説明

カメラ制御装置、カメラ制御方法及びカメラ制御プログラム

【課題】直感的にカメラの撮像方向を指示することのできるカメラ制御装置を提供する。
【解決手段】角度検出部105は、カメラ制御装置の方向を、第1の基準位置に対する制御角度として検出する。制御部106は、制御角度の情報をカメラに送信することで、カメラの撮像方向を、カメラに設定されている第2の基準位置に対する制御角度の位置に移動させるよう制御する。制御部106は、カメラを第1の特定の方向に移動させたときのカメラ制御装置の方向を角度検出部105に第1の角度として検出させ、カメラ制御装置が第2の特定の方向に移動したときのカメラ制御装置の方向を第2の角度として検出させ、第1の角度と第2の角度との差分を校正角度として求め、その後は、制御角度に校正角度を加えた角度を新たな制御角度とし、この新たな制御角度の情報をカメラに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの撮像方向を制御するカメラ制御装置、カメラ制御方法及びカメラ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向の回動(パン)や垂直方向の回動(チルト)により撮像方向を変更する雲台を備えた雲台付きカメラを制御して、広い監視場所を監視できるようにした監視システムが知られている。一般に雲台付きのカメラは、水平方向の角度を示すための基準である0の位置(以下基準位置と呼ぶ)を設定する機能は備えているものの、カメラが設置された状態で、基準位置がどの方位を向いているかは不定である。そのため、目標とする被写体を撮像したい場合、監視システムを操作するオペレーターは、カメラが撮像した画像を見ながら、リモコンでカメラのパンやチルトの方向を指示して雲台を駆動させ、目標とする被写体が撮像されたところで指示を取りやめてパンやチルトを停止させる操作が必要である。このように、カメラに目標とする被写体を撮像させるためにはいくつかの手順が必要であり、直感的にカメラの撮像方向を指示することは困難である。
【0003】
これに対し、方位センサーを内蔵し、撮像する方位を確実に検出することができる監視カメラ装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−253060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のカメラを用いれば、オペレーターは、目標とする被写体の方位を指示することにより、カメラに目標とする被写体を撮像させることができる。しかしながらこの場合でも、オペレーターは、方位の指示を行う前に、目標の被写体の方位を把握することが必要である。このように、従来の監視システムでは、直感的にカメラの撮像方向の指示を行うことは困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、直感的にカメラの撮像方向を指示することのできるカメラ制御装置、カメラ制御方法及びカメラ制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願発明は以下の装置、方法、プログラムを提供するものである。
1)カメラと通信回線を介して接続され、カメラの撮像方向を制御する可搬型のカメラ制御装置において、カメラ制御装置の方向を、あらかじめ定められた第1の基準位置に対する制御角度として求める角度検出部(105)と、角度検出部が検出した制御角度の情報を、カメラに送信することで、カメラの撮像方向を、カメラに設定されている第2の基準位置に対する制御角度の位置に移動させるよう制御する制御部(106)とを有し、制御部は、カメラを第1の特定の方向に移動させたときのカメラ制御装置の方向を、角度検出部に第1の角度として検出させ、カメラ制御装置が第2の特定の方向に移動したときのカメラ制御装置の方向を、角度検出部に第2の角度として検出させ、第1の角度と第2の角度との差分を校正角度として求め、校正角度を求めた後は、制御角度に校正角度を加えた角度を新たな制御角度とし、この新たな制御角度の情報を、カメラに送信することを特徴とするカメラ制御装置。
2)制御部は第2の特定の方向が第1の特定の方向と同一であるときに、カメラ制御装置の方向を、角度検出部に第2の角度として検出させることを特徴とする1)に記載のカメラ制御装置。
