合できる二次抗体(レポーター基、例えば、酵素、色素、放射性核種、発色団、蛍光団又はビオチンを含む)を加える。その後、固相支持体との結合を保持する二次抗体の量を、特定のレポーター基に適した方法を用いて測定する。レポーター基を検出するのに適用される方法は、レポーター基の性質によって決まる。放射性基では、シンチレーション計数法又はオートラジオグラフィー法が通常適切である。スペクトル分析法を使用して、色素、発色団及び蛍光団を検出できる。ビオチンは、様々なレポーター基(通常、放射性基又は蛍光団又は酵素)と連結されたアビジンを用いて検出できる。通常、酵素レポーター基は(一般には、特定の期間)、基質を添加して検出することができ、その後、反応産物のスペクトル分析又は他の分析を行う。標準手順及び標準的な添加を利用することにより、サンプル中のカドヘリンのレベルを、周知技術を用いて測定できる。
【0226】
本発明は、かかるイムノアッセイで使用されるキットも提供する。かかるキットには、一般に上記の1以上の抗体が含まれる。さらに、キットの1以上の追加の区画又は容器には、一般に構成要素、例えば、試薬、緩衝液及び/又は洗浄液が包含され、イムノアッセイで使用される。
【0227】
さらなる態様では、ペプチド又はその抗体を使用して、細胞の同定及びin vitroでの選択又はin vivoでの画像診断を促進することにより、異なるカドヘリンを発現する細胞(又は様々なカドヘリンレベル)を選択することができる。好ましくは、かかる方法で使用される1又は複数のペプチド又は抗体は、検出可能なマーカーと連結される。好適なマーカーが当技術分野では周知であり、放射性核種、発光団、蛍光団、酵素、色素、定常免疫グロブリンドメイン及びビオチンが含まれる。1つの好ましい実施形態では、フルオレセインのような蛍光マーカーと連結されたペプチド又は抗体を、細胞と接触させ、その後蛍光活性化細胞選別法(FACS)により分析する。
【0228】
上述のとおり、診断及びアッセイ目的に加え、本明細書に記載の抗体は、in vitro又はin vivoで細胞接着を調節するために使用できる。ある実施形態では、細胞接着の増強を目的とした方法で、抗体が上記のとおり使用される。例えば、in vitro又はin vivoで神経突起伸長を増強及び/又は指向させる上記方法において、抗体が使用される。抗体は、管状神経ガイドの内腔中で使用でき、繊維神経ガイド、縫合糸又は他の固相支持体と結合され得、ペプチドに関しては上記の通り使用される。抗体用量は、神経突起伸長を増強又は指向させるのに十分なものであるが、投与方法及び治療対象の状態に応じて、変更されるだろう。
【0229】
抗体を上記のように「生物学的接着剤」として使用することにより、例えば、創傷治癒を増強し、及び/又は瘢痕組織を減少させ、及び/又は皮膚移植物又はプラスチック移植物における細胞接着を促進するために、多様な内容物中の複数のカドヘリン発現細胞と結合させることもできる。一般に、創傷、グラフト又は移植部位に投与されるマトリックスと連結された抗体の量は、創傷の重症度及び/又は創傷、グラフト、又は移植物の性質に応じて変更されるが、上記で検討したとおりに変更できる。抗体はまた、上記のとおり組織培養又はバイオリアクターで使用するために、多様な支持体材料のうち任意のものと連結され得る。
【0230】
ある実施形態では、抗体(又は、好ましくはその抗原フラグメント)は、細胞接着の抑制が望ましい状況で使用できる。かかる抗体又はフラグメントは、例えば、MSのような脱髄性疾患の治療のために、又は腫瘍細胞間の相互作用を抑制するために、上記のとおり使用される。Fabフラグメントの使用が、一般に好ましい。次の実施例は例示であって、それには限定されない。
【実施例】
【0231】
材料及び方法:
1.N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質及びE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質を標的として用いるファージ選択
この試験では、ペプチドライブラリーPh.D.-C7CTM及びPh.D.-12TM (New England BioLabs)を使用した。これらのライブラリーは、2×109個の、システイン残基と隣接したランダム化7アミノ酸配列及び直鎖状アミノ酸配列からそれぞれ構成される。該アミノ酸配列を、M13ファージのマイナーなコートタンパク質pIII内に組み込む。N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質(R&D Systems, Minneapolix, MN)は、ヒトN-カドヘリンの細胞外ドメイン(Asp160-Ala724)及びヒトIgG1のFc領域からなる。E-カドヘリン/Fcキメラタンパク質(R&D Systems, Minneapolis, MN)は、ヒトE-カドヘリンの細胞外ドメイン(Asp155-Ile707)及びヒトIgG1のFc領域からなる。
【0232】
ProBindマイクロタイタープレート(Falcon)のウェルを、カドヘリン/Fcキメラタンパク質(1μg/ウェル)で一晩4℃でコーティングした。非特異的な結合部位をブロックするために、3%ウシ血清アルブミン(BSA)及び1.2 mM CaCl2を含有するTBS緩衝液(50 mM Tris-HCl, pH 7.4, 150 mM NaCl)を、該ウェルに加えた(200μl/ウェル)。37℃で1時間インキュベートした後、該ウェルを0.1%BSA及び1.2 mM CaCl2を含有するTBST (TBSに0.1%Tween 20を加えたもの)で2回洗浄した。ファージ(1011 pfu)を各ウェルに加え、室温で1時間、定常的に撹拌しながら標的タンパク質と結合させた。結合していないファージは、0.1%BSA及び1.2 mM CaCl2を含有するTBSTで10回洗浄することにより除去し、結合したファージを2つの連続したステップで溶出させた。第1の溶出ステップは、2 mM EDTAを含有する100μlのTBSを各ウェルに加えた後に、室温で10分間定常的に撹拌しながらインキュベートすることにより行った。第2の溶出ステップは、各ウェルを100μlの酸緩衝液 (0.2 Mグリシン-HCl, pH 2.2)中で、10分間室温で定常的に撹拌しながらインキュベートした後、1 M Tris-HCl, pH 9.1 (20μl/ウェル)で中和することにより行った。溶出したファージの各分画を、ER2738細胞に感染させることにより増幅し、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿物(8000 MW PEG)から精製した(Kay B. et al., 1996)。EDTA分画から増幅したファージを第2ラウンドのバイオパニングで使用し、EDTA溶出液のみを増幅し、第3ラウンドで使用した。酸分画から増幅したファージも第2ラウンドのバイオパニングで使用し、酸溶出液のみを最後のラウンドで増幅した。スクリーニングの最後に、ファージを平板培養し、単離されたクローンを無作為に取り出して増幅した。QIAprep Spin M13 Kit (QIAGEN)を製造業者の使用説明書に従って用いて、各ファージクローンのssDNAを抽出した。アミノ酸配列をDNA配列決定により推定し、Symphony(登録商標)/Multiplexペプチド合成機及びFmoc化学を用いて、対応するペプチドを合成した。ペプチドは、HPLCで精製し、質量分析法で分析した。
【0233】
2.カドヘリン/Fc結合アッセイ
各クローンとカドヘリン/Fcキメラタンパク質との結合を、ELISAで確認した。ProBindマイクロタイタープレート(Falcon)のウェルを、N-カドヘリン/Fc若しくはE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質(100 ng/ウェル)又はヒトIgG1 (Fcフラグメントを含む) (100 ng/ウェル)のいずれかでコーティングした。非特異的部位を、3%BSA及び1.2 mM CaCl2を含有するTBSを用いて、1時間37℃でブロックした後、ファージクローン(109 pfu)を、3%BSA及び1.2 mM CaCl2を含有するTBST(100μl/ウェル)中で希釈した。コーティングされていないウェルも用いることにより、プラスチック表面に結合したファージをいずれも除去した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを3%BSA及び1.2 mM CaCl2を含有するTBSTで3回洗浄した。何も挿入されていないM13ファージを用いることにより、標的に対するファージ自体の非特異的結合のコントロールとした。西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたモノクローナル抗M13抗体(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を、3%BSA及び1.2 mM CaCl2を含有するTBST中に希釈し(1:2,000)、各ウェルに加えた(100μl/ウェル)。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを3%BSA及び1.2 mM CaCl2を含有するTBSTで3回洗浄し、1.2 mM CaCl2を含有するTBSで1回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼの基質であるTMB (Sigma)を各ウェルに加え(100μl/ウェル)、発色させた後に、100μlの0.5 M硫酸を各ウェルに加えることにより、反応を停止させた。色強度は、450 nmで測定した。
