説明

カプセル充填装置および方法

【課題】カプセルへの充填後における空気の噴出を抑制することができ、これによって、バンドシールを形成する際の欠陥を防止することができるカプセル充填装置を提供する。
【解決手段】キャップ及びボディから構成されるカプセル内に充填物を充填する装置であって、ボディ内に充填物を供給する充填物供給手段22と、充填物が供給されたボディにキャップを結合するカプセル結合手段25と、ボディとキャップとが結合されたカプセルを排出する排出手段40とを備え、カプセル結合手段25は、ボディへのキャップの結合前に、キャップ内を雰囲気温度よりも高温化するキャップ内高温化手段2500を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末、顆粒、液体等をカプセル内に充填するカプセル充填装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカプセル充填装置として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。このカプセル充填装置は、ターンテーブルの特定箇所において、キャップとボディとが仮結合されたカプセルが保持され、ターンテーブルの回転に伴い、キャップとボディとの分離、ボディへの充填物の充填、キャップとボディとの結合が順次行われるように構成されている。
【0003】
カプセル充填装置により充填物が充填されたカプセルは、例えば特許文献2に開示されたカプセル封緘装置によって、キャップとボディとの結合部にシール液の塗布及び乾燥が行われて、バンドシールが形成される。これによって、カプセルの流通過程における不正開封の防止や、充填物の変質、漏れ等の防止が図られている。
【特許文献1】特開平2−180265号公報
【特許文献2】特開昭61−68050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のカプセル充填装置は、キャップとボディとの結合によってカプセルの内圧が大気圧よりも高い状態となるため、結合後のしばらくの間は、カプセル内の空気がキャップとボディとの隙間から徐々に漏出していた。このため、カプセル封緘装置によってキャップとボディとの結合部にバンドシールを形成する際に、空気の漏出が原因となってバンドシールにバブル(気泡)や孔あきが生じる場合があり、歩留まりや品質低下の原因になっていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、カプセルへの充填後における空気の噴出を抑制して、バンドシールを形成する際の欠陥を防止することができるカプセル充填装置および方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、キャップ及びボディから構成されるカプセル内に充填物を充填する装置であって、ボディ内に充填物を供給する充填物供給手段と、充填物が供給されたボディにキャップを結合するカプセル結合手段と、ボディとキャップとが結合されたカプセルを排出する排出手段とを備え、前記カプセル結合手段は、ボディへのキャップの結合前に、キャップ内を雰囲気温度よりも高温化するキャップ内高温化手段を備えるカプセル充填装置により達成される。
【0007】
このカプセル充填装置において、前記キャップ内高温化手段は、キャップ内に向けて温風を噴射するように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記カプセル充填装置は、前記排出手段により排出されたカプセルの結合部にシール液を塗布することによりバンドシールを形成するカプセル封緘手段を更に備えることができる。
【0009】
また、本発明の前記目的は、キャップ及びボディから構成されるカプセル内に充填物を充填する方法であって、ボディ内に充填物を供給する充填物供給工程と、充填物が供給されたボディにキャップを結合するカプセル結合工程とを備え、前記カプセル結合工程は、ボディへのキャップの結合前に、キャップ内を雰囲気温度よりも高温化する工程を備えるカプセル充填方法により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カプセルへの充填後における空気の噴出を抑制することができ、これによって、バンドシールを形成する際の欠陥を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るカプセル充填装置の概略構成を示す側面図であり、図2及び図3は、その正面図及び平面図である。
【0012】