3)カメラと通信回線を介して接続され、カメラの撮像方向を制御する可搬型のカメラ制御装置に用いられるカメラ制御方法であって、カメラ制御装置の方向を、あらかじめ定められた第1の基準位置に対する制御角度として求める角度検出ステップと、角度検出ステップで検出した制御角度の情報を、カメラに送信することで、カメラの撮像方向を、カメラに設定されている第2の基準位置に対する制御角度の位置に移動させるよう制御する制御ステップとを含み、制御ステップは カメラを特定の方向に移動させたときのカメラ制御装置の方向を、角度検出ステップで第1の角度として検出させ(ステップS403)、カメラ制御装置が特定の方向に移動したときのカメラ制御装置の方向を、角度検出ステップで第2の角度として検出させ(ステップS406)、第1の角度と第2の角度との差分を校正角度として求め、校正角度を求めた後は、制御角度に校正角度を加えた角度を新たな制御角度とし、この新たな制御角度の情報を、カメラに送信することを特徴とするカメラ制御方法。
4)カメラと通信回線を介して接続され、カメラの撮像方向を制御する可搬型のカメラ制御装置に用いられるカメラ制御プログラムであって、カメラ制御装置の方向を、あらかじめ定められた第1の基準位置に対する制御角度として求める角度検出機能と、角度検出機能が検出した制御角度の情報を、カメラに送信することで、カメラの撮像方向を、カメラに設定されている第2の基準位置に対する制御角度の位置に移動させるよう制御する制御機能とをコンピューターに実現させ、制御機能はカメラを第1の特定の方向に移動させたときのカメラ制御装置の方向を、角度検出機能に第1の角度として検出させ、カメラ制御装置が第2の特定の方向に移動したときのカメラ制御装置の方向を、角度検出機能に第2の角度として検出させ、第1の角度と第2の角度との差分を校正角度として求め、校正角度を求めた後は、制御角度に校正角度を加えた角度を新たな制御角度とし、この新たな制御角度の情報を、カメラに送信することを特徴とするカメラ制御プログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカメラ制御装置、カメラ制御方法及びカメラ制御プログラムによれば、直感的にカメラの撮像方向を指示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のカメラ制御装置の一実施形態であるカメラ制御端末のブロック構成図である。
【図2】カメラ制御端末で制御するカメラのブロック構成図の例である。
【図3】カメラ制御端末を用いた監視システムの一実施例である。
【図4】カメラ制御端末におけるキャリブレーションの例を示すフローチャートである。
【図5】カメラ制御端末によるカメラの垂直方向の角度の制御の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のカメラ制御装置の一実施形態であるカメラ制御端末について、添付図面を参照して説明する。
[カメラ制御端末の構成]
図1は本発明のカメラ制御装置の一実施例であるカメラ制御端末10のブロック構成図である。カメラ制御端末10は、たとえば持ち運びが可能なタブレット型の通信端末であり、通信機能と、画面表示機能とを有している。オペレーターはカメラ制御端末10を手で持った状態で、表示された画面を見ながら、カメラ制御端末10の種々の操作を行う。
【0011】
通信部101は、後述の通信ユニット30と通信を行う。通信ユニット30との通信は、たとえばIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11n規格の無線LAN(Local Area Network)で行う。通信ユニット30との通信は、無線LANに限らず携帯電話回線や他の通信回線を用いてもよい。通信部101は、後述の監視カメラ20を制御するための制御信号を通信ユニット30へ送信したり、監視カメラ20の撮像した画像を、通信ユニット30から受信する。監視カメラ20は、撮像した画像を、たとえばJPEG(Joint Picture Expert Group)やMPEG(Moving Picture Expert Group)−4などの規格でディジタル画像圧縮して送信するものとする。
【0012】
復号部102は、通信部101で受信した、JPEGやMPEG−4などの規格の圧縮ディジタル画像を復号し、表示部103へ送る。
【0013】
表示部103は、カメラ制御端末10の表面に設けられた液晶モニターで、監視カメラ20の撮像した画像を表示する。
【0014】
キャリブレーションボタン104は、カメラ制御端末10の表面に露出したボタンである。キャリブレーションボタン104は、表示部103をタッチパネル式液晶モニターとして、画面上にボタンを表示させたものでもよい。また、キャリブレーション開始、キャリブレーション終了の2つのボタンからなる構成としてもよい。
