カバードステント、ステントデリバリーカテーテル、およびカバードステントの製造方法
【課題】強固に一体化するカバードステント等を提供する。
【解決手段】カバードステント19における介在膜11は、第1ステントST1の外側から第2ステントST2の内側に至るまでの間に介在する可撓性を有する筒状の膜で、自身の内面11N同士を近づけさせることで生じるひだ部11Pを、筒状の周方向に巻き付ける。ひだ部の巻き付いた分だけ、第1ステントと第2ステントとに挟まれる介在膜の厚みが増すので、ひだ部およびひだ部以外の介在膜が食い込む。その結果、第1ステントと、介在膜と、第2ステントとを強固に一体化させたカバードステントが完成する。
【解決手段】カバードステント19における介在膜11は、第1ステントST1の外側から第2ステントST2の内側に至るまでの間に介在する可撓性を有する筒状の膜で、自身の内面11N同士を近づけさせることで生じるひだ部11Pを、筒状の周方向に巻き付ける。ひだ部の巻き付いた分だけ、第1ステントと第2ステントとに挟まれる介在膜の厚みが増すので、ひだ部およびひだ部以外の介在膜が食い込む。その結果、第1ステントと、介在膜と、第2ステントとを強固に一体化させたカバードステントが完成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバードステント、ステントデリバリーカテーテル、およびカバードステントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
狭心症または心筋梗塞等の治療では、冠状動脈の狭窄部に対して、経皮的冠動脈再建手術(PTCA)等が行われる。この治療後、再狭窄の防止、または、PTCAで狭窄部を良好に拡張できなかった病変への応用治療を目的として、金属製の脈管内ステントが、冠動脈またはその他の脈管に植え込まれることもある。
【0003】
脈管内ステントは、通常、金属線(ストラット)から成るメッシュ状またはコイル状等の縮径可能な管状構造を有し、縮径状態で、カテーテルにより血管内に挿入された後、狭窄部にて拡張され、血管内腔を機械的に支持するように留置される。
【0004】
しかしながら、脈管内ステントの留置後においても、ステントを形成する金属線の隙間から、管腔組織が増殖または肥厚することに起因して、再狭窄が発生することが報告されている。
【0005】
この問題を解決するために、金属製ステントと高分子フィルムまたは不織布等の被覆材とが組合うことで、金属線の隙間が覆われ、ステント内腔への管腔組織の増殖、肥厚等が抑制されるようにしたカバードステントの研究開発が進められている。
【0006】
例えば、特許文献1に開示されるカバードステントは、2つのステントで伸縮可能な可撓性の有る介在膜を挟む。すると、このカバードステントを装着するステントデリバリーカテーテルでは、カバードステントにおける内側ステントの網目に、バルーンが食い込むため、バルーンカテーテルへの固定性が高まる。その上、カバードステントにおける外側ステントの網目には、生体管腔壁が食い込むので、カバードステントの移動といった重篤な事態が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3211156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のカバードステントでは、ステント同士の固定性が十分でない。そのため、内外のステント同士のズレ防止のために、溶接またはプレス(金属表面を凹ませる程の高い圧力を加えて金属同士を圧着する)等の加工によって、両ステントにて対向する端部同士が結合される。
【0009】
すなわち、このカバードステントでは、介在膜が、高温熱源に曝されたり、過酷な力学的環境に曝されやすく、その結果、破れたり傷ついたりしやすい。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、介在膜の破損を生じさせるような製造工程を用いなくとも、強固に一体化するカバードステント等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
カバードステントは、筒状で編目構造を有する第1ステントと、この第1ステントの外周囲を囲む筒状で編目構造の第2ステントと、第1ステントの外側から第2ステントの内側に至るまでの間に介在する筒状の介在膜と、を含む。そして、このカバードステントでは、介在膜は、自身の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部を、筒状の周方向に巻き付ける。
【0012】
このようになっていると、ひだ部の巻き付いた分だけ、第1ステントと第2ステントとに挟まれる介在膜の厚みが増すので、カバードステントの作製のために、第1ステントと第2ステントとが近づくと、第1ステントにおける網目と第2ステントにおける網目とに、ひだ部およびひだ部以外の介在膜が食い込む。その結果、第1ステントと、介在膜と、第2ステントとを強固に一体化させたカバードステントが完成する。
【0013】
なお、ひだ部の個数は、特に限定されず、単数形成されていても、複数形成されていても構わない。
【0014】
また、介在膜の材料も、特に限定はされない。例えば、介在膜は、第1ステントおよび第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばさないような特性を有する非伸縮性材料で形成されていてもよい(なお、このような介在膜は、顆粒またはフィラーを含有していてもよいし、熱可塑性を有していてもよい)。
【0015】
一方で、介在膜は、第1ステントおよび第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばす特性を有する伸縮性材料で形成されていても構わない。
【0016】
なお、以上のような介在膜は、生体適合性を有してもよいし、薬剤放出機能を有していてもよい。
【0017】
また、以上のようなカバードステントと、そのカバードステントを装着するバルーンカテーテルと、を含むステントデリバリーカテーテルも本発明といえる(なお、カバードステントの装着される部分は、バルーンカテーテルにおけるバルーンであると好ましい)。
【0018】
また、カバードステントの製造方法では、第1ステントに、介在膜が被せられる被覆工程と、介在膜の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部が、筒状の周方向に巻き付けられる巻付工程と、を含む。
【0019】
そして、このカバードステントの製造方法では、巻付工程は、介在膜のガラス転移温度以下の雰囲気中で、介在膜に対して熱を加えると好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1ステント、介在膜、および第2ステントが強固に固定する結果、一体性の高いカバードステントが完成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は、図2のA−A’線矢視断面図である。
【図2】は、ステントデリバリーカテーテルにおけるカバードステントの拡大斜視図である。
【図3】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図4】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図5】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図6】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図7】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図8】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図9】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図10】は、図9のB−B’線矢視断面図である。