カプセル充填装置1は、基台10上に充填機構20、カプセル方向規制機構30及び排出機構40が設けられており、これら各機構の作動は、操作盤50によって制御される。
【0013】
カプセル方向規制機構30は、図4に縦断面図で示すように、ホッパー31と、ホッパー31の下部に外周面が摺動するように配置された供給ドラム32と、供給ドラム32の下方に外周面が近接するように配置された規制ローラ33と、規制ローラ33の下方に外周面が近接するように配置された反転ドラム34と、反転ドラム34の下方に近接配置されたカプセル移送機構35とを備えている。キャップとボディとが仮結合された空カプセルがホッパー31に投入されると、空カプセルは、ブラシロール36によって供給ドラム32に供給され、規制ローラ33及び反転ドラム34に順次受け渡される過程で向きが全て揃えられ、正立姿勢(キャップが上向きの姿勢)に規制された状態で、カプセル移送機構35の水平移動によりカプセル充填機構20に移送される。カプセルの向きを規制するための具体的な機構については既に公知であるので(例えば、特開昭61−211213号公報など)、本明細書においては詳細な説明を省略する。
【0014】
充填機構20は、図3に示すように、水平方向に回転可能な円盤状のターンテーブル21を備えており、更に、このターンテーブル21の外周に沿って順次配置された分離不良カプセル回収機構29、充填物供給機構22、振動付与機構23、充填物定量機構24、カプセル結合機構25および清掃機構26を備えている。
【0015】
ターンテーブル21は、図4に示すように、垂直軸211により回転自在に支持されており、上下に間隔をあけて対向配置された円板状のキャップ回転部材212及びボディ回転部材215を備えている。キャップ回転部材212には、キャップを保持可能なキャップ収容ポケット213が多数形成されており、ボディ回転部材215には、各キャップ収容ポケット213に対応する位置に形成されたボディ収容ポケット216が多数形成されている。本実施形態において、キャップ収容ポケット213及びボディ収容ポケット216は、例えばマトリクス状に配置された15個を1つの群として、12群(すなわち、計180個)が周方向に等間隔に配置されている。ターンテーブル21は、一群のキャップ収容ポケット213及びボディ収容ポケット216が、後に詳述する各機構に対して所定位置で順次停止するように、間欠回転駆動される。
【0016】
また、充填機構20は、カプセル方向規制機構30の近傍において、キャップ回転部材212とボディ回転部材215との間に介在されたカプセルガイド部材27と、カプセルガイド部材27の下方に配置されたカプセル分離用真空シュー28とを備えている。図5(a)に示すように、カプセルガイド部材27は、一群の各キャップ収容ポケット213及びボディ収容ポケット216に対応する位置にそれぞれ形成された大径ポケット孔272を有するカプセルガイド基盤271と、大径ポケット孔272に下端部が挿入される案内筒273が固定された可動盤274とを備えており、可動盤274は、昇降可能なアーム275の先端に取り付けられている。また、カプセル分離用真空シュー28は、ボディ収容ポケット216の下端開口と連通しており、キャップ収容ポケット213の段差部にキャップが保持された仮結合状態の空カプセルのボディを吸引して、キャップとボディとを分離する。
【0017】
分離不良カプセル回収機構29は、カプセル方向規制機構30に対してターンテーブル21の回転方向(図の矢示方向)下流側に配置されており、キャップ回転部材212とボディ回転部材215との間に介在されて上方に押し上げ可能な棒状のプッシャ71と、キャップ回転部材212の上方に昇降自在に支持された捕集容器72とを備えている。捕集容器72の底部には、分離不良カプセルを挟み込んで保持するための楕円形の保持孔73が、一群の各キャップ収容ポケット213に対応して複数形成されている。
【0018】
図7は、図3に示すカプセル充填装置の平面図において、キャップ回転部材212を含む上部側を除去した状態を示す図である。充填物供給機構22は、分離不良カプセル回収機構29に対して、ターンテーブル21の回転方向下流側に配置されており、図7及び図8に示すように、充填物用ホッパー221と、充填物用ホッパー221に投入された充填物をボディ回転部材215上に供給してボディ収容ポケット216へ落下させる供給ダンパー222とを備えている。充填物用ホッパー221は、投入された充填物を回転により攪拌して流動させる攪拌羽根223を備えている。本実施形態の充填物供給機構22は、充填物が粉末状、顆粒状、液状などいずれの状態のものでも使用可能であるが、充填物の性状等に応じて構成を適宜変更可能である。例えば、充填物が液状である場合には、充填物供給手段としての液体ディスペンサをキャップ回転部材212とボディ回転部材215との間に介在させ、ディスペンサの吐出口と各ボディ収容ポケット216との位置合わせを行って、液状の充填物を供給するように構成することができる。
