説明

カメラ及びカメラの撮影方法

【課題】撮影補助光を発光して暗い被写体をスローシャッター撮像する際に、撮影範囲中の動きのある被写体をぶれ画像、あるいは流れた画像として撮像可能にし、動感のある撮像効果を得ることができるようにする。
【解決手段】画像を撮像する撮像手段と、半導体発光素子38とを有し、暗い被写体を前記半導体発光手段の発光によりスローシャッター撮像するカメラにおいて、システムコントローラ52は、半導体発光素子38の発光を指示する情報を取得すると、スローシャッター撮像時のシャッタースピードと同等の時間、半導体発光素子38を発光させ続けるように発光制御する。これにより、撮影範囲中に動きのある被写体(例えば、主要被写体の背後を通過する電車等)をぶれ画像、あるいは流れた画像として撮影することができ、動感のある撮像効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラ及びカメラの撮影方法に係り、特に撮影補助光を使用したスローシャッター撮像が可能なカメラ及びカメラの撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、動きのある被写体を撮像する際に露光時間を1/15秒といったスローシャッターにして撮像を実施して、被写体の一部又は全体がぶれて写るように撮像する手法が用いられている。
【0003】
また、露光中の被写体に対して補助光を照射することによって、被写体の光量不足を補うことが可能な携行容易な発光装置(フラッシュ等の閃光装置)が一般に用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発光装置を用いてスローシャッター撮像を実施した場合には、カメラにおける露光輝度(発光光度)と発光装置が発する発光輝度との関係は、図9に示すような関係となる。したがって、スローシャッターによる露光中に発光装置が光を発光して被写体の撮像を実施すると、例えば図10に示すような画像が得られる。
【0005】
図10に示す画像は、動いている電車を背景にして人物を撮像した画像であるが、被写体全体の光量が不足しているために、露光中に補助光を発光している。この補助光の発光時間Tf0(通常は200μ秒程度)は、露光時間Ts0(秒)と比較して極短時間であるために、人物とともに背景の電車もこの発光時間Ts0の間にほとんどが露光してしまう。したがって動いていた電車も停止して撮像されるので、スローシャッターで撮像したことによる動感の効果が全く表現されていない画像となってしまっている。
【0006】
また、従来からパイロットランプ等に用いられているLEDは、連続で発光することを目的として設計されていたために、カメラに於ける発光装置のようにほぼ瞬間発光する際の発光輝度向上対策がなされておらず、カメラの発光装置として使用する場合にはLED素子が本来持っている潜在的能力を十分に発揮することができていなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、撮影補助光を発光して暗い被写体をスローシャッター撮像する際に、撮影範囲中の動きのある被写体をぶれ画像、あるいは流れた画像として撮像することができ、動感のある撮像効果を得ることが可能なカメラ及びカメラの撮影方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、画像を撮像する撮像手段と、半導体発光手段とを有し、暗い被写体を前記半導体発光手段の発光によりスローシャッター撮像するカメラにおいて、前記半導体発光手段の発光を指示する情報を取得すると、前記撮像手段のシャッタータイミングに同期して前記半導体発光手段を発光させ、かつスローシャッター撮像時のシャッタースピードと同等の時間、前記半導体発光手段を発光させる発光制御手段を備え、撮影範囲中の動きのある被写体をぶれ画像として撮像することを特徴としている。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、スローシャッター撮像時に、そのシャッタースピードと同等の時間、半導体発光手段を発光させ続けるようにしたため、被写体に長時間、補助光が照射され、その結果、撮影範囲中に動きのある被写体(例えば、主要被写体の背後を通過する電車等)をぶれ画像、あるいは流れた画像として撮影することができ、動感のある撮像効果を得ることができる。
【0010】
請求項2に示すように請求項1に記載のカメラにおいて、前記発光制御手段は、発光を指示する情報を取得すると、前記半導体発光手段が発すべき発光光量又は発光輝度に基づいた所定の電流にて半導体発光手段を発光させることを特徴としている。即ち、半導体発光手段に流す電流により発光光量又は発光輝度を制御するようにしている。