【0234】
3.カドヘリン特異性の評価
ELISAによりN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合することが示されたファージクローンは、E-カドヘリン/Fc及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合するその能力についても評価した。ELISAによりE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合することが示されたファージクローンは、N-カドヘリン/Fc及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合する能力についても評価した。100 ngのN-カドヘリン/Fc、E-カドヘリン/Fc又はVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質(R&D Systems, Minneapolis, MN)のいずれかでコーティングされたウェルを用いること以外は、前記セクションに記載したものと同一のELISAプロトコールを用いて、この評価を行った。
【0235】
4.細胞培養
SKOV3ヒト卵巣癌細胞(Dr. Riaz Farookhi, McGill University, Montreal, Quebecから供与された)を、1.25μg/mlファンギゾン、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.1 mM非必須アミノ酸、2 mM L-グルタミン、10μg/ml ml ゲンタマイシン及び10%ウシ胎児血清を含有するMEM中で培養した。全ての培養試薬は、GIBCO (Burlington, ON)から購入した。コンフルエントな細胞培養物を入手するために、ウェル当たり100,000個の細胞を、4ウェルスライド(NalgeNunc, Naperville, IL)にプレーティングし、加湿雰囲気(5% CO2)下で、24時間37℃でインキュベートした。
【0236】
MCF-7ヒト乳癌細胞(Dr. Riaz Farookhi, McGill University, Montreal, Quebecから供与された)をSKOV3と同一培地に1 mMピルビン酸ナトリウムを補充した培地で培養した。
【0237】
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)及びヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC-d)は、Cambrex Bio ScienceWalkersville, Inc.から購入した。Clonetics EGM-2及びEGM-2-MV Bulletkit (Cambrex Bio ScienceWalkersville, Inc)を用いて、HUVEC及びHMVEC-dをそれぞれ培養した。細胞(40,000/ウェル)を、4ウェルスライド(NalgeNunc, Naperville, IL)上にプレーティングし、加湿雰囲気(5% CO2)下37℃でインキュベートした。
【0238】
それらの溶解度に応じて、ペプチドを培養液中に直接溶解させ、コンフルエントな細胞培養物に、示した濃度で加えた。または、それらを、100×濃縮溶液を得るためにジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させるか、若しくは10×濃縮溶液を得るために水中に溶解させた。ペプチド原液を、培養液でさらに溶解させ最終使用濃度とし、コンフルエントな細胞培養物に加えた。1%溶媒を含有する培養液を、対照として用いた。処理の最後に、細胞を、位相差顕微鏡で調べるか、又は4%パラホルムアルデヒドを含むPBS溶液で固定し、ヘマトキシリンで染色した後に光学顕微鏡検査を行うかのいずれかで、調べた。
【0239】
5.表面プラズモン共鳴(Biacore)分析
代表的なペプチド調節剤と、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質又はVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質のいずれかとの結合を、BIAcore XTM Biosensor (Pharmacia Ltd., Sweden)を用いて評価した。標準的なアミンカップリング法を25℃で用いて、ヤギ抗ヒトIgG認識N-及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質(R&D Systems, Minneapolis, MN)をCM5センサーチップ(Biacore S51)上に固定した。HBS-P緩衝液(10 mM HEPES, 0.15 M NaCl, 0.005% p20, pH 7.4)を、泳動バッファーとして使用した。カルボキシメチルデキストラン表面を、1:1比の0.4 M EDC及び0.1 M NHSを7分間注入することにより、活性化させた。ヤギ抗ヒトIgG (Caltag Lab.)を、10 mM酢酸ナトリウム(pH 5.0)中に希釈し、最終濃度80μg/mlとしたものを7分間注入することにより、該表面に結合させた。残存する活性化基は、1M エタノールアミン(pH 8.5)を7分間注入することにより、ブロックした。N-及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質を、50 mM Tris HCl、150 mM NaCl、及び1.2 mM CaCl2 pH 7.5を含有する緩衝液中に溶解して0.2μMの濃度とし、さらに流速30μl/分で30分間、スポット1及び2上で捕捉した結果、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質の濃度は927 RUであり、VE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質は1008 RUであった。
【0240】
直鎖状ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2(配列番号16)及び対照の直鎖状ペプチドH-SRTLYTPSGQSK-NH2(配列番号58)を、50 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、及び1.2 mM CaCl2を含有する泳動バッファー(100〜1.56μMの濃度範囲でpH 7.5)下で、捕捉したN-及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングされた表面上を通過させた。実験は、流速90μl/分、25℃で行った。結合/解離は、1分間/2分間観察した。全ての応答は、参照表面及び泳動バッファーのブランク注入したものを参照した。
【0241】
結果:
ファージディスプレイ技術を用いた新規のN-及びE-カドヘリンアンタゴニストの同定
1.N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に対するスクリーニング
新規のN-カドヘリンアンタゴニストを同定するために、本発明者らは、7アミノ酸Cys拘束ライブラリー(Ph.D.-C7CTM)及び12アミノ酸ライブラリー(Ph.D.-12TM)を、ヒトIgG1のFc部分と連結されたヒトN-カドヘリンの細胞外ドメインを含有するキメラヒトN-カドヘリン(N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と表示される)に対して、スクリーニングした。表1に記載されるとおり、3ラウンドのバイオパニングにより、EDTA溶出液中及び酸溶出液中でファージを数倍に濃縮させた。酸及びEDTA溶出液中では、IgG1よりもN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に対して、より多くのファージが結合したので、第3ラウンドのバイオパニング後に選択されたファージクローンは、ほとんどがN-カドヘリン特異的であった(表1)。