【0019】
振動付与機構23は、充填物供給機構22に対してターンテーブル21の回転方向下流側に配置されており、図7及び図9に示すように、ボディ回転部材215上に供給された充填物に振動を付与してボディ収容ポケット216への落下を促すための振動板231を備えている。また、ボディ回転部材215上において充填物が滞留する領域には、ボディ収容ポケット216を挟んで内側及び外側にそれぞれ側壁217,218が設けられている。
【0020】
充填物定量機構24は、振動付与機構23に対してターンテーブル21の回転方向下流側に配置されており、図7に示すように、充填物圧縮機構241と、計量機構246とを備えている。充填物圧縮機構241は、図7及び図10(a)に示すように、ボディ回転部材215の上方側において一群のボディ収容ポケット216に対向するように固定配置された抑え板242と、ボディ収容ポケット216に収容されたカプセルボディをスプリング244の弾性力により押し上げるボディプッシャ243とを備えている。また、計量機構246は、充填物圧縮機構241に対してターンテーブル21の回転方向下流側に配置され、エアシリンダ248の作用によりボディ回転部材215の上面を径方向に摺動する掻きとり板247を備えており、カプセルボディにおける余剰の充填物を掻きとる。
【0021】
カプセル結合機構25は、充填物定量機構24に対してターンテーブル21の回転方向下流側に配置されており、キャップ内高温化機構2500と、連結機構250とを備えている。
【0022】
キャップ内高温化機構2500は、図7及び図11に示すように、キャップ回転部材212とボディ回転部材215との間に介在され、上部開口が一群のキャップ収容ポケット213に対向するように配置された温風ケーシング2501を備えている。温風ケーシング2501は、温風を内部に導入するための導入口2502と、各キャップ収容ポケット213に対応して形成された複数の噴射口2503を有する整流板2504とを備えており、導入口2502は、温風ヒータなどの温風発生装置(図示せず)に接続される。噴射口2503は、ターンテーブル21の停止状態で、キャップ収容ポケット213に収容された各キャップの内部に向けて温風を噴射するように配置されている。また、キャップ内高温化機構2500は、温風ケーシング2501内の噴射口2503の近傍に測温部が配置された測温器2505を備えている。
【0023】
連結機構250は、キャップ内高温化機構2500に対してターンテーブル21の回転方向下流側に配置されており、図12に示すように、一群のキャップ収容ポケット213の上方に近接配置されたキャップ抑え板251と、ボディ回転部材215の下方に配置されて一群のボディ収容ポケット216に収容されたボディを押し上げるプッシャ255と、キャップ回転部材212とボディ回転部材215との間に昇降自在に介在された搬送部材257とを備えており、搬送部材257には、プッシャ255により押し上げられたボディをそれぞれキャップ収容ポケット213に案内する複数のガイド孔256が形成されている。
【0024】
清掃機構26は、カプセル結合機構25に対して、後述する排出機構40を挟んでターンテーブル21の回転方向下流側に配置されており、キャップ収容ポケット213及びボディ収容ポケット216を含むキャップ回転部材212及びボディ回転部材215への残留物や付着物を吸引する吸引装置(図示せず)を備えている。
【0025】
排出機構40は、図13に示すように、キャップ回転部材212とボディ回転部材215との間に介在されてキャップ収容ポケット213に収容された充填済みのカプセルを押し上げるプッシャ41と、キャップ回転部材212の上面を摺動可能に配置されたスクレーパ42と、スクレーパ42を径方向に駆動するエアシリンダ44と、スクレーパ42により径方向外方に押し出されたカプセルを外部に排出するシュート43とを備えている。
【0026】
次に、上記構成を備えるカプセル充填装置1の作動を説明する。図7において、ターンテーブル21は、キャップ収容ポケット213及びボディ収容ポケット216の各群が、カプセル方向規制機構30、分離不良カプセル回収機構29、充填物供給機構22、振動付与機構23、充填物定量機構24、カプセル結合機構25、排出機構40および清掃機構26において順次停止するように、間欠回転駆動され、カプセル内に充填物を充填するための工程が、ターンテーブル21の停止中に順次行われる。
