説明

カプセル型医療装置

【課題】 生体の管腔内を推進力により良好に移動できると共に、簡単な構成で、推進力を発生する装置の駆動源の駆動力を利用して、観察窓に付着物が付着することを防止して、観察窓の清潔性を保持することで撮像装置による良好な観察画像を得られるカプセル型医療装置の実現。
【解決手段】 カプセル型医療装置1は、装置本体2に内蔵され、観察窓11から管腔内を撮像する撮像手段24と、可動自在に設けられて、観察窓11をカバーする被覆面18に開口部8aが形成された被覆手段8と、駆動することにより被検体内で推進力を発生する推進力発生手段6と、被覆手段8、及び推進力発生手段6を同時に共用駆動する駆動手段31と、撮像手段24が被写体像を取り込むタイミングと被覆面18の開口部8aと観察窓11とが一致するタイミングとを同期させて被覆手段8を駆動するように駆動手段31を制御する制御手段25と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に嚥下され、撮像手段によって生体管腔内を観察するカプセル型医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、医療装置である内視鏡装置は、撮像手段である撮像装置を備えており、患者の体腔内へ導入されて、撮像装置によって撮影された観察像により、体内患部の各種検査、各種処置などを行うためのものである。
【0003】
近年、このような内視鏡装置には、生体内の管腔である、食道、胃、大腸、十二指腸などの消化臓器内を観察するために口腔から導入するカプセル型内視鏡装置が提案されている。このカプセル型内視鏡装置は、従来から臓器の蠕動運動のみで体内管腔を移動する構成に対して、近年おいて、推進力を発生する装置を設けて、体内管腔をスムーズに移動することができる種々の提案されている。
【0004】
このような推進力を発生させる技術において、例えば、特許文献1には、体内の流体を給排出して管腔内で推進力を発生するロータユニットが内蔵されたカプセル型内視鏡装置が開示されている。また、例えば、特許文献2には、回転手段により回転駆動して管腔内で推進力を発生させる、外表面に螺旋状突が形成された起螺旋回転推進部を有したカプセル型医療装置が開示されている。
【0005】
ところで、医療用の内視鏡装置は、カプセル型内視鏡装置を問わず、体内の粘膜、汚物などの汚れが撮像装置の観察窓に付着したり、多湿な体内での使用環境により蒸気が撮像装置の観察窓に付着して曇りが生じたりする。そのため、内視鏡装置は、観察窓の付着物により視界が悪くなってクリアな撮影画像が取得できない場合がある。
【0006】
例えば、特許文献3には、対物レンズの外表面の汚れを拭き取るワイパが設けられたイメージスコープが開示されている。
さらに、例えば、特許文献4には、観察窓とチャンネルの開口部とを先端部に露呈させた内視鏡を挿通したカテーテル本体を備えた内視鏡用カテーテル装置が開示されている。
【0007】
特許文献4に開示されるカテーテル本体の先端部に少なくとも内視鏡の先端部のチャンネルの開口部などの一部を遮蔽する遮蔽部材を形成する一方、内視鏡とカテーテル本体との相対回転を抑止する抑止手段としてのロック機構も備えており、必要に応じて、チャンネルの開口部に開口、閉塞を行なえる技術が開示されている。また、内視鏡用カテーテル装置は、送気送水ノズルを排除して、遮蔽部材の裏面側にバフなどの拭き取り部材が設けられ、この拭き取り部材によって、内視鏡の観察窓、及び照明窓に付着した汚物などの除去が行なえる構成となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1、及び特許文献2のカプセル型の医療装置は、特許文献3、及び特許文献4に記載されるような撮像装置の視界を良好にするために観察窓に付着する汚れなどを除去する構成を有していない。そのため、従来のカプセル型医療装置は、汚れなどにより視界が悪くなってしまうと、その後にクリアな撮影画像を取得できなくなるという問題がある。また、カプセル型の内視鏡装置に特許文献3、又は特許文献4に開示される技術を転用することも考えられる。
【0009】
しかしながら、カプセル型の医療装置は、患者が嚥下できる大きさに制約が生じるため、本体スペースに複雑な構造を組み込むことが困難である。さらに、カプセル型の医療装置は、体内に導入されると、手元操作が行なえない。そのため、本体に内蔵されるバッテリなどの電源により配設された駆動構成が全て給電される。バッテリは、容量を大きくすると大型となり、大きさに制約のある本体スペース内に収まらないという問題がある。