【表1】

【0242】
A. Ph.D.-C7CTMライブラリーのスクリーニング
Ph.D.-C7CTMライブラリーを用いる3ラウンドの選択後に、EDTA溶出液由来の30クローン及び酸溶出液由来の10クローンを無作為に選択した。該クローンにより発現されるアミノ酸配列を、各クローン中の挿入物を配列決定することにより推定した。EDTA溶出液由来の選択クローンの大部分(27/30)及び酸溶出液由来の選択クローンの全て(10/10)が、ELISAで調べたところ、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と特異的に結合した。結果は、表2に概説する。
【表2】

【0243】
6個の異なるアミノ酸配列が、EDTA溶出液由来のファージにより発現された。これらの配列を発現するファージは、ELISAで調べたところ、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合したが、上皮(E)-カドヘリン/Fcキメラタンパク質又は血管内皮(VE)-カドヘリン/Fcキメラタンパク質のどちらにも結合しなかった。アミノ酸配列WLQPYFPSY (配列番号32)は30クローンのうち19クローンで発現され、この配列を発現する全てのクローンが、陽性のELISAシグナルを示した。そのうえ、全てのクローンでIgG1対照との結合は検出されなかった。
【0244】
配列WLQPYFPSY (配列番号32)が高頻度であることは、これがN-カドヘリンに対し高親和性を有すること、そのためスクリーニング過程の最後にはファージ集団中で主要な配列となったことを示唆する。この配列が、Ph.D.-C7CTMライブラリーで予測された2つの末端Cys残基を有さないという事実は、この配列が、ライブラリー作成中に起こったコドンの偏りから生じたことを示す。この種のクローンは、強い選択がかかる場合に、ライブラリーから単離することができる。低頻度で得られた5個の他の配列は全てがN末端Trp残基を有し、ELISAで調べたところ、全てがN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に対して反応性を示した。
【0245】
3個の異なるアミノ酸配列が、酸溶出液由来のファージにより発現された。ELISAで調べたところ、それらのすべてがN末端Trp残基を有し、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に対して反応性を示した。配列WEVRLTEKC (配列番号6)が、酸溶出液の場合5/10クローンで発現され、配列WELRVSSPC (配列番号7)が4クローンで発現された。配列WLQPYFPSY (配列番号32) (既にEDTA溶出液で同定されたもの)は1回だけ、酸溶出液で見られた。この知見は、カドヘリンのコンホメーション又はその標的に対する異なる親和性に依存する結合能によって、説明できる。
【0246】
ELISAを1.2 mMカルシウム又は2 mM EDTAの存在下で行った。カルシウムの不在下ではELISAシグナルは観察されなかった(カルシウムは、N-カドヘリンを活性コンホメーションで維持するのに不可欠であることに留意されたい)。これらの結果は、ファージクローンの結合はカドヘリンコンホメーションに依存しており、また酸緩衝液によって溶出されるクローンは、より強い結合体であり得ることを示している。
【0247】
単離したPh.D.-C7CTMファージクローンの、E-カドヘリン/Fc及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質との結合も、ELISAで評価した。いずれのファージもこれらの2つのカドヘリンのどちらにも結合せず、このことは、それらがN-カドヘリンに特異的なアミノ酸配列を提示していることを示唆する。
【0248】
ファージクローンは、カルシウムの不在下でスクリーニングしたPh.D.-C7CTMライブラリーからも単離された。この実験では、3ラウンドのバイオパニングにより、溶出液中でファージを100倍に濃縮した。溶出したファージクローンの90%はN-カドヘリン特異的であり、キメラタンパク質のFc部分とは結合しなかった。第3ラウンド後に、16クローンを無作為に選択した。結果を、表3に概説する。
【表3】

【0249】
選択したクローンのほとんどは、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と特異的に結合した(14/16)。ELISAで調べたところ、2つのアミノ酸配列が、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合するが上皮(E)-又は血管内皮(VE)-カドヘリン/Fcキメラタンパク質とはどちらとも結合しないファージにより、発現された。標的に対し高親和性を有するファージクローンのみが、ELISAで陽性シグナルを示すことに留意されたい。配列WYVCVGAHC (配列番号8)が13/16クローンで発現され、この配列を発現する全クローンが、良好なELISAシグナルを示した。そのうえ、IgG1対照との結合はこれらのクローンでは検出されなかった。
【0250】
配列WYVCVGAHC (配列番号8)が高頻度であることは、これがN-カドヘリンに対し高親和性を有すること、そのためスクリーニングの最後にはファージ集団中で主要な配列となったことを示唆する。この配列がPh.D.-C7CTMライブラリーで予測された2つの末端Cys残基を有さないという事実は、この配列が、ライブラリー作成中に起こったコドンの偏りから生じたことを示す。この種のクローンは、強い選択がかかる場合、ライブラリーから単離することができる。低頻度で得られた別の配列WQVCVGAHC (配列番号9)は、前述の配列WYVCVGAHC (配列番号8)とアミノ酸がわずかに1つだけ異なる(第2位にTyrの代わりにGln残基)。このアミノ酸配列を発現するファージクローンは、良好なELISAシグナルを示した。
【0251】
単離したクローンと、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質との結合が、カルシウムの存在と無関係であるかどうかを評価するために、本発明者らは、1.2 mMカルシウムの存在下で、ELISAを繰り返した。配列WYVCVGAHC (配列番号8)又はWQVCVGAHC (配列番号9)を発現するファージは、緩衝液中のカルシウムの存在とは無関係に強いELISAシグナルを示した。これらの結果は、ファージクローンの結合が、カドヘリンコンホメーションと無関係であることを示す。
【0252】
単離したファージクローンと、E-カドヘリン/Fc及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質との結合も、ELISAで評価した。カルシウムの不在下でも存在下でも、いずれのファージもこれらの2つのカドヘリンのどちらにも結合せず、このことは、それらがN-カドヘリンに特異的なアミノ酸配列を提示していることを示す。
【0253】
B. Ph.D.-12TMライブラリーのスクリーニング
またPh.D.-12TMライブラリーを、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質を用いてスクリーニングした。第3ラウンド後、EDTA溶出液由来の11クローン及び酸溶出液由来の19クローンを無作為に選択した。該クローンにより発現されるアミノ酸配列を、各クローン中の挿入物を配列決定することにより推定した。ELISAで調べたところ、EDTA溶出液由来の選択クローンの大部分(7/11)及び酸溶出液由来の選択クローンの大部分(18/19)が、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と特異的に結合した。結果は、下記の表4に概説する。
【表4】

【0254】
2個の異なるアミノ酸配列が、EDTA溶出液由来のファージにより発現された。アミノ酸配列SWTLYTPSGQSK (配列番号16)は11クローンのうち4クローンで発現され、アミノ酸配列HWYITTGPVREK (配列番号15)は11クローンのうち3クローンで発現された。これらの配列を保有するファージクローンは、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合するが、E-カドヘリン/Fc又はVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質とはどちらにも結合しないことが、ELISAで調べたところ、判明した。このことは、それらがN-カドヘリンに特異的なアミノ酸配列を提示することを示す。これらの配列はすべてが、第2位にTrp残基を有する。そのうえ、全てのクローンでIgG1対照との結合はELISAにより検出されなかった。