【図11】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図12】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図13】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図14】は、図13のC−C’線矢視断面図である。
【図15】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図16】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図17】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図18】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図19】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図20】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法(例えば、ステントSTの網目等)は、便宜上、見やすいように調整されていることがある。
【0023】
図3は、ステントデリバリーカテーテル49を示す説明図である。この図3に示すように、ステントデリバリーカテーテル49は、カバードステント19と、そのカバードステント19を搬送するバルーンカテーテル39とを含む。
【0024】
バルーンカテーテル39は、多々種類が存在するが、例えば図3に示すような、オーバー・ザ・ワイヤー型のものが挙げられる。
【0025】
カバードステント19は、バルーンカテーテル39のバルーン31に装着される。このカバードステント19は、図3の拡大斜視図である図2に示すように、筒状の第1ステントST1と、この第1ステントST1の外周囲を囲む筒状の第2ステントST2と、第1ステントST1と第2ステントST2との間に介在する筒状の介在膜11と、を含む。
【0026】
なお、図2等は、便宜上、カバードステント19の層構造が確認しやすいように、第1ステントST1、第2ステントST2、および介在膜11の全長を調整して図示する。また、図1は、図2のA−A’線矢視断面図である{別表現すると、カバードステント19の筒軸方向の交差断面(直交断面等)。なお、バルーン31は、便宜上、図1では省略する}。
【0027】
ステントST(ST1・ST2)は、例えば、金属管に対して、外表面と内表面とを貫通する切欠(開口、網目)HLを複数形成することで、網状にされた筒状部材である(なお、網目HLを取り囲むように生じる金属線は、ストラットと称される)。そして、ステントSTは、編目構造に起因して、内側から外側に向かって圧をかけられると、半径方向に向かって拡張(すなわち拡径)する。なお、内側とは、ステントSTの筒軸方向の交差断面(直交断面等)にて、中心軸の有る側(内腔)を意味し、外側とは、ステントSTの周壁を介して、内側の逆側を意味する。
【0028】
また、ステントSTにおける切欠HLは、形状、個数、配置等、特に限定されない(すなわち、ステントSTのデザインは、特に限定されない)。また、第1ステントST1のデザインと、第2ステントST2のデザインとは、一致していても異なっていても構わない。
【0029】
ただし、第1のステントST1の全長は、第2ステントST2の全長よりも短いと好ましい。なぜなら、第1ステントST1の全長が第2ステントST2の全長よりも長い場合、体内における管腔内壁面と、第2ステントST2の端より伸び出た第1ステントST1の外表面と、この外表面と管腔内壁面とに挟まれる第2ステントST2および介在膜11と、によって窪みが生じ、この窪みにて、血液が滞留しやすくなるためである(すなわち、血栓の生じやすい箇所が発生するためである)。
【0030】
また、ステントSTの材料は、金属材料(例えば、コバルト系合金、またはステンレス鋼)が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、ステントSTの材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、セルロースアセテート、セルロースナイトレート等のセルロース系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、または、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の含フッ素ポリマーのような、高分子材料であっても構わない。また、ステントSTの材料は、金属材料または高分子材料に限らず、炭素繊維またはセラミックス等であっても構わない。
【0031】
要は、ステントSTの材料は、ある程度の弾性と耐久性とを有すれば、特に限定されない。また、第1ステントST1の材料と、第2ステントST2の材料とは、同じであっても異なっていても構わない。
【0032】
ただし、ステントSTは、体内に留置されるので、その材料は、生体適合性を有すると好ましい。また、ステントSTが、例えば、薬剤コーティングをされることで、薬剤放出機能を有していても構わない。
【0033】
介在膜11は、内側に第1ステントST1、外側に第2ステントST2を配置させた両ステントST1・ST2において、第1ステントST1の外側から第2ステントST2の内側に至るまでの間に介在する可撓性を有する筒状の膜である。
【0034】
そして、介在膜11は、図1に示すように、自身の内面11N同士(筒状の介在膜11にて、内側の膜面同士)を近づけさせることで生じるひだ部11Pを、筒状の周方向に巻き付ける。
【0035】
このようになっていると、図1に示すように、ひだ部11Pが筒状の介在膜11に巻き付くことで、その巻き付いた分だけ、第1ステントSTと第2ステントSTに挟まれる介在膜11の厚みが増す。すると、後述の図19(図1の拡大図ともいえる)に示すように、カバードステント19の作製のために、第1ステントST1と第2ステントST2とが近づくと、第1ステントST1における網目HLと第2ステントST2における網目HLとに、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が埋まる(食い込む)。
【0036】
この結果、第1ステントST1、介在膜11、および第2ステントST2との密着性が増す(要は、強固に一体化したカバードステント19が完成する)。そのため、このカバードステント19では、例えば、第1ステントST1と第2ステントST2とを溶接させるようなことは不要になり、製造工程が簡素化される。また、このような溶接工程が不要になると、溶接に起因した不具合(例えば、介在膜11の破損等)も起きない。
【0037】
なお、介在膜11の材料としては、種々挙げられる。例えば、介在膜11は、第1ステントST1および第2ステントST2の半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばさないような特性を有する非伸縮性材料(例えば、ナイロン)で形成されていてもよい。
【0038】
