説明

カメラモジュールの製造方法

【課題】ワイヤーボンディングのワイヤーが湿気により劣化することを防止すると共に、バックフォーカスが一定に保持されるようにしたカメラモジュールの製造方法。
【解決手段】撮像レンズがレンズ枠に装着された光学ユニットと、レンズ枠の外周壁の外径より大なる外径の撮像素子が、撮像素子の外径より大なる外径のプリント配線板の端部にワイヤーボンディングによって実装されたプリント回路板と、を接合する製造方法であって、レンズ枠の端部をワイヤーボンディングされた位置より撮像レンズの光軸側に位置する撮像素子の面部に当接させて接着剤で仮接合し、仮カメラモジュールを製造する工程と、レンズ枠を可動型に設けたキャビティに挿入する工程と、可動型を移動して固定型に当接させると共に、可動型、固定型、レンズ枠の端部及びプリント回路板の端部により包囲された空隙に樹脂を注入して樹脂成型体を成型する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来より小型化されたカメラモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小型で薄型の撮像装置が携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の小型、薄型の電子機器である携帯端末に搭載されるようになり、これにより遠隔地へ音声情報だけでなく画像情報も相互に伝送することが可能となっている。
【0003】
この撮像装置には少なくとも撮像レンズと撮像素子とを有するカメラモジュールが内蔵され、携帯端末の小型化に伴いカメラモジュールも小型化が要求されている。
【0004】
このようなカメラモジュールの一例を図5に示す。
【0005】
カメラモジュール7は、撮像レンズ71、赤外カットフィルタ72、レンズ枠73、撮像素子74及びプリント配線板75から構成されている。
【0006】
撮像レンズ71は、被写体光を撮像素子74に結像させるレンズであり、接着剤Gによりレンズ枠73に接合されている。
【0007】
赤外カットフィルタ72は、画像の色に悪影響を及ぼす約780nm以上の波長の光をカットするために撮像素子74の前方で接着剤Gによりレンズ枠73に接合されている。
【0008】
撮像素子74は、プリント配線板75にワイヤーボンディングにより実装され、結像した被写体光を光電変換し、プリント配線板75を介してその画像信号を外部の画像処理回路に出力する。
【0009】
そして、レンズ枠73の後部73aの端部73bはワイヤーボンディングのワイヤー76より外側の位置でプリント配線板75に当接し、後部73aの内側で端部73bが接着剤Gによりプリント配線板75に接合されている。
【0010】
なお、レンズ枠73の前部73cの外周壁は撮像レンズ71の外形に倣って円形に形成され、後部73aの外周壁はプリント配線板75の外形に倣って矩形若しくは正方形に形成されている。
【0011】
このようなカメラモジュール7においては、小型化するためにレンズ枠73の後部73aの内周壁で端部73bが接着剤Gによりプリント配線板75に接合されているが、内周壁にわたって接着剤Gを充分に付着し難いので、接合強度に安定性が欠けるという問題がある。また、レンズ枠73とプリント配線板75との間に微細な間隙が生ずることがあり、大気が接着剤の隙間を通って内部に侵入し、湿気によりワイヤー76が劣化する虞がある。
【0012】
このような問題に対処するため、撮像レンズを保持するレンズ枠と、撮像素子がワイヤーボンディングされたプリント配線板との間に樹脂材を成型して成る樹脂モールドを介在させ、ワイヤーを樹脂モールドの中に埋設したカメラモジュールが知られている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−148473号公報
【特許文献2】特開2004−103860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1,2に記載のカメラモジュールにおいては、ワイヤーが樹脂モールドの中に埋設されているので、ワイヤーが湿気により劣化する虞はない。しかし、光軸方向における撮像レンズと撮像素子との間隔、換言すれば撮像レンズのバックフォーカスを規定するものは樹脂モールドのみである。樹脂モールドは成型条件によって厚みがばらつく虞があり、また、カメラモジュールが搭載された携帯端末の環境により温度や湿度が変化したときにも厚みが変化するので、バックフォーカスが変化して良好なピントが得難い。
【0015】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、ワイヤーボンディングのワイヤーを樹脂で被覆して湿気による劣化を防止すると共に、撮像レンズのバックフォーカスが樹脂の影響を受けずに一定に保持されるようにしたカメラモジュールの製造方法を提案することを発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は下記に記載した発明により達成される。