【0011】
請求項3に示すように請求項1又は2に記載のカメラにおいて、前記カメラと主要被写体との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段を更に備え、前記発光制御装置は、発光を指示する情報を取得すると、カメラと主要被写体との距離に関する情報に基づいて、主要被写体がカメラの近くに存在する場合には発光輝度を暗くし、主要被写体がカメラの遠くに存在する場合には発光輝度を明るくする電流値、又は電流のデューティ比にて前記半導体発光手段を発光させることを特徴としている。即ち、主要被写体の距離に応じて半導体発光手段から発光される補助光の発光輝度を制御するようにしており、例えば、カメラの近傍に存在する人物を撮像する場合において被写体の人物に対して防眩効果を発揮する。
【0012】
請求項4に係る発明は、画像を撮像する撮像手段と、半導体発光手段とを有し、暗い被写体を前記半導体発光手段の発光によりスローシャッター撮像するカメラの撮影方法において、前記半導体発光手段の発光を指示する情報を取得するステップと、前記発光を指示する情報を取得すると、前記撮像手段のシャッタータイミングに同期して前記半導体発光手段を発光させ、かつスローシャッター撮像時のシャッタースピードと同等の時間、前記半導体発光手段を発光させるステップと、を含み、撮影範囲中の動きのある被写体をぶれ画像として撮像することを特徴としている。
【0013】
請求項5に示すように請求項4に記載のカメラの撮影方法において、前記半導体発光手段を発光させるステップは、発光を指示する情報を取得すると、前記半導体発光手段が発すべき発光光量又は発光輝度に基づいた所定の電流にて半導体発光手段を発光させることを特徴としている。
【0014】
請求項6に示すように請求項4又は5に記載のカメラの撮影方法において、前記カメラと主要被写体との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段を更に備え、前記半導体発光手段を発光させるステップは、発光を指示する情報を取得すると、カメラと主要被写体との距離に関する情報に基づいて、主要被写体がカメラの近くに存在する場合には発光輝度を暗くし、主要被写体がカメラの遠くに存在する場合には発光輝度を明るくする電流値、又は電流のデューティ比にて前記半導体発光手段を発光させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の本発明によれば、スローシャッター撮像時に、そのシャッタースピードと同等の時間、半導体発光手段を発光させ続けるようにしたため、撮影範囲中の動きのある被写体をぶれ画像、あるいは流れた画像として撮像することができ、動感のある撮像効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下添付図面に従って、本発明に係るカメラ及びカメラの撮影方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0017】
図1は、発光装置付きのカメラにてスローシャッター撮像を実施している状態を示す図である。
【0018】
同図に示すように利用者は、カメラ100を用いて動いている電車を背景に、人物のスローシャッター撮像を実施している。カメラ100には、利用者が撮像の指示を入力するシャッターレリーズボタン102と、撮像時に利用者が被写体像を確認するファインダ103と、被写体像を撮像面に結像する撮影レンズ110と、撮像時に被写体に対して補助光を発光する発光装置146とが設けられている。なお、発光装置146は、LED又は有機EL、プラズマ発光体等の半導体発光素子を用いた発光装置であり、連続して光を発光することが可能となっている。
【0019】
図2は、本発明に係るカメラの信号処理系ブロック図である。
【0020】
撮影レンズ110及びシャッター・絞り112を介して固体撮像素子(CCD)114の受光面に結像された被写体像は、光の入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。固体撮像素子114内に所定の露光時間蓄積された画像信号の電荷は、CCD駆動回路116から加えられるリードゲートパルスによってシフトレジスタに出力され、レジスタ転送パルスによって信号電荷に応じた電圧信号として順次出力される。尚、この固体撮像素子114は、蓄積した信号電荷をシャッターゲートパルスによって掃き出すことができ、これにより電荷の蓄積時間(露光時間)を制御する、いわゆる電子シャッター機能を有していてもよい。