【0027】
まず、図4及び図7を参照して、カプセル方向規制機構30において、キャップとボディとが仮結合された多数の空カプセルがホッパー31から投入されると、カプセル方向規制機構30は、キャップが上向きとなるように各キャップを正立姿勢で起立させ、カプセル移送機構35により整列状態でターンテーブル21の上方に搬送する。空カプセルは、カプセルガイド部材27に対応した位置で、停止中の一群のキャップ収容ポケット213に収容される。
【0028】
カプセルガイド部材27においては、図5(a)に示すように、アーム275の上昇により、可動盤274及びカプセルガイド基盤271がそれぞれキャップ回転部材212及びボディ回転部材215に接触し、キャップ収容ポケット213とボディ収容ポケット216との間に案内筒273及び大径ポケット孔272による通路が形成される。この通路内は、カプセル分離用真空シュー28によって吸引される。これにより、キャップ収容ポケット213に保持されていた空キャップは、キャップCが保持されたまま、ボディBが下方に搬送されてボディ収容ポケット216に収容される。こうして、仮結合されていたキャップCとボディBとの分離工程が行われる。この後、アーム275の降下により、可動盤274とキャップ回転部材212との間およびカプセルガイド基盤271とボディ回転部材215との間に隙間が形成され、図5(b)に示すようにターンテーブル21が回転可能な状態になる。
【0029】
キャップ収容ポケット213及びボディ収容ポケット216にそれぞれ収容されたキャップC及びボディBは、ターンテーブル21の間欠回転により、分離不良カプセル回収機構29に対応した位置で停止する。分離不良カプセル回収機構29は、図6(a)に示すように、各キャップ収容ポケット213の下方からプッシャ71を所定位置まで上昇させる。これにより、図6(b)に示すように、正常な状態のキャップはそのままキャップ収容ポケット213に保持される一方、分離不良のカプセルbや、姿勢(方向規制)不良のカプセルcについては、プッシャ71の作動により上方に押し上げられて、捕集容器72の保持孔73に保持される。こうして、分離不良カプセルの除去工程が完了する。
【0030】
分離不良及び姿勢(方向規制)不良のチェックが終了したキャップC及びボディBは、ターンテーブル21の間欠回転により、充填物供給機構22に対応した位置で停止する。充填物供給機構22においては、図7及び図8に示すように、充填物用ホッパー221に投入された充填物がボディ回転部材215上に供給され、ボディ収容ポケット216に落下した充填物がボディ内に収容される。ボディ回転部材215上に残留する充填物は、その後、振動付与機構23における振動板231の振動により、ボディ収容ポケット216への落下が促される。こうして、ボディへの充填物の充填工程が行われる。
【0031】
充填物が充填されたボディBは、ターンテーブル21の間欠回転により、キャップCと共に充填物定量機構24に対応した位置で停止する。充填物定量機構24の充填物圧縮機構241においては、図10(a)及び(b)に示すように、ボディ収容ポケット216の上方が抑え板242により覆われた状態で、ボディプッシャ243がボディ収容ポケット216内のボディBを押し上げることにより、図10(c)に示すように、ボディB内の充填物が圧縮される。充填物に作用する圧縮力は、図10(a)におけるスプリング244の弾性力を調整するなどして適宜設定可能であり、ボディBへの充填量を制御することができる。
【0032】
収容された充填物が圧縮されたボディBは、計量機構246において一定量に計量される。すなわち、ボディプッシャ243によりボディBがボディ収容ポケット216から押し上げられた状態で、図7に示すように、エアシリンダ248によって掻きとり板247が径方向内方に摺動することにより、ボディにおける余剰の充填物が掻きとられる。こうして、ボディB内の充填物の定量工程が行われる。
【0033】
充填物が定量化されたボディBは、ターンテーブル21の間欠回転により、キャップCと共に、カプセル結合機構25のキャップ内高温化機構2500に対応した位置で停止する。図11に示すキャップ内高温化機構2500においては、導入口2502から導入された温風が噴射口2503を介して上方に噴射され、キャップC内の空気が温風に置換されることにより、キャップC内が雰囲気温度よりも高温化される。本実施形態においては、導入口2502から導入する温風を空気としているが、加熱された不活性ガス(例えば、窒素)などを導入口2502から導入して、キャップC内に供給するようにしてもよい。