【0010】
また、特許文献3の医療装置では、ワイパにより、撮像装置の観察窓に付着した付着物を除去しているとき、撮像装置により撮影した観察画像に移動するワイパが映り込んでしまう。そのため、従来では、撮像装置の観察窓の付着物を除去が終了するまで患部への処置を中断したり、観察画像に移動するワイパが映り込んでいる状態のまま視界が悪い状態で治療したりしなければならないという問題がある。
【0011】
さらに、特許文献4の内視鏡用カテーテル装置においても、遮蔽部材の裏面側に設けられた拭き取り部材によって、内視鏡の観察窓などの汚れを拭き取り除去するときに、観察窓が遮蔽部材に覆われるため、撮像装置による被検体の撮影が行なえなくなってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは生体の管腔内を推進力により良好に移動できると共に、簡単な構成で、推進力を発生する装置の駆動源の駆動力を利用して、観察窓に付着物が付着することを防止して、観察窓の清潔性を保持することで撮像装置による良好な観察画像を得られるカプセル型医療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明のカプセル型医療装置は、被検体の管腔内へ導入されるカプセル型医療装置において、装置本体に内蔵され、観察窓から前記管腔内を撮像する撮像手段と、前記装置本体に可動自在に設けられて、前記観察窓をカバーする被覆面に開口部が形成された被覆手段と、前記装置本体に配設され、駆動することにより前記被検体内で推進力を発生する推進力発生手段と、前記被覆手段、及び前記推進力発生手段を同時に共用駆動する駆動手段と、前記撮像手段が被写体像を取り込むタイミングと前記開口部と前記観察窓とが一致するタイミングとを同期させて前記被覆手段を駆動するように前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生体の管腔内を推進力により良好に移動できると共に、簡単な構成で、推進力を発生する装置の駆動源の駆動力を利用して、観察窓に付着物が付着することを防止して、観察窓の清潔性を保持することで撮像装置による良好な観察画像を得られるカプセル型医療装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るカプセル型医療装置の構成を示す斜視図
【図2】同、カプセル型医療装置の構成を示す断面図
【図3】同、図2のIII−III断面図
【図4】同、図2のIV矢視図
【図5】第2実施形態に係るカプセル型医療装置の構成を示す斜視図
【図6】同、カプセル型医療装置の構成を示す断面図
【図7】同、図6のVII−VII断面図
【図8】同、図6のVIII矢視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。尚、以下の説明において、例えば、被検者が口腔から嚥下して、体内の管腔内を撮影する撮像手段を備えたカプセル型医療装置であるカプセル型内視鏡装置を例示する。
(第1の実施の形態)
先ず、本発明のカプセル型医療装置の第1の実施の形態について、図1から図4に基づいて、以下に説明する。
【0017】
図1から図4に示す、本実施の形態のカプセル型医療装置1は、被検者が嚥下して体内の管腔を観察するためのカプセル型内視鏡装置である。
図1に示すように、カプセル型医療装置1は、装置本体であるカプセル本体部2、及び回転防止部3を有し、カプセル本体部2と回転防止部3が軸体4によって連結されている。
【0018】
カプセル本体部2は、先端に開口部5aが形成されたカメラ本体部5と、カメラ本体部5の外周部に回転自在に配設され、外周面に螺旋状突起部7が形成された筒状の推進力発生部6と、カメラ本体部5の内部で回転自在に配設され、先端面が開口部5aによって露出する被覆部を構成する被覆手段の回転被覆部8と、カメラ本体部5の先端部分に配置され、回転被覆部8の先端面に穿設された開口部8a,8bの夫々と一致したときに露出する観察窓11、及び照明窓12と、を有している。
【0019】
図2に示すように、カメラ本体部5には、撮像ユニット20と、照明部を構成する照明手段のLED光源26と、電源部である、ここでは2つのバッテリ27と、撮像ユニット20が光電変換した画像信号を外部に無線伝送する送信機28と、駆動部を構成する駆動手段のモータ31と、が内蔵されている。