【0021】
固体撮像素子114から順次読み出された画像の電圧信号は、相関二重サンプリング回路(CDS回路)118に加えられ、ここで各画素ごとのR、G、B信号がサンプリングホールドされ、A/D変換器120に加えられる。A/D変換器120は、相関二重サンプリング回路118から順次加えられるR、G、B信号をデジタルのR、G、B信号に変換して出力する。尚、CCD駆動回路116、相関二重サンプリング回路118及びA/D変換器120は、タイミング発生回路122から加えられるタイミング信号によって同期して駆動されるようになっている。
【0022】
前記A/D変換器120から出力されたR、G、B信号は、一旦メモリ124に格納され、その後、メモリ124に格納されたR、G、B信号は、デジタル信号処理回路126に加えられる。デジタル信号処理回路126は、同時化回路128、ホワイトバランス調整回路130、ガンマ補正回路132、YC信号作成回路134、及びメモリ136等から構成されている。
【0023】
同時化回路128は、メモリ124から読み出された点順次のR、G、B信号を同時式に変換し、R、G、B信号を同時にホワイトバランス調整回路130に出力する。ホワイトバランス調整回路130は、R、G、B信号のデジタル値をそれぞれ増減するための乗算器130R、130G、130Bから構成されており、R、G、B信号は、それぞれ乗算器130R、130G、130Bに加えられる。
乗算器130R、130G、130Bの他の入力には、中央処理装置(CPU)138からホワイトバランス制御するためのホワイトバランス補正値(ゲイン値)が加えられており、乗算器130R、130G、130Bはそれぞれ2入力を乗算し、この乗算によってホワイトバランス調整されたR’、G’、B’信号をガンマ補正回路132に出力する。
【0024】
ガンマ補正回路132は、ホワイトバランス調整されたR’、G’、B’信号が所望のガンマ特性となるように入出力特性を変更し、YC信号作成回路134に出力する。YC信号作成回路134は、ガンマ補正されたR、G、B信号から輝度信号Yとクロマ信号Cr、Cbとを作成する。これらの輝度信号Yとクロマ信号Cr、Cb(YC信号)は、メモリ124と同じメモリ空間のメモリ136に格納される。
【0025】
ここで、メモリ136内のYC信号を読み出し、液晶モニタ152に出力することによって、スルー画像や撮像された静止画等を液晶モニタ152に表示させることができる。
【0026】
また、撮像後のYC信号は、圧縮/伸長回路154によって所定のフォーマットに圧縮されたのち、記録部156にてメモリカードなどの記録媒体に記録される。更に、再生モード時にはメモリカードなどに記録されている画像データが圧縮/伸長回路154によって伸長処理された後、液晶モニタ152に出力され、液晶モニタ152に再生画像が表示されるようになっている。
【0027】
中央処理装置138は、モードダイヤル、シャッターレリーズボタン102、十字キー等を含むカメラ操作部140(入力手段)からの入力情報に基づいて各回路を統括制御するとともに、オートフォーカス、自動露光制御、ホワイトバランス等の制御を行う。このオートフォーカス制御は、例えばG信号の高周波成分が最大になるように撮影レンズ110を移動させるコントラストAFであり、シャッターレリーズボタン102の半押し時にG信号の高周波成分が最大になるように駆動部142を介して撮影レンズ110を合焦位置に移動させる。
【0028】
前記自動露光制御は、R、G、B信号を取り込み、これらのR、G、B信号を積算した積算値に基づいて被写体輝度を求め、この被写体輝度に基づいて撮像時の絞り値とシャッタースピードを決定する。
【0029】
利用者からカメラ操作部140を介して絞り優先、又はシャッタースピード優先その他の撮像条件が入力されている場合には、その入力した指示に基づいた絞り値とシャッタースピードで撮像を実施する。また、被写体の光量が不足している場合や、カメラ操作部140を介して発光装置146の発光が指示されている場合には、適宜利用者からの指示に基づいて半導体発光手段から補助光を発光する旨の指示を出力する。
【0030】
カメラ100に設定されている絞り値とシャッタースピードとから決定される露出値をEV、適正露出をLxとすると、発光装置146が発光すべき光量SVは、SV=Lx−EV・k(kは定数)で算出することが可能である。
【0031】
