カメラ用羽根駆動装置
【課題】共通の取付軸に二つ以上の薄い板部材を熱カシメで取り付け、それらの間に羽根室を構成できるようにした、小型化に適したカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】合成樹脂製の地板1に一体成形によって立設された取付軸1fは、断面積の大きな軸部1f−1と、断面積の小さな軸部1f−2からなっていて、軸部1f−1には段差面が形成されている。薄い板部材である口径規制板2は、軸部1f−1の断面形状に対応した形状の孔を有していて、その孔を軸部1f−1に嵌合させた後、軸部1f−1の段差面形成部位の一部を過熱し鍔状に変形させることによって取り付けられている。同様に、薄い板部材であるカバー板3は、軸部1f−2の断面形状に対応した形状の孔を有していて、その孔を軸部1f−2に嵌合させた後、軸部1f−2の先端を加熱し鍔状に変形させて取り付けられ、口径規制板2との間に羽根室を構成している。
【解決手段】合成樹脂製の地板1に一体成形によって立設された取付軸1fは、断面積の大きな軸部1f−1と、断面積の小さな軸部1f−2からなっていて、軸部1f−1には段差面が形成されている。薄い板部材である口径規制板2は、軸部1f−1の断面形状に対応した形状の孔を有していて、その孔を軸部1f−1に嵌合させた後、軸部1f−1の段差面形成部位の一部を過熱し鍔状に変形させることによって取り付けられている。同様に、薄い板部材であるカバー板3は、軸部1f−2の断面形状に対応した形状の孔を有していて、その孔を軸部1f−2に嵌合させた後、軸部1f−2の先端を加熱し鍔状に変形させて取り付けられ、口径規制板2との間に羽根室を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材を、羽根室内において往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用の羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置があり、それらのうち、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置については、単独でユニット化する場合もあるが、二つ以上を一つのユニットとして構成する場合もある。そして、それらの四つの装置を単独でユニット化する場合には、通常、合成樹脂製の比較的厚い部材である地板と、その地板に取り付けられた比較的薄い板部材であるカバー板(補助地板などともいう)との間に、羽根室を構成している。また、二つの装置をユニット化する場合には、二つの装置の羽根を上記のように構成された一つの羽根室に配置することも知られているが、通常は、地板とカバー板との間に比較的薄い板部材である中間板を取り付け、二つの羽根室を構成するようにしているのが普通である。従って、三つの装置をユニット化する場合には、中間板をもう1枚取り付け、羽根室を三つ構成することもあり得る。
【0003】
ところが、上記のように羽根室を一つ構成する場合であっても、地板とカバー板の間に羽根室を構成せず、地板に隣接して薄い板部材を取り付け、その板部材とカバー板との間に羽根室を構成する場合がある。そして、そのように構成した例が、下記の特許文献1に記載されているが、このように、地板を羽根室を構成する部材としないのには、主に二つの理由がある。その一つは、特許文献1にも記載されているように、地板の羽根室側に他の部材を配置する必要がある場合である。もう一つの理由は、レンズを羽根の作動面に近づけて配置するために、地板に形成されている撮影光路用の開口部を必要以上に大きくしたいとき、そのようにすると、羽根が安定した作動を行えないため、地板の羽根室側に薄い板部材を配置する場合である。従って、それらのように構成した場合には、地板を羽根室の構成部材にした場合よりも、薄い板部材が1枚増えることになる。そして、そのようなカバー板との間に羽根室を構成している薄い板部材に、地板やカバー板などよりも直径の小さな撮影光路用の開口部を形成した場合には、その板部材を口径規制板ということがある。
【0004】
他方、上記のような最近の羽根駆動装置の場合には、電磁アクチュエータによって羽根を駆動するのが普通になっている。そして、その電磁アクチュエータは、特許文献1にも記載されているように、通常は、地板と、地板に取り付けられた固定子枠(モータ枠,カバー枠などともいう)との間に構成したアクチュエータ室に配置されている。そして、これまでは、上記のように、羽根室を構成する複数の薄い板部材を地板に取り付ける場合でも、固定子枠を地板に取り付ける場合でも、特許文献1に記載されているように、複数のねじによって取り付けるのが普通であった。しかしながら、ねじ部品はコスト面で不利であるし、また、最近では、上記のような各装置は、各種情報機器端末などにも組み込めるように非常に小型化されてきているので、ねじ止め作業も容易ではなくなってきた。
【0005】
そのため、最近では、地板が合成樹脂製であることに着目し、地板に、一体成形によって取付軸を立設しておき、その取付軸をカバー板に設けた孔に貫通させ、羽根室外に突き出た先端を熱溶解して上記の孔よりも大きな鍔状に変形させることによって、カバー板を取り付けるようにすることが知られている。この取付技術は、一般に熱カシメといわれているので、以下においても、そのようにいうことにするが、この熱カシメを用いた場合には、少なくとも、ねじ部品を必要としないので、それだけ低コストで済み、取付作業も簡単になる。そこで、この熱カシメを用い、上記のように、単に、地板にカバー板を取り付けるのではなく、合成樹脂製の固定子枠に、地板を取り付けたり、カバー板を取付けるようにしたカメラ用羽根駆動装置が下記の特許文献2に記載されている。本発明は、このような熱カシメ技術を用いて、羽根室の構成部材を取り付けたり、羽根室とアクチュエータ室の構成部材を取り付けたりした、カメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−91549号公報
【特許文献2】特開2005−241866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したように、カバー板を含む二つ以上の薄い板部材を、それらの相対位置が変わらないようにして地板に取り付け、少なくとも一つの羽根室を構成しようとすると、特許文献1にも記載されているように、少なくとも、薄い板部材間に、スペーサーとなる部材(特許文献1においては、間座6,7)を用意することが必要になってコスト高になってしまうため、熱カシメによって取り付ける場合には、地板に対して、各板部材ごとに長さの異なる取付軸を立設しておき、それらの専用の取付軸に対して順に板部材を取り付けていくようにしていた。
【0008】
ところが、最近のカメラ用羽根駆動装置は、極めて小型の単体カメラや、携帯電話等の情報端末機器用カメラにも採用できるようにする必要があるため、薄型化はもとより、平面形状の小型化が要求されているが、上記のように、それぞれ専用の取付軸を立設していると、取付軸の数が多いことから、地板の平面形状を小さくすることができなかったり所望の形状にしにくいという問題点がでてきた。そして、このことは、特許文献2に記載のように、合成樹脂製の固定子枠に立設した専用の取付軸に、熱カシメにより、地板と少なくとも一つの板部材(一つの場合は、カバー板)を取り付けて、アクチュエータ室と、少なくとも一つの羽根室を構成する場合にも同じことがいえる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製の地板に、カバー板を含む二つ以上の薄い板部材を、それらの薄い板部材間の相対間隔が変わらないようにしてしっかりと取り付け、少なくとも一つの羽根室を構成する場合に、それらの薄い板部材を、地板に一体成形で立設されている共通の取付軸に対して、熱カシメによって個々に確実に固定することを可能にした、小型化に適したカメラ用羽根駆動装置を提供することである。また、その取付軸を合成樹脂製の固定子枠に立設して、その取付軸に地板も取り付けるようにし、地板の固定子枠の間にアクチュエータ室を構成するようにした、小型化に適したカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、羽根室側の面に一体成形によって少なくとも一つの取付軸が立設されており該取付軸は羽根室側の面から該取付軸の軸心線に対して直角方向での断面積の大きい順に少なくとも二つの軸部を有していて隣接している二つの軸部間においては断面積の小さい方の軸部の断面が断面積の大きい軸部の断面からはみ出ないようにして断面積の大きい軸部に段差面を形成した合成樹脂製の地板と、各々が前記軸部の断面形状に対応した形状の孔を有していて大きい孔を有したものから順にその孔を前記各軸部に嵌合させている少なくとも二つの板部材と、を備えており、前記各板部材は、前記地板側のものから順に、前記孔を前記軸部に嵌合させたあと該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられているが、前記孔を前記取付軸の最先端の軸部に嵌合させている板部材だけは、該軸部の先端を全て熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられていて、隣接する二つの前記板部材間に羽根室を構成しているようにする。
【0011】