【0015】
制御部106は、方位センサー105から送られる角度データを受けるとともに、オペレーターがキャリブレーションボタン104を押す操作や離す操作を検知する。これにより、制御部106は、メモリー107に対して制御に必要なデータの書き込みや読み出しを行って、監視カメラ20を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を通信部101へ送る。制御信号の生成方法については後述する。
【0016】
方位センサー105は、水平方向の絶対角度である方位を出力するものである。図3はカメラ制御端末を用いた監視システムの例である。オペレーターは、カメラ制御端末10を手で持った状態で、カメラ制御端末10の方向を変えることができる。矢印Aは、オペレーターがカメラ制御端末10を手で持って画面を見たり操作をしているときのオペレーターの正面の方向である。この矢印Aの方向をカメラ制御端末10の方向とし、その方位をカメラ制御端末10の方位とする。方位センサー105は、カメラ制御端末10の方位として、磁北を基準位置(0°)とした右回りの0°〜360°までの角度データを、制御部106へ出力する。
[監視カメラの構成]
図2は、カメラ制御端末10で制御する監視カメラ20のブロック構成図の例である。本実施例では、監視カメラ20はネットワークカメラであり、撮像した画像をネットワークを介して送信したり、ネットワークを介して受信した制御信号にしたがって撮像方向を変更する。
【0017】
撮像部201は、周囲の被写体を撮像し、撮像した画像を圧縮部202へ送る。圧縮部202は、撮像部201で撮像した画像を、前述のようにJPEGやMPEG−4などの規格でディジタル画像圧縮し、通信部203へ送る。
【0018】
通信部203は、通信ユニット30とLANケーブルで接続されており、LANケーブルを介して通信ユニット30と通信を行う。通信部203は、圧縮部202で圧縮された圧縮ディジタル画像を通信ユニット30へ送信する。通信部203はまた、通信ユニット30から送信される制御信号を受信して、制御部204へ送る。
【0019】
制御部204は、通信部203が受信した制御信号に基づき、雲台駆動部205へパンやチルトを行わせるための制御信号を送る。
【0020】
雲台駆動部205は、制御部204から送られる制御信号にしたがって、撮像部201の撮像方向を変更する。
【0021】
角度センサー206は、撮像部201の撮像方向の水平方向の角度データを制御部204へ出力する。角度センサー206は、現在の撮像方向の水平方向の角度を、基準位置から右回りの0°〜360°の値で出力するものとする。角度センサー206は、たとえば撮像部201とともに回転する部分に、角度検出用のスリットや着磁部を複数設け、光学センサーや磁気センサーでこれをカウントする。また、同じく撮像部201とともに回転する部分に、基準位置検出用のスリットや着磁部を1ヶ所設け、これを基準位置検出用の光学センサーや磁気センサーで検出する。監視カメラ20は、起動時に一度パンを行って基準位置を検出する。基準位置を検出したら、それ以降は角度センサー206は、基準位置を0°として、0°からのスリットや着磁部の数をカウントすることにより、角度を算出して出力する。
[監視システムの構成]
このようなカメラ制御端末10の一実施例を用いた監視システムについて、図3に基づき説明する。
【0022】
通信ユニット30は、本実施例では無線LANアクセスポイントである。通信ユニット30は、前述のようにIEEE802.11n規格の無線LANでカメラ制御端末10と相互に通信を行う。通信ユニット30と監視カメラ20とは、LANケーブルで接続されており、LANケーブルを介して相互に通信を行う。 通信ユニット30と監視カメラ20との間の通信は、LANケーブルを介した通信に限らず、無線LANや携帯電話回線など他の通信であってもよい。また通信ユニット30を用いずに、カメラ制御端末10と監視カメラ20との間で直接通信を行ってもよい。
【0023】
監視カメラ20は、店舗の内部を見渡せるよう、天井などの高所に取り付けられている。カメラ制御端末10は、監視カメラ20と同じ店舗の内部に設置したり、警備員室などに設置してもよい。通信ユニット30は、監視カメラ20との間をLANケーブルで接続されるため、比較的監視カメラ20に近い店舗内に設置することが多い。ただし、カメラ制御端末10を遠隔地に設置する場合は、カメラ制御端末10と通信可能なよう、通信ユニット30をカメラ制御端末10の近傍に設置することが好ましい。
【0024】
[カメラ制御端末によるカメラの制御方法]