利用者がシャッターレリーズボタン102の全押しの操作を実施すると、カメラ100は撮像を実施するモードに入る。撮像時には、中央処理装置138は前記決定した絞り値になるように絞り駆動部144を介してシャッター・絞り112のうちの絞り部分を駆動し、また、決定した露光時間(シャッタースピード)となるように電子シャッターによって電荷の蓄積時間を制御して1コマ分の画像データを取り込み、所定の信号処理をした後、記録媒体に記録する。
【0032】
なお、発光装置146が発光する補助光の光量は、被写体の明るさや、その被写体までの距離に応じて適宜調節する必要がある。この調節処理を利用者に強要するのは酷なことであるので、カメラ100側で測定した被写体の明るさや被写体までの距離と露光時間とに応じて必要な発光輝度を算出し、その結果に対して利用者による画像の味付けとしてカメラ操作部140を介して入力した光量情報に基づいて調節した発光輝度を、発光装置146から発光するように指示する構成としてもよい。
【0033】
なお、中央処理装置138は、シャッターレリーズのタイミング情報、主要被写体までの距離情報(オートフォーカス時の合焦位置情報)、被写体の明るさ情報、補助光の発光輝度情報、補助光の発光光量情報その他の各種情報を、シリアル通信の通信手段やI/Oを介して発光装置146に送信することが可能となっている。
【0034】
なお、上記の説明ではカメラ100を電子カメラとした実施例で説明したが、本発明は電子カメラに限定されるものではなく、銀塩フイルムに被写体像を露光する銀塩カメラであっても本発明の目的を達成することが可能である。
【0035】
次に、本発明に係るカメラの撮影方法について説明する。
【0036】
図3は上記カメラ100に内蔵されている発光装置146の信号処理系ブロック図である。
【0037】
発光装置146には、シャッタースピードに対応した発光時間や発光光量、発光輝度、指定された発光色温度に対応する発光時間、被写体までの距離に応じた発光光量や発光輝度等の情報を記録するROM25と、発光光量を調節する調光用の受光センサ34と、電池40と、半導体発光素子38の発光輝度を調節する電圧及び電流を出力する電圧可変回路42(半導体発光素子38に供給する電流を調節する発光制御手段の機能を備えていてもよい)と、半導体発光素子38の発光輝度の調節指令と発光タイミングを出力するシステムコントローラ52(露光時間情報取得手段、発光情報取得手段、発光制御手段、発光光量情報取得手段、距離情報取得手段、供給電流算出手段の機能を備えていてもよい)とが設けられている。
【0038】
システムコントローラ52は発光装置146を統括制御するものである。
【0039】
システムコントローラ52(距離情報取得手段)は、カメラと主要被写体との距離に関する情報を、カメラ100の中央処理装置138等から取得することが可能となっている。
【0040】
またシステムコントローラ52(発光情報取得手段)は、半導体発光素子38(半導体発光手段)の発光を指示する情報を、カメラ100の中央処理装置138等から取得することが可能となっている。
【0041】
またシステムコントローラ52(供給電流算出手段)は、ROM25等に記録されている情報と前記取得した距離情報に基づいて、主要被写体がカメラの近くに存在する場合には発光輝度を暗くし、主要被写体がカメラの遠くに存在する場合には発光輝度を明るくするための半導体発光手段に対する供給電流値、又は供給する電流のデューティ比を算出することが可能となっている。
【0042】
またシステムコントローラ52(発光制御手段)は、カメラ100の中央処理装置138等から発光情報を取得すると、電圧可変回路42に対して半導体発光素子38が発光する補助光の色、並びに発光する補助光の輝度を調節するための算出した電流値の指令を出力することが可能となっている。
【0043】
またシステムコントローラ52(発光制御手段)は、発光情報を取得すると、半導体発光素子38に供給する電流のデューティ比に基づいた発光指示を、制御回路(図3に示す例ではトランジスタ)を介して半導体発光素子38に出力することが可能となっている。このようにシステムコントローラ52は、半導体発光素子38に対して発光のタイミング、発光時間及び発光輝度又は発光光量等の発光光量情報を指示することが可能となっている。半導体発光素子38は、電流を供給すると直ちに発光を開始するので、カメラのシャッタータイミングに同期して発光と発光の停止を実施することが可能である。
【0044】