そして、このような非伸縮性材料で形成された介在膜11の場合、この介在膜11の内周囲長は、拡径後の第1ステントST1の外周囲長よりも長いと好ましい。このようになっていると、カバードステント19が拡径した場合、介在膜11が、第1ステントST1の拡径する外周囲によって、伸ばされない。
【0039】
ただし、カバードステント19が体内に留置されるため、介在膜11が過度に長く、第1ステントST1と第2ステントST2との間で撓んでいると、その撓みに起因して、カバードステント19の内腔壁の近傍の血流を乱す原因になる。そのため、この介在膜11の内周囲長は、拡径後の第1ステントST1の外周囲長とほぼ同じ長さであってもよい(要は、この介在膜11の内周囲長は、拡径後の第1ステントST1の外周囲長以上であればよい)。
【0040】
なお、このような非伸縮性材料は、例えば、生体適合性の向上または機械的強度向上のために、顆粒またはフィラーを含んでいてもよい。また、非伸縮性材料は、伸びないために、薬剤放出機能の維持が容易である。
【0041】
一方で、介在膜11は、第1ステントST1および第2ステントST2の半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばす特性を有する伸縮性材料で形成されていてもよい。また、介在膜11は、非伸縮性材料および伸縮性材料に関係なく、熱可塑性を有する材料であってもよい。
【0042】
なお、介在膜11の交差断面の形状は、円形に限定されず、例えば、楕円形、矩形、多角形でも構わない。また、介在膜11の厚みも、特に限定されず、柔軟性を損なわず、かつ、ステントSTの網目HLへの食い込みを妨げない程度であればよい。
【0043】
ところで、カバードステント19は、バルーンカテーテル39におけるバルーン31に装着されている。そして、バルーン31の拡張に応じて、カバードステント19は拡径する。ただし、カバードステント19を拡径させる部材は、バルーン31に限定されるものではない。
【0044】
例えば、加圧、給水、電圧印加、加熱等の外部刺激によって、カバードステント19を拡径させられる部材であれば、バルーン31以外の部材であっても構わない(なお、カバードステント19の装着される部材は、基材と称される)。ただし、基材にカバードステント19が、例えば圧着によって装着される場合、第1ステントST1の網目HLに食い込めるような材料で、基材が形成されていると好ましい。
【0045】
ここで、カバードステント19の製造方法、ひいては、ステントデリバリーカテーテル49の製造方法に関して、図4〜図19を用いて説明する。
【0046】
まず、図4に示すように、例えばパリレンコートされたマンドレル51に、円筒体である第1ステントST1が差し込まれる[第1ステント取付工程]。なお、図5は、第1ステントST1がマンドレル51を被っている状態を示す。
【0047】
次に、図6に示すように、介在膜11が、マンドレル51上の第1ステントST1を被うように、嵌められる[被覆工程]。なお、図7は、介在膜11が、第1ステントST1を被っている状態を示す。
【0048】
介在膜11の周長は、図7に示すように、第1ステントST1の周長に比べて大きい。そのため、介在膜11の内面11N同士が近づけられると、図8に示すように、ひだ部11Pが生じる(なお、ひだ部11Pは、介在膜11の周長と、第1ステントST1の周長との差から生じる余剰分で形成される)。
【0049】
そこで、図9および図10(図9のB−B’線矢視断面図)に示すように、ひだ部11Pの表面を挟み込めるような、例えばU字状の把持具52が、そのひだ部11Pを固定する。詳説すると、第1ステントST1の周囲にて、対向する2つのひだ部11P(第1ステントST1の交差断面の円形にて、根元の位置を180°乖離させることで、羽根状になった2つのひだ部11P)が、把持具52にて挟まれつつ、介在膜11のガラス転移温度以下の雰囲気中にて、十分に癖付けされるまで静置される[癖付工程]。
【0050】
なお、マンドレル51がパリレンコートされている場合、癖付け工程における加熱雰囲気中で、マンドレル51と介在膜11とが接着せず、マンドレル51が抜けにくくなることが無い。
【0051】
そして、介在膜11に癖が付いた後、その介在膜11から把持具52が外され、図11に示すように、ひだ部11Pが、第1ステントST1の周囲に巻き付けられる(周方向に巻き付けられる;[巻付工程])。
【0052】
さらに、保護管(不図示)が、介在膜11を被うように、嵌められる[保護管取付工程]。その後、再度、介在膜11のガラス転移温度以下の雰囲気中にて、介在膜11の形状が保持されるまで静置される(すなわち、巻付工程は、ガラス転移温度以下の雰囲気中で行われる)。
【0053】
すなわち、この保護管は、介在膜11のひだ部11Pを、第1ステントST1の周囲に沿って巻かれた状態で保持する。そのため、この保護管の内径は、羽根状の介在膜11の復元を抑制し得る程度の径であればよい。なお、保護管の材料は、特に限定されないが、癖付け後、保護管を除去する場合の作業性を考慮し、介在膜11に対する摩擦を抑えられる材料であると好ましい。
【0054】
介在膜11の形状が保持された後、保護管が取り外され、第1ステントST1に挿入されていたマンドレル51が、図12に示すように、抜かれる[マンドレル抜去工程]。この後、図13に示すように、バルーンカテーテル39におけるバルーン31が、第1ステントST1に挿入される[基材挿入工程]。この状態を断面図で示すと、図14のようになる(すなわち、図14は、図13のC−C’線矢視断面図である)。
【0055】
そして、図15に示すように(なお、白色矢印はクリンピングを意味する)、第1ステントST1が、バルーン31を被い、介在膜11が第1ステントST1を被った状態で、第1回目のクリンピングが行われる[第1クリンピング工程]。このようなクリンピングが行われると、図16に示すように、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が、第1ステントST1における網目HLに食い込む。
【0056】
また、バルーン31も介在膜11に類似した羽根状になって、バルーン31の周方向に巻き付けられていると、第1回目のクリンピングによって、バルーン31が第1ステントST1の網目HLに食い込む(すなわち、バルーン31と第1ステントST1との密着性が高まる)。
【0057】
つまり、第1のクリンピングによって、第1ステントST1の網目HLには、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が食い込むとともに、バルーン31も食い込み、その結果、縮径した第1ステントST1に対する介在膜11とバルーン31との密着度合いは高まり、それらは一体化する。
【0058】
次に、図17に示すように、第2ステントST2が、介在膜11を被うように、嵌められる[第2ステント取付工程]。その後、図18示すように(白色矢印はクリンピングを意味する)、第2ステントST2が、介在膜11を被った状態で、第2回目のクリンピングが行われる[第2クリンピング工程]。このようなクリンピングが行われると、図19に示すように、第2ステントST2が縮径し、この第2ステントST2における網目HLに、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が食い込む(なお、介在膜11のひだ部11Pを巻きつけることで生じた起伏があると、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が、第2ステントST2の網目HLに食い込みやすくなる)。
【0059】
