説明

カメラ状態検出方法

【課題】背景画像の変化が少ない場合や、屋外等での様々な環境条件下の画像を用いる場合など、カメラのレンズ周囲の環境が様々な条件によって変化する場合は、従来の技術では、様々に変化する条件の下でカメラのレンズの汚れを区分検出することは困難である。
【解決手段】カメラで画像を複数撮像する第1工程と、前記複数の画像において画像間で重複する同一領域を検出する第2工程と、前記同一領域において他の画像と異なる特徴領域を有する画像を抽出する第3工程と、前記特徴領域を前記カメラのレンズ異常状態とする第4工程と、を備えることにより、高い検出精度でカメラの状態を検出可能な方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラのレンズ状態を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットや無人搬送車の運転に際し、従来は、レーザレンジファインダーや超音波センサを用いて自己位置検出や障害物検出を行っている。この時、検出に用いるカメラに汚れが付着して検出精度が低下することがあるため、カメラの状態検知を行う必要がる。
【0003】
カメラの状態検知の技術として、例えば、カメラに付着した汚れを検出するために、現在と過去のラベリング結果を比較して一致するデータをノイズとして検出する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7は、特許文献1における生画像変化の一例を示す図である。以下、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0005】
図7(a)〜(c)において、まず、自動車に搭載されたカメラで道路1内の走行レーンを示す白線2(2R、2L)を画像処理によって検出する。その後、この白線2などの画像中のエッジを抽出してラベリングし、白線2Lおよび2Rを精度良く認識する。ここで、レンズに対する相対移動速度が車両外の風景に比して小いため、画像のフレーム中でのカメラに付着した雨滴などの汚れは、ほぼ静止状態にある。これを利用し、過去のラベリング結果と現在のラベリング結果とを比較し、フレームの略同一位置で一致しているデータをノイズ(汚れ)として判定する。ノイズは画像のフレーム中でほぼ静止状態にあるため、所定期間にわたって、過去のラベリング結果と一致しているデータ、すなわち、静止しているデータ(領域3、4)がある場合はノイズと判定し得る。そして、車速が高い場合には、風景等の画像データはフレーム内をより高速で移動することとなるから、静止しているデータか否かの判定を、より確実に行うことが可能となる。
【0006】
また、複数のカメラを用いて撮影した複数画像を比較して検査を行う技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図8は、特許文献2における装置の基本構成図である。
【0008】
図8において、画像認識装置5〜7で、それぞれのカメラより計測対象箇所の画像を取り込む。そして、この画像を、画像処理機能を用いてノイズ等を除去し、集中管理装置8でのチューニングパラメータの作成が容易な状態にする。このようにして得られた画像をリファレンス画像(正常状態画像)とし、このリファレンス画像との比較を行うことで、ノイズ(レンズ汚れ)等の異常検出を行う。
【0009】
また、移動ロボットの複数移動点(複数画像)より、対応する特徴位置を総合演算して3次元のロボット位置を検出する技術がある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−094978号公報
【特許文献2】特開平02−082375号公報
【特許文献3】特開平03−174668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、特定の条件下におけるノイズの検出精度が低くなる可能性がある。特許文献1では、背景画像の変化が少ない場合は、画面全体に静止状態の領域が満たされ、ノイズとの区分が困難となる。また、2値化画像ラベリングによるフレーム間の略同一位置でラベリング結果が一致するかどうかの判定をおこなうため、類似形状が同一位置に存在した場合にも誤ってノイズと判定する可能性がある。また特許文献2では、リファレンス画像は一定の条件下で取得したものであり、屋外等での様々な環境条件下の画像を包含するものではない。例えば、夕日等の直射光が画像の一部に差し込んだ場合に、リファレンス画像を用いてノイズを区分するのは困難である。
【0011】
本発明は前記従来の課題を解決するためのものであって、様々な条件下において検出精度の高いカメラ状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載のカメラ状態検出方法は、カメラで画像を複数撮像する第1工程と、前記複数の画像において画像間で同一領域を検出する第2工程と、前記同一領域において、他の画像と異なる特徴領域を有する画像を抽出する第3工程と、前記特徴領域を前記カメラのレンズ異常状態とする第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2記載のカメラ状態検出方法は、請求項1記載の方法であって、特徴領域を撮像した時の情報に基づいて前記カメラのレンズにおける前記特徴領域の位置を算出する第5工程を更に備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項3記載のカメラ状態検出方法は、請求項1または2記載の方法であって、第1工程は、カメラを移動させながら前記カメラ鉛直上側の天井の画像を複数撮像する工程であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項4記載のカメラ状態検出方法は、請求項1から3いずれか記載の方法であって、第1工程と同時に画像内の特徴点位置を検出し、複数画像間で対応する特徴点位置を総合演算して、カメラの3次元初期位置を検出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項5記載のカメラ状態検出方法は、請求項1から4いずれか記載の方法であって、Zを対象物高さとカメラ高さの差分とし、対象物の位置座標をx、yとし、変換した対象物の位置座標をX、Yとした時に、第2工程において、下式(1)〜(3)を用いて歪みを補正することを特徴とする。
【0017】
【数1】