このような監視システムにおいて、カメラ制御端末10が監視カメラ20の撮像方向を制御する制御方法について、以下に説明する。本実施例では、通信部101は、監視カメラ20の制御信号として、水平方向の角度の指示値を送信するものとする。
【0025】
カメラ制御端末10の方位センサー105は、カメラ制御端末10の方位の角度データを出力する。方位センサー105が出力する角度データをpとする。
【0026】
メモリー107は、補正値poffを記憶しており、後述のキャリブレーションを行う前は初期値としてpoff=0を記憶しているものとする。制御部106は、以下に示す式(1)によって角度データpを補正して水平方向の角度の指示値Pを算出し、通信部101へ送る。
【0027】
P’=p+poff
P’>360の場合、P=P’−360
P’<0 の場合、P=P’+360
それ以外の場合 P=P’ ・・・式(1)
いま、poff=0であるので、P=pとなる。制御部106は水平方向の角度の指示値Pとして角度データpをそのまま通信部101へ送る。通信部101は、水平方向の角度の指示値Pを通信ユニット30へ送信する。
【0028】
通信ユニット30は、カメラ制御端末10の通信部101から送信された水平方向の角度の指示値Pを、LANケーブルを介して監視カメラ20へ送信する。監視カメラ20の通信部203は、通信ユニット30から送信された指示値Pを受信し、制御部204へ送る。制御部204は、水平方向の角度の指示値Pを受けとると、角度センサー206の出力する角度データが水平方向の角度の指示値Pと一致するよう、雲台駆動部205を駆動して撮像部201を水平方向に回動させ、撮像方向を変更させる。
【0029】
いま、指示値Pはカメラ制御端末10の方位の角度データpと同じであるので、角度センサー206の出力する角度データは、カメラ制御端末10の方位の角度データと一致することとなる。
【0030】
ここで、設置業者が天井に監視カメラ20を取り付けるとき、通常は監視カメラ20の向きを方位にあわせることはしない。そのため、取り付けられた状態で監視カメラ20の水平方向の角度の基準位置がどの方位を向いているかは不定である。したがって、角度センサー206の出力する角度データがカメラ制御端末10の方位の角度データと一致しても、カメラ制御端末10の方向と撮像部201の撮像方向とが一致するとは限らない。そこで、カメラ制御端末10の方向と、撮像部201の撮像方向とが一致するよう、監視システムを運用するのに先立って、以下のようにキャリブレーションを行う。
[キャリブレーションの方法]
本実施例のシステムにおけるキャリブレーションの方法について、図4のフローチャートに基づき説明する。なお、図4のフローチャートにおける動作の主体は、特に記載のない場合は制御部106である。
【0031】
キャリブレーションを行うにあたって、オペレーターは目視及び画面上で特定しやすい、目立つ被写体を、キャリブレーションに用いる校正の基準の被写体として定める。そしてオペレーターはカメラ制御端末10を手に持って、カメラ制御端末10の方向を変える。これにより、前述のように、監視カメラ20の撮像部201の撮像方向が変更される。そこでオペレーターは、表示部103に表示される監視カメラ20が撮像した画像を見て、第1の特定の方向として、校正の基準となる被写体が表示部103に表示される方向でカメラ制御端末10を停止させる。
【0032】
撮像部201の撮像方向を決定したら、オペレーターは第1の操作として、カメラ制御端末10のキャリブレーションボタン104を押す。制御部106は、キャリブレーションボタン104が押されたことを確認すると(ステップS401)、監視カメラ20への水平方向の角度の指示値の送信を停止する(ステップS402)。あるいは、監視カメラ20の向きを維持するコマンドを送信して、監視カメラ20の撮像方向が変わらないようにしてもよい。
【0033】
また制御部106は、キャリブレーションボタン104が押されたときの方位センサー105の角度データpを、第1の角度p1としてメモリー107に記憶する(ステップS403)。
【0034】
次にオペレーターは、キャリブレーションボタン104を押したまま、カメラ制御端末10を、第2の特定の方向として、校正の基準の被写体の方向へ向ける。本実施例では、第1の特定の方向と、第2の特定の方向とは同一とする。このとき、ステップS402で水平方向の角度の指示値の送信を停止しているので、監視カメラ20の撮像方向は変わらない。そのため、表示部103には、校正の基準の被写体が表示されたままとなる。カメラ制御端末10と監視カメラ20の設置場所とが近傍であれば、オペレーターは校正の基準の被写体を直接目視できる。その場合は、表示部103に表示された画像と、実際の校正の基準の被写体とを見比べながら、カメラ制御端末10を校正の基準の被写体の方向へ向けることができる。