この結果、介在膜11を、第1のステントST1の網目HL、および、第2ステントST2の網目HLに食い込ませたカバードステント19が、バルーン31に装着される。つまり、一体化した第1ステントST1、介在膜11、および第2ステントST2(すなわち、カバードステント19)は、拡張可能なバルーン31に埋め込まれるようにして、装着され、ステントデリバリーカテーテル49が完成する。
【実施例】
【0060】
以下に、具体的な実施例について説明する。詳説すると、以下のような部材を用いる。
【0061】
介在膜11は、全長35.0 mm、膜厚32 μm、外径5.9 mmの筒状部材である。なお、この介在膜11は、株式会社カネカ製のバルーンカテーテル(製品名Senri)における直管状の一部分を流用している。
【0062】
第1ステントST1および第2ステントST2は、全長34.6 mm、厚み75μm、外径1.8mmのCoCr合金製の筒状部材である(なお、両ステントST1・ST2のデザインは同じである)。
【0063】
基材は、バルーン31で、直管状の部分の全長40.0 mm、膜厚24.0μm、外径4.0mmを有する。なお、このバルーン31は、株式会社カネカ製のバルーンカテーテル(製品名SHIRANUI SOFLEX)におけるバルーンシャフトを流用している。
【0064】
そして、以上の部材のうち、まず、第1ステントST1が、パリレンコートされた直径1.5mmのマンドレル51に差し込まれる(別表現すると、マンドレル51の軸に対して、同軸的に、第1ステントST1が配置される[第1ステント取付工程])。
【0065】
次に、介在膜11が、第1ステントST1を被うように、差し込まれる[被覆工程]。第1ステントST1は、未拡張の場合、5.65mmの外周長を有し、介在膜11は、18.85mmの外周長(全周長とも称せる)を有するため、余剰となる長さは、13.19mmとなる。そこで、この余剰分で、図9・図10に示すように、2つのひだ部11Pが把持具52で把持され、60℃雰囲気中にて3分間静置される[癖付工程]。
【0066】
続いて、把持具52が外され、介在膜11のひだ部11Pが第1ステントST1の周囲に巻き付けられる[巻付工程]。その後、ひだ部11Pの巻き付いた介在膜11上に、保護管(株式会社ペンニットー製のSST 3/32)が被せられる[保護管取付工程]。そして、保護管の装着された介在膜11は、再度、60℃雰囲気中にて10分間静置される(なお、保護管における一方の端部が、斜めに加工されていると、作業性が向上するので好ましい)。
【0067】
この静置後、保護管が取り外され、さらに、第1ステントST1からマンドレル51が抜去される[マンドレル抜去工程]。そして、マンドレル51の抜かれた箇所、すなわち、第1ステントST1の内腔に、バルーン31が挿入される[基材挿入工程]。なお、バルーン31(詳説すると、バルーンシャフト)の挿入では、バルーンシャフトのガイドワイヤルーメンに、直径0.45mmの別のマンドレルが挿入されている。
【0068】
そして、マンドレルに支えられたバルーン31に、第1ステントST1が被われ、この第1ステントST1に介在膜11が被われた状態で、第1回目のクリンピングがクリンプ装置で行われる[第1クリンピング工程]。
【0069】
一方で、第2ステントST2は、テーパーマンドレルを用いて、端部を予備拡径された後、直径1.95mmのマンドレルを回しながら挿入されることで、一様に拡径させられる。そして、この拡径した第2ステントST2が、第1回目のクリンピング後の介在膜11を被うように、差し込まれる[第2ステント取付工程]。この後、第2ステントST2が、介在膜11を被った状態で、第2回目のクリンピングが行われる[第2クリンピング工程]。
【0070】
この結果、1.76〜1.82mm程度の外径を有するカバードステント19が完成する。
【0071】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、図10に示すように、介在膜11における2つのひだ部11Pが、マンドレル51の中心軸を介して対向配置(ひだ部11Pの根元の位置が、マンドレル51の中心軸に対して180°で均等に乖離している例を挙げているが、これに限定されるわけではない。
【0073】
例えば、図20に示すように、ひだ部11Pが4つ形成され、それらの4つの根元の位置が、マンドレル51の中心軸(第1ステントST1の中心軸と称せる)に対して90°間隔で均等に乖離していてもよいし、ひだ部11Pが1つであっても構わない。
【0074】
要は、ステントSTの網目HLへの介在膜11の埋没量が均一に分布し、かつ、各々の埋没量が十分になっていれば、介在膜11とステントSTとの一体性が確実になるので、そのような確実性を向上させられるのであれば、ひだ部11Pの形、配置、分布等は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0075】
ST ステント
ST1 第1ステント
ST2 第2ステント
11 介在膜
11P ひだ部
11N 介在膜の内面[膜面]
19 カバードステント
HL ステントにおける網目
31 バルーン
39 バルーンカテーテル
51 マンドレル
52 把持具
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバードステント、ステントデリバリーカテーテル、およびカバードステントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
狭心症または心筋梗塞等の治療では、冠状動脈の狭窄部に対して、経皮的冠動脈再建手術(PTCA)等が行われる。この治療後、再狭窄の防止、または、PTCAで狭窄部を良好に拡張できなかった病変への応用治療を目的として、金属製の脈管内ステントが、冠動脈またはその他の脈管に植え込まれることもある。
【0003】
脈管内ステントは、通常、金属線(ストラット)から成るメッシュ状またはコイル状等の縮径可能な管状構造を有し、縮径状態で、カテーテルにより血管内に挿入された後、狭窄部にて拡張され、血管内腔を機械的に支持するように留置される。
【0004】
しかしながら、脈管内ステントの留置後においても、ステントを形成する金属線の隙間から、管腔組織が増殖または肥厚することに起因して、再狭窄が発生することが報告されている。
【0005】
この問題を解決するために、金属製ステントと高分子フィルムまたは不織布等の被覆材とが組合うことで、金属線の隙間が覆われ、ステント内腔への管腔組織の増殖、肥厚等が抑制されるようにしたカバードステントの研究開発が進められている。
【0006】
例えば、特許文献1に開示されるカバードステントは、2つのステントで伸縮可能な可撓性の有る介在膜を挟む。すると、このカバードステントを装着するステントデリバリーカテーテルでは、カバードステントにおける内側ステントの網目に、バルーンが食い込むため、バルーンカテーテルへの固定性が高まる。その上、カバードステントにおける外側ステントの網目には、生体管腔壁が食い込むので、カバードステントの移動といった重篤な事態が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3211156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のカバードステントでは、ステント同士の固定性が十分でない。そのため、内外のステント同士のズレ防止のために、溶接またはプレス(金属表面を凹ませる程の高い圧力を加えて金属同士を圧着する)等の加工によって、両ステントにて対向する端部同士が結合される。
【0009】
すなわち、このカバードステントでは、介在膜が、高温熱源に曝されたり、過酷な力学的環境に曝されやすく、その結果、破れたり傷ついたりしやすい。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、介在膜の破損を生じさせるような製造工程を用いなくとも、強固に一体化するカバードステント等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