【0034】
内部が高温化されたキャップCは、ターンテーブル21の間欠回転により、ボディBと共に連結機構250に対応した位置で停止する。図12に示す連結機構250においては、一群のボディ収容ポケット216に収容されたボディBの上面に搬送部材257が近接すると共に、一群のキャップ収容ポケット213に収容されたキャップCの上部がキャップ抑え板251に当接しており、ボディBがプッシャ255により押し上げられて、搬送部材257のガイド孔256に収容される。搬送部材257は、ボディBを保持したままキャップ回転部材212の下面に近接する位置まで上昇する。この状態で、ボディBがプッシャ255により更に押し上げられると、ボディBがキャップCと完全に結合され、カプセルの結合工程が完了する。
【0035】
ボディBとキャップCとが結合された充填済みのカプセルは、ターンテーブル21の間欠回転により、排出機構40に対応した位置で停止する。図13に示すように、排出機構40においては、充填済みカプセルがプッシャ41により押し上げられ、スクレーパ42の作動により水平方向に搬送されて、シュート43から外部に排出される。こうして、充填済みカプセルの排出工程が行われる。
【0036】
カプセルが排出された後の一群のキャップ収容ポケット213及びボディ収容ポケット216は、ターンテーブル21の間欠回転により、清掃機構26に対応した位置で停止し、キャップ回転部材212及びボディ回転部材215への残留物や付着物などが吸引除去される。こうして、ターンテーブル21の次の停止位置であるカプセルガイド部材27の近傍位置において、一群の空カプセルを再び受け入れ可能な状態になる。
【0037】
本実施形態のカプセル充填装置によれば、充填物供給機構22から供給された充填物が充填されたボディにキャップを結合する際に、まずキャップ内高温化機構2500においてキャップ内を高温化してから、連結機構250によりボディとキャップとを結合するように構成されているので、結合後のカプセル内は雰囲気温度よりも高温になる。したがって、結合時にカプセルの内圧が高められていても、カプセルが冷却されるに伴い内圧が減圧されるため、キャップ及びボディ間の結合部における空気の漏出を抑制することができる。この結果、後工程でカプセルにバンドシールを形成しても、バンドシールにバブルや穴あきが生じるのを防止することができる。
【0038】
充填済みカプセルにバンドシールを形成するためのカプセル封緘装置の一例を、図14に示す。カプセル封緘装置1000は、前記カプセル方向規制機構30と同様に構成されてホッパー1001に投入されたカプセルの方向を揃える方向規制装置1100と、方向が揃えられたカプセルを水平方向に搬送する搬送装置1200と、搬送装置1200によるカプセルの搬送途中でカプセルにバンドシールを施すシール装置1300とを備えている。シール装置1300は、シール液が貯留されたシール槽1301と、シール槽1301のシール液に下部が浸漬されたシールローラ1302と、シールローラ1302をカプセルの搬送方向と反対方向に回転させるモータ1303とを備えており、搬送中のカプセルにおける結合部の全周に、シールローラ1302の回転によりシール液が塗布され、その後、塗布されたシール液が乾燥してバンドシールが形成される。カプセル封緘装置1000の構成の詳細については、例えば特開昭61−68050号公報などに開示されている。
【0039】
キャップ内高温化機構2500によるキャップ内の高温化は、雰囲気温度よりもキャップ内が高温になっている限り上記効果を奏する。但し、温度差が小さすぎると十分な効果が得にくい一方、温度差が大きすぎるとカプセルや充填物の熱変質を生じるおそれがあることから、キャップ内高温化機構2500における測温器2505の検出温度に基づいて、キャップ内の温度を適宜設定することが好ましい。例えば、カプセルがゼラチンからなる場合には、カプセル内に供給される温風温度を80℃以下にすることが好ましく、カプセルがHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)からなる場合には、温風温度を110℃以下にすることが好ましい。具体的な数値の一例を挙げると、雰囲気温度が常温(15〜25℃)の場合における雰囲気温度とキャップに供給する温風温度との差は、1〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、図11に示すように、キャップ内高温化機構2500を、キャップ内に温風を供給して置換する構成にすることで、キャップ内の迅速な高温化を図っているが、例えばヒータの近傍や高温のケース内をキャップが通過するように構成することで、キャップ内の空気を加熱して高温化するようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、図13に示すように、排出機構40を、充填済みカプセルがスクレーパ42により即座に排出される構成にしているが、スクレーパ42を設ける代わりに、図15に示すようにクーリングパイプ(冷却機構)45を設け、プッシャ41により押し上げられた充填済みカプセルが、クーリングパイプ45を経て、シュート43から排出されるように構成してもよい。