【0035】
なお、ステップS402の角度の指示値の送信の停止は、必ずしも行う必要はない。送信を停止しない場合、オペレーターがカメラ制御端末10の方向を変えると監視カメラ20の撮像方向が変わるので、表示部103には目標となる被写体が表示されなくなる。その場合はオペレーターは表示部103とは関係なく、カメラ制御端末10を目標となる被写体に向けることとなる。これにより操作性は若干劣ることとなるが、キャリブレーションのステップを1つ減らすことができる。
【0036】
カメラ制御端末10の方向を確定したら、オペレーターは第2の操作として、キャリブレーションボタン104を離す。制御部106は、キャリブレーションボタン104が離されたことを確認すると(ステップS404)、そのときの方位センサー105の角度データpを、第2の角度p2としてメモリー107に記憶する(ステップS405)。更に制御部106は、第1の角度p1と第2の角度p2との差分p1−p2を、校正角度poffとしてメモリー107に記憶する(ステップS406)。以上でキャリブレーションを終了する。
【0037】
キャリブレーションが終了すると、制御部106は、メモリー107に記憶した校正角度poffを用いて、方位センサー105が出力するカメラ制御端末10の方位の角度データpを前述の式(1)によって補正して、水平方向の角度の指示値Pとして通信部101から通信ユニット30へ送信する。
【0038】
このようにしてキャリブレーションを行ったあとでは、たとえば、カメラ制御端末10を校正の基準の被写体へ向けたとき、ステップS405で述べたように、方位センサー105は角度データとしてp2を出力する。いま、poff=p1−p2なので、式(1)の補正の結果、制御部106は、水平方向の角度の指示値Pとしてp1を出力する。これにより、監視カメラ20は、その撮像方向を、角度センサー206の出力する角度データがp1となる方向へ変更する。ステップS403で述べたように、角度データがp1のとき、監視カメラ20は校正の基準の被写体を撮像する。したがって、本実施例のカメラ制御端末10は、カメラ制御端末10の方向を校正の基準の方向とすれば、監視カメラ20の撮像方向を校正の基準の方向へ変更することができる。すなわち、直感的にカメラの撮像方向を指示することができる。
【0039】
なお、いったんキャリブレーションを行って校正角度poffを設定したのちに、再度キャリブレーションをやり直す場合も考えられる。このような場合、すなわちキャリブレーションを開始する時点で校正角度poffが0でない場合を考慮すると、ステップS403を以下のようにするとより好適である。
【0040】
制御部106は、キャリブレーションボタン104が押されたときの方位センサー105の出力する角度データがpであるとき、p+poffを第1の角度p1としてメモリー107に上書き記憶する(ステップS403)。
【0041】
その後はステップS404〜ステップS406と同様である。これにより、制御部106が、監視カメラ20への水平方向の角度の指示値Pを、既に校正角度poffで補正している場合でも、校正角度poffを打ち消した値で第1の角度p1を上書き記憶するので、キャリブレーションをやり直すことができる。
【0042】
なお、キャリブレーションを行う際、カメラ制御端末10と監視カメラ20とをそれぞれ同一の校正の基準の被写体の方向へ向けて設定を行うと説明したが、この2つの校正の基準の方向は必ずしも同一の方向でなくてもよい。たとえば、教室に授業内容の収録用のカメラを設け、別室の操作卓に設けたカメラ制御端末を操作してカメラを切り替えて授業の様子を録画したり遠隔地へ送るといったシステムがある。このようなシステムの場合、操作卓の正面をカメラ制御端末の校正の基準の方向(第1の特定の方向)とし、教室の正面をカメラの撮像方向の校正の基準の方向(第2の特定の方向)とすることも好適である。すなわちオペレーターは、カメラ制御端末10の向きを変えることでカメラの撮像方向を教室の正面へ向け、キャリブレーションボタン104を押す。次にオペレーターは、カメラ制御端末10を操作卓の正面へ向け、キャリブレーションボタン104を離す。このようにしてキャリブレーションを行ったのちは、カメラ制御端末10を操作卓の正面へ向ければ、監視カメラ20は教室の正面を撮像する。すなわち、直感的にカメラの撮像方向を指示することができる。
【0043】