【0255】
6個の異なるアミノ酸配列が、酸溶出液由来のファージにより発現された。それらの全てが第2位にTrp残基を有し、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に対してELISAで調べたところ反応性を示した。配列NWFIDFPVYPPL (配列番号17)が、7/19クローンで発現された。配列SWTLYTPSGQSK (配列番号16) (既にEDTA溶出液中で同定されたもの)も、酸溶出液中で見られた(6/19クローン)。第2位にTrp残基を有する4個の他の配列が、酸溶出液中で同定されたが、それらは低頻度であった。ELISAで調べたところ、これらの配列を発現するファージクローンは、強度のシグナルを示してN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に結合した。そのファージクローンのうち3つはE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質にも結合したが、より弱いELISAシグナルしか生じず、このことは、E-カドヘリンに対するそれらの親和性が、N-カドヘリンに対するものよりも低かったことを示している。これらの3つのクローンに共通の特徴は、それらが全て、C末端Ser残基を有する配列を発現したことである。ELISAで調べたところ、VE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に結合したクローンはなかった。
【0256】
ELISAは、1.2 mMカルシウム又は2 mM EDTAのどちらかの存在下で行った。表4は、EDTAの存在下では、配列SWTLYTPSGQSK (配列番号16)を保有するファージクローンを除き、ELISAシグナルが認められたことを示す。EDTAの存在下で得たシグナルは、カルシウムの存在下で得たシグナルよりも弱かった。
【0257】
2.E-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に対するスクリーニング
新規のE-カドヘリンアンタゴニストを同定するために、本発明者らは、7アミノ酸Cys拘束ライブラリー(Ph.D.-C7CTM)及び12アミノ酸ライブラリー(Ph.D.-12TM)を、ヒトIgG1のFc部分と連結されたヒトE-カドヘリンの細胞外ドメインを含有するキメラヒトE-カドヘリン(E-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と表示される)に対して、スクリーニングした。表5に記載されるように、3ラウンドのバイオパニングにより、EDTA溶出液及び酸溶出液中でファージを数倍に濃縮させた。
【表5】

【0258】
A.Ph.D.-C7CTMライブラリーのスクリーニング
第3ラウンド後に、EDTA溶出液由来の22クローン及び酸溶出液由来の21クローンを無作為に選択した。該クローンにより発現されたアミノ酸配列を、各クローン中の挿入物を配列決定することにより推定した。ELISAで調べたところ、EDTA溶出液由来の選択した全てのクローン(22/22)及び酸溶出液由来の選択したクローンのほとんど(20/21)が、E-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と特異的に結合した。結果は、下記表6で概説する。
【表6】

【0259】
5個の異なるアミノ酸配列が、EDTA溶出液由来のファージにより発現され、5個が酸溶出液由来のものにより発現された。ELISAで調べたところ、これらの配列を発現するファージは、E-カドヘリン/Fc及びN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合したが、血管内皮(VE)-カドヘリン/Fcキメラタンパク質とは結合しなかった。標的に対し高親和性を有するファージクローンのみが、ELISAで陽性のシグナルを示すことに留意されたい。そのうえ、ELISAで調べたところ、全てのクローンで、IgG1対照との結合は検出されなかった。
【0260】
配列WTFNFCTAが高頻度であることは、これがE-カドヘリンに対し高親和性を有すること、そのためスクリーニング過程の最後にはファージ集団中で主要な配列となったことを示唆する。
【0261】
8個の配列がC7Cライブラリーで予測された2つの末端Cys残基を有さなかったという事実は、この配列が、ライブラリー作成中に起こったコドンの偏りから生じたことを示す。この種のクローンは、強い選択がかかる場合、ライブラリーから単離することができる。これらの配列は、酸溶出液の場合の2つの配列(CSKYNSPLC (配列番号59)及びCSRPQSGLC (配列番号60)を除いて、N末端にTrp残基を有し、ELISAで調べたところ、全ての配列がE-カドヘリン/Fc及びN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に対し反応性を示した。
【0262】
B. Ph.D.-12TMライブラリーのスクリーニング
またPh.D.-12ライブラリーを、E-カドヘリン/Fcキメラタンパク質を用いてスクリーニングした。第3ラウンド後に、EDTA溶出液由来の23クローン及び酸溶出液由来の24クローンを無作為に選択した。該クローンにより発現されたアミノ酸配列を、各クローン中の挿入物を配列決定することにより推定した。EDTA溶出液由来の選択クローンのほとんど(21/23)及び酸溶出液由来の選択クローンのほとんど(19/24)が、ELISAで調べたところ、E-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と特異的に結合した。結果は、表7に概説する。
【表7】

【0263】
10個の異なるアミノ酸配列がEDTA溶出液由来のファージにより発現され、7個が酸溶出液由来のものにより発現された。ELISAで調べたところ、これらの配列を発現するファージは、E-カドヘリン/Fc及びN-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合したが、血管内皮(VE)-カドヘリン/Fcキメラタンパク質とは結合しなかった。標的に対し高親和性を有するファージクローンのみが、ELISAで陽性のシグナルを示すことに留意されたい。そのうえ、ELISAで調べたところ、全てのクローンでIgG1対照との結合は検出されなかった。これらの配列はすべてが、第2位にTrp残基を有する。
【0264】
3.例示ペプチドの生物学的活性
N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質に特異的なファージクローンにより提示されたものと同一のアミノ酸配列を有する数個の直鎖状ペプチドを、対照ペプチドと共に、以下の通り合成した:H-WELRVSSP-NH2 (配列番号47)及び対照ペプチドH-AELRVSSP-NH2 (配列番号61);H-WYVCVGAH-NH2 (配列番号46)及び対照ペプチドH-RYVCVGAH-NH2 (配列番号62);H-HWYITTGPVREK-NH2 (配列番号15)、H-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)及び対照ペプチドH-SRTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号58)。これらのペプチドを、SKOV3ヒト卵巣癌細胞接着を破壊するそれらの能力について分析した。SKOV3細胞のコンフルエントな培養物を、それぞれのペプチドの存在下でインキュベートした。
【0265】
コンフルエントなSKOV3培養物を、直鎖状ペプチドH-WYVCVGAH-NH2 (配列番号46)の存在下で、様々な濃度(50、100及び150μg/ml培養液)で24時間インキュベートした。このペプチドは、100及び150μg/mlの濃度で細胞接着を破壊し、細胞形態を変化させることができた。SKOV3細胞接着に対するH-WYVCVGAH-NH2 (配列番号46)の効果は、24時間後により顕著になった。これに対し、対照ペプチドH-RYVCVGAH-NH2 (配列番号62) (末端Trp残基がArg残基で置換されたもの)は、細胞接着に対して効果を及ぼさなかった。これらの観察所見は、H-WYVCVGAH-NH2 (配列番号46)の生物学的活性におけるTrp残基の重要性を立証している。
【0266】
MCF-7細胞接着を破壊するH-WYVCVGAH-NH2 (配列番号46)(100μg/mlの濃度)の能力も評価した。これらの細胞は、E-カドヘリンを発現するが、N-カドヘリンを発現しない。該ペプチドは、MCF-7細胞接着に影響を及ぼさなかった。これらの結果は、N-カドヘリンに特異的なアンタゴニストであるペプチドH-WYVCVGAH-NH2 (配列番号46)の結果と一致する。