【0018】
【数2】

【0019】
【数3】

【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明のカメラ状態検出方法によれば、様々な条件下において高い検出精度でカメラの状態を検出可能な方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の説明においては、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1のロボットの概要図である。
【0023】
図1において、ロボット9は、全方位画像入力部10、全方位画像入力部10を天井・壁面に向けて保持することが可能な保持部11、全方位画像入力部10より入力された画像から天井・壁面の画像を処理する処理部12、ロボット9を移動させる車輪などの移動手段13を備える。ここで、全方位画像入力部10は、全周囲レンズを備え、直上以外の周囲360°を一度に測定できる構成となっている。また、処理部12は、天井・壁面の全景中央部の画像を変換・抽出する抽出処理部12(a)、ロボット9を移動させながら時系列で画像を記憶する記憶処理部12(b)、ロボット9を移動させながら記憶した複数画像をそれぞれ比較する比較処理部12(c)、比較画像から重畳部分を抽出する重畳処理部12(d)、重畳画像間で差分比較を行う差分処理部12(e)、差分比較により同一領域を検出する領域処理部12(f)、同一領域において汚れ(特徴的な領域の有無)を判定する判定処理部12(g)とから構成される。
【0024】
図2は、実施の形態1における入力画像の一例を示す図である。以下、図1と図2とを用いて説明する。
【0025】
全方位画像入力部10は、時系列で画像を複数撮像して図2(a)〜(d)に示す画像を取得し、記憶処理部12(b)に記憶する。図2(a)〜(d)において、中央領域14は、全周囲レンズで撮像できない全方位画像入力部10の直上の領域であり、領域15は検出したいカメラ(レンズ)の汚れである。
【0026】
図3は、実施の形態1における処理フローを示す図である。以下、図1〜図3を用いて説明する。
【0027】
図3において、まず、移動手段13でロボット9を移動させながら、全方位画像入力部10を用いてロボット9の天井の全周囲画像を撮像し、抽出処理部12(a)を用いてロボット9の天井の全景中央部の画像を抽出する(ステップS1)。
【0028】
次に、ステップS1で抽出した画像を、ロボット9の記憶処理部12(b)に記憶させる(ステップS2)。
【0029】
次に、記憶処理部12(b)に記憶された画像が少なくとも2つになるまで、ステップS1とステップS2を繰り返した後、記憶処理部12(b)に記憶された複数の画像において、比較処理部12(c)で複数の画像を比較する。この比較に基づいて、重畳処理部12(d)で画像間の重畳部分を検出する(ステップS3)。
【0030】
次に、差分処理部12(e)によって重畳する部分を有する画像間で差分比較を行う。その後、差分比較の結果に基づいて領域処理部12(f)で同一領域を検出する。ここで同一領域とは、ロボット周囲の同一箇所を異なる位置から撮像した場合におけるその同一箇所を示す領域である。なお、重畳部分が存在しない場合は、重畳部分が存在するまでステップS1からステップS3までを繰り返すか、汚れが存在しないとして処理を終了する(ステップS4)。
【0031】
次に、ステップS4で抽出した同一領域において複数の画像を比較する(ステップS5)。
【0032】
次に、ステップS5で比較した同一領域における画像間において、判定処理部12(f)で差異があるか否かを判定する。この時、同一領域における画像間で差異がある場合は、その差異がある場所(領域15)がカメラのレンズの汚れであることが分かる。ここで、2つの画像を比較して差異を検出することで、レンズの汚れの有無までは分かるが、2つの画像では、その画像のどちら側が汚れの存在する領域であるかは分からない。この場合は、少なくとも3つの画像間で比較することで、具体的にレンズのどの箇所に汚れが付着しているかが分かる(ステップS6)。
【0033】
なお、清掃手段(図示せず)をロボット9に搭載しておけば、ステップS6にて汚れを検出した後に、レンズ表面を清掃することでレンズの汚れを除去することもできる。ここで清掃手段としては、例えば、レンズに付着したホコリを吹き飛ばすための空気噴出手段や、レンズに付着した粘性の汚れをふき取るための布巾を備えたロボットアーム等が考えられる。また、画像の濃淡をより精密に判別すると、レンズに付着している汚れの種類やその除去方法までも判別することもできる。
【0034】
なお、ステップS1において、移動手段13でロボット9を移動させながらロボット9の天井を撮像したが、異なる方向(又は場所)から撮像した複数の画像を得ることが出来れば、ロボット9が静止した状態で行っても良い。
【0035】
ここで、本実施の形態における種々の処理について詳細に説明する。
【0036】
図4は、実施の形態1における全景中央部画像抽出の説明図である。
【0037】
まず、全方位画像入力部10から入力された図4(a)に示す画像において、全周囲レンズを用いることによる歪みの補正を行う。測定対象物(本実施の形態においては天井)の高さと、カメラの高さとの差分をZとし(床面を基準)、図4(b)に示すように、全方位画像入力部10で入力された対象物の位置座標をx、yとし、歪みを補正して変換した対象物の位置座標(ワールド座標)をX、Yとする。なお、本実施の形態では、Zは天井一面で一定値であると仮定し、計算を簡略化している。全方位画像入力部10から得られた濃淡の画像データに式(1)〜式(3)の変換を加えることで、全方位において画像の歪みを補正する。この変換により画像の周辺歪みが除去され、重畳部分の検出が可能となる。この変換により得られた画像を図4(c)に示す。
【0038】
【数1】