【0017】
1.少なくとも撮像レンズがレンズ枠に装着された光学ユニットと、
前記レンズ枠の外周壁の外径より大なる外径の撮像素子が、該撮像素子の外径より大なる外径のプリント配線板の端部にワイヤーボンディングによって実装されたプリント回路板と、
を接合するカメラモジュールの製造方法であって、
前記光学ユニットにおけるレンズ枠の端部を、前記プリント回路板におけるワイヤーボンディングされた位置より前記撮像レンズの光軸側に位置する前記撮像素子の面部に当接させて接着剤で仮接合し、仮カメラモジュールを製造する工程と、
前記仮カメラモジュールのレンズ枠を可動型に設けたキャビティに挿入する工程と、
前記可動型を移動して固定型に当接させると共に、前記可動型、前記固定型、前記レンズ枠の端部及び前記プリント回路板の端部により包囲された空隙に樹脂を注入して樹脂成型体を成型する工程と、
を有することを特徴とするカメラモジュールの製造方法。
【0018】
2.前記樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする前記1に記載のカメラモジュールの製造方法。
【0019】
3.前記レンズ枠を可動型に設けたキャビティに挿入する共に、該可動型と前記固定型のパーティングラインより前記レンズ枠の端部を所定量突出させる工程を有することを特徴とする前記1又は前記2に記載のカメラモジュールの製造方法。
【0020】
4.前記可動型を移動して前記固定型に当接させると共に、前記固定型に設けたキャビティに前記プリント回路板を挿入する工程を有することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のカメラモジュールの製造方法。
【0021】
5.前記樹脂成型体が成型された後に、該樹脂成型体を加熱させ硬化させる工程を有することを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のカメラモジュールの製造方法。
【0022】
6.前記樹脂成型体が硬化した後に前記可動型を離型させ、前記固定型に設けたゲートに位置する前記樹脂成型体の一部を切断する工程を有することを特徴とする前記5に記載のカメラモジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカメラモジュールの製造方法によれば、光学ユニットとプリント回路板とが接合される部所に樹脂成型体を成型することにより、ワイヤーボンディングのワイヤーが被覆されて湿気による劣化が防止されると共に、撮像レンズのバックフォーカスが樹脂成型体の影響を受けずに一定に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】携帯電話機の外観図である。
【図2】カメラモジュールの断面図である。
【図3】カメラモジュール1を製造する方法を示す図である。
【図4】カメラモジュール1を製造する方法を示す図である。
【図5】従来のカメラモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のカメラモジュールの実施の形態を図を参照して詳細に説明する。
【0026】
先ず、本カメラモジュールを搭載した携帯端末として携帯電話機の一例を図1の外観図に基づいて説明する。なお、図1(A)は折り畳んだ携帯電話機を開いて内側から見た図であり、図1(B)は折り畳んだ携帯電話機を開いて外側から見た図である。
【0027】
携帯電話機Tは、表示画面D1,D2を備えたケースとしての上筐体101と、操作ボタンBを備えた下筐体102とがヒンジ103を介して連結されている。撮像装置は、上筐体101内の表示画面D2の下方に内蔵されていて、上筐体101の外表面に撮像レンズ11が露出している。
【0028】
なお、この撮像装置の位置は上筐体101内の表示画面D2の上方や側面に配置してもよい。また、携帯電話機Tは折り畳み式に限定されるものではない。
【0029】
次に、図2の断面図に基づいてカメラモジュールの形態を説明する。
【0030】
カメラモジュール1は、撮像レンズ11、赤外カットフィルタ12、レンズ枠13、撮像素子21、プリント配線板22及び樹脂成型体Eから構成されている。
【0031】
撮像レンズ11は接着剤G1によりレンズ枠13に接合され、被写体光を撮像素子21に結像する。赤外カットフィルタ12は画像の色に悪影響を及ぼす約780nm以上の波長の光をカットするフィルタであり、接着剤G2によりレンズ枠13に接合されている。
【0032】
なお、この撮像光学系は被写体側から撮像レンズ11、赤外カットフィルタ12の順で配置されているが、これらが逆に配置されていてもよい。
【0033】