その場合、前記板部材のうち、前記地板の羽根室側の面の一番近くに取り付けられる板部材が、前記取付軸に形成されている軸部のうち、前記地板の羽根室側の面から二番目の軸部に取り付けられていて、該板部材と前記地板との間にも羽根室を構成しているようにしてもよい。また、前記取付軸が、合成樹脂製の固定子枠に立設されていて、前記地板には、前記取付軸の一番大きな断面積を有する軸部の断面形状に対応した孔が形成されており、前記固定子枠は、前記一番大きな断面積を有する軸部を前記地板の孔に嵌合させ、該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて前記地板を取り付け、前記地板との間にアクチュエータ室を構成しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、一体成形によって合成樹脂製の地板に立設された共通の取付軸に対し、羽根室を構成するのに必要な複数の板部材を、熱カシメによって、所定の間隔を空けて順に取り付け、一つ又は複数の羽根室を好適に構成することを可能にしたものであるため、従来よりも取付軸の数が減少し、装置の小型化が可能になる。また、そのような取付軸を、合成樹脂製の固定子枠に立設し、地板に形成した孔に嵌合させることによって、板部材のほかに地板をも取り付けるようにすれば、羽根を駆動するためのアクチュエータ室も好適に構成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置のいずれにも適用することができるものである。また、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの二つ以上を一つのユニットとして構成した装置にも適用することができるものである。更に、それらの装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することもできるし、各種情報端末機器用カメラやビデオカメラを含むデジタルカメラにも採用することのできるものである。しかしながら、それらの全ての場合について具体例を挙げて説明するまでもないので、実施例1としては、シャッタ装置を単独でユニット化したものについて詳細に説明することにし、実施例2としては、二つの装置を一つのユニットとするために、羽根室を二つ構成する場合の要部の構成を説明する。そして、図1〜図4は実施例1を説明するためのものであり、図5〜図11は実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0014】
本実施例は、シャッタ羽根を1枚備えたシャッタ装置として構成したものである。そして、この構成のシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラにも採用することが可能であるが、特にデジタルカメラに採用し易いように、小型で薄型に構成したものであるため、本実施例の説明に際しては、デジタルカメラに採用された場合を前提にして説明することにする。尚、図1は、シャッタ羽根を全開状態としている撮影待機状態を示した平面図であり、図2は、要部断面図であり、図3は、分解斜視図である。
【0015】
先ず、構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって比較的厚く形成されており、図2及び図3において、上方の面を羽根室側の面とし、下方の面をアクチュエータ室側の面としている。そして、地板1の略中央部には円形をした撮影光路用の開口部1aを形成し、その側方位置には円弧状の長孔1bを形成している。また、地板1の羽根室側の面には、五つの取付軸1c,1d,1e,1f,1gと、二つのストッパ軸1h,1iと、一つの羽根軸1jが一体成形で立設されており、アクチュエータ室側の面には、二つの取付軸1k,1mと、一つの回転軸1nとが一体成形で立設されている。尚、図3においては、取付軸1k,1mと回転軸1nを分かり易くするために、図2に示されているように、実際には厚い地板1を薄くして示してある。また、図2においては、要部の断面形状を一つの図面で理解できるようにするために、やむを得ず、取付軸1g,1fの位置を、図1及び図3に鑑みて、適当ではないところに示してある。
【0016】
それらのうち、取付軸1c,1d,1eは、直径の異なる二つの部位からなっているが、大きい直径の部位は、地板1の羽根室側の面と後述するカバー板3の羽根室側の面との間隔を規制するための台座部である。また、取付軸1fは、地板1側に形成された断面形状(軸心線に対して直角に切断した断面形状)が長円形をしている軸部1f−1と、先端側に形成されていて断面形状が円形をした軸部1f−2とからなっている。そして、断面積の小さい方の軸部1f−2は、その軸部の断面が、断面積の大きい方の軸部1f−1の断面から、はみ出さないようにして形成されていて、軸部1f−1に段差面が形成されるようにしている。また、取付軸1k,1mは、断面形状が円形をしており、回転軸1nは、後述の回転子5を回転可能に取り付けるものであるから、当然のことながら、断面形状は円形をしている。
【0017】
地板1には、羽根室側の面に隣接して口径規制板2が取り付けられている。そして、この口径規制板2を取り付けるようにした理由は、次の通りである。本実施例のシャッタ装置をカメラに組み込んだときには、図2及び図3において、地板1の下側に配置される撮影レンズを、後述するシャッタ羽根4の作動面に出来るだけ近接させて配置できるようにしたい。そのためには、比較的厚い部材である地板1に形成されている開口部1aを必要以上に大きくし、撮影レンズの一部が開口部1a内に入るようにする必要がある。ところが、そのように開口部1aを大きくしてしまうと、羽根室内でのシャッタ羽根4の作動が不安定になり、かえって撮影レンズを近接させることができなくなる。そのため、本実施例の場合には、図3から分かるように、極めて薄い板部材である口径規制板2を取り付け、この口径規制板2と後述のカバー板3との間に羽根室を構成するようにしている。しかしながら、例えば、特許文献1に記載されているような構成にするために、このように薄い板部材を取り付けることもあることは、既に説明したとおりである。
【0018】
この口径規制板2には、略中央部に上記の開口部1aよりも直径が小さくて露光開口を規制している撮影光路用の開口部2aが形成されていて、その側方位置には円弧状の長孔2bが形成されているほか、円形をした三つの孔2c,2d,2eと、二つの切欠き部2f,2gが形成されている。そのうち、開口部2aについては後述するが、長孔2bは、上記の長孔1bと重なる位置に同じ形状に形成されており、孔2c,2d,2eには、上記のストッパ軸1i,取付軸1g,羽根軸1jが嵌合している。また、切欠き部2fは、その縁を上記の取付軸1fの軸部1f−1に形成された段差面の一部に載置し、切欠き部2gは、上記のストッパ軸1hを逃げるように形成されている。そして、この口径規制板2は、地板1に2箇所で取り付けられている。図1及び図2に示されているように、そのうちの1箇所では、孔2dを貫通した取付軸1gの先端を、熱カシメによって円形の鍔状に変形させて取り付けられ、もう1箇所では、軸部1f−1の段差面形成部位の一部を、熱カシメによって半円形の鍔状に変形させて取り付けられている。尚、図2においては、孔2d,2eと切欠き部2fの符号を省略してある。
【0019】
地板1には、口径規制板2との間に所定の間隔を空けて、薄い板部材であるカバー板3が取り付けられていて、口径規制板2との間に羽根室を構成している。図3から分かるように、カバー板3は、略中央部に円形をした撮影光路用の開口部3aを形成し、その側方位置には円弧状の長孔3bを形成しているほか、円形をした七つの孔3c,3d,3e,3f,3g,3h,3iを形成している。そのうち、開口部3aは、地板1と口径規制板2の開口部1a,2aに重なるように形成されており、その直径は、開口部1aより小さいが、開口部2aよりは大きい。そのため、本実施例の場合には、露光開口が口径規制板2の開口部2aによって規制されることになるので、符号2を付けた薄い板部材を口径規制板と称している。しかしながら、本実施例においては、カバー板3の開口部3aの直径を一番小さくし、開口部3aによって露光開口を規制するようにしても構わない。特許文献1に記載されている構成では、そのように、カバー板に形成されている開口部で露光開口を規制するようにしている。従って、そのように構成した場合には、本実施例の口径規制板2に相当する薄い板部材は、口径規制板ということができなくなる。
【0020】
また、このカバー板3の長孔3bは、上記の長孔1b,2bと重なる位置に略同じ形状に形成されており、孔3c,3d,3eには、上記の取付軸1c,1d,1eが嵌合し、孔3fには、上記の取付軸1fの軸部1f−2が嵌合し、孔3g,3hには、上記のストッパ軸1i,1hが嵌合し、孔3iには、上記の羽根軸1jが嵌合している。そして、このカバー板3は、孔3c,3d,3e,3fを貫通した取付軸1c,1d,1e,1fの先端を、熱カシメによって円形の鍔状に変形させることによって取り付けられている。尚、図2においては、取付軸1cの嵌合している孔3cと、取付軸1fの軸部1f−2が嵌合している孔3fに符号を付けていない。
【0021】
