説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】羽根が作動の最終段階で暴れたとき、カバー板に形成されている逃げ部の縁とストッパとの間に形成されている上記の隙間に入り込み、ストッパの先端面に乗り上げる。
【解決手段】地板とカバー板2との間にシャッタ羽根4が配置され、地板にはストッパ1hが立設されている。カバー板2は薄板部材であり、逃げ孔2iを形成している。ストッパ1hは、シャッタ羽根4が当接する当たり面1h−1を有していて、先端を逃げ孔2iに挿入し、カバー板2から僅かに突き出している。ストッパ1hには、シャッタ羽根4の略作動方向に沿って溝を形成したことにより、先端面1h−2よりも低い段差面1h−3が形成されている。他方、カバー板2は、逃げ孔2iの縁から張り出した張出部2nを有していて、段差面1h−3を覆うようにしてストッパ1hの溝に嵌まっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材を、羽根室内において往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用の羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置があり、それらのうち、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置については、単独でユニット化する場合もあるが、二つ以上を一つのユニットとして構成する場合もある。そして、それらの四つの装置を単独でユニット化する場合には、通常、合成樹脂製の比較的厚い部材である地板と、その地板に取り付けられたカバー板(補助地板,押さえ板などということもある)との間に、羽根室を構成している。また、二つの装置をユニット化する場合は、地板とカバー板との間を中間板(仕切り板などということもある)で仕切ることによって二つの羽根室を構成し、各々の装置の羽根を別の羽根室に配置することが多いが、中には、一つの羽根室に二つの装置の羽根を配置することも知られている。
【0003】
このようなカメラ用羽根駆動装置は、カメラ内でのスペース効率をよくするために、小型化は勿論であるが、それと同時に薄型化に対する要求も極めて大きい。そして、薄型化を図るためには、上記のような、地板,カバー板,羽根を薄くすることが必要になるが、通常、地板は、合成樹脂製であって、他の全ての構成部材を取り付ける必要があるため、薄くするには限度がある。また、羽根は、高速に作動させる必要があることから、かなり以前の段階で薄型化され尽している。そこで、最近では、カバー板の薄型化が注目されていて、小型のカメラ用羽根駆動装置の場合には、殆どのものが可撓性を有するほどに薄くしたカバー板を採用するようになってきた。
【0004】
ところで、地板には、羽根の作動を所定の位置で停止させるために、ストッパを垂直に立設することが知られている。そして、かつてのように、カバー板が厚く形成されていたときには、このストッパの先端は、カバー板に設けられた孔に挿入され、先端面がカバー板の板厚内に存在するようにしていた。その理由は、ストッパの先端面をカバー板の板面に接触させるように設計すると、組立状態で両者間に隙間ができてしまうことがあり、薄い羽根が、ストッパに当接せずに、その隙間に入り込んでしまったり、当接したときの暴れ作動によって、その隙間に入り込んでしまったりすることがあるからである。
【0005】
ところが、最近のように、カバー板を、可撓性を有してしまうほど薄く形成するようになると、ストッパの先端面が、常に板厚内に存在しているようにすることが不可能になってきた。そのため、カバー板を薄くした場合には、ストッパの先端が、カバー板の地板側とは反対の面から突き出るようにしているが、このとき、ストッパの先端を突き出させるためにカバー板に形成されている孔などの逃げ部は、製作上の観点から、ストッパの先端の断面形状よりも一回り大きく形成されていて、両者の間には隙間が存在するようになっている。そして、そのように構成した場合のカメラ用羽根駆動装置の一例が、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−93912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、最近では、デジタルカメラの普及に伴い、専用機として製作されるスチルカメラやビデオカメラなどはもちろんのこと、全てのカメラの小型化が急速に進んでおり、それに伴って、それらに内蔵されているカメラ用羽根駆動装置も一段と小型化されるようになってきた。その場合の顕著な一例を挙げれば、従来、地板は、外形が円形や方形をしているのが普通であったが、最近では、特許文献1にも記載されているように、必須としない平面領域を極力切除した複雑な形状にすることにより、削減されたスペースに少しでも他の構成部材を配置させるようにしている。
【0008】
このような実情から、特許文献1に記載されているような、カバー板を薄くしているカメラ用羽根駆動装置の場合であっても、カバー板から突き出ているストッパの突出し量を出来るだけ小さくしたいという要求がある。しかしながら、突き出し量を余り小さくすると問題が生じる。その理由は、ストッパの突出し量を極端に小さくすると、羽根が作動の最終段階で暴れたとき、薄い羽根の作動方向の縁に隣接する一部の領域が大きく変形し、カバー板に形成されている逃げ部の縁とストッパとの間に形成されている上記の隙間に入り込み、ストッパの先端面に乗り上げてしまい、そのまま身動きできない状態になってしまうことがあるからである。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、地板との間に少なくとも一つの羽根室を構成しているカバー板を薄く形成しており、地板に立設しているストッパの先端が、カバー板の地板側とは反対の面から突き出ているカメラ用羽根駆動装置において、カバー板から突き出ているストッパの突出し量を小さくしても、羽根の作動が好適に得られるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、少なくとも一つのストッパを垂直に立設している地板と、薄板状に形成されていて前記地板との間に少なくとも一つの羽根室を構成しており前記ストッパの先端を逃げ部から前記地板とは反対の面側に突き出させているカバー板と、前記羽根室内に往復作動可能に配置されていて作動の最終段階で前記ストッパに当接して停止させられる少なくとも1枚の羽根と、を備えているカメラ用羽根駆動装置において、前記ストッパは、前記地板に対して垂直であって前記羽根が当接する当たり面を形成していると共に、先端には、前記羽根の略作動方向に沿った少なくとも一つの線を境にして、少なくとも一つの先端面と、該先端面よりも低い少なくとも一つの段差面とを形成しており、前記カバー板は、前記逃げ部の縁から少なくとも前記羽根が前記ストッパへ向けて作動する方向へ張り出していて、前記段差面の少なくとも一部を覆うようにした張出部を形成しているようにする。