【0267】
ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)及びH-HWYITTGPVREK-NH2 (配列番号15)を、HUVEC及びHMVEC接着を破壊するそれらの能力について調べた。ヒト内皮細胞は、N-及びVE-カドヘリンを発現する。コンフルエントな培養物を、そのペプチド(1 mg/ml培養液)の存在下で、様々な期間インキュベートした。直鎖状ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)は、5分間のインキュベーション後にHUVEC接着を阻害し、1時間後に最大の効果を示した。これに対し、ペプチドH-HWYITTGPVREK-NH2 (配列番号15)は、1時間のインキュベーション後に、HUVEC接着に対し何も影響を及ぼさなかった。HUVEC接着に対するH-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)の効果は、用量依存的であった。1時間のインキュベート後に、このペプチドは濃度0.125 mg/ml以上で細胞接着を破壊した。ペプチド濃度0.062 mg/mlでは、中程度の活性が観察された。対照ペプチドH-SRTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号58)は、最高で濃度1 mg/mlでも生物学的活性を示さなかった。まとめると、これらの結果は、Trp残基がペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2(配列番号16)の活性に重要であるが、Trp残基周辺のアミノ酸も活性に影響を与えることを示している。
【0268】
ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2(配列番号16)も、HMVEC接着を用量依存的に破壊することができた。細胞接着は、ペプチド濃度0.062 mg/mlで破壊され、0.125 mg/mlではより顕著な効果が観察され、ペプチド濃度0.5 mg/ml以上では、さらに一層強い効果が生じた。対照ペプチドH-SRTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号58)は、最高で濃度1 mg/mlでも生物学的活性を示さなかった。ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)も、SKOV3細胞接着(これらの細胞は、N-カドヘリンを発現する)を破壊したが、対照ペプチドH-SRTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号58)は全く効果を有しなかった。
【0269】
MCF-7細胞接着(これらの細胞は、E-カドヘリンを発現する)を破壊するH-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)の能力を評価した。このペプチドは、MCF-7細胞接着に影響を及ぼさなかった。これらの結果は、H-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)はN-カドヘリンに特異的なアンタゴニストであるという主張を支持する。
【0270】
PEG化されたペプチドH-SWTLYTPSGQSK-(スクシニル-PEG5000-OMe)-NH2 (配列番号63) (4.7 mg/ml)も、HUVEC接着に対して強い活性を示した。細胞接着は、1時間のインキュベートの間に破壊された。
【0271】
ペプチドH-EWMIHYDSALTS-NH2 (配列番号19)及びH-SWELYYPLRANL-NH2 (配列番号28)が、SKOV3及びMCF7細胞接着を破壊する能力を調べた。直鎖状ペプチドH-EWMIHYDSALTS-NH2 (配列番号19)及び H-SWELYYPLRANL-NH2 (配列番号28) (1 mg/ml)は、MCF-7及びSKOV3細胞接着を破壊した。
【0272】
ペプチドH-WELRVSSP-NH2 (配列番号47)も、生物学的に活性であることが判明した。この直鎖状ペプチドは、細胞接着を破壊し、濃度0.5 mg/mlで細胞形態を変化させることができた。これに対し、その末端Trp残基がAla残基で置換された対照ペプチドH-AELRVSSP-NH2 (配列番号61)は、生物学的活性を全く有さなかった。これらの観察所見は、生物学的活性におけるTrp残基の重要性を立証している。これらの試験の結果を、下記表8に概説する。
【表8】

【0273】
4.表面共鳴プラズモン共鳴(Biacore)分析
直鎖状ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2(配列番号16)と、N-及びVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質との結合を、表面プラズモン共鳴で分析した。直鎖状ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)は、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と、66μMの親和性で結合した。このペプチドは、VE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質と結合しなかった。対照の直鎖状ペプチドH-SRTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号58)は、N-カドヘリン/Fc又はVE-カドヘリン/Fcキメラタンパク質のどちらとも結合しなかった。直鎖状ペプチドH-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)と、N-カドヘリン/Fcキメラタンパク質表面との相互作用に関する反応速度パラメーターは、ka= 6.1(2)×103 M-1 s-1, kd= 0.407(8) s-1及びKD= 6.6(2)×10-5 Mである。これらの結果は、H-SWTLYTPSGQSK-NH2 (配列番号16)のN-カドヘリンとの結合におけるTrp残基の重要性を確認する。
【0274】
上述のとおり、本発明を説明する目的で、本発明の特定の実施形態が明細書に記載されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-X-L/I/V/F/M/A(配列番号1)
[式中、Xはアミノ酸であり、L/I/V/F/M/AはLeu又はIle又はVal又はPhe又はMet又はAlaである]
を有するCAR配列を含む、細胞接着調節剤。
【請求項2】
XがE、T、Y、Q、M、F、D、又はLから選択されるアミノ酸を含む、請求項1に記載の細胞接着調節剤。
【請求項3】
CAR配列が、WEL、WTL、WYI、WEF、WQM、WEV、WTV、WYV、WQV、WTM、WQF、WTF、WMI、WDF、WTI、WFI、WQL、WEI、及びWLAからなる群から選択される、請求項1に記載の細胞接着調節剤。
【請求項4】
前記調節剤が、WEFSICETC (配列番号2)、WTVCPIGNC (配列番号3)、WEVCLTEKC (配列番号4)、WELCVSSSC (配列番号5)、WEVRLTEKC (配列番号6)、WELRVSSPC (配列番号7)、WYVCVGAHC (配列番号8)、WQVCVGAHC (配列番号9)、WTMCYPDTC (配列番号10)、WQFCYAQHC (配列番号11)、WQMVLCPAC (配列番号12)、WELVQCLTC (配列番号13)、WTFNFCTAC (配列番号14)、HWYITTGPVREK (配列番号15)、SWTLYTPSGQSK (配列番号16)、NWFIDFPVYPPL (配列番号17)、KWELTYFANSFP (配列番号18)、EWMIHYDSALTS (配列番号19)、AWQVHYSYVASS (配列番号20)、SWLAVWPATGAS (配列番号21),SWTFYWPDAQLG (配列番号22)、EWTFQWNSYPAD (配列番号23)、EWDFFWPPTQTP (配列番号24)、QWQLHWPASKQA (配列番号25)、QWTITYPKPPAL (配列番号26)、GWTVFYPDNLRP (配列番号27)、SWELYYPLRANL (配列番号28)、及びQWEIRYPWPSMG (配列番号29)からなる群から選択されるペプチド、又はWEL、WTL、WYI、WEF、WQM、WEV、WTV、WYV、WQV、WTM、WQF、WTF、WMI、WDF、WFI、WQL、WTI、WEI、及びWLAからなる群から選択されるアミノ酸配列を少なくとも含む該ペプチドの一部を含む、請求項1に記載の細胞接着調節剤。