上記のようにして、口径規制板2とカバー板3の間に構成された羽根室には、1枚のシャッタ羽根4が配置されている。そして、このシャッタ羽根4には、円形の孔4aと長孔4bが形成されていて、孔4aを上記の羽根軸1jに嵌合させている。尚、図2においては、それらの孔4aと長孔4bに符号を付けていない。また、本実施例の場合には、羽根室内に、このように1枚のシャッタ羽根4を配置しているだけであるが、本発明は、複数枚のシャッタ羽根を配置し、それらを同時に同じ方向へ異なる速度で往復回転させるようにしても構わない。また、周知のように、シャッタ羽根を2枚配置し、それらを同時に相反する方向へ回転させるようにしても構わない。その場合、少なくとも一方のシャッタ羽根を複数枚のシャッタ羽根とし、それらの複数枚のシャッタ羽根を、同時に同じ方向へ異なる速度で回転させるようにしても構わない。
【0022】
ここで、取付軸1fに対する口径規制板2とカバー板3の取付構成について説明を加えておく。上記したように、本実施例では、口径規制板2は、取付軸1gと、取付軸1fの軸部1f−1に取り付けられている。そこで、口径規制板2を取付軸1fの軸部1f−1に取り付けるのではなく、取付軸1gの場合と同様に、専用の取付軸を、取付軸1fの近傍位置に立設する場合を想定してみる。その場合には、当然のことながら、取付軸1fの断面形状は、全て軸部1f−2の断面形状をしていることになる。
【0023】
ところで、そのように専用の取付軸に口径規制板2を熱カシメする場合には、その取付軸の先端は、取付軸1gの先端と同じ大きさ(図1及び図4参照)の鍔状部に変形されることになる。そのため、熱カシメをするとき、そのような形状に変形させる加熱器具が取付軸1fに接しないようにしなければならないので、少なくとも、形成される鍔状部が取付軸1fに接することのない位置であって作業のし易い位置に、その専用の取付軸を立設する必要がある。しかも、鍔状部は羽根室内に形成されるので、その鍔状部がシャッタ羽根4の作動に影響しないようになる位置に専用の取付軸を立設する必要がある。それらを考えた上で図4を見れば分かるように、取付軸1fの近傍位置には、口径規制板2の専用取付軸を立設する余地は全くない。言い換えれば、本実施例は、上記のような二つの軸部1f−1,1f−2からなる取付軸1fを立設することによって、地板1の好適な形状と、装置の小型化,コンパクト化が得られていることになる。
【0024】
上記のように、地板1のアクチュエータ室側の面には、回転軸1nが立設されているが、その回転軸1nには、回転子5が回転可能に取り付けられている。この回転子5は、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石5aを有していて、その永久磁石5aと一体成形されていて、径方向へ張り出した合成樹脂製のアーム5bの先端には、出力ピン5cが設けられている。そして、その出力ピン5cは、地板1と口径規制板2の長孔1b,2bから羽根室内に挿入され、シャッタ羽根4の長孔4bに嵌合し、その先端を、カバー板3の長孔3bから羽根室外へ突き出している。尚、図1及び図4においては、永久磁石5aの磁極の境界を、便宜的に軸1nを通る1本の一点鎖線で示してある。また、本実施例の回転子5は、このような構成をしているが、アーム5bと出力ピン5cも含めて永久磁石製とすることも知られている。
【0025】
また、地板1のアクチュエータ室側の面に立設されている上記の取付軸1k,1mには、合成樹脂製の固定子枠6が取り付けられている。図3に分かり易く示されているように、この固定子枠6には、長さ方向の略中央部に中空のボビン部6aが形成されていて、その外側にコイル7を巻回している。また、ボビン部6aの両側には二つの孔6b,6cが形成されている。そして、ボビン部6aと孔6cの間には、上記の回転子5の永久磁石5aの一部を受け入れる窪みが形成されており、その窪みの中央部には上記の回転軸1nの先端を受け入れるための貫通していない穴が形成されている。また、U字形をしていて二つの脚部を有しているヨーク8は、その一方の脚部をボビン部6aの中空部に挿入し、二つの脚部の先端を磁極部として、図1及び図4に示されているように、永久磁石5aの周面に対向させている。
【0026】
このようにして、ボビン部6aの外側にコイル7を巻回し、ボビン部6aの中空部にヨーク8の一方の脚部を挿入させた固定子枠6は、その孔6b,6cを上記の取付軸1k,1mに嵌合させた後、それらの取付軸1k,1mの先端を、熱カシメによって円形の鍔状に変形させることによって取り付けられている。そして、このような構成をしたアクチュエータは、回転子5が、コイル7に対する通電方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内でだけ回転するようになっている。尚、本実施例の場合には、固定子枠6にボビン部6aが一体成形で形成されているが、この種のアクチュエータには、それらを別部材として構成したものも知られているし、回転子も含めてその他の構成をしたものも知られている。そのため、本発明は、それらのアクチュエータの構成によって限定されるものではない。
【0027】
次に、図1及び図4を用いて、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根4は、露光開口を規制している開口部2aを全開にしている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、アクチュエータのコイル7には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子5は、その永久磁石5aの磁極とヨーク8の二つの磁極部との対向配置関係による磁力で、反時計方向へ回転され、出力ピン5cによって、シャッタ羽根4を時計方向へ回転させるように付勢されているので、シャッタ羽根4がストッパ軸1hに押し付けられ、この状態が確実に維持されている。
【0028】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されることによって撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル7に順方向の電流が供給される。それによって、回転子5は、時計方向へ回転させられるので、シャッタ羽根4は、出力ピン5cによって反時計方向へ回転させられ、開口部2aを閉鎖する。このとき、シャッタ羽根は、ストッパ軸1iに当接して停止することになるが、口径規制板2がないと、ストッパ軸1iに当接したとき、シャッタ羽根4に撓みが生じて、開口部1a内に進入して配置されている撮影レンズに接触してしまうことがあるが、本実施例の場合には、口径規制板2が設けられているので、そのようなことは生じない。図4は、このようにして、シャッタ羽根4の停止した状態を示したものである。
【0029】
図4に示した状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル7に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給される。それによって、回転子5は反時計方向へ回転させられ、シャッタ羽根4は、出力ピン5cによって時計方向へ回転させられる。このとき、口径規制板2がない場合には、シャッタ羽根4が僅かでも傾いたり撓んだりすると、その長さ方向の中間部位が開口部1aの縁に当たってしまうことがあるが、本実施例の場合には、口径規制板2が設けられているので、そのようなことは生じない。そして、シャッタ羽根4は、開口部2aを全開にすると、ストッパ軸1hに当接して停止する。その後、コイル7への通電を断つと、図1の状態に復帰したことになる。
【0030】
尚、本実施例は、シャッタ装置として説明したが、このままの構成で、レンズバリア装置とすることもできる。また、シャッタ羽根の代わりに、フィルタ板のみで製作されたフィルタ羽根を備えた場合には、フィルタ装置になる。また、本実施例のシャッタ羽根に、開口部2aよりも小さい開口部を形成して絞り羽根とすれば、絞り装置にもなる。更に、本実施例のシャッタ羽根に、適当な大きさの開口部を形成し、その開口部を覆うようにしてフィルタ板を取り付ければ、フィルタ装置になる。そして、これらの装置は、全て本発明のカメラ用羽根駆動装置である。
【0031】
また、本実施例の取付軸1gは、口径規制板2の専用の取付軸であるが、この取付軸1gを、取付軸1fと同様な二つの軸部で構成し、カバー板3も取り付けるようにすれば、地板1に取付軸1dを立設しなくて済むようになり、地板1を、さらに小さくすることが可能になる。従って、本発明は、地板1に対して、取付軸1fと同様な取付軸を複数立設しても構わない。更に、本実施例は、取付軸1fの軸部1f−1と軸部1f−2の2箇所を熱カシメ部として一つの羽根室を構成しているが、このように一つの軸に二つの熱カシメ部を設けることによって、二つの羽根室を構成するようにすることが可能な場合もある。即ち、本実施例の場合には、上記した理由によって、開口部1aを大きくしたいために、口径規制板2を、地板1の羽根室側の面に密接させて熱カシメで取り付けているが、開口部1aが、開口部2a,3aのように小さくてよいのであれば、取付軸1c,1d,1eに設けた台座部に相当するような所定の形状をした台座部を取付軸1g,1fの立設部位に設け、口径規制板2をその台座部に載せ熱カシメで取り付けるようにすれば、地板1と口径規制板2との間にも、もう一つの羽根室を構成することが可能になる。本発明は、そのように構成してもよいし、そのように構成した場合には、例えば、シャッタ装置と絞り装置とを、一つの装置としてユニット化することが可能になるし、例えば開口部の大きさの異なる2枚の絞り羽根を、別々の羽根室に配置するようにすることも可能になる。
【0032】