【0042】
キャップ内高温化機構2500により高温化された充填済みカプセルは、クーリングパイプ45内で搬送される過程で雰囲気温度付近まで自然冷却される。このような構成により、シュート43から排出されるカプセルは、冷却により内圧が十分減圧された状態になるので、バンドシールのバブルや穴あきの問題をより確実に防止することができる。クーリングパイプ45内には、冷風を導入してカプセルを強制冷却するように構成してもよい。
【0043】
また、本実施形態のカプセル充填装置において、例えば図14に示すようなカプセル封緘装置1000を一体的に設けることで、カプセルへの充填物の充填とバンドシールの形成とが連続的に行われるように構成してもよい。このようなカプセル充填装置は、例えば、本実施形態のカプセル充填装置1における排出機構40の排出先に、図14に示すカプセル封緘装置1000における方向規制装置1100のホッパー1001を配置することで構成することができる。この場合、排出機構40には、上述したクーリングパイプ45を設けておくことが好ましい。
【0044】
また、本実施形態のカプセル充填装置1におけるターンテーブル21のボディ回転部材215は、例えば図16及び図17に示す構成にすることも可能である。図16は、ターンテーブルのキャップ回転部材212を取り除いた状態でボディ回転部材2151を示す平面図であり、図17はその要部断面図である。図16及び図17において、本実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付している。
【0045】
ボディ回転部材2151は、各群のボディ収容ポケット216に対応して設けられた複数のボディセグメント2152を備えており、各ボディセグメント2152は、放射状に延びるアーム2153の先端に取り付けられている。アーム2153は、垂直軸211の側壁における透孔に設けられたブッシュ2154を貫通して、基端側が装置の不動部分に設けられた確動カム2155に係合するカムフォロア2156に連結されており、ボディ回転部材2151の回転に伴い、垂直軸211の側壁から伸縮可能に構成されている。
【0046】
この構成によれば、アーム2153の伸長によりボディセグメント2152が最も径方向外方に位置する状態、すなわち、ボディ収容ポケット216がキャップ回転部材212の外方に露出する状態で、ボディ収容ポケット216に収容されたボディに充填物を供給することができるので、ボディへの充填物の供給を容易且つ確実に行うことができる。図17は、液状物ディスペンサ2157をボディ収容ポケット216の上方に配置することで、ボディ収容ポケット216に収容されたボディに液状の充填物を供給する場合を示すものであるが、充填物が顆粒や粉状である場合にも適用可能である。
【0047】
(実施例)
以下、本発明の実施例及び比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
本実施形態のカプセル充填装置1を用いて充填済みカプセルを製造する際に、キャップ内に温風を供給する場合と供給しない場合とで、バンドシールに欠陥が生じる程度を調べた。
【0049】
充填物は、低粘度油であるMCT(製品名:花王ココナードMT、粘度:30mPa・s(23℃))を使用し、カプセルは、ゼラチン製の透明カプセルでサイズ1のもの(シオノギクオリカプス株式会社製Posilok Lot# C453F9)を使用した。カプセル充填装置1はクリーンルーム内に設置し、雰囲気温度を22〜24℃、湿度を39〜41%RHにそれぞれ維持した。また、キャップ内に供給する温風の温度は、測温器2505の検出温度で62〜72℃に設定した。バンドシールを形成後のカプセルをシート上に一晩放置し、シートに付着した充填物の漏れに起因するシミの有無から、バンドシールに生じたバブルや穴あきなどの欠陥の有無を判定した。
【0050】
この結果、キャップ内に温風を供給した場合には、1221個の充填済みカプセルに対してバンドシールに欠陥が生じたカプセルは0個であった。一方、キャップ内に温風を供給しなかった場合には、1132個の充填済みカプセルに対してバンドシールに欠陥が生じたカプセルは226個であり、約20%のカプセルにバンドシールの欠陥が見られた。