【請求項5】
カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-E-V/L/F-C/S/R-V/L/I-S/T/C-S/E-S/K/P/T(配列番号30)
[式中、V/L/FはVal又はLeu又はPheであり、C/S/RはCys又はSer又はArgであり、V/L/IはVal又はLeu又はIleであり、S/T/CはSer又はThr又はCysであり、S/EはSer又はGluであり、S/K/P/TはSer又はLys又はPro又はThrである]
を有するCAR配列を含む、細胞接着調節剤。
【請求項6】
前記調節剤が、WEFSICETC (配列番号2)、WEVCLTEKC (配列番号4)、WELCVSSSC (配列番号5)、WEVRLTEKC (配列番号6)及びWELRVSSPC(配列番号7)からなる群から選択されるペプチド配列、又はWEF、WEV及びWELからなる群から選択されるアミノ酸配列を少なくとも含み該ペプチドの一部を含む、請求項5に記載の細胞接着調節剤。
【請求項7】
カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-L/H-Q/T-P/S-Y/W-F/S-P/D-S/T-Y(配列番号31)
[式中、L/HはLeu又はHisであり、Q/TはGln又はThrであり、P/SはPro又はSerであり、Y/WはTyr又はTrpであり、F/SはPhe又はSerであり、P/DはPro又はAspであり、及びS/TはSer又はThrである]
を有するCAR配列を含む、細胞接着調節剤。
【請求項8】
前記調節剤が、WLQPYFPSY (配列番号32)及びWHTSWSDTY (配列番号33)からなる群から選択されるペプチド配列を含む、請求項7に記載の細胞接着調節剤。
【請求項9】
カドヘリン介在過程を調節し、次式:
W-Y/Q-VCVGAH(配列番号34)
[式中、Y/QはTyr又はGlnである]
を有するCAR配列を含む、細胞接着調節剤。
【請求項10】
前記調節剤が、WYVCVGAHC (配列番号8)及びWQVCVGAHC (配列番号9)からなる群から選択されるペプチド配列を含む、請求項9に記載の細胞接着調節剤。
【請求項11】
カドヘリン介在過程を調節し、WTMCYPDTC (配列番号10)、WQFCYAQHC (配列番号11)、WQMVLCPAC (配列番号12)、WELVQCLTC (配列番号13)、WQWCFKATC (配列番号35)、WTFNFCTAC (配列番号14)、WTWHWPPCC (配列番号36)、HWYITTGPVREK (配列番号15)、SWTLYTPSGQSK (配列番号16)、NWFIDFPVYPPL (配列番号17)、KWELTYFANSFP (配列番号18)、EWMIHYDSALTS (配列番号19)、AWQVHYSYVASS (配列番号20)、SWLAVWPATGAS (配列番号21)、SWTWHFPESPPP (配列番号37)、SWTFYWPDAQLG (配列番号22)、EWTWVFPTTHTS (配列番号38)、EWTFQWNSYPAD (配列番号23)、EWDFFWPPTQTP (配列番号24)、EWQYHWPTLQSR (配列番号39)、QWQLHWPASKQA (配列番号25)、QWTITYPKPPAL (配列番号26)、GWTVFYPDNLRP (配列番号27)、QWEWHYMAGYLA (配列番号40)、SWELYYPLRANL (配列番号28)、QWEIRYPWPSMG (配列番号29)、QWTYYLPLTPRW (配列番号41)、EWTYTFPTAHSI (配列番号42)、EWFWSWPGYSNT (配列番号43)、SWEWYIPYLNRT (配列番号44)及びAWTWSLPTLPQS (配列番号45)からなる群から選択される1以上のペプチド配列、又はカドヘリン介在過程を調節することができる該ペプチドの一部を含む、細胞接着調節剤。
【請求項12】
カドヘリン介在過程を調節し、WYVCVGAH (配列番号46)、HWYITTGPVREK (配列番号15)、SWTLYTPSGQSK (配列番号16)、EWMIHYDSALTS (配列番号19)、SWELYYPLRANL (配列番号28)、及びWELRVSSP (配列番号47)からなる群から選択される1以上のCAR配列、又はカドヘリン介在過程を調節することができる該CAR配列の一部を含む、細胞接着調節剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項で規定される配列の保存的類縁体。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項で規定される配列に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項で規定される配列のペプチド擬似体。
【請求項16】
3〜50アミノ酸残基のサイズのペプチドである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項17】
3〜25アミノ酸残基のサイズのペプチドである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項18】
3〜10アミノ酸残基のサイズのペプチドである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項19】
カドヘリン介在過程が古典的カドヘリン介在過程である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項20】
カドヘリン介在過程が、N-カドヘリン介在過程、E-カドヘリン介在過程、R-カドヘリン介在過程及びP-カドヘリン介在過程からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項21】
前記ペプチドが、N末端又はC末端修飾を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項22】
異種化合物と結合した、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項23】
薬学上活性な化合物である異種化合物と結合した、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項24】
固相支持体と結合した、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項25】
ポリエチレングリコールと結合した、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項26】
ヒト血清アルブミンと結合した、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤。
【請求項27】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の2以上のCAR配列の多量体を含む、細胞接着調節剤。
【請求項28】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を、生理学上許容される担体と組み合わせて含む、組成物。
【請求項29】
細胞接着を調節する方法であって、古典的カドヘリンを発現する細胞を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させることにより、細胞接着を調節することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記細胞が、内皮細胞、上皮細胞、腫瘍細胞、神経細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、破骨細胞、平滑骨芽細胞、幹細胞、ランゲルハンス細胞及び栄養芽細胞からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
細胞接着調節剤が細胞接着を抑制する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
細胞接着調節剤が細胞接着を増強する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物における癌の進行を遅らせる方法であって、癌を患う哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項34】
哺乳動物における腫瘍への薬学上活性な物質の送達を促進する方法であって、腫瘍を、薬学上活性な物質及び請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤と接触させることにより、該物質の該腫瘍への送達を促進することを含み、その接触ステップは該物質がその腫瘍細胞へ輸送されるのに十分な条件下及び時間をにわたり行われるものである、前記方法。