【0020】
撮像ユニット20は、レンズホルダ21に保持された複数、ここでは2つの対物レンズ22と、受光部23を備えた、CCD、CMOSなどの撮像部を構成する撮像手段の固体撮像素子24と、この固体撮像素子24が実装された制御部を構成する制御手段の制御基板25と、を有して構成されている。この撮像ユニット20は、撮影光(図中の撮影光軸O)が対物レンズ22により固体撮像素子24の受光部23へ集光される。そして、固体撮像素子24は、撮影光を光電変換して、制御基板25に出力する。
【0021】
制御基板25は、画像信号を送信機28に出力して、送信機28から図示しない外部機器であるカメラコントロールユニット(CCU)へ画像信号を伝送する。尚、撮像ユニット20により撮影された画像は、CCU(不図示)により画像処理されて、図示しない外部モニタに表示される。また、制御基板25は、LED光源26、及びモータ31の駆動も制御する。
【0022】
また、2つのバッテリ27は、撮像ユニット20、LED光源26、及びモータ31を駆動するための電源部を構成する電源手段である。尚、これら2つのバッテリ27は、撮像ユニット20の制御基板25と電源供給の電気ケーブルによって電気的に接続されている。そして、制御基板25には、LED光源26、送信機28、及びモータ31などと個別に接続される電源供給、及び信号の授受のための通信ケーブルが配線されている。
【0023】
尚、撮像ユニット20の最先端の対物レンズ22の表面は、本実施の形態における観察窓11を構成している。そして、本実施の形態の照明窓12は、LED光源26を覆うようにカメラ本体部5の先端面に配設された透明なカバーガラスから構成されている。
【0024】
モータ31は、モータ回転軸に設けられたモータギヤ32がカメラ本体部5に内蔵されている複数の歯車34,35と噛合している。これら歯車(ギヤ)34,35のうちの1つの歯車35は、回転自在となるように、カメラ本体部5の長手軸に平行な歯車軸がベアリング36によって、軸支されている。この歯車35は、カメラ本体部5内に回転自在に配設された回転被覆部8にモータ31の回転駆動力を伝達する。
【0025】
回転被覆部8は、先端側が閉塞して、2つの開口部8a,8bが穿設された一面(図2の先端面となる被覆面18)を有する外形が略円筒形状(コップ形状)をしている。
この回転被覆部8は、カメラ本体部5に形成された略同一形状の空間部に設置され、カメラ本体部5の長手中心軸C回り(以下、長手方向に沿った中心軸C回りという場合もある)に回転自在に配設されている。そして、回転被覆部8は、基端内周部分に内向フランジ17を備え、この内向フランジ17の内周面に歯車35の外周に形成された歯(ギヤ溝)と噛合するギヤ溝8cが形成されている。つまり、回転被覆部8は、基端部分が円筒歯車となっている。
【0026】
また、回転被覆部8は、被覆面18の中央部に基端側に突出する略円柱形状の突起部15を有している。この突起部15は、回転被覆部8がカメラ本体部5に設けられた状態において、カメラ本体部5の先端面中央に形成された凹部16に係合し、カメラ本体部5の長手方向に沿った中心軸C回りに回転する回転被覆部8の回転ブレを防止する。従って、回転被覆部8は、モータ31の駆動力がモータギヤ32に噛合する歯車35の回転を受けて、回転ブレが生じず、スムーズにカメラ本体部5の長手中心軸C回りの所定の方向に回転するようになっている。
【0027】
推進力発生部6は、略円筒形状をしており、カメラ本体部5の外周部に回転自在に配設されている。この推進力発生部6は、上述したように、外周面に螺旋状突起部7が形成されている。
【0028】
また、推進力発生部6の両端部分には、夫々、内面から内周方向へ突出する突起部6bが形成されている。これら突起部6bは、カメラ本体部5の外周部に形成された周溝5bに係合している。さらに、推進力発生部6の中途部分の内周面には、歯車34に噛合するギヤ溝6aが周方向に形成されている。つまり、推進力発生部6は、中途部分が円筒歯車となっている。
【0029】
尚、本実施の形態の歯車34は、図3に示すようにカメラ本体部5内に3つ配設されている。これら歯車34は、夫々が回転自在となるように、カメラ本体部5の長手軸に平行な歯車軸がベアリング33(図2参照)によって軸支されており、モータ31のモータギヤ32に噛合している。つまり、これら歯車34、モータ31のモータギヤ32、及び推進力発生部6のギヤ溝6aは、遊星歯車機構を構成している。