カバードステントは、筒状で編目構造を有する第1ステントと、この第1ステントの外周囲を囲む筒状で編目構造の第2ステントと、第1ステントの外側から第2ステントの内側に至るまでの間に介在する筒状の介在膜と、を含む。そして、このカバードステントでは、介在膜は、自身の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部を、筒状の周方向に巻き付ける。
【0012】
このようになっていると、ひだ部の巻き付いた分だけ、第1ステントと第2ステントとに挟まれる介在膜の厚みが増すので、カバードステントの作製のために、第1ステントと第2ステントとが近づくと、第1ステントにおける網目と第2ステントにおける網目とに、ひだ部およびひだ部以外の介在膜が食い込む。その結果、第1ステントと、介在膜と、第2ステントとを強固に一体化させたカバードステントが完成する。
【0013】
なお、ひだ部の個数は、特に限定されず、単数形成されていても、複数形成されていても構わない。
【0014】
また、介在膜の材料も、特に限定はされない。例えば、介在膜は、第1ステントおよび第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばさないような特性を有する非伸縮性材料で形成されていてもよい(なお、このような介在膜は、顆粒またはフィラーを含有していてもよいし、熱可塑性を有していてもよい)。
【0015】
一方で、介在膜は、第1ステントおよび第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばす特性を有する伸縮性材料で形成されていても構わない。
【0016】
なお、以上のような介在膜は、生体適合性を有してもよいし、薬剤放出機能を有していてもよい。
【0017】
また、以上のようなカバードステントと、そのカバードステントを装着するバルーンカテーテルと、を含むステントデリバリーカテーテルも本発明といえる(なお、カバードステントの装着される部分は、バルーンカテーテルにおけるバルーンであると好ましい)。
【0018】
また、カバードステントの製造方法では、第1ステントに、介在膜が被せられる被覆工程と、介在膜の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部が、筒状の周方向に巻き付けられる巻付工程と、を含む。
【0019】
そして、このカバードステントの製造方法では、巻付工程は、介在膜のガラス転移温度以下の雰囲気中で、介在膜に対して熱を加えると好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1ステント、介在膜、および第2ステントが強固に固定する結果、一体性の高いカバードステントが完成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は、図2のA−A’線矢視断面図である。
【図2】は、ステントデリバリーカテーテルにおけるカバードステントの拡大斜視図である。
【図3】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図4】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図5】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図6】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図7】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図8】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図9】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図10】は、図9のB−B’線矢視断面図である。
【図11】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図12】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図13】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図14】は、図13のC−C’線矢視断面図である。
【図15】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図16】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図17】は、カバードステントの製造工程を示す斜視図である。
【図18】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図19】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【図20】は、カバードステントの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法(例えば、ステントSTの網目等)は、便宜上、見やすいように調整されていることがある。
【0023】
図3は、ステントデリバリーカテーテル49を示す説明図である。この図3に示すように、ステントデリバリーカテーテル49は、カバードステント19と、そのカバードステント19を搬送するバルーンカテーテル39とを含む。
【0024】
バルーンカテーテル39は、多々種類が存在するが、例えば図3に示すような、オーバー・ザ・ワイヤー型のものが挙げられる。
【0025】
カバードステント19は、バルーンカテーテル39のバルーン31に装着される。このカバードステント19は、図3の拡大斜視図である図2に示すように、筒状の第1ステントST1と、この第1ステントST1の外周囲を囲む筒状の第2ステントST2と、第1ステントST1と第2ステントST2との間に介在する筒状の介在膜11と、を含む。
【0026】
なお、図2等は、便宜上、カバードステント19の層構造が確認しやすいように、第1ステントST1、第2ステントST2、および介在膜11の全長を調整して図示する。また、図1は、図2のA−A’線矢視断面図である{別表現すると、カバードステント19の筒軸方向の交差断面(直交断面等)。なお、バルーン31は、便宜上、図1では省略する}。
【0027】
ステントST(ST1・ST2)は、例えば、金属管に対して、外表面と内表面とを貫通する切欠(開口、網目)HLを複数形成することで、網状にされた筒状部材である(なお、網目HLを取り囲むように生じる金属線は、ストラットと称される)。そして、ステントSTは、編目構造に起因して、内側から外側に向かって圧をかけられると、半径方向に向かって拡張(すなわち拡径)する。なお、内側とは、ステントSTの筒軸方向の交差断面(直交断面等)にて、中心軸の有る側(内腔)を意味し、外側とは、ステントSTの周壁を介して、内側の逆側を意味する。
【0028】
また、ステントSTにおける切欠HLは、形状、個数、配置等、特に限定されない(すなわち、ステントSTのデザインは、特に限定されない)。また、第1ステントST1のデザインと、第2ステントST2のデザインとは、一致していても異なっていても構わない。
【0029】