撮像素子21は、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ若しくはCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)型イメージセンサである。撮像素子21はワイヤーボンディングによりプリント配線板22に実装され、プリント回路板20を構成している。撮像素子21は結像した被写体光を光電変換し、プリント配線板22を介してその画像信号を外部の画像処理回路に出力する。
【0034】
ここで、レンズ枠13の外周は円形に形成され、撮像素子21及びプリント配線板22は矩形若しくは正方形に形成されていて、レンズ枠13の外径より撮像素子21の外径の方が大きく、撮像素子21の外径よりプリント配線板22の外径の方が大きく形成されている。また、ワイヤーボンディングに用いられるワイヤー23は撮像素子21の端部に位置し、その内側の撮像素子21の面にレンズ枠13の後端部13aが当接し、接着剤G3で接合されているが、後述するようにこれは仮接合である。そして、レンズ枠13の後端部13aの外周壁、撮像素子21の端部、撮像素子21が載置されていないプリント配線板22の端部、及びワイヤー23には後述する如く製造する樹脂成型体Eが固着されている。なお、樹脂成型体Eはエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂が望ましい。また、樹脂成型体Eの外形はプリント配線板22の外径に倣って矩形若しくは正方形である。
【0035】
以上の構成により、撮像レンズ11を保持するレンズ枠13の後端部13aが撮像素子21に当接しているので、撮像レンズ11と撮像素子21との間隔、即ちバックフォーカスが一定に保たれ、ピントが常に保証される。また、樹脂成型体Eによって、レンズ枠13と、撮像素子21及びプリント配線板22とが固着されるので、レンズ枠13は撮像素子21に確実に接合される。更に、ワイヤーボンディングに用いられるワイヤー23が樹脂成型体Eの中に埋設されるので、湿気によって劣化する虞はない。
【0036】
更に、図5に示す従来のカメラモジュール7においては、撮像素子74の壁部とワイヤー76との間隔は約0.25mm、ワイヤー76と後端部73bの内周壁との間隔は約0.25mm、後端部73bの肉厚は約0.4mm必要である。従って、撮像素子74の外径寸法をSとすれば、カメラモジュール7の最大外径部の寸法はS+1.8mmになる。これに対して、カメラモジュール1においては、撮像素子21の壁部とワイヤー23との間隔を約0.25mm、ワイヤー23からプリント配線板22の端部までの間隔を約0.3mmにすることができる。従って、撮像素子74の外径寸法をSとすれば、カメラモジュール1の最大外径部の寸法はS+1.1mmとなる。依って、最大外径部においてカメラモジュール1はカメラモジュール7より約0.7mm小さくすることができる。なお、撮像素子21,74の外径寸法Sは3〜4mmであるので、20%前後の寸法でカメラモジュールを小型化することができる。
【0037】
次に、金型を用いてエポキシ樹脂を充填して樹脂成型体Eを成型し、カメラモジュール1を製造する方法について図3及び図4に基づいて工程順に説明する。
【0038】
先ず、図2において樹脂成型体Eが固着されていない状態の仮カメラモジュール2を予め製造する。このためには、撮像レンズ11と赤外カットフィルタ12とが各々接着剤G1,G2でレンズ枠13に接合されて装着された光学ユニット10を製造する。同時に、撮像素子21がプリント配線板22にワイヤーボンディングされたプリント回路板20を製造する。この光学ユニット10の撮像レンズ11の光軸とプリント回路板20の撮像素子21の中心が合致するように不図示の治具で調整し、レンズ枠13の後端部13aを撮像素子21に当接させた状態で接着剤G3で仮接合する。なお、仮接合とは、一時的に接合されていればよくて耐久的に保証されなくてもよい状態を意味する。また、後端部13aが当接する撮像素子21の面部に接着剤G3を軽く塗布すると共に、後端部13aの内周壁側に接着剤G3が流れ込む位置に塗布するので、各図では接着剤G3を後端部13aの内周壁側に描いてある。しかし、実際には後端部13aの外周壁側にも接着剤G3が流れ込むが、このようになっても全く問題はない。このようにして、光学ユニット10をプリント回路板20に接合した仮カメラモジュール2が完成する。
【0039】
次に、エポキシ樹脂を充填して樹脂成型体Eを成型するための金型を準備する。
【0040】
図3(A)は金型の図であり、固定型41より可動型42を退避させた状態の図である。
【0041】
固定型41には、プリント配線板22の外径より僅かに大きい内径を有するキャビティ41aと、エポキシ樹脂Eを注入するスプル41b及びゲート41cとが設けられている。一方、可動型42にはレンズ枠13の外径と嵌合する内径を有するキャビティ42aと、最後に完成したカメラモジュール1を金型から抜き落とすためのエジェクタピン42bとが設けられている。