【0030】
従って、推進力発生部6は、モータ31の駆動力がモータギヤ32に噛合する3つの歯車34の回転を受けて、カメラ本体部5の外周部に沿って、所定方向の長手中心軸C回りに回転するようになっている。これにより、推進力発生部6は、外周に形成された螺旋状突起部7が管腔内壁に接触して、カプセル型医療装置1を前進させる方向へ推進力を発生させることができる。つまり、推進力発生部6は、モータ31の出力を推進力へと変換するための構成である。
【0031】
尚、螺旋状突起部7は、遊星歯車機構により回転する推進力発生部6の所定の回転方向に応じて、カプセル型医療装置1を前進させる方向へ推進力を発生させる螺旋形状が設定されている。
【0032】
また、回転防止部3は、推進力発生部6の回転時にカメラ本体部5も一緒に回転することを防止するための部材であって、長手軸に沿って外周部に複数の溝部3aが形成されている。つまり、回転防止部3は、複数の溝部3aが生体内に導入時に管腔内壁と接触したときに生じる摩擦によって、軸体4を介して接続されたカメラ本体部5の長手軸回りの回転を防止する。また、カプセル型医療装置1は、複数の溝部3aが進行方向に沿って形成されているため、進行方向への移動が妨げられないようになっている。
【0033】
以上のように構成された本実施の形態のカプセル型医療装置1は、生体管腔内に嚥下される。このとき、カプセル型医療装置1は、モータ31の駆動力を受けた管腔内を前進する推進力を発生するための推進力発生部6が所定の方向へ回転すると共に、回転被覆部8も同時に回転する。この回転被覆部8は、被覆面18に形成された2つの開口部8a,8bが図4に示すように、カメラ本体部5の長手方向に沿った中心軸C回りで移動するように回転する。
【0034】
詳述すると、回転被覆部8は、観察窓11が被覆面18の開口部8aに重畳して完全に露出する回転位置が開口部8aの開口中心である中心位置Aと撮像ユニット20によって撮影する被写体像の撮影光軸Oとが一致する位置となっている。尚、このとき、照明窓12は、被覆面18の開口部8bに重畳して完全に露出し、開口部8bの開口中心となる中心位置Bが照明窓12の中心と一致する。
【0035】
そして、回転被覆部8は、開口部8aの開口中心である中心位置Aが撮像ユニット20によって撮影する被写体像の撮影光軸Oと一致する位置を通過するように、カメラ本体部5の長手方向に沿った中心軸C回りで移動する。同様に、開口部8bの開口中心である中心位置Bも、撮像ユニット20によって撮影する被写体像の撮影光軸Oと一致する位置を通過するように、カメラ本体部5の長手方向に沿った中心軸C回りで移動する。
【0036】
このように、管腔内に導入されたカプセル型医療装置1は、推進力発生部6の回転によって発生する推進力により前進すると共に、回転被覆部8が常にカメラ本体部5の長手中心軸C回りに回転制御される。このとき、カプセル型医療装置1は、撮像ユニット20のフレームレートのタイミングに対応して、回転被覆部8の開口部8aが撮像ユニット20の観察窓11と一致する位置へ移動するタイミングが合うように、回転被覆部8を回転するモータ31の駆動が制御基板25によって制御される。
【0037】
すなわち、制御基板25は、回転被覆部8の回転時において、カプセル型医療装置1の撮像ユニット20によって、被写体像を取り込むタイミングに同期して、回転被覆部8の開口部8aが撮像ユニット20の観察窓11と一致するようにモータ31の駆動を制御する。このタイミングとは、上述したように、回転被覆部8の開口部8aの中心位置A、及び撮像ユニット20に入射する被写体像の撮影光軸Oが一致するタイミングである。
【0038】
例えば、撮像ユニット20のフレームレートが60fpsである場合、このフレームレートに同期、つまり画像を取り込むタイミングに同期して、回転被覆部8の開口部8aの中心位置A、及び撮像ユニット20に入射する被写体像の撮影光軸Oが一致するように回転被覆部8をカメラ本体部5の長手中心軸C回りに回転する。つまり、モータ31により回転する回転被覆部8は、カメラ本体部5の長手中心軸C回りに回転する回転数が60回転/secとなるように制御基板25による制御が行なわれる。
【0039】