更に、本実施例の場合には、取付軸1fを地板1に立設しているが、本発明は、このような取付軸1fを固定子枠6に立設すると共に、地板1には軸部1f−1に対応する孔を形成しておき、その固定子枠6に立設された取付軸1fの軸部1f−1を、地板1に形成された孔と口径規制板2に形成された切欠き部2fとの両方に嵌合させ、地板1と口径規制板2とを重ねた状態のまま、軸部1f−1の段差面形成部位の一部を溶解させ、固定子枠6と一体化させるようにしてもよい。このように構成した場合にも、本実施例と同様に、取付軸1fの軸部1f−1と軸部1f−2の2箇所を熱カシメ部とすることによって、一つの羽根室を構成したことになる。更に、本実施例とこれらの各変形例において、取付軸1fなどに設けられている熱カシメ部の数や板部材の数を増やせば、構成される羽根室の数を増やすことができることは言うまでもない。
【実施例2】
【0033】
次に、図5〜図11を用いて、実施例2を説明する。実施例1の説明からも分かるように、本発明のポイントは、共通の取付軸に対して複数枚の薄い板部材を熱カシメで取り付け、少なくともそれらの薄い板部材の間に羽根室を構成できるようにしたものである。そして、実施例1の場合には、口径規制板2とカバー板3という薄い二つの板部材を取り付ける場合を説明した。それに対して、本実施例は、地板11に、薄い三つの板部材である口径規制板12,中間板13,カバー板14を順に取り付け、それらの薄い三つの板部材の間に二つの羽根室を構成するようにしたものである。そのため、本実施例は、例えば、シャッタ装置と絞り装置とを、一つの装置としてユニット化することが可能であるし、開口部の大きさの異なる2枚の絞り羽根を、別々の羽根室に配置するようにすることなども可能にしたものである。そこで、本実施例の説明に当たっては、実施例1における取付軸1fの立設位置に相当する位置の構成だけを詳しく説明し、その他の構成説明は省略することにする。
【0034】
図5は、本実施例における合成樹脂製の地板11の一部を示したものであり、この地板11には、取付軸11aが一体成形によって立設されている。そして、この取付軸11aは、地板11側から断面積の大きい順に形成された、断面形状が長円形をした軸部11a−1と、断面形状が長円形をした軸部11a−2と、断面形状が円形をした軸部11a−3とからなっている。そして、隣接する軸部間では、断面積の小さい方の軸部の断面が、断面積の大きい方の軸部の断面から、はみ出さないようにして形成されていて、断面積の大きい方の軸部に段差面が形成されている。
【0035】
そこで、先ず、口径規制板12の取付構成を説明する。口径規制板12には、上記の取付軸11aの軸部11a−1に対応した形状の孔12aが形成されていて、その孔12aを軸部11a−1に嵌合させた状態が図6に示されている。この状態では、地板11と口径規制板12は密接しており、軸部11a−1の殆どは、孔12aから突き出ている。ここで、軸部11a−1の段差面形成部位の一部に図6の上方から加熱器具を当て、鍔状に変形させることによって、口径規制板12を取り付ける。そのようにして、口径規制板12を取り付けた状態が図7に示されている。
【0036】
次に、中間板13の取付構成を説明する。中間板13には、取付軸11aの軸部11a−2に対応した形状の孔13aが形成されていて、その孔13aを軸部11a−2に嵌合させた状態が図8に示されている。そのため、この状態では、口径規制板12と中間板13との間は所定の間隔に保たれており、また、軸部11a−2の殆どは、孔13aから突き出ている。このような状態にしておいて、軸部11a−2の段差面形成部位の一部に図8の上方から加熱器具を当て、鍔状に変形させて、中間板13を取り付けた状態が図9に示されている。それによって、口径規制板12と中間板13との間に一つの羽根室が構成されたことになる。
【0037】
最後に、カバー板14の取付構成を説明する。カバー板14には、取付軸11aの軸部11a−3に対応した形状の孔14aが形成されていて、その孔14aを軸部11a−3に嵌合させた状態が図10に示されている。そのため、この状態では、中間板13とカバー板14との間は所定の間隔に保たれており、また、軸部11a−3の殆どは、孔14aから突き出ている。このような状態にしておいて、軸部11a−3の先端に図10の上方から加熱器具を当て、鍔状に変形させて、カバー板14を取り付けた状態が図11に示されている。それによって、中間板13とカバー板14との間に二つ目の羽根室が構成されたことになる。
【0038】
尚、本実施例の場合には、地板11に立設された取付軸11aの3箇所を熱カシメ部とし、口径規制板12,中間板13,カバー板14を取り付けることによって二つの羽根室を構成している。しかしながら、このように、取付軸11aの3箇所を熱カシメ部とした場合であっても、実施例1の変形例の一つとして説明したように、実施例1の取付軸1c,1d,1eに設けた台座部に相当する所定の形状の台座部を取付軸11aの立設部位に設け、口径規制板12をその台座部に載せ熱カシメで取り付けるようにすれば、地板11と口径規制板12との間にも、もう一つの羽根室を構成することが可能になる。
【0039】
また、本実施例の場合にも、取付軸11aを地板11に立設しているが、本発明は、このような取付軸11aを実施例1で説明した固定子枠6に立設すると共に、地板11には軸部11a−1に対応する孔を形成しておき、その固定子枠6に立設された取付軸11aの軸部11a−1を、地板11に形成された孔と口径規制板12に形成された孔12aとの両方に嵌合させ、地板11と口径規制板12とを重ねた状態のまま、軸部11a−1の段差面形成部位の一部を溶解させ、口径規制板12を熱カシメするようにしてもよい。そして、このように構成した場合にも、本実施例と同様に、取付軸11aの軸部11a−1,11a−2,11a−3の3箇所を熱カシメ部とすることによって、二つの羽根室を構成したことになる。更に、本実施例とこれらの各変形例において、取付軸11aに設けられている熱カシメ部の数や板部材の数を増やせば、構成される羽根室の数を増やすことができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】シャッタ装置として構成した実施例1の平面図であり、シャッタ羽根を全開状態とした撮影待機状態を示したものである。
【図2】実施例1の要部断面図である。
【図3】実施例1の分解斜視図である。
【図4】実施例1の平面図であって、シャッタ羽根を閉じ状態とした撮影終了直後の状態を示したものである。
【図5】実施例2の構成の一部を示した斜視図であって、取付軸を立設した地板の一部のみを示したものである。
【図6】図5と同様にして示した実施例2の斜視図であって、取付軸に形成された断面積の一番大きな軸部に口径規制板の孔を嵌合させた状態を示したものである。
【図7】図6と同様にして示した実施例2の斜視図であって、口径規制板を取付軸の一番大きな軸部に熱カシメで取り付けた状態を示したものである。
【図8】図7と同様にして示した実施例2の斜視図であって、取付軸に形成された断面積の二番目に大きな軸部に中間板の孔を嵌合させた状態を示したものである。
【図9】図8と同様にして示した実施例2の斜視図であって、中間板を取付軸の二番目に大きな軸部に熱カシメで取り付けた状態を示したものである。
【図10】図9と同様にして示した実施例2の斜視図であって、取付軸に形成された断面積の一番小さな軸部にカバー板の孔を嵌合させた状態を示したものである。
【図11】図10と同様にして示した実施例2の斜視図であって、カバー板を取付軸の一番小さな軸部に熱カシメで取り付けた状態を示したものである。
【符号の説明】
【0041】
1,11 地板
1a,2a,3a 開口部
1b,2b,3b,4b 長孔
1c〜1g,1k,1m,11a 取付軸
1f−1,1f−2,11a−1〜11a−3 軸部
1h,1i ストッパ軸
1j 羽根軸
1n 回転軸
2,12 口径規制板
2c〜2e,3c〜3i,4a,6b,6c,12a,13a,14a 孔
2f,2g 切欠き部
3,14 カバー板
4 シャッタ羽根
5 回転子
5a 永久磁石
5b アーム
5c 出力ピン
6 固定子枠
6a ボビン部
7 コイル
8 ヨーク
13 中間板
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材を、羽根室内において往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用の羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置があり、それらのうち、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置については、単独でユニット化する場合もあるが、二つ以上を一つのユニットとして構成する場合もある。そして、それらの四つの装置を単独でユニット化する場合には、通常、合成樹脂製の比較的厚い部材である地板と、その地板に取り付けられた比較的薄い板部材であるカバー板(補助地板などともいう)との間に、羽根室を構成している。また、二つの装置をユニット化する場合には、二つの装置の羽根を上記のように構成された一つの羽根室に配置することも知られているが、通常は、地板とカバー板との間に比較的薄い板部材である中間板を取り付け、二つの羽根室を構成するようにしているのが普通である。従って、三つの装置をユニット化する場合には、中間板をもう1枚取り付け、羽根室を三つ構成することもあり得る。
【0003】