また、ステップS401〜S406のキャリブレーションを行わず、メモリー107にあらかじめ校正角度poffを書き込んでおいてもよい。その場合は、監視カメラ20の設置状態に応じた校正角度を調べておき、カメラ制御端末10のメモリー107に初期設定として書き込んでおく。これにより、キャリブレーションボタンを設けることなく、直感的にカメラの撮像方向を指示することができる。
【0044】
また、前述の例では監視カメラが1台の例を示しているが、これにこだわることなく、監視カメラが複数台であってもよい。多くの場所を監視するため、複数台の監視カメラを設置しておき、カメラ制御端末で接続する監視カメラを切り替えて制御する監視システムも多い。監視カメラが複数の場合は、前述のようなキャリブレーションを複数の監視カメラごとに行い、校正角度poffも複数の監視カメラごとに記憶する。そして複数の監視カメラからひとつを選択すると、選択した監視カメラの校正角度poffを読み出して補正を行い、補正した指示値を選択した監視カメラへ送信するよう構成すればよい。
【0045】
なお、前述の例では水平方向の角度の制御について説明したが、垂直方向の角度の制御にも本発明を適用可能である。カメラ制御端末10が監視カメラ20の垂直方向の撮像方向を制御するときの例を説明する。
【0046】
垂直方向の角度の制御の場合、カメラ制御端末10に、方位センサー105の代わりに垂直方向の絶対角度の角度データを出力する絶対角度センサーを設ける。垂直方向の絶対角度センサーは、たとえば3軸加速度センサーを用いることができる。3軸加速度センサーで重力加速度の方向を計測すれば、鉛直方向からの垂直方向の角度を算出することができる。絶対角度センサーの出力する角度データをキャリブレーションによって補正した値を、カメラの垂直方向の角度の指示値として出力する。
【0047】
具体的には、図5において、カメラ制御端末10の垂直方向を、表示部の対面が正対する方向、すなわち図5の矢印B、矢印Dの方向として、絶対角度センサーはその垂直方向の角度データを出力する。また、垂直方向の絶対角度の角度データは、真下、すなわち鉛直方向のとき0°、水平のとき90°であると定義する。監視カメラ20は、垂直方向の撮像方向が0°〜90°の範囲で監視を行うものとする。また、キャリブレーションの結果、校正角度poffが−45であるとする。
【0048】
このような補正を行ったとき、カメラ制御端末10の垂直方向を図5の矢印B方向、すなわち絶対角度135°とすれば、監視カメラ20の垂直方向の撮像方向は、矢印C方向、すなわち絶対角度90°(水平)となる。カメラ制御端末10の垂直方向を矢印D方向、すなわち絶対角度45°の方向とすれば、監視カメラ20の垂直方向の撮像方向は、矢印E方向、すなわち絶対角度0°(真下)となる。したがって、カメラ制御端末10を絶対角度45°〜135°の間で動かせば、監視カメラ20の撮像方向を絶対角度0°〜90°の範囲で動かすことができる。カメラ制御端末10の画面を真上や真下へ向ける必要がないので、カメラ制御端末10の画面を見やすい状態で、またカメラ制御端末10の操作をしやすい状態で、監視を行うことができる。すなわち、カメラ制御端末10の視認性や操作性を向上することができる。
【0049】
特許文献1に記載の発明によれば、カメラに磁気方位センサーなどの絶対角度を検出する絶対角度検出手段を設ける必要がある。監視システムでは複数のカメラを用いる場合が多いが、そのような監視システムに特許文献1に記載の監視カメラ装置を用いると、複数のカメラそれぞれに絶対角度検出手段が必要なため、監視システムのコストが増加してしまう。
【0050】
これに対し、本発明によれば、直感的にカメラの撮像方向を指示することができるとともに、カメラに絶対角度検出手段を設ける必要がない。多数を用いることの多いカメラに関しては、一般的な雲台付きのカメラをそのまま使用して、通常は監視システムに1台しかないカメラ制御装置に本発明を適用すればよいので、監視システム全体で見たときのコストの増加を抑えられる。また、既存の監視システムに対しても、多数のカメラを交換する必要がなく、1台しかないカメラ制御装置を交換するだけで本発明を適用することができる。更に、監視システムでは、カメラは天井などの高所に取り付けられることが多く、交換作業は容易ではないが、カメラ制御装置は警備員室の操作卓などに置かれることが多く、交換は比較的容易である。このように、本発明は、既存の監視システムにも容易に適用可能である。
【0051】