以上に説明したように、本実施の形態のカプセル型医療装置1は、撮像ユニット20が被写体像を取り込む瞬間(タイミング)に合わせて、回転被覆部8の開口部8aが撮像ユニット20の観察窓11と一致する位置に移動し、観察窓11が回転被覆部8の開口部8aによって露出する構成となっている。これにより、カプセル型医療装置1は、撮像ユニット20の観察窓11の露出する時間が少なくなり、清潔性が保たれ、観察窓11の表面の曇り、及び管腔内の粘膜、汚物などが飛散することによる汚れの付着を防止することができる。
【0040】
尚、このタイミングにおいて、照明窓12も、回転被覆部8の開口部8bが一致して、露出するため、清潔性が保たれ、LED光源26から照明光を汚れなどにより妨げることないため、クリアな照明光が被写体に向けて照射される。
【0041】
以上の説明により、本実施の形態のカプセル型医療装置1は、回転被覆部8を回転して、被検体像を取り込む撮像ユニット20の観察窓11の露出時間を低減、つまり被検体像を取り込むときだけ露出させる構成であるため、観察窓11に汚れが付着し難くなり、撮像ユニット20により常にクリアな観察画像を得ることができる。また、同様に、カプセル型医療装置1は、照明窓12にも汚れが付着し難くなるため、被写体へクリアな照明光を照射することができる。
【0042】
さらに、カプセル型医療装置1は、回転被覆部8の開口部8aが撮像ユニット20のフレームレートのタイミングに対応して観察窓である観察窓11と一致するため、視界を遮ることなく、撮影時に不要な構成、つまり、回転被覆部8の内面が写り込むことがない。
【0043】
そして、本実施の形態のカプセル型医療装置1は、推進力発生部6、及び回転被覆部8を回転させる駆動源を1つのモータ31で共有させた構成となっている。これにより、カプセル型医療装置1は、複数の駆動源(モータ31)を駆動する構成に比して、バッテリ27の容量もそれほど多くする必要がなく、且つ、バッテリ27寿命も維持することができる。また、カプセル型医療装置1は、推進力発生部6、及び回転被覆部8を駆動するための複数の駆動源(モータ31)、及び容量の大きなバッテリ27を搭載しなくて良いため、カメラ本体部5を含むカプセル本体部2の大型化が防止され、嚥下して管腔内へ導入することができる大きさを保つことができる。
【0044】
尚、上述の構成では、回転被覆部8の開口部8aが1つである構成を示したが、これに限定することなく、開口部8aを回転被覆部8に複数設けて、これら開口部8aの数に応じて、回転被覆部8の回転数を撮像ユニット20のフレームレートのタイミングに対応するように制御基板25がモータ31を駆動制御するようにしても良い。つまり、開口部8aが1つでも複数でも、撮像ユニット20のフレームレートのタイミングに合わせて、開口部8aと観察窓11が一致する位置となるように、回転被覆部8の回転の制御が行なわれる構成としても良い。
尚、このような構成とした場合、推進力発生部6を回転させる遊星歯車機構のギヤ比を適宜設定して、カプセル型医療装置1を前進させる推進力が低下しないように設定すれば良い。
【0045】
また、カプセル型医療装置1は、未使用時においても、撮像ユニット20の観察窓11が露出しないように回転被覆部8で被覆する位置に移動させておけば、観察窓11の汚れを防止することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、図5から図8に基づいて、本発明のカプセル型医療装置の第2の実施の形態について、以下に説明する。尚、以下の説明において、第1の実施の形態のカプセル型医療装置と同一の構成については、同一の符号を用い、それら構成部品、及び作用効果の説明を省略する。
【0047】
本実施の形態のカプセル型医療装置1は、第1の実施の形態の推進力発生手段である推進力発生部6に変えて、回転被覆部8に多翼プロペラ60を設けて、前進する推進力を発生させる構成となっている。
【0048】
カプセル型医療装置1は、図5、及び図6に示すように、装置本体であるカプセル本体部51の基端部が回転楕円体を半分にした半長球に形成された略円柱形状をしている。
このカプセル本体部51には、第1の実施の形態と同様に、回転被覆部8が回転自在に配設されている。また、カプセル本体部51は、先端面に回転被覆部8の被覆面18表面が露出するように開口部51aが形成され、この開口部51aの周囲に沿って複数、ここでは6つの流体吸引口52が形成されている。さらに、カプセル本体部51の基端部分には、流体吸引口52の数と一致した複数、ここでは6つの流体排出口53が形成されている。尚、これら6つの流体排出口53が隣接する夫々の間には、カプセル本体部51と一体的に形成された仕切壁部54が設けられている。