【0051】
本実施例における雰囲気温度と温風温度との温度差は、約44℃であり、この場合に、カプセル内の温度が雰囲気温度まで低下した場合の減圧を算出すると、約14.7kPaとなる。本実施例においては、このような減圧効果によって、バンドシールにおけるバブルなどの発生を確実に防止することが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るカプセル充填装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】前記カプセル充填装置の正面図である。
【図3】前記カプセル充填装置の平面図である。
【図4】前記カプセル充填装置の縦断面図である。
【図5】前記カプセル充填装置におけるカプセルガイド部材の断面図である。
【図6】前記カプセル充填装置における分離不良カプセル回収機構の断面図である。
【図7】図3に示すカプセル充填装置の平面図において、キャップ回転部材を含む上部側を除去した状態を示す図である。
【図8】前記カプセル充填装置における充填物供給機構の断面図である。
【図9】前記カプセル充填装置における振動付与機構の断面図である。
【図10】前記カプセル充填装置の充填物定量機構における充填物圧縮機構の断面図である。
【図11】前記カプセル充填装置のカプセル結合機構におけるキャップ内高温化機構の断面図である。
【図12】前記カプセル充填装置のカプセル結合機構における連結機構の断面図である。
【図13】前記カプセル充填装置における排出機構の断面図である。
【図14】前記カプセル充填装置の後工程で用いられるカプセル封緘装置の一例を示す概略構成図である。
【図15】前記カプセル充填装置の変形例を示す概略側面図である。
【図16】前記カプセル充填装置の他の変形例を、キャップ回転部材を取り除いた状態で示す平面図である。
【図17】図16に示すカプセル充填装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 カプセル充填装置
20 充填機構
21 ターンテーブル
212 キャップ回転部材
213 キャップ収容ポケット
215 ボディ回転部材
216 ボディ収容ポケット
22 充填物供給機構
23 振動付与機構
24 充填物定量機構
25 カプセル結合機構
2500 キャップ内高温化機構
2501 温風ケーシング
2502 導入口
2503 噴射口
2504 整流板
2505 測温器
250 連結機構
30 カプセル方向規制機構
40 排出機構
45 クーリングパイプ
1000 カプセル封緘装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ及びボディから構成されるカプセル内に充填物を充填する装置であって、
ボディ内に充填物を供給する充填物供給手段と、
充填物が供給されたボディにキャップを結合するカプセル結合手段と、
ボディとキャップとが結合されたカプセルを排出する排出手段とを備え、
前記カプセル結合手段は、ボディへのキャップの結合前に、キャップ内を雰囲気温度よりも高温化するキャップ内高温化手段を備えるカプセル充填装置。
【請求項2】
前記キャップ内高温化手段は、キャップ内に向けて温風を噴射するように構成されている請求項1に記載のカプセル充填装置。
【請求項3】
前記排出手段により排出されたカプセルの結合部にシール液を塗布することによりバンドシールを形成するカプセル封緘手段を更に備える請求項1又は2に記載のカプセル充填装置。
【請求項4】
キャップ及びボディから構成されるカプセル内に充填物を充填する方法であって、
ボディ内に充填物を供給する充填物供給工程と、
充填物が供給されたボディにキャップを結合するカプセル結合工程とを備え、
前記カプセル結合工程は、ボディへのキャップの結合前に、キャップ内を雰囲気温度よりも高温化する工程を備えるカプセル充填方法。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−144014(P2007−144014A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345107(P2005−345107)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000228110)クオリカプス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】