ところが、上記のように羽根室を一つ構成する場合であっても、地板とカバー板の間に羽根室を構成せず、地板に隣接して薄い板部材を取り付け、その板部材とカバー板との間に羽根室を構成する場合がある。そして、そのように構成した例が、下記の特許文献1に記載されているが、このように、地板を羽根室を構成する部材としないのには、主に二つの理由がある。その一つは、特許文献1にも記載されているように、地板の羽根室側に他の部材を配置する必要がある場合である。もう一つの理由は、レンズを羽根の作動面に近づけて配置するために、地板に形成されている撮影光路用の開口部を必要以上に大きくしたいとき、そのようにすると、羽根が安定した作動を行えないため、地板の羽根室側に薄い板部材を配置する場合である。従って、それらのように構成した場合には、地板を羽根室の構成部材にした場合よりも、薄い板部材が1枚増えることになる。そして、そのようなカバー板との間に羽根室を構成している薄い板部材に、地板やカバー板などよりも直径の小さな撮影光路用の開口部を形成した場合には、その板部材を口径規制板ということがある。
【0004】
他方、上記のような最近の羽根駆動装置の場合には、電磁アクチュエータによって羽根を駆動するのが普通になっている。そして、その電磁アクチュエータは、特許文献1にも記載されているように、通常は、地板と、地板に取り付けられた固定子枠(モータ枠,カバー枠などともいう)との間に構成したアクチュエータ室に配置されている。そして、これまでは、上記のように、羽根室を構成する複数の薄い板部材を地板に取り付ける場合でも、固定子枠を地板に取り付ける場合でも、特許文献1に記載されているように、複数のねじによって取り付けるのが普通であった。しかしながら、ねじ部品はコスト面で不利であるし、また、最近では、上記のような各装置は、各種情報機器端末などにも組み込めるように非常に小型化されてきているので、ねじ止め作業も容易ではなくなってきた。
【0005】
そのため、最近では、地板が合成樹脂製であることに着目し、地板に、一体成形によって取付軸を立設しておき、その取付軸をカバー板に設けた孔に貫通させ、羽根室外に突き出た先端を熱溶解して上記の孔よりも大きな鍔状に変形させることによって、カバー板を取り付けるようにすることが知られている。この取付技術は、一般に熱カシメといわれているので、以下においても、そのようにいうことにするが、この熱カシメを用いた場合には、少なくとも、ねじ部品を必要としないので、それだけ低コストで済み、取付作業も簡単になる。そこで、この熱カシメを用い、上記のように、単に、地板にカバー板を取り付けるのではなく、合成樹脂製の固定子枠に、地板を取り付けたり、カバー板を取付けるようにしたカメラ用羽根駆動装置が下記の特許文献2に記載されている。本発明は、このような熱カシメ技術を用いて、羽根室の構成部材を取り付けたり、羽根室とアクチュエータ室の構成部材を取り付けたりした、カメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−91549号公報
【特許文献2】特開2005−241866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したように、カバー板を含む二つ以上の薄い板部材を、それらの相対位置が変わらないようにして地板に取り付け、少なくとも一つの羽根室を構成しようとすると、特許文献1にも記載されているように、少なくとも、薄い板部材間に、スペーサーとなる部材(特許文献1においては、間座6,7)を用意することが必要になってコスト高になってしまうため、熱カシメによって取り付ける場合には、地板に対して、各板部材ごとに長さの異なる取付軸を立設しておき、それらの専用の取付軸に対して順に板部材を取り付けていくようにしていた。
【0008】
ところが、最近のカメラ用羽根駆動装置は、極めて小型の単体カメラや、携帯電話等の情報端末機器用カメラにも採用できるようにする必要があるため、薄型化はもとより、平面形状の小型化が要求されているが、上記のように、それぞれ専用の取付軸を立設していると、取付軸の数が多いことから、地板の平面形状を小さくすることができなかったり所望の形状にしにくいという問題点がでてきた。そして、このことは、特許文献2に記載のように、合成樹脂製の固定子枠に立設した専用の取付軸に、熱カシメにより、地板と少なくとも一つの板部材(一つの場合は、カバー板)を取り付けて、アクチュエータ室と、少なくとも一つの羽根室を構成する場合にも同じことがいえる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製の地板に、カバー板を含む二つ以上の薄い板部材を、それらの薄い板部材間の相対間隔が変わらないようにしてしっかりと取り付け、少なくとも一つの羽根室を構成する場合に、それらの薄い板部材を、地板に一体成形で立設されている共通の取付軸に対して、熱カシメによって個々に確実に固定することを可能にした、小型化に適したカメラ用羽根駆動装置を提供することである。また、その取付軸を合成樹脂製の固定子枠に立設して、その取付軸に地板も取り付けるようにし、地板の固定子枠の間にアクチュエータ室を構成するようにした、小型化に適したカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、羽根室側の面に一体成形によって少なくとも一つの取付軸が立設されており該取付軸は羽根室側の面から該取付軸の軸心線に対して直角方向での断面積の大きい順に少なくとも二つの軸部を有していて隣接している二つの軸部間においては断面積の小さい方の軸部の断面が断面積の大きい軸部の断面からはみ出ないようにして断面積の大きい軸部に段差面を形成した合成樹脂製の地板と、各々が前記軸部の断面形状に対応した形状の孔を有していて大きい孔を有したものから順にその孔を前記各軸部に嵌合させている少なくとも二つの板部材と、を備えており、前記各板部材は、前記地板側のものから順に、前記孔を前記軸部に嵌合させたあと該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられているが、前記孔を前記取付軸の最先端の軸部に嵌合させている板部材だけは、該軸部の先端を全て熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられていて、隣接する二つの前記板部材間に羽根室を構成しているようにする。
【0011】
その場合、前記板部材のうち、前記地板の羽根室側の面の一番近くに取り付けられる板部材が、前記取付軸に形成されている軸部のうち、前記地板の羽根室側の面から二番目の軸部に取り付けられていて、該板部材と前記地板との間にも羽根室を構成しているようにしてもよい。また、前記取付軸が、合成樹脂製の固定子枠に立設されていて、前記地板には、前記取付軸の一番大きな断面積を有する軸部の断面形状に対応した孔が形成されており、前記固定子枠は、前記一番大きな断面積を有する軸部を前記地板の孔に嵌合させ、該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて前記地板を取り付け、前記地板との間にアクチュエータ室を構成しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、一体成形によって合成樹脂製の地板に立設された共通の取付軸に対し、羽根室を構成するのに必要な複数の板部材を、熱カシメによって、所定の間隔を空けて順に取り付け、一つ又は複数の羽根室を好適に構成することを可能にしたものであるため、従来よりも取付軸の数が減少し、装置の小型化が可能になる。また、そのような取付軸を、合成樹脂製の固定子枠に立設し、地板に形成した孔に嵌合させることによって、板部材のほかに地板をも取り付けるようにすれば、羽根を駆動するためのアクチュエータ室も好適に構成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置のいずれにも適用することができるものである。また、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの二つ以上を一つのユニットとして構成した装置にも適用することができるものである。更に、それらの装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することもできるし、各種情報端末機器用カメラやビデオカメラを含むデジタルカメラにも採用することのできるものである。しかしながら、それらの全ての場合について具体例を挙げて説明するまでもないので、実施例1としては、シャッタ装置を単独でユニット化したものについて詳細に説明することにし、実施例2としては、二つの装置を一つのユニットとするために、羽根室を二つ構成する場合の要部の構成を説明する。そして、図1〜図4は実施例1を説明するためのものであり、図5〜図11は実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0014】
本実施例は、シャッタ羽根を1枚備えたシャッタ装置として構成したものである。そして、この構成のシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラにも採用することが可能であるが、特にデジタルカメラに採用し易いように、小型で薄型に構成したものであるため、本実施例の説明に際しては、デジタルカメラに採用された場合を前提にして説明することにする。尚、図1は、シャッタ羽根を全開状態としている撮影待機状態を示した平面図であり、図2は、要部断面図であり、図3は、分解斜視図である。
【0015】