【0049】
図6に示すように、各流体吸引口52、及び各流体排出口53は、カプセル本体部51に形成された円筒形状の流体洞である流体ダクト55に連通している。つまり、カプセル本体部51は、外周部近傍に周方向の流体ダクト55を有している。また、カプセル本体部51は、流体ダクト55を挟む外周部となる略筒形状の部分、及び内周側の略円柱形状の部分が基端部分において各流体排出口53の間に設けられた6つの仕切壁部54で連結されていることで一体的に形成されている。
【0050】
本実施の形態の回転被覆部8は、図6、及び図7に示すように、基端部分の内向フランジ17が設けられる基端外周部に多翼プロペラ60が一体的に配設されている。この多翼プロペラ60は、回転被覆部8がモータ31によって回転駆動されることで、流体ダクト55の断面方向に沿って回転する。つまり、回転被覆部8が回転することで、多翼プロペラ60は、流体を各流体吸引口52から流体ダクト55内に吸引して、各流体排出口53から排出する。尚、多翼プロペラ60が吸引排出する流体は、管腔内にある気体、液体などである。
【0051】
このように本実施の形態のカプセル型医療装置1は、生体内の管腔内で各流体排出口53から排出された流体によって、前進する推進力が発生する。つまり、多翼プロペラ60は、モータ31の出力を推進力へと変換する、本実施の形態における推進力発生部を構成した推進力発生手段である。
【0052】
尚、本実施の形態のカプセル型医療装置1は、図6に示すように、その他の構成については第1の実施の形態のカプセル型医療装置と同様である。
【0053】
以上のように構成された本実施の形態のカプセル型医療装置1は、第1の実施の形態と同様に、生体管腔内に嚥下される。このとき、カプセル型医療装置1は、モータ31の駆動力を受けた回転被覆部8が多翼プロペラ60と共に、所定の方向へ回転する。そして、カプセル型医療装置1には、多翼プロペラ60の回転により、各流体吸引口52から吸引されて、各流体排出口53から排出された流体によって、前進する推進力が発生する。
【0054】
さらに、ここでも回転被覆部8は、図8に示すように、被覆面18に形成された2つの開口部8a,8bがカプセル本体部51の長手方向に沿った中心軸C回りで移動するように回転する。
【0055】
つまり、回転被覆部8は、第1の実施の形態と同様に、開口部8aの開口中心である中心位置Aが撮像ユニット20によって撮影する被写体像の撮影光軸Oと一致する位置を通過するように、カプセル本体部51の長手方向に沿った中心軸C回りで移動する。ここでも、開口部8bの開口中心である中心位置Bは、撮像ユニット20によって撮影する被写体像の撮影光軸Oと一致する位置を通過するように、カプセル本体部51の長手方向に沿った中心軸C回りで移動する。
【0056】
このように、管腔内に導入されたカプセル型医療装置1は、本実施の形態において、多翼プロペラ60の回転によって発生する推進力により前進すると共に、回転被覆部8が常にカプセル本体部51の長手中心軸C回りに回転制御される。本実施の形態においても、カプセル型医療装置1は、撮像ユニット20のフレームレートのタイミングに対応して、回転被覆部8の開口部8aが撮像ユニット20の観察窓11と一致する位置へ移動するタイミングが合うように、回転被覆部8を回転するモータ31の駆動が制御基板25によって制御される。
【0057】
すなわち、制御基板25は、回転被覆部8の回転時において、カプセル型医療装置1の撮像ユニット20によって、被写体像を取り込むタイミングに同期して、回転被覆部8の開口部8aが撮像ユニット20の観察窓11と一致するようにモータ31の駆動を制御する。このタイミングとは、上述したように、回転被覆部8の開口部8aの中心位置A、及び撮像ユニット20に入射する被写体像の撮影光軸Oが一致するタイミングである。
【0058】
従って、本実施の形態のカプセル型医療装置1においても、撮像ユニット20が被写体像を取り込む瞬間(タイミング)に合わせて、回転被覆部8の開口部8aが撮像ユニット20の観察窓11と一致する位置に移動し、観察窓11が回転被覆部8の開口部8aによって露出する構成となっており、撮像ユニット20の観察窓11の露出する時間が少なくなり、清潔性が保たれ、観察窓11の表面の曇り、及び管腔内の粘膜、汚物などが飛散して、汚れの付着を防止することができる。尚、ここでも、照明窓12も、回転被覆部8の開口部8bが一致して、露出するため、清潔性が保たれ、LED光源26から照明光を汚れなどにより妨げることないため、クリアな照明光が被写体に向けて照射される。