ただし、第1のステントST1の全長は、第2ステントST2の全長よりも短いと好ましい。なぜなら、第1ステントST1の全長が第2ステントST2の全長よりも長い場合、体内における管腔内壁面と、第2ステントST2の端より伸び出た第1ステントST1の外表面と、この外表面と管腔内壁面とに挟まれる第2ステントST2および介在膜11と、によって窪みが生じ、この窪みにて、血液が滞留しやすくなるためである(すなわち、血栓の生じやすい箇所が発生するためである)。
【0030】
また、ステントSTの材料は、金属材料(例えば、コバルト系合金、またはステンレス鋼)が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、ステントSTの材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、セルロースアセテート、セルロースナイトレート等のセルロース系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、または、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の含フッ素ポリマーのような、高分子材料であっても構わない。また、ステントSTの材料は、金属材料または高分子材料に限らず、炭素繊維またはセラミックス等であっても構わない。
【0031】
要は、ステントSTの材料は、ある程度の弾性と耐久性とを有すれば、特に限定されない。また、第1ステントST1の材料と、第2ステントST2の材料とは、同じであっても異なっていても構わない。
【0032】
ただし、ステントSTは、体内に留置されるので、その材料は、生体適合性を有すると好ましい。また、ステントSTが、例えば、薬剤コーティングをされることで、薬剤放出機能を有していても構わない。
【0033】
介在膜11は、内側に第1ステントST1、外側に第2ステントST2を配置させた両ステントST1・ST2において、第1ステントST1の外側から第2ステントST2の内側に至るまでの間に介在する可撓性を有する筒状の膜である。
【0034】
そして、介在膜11は、図1に示すように、自身の内面11N同士(筒状の介在膜11にて、内側の膜面同士)を近づけさせることで生じるひだ部11Pを、筒状の周方向に巻き付ける。
【0035】
このようになっていると、図1に示すように、ひだ部11Pが筒状の介在膜11に巻き付くことで、その巻き付いた分だけ、第1ステントSTと第2ステントSTに挟まれる介在膜11の厚みが増す。すると、後述の図19(図1の拡大図ともいえる)に示すように、カバードステント19の作製のために、第1ステントST1と第2ステントST2とが近づくと、第1ステントST1における網目HLと第2ステントST2における網目HLとに、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が埋まる(食い込む)。
【0036】
この結果、第1ステントST1、介在膜11、および第2ステントST2との密着性が増す(要は、強固に一体化したカバードステント19が完成する)。そのため、このカバードステント19では、例えば、第1ステントST1と第2ステントST2とを溶接させるようなことは不要になり、製造工程が簡素化される。また、このような溶接工程が不要になると、溶接に起因した不具合(例えば、介在膜11の破損等)も起きない。
【0037】
なお、介在膜11の材料としては、種々挙げられる。例えば、介在膜11は、第1ステントST1および第2ステントST2の半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばさないような特性を有する非伸縮性材料(例えば、ナイロン)で形成されていてもよい。
【0038】
そして、このような非伸縮性材料で形成された介在膜11の場合、この介在膜11の内周囲長は、拡径後の第1ステントST1の外周囲長よりも長いと好ましい。このようになっていると、カバードステント19が拡径した場合、介在膜11が、第1ステントST1の拡径する外周囲によって、伸ばされない。
【0039】
ただし、カバードステント19が体内に留置されるため、介在膜11が過度に長く、第1ステントST1と第2ステントST2との間で撓んでいると、その撓みに起因して、カバードステント19の内腔壁の近傍の血流を乱す原因になる。そのため、この介在膜11の内周囲長は、拡径後の第1ステントST1の外周囲長とほぼ同じ長さであってもよい(要は、この介在膜11の内周囲長は、拡径後の第1ステントST1の外周囲長以上であればよい)。
【0040】
なお、このような非伸縮性材料は、例えば、生体適合性の向上または機械的強度向上のために、顆粒またはフィラーを含んでいてもよい。また、非伸縮性材料は、伸びないために、薬剤放出機能の維持が容易である。
【0041】
一方で、介在膜11は、第1ステントST1および第2ステントST2の半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばす特性を有する伸縮性材料で形成されていてもよい。また、介在膜11は、非伸縮性材料および伸縮性材料に関係なく、熱可塑性を有する材料であってもよい。
【0042】
なお、介在膜11の交差断面の形状は、円形に限定されず、例えば、楕円形、矩形、多角形でも構わない。また、介在膜11の厚みも、特に限定されず、柔軟性を損なわず、かつ、ステントSTの網目HLへの食い込みを妨げない程度であればよい。
【0043】
ところで、カバードステント19は、バルーンカテーテル39におけるバルーン31に装着されている。そして、バルーン31の拡張に応じて、カバードステント19は拡径する。ただし、カバードステント19を拡径させる部材は、バルーン31に限定されるものではない。
【0044】
例えば、加圧、給水、電圧印加、加熱等の外部刺激によって、カバードステント19を拡径させられる部材であれば、バルーン31以外の部材であっても構わない(なお、カバードステント19の装着される部材は、基材と称される)。ただし、基材にカバードステント19が、例えば圧着によって装着される場合、第1ステントST1の網目HLに食い込めるような材料で、基材が形成されていると好ましい。
【0045】
ここで、カバードステント19の製造方法、ひいては、ステントデリバリーカテーテル49の製造方法に関して、図4〜図19を用いて説明する。
【0046】
まず、図4に示すように、例えばパリレンコートされたマンドレル51に、円筒体である第1ステントST1が差し込まれる[第1ステント取付工程]。なお、図5は、第1ステントST1がマンドレル51を被っている状態を示す。
【0047】
次に、図6に示すように、介在膜11が、マンドレル51上の第1ステントST1を被うように、嵌められる[被覆工程]。なお、図7は、介在膜11が、第1ステントST1を被っている状態を示す。
【0048】
介在膜11の周長は、図7に示すように、第1ステントST1の周長に比べて大きい。そのため、介在膜11の内面11N同士が近づけられると、図8に示すように、ひだ部11Pが生じる(なお、ひだ部11Pは、介在膜11の周長と、第1ステントST1の周長との差から生じる余剰分で形成される)。
【0049】
そこで、図9および図10(図9のB−B’線矢視断面図)に示すように、ひだ部11Pの表面を挟み込めるような、例えばU字状の把持具52が、そのひだ部11Pを固定する。詳説すると、第1ステントST1の周囲にて、対向する2つのひだ部11P(第1ステントST1の交差断面の円形にて、根元の位置を180°乖離させることで、羽根状になった2つのひだ部11P)が、把持具52にて挟まれつつ、介在膜11のガラス転移温度以下の雰囲気中にて、十分に癖付けされるまで静置される[癖付工程]。
【0050】
なお、マンドレル51がパリレンコートされている場合、癖付け工程における加熱雰囲気中で、マンドレル51と介在膜11とが接着せず、マンドレル51が抜けにくくなることが無い。