【請求項35】
細胞におけるアポトーシスを調節する方法であって、細胞を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤と接触させることにより、該細胞におけるアポトーシスを調節することを含み、該調節剤は古典的カドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法。
【請求項36】
哺乳動物における脈管形成を調節する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、脈管形成を調節することを含む、前記方法。
【請求項37】
哺乳動物における血管新生を抑制する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤を投与することにより、血管新生を阻害することを含み、該調節剤はN-カドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法。
【請求項38】
哺乳動物の中枢神経系への薬学上活性な物質の送達を促進する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤を投与することにより、薬学上活性な物質の送達を促進することを含む、前記方法。
【請求項39】
哺乳動物における脱髄性神経疾患を軽減する方法であって、脱髄性神経疾患を患う哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤を投与することにより、脱髄性神経疾患を軽減することを含む、前記方法。
【請求項40】
哺乳動物の免疫系を調節する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤を投与することにより、哺乳動物の免疫系を調節することを含む、前記方法。
【請求項41】
哺乳動物における血管透過性を亢進させる方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤を投与することにより、哺乳動物における血管透過性を亢進させることを含む、前記方法。
【請求項42】
哺乳動物におけるシナプス安定性を抑制する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調節剤を投与することにより、哺乳動物におけるシナプス安定性を抑制することを含む、前記方法。
【請求項43】
星状細胞上のN-カドヘリン発現細胞の遊走を促進する方法であって、N-カドヘリン発現細胞を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤;及び1以上の星状細胞;と接触させることにより、星状細胞上のN-カドヘリン発現細胞の遊走を促進することを含み、該調節剤はN-カドヘリン介在細胞接着を抑制するものである、前記方法。
【請求項44】
血管退行を促進する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、血管退行を促進することを含む、前記方法。
【請求項45】
培養幹細胞の凝集を減少させる方法であって、培養幹細胞を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させることにより、培養幹細胞の凝集を減少させることを含む、前記方法。
【請求項46】
哺乳動物における腫瘍への血流を増大させる方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、哺乳動物における腫瘍への血流を増大させることを含む、前記方法。
【請求項47】
哺乳動物における新血管系を破壊する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、新血管系を破壊することを含む、前記方法。
【請求項48】
哺乳動物における子宮内膜症を抑制する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、子宮内膜症を抑制することを含む、前記方法。
【請求項49】
哺乳動物における創傷治癒を促進する方法であって、哺乳動物の創傷を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させることにより、創傷治癒を促進することを含む、前記方法。
【請求項50】
哺乳動物内に移植された外来組織の接着性を増強する方法であって、哺乳動物内の外来組織の移植部位を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させることにより、外来組織の接着性を増強することを含む、前記方法。
【請求項51】
哺乳動物内の組織に対する非臓器性移植物の接着性を増強する方法であって、非臓器性移植物を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤でコーティングするか、又はそれと共有結合させることにより、該組織への該移植物の接着性を増強することを含む、前記方法。
【請求項52】
非臓器性移植物が、チタン製移植物、シリコン製移植物、ステント又は人工股関節からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
非臓器性移植物がチタン製スクリューである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
神経突起伸長を増強及び/又は指向させる方法であって、神経細胞を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させることにより、神経突起伸長を増強及び指向させることを含み、該調節剤はN-カドヘリン介在細胞接着を増強する、前記方法。
【請求項55】
哺乳動物における脊髄損傷を改善する方法であって、脊髄損傷を患う哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することを含み、該調節剤は、N-カドヘリン介在細胞接着を増強することによって脊髄損傷を改善する、前記方法。
【請求項56】
神経細胞の生存を促進する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、神経細胞の生存を促進することを含む、前記方法。
【請求項57】
哺乳動物へのウイルスの送達を促進する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、ウイルスの送達を促進することを含む、前記方法。
【請求項58】
喘息及び他の炎症性気道疾患を治療する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、喘息を抑制することを含む、前記方法。
【請求項59】
再発狭窄症を予防する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、再発狭窄症を抑制することを含む、前記方法。
【請求項60】
哺乳動物における肥満を抑制する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、肥満を抑制することを含む、前記方法。
【請求項61】
哺乳動物における骨代謝を調節する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、骨代謝を調節することを含む、前記方法。
【請求項62】
哺乳動物における骨再形成を調節する方法であって、哺乳動物に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤を投与することにより、骨再形成を調節することを含む、前記方法。
【請求項63】
カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体をカドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングし;該キメラタンパク質を、ペプチドファージディスプレイライブラリーと接触させ;非特異的に結合したファージを除去し;特異的に結合したファージを溶出させ;さらに該ファージのDNAを配列決定することにより該ペプチドの配列を決定することを含む、前記方法。
【請求項64】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン又はR-カドヘリンから選択される古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーをスクリーニングすることにより、カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体をカドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングし;該キメラタンパク質を、該キメラタンパク質と結合するファージと接触させ;さらにファージのキメラタンパク質との結合が、テスト化合物の存在下で調節されるかどうかを決定することを含む、前記方法。