以上の説明から、本実施の形態のカプセル型医療装置1も、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる構成となっている。
【0059】
以上に記載した各実施の形態のカプセル型医療装置1によれば、生体の管腔内を推進力により良好に移動できると共に、簡単な構成で、推進力を発生する装置の駆動源の駆動力を利用して、観察窓に付着物が付着することを防止して、観察窓の清潔性を保持することで撮像装置による良好な観察画像を得られる。
【0060】
また、以上の各実施の形態に記載した発明は、その実施の形態、及び変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0061】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0062】
1…カプセル型医療装置
2…カプセル本体部
3…回転防止部
3a…溝部
4…軸体
5…カメラ本体
5a…開口部
5b…周溝
6…推進力発生部
6a…ギヤ溝
6b…突起部
7…螺旋状突起部
8…回転被覆部
8a,8b…開口部
8c…ギヤ溝
11…観察窓
12…照明窓
15…突起部
16…凹部
17…内向フランジ
18…被覆面
20…撮像ユニット
21…レンズホルダ
22…対物レンズ
23…受光部
24…固体撮像素子
25…制御基板
26…光源
27…バッテリ
28…送信機
31…モータ
32…モータギヤ
33,36…ベアリング
34,35…歯車
A,B…中心位置
C…長手中心軸
O…撮影光軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】US 6,958,034 B2
【特許文献2】特開2006−149581号公報
【特許文献3】特開平8−29699号公報
【特許文献4】特開平5−103748号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の管腔内へ導入されるカプセル型医療装置において、
装置本体に内蔵され、観察窓から前記管腔内を撮像する撮像手段と、
前記装置本体に可動自在に設けられて、前記観察窓をカバーする被覆面に開口部が形成された被覆手段と、
前記装置本体に配設され、駆動することにより前記被検体内で推進力を発生する推進力発生手段と、
前記被覆手段、及び前記推進力発生手段を同時に共用駆動する駆動手段と、
前記撮像手段が被写体像を取り込むタイミングと前記開口部と前記観察窓とが一致するタイミングとを同期させて前記被覆手段を駆動するように前記駆動手段を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とするカプセル型医療装置。
【請求項2】
前記被覆手段が前記装置本体内で回転自在に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記撮像手段によって前記被写体像を取り込むタイミング時に、開口中心が前記被写体像の撮影光軸と一致することを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のカプセル型医療装置。
【請求項4】
前記推進力発生部は、外周部に螺旋状突起部を有し、前記駆動手段によって前記装置本体の長手中心軸回りに回転駆動され、前記螺旋状突起部が前記管腔壁に接触することで推進力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカプセル型医療装置。
【請求項5】
前記推進力発生部は、前記被覆手段の外周部に配設された多翼プロペラであって、前記装置本体の長手中心軸回りに回転して、流体を前記装置本体内に吸引排出して推進力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカプセル型医療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−207414(P2010−207414A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57072(P2009−57072)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】