先ず、構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって比較的厚く形成されており、図2及び図3において、上方の面を羽根室側の面とし、下方の面をアクチュエータ室側の面としている。そして、地板1の略中央部には円形をした撮影光路用の開口部1aを形成し、その側方位置には円弧状の長孔1bを形成している。また、地板1の羽根室側の面には、五つの取付軸1c,1d,1e,1f,1gと、二つのストッパ軸1h,1iと、一つの羽根軸1jが一体成形で立設されており、アクチュエータ室側の面には、二つの取付軸1k,1mと、一つの回転軸1nとが一体成形で立設されている。尚、図3においては、取付軸1k,1mと回転軸1nを分かり易くするために、図2に示されているように、実際には厚い地板1を薄くして示してある。また、図2においては、要部の断面形状を一つの図面で理解できるようにするために、やむを得ず、取付軸1g,1fの位置を、図1及び図3に鑑みて、適当ではないところに示してある。
【0016】
それらのうち、取付軸1c,1d,1eは、直径の異なる二つの部位からなっているが、大きい直径の部位は、地板1の羽根室側の面と後述するカバー板3の羽根室側の面との間隔を規制するための台座部である。また、取付軸1fは、地板1側に形成された断面形状(軸心線に対して直角に切断した断面形状)が長円形をしている軸部1f−1と、先端側に形成されていて断面形状が円形をした軸部1f−2とからなっている。そして、断面積の小さい方の軸部1f−2は、その軸部の断面が、断面積の大きい方の軸部1f−1の断面から、はみ出さないようにして形成されていて、軸部1f−1に段差面が形成されるようにしている。また、取付軸1k,1mは、断面形状が円形をしており、回転軸1nは、後述の回転子5を回転可能に取り付けるものであるから、当然のことながら、断面形状は円形をしている。
【0017】
地板1には、羽根室側の面に隣接して口径規制板2が取り付けられている。そして、この口径規制板2を取り付けるようにした理由は、次の通りである。本実施例のシャッタ装置をカメラに組み込んだときには、図2及び図3において、地板1の下側に配置される撮影レンズを、後述するシャッタ羽根4の作動面に出来るだけ近接させて配置できるようにしたい。そのためには、比較的厚い部材である地板1に形成されている開口部1aを必要以上に大きくし、撮影レンズの一部が開口部1a内に入るようにする必要がある。ところが、そのように開口部1aを大きくしてしまうと、羽根室内でのシャッタ羽根4の作動が不安定になり、かえって撮影レンズを近接させることができなくなる。そのため、本実施例の場合には、図3から分かるように、極めて薄い板部材である口径規制板2を取り付け、この口径規制板2と後述のカバー板3との間に羽根室を構成するようにしている。しかしながら、例えば、特許文献1に記載されているような構成にするために、このように薄い板部材を取り付けることもあることは、既に説明したとおりである。
【0018】
この口径規制板2には、略中央部に上記の開口部1aよりも直径が小さくて露光開口を規制している撮影光路用の開口部2aが形成されていて、その側方位置には円弧状の長孔2bが形成されているほか、円形をした三つの孔2c,2d,2eと、二つの切欠き部2f,2gが形成されている。そのうち、開口部2aについては後述するが、長孔2bは、上記の長孔1bと重なる位置に同じ形状に形成されており、孔2c,2d,2eには、上記のストッパ軸1i,取付軸1g,羽根軸1jが嵌合している。また、切欠き部2fは、その縁を上記の取付軸1fの軸部1f−1に形成された段差面の一部に載置し、切欠き部2gは、上記のストッパ軸1hを逃げるように形成されている。そして、この口径規制板2は、地板1に2箇所で取り付けられている。図1及び図2に示されているように、そのうちの1箇所では、孔2dを貫通した取付軸1gの先端を、熱カシメによって円形の鍔状に変形させて取り付けられ、もう1箇所では、軸部1f−1の段差面形成部位の一部を、熱カシメによって半円形の鍔状に変形させて取り付けられている。尚、図2においては、孔2d,2eと切欠き部2fの符号を省略してある。
【0019】
地板1には、口径規制板2との間に所定の間隔を空けて、薄い板部材であるカバー板3が取り付けられていて、口径規制板2との間に羽根室を構成している。図3から分かるように、カバー板3は、略中央部に円形をした撮影光路用の開口部3aを形成し、その側方位置には円弧状の長孔3bを形成しているほか、円形をした七つの孔3c,3d,3e,3f,3g,3h,3iを形成している。そのうち、開口部3aは、地板1と口径規制板2の開口部1a,2aに重なるように形成されており、その直径は、開口部1aより小さいが、開口部2aよりは大きい。そのため、本実施例の場合には、露光開口が口径規制板2の開口部2aによって規制されることになるので、符号2を付けた薄い板部材を口径規制板と称している。しかしながら、本実施例においては、カバー板3の開口部3aの直径を一番小さくし、開口部3aによって露光開口を規制するようにしても構わない。特許文献1に記載されている構成では、そのように、カバー板に形成されている開口部で露光開口を規制するようにしている。従って、そのように構成した場合には、本実施例の口径規制板2に相当する薄い板部材は、口径規制板ということができなくなる。
【0020】
また、このカバー板3の長孔3bは、上記の長孔1b,2bと重なる位置に略同じ形状に形成されており、孔3c,3d,3eには、上記の取付軸1c,1d,1eが嵌合し、孔3fには、上記の取付軸1fの軸部1f−2が嵌合し、孔3g,3hには、上記のストッパ軸1i,1hが嵌合し、孔3iには、上記の羽根軸1jが嵌合している。そして、このカバー板3は、孔3c,3d,3e,3fを貫通した取付軸1c,1d,1e,1fの先端を、熱カシメによって円形の鍔状に変形させることによって取り付けられている。尚、図2においては、取付軸1cの嵌合している孔3cと、取付軸1fの軸部1f−2が嵌合している孔3fに符号を付けていない。
【0021】
上記のようにして、口径規制板2とカバー板3の間に構成された羽根室には、1枚のシャッタ羽根4が配置されている。そして、このシャッタ羽根4には、円形の孔4aと長孔4bが形成されていて、孔4aを上記の羽根軸1jに嵌合させている。尚、図2においては、それらの孔4aと長孔4bに符号を付けていない。また、本実施例の場合には、羽根室内に、このように1枚のシャッタ羽根4を配置しているだけであるが、本発明は、複数枚のシャッタ羽根を配置し、それらを同時に同じ方向へ異なる速度で往復回転させるようにしても構わない。また、周知のように、シャッタ羽根を2枚配置し、それらを同時に相反する方向へ回転させるようにしても構わない。その場合、少なくとも一方のシャッタ羽根を複数枚のシャッタ羽根とし、それらの複数枚のシャッタ羽根を、同時に同じ方向へ異なる速度で回転させるようにしても構わない。
【0022】
ここで、取付軸1fに対する口径規制板2とカバー板3の取付構成について説明を加えておく。上記したように、本実施例では、口径規制板2は、取付軸1gと、取付軸1fの軸部1f−1に取り付けられている。そこで、口径規制板2を取付軸1fの軸部1f−1に取り付けるのではなく、取付軸1gの場合と同様に、専用の取付軸を、取付軸1fの近傍位置に立設する場合を想定してみる。その場合には、当然のことながら、取付軸1fの断面形状は、全て軸部1f−2の断面形状をしていることになる。
【0023】
ところで、そのように専用の取付軸に口径規制板2を熱カシメする場合には、その取付軸の先端は、取付軸1gの先端と同じ大きさ(図1及び図4参照)の鍔状部に変形されることになる。そのため、熱カシメをするとき、そのような形状に変形させる加熱器具が取付軸1fに接しないようにしなければならないので、少なくとも、形成される鍔状部が取付軸1fに接することのない位置であって作業のし易い位置に、その専用の取付軸を立設する必要がある。しかも、鍔状部は羽根室内に形成されるので、その鍔状部がシャッタ羽根4の作動に影響しないようになる位置に専用の取付軸を立設する必要がある。それらを考えた上で図4を見れば分かるように、取付軸1fの近傍位置には、口径規制板2の専用取付軸を立設する余地は全くない。言い換えれば、本実施例は、上記のような二つの軸部1f−1,1f−2からなる取付軸1fを立設することによって、地板1の好適な形状と、装置の小型化,コンパクト化が得られていることになる。
【0024】
上記のように、地板1のアクチュエータ室側の面には、回転軸1nが立設されているが、その回転軸1nには、回転子5が回転可能に取り付けられている。この回転子5は、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石5aを有していて、その永久磁石5aと一体成形されていて、径方向へ張り出した合成樹脂製のアーム5bの先端には、出力ピン5cが設けられている。そして、その出力ピン5cは、地板1と口径規制板2の長孔1b,2bから羽根室内に挿入され、シャッタ羽根4の長孔4bに嵌合し、その先端を、カバー板3の長孔3bから羽根室外へ突き出している。尚、図1及び図4においては、永久磁石5aの磁極の境界を、便宜的に軸1nを通る1本の一点鎖線で示してある。また、本実施例の回転子5は、このような構成をしているが、アーム5bと出力ピン5cも含めて永久磁石製とすることも知られている。
【0025】