【0051】
そして、介在膜11に癖が付いた後、その介在膜11から把持具52が外され、図11に示すように、ひだ部11Pが、第1ステントST1の周囲に巻き付けられる(周方向に巻き付けられる;[巻付工程])。
【0052】
さらに、保護管(不図示)が、介在膜11を被うように、嵌められる[保護管取付工程]。その後、再度、介在膜11のガラス転移温度以下の雰囲気中にて、介在膜11の形状が保持されるまで静置される(すなわち、巻付工程は、ガラス転移温度以下の雰囲気中で行われる)。
【0053】
すなわち、この保護管は、介在膜11のひだ部11Pを、第1ステントST1の周囲に沿って巻かれた状態で保持する。そのため、この保護管の内径は、羽根状の介在膜11の復元を抑制し得る程度の径であればよい。なお、保護管の材料は、特に限定されないが、癖付け後、保護管を除去する場合の作業性を考慮し、介在膜11に対する摩擦を抑えられる材料であると好ましい。
【0054】
介在膜11の形状が保持された後、保護管が取り外され、第1ステントST1に挿入されていたマンドレル51が、図12に示すように、抜かれる[マンドレル抜去工程]。この後、図13に示すように、バルーンカテーテル39におけるバルーン31が、第1ステントST1に挿入される[基材挿入工程]。この状態を断面図で示すと、図14のようになる(すなわち、図14は、図13のC−C’線矢視断面図である)。
【0055】
そして、図15に示すように(なお、白色矢印はクリンピングを意味する)、第1ステントST1が、バルーン31を被い、介在膜11が第1ステントST1を被った状態で、第1回目のクリンピングが行われる[第1クリンピング工程]。このようなクリンピングが行われると、図16に示すように、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が、第1ステントST1における網目HLに食い込む。
【0056】
また、バルーン31も介在膜11に類似した羽根状になって、バルーン31の周方向に巻き付けられていると、第1回目のクリンピングによって、バルーン31が第1ステントST1の網目HLに食い込む(すなわち、バルーン31と第1ステントST1との密着性が高まる)。
【0057】
つまり、第1のクリンピングによって、第1ステントST1の網目HLには、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が食い込むとともに、バルーン31も食い込み、その結果、縮径した第1ステントST1に対する介在膜11とバルーン31との密着度合いは高まり、それらは一体化する。
【0058】
次に、図17に示すように、第2ステントST2が、介在膜11を被うように、嵌められる[第2ステント取付工程]。その後、図18示すように(白色矢印はクリンピングを意味する)、第2ステントST2が、介在膜11を被った状態で、第2回目のクリンピングが行われる[第2クリンピング工程]。このようなクリンピングが行われると、図19に示すように、第2ステントST2が縮径し、この第2ステントST2における網目HLに、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が食い込む(なお、介在膜11のひだ部11Pを巻きつけることで生じた起伏があると、ひだ部11Pおよびひだ部11P以外の介在膜11が、第2ステントST2の網目HLに食い込みやすくなる)。
【0059】
この結果、介在膜11を、第1のステントST1の網目HL、および、第2ステントST2の網目HLに食い込ませたカバードステント19が、バルーン31に装着される。つまり、一体化した第1ステントST1、介在膜11、および第2ステントST2(すなわち、カバードステント19)は、拡張可能なバルーン31に埋め込まれるようにして、装着され、ステントデリバリーカテーテル49が完成する。
【実施例】
【0060】
以下に、具体的な実施例について説明する。詳説すると、以下のような部材を用いる。
【0061】
介在膜11は、全長35.0 mm、膜厚32 μm、外径5.9 mmの筒状部材である。なお、この介在膜11は、株式会社カネカ製のバルーンカテーテル(製品名Senri)における直管状の一部分を流用している。
【0062】
第1ステントST1および第2ステントST2は、全長34.6 mm、厚み75μm、外径1.8mmのCoCr合金製の筒状部材である(なお、両ステントST1・ST2のデザインは同じである)。
【0063】
基材は、バルーン31で、直管状の部分の全長40.0 mm、膜厚24.0μm、外径4.0mmを有する。なお、このバルーン31は、株式会社カネカ製のバルーンカテーテル(製品名SHIRANUI SOFLEX)におけるバルーンシャフトを流用している。
【0064】
そして、以上の部材のうち、まず、第1ステントST1が、パリレンコートされた直径1.5mmのマンドレル51に差し込まれる(別表現すると、マンドレル51の軸に対して、同軸的に、第1ステントST1が配置される[第1ステント取付工程])。
【0065】
次に、介在膜11が、第1ステントST1を被うように、差し込まれる[被覆工程]。第1ステントST1は、未拡張の場合、5.65mmの外周長を有し、介在膜11は、18.85mmの外周長(全周長とも称せる)を有するため、余剰となる長さは、13.19mmとなる。そこで、この余剰分で、図9・図10に示すように、2つのひだ部11Pが把持具52で把持され、60℃雰囲気中にて3分間静置される[癖付工程]。
【0066】
続いて、把持具52が外され、介在膜11のひだ部11Pが第1ステントST1の周囲に巻き付けられる[巻付工程]。その後、ひだ部11Pの巻き付いた介在膜11上に、保護管(株式会社ペンニットー製のSST 3/32)が被せられる[保護管取付工程]。そして、保護管の装着された介在膜11は、再度、60℃雰囲気中にて10分間静置される(なお、保護管における一方の端部が、斜めに加工されていると、作業性が向上するので好ましい)。
【0067】
この静置後、保護管が取り外され、さらに、第1ステントST1からマンドレル51が抜去される[マンドレル抜去工程]。そして、マンドレル51の抜かれた箇所、すなわち、第1ステントST1の内腔に、バルーン31が挿入される[基材挿入工程]。なお、バルーン31(詳説すると、バルーンシャフト)の挿入では、バルーンシャフトのガイドワイヤルーメンに、直径0.45mmの別のマンドレルが挿入されている。
【0068】
そして、マンドレルに支えられたバルーン31に、第1ステントST1が被われ、この第1ステントST1に介在膜11が被われた状態で、第1回目のクリンピングがクリンプ装置で行われる[第1クリンピング工程]。
【0069】
一方で、第2ステントST2は、テーパーマンドレルを用いて、端部を予備拡径された後、直径1.95mmのマンドレルを回しながら挿入されることで、一様に拡径させられる。そして、この拡径した第2ステントST2が、第1回目のクリンピング後の介在膜11を被うように、差し込まれる[第2ステント取付工程]。この後、第2ステントST2が、介在膜11を被った状態で、第2回目のクリンピングが行われる[第2クリンピング工程]。
【0070】
この結果、1.76〜1.82mm程度の外径を有するカバードステント19が完成する。
【0071】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、図10に示すように、介在膜11における2つのひだ部11Pが、マンドレル51の中心軸を介して対向配置(ひだ部11Pの根元の位置が、マンドレル51の中心軸に対して180°で均等に乖離している例を挙げているが、これに限定されるわけではない。
【0073】