【0039】
【数2】

【0040】
【数3】

【0041】
なお、周辺歪みのない広角レンズを用いて画像入力した場合は、式(1)〜式(3)の周辺歪みの補正は不要である。
【0042】
図5は、実施の形態1における重畳部分検出の説明図である。
【0043】
図5において、複数画像を抽出し、抽出したリファレンス画像16とそれ以外の画像17とを重畳処理部12(d)で比較して、X方向のズレ量aとY方向のズレ量bを求める。ズレ量aとズレ量bは、式(4)を用いて正規化相関マッチングを行い、最も相関マッチング値rの大きい縦横方向シフト位置(a、b)を算出することで求められる。
【0044】
【数4】

【0045】
図6は、実施の形態1における差分演算の説明図である。
【0046】
図6(a)は画像16において重畳部分を点線18で囲った図であり、図6(b)は画像17において重畳部分を点線19で囲った図である。点線18で囲った重畳部分と点線19で囲った重畳部分とで差分演算を行う。この演算を行うことで、背景部分が消去され、図6(c)に示すように、背景と非同期に動くレンズの汚れの領域15が求められる。なお、本実施の形態では、2つの画像を比較する例を示したので汚れの領域15が2箇所表れているが、前述のように少なくとも3つの画像を用いることで、汚れがレンズのどの領域に存在するかを正確に検出できる。
【0047】
以上のように、本実施の形態では、動きの発生しない天井や壁面等の画像を対象とし、重なる部分を差分比較にて検出することで、低速走行時でも問題の発生しないカメラの汚れ検出技術を提供することが出来る。
【0048】
また、本実施の形態を用いることで、水滴等のように汚れ部分画像が半透明で移動後に画像写りに変化がある場合においても、差分画像には差分結果が残る。そのため、本実施の形態を用いると両者を比較して汚れを検出可である。さらに、直前、直後の画像間の比較検出であるため、環境変化を画像内に内包させて、その影響をキャンセルすることができる。これにより、カメラ汚れを安定して検出できるため、汚れの自動検出も可能である。
【0049】
更に、ロボット9を移動させて汚れ検出のための画像入力を行うに際し、画像入力と同時に画像内の特徴点位置を検出し、複数画像間で対応する特徴点位置を総合演算して、ロボット9の3次元初期位置を検出可能とすることも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のカメラの状態検出によれば、様々な環境下において高い検出精度でカメラの汚れを検出できるため、屋外と屋内を行き来する家庭用の汎用ロボットに搭載するなどの用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態1におけるロボットの概要図
【図2】実施の形態1における入力画像の一例を示す図
【図3】実施の形態1における処理フローを示す図
【図4】実施の形態1における全景中央部画像抽出の説明図
【図5】実施の形態1における重畳部分検出の説明図
【図6】実施の形態1における差分演算の説明図
【図7】特許文献1における生画像変化の一例を示す図
【図8】特許文献2における装置の基本構成図
【符号の説明】
【0052】
14 中央領域
15 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラで画像を複数撮像する第1工程と、
前記複数の画像において画像間で同一領域を検出する第2工程と、
前記同一領域において他の画像と異なる特徴領域を有する画像を抽出する第3工程と、
前記特徴領域を前記カメラのレンズ異常状態とする第4工程と、を備えること
を特徴とするカメラ状態検出方法。
【請求項2】
特徴領域を撮像した時の情報に基づいて前記カメラのレンズにおける前記特徴領域の位置を算出する第5工程を更に備えること
を特徴とする請求項1記載のカメラ状態検出方法。
【請求項3】
第1工程は、カメラを移動させながら前記カメラの鉛直上側の天井の画像を複数撮像する工程であること
を特徴とする請求項1または2記載のカメラ状態検出方法。
【請求項4】
第1工程と同時に画像内の特徴点位置を検出し、複数画像間で対応する特徴点位置を総合演算して、カメラの3次元初期位置を検出すること
を特徴とする請求項1から3いずれか記載のカメラ状態検出方法。
【請求項5】
Zを対象物高さとカメラ高さの差分とし、対象物の位置座標をx、yとし、変換した対象物の位置座標をX、Yとした時に、
第2工程において、下式(1)〜(3)を用いて歪みを補正すること
を特徴とする請求項1から4いずれか記載のカメラ状態検出方法。
【数1】

【数2】

【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−160635(P2008−160635A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349159(P2006−349159)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】