また、地板1のアクチュエータ室側の面に立設されている上記の取付軸1k,1mには、合成樹脂製の固定子枠6が取り付けられている。図3に分かり易く示されているように、この固定子枠6には、長さ方向の略中央部に中空のボビン部6aが形成されていて、その外側にコイル7を巻回している。また、ボビン部6aの両側には二つの孔6b,6cが形成されている。そして、ボビン部6aと孔6cの間には、上記の回転子5の永久磁石5aの一部を受け入れる窪みが形成されており、その窪みの中央部には上記の回転軸1nの先端を受け入れるための貫通していない穴が形成されている。また、U字形をしていて二つの脚部を有しているヨーク8は、その一方の脚部をボビン部6aの中空部に挿入し、二つの脚部の先端を磁極部として、図1及び図4に示されているように、永久磁石5aの周面に対向させている。
【0026】
このようにして、ボビン部6aの外側にコイル7を巻回し、ボビン部6aの中空部にヨーク8の一方の脚部を挿入させた固定子枠6は、その孔6b,6cを上記の取付軸1k,1mに嵌合させた後、それらの取付軸1k,1mの先端を、熱カシメによって円形の鍔状に変形させることによって取り付けられている。そして、このような構成をしたアクチュエータは、回転子5が、コイル7に対する通電方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内でだけ回転するようになっている。尚、本実施例の場合には、固定子枠6にボビン部6aが一体成形で形成されているが、この種のアクチュエータには、それらを別部材として構成したものも知られているし、回転子も含めてその他の構成をしたものも知られている。そのため、本発明は、それらのアクチュエータの構成によって限定されるものではない。
【0027】
次に、図1及び図4を用いて、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根4は、露光開口を規制している開口部2aを全開にしている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、アクチュエータのコイル7には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子5は、その永久磁石5aの磁極とヨーク8の二つの磁極部との対向配置関係による磁力で、反時計方向へ回転され、出力ピン5cによって、シャッタ羽根4を時計方向へ回転させるように付勢されているので、シャッタ羽根4がストッパ軸1hに押し付けられ、この状態が確実に維持されている。
【0028】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されることによって撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル7に順方向の電流が供給される。それによって、回転子5は、時計方向へ回転させられるので、シャッタ羽根4は、出力ピン5cによって反時計方向へ回転させられ、開口部2aを閉鎖する。このとき、シャッタ羽根は、ストッパ軸1iに当接して停止することになるが、口径規制板2がないと、ストッパ軸1iに当接したとき、シャッタ羽根4に撓みが生じて、開口部1a内に進入して配置されている撮影レンズに接触してしまうことがあるが、本実施例の場合には、口径規制板2が設けられているので、そのようなことは生じない。図4は、このようにして、シャッタ羽根4の停止した状態を示したものである。
【0029】
図4に示した状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル7に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給される。それによって、回転子5は反時計方向へ回転させられ、シャッタ羽根4は、出力ピン5cによって時計方向へ回転させられる。このとき、口径規制板2がない場合には、シャッタ羽根4が僅かでも傾いたり撓んだりすると、その長さ方向の中間部位が開口部1aの縁に当たってしまうことがあるが、本実施例の場合には、口径規制板2が設けられているので、そのようなことは生じない。そして、シャッタ羽根4は、開口部2aを全開にすると、ストッパ軸1hに当接して停止する。その後、コイル7への通電を断つと、図1の状態に復帰したことになる。
【0030】
尚、本実施例は、シャッタ装置として説明したが、このままの構成で、レンズバリア装置とすることもできる。また、シャッタ羽根の代わりに、フィルタ板のみで製作されたフィルタ羽根を備えた場合には、フィルタ装置になる。また、本実施例のシャッタ羽根に、開口部2aよりも小さい開口部を形成して絞り羽根とすれば、絞り装置にもなる。更に、本実施例のシャッタ羽根に、適当な大きさの開口部を形成し、その開口部を覆うようにしてフィルタ板を取り付ければ、フィルタ装置になる。そして、これらの装置は、全て本発明のカメラ用羽根駆動装置である。
【0031】
また、本実施例の取付軸1gは、口径規制板2の専用の取付軸であるが、この取付軸1gを、取付軸1fと同様な二つの軸部で構成し、カバー板3も取り付けるようにすれば、地板1に取付軸1dを立設しなくて済むようになり、地板1を、さらに小さくすることが可能になる。従って、本発明は、地板1に対して、取付軸1fと同様な取付軸を複数立設しても構わない。更に、本実施例は、取付軸1fの軸部1f−1と軸部1f−2の2箇所を熱カシメ部として一つの羽根室を構成しているが、このように一つの軸に二つの熱カシメ部を設けることによって、二つの羽根室を構成するようにすることが可能な場合もある。即ち、本実施例の場合には、上記した理由によって、開口部1aを大きくしたいために、口径規制板2を、地板1の羽根室側の面に密接させて熱カシメで取り付けているが、開口部1aが、開口部2a,3aのように小さくてよいのであれば、取付軸1c,1d,1eに設けた台座部に相当するような所定の形状をした台座部を取付軸1g,1fの立設部位に設け、口径規制板2をその台座部に載せ熱カシメで取り付けるようにすれば、地板1と口径規制板2との間にも、もう一つの羽根室を構成することが可能になる。本発明は、そのように構成してもよいし、そのように構成した場合には、例えば、シャッタ装置と絞り装置とを、一つの装置としてユニット化することが可能になるし、例えば開口部の大きさの異なる2枚の絞り羽根を、別々の羽根室に配置するようにすることも可能になる。
【0032】
更に、本実施例の場合には、取付軸1fを地板1に立設しているが、本発明は、このような取付軸1fを固定子枠6に立設すると共に、地板1には軸部1f−1に対応する孔を形成しておき、その固定子枠6に立設された取付軸1fの軸部1f−1を、地板1に形成された孔と口径規制板2に形成された切欠き部2fとの両方に嵌合させ、地板1と口径規制板2とを重ねた状態のまま、軸部1f−1の段差面形成部位の一部を溶解させ、固定子枠6と一体化させるようにしてもよい。このように構成した場合にも、本実施例と同様に、取付軸1fの軸部1f−1と軸部1f−2の2箇所を熱カシメ部とすることによって、一つの羽根室を構成したことになる。更に、本実施例とこれらの各変形例において、取付軸1fなどに設けられている熱カシメ部の数や板部材の数を増やせば、構成される羽根室の数を増やすことができることは言うまでもない。
【実施例2】
【0033】
次に、図5〜図11を用いて、実施例2を説明する。実施例1の説明からも分かるように、本発明のポイントは、共通の取付軸に対して複数枚の薄い板部材を熱カシメで取り付け、少なくともそれらの薄い板部材の間に羽根室を構成できるようにしたものである。そして、実施例1の場合には、口径規制板2とカバー板3という薄い二つの板部材を取り付ける場合を説明した。それに対して、本実施例は、地板11に、薄い三つの板部材である口径規制板12,中間板13,カバー板14を順に取り付け、それらの薄い三つの板部材の間に二つの羽根室を構成するようにしたものである。そのため、本実施例は、例えば、シャッタ装置と絞り装置とを、一つの装置としてユニット化することが可能であるし、開口部の大きさの異なる2枚の絞り羽根を、別々の羽根室に配置するようにすることなども可能にしたものである。そこで、本実施例の説明に当たっては、実施例1における取付軸1fの立設位置に相当する位置の構成だけを詳しく説明し、その他の構成説明は省略することにする。
【0034】
図5は、本実施例における合成樹脂製の地板11の一部を示したものであり、この地板11には、取付軸11aが一体成形によって立設されている。そして、この取付軸11aは、地板11側から断面積の大きい順に形成された、断面形状が長円形をした軸部11a−1と、断面形状が長円形をした軸部11a−2と、断面形状が円形をした軸部11a−3とからなっている。そして、隣接する軸部間では、断面積の小さい方の軸部の断面が、断面積の大きい方の軸部の断面から、はみ出さないようにして形成されていて、断面積の大きい方の軸部に段差面が形成されている。
【0035】
そこで、先ず、口径規制板12の取付構成を説明する。口径規制板12には、上記の取付軸11aの軸部11a−1に対応した形状の孔12aが形成されていて、その孔12aを軸部11a−1に嵌合させた状態が図6に示されている。この状態では、地板11と口径規制板12は密接しており、軸部11a−1の殆どは、孔12aから突き出ている。ここで、軸部11a−1の段差面形成部位の一部に図6の上方から加熱器具を当て、鍔状に変形させることによって、口径規制板12を取り付ける。そのようにして、口径規制板12を取り付けた状態が図7に示されている。
【0036】