また、本発明は上記した装置の機能をコンピューターに実現させるためのプログラムを含むものである。これらのプログラムは、記録媒体から読み取られコンピューターに取り込まれてもよいし、通信ネットワークを介して伝送されてコンピューターに取り込まれてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 カメラ制御端末
20 監視カメラ
30 通信ユニット
101 通信部
102 復号部
103 表示部
104 キャリブレーションボタン
105 方位センサー
106 制御部
107 メモリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラと通信回線を介して接続され、前記カメラの撮像方向を制御する可搬型のカメラ制御装置において、
前記カメラ制御装置の方向を、あらかじめ定められた第1の基準位置に対する制御角度として求める角度検出部と、
前記角度検出部が検出した前記制御角度の情報を、前記カメラに送信することで、前記カメラの撮像方向を、前記カメラに設定されている第2の基準位置に対する前記制御角度の位置に移動させるよう制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、
前記カメラを第1の特定の方向に移動させたときの前記カメラ制御装置の方向を、前記角度検出部に第1の角度として検出させ、
前記カメラ制御装置が第2の特定の方向に移動したときの前記カメラ制御装置の方向を、前記角度検出部に第2の角度として検出させ、
前記第1の角度と前記第2の角度との差分を校正角度として求め、
前記校正角度を求めた後は、前記制御角度に前記校正角度を加えた角度を新たな制御角度とし、この新たな制御角度の情報を、前記カメラに送信する
ことを特徴とするカメラ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は
前記第2の特定の方向が前記第1の特定の方向と同一であるときに、前記カメラ制御装置の方向を、前記角度検出部に第2の角度として検出させることを特徴とする請求項1に記載のカメラ制御装置。
【請求項3】
カメラと通信回線を介して接続され、前記カメラの撮像方向を制御する可搬型のカメラ制御装置に用いられるカメラ制御方法であって、
前記カメラ制御装置の方向を、あらかじめ定められた第1の基準位置に対する制御角度として求める角度検出ステップと、
前記角度検出ステップで検出した前記制御角度の情報を、前記カメラに送信することで、前記カメラの撮像方向を、前記カメラに設定されている第2の基準位置に対する前記制御角度の位置に移動させるよう制御する制御ステップと
を含み、
前記制御ステップは
前記カメラを特定の方向に移動させたときの前記カメラ制御装置の方向を、前記角度検出ステップで第1の角度として検出させ、
前記カメラ制御装置が前記特定の方向に移動したときの前記カメラ制御装置の方向を、前記角度検出ステップで第2の角度として検出させ、
前記第1の角度と前記第2の角度との差分を校正角度として求め、
前記校正角度を求めた後は、前記制御角度に前記校正角度を加えた角度を新たな制御角度として、この新たな制御角度の情報を、前記カメラに送信する
ことを特徴とするカメラ制御方法。
【請求項4】
カメラと通信回線を介して接続され、前記カメラの撮像方向を制御する可搬型のカメラ制御装置に用いられるカメラ制御プログラムであって、
前記カメラ制御装置の方向を、あらかじめ定められた第1の基準位置に対する制御角度として求める角度検出機能と、
前記角度検出機能が検出した前記制御角度の情報を、前記カメラに送信することで、前記カメラの撮像方向を、前記カメラに設定されている第2の基準位置に対する前記制御角度の位置に移動させるよう制御する制御機能と
をコンピューターに実現させ、
前記制御機能は
前記カメラを第1の特定の方向に移動させたときの前記カメラ制御装置の方向を、前記角度検出機能に第1の角度として検出させ、
前記カメラ制御装置が第2の特定の方向に移動したときの前記カメラ制御装置の方向を、前記角度検出機能に第2の角度として検出させ、
前記第1の角度と前記第2の角度との差分を校正角度として求め、
前記校正角度を求めた後は、前記制御角度に前記校正角度を加えた角度を新たな制御角度とし、この新たな制御角度の情報を、前記カメラに送信する
ことを特徴とするカメラ制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−186591(P2012−186591A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47354(P2011−47354)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】