【請求項68】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン又はR-カドヘリンから選択される古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
カドヘリンの細胞外ドメインがタグと連結されている、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
タグが、Fc、GST、ポリHis、HA、MBP、Myc、チオレドキシン又はβ-Galからなる群から選択され、かつ、カドヘリンが固相支持体と結合するのを補助するか、又はカドヘリンの二量体化を誘導するものである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーをスクリーニングすることにより、カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体をカドヘリン/Fcキメラタンパク質でコーティングし;該キメラタンパク質を、該キメラタンパク質と結合する請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させ;さらにキメラタンパク質と調節剤との結合が、テスト化合物の存在下で調節されるかどうかを決定することを含む、前記方法。
【請求項74】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
カドヘリン/Fcキメラタンパク質が、N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン又はR-カドヘリンから選択される古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
カドヘリンの細胞外ドメインがタグと連結されている、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤が、レポーター基と連結されている、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
タグが、Fc、GST、ポリHis、HA、MBP、Myc、チオレドキシン又はβ-Galからなる群から選択され、かつ、カドヘリンが固相支持体と結合するのを補助するか、又はカドヘリン二量体化を誘導するものである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーをスクリーニングすることにより、カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体をカドヘリンタンパク質でコーティングし;該タンパク質を、該タンパク質と結合する請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させ;さらにタンパク質と細胞接着調節剤との結合が、テスト化合物の存在下で調節されるかどうかを決定することを含む、前記方法。
【請求項81】
細胞接着調節剤がレポーター基と連結されている、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
カドヘリンタンパク質が、古典的カドヘリンタンパク質である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
カドヘリンタンパク質が、N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン又はR-カドヘリンから選択される古典的カドヘリンタンパク質である、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体をカドヘリンタンパク質でコーティングし;該カドヘリンタンパク質を、ペプチドファージディスプレイライブラリーと接触させ;非特異的に結合したファージを除去し;特異的に結合したファージを溶出させ;さらに該ファージのDNAを配列決定することにより該ペプチドの配列を決定することを含む、前記方法。
【請求項85】
カドヘリンタンパク質が、カドヘリンタンパク質の単一の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
カドヘリンタンパク質が、古典的カドヘリンタンパク質の単一の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
カドヘリンタンパク質が、N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン又はR-カドヘリンから選択される古典的カドヘリンタンパク質の単一の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーをスクリーニングすることにより、カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体をカドヘリンタンパク質でコーティングし;該カドヘリンタンパク質を、該カドヘリンタンパク質と結合するファージと接触させ;さらにファージのカドヘリンタンパク質との結合が、テスト化合物の存在下で調節されるかどうかを決定することを含む、前記方法。
【請求項89】
カドヘリンタンパク質が、カドヘリンタンパク質の単一の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
カドヘリンタンパク質が、古典的カドヘリンタンパク質の単一の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
カドヘリンタンパク質が、N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン又はR-カドヘリンから選択される古典的カドヘリンタンパク質の単一の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
ペプチジル又は非ペプチジルライブラリーをスクリーニングすることにより、カドヘリンアンタゴニストを同定する方法であって、固相支持体をカドヘリンタンパク質でコーティングし;該カドヘリンタンパク質を、該カドヘリンタンパク質と結合する請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤と接触させ;さらにカドヘリンタンパク質と調節剤との結合が、テスト化合物の存在下で調節されるかどうかを決定することを含む、前記方法。
【請求項93】
カドヘリンタンパク質が、カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
カドヘリンタンパク質が、古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
カドヘリンタンパク質が、N-カドヘリン、E-カドヘリン、P-カドヘリン又はR-カドヘリンから選択される古典的カドヘリンタンパク質の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞接着調節剤が、レポーター基と連結されている、請求項92に記載の方法。
【請求項97】
カドヘリンの細胞外ドメインがタグと連結されている、請求項93に記載の方法。
【請求項98】
タグが、Fc、GST、ポリHis、HA、MBP、Myc、チオレドキシン又はβ-Galからなる群から選択され、かつ、カドヘリンが固相支持体と結合するのを補助するか、又はカドヘリン二量体化を誘導するものである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
請求項63〜98のいずれか1項に記載の方法により同定されたカドヘリンアンタゴニスト。

【公表番号】特表2008−540340(P2008−540340A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509207(P2008−509207)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016430
【国際公開番号】WO2006/116737
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507356372)マクギル ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】