次に、中間板13の取付構成を説明する。中間板13には、取付軸11aの軸部11a−2に対応した形状の孔13aが形成されていて、その孔13aを軸部11a−2に嵌合させた状態が図8に示されている。そのため、この状態では、口径規制板12と中間板13との間は所定の間隔に保たれており、また、軸部11a−2の殆どは、孔13aから突き出ている。このような状態にしておいて、軸部11a−2の段差面形成部位の一部に図8の上方から加熱器具を当て、鍔状に変形させて、中間板13を取り付けた状態が図9に示されている。それによって、口径規制板12と中間板13との間に一つの羽根室が構成されたことになる。
【0037】
最後に、カバー板14の取付構成を説明する。カバー板14には、取付軸11aの軸部11a−3に対応した形状の孔14aが形成されていて、その孔14aを軸部11a−3に嵌合させた状態が図10に示されている。そのため、この状態では、中間板13とカバー板14との間は所定の間隔に保たれており、また、軸部11a−3の殆どは、孔14aから突き出ている。このような状態にしておいて、軸部11a−3の先端に図10の上方から加熱器具を当て、鍔状に変形させて、カバー板14を取り付けた状態が図11に示されている。それによって、中間板13とカバー板14との間に二つ目の羽根室が構成されたことになる。
【0038】
尚、本実施例の場合には、地板11に立設された取付軸11aの3箇所を熱カシメ部とし、口径規制板12,中間板13,カバー板14を取り付けることによって二つの羽根室を構成している。しかしながら、このように、取付軸11aの3箇所を熱カシメ部とした場合であっても、実施例1の変形例の一つとして説明したように、実施例1の取付軸1c,1d,1eに設けた台座部に相当する所定の形状の台座部を取付軸11aの立設部位に設け、口径規制板12をその台座部に載せ熱カシメで取り付けるようにすれば、地板11と口径規制板12との間にも、もう一つの羽根室を構成することが可能になる。
【0039】
また、本実施例の場合にも、取付軸11aを地板11に立設しているが、本発明は、このような取付軸11aを実施例1で説明した固定子枠6に立設すると共に、地板11には軸部11a−1に対応する孔を形成しておき、その固定子枠6に立設された取付軸11aの軸部11a−1を、地板11に形成された孔と口径規制板12に形成された孔12aとの両方に嵌合させ、地板11と口径規制板12とを重ねた状態のまま、軸部11a−1の段差面形成部位の一部を溶解させ、口径規制板12を熱カシメするようにしてもよい。そして、このように構成した場合にも、本実施例と同様に、取付軸11aの軸部11a−1,11a−2,11a−3の3箇所を熱カシメ部とすることによって、二つの羽根室を構成したことになる。更に、本実施例とこれらの各変形例において、取付軸11aに設けられている熱カシメ部の数や板部材の数を増やせば、構成される羽根室の数を増やすことができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】シャッタ装置として構成した実施例1の平面図であり、シャッタ羽根を全開状態とした撮影待機状態を示したものである。
【図2】実施例1の要部断面図である。
【図3】実施例1の分解斜視図である。
【図4】実施例1の平面図であって、シャッタ羽根を閉じ状態とした撮影終了直後の状態を示したものである。
【図5】実施例2の構成の一部を示した斜視図であって、取付軸を立設した地板の一部のみを示したものである。
【図6】図5と同様にして示した実施例2の斜視図であって、取付軸に形成された断面積の一番大きな軸部に口径規制板の孔を嵌合させた状態を示したものである。
【図7】図6と同様にして示した実施例2の斜視図であって、口径規制板を取付軸の一番大きな軸部に熱カシメで取り付けた状態を示したものである。
【図8】図7と同様にして示した実施例2の斜視図であって、取付軸に形成された断面積の二番目に大きな軸部に中間板の孔を嵌合させた状態を示したものである。
【図9】図8と同様にして示した実施例2の斜視図であって、中間板を取付軸の二番目に大きな軸部に熱カシメで取り付けた状態を示したものである。
【図10】図9と同様にして示した実施例2の斜視図であって、取付軸に形成された断面積の一番小さな軸部にカバー板の孔を嵌合させた状態を示したものである。
【図11】図10と同様にして示した実施例2の斜視図であって、カバー板を取付軸の一番小さな軸部に熱カシメで取り付けた状態を示したものである。
【符号の説明】
【0041】
1,11 地板
1a,2a,3a 開口部
1b,2b,3b,4b 長孔
1c〜1g,1k,1m,11a 取付軸
1f−1,1f−2,11a−1〜11a−3 軸部
1h,1i ストッパ軸
1j 羽根軸
1n 回転軸
2,12 口径規制板
2c〜2e,3c〜3i,4a,6b,6c,12a,13a,14a 孔
2f,2g 切欠き部
3,14 カバー板
4 シャッタ羽根
5 回転子
5a 永久磁石
5b アーム
5c 出力ピン
6 固定子枠
6a ボビン部
7 コイル
8 ヨーク
13 中間板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根室側の面に一体成形によって少なくとも一つの取付軸が立設されており該取付軸は羽根室側の面から該取付軸の軸心線に対して直角方向での断面積の大きい順に少なくとも二つの軸部を有していて隣接している二つの軸部間においては断面積の小さい方の軸部の断面が断面積の大きい軸部の断面からはみ出ないようにして断面積の大きい軸部に段差面を形成した合成樹脂製の地板と、各々が前記軸部の断面形状に対応した形状の孔を有していて大きい孔を有したものから順にその孔を前記各軸部に嵌合させている少なくとも二つの板部材と、を備えており、前記各板部材は、前記地板側のものから順に、前記孔を前記軸部に嵌合させたあと該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられているが、前記孔を前記取付軸の最先端の軸部に嵌合させている板部材だけは、該軸部の先端を全て熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられていて、隣接する二つの前記板部材間に羽根室を構成していることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記板部材のうち、前記地板の羽根室側の面の一番近くに取り付けられる板部材が、前記取付軸に形成されている軸部のうち、前記地板の羽根室側の面から二番目の軸部に取り付けられていて、該板部材と前記地板との間にも羽根室を構成していることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記取付軸が、合成樹脂製の固定子枠に立設されていて、前記地板には、前記取付軸の一番大きな断面積を有する軸部の断面形状に対応した孔が形成されており、前記固定子枠は、前記一番大きな断面積を有する軸部を前記地板の孔に嵌合させ、該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて前記地板を取り付け、前記地板との間にアクチュエータ室を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項1】
羽根室側の面に一体成形によって少なくとも一つの取付軸が立設されており該取付軸は羽根室側の面から該取付軸の軸心線に対して直角方向での断面積の大きい順に少なくとも二つの軸部を有していて隣接している二つの軸部間においては断面積の小さい方の軸部の断面が断面積の大きい軸部の断面からはみ出ないようにして断面積の大きい軸部に段差面を形成した合成樹脂製の地板と、各々が前記軸部の断面形状に対応した形状の孔を有していて大きい孔を有したものから順にその孔を前記各軸部に嵌合させている少なくとも二つの板部材と、を備えており、前記各板部材は、前記地板側のものから順に、前記孔を前記軸部に嵌合させたあと該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられているが、前記孔を前記取付軸の最先端の軸部に嵌合させている板部材だけは、該軸部の先端を全て熱溶解させ鍔状に変形させて取り付けられていて、隣接する二つの前記板部材間に羽根室を構成していることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記板部材のうち、前記地板の羽根室側の面の一番近くに取り付けられる板部材が、前記取付軸に形成されている軸部のうち、前記地板の羽根室側の面から二番目の軸部に取り付けられていて、該板部材と前記地板との間にも羽根室を構成していることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記取付軸が、合成樹脂製の固定子枠に立設されていて、前記地板には、前記取付軸の一番大きな断面積を有する軸部の断面形状に対応した孔が形成されており、前記固定子枠は、前記一番大きな断面積を有する軸部を前記地板の孔に嵌合させ、該軸部の段差面形成部位の一部を熱溶解させ鍔状に変形させて前記地板を取り付け、前記地板との間にアクチュエータ室を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−272022(P2007−272022A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98800(P2006−98800)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
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