なお、上記の実施の形態では、中央処理装置138とシステムコントローラ52とを独立して設けた実施の形態で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、中央処理装置138(露光時間情報取得手段、発光情報取得手段、発光制御手段、発光光量情報取得手段、距離情報取得手段、供給電流算出手段の機能を備えていてもよい)にシステムコントローラが実施する機能を包含しても本発明の目的を達成することが可能である。
【0045】
また、半導体発光素子38の発光光量が環境温度とその半導体発光手段の物性とによって変動する場合には、半導体発光素子38の近傍に周囲温度を検出する温度センサ56を設けておき、システムコントローラ52は、この温度センサ56によって検出された周囲温度に基づいてその周囲温度にかかわらず所要の発光光量が得られるように半導体発光素子38の発光光量や発光輝度を調節することが可能となっている。
【0046】
利用者が撮像するためにシャッターレリーズボタン102を半押しすると、システムコントローラ52は当該発光装置146のガイドナンバーなどの、発光光量や発光輝度を決定するための情報をROM25から読み込む処理を行う。補助光発光のモードがオートモードに設定されている場合には、受光センサ34等から被写体の明るさを読み取って、補助光の発光光量を制御する。補助光の発光モードがマニュアルモードに設定されている場合には、利用者がカメラ操作部140を介して入力設定した露光時間、絞り開度、発光光量又は発光輝度等の発光に関する設定情報(発光光量情報等)を、中央処理装置138から読み込む。また、補助光の発光がカメラ100の制御下に置かれている場合にも、中央処理装置138から露光時間、絞り開度、発光光量、発光輝度等の発光に関する設定情報を読み込む。
【0047】
システムコントローラ52は、前記読み込んだ明るさ情報や露出情報、発光光量、発光輝度等の発光に関する設定情報に基づいて、その所定の発光光量又は発光輝度を得るための調整用の情報(R、G、B各LEDに供給する電流情報等)を電圧可変回路42に出力する。
【0048】
次に、利用者がシャッターレリーズボタン102を全押して撮像の指示を入力すると、カメラ100では中央処理装置138の指示に基づいてシャッターが開いて撮像を開始する。中央処理装置138は、システムコントローラ52に対してシャッターが開いたタイミングに同期した発光情報(半導体発光手段の発光を指示する情報)を出力する。発光情報を取得したシステムコントローラ52は、それぞれの半導体発光手段の制御回路(図3に示す例ではトランジスタ)に対して発光指示信号を出力する。これにより半導体発光素子38から設定された輝度及び光量の補助光が発光される。
【0049】
なお、主要被写体像までの距離とそのときに発光装置146が発光する光量との関係は、ROM25にテーブルとして作成して記録しておいてもよい。また、電圧可変回路42が出力する電圧値と光量との関係を示すテーブルあるいは演算式を作成し、シャッタースピードに同期させて光量を変えて半導体発光素子38を発光させるようにしてもよい。また、発光装置146が補助光を発光するタイミングに合わせてカメラ100のシャッターを開くようにしてもよい。また、制御は前記の制御と同じで、分割測光でターゲットのみ測光し光量が規定値に達したら発光装置146の発光を停止する処理、又はカメラ100のシャッターを閉じる処理を実施するようにしてもよい。
【0050】
なお、上記の説明では発光手段146がカメラ100に内蔵されている実施例で示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラとは別体の独立した発光装置であっても本発明の目的を達成することが可能となる。その場合には、カメラに設けられている中央処理装置と、別体の発光装置に設けられているシステムコントローラとの間における情報の伝達は、多くのカメラに設けられているアクセサリーシューの接点端子を介して実施するとよい。また、専用の通信ケーブルを介して各種の情報を伝達しても、本発明の目的を達成することが可能である。
【0051】
図4は、本発明に係る発光装置を用いてスローシャッター撮像を実施した場合におけるカメラの露光輝度と発光装置が発する発光輝度との関係を示す図である。
【0052】
利用者がスローシャッター撮像を指示すると、時刻T0からシャッターが開き始めて、時刻T1から半導体発光手段が露光輝度に合わせて発光時間Tfの間発光を開始する。なお、露光時間TsはT0からT4までと定義し、発光時間TfはT1からT3までと定義する。同図では、T0とT1及びT4とT5とは異なる時刻に設定してあるが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、T0とT1及びT4とT5とが同一の時刻であっても本発明の目的を達成することが可能となる。また、T0とT2、T1とT2、T3とT4、T3とT5とがそれぞれ同一の時刻であってもよい。いずれにせよ、シャッタースピードと同等の時間、補助光の発光を実施することが可能となっている。