例えば、図20に示すように、ひだ部11Pが4つ形成され、それらの4つの根元の位置が、マンドレル51の中心軸(第1ステントST1の中心軸と称せる)に対して90°間隔で均等に乖離していてもよいし、ひだ部11Pが1つであっても構わない。
【0074】
要は、ステントSTの網目HLへの介在膜11の埋没量が均一に分布し、かつ、各々の埋没量が十分になっていれば、介在膜11とステントSTとの一体性が確実になるので、そのような確実性を向上させられるのであれば、ひだ部11Pの形、配置、分布等は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0075】
ST ステント
ST1 第1ステント
ST2 第2ステント
11 介在膜
11P ひだ部
11N 介在膜の内面[膜面]
19 カバードステント
HL ステントにおける網目
31 バルーン
39 バルーンカテーテル
51 マンドレル
52 把持具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で編目構造を有する第1ステントと、
上記第1ステントの外周囲を囲む筒状で編目構造の第2ステントと、
上記第1ステントの外側から上記第2ステントの内側に至るまでの間に介在する筒状の介在膜と、
を含むカバードステントにあって、
上記介在膜は、自身の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部を、筒状の周方向に巻き付けるカバードステント。
【請求項2】
上記ひだ部が、単数または複数形成される請求項1に記載のカバードステント。
【請求項3】
上記介在膜は、上記第1ステントおよび上記第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばさないような特性を有する非伸縮性材料で形成される請求項1または2に記載のカバードステント。
【請求項4】
上記介在膜は、顆粒またはフィラーを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバードステント。
【請求項5】
上記介在膜は、熱可塑性を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のカバードステント。
【請求項6】
上記介在膜は、上記第1ステントおよび上記第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばす特性を有する伸縮性材料で形成される請求項1または2に記載のカバードステント。
【請求項7】
上記介在膜は、生体適合性を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のカバードステント
【請求項8】
上記介在膜は、薬剤放出機能を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のカバードステント。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のカバードステントと、
上記カバードステントを装着するバルーンカテーテルと、
を含むステントデリバリーカテーテル。
【請求項10】
上記カバードステントの装着される部分は、上記バルーンカテーテルにおけるバルーンである請求項9に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項11】
筒状の第1ステントと、
上記第1ステントの外周囲を囲む筒状の第2ステントと、
上記第1ステントの外側から上記第2ステントの内側に至るまでの間に介在する筒状の介在膜と、
を含むカバードステントの製造方法にあって、
上記第1ステントに、上記介在膜が被せられる被覆工程と、
上記介在膜の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部が、筒状の周方向に巻き付けられる巻付工程と、
を含むカバードステントの製造方法。
【請求項12】
上記巻付工程は、上記介在膜のガラス転移温度以下の雰囲気中で、上記介在膜に対して熱を加える請求項11に記載のカバードステントの製造方法。
【請求項1】
筒状で編目構造を有する第1ステントと、
上記第1ステントの外周囲を囲む筒状で編目構造の第2ステントと、
上記第1ステントの外側から上記第2ステントの内側に至るまでの間に介在する筒状の介在膜と、
を含むカバードステントにあって、
上記介在膜は、自身の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部を、筒状の周方向に巻き付けるカバードステント。
【請求項2】
上記ひだ部が、単数または複数形成される請求項1に記載のカバードステント。
【請求項3】
上記介在膜は、上記第1ステントおよび上記第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばさないような特性を有する非伸縮性材料で形成される請求項1または2に記載のカバードステント。
【請求項4】
上記介在膜は、顆粒またはフィラーを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバードステント。
【請求項5】
上記介在膜は、熱可塑性を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のカバードステント。
【請求項6】
上記介在膜は、上記第1ステントおよび上記第2ステントの半径方向への拡張後において、自身の周長を、拡張前よりも伸ばす特性を有する伸縮性材料で形成される請求項1または2に記載のカバードステント。
【請求項7】
上記介在膜は、生体適合性を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のカバードステント
【請求項8】
上記介在膜は、薬剤放出機能を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のカバードステント。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のカバードステントと、
上記カバードステントを装着するバルーンカテーテルと、
を含むステントデリバリーカテーテル。
【請求項10】
上記カバードステントの装着される部分は、上記バルーンカテーテルにおけるバルーンである請求項9に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項11】
筒状の第1ステントと、
上記第1ステントの外周囲を囲む筒状の第2ステントと、
上記第1ステントの外側から上記第2ステントの内側に至るまでの間に介在する筒状の介在膜と、
を含むカバードステントの製造方法にあって、
上記第1ステントに、上記介在膜が被せられる被覆工程と、
上記介在膜の膜面同士を近づけさせることで生じるひだ部が、筒状の周方向に巻き付けられる巻付工程と、
を含むカバードステントの製造方法。
【請求項12】
上記巻付工程は、上記介在膜のガラス転移温度以下の雰囲気中で、上記介在膜に対して熱を加える請求項11に記載のカバードステントの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−200570(P2012−200570A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71013(P2011−71013)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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