【0042】
次に、図3(B)に示す如く、仮カメラモジュール2のレンズ枠13を可動型42のキャビティ42aに挿入する。このとき、レンズ枠13の全てがキャビティ42aに挿入されるのではなく、レンズ枠13の後端は固定型41に可動型42が当接するパーティングラインPTより所定量突出している。従って、プリント回路板20も可動型42より突出している。
【0043】
続いて、図3(C)の如く、可動型42を移動させ、パーティングラインPTで固定型41に密着させる。この際、プリント回路板20はキャビティ41aの中に挿入される。
【0044】
続いて、図4(A)の如く、エポキシ樹脂をスプル41bから注入する。エポキシ樹脂はゲート41cを通り、可動型42のパーティングラインPTの面、レンズ枠13の外周壁、プリント回路20板の端部及びキャビティ41aの側壁により包囲された空隙43に流れ込み充填される。これにより、エポキシ樹脂がスプル41b及びゲート41cにも充填されて、これらが接続された樹脂成型体Eが成型される。
【0045】
その後、不図示のヒータで加熱し、樹脂成型体Eが固化したならば、図4(B)の如く、再び可動型42を退避させる。
【0046】
最後に、図4(C)の如く、ゲート41cに位置する樹脂成型体Eの一部を不図示のカッターで切断すれば、図2に示すカメラモジュール1が完成する。そこで、エジェクタピン42bで樹脂成型体Eの部分を突き出せば、カメラモジュール1は可動型42より離型する。
【0047】
なお、樹脂成型体Eを成型する樹脂としてはエポキシ樹脂に限定されるものではなく、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,7 カメラモジュール
2 仮カメラモジュール
10 光学ユニット
11,71 撮像レンズ
12,72 赤外カットフィルタ
13,73 レンズ枠
20 プリント回路板
21,74 撮像素子
22,75 プリント配線板
E 樹脂成型体
G,G1,G2,G3 接着剤
T 携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも撮像レンズがレンズ枠に装着された光学ユニットと、
前記レンズ枠の外周壁の外径より大なる外径の撮像素子が、該撮像素子の外径より大なる外径のプリント配線板の端部にワイヤーボンディングによって実装されたプリント回路板と、
を接合するカメラモジュールの製造方法であって、
前記光学ユニットにおけるレンズ枠の端部を、前記プリント回路板におけるワイヤーボンディングされた位置より前記撮像レンズの光軸側に位置する前記撮像素子の面部に当接させて接着剤で仮接合し、仮カメラモジュールを製造する工程と、
前記仮カメラモジュールのレンズ枠を可動型に設けたキャビティに挿入する工程と、
前記可動型を移動して固定型に当接させると共に、前記可動型、前記固定型、前記レンズ枠の端部及び前記プリント回路板の端部により包囲された空隙に樹脂を注入して樹脂成型体を成型する工程と、
を有することを特徴とするカメラモジュールの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュールの製造方法。
【請求項3】
前記レンズ枠を可動型に設けたキャビティに挿入する共に、該可動型と前記固定型のパーティングラインより前記レンズ枠の端部を所定量突出させる工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカメラモジュールの製造方法。
【請求項4】
前記可動型を移動して前記固定型に当接させると共に、前記固定型に設けたキャビティに前記プリント回路板を挿入する工程を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカメラモジュールの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂成型体が成型された後に、該樹脂成型体を加熱させ硬化させる工程を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカメラモジュールの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂成型体が硬化した後に前記可動型を離型させ、前記固定型に設けたゲートに位置する前記樹脂成型体の一部を切断する工程を有することを特徴とする請求項5に記載のカメラモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213060(P2010−213060A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57856(P2009−57856)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】