【0053】
図5は、図4に示した撮像条件にて撮像した画像である。
【0054】
同図に示すように撮像した画像は、人物は静止しているため静止して撮像されるが、背景の電車は動いているため(露光時間及び発光時間が1/15秒である場合には、0.8〜1.5m程)ぶれて撮像される。したがって、補助光を発光した撮像であっても、スローシャッターによる動感を画像に描写することが可能となる。
【0055】
図6〜図8に、半導体発光素子に供給する電流値と時刻との関係を示す。
【0056】
図6に示す例では、R、G、B色の各半導体発光素子38に供給される電流値は、発光時間Tfの間一定の電流値が設定されている。この電流値は、システムコントローラ52(供給電流算出手段)が被写体までの距離情報や被写体の明るさ情報に基づいて算出した供給電流値を電圧可変回路42に対して指示した結果設定される電流値である。またこの電流値は、電圧可変回路42から出力される電圧と各半導体発光素子38に接続されている抵抗等に基づいて決定される。なお、半導体発光素子38の各制御回路(図3に示す例ではトランジスタ)が半導体発光素子38に供給する電流を通過、遮断するのみでなく、半導体発光素子38に供給する電流値を制御するようにしてもよい。
【0057】
図7に示す例では、R、G、B色の各半導体発光素子38に供給する電流値を一定として、半導体発光素子38の各制御回路が半導体発光素子38に供給する電流を通過、遮断して各半導体発光素子38の発光輝度を設定している。この供給電流の通過、遮断は、所定の間隔(デューティ比)で繰り返すパルス駆動にて実施している。なお、図7に示すパルス駆動と、図6に示す電流値を可変する駆動とを組み合わせて各半導体発光素子38の発光輝度を設定するようにしてもよい。
【0058】
図8に示す例では、R、G、B色の各半導体発光素子38のパルス駆動による発光とその発光の中断とを繰り返すことによって、各半導体発光素子38の発光輝度を調節している。また前述の例と同様に図8に示す駆動と、図6に示す電流値を可変する駆動とを組み合わせて実施するようにしても、本発明の目的を達成することが可能である。
【0059】
例えば、緑色の半導体発光手段に流れる電流をIg、半導体発光手段の発光効率をηg、一回の発光パルス幅をT0N、発光サイクルの時間をTxとすると、緑色の半導体発光手段が発光する光量Lgは、Lg=T0N×Ig×ηg×Tf/Txで算出することが可能である。
【0060】
なお本発明によれば、フォーカルプレーンシャッター機構を有するカメラにおけるX接点のシャッター速度以上の高速シャッター撮像時にも、補助光を連続発光して良好な画像を取得することが可能となる。従来の閃光式発光装置では、フォーカルプレーンシャッターのシャッターが全開にならない高速なシャッター速度では、シャッターの先幕と後幕とから形成されるスリットが移動する間(フォーカルプレーンシャッターの能力によって1/90〜1/250秒程度の間)閃光を複数回発光して対応していた。しかしながら閃光式の発光装置では、発光輝度を細かく設定することができなかったために、絞りの開度等の撮像条件が限られてしまうという不具合を生じていた。
【0061】
ところが本発明によれば、半導体発光手段の発光輝度は自由に変化させることが可能であるので、あらゆるシャッタースピード(シャッター幕のスリット幅が狭い高速シャッタースピードに設定されている場合には、発光輝度を明るく設定する等)、あらゆる絞りの開度に対して適切な発光輝度を設定することが可能となる。
【0062】
本発明に係る発光装置は、スローシャッターから高速シャッターまで連続して補助光の発光輝度を調節し高速同調することが可能であるとともに、従来の閃光式の発光装置のようにメインコンデンサやその充電手段を設ける必要がないので、小型かつ安価な発光装置を提供することが可能となる。
【0063】
なお、本発明によれば動画を撮像する際にも、カメラが動画1コマの撮像のための露光を実施している間だけ発光装置146の発光を実施することが可能となるため、発光装置146の消費電力を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】発光装置付カメラにてスローシャッター撮像を実施している状態を示す図
【図2】本発明に係るカメラの信号処理系ブロック図
【図3】カメラに内蔵されている発光装置の信号処理系ブロック図
【図4】本発明に係る発光装置を用いてスローシャッター撮像を実施した場合におけるカメラの露光輝度と発光装置が発する発光輝度との関係を示す図
【図5】図4に示した撮像条件にて撮像して得られた画像
【図6】半導体発光素子に供給する電流値と時刻との関係を示す実施例
【図7】半導体発光素子に供給する電流値と時刻との関係を示す他の実施例
【図8】半導体発光素子に供給する電流値と時刻との関係を示す他の実施例
【図9】従来の発光装置を用いてスローシャッター撮像を実施した場合におけるカメラの露光輝度と発光装置が発する発光輝度との関係を示す図
【図10】図9に示した従来の撮像条件にて撮像して得られた画像
【符号の説明】
【0065】
25…ROM、34…受光センサ、38…半導体発光素子、40…電池、42…電圧可変回路、52…システムコントローラ、54…調光回路、56…温度センサ、100…カメラ、110…撮影レンズ、112…シャッター・絞り、114…固体撮像素子、126…デジタル信号処理回路、138…中央処理装置、140…カメラ操作部、146…発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像する撮像手段と、半導体発光手段とを有し、暗い被写体を前記半導体発光手段の発光によりスローシャッター撮像するカメラにおいて、
前記半導体発光手段の発光を指示する情報を取得すると、前記撮像手段のシャッタータイミングに同期して前記半導体発光手段を発光させ、かつスローシャッター撮像時のシャッタースピードと同等の時間、前記半導体発光手段を発光させる発光制御手段を備え、
撮影範囲中の動きのある被写体をぶれ画像として撮像することを特徴とするカメラ。
【請求項2】
前記発光制御手段は、発光を指示する情報を取得すると、前記半導体発光手段が発すべき発光光量又は発光輝度に基づいた所定の電流にて半導体発光手段を発光させることを特徴とする請求項1記載のカメラ。
【請求項3】
前記カメラと主要被写体との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段を更に備え、
前記発光制御装置は、発光を指示する情報を取得すると、カメラと主要被写体との距離に関する情報に基づいて、主要被写体がカメラの近くに存在する場合には発光輝度を暗くし、主要被写体がカメラの遠くに存在する場合には発光輝度を明るくする電流値、又は電流のデューティ比にて前記半導体発光手段を発光させることを特徴とする請求項1又は2記載のカメラ。
【請求項4】
画像を撮像する撮像手段と、半導体発光手段とを有し、暗い被写体を前記半導体発光手段の発光によりスローシャッター撮像するカメラの撮影方法において、
前記半導体発光手段の発光を指示する情報を取得するステップと、
前記発光を指示する情報を取得すると、前記撮像手段のシャッタータイミングに同期して前記半導体発光手段を発光させ、かつスローシャッター撮像時のシャッタースピードと同等の時間、前記半導体発光手段を発光させるステップと、を含み、
撮影範囲中の動きのある被写体をぶれ画像として撮像することを特徴とするカメラの撮影方法。
【請求項5】
前記半導体発光手段を発光させるステップは、発光を指示する情報を取得すると、前記半導体発光手段が発すべき発光光量又は発光輝度に基づいた所定の電流にて半導体発光手段を発光させることを特徴とする請求項4記載のカメラの撮影方法。
【請求項6】
前記カメラと主要被写体との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段を更に備え、
前記半導体発光手段を発光させるステップは、発光を指示する情報を取得すると、カメラと主要被写体との距離に関する情報に基づいて、主要被写体がカメラの近くに存在する場合には発光輝度を暗くし、主要被写体がカメラの遠くに存在する場合には発光輝度を明るくする電流値、又は電流のデューティ比にて前記半導体発光手段を発光させることを特徴とする請求項4又は5記載のカメラの撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−46654(P2008−46654A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242877(P2007−242877)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【分割の表示】特願2002−37623(P2002−37623)の分割
【原出願日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】