【0011】
その場合、前記段差面は、前記先端面に形成された一つの溝の底面として形成されており、前記張出部は、該溝に嵌め込まれているようにすると、好適な構成になる。また、前記張出部が、常態では、前記段差面に接触しているようにすると、製作時の取り扱い上において、カバー板が地板側に撓まされにくくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、地板との間に少なくとも一つの羽根室を構成しているカバー板を薄く形成しておき、地板には、羽根室内に配置されている羽根の作動を停止させるためのストッパを立設していて、そのストッパの先端を、カバー板の地板側とは反対の面から突き出させているようにしたカメラ用羽根駆動装置において、カバー板から突き出ているストッパの突出し量を小さくしても、羽根の作動が好適に得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シャッタ装置として構成した実施例の平面図であり、シャッタ羽根を全開状態にした撮影待機状態を示したものである。
【図2】図1の要部を展開状態にして示した部分断面図である。
【図3】実施例の平面図であり、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図4】従来例と実施例との相違を説明するための部分平面図であって、図4(a)は従来例を示したものであり、図4(b)は実施例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置のいずれにも適用することができるものである。また、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの二つ以上を一つのユニットとして構成した装置にも適用することができるものである。更に、それらの装置は、専用機として製作されるスチルカメラやビデオカメラのほか、各種情報端末機器用カメラ,顕微鏡用撮像装置,医療機器用撮像装置などにも採用することができるものである。しかしながら、実施例は、スチルカメラに内蔵される単独のシャッタ装置として構成したものである。
【実施例】
【0015】
本実施例のシャッタ装置は、電磁アクチュエータによって、2枚のシャッタ羽根を、相反する方向へ同時に回転させ、光路を開閉するように構成したものである。この種のシャッタ装置は、フィルムを使用するカメラにも採用することが可能であるが、本実施例は、デジタルカメラに採用されることを前提にして説明する。
【0016】
先ず、主に、図1及び図2を用いて本実施例の構成を説明するが、最初に、主な構成部材の配置関係を説明しておく。地板1は、合成樹脂製であって、厚い板状をしており、その両面は複雑な形状をしている。また、カバー板2は、合成樹脂製でも金属製でも構わないが、図2から分かるように、地板1よりは極端に薄い板状部材であり、その外形形状は、図1から分かるように、地板1よりも僅かに小さい。そして、このカバー板2は、後述する手段によって地板1に取り付けられており、地板1との間に羽根室を構成しているが、その羽根室内には、2枚のシャッタ羽根3,4が配置されている。また、羽根室とは反対側になる地板1の面に、電磁アクチュエータが取り付けられているが、図1においては、その回転子5だけが示されている。
【0017】
次に、それらの構成部材の具体的な形状と、取付け構成を説明する。地板1は、カメラ内での設置スペースや取付け箇所などを考慮した複雑な外形形状をしており、比較的大きな円形をした光路用の開口部1aと、円形をした二つの取付孔1b,1cと、円弧状をした長孔1dとを有している。また、地板1の羽根室側の面には、円柱状をした二つの羽根取付軸1e,1fと、四つのストッパ1g,1h,1i,1jと、円柱状をした一つの位置決めピン1kとが立設されている。それらのうち、四つのストッパ1g,1h,1i,1jは全て同じ形状をしているが、その具体的な形状については、ストッパ1hの場合で後述する。
【0018】
また、地板1の羽根室側の面には、外周部に、七つの受け部1m,1n,1p,1q,1r,1s,1tと、一つのフック部1uとが形成されているが、それらのうち、受け部1qは、ストッパ1iの近傍領域から、羽根取付軸1eの近傍領域まで長く形成されている。また、受け部1tは、カメラ側の構成部材に対する受け部であるが、その他の受け部1m,1n,1p,1q,1r,1sは、カバー板2の受け部であり、受け部1p,1rには、ねじ穴が形成されている。更に、地板1の羽根室側とは反対の面に、円柱状をした回転子取付軸1vが立設されている。
【0019】
カバー板2は、上記の開口部1aと対向するところに、同じ形状をした光路用の開口部2aを有し、また、上記の取付孔1b,1cと対向するところには、同じ形状をした取付孔2b,2cを有しており、さらに、上記の長孔1dと対向するところには、同じ形状をした長孔2dを有している。また、このカバー板2は、上記の羽根取付軸1e,1fの先端を嵌合させた円形の孔2e,2fと、上記の位置決めピン1kの先端を嵌合させた長孔2gを有している。
【0020】
また、カバー板2には、上記のストッパ1g,1iの両方の先端を挿入した逃げ孔2hと、上記のストッパ1h,1jの先端を個々に挿入した二つの逃げ孔2i,2jとが形成されているが、部品加工や組立上で有利な構成とするために、それらの逃げ孔2h,2i,2jは、いずれも、ストッパ1g,1i,1h,1jとの間に隙間を形成する大きさをしている。そして、逃げ孔2hの縁には二つの張出部2k,2mが形成され、逃げ孔2i,2jの縁には、一つずつの張出部2n,2pが形成されているが、それらの張出部2k,2m,2n,2pは、いずれも、各々のシャッタ羽根3,4が、上記のストッパ1g,1i,1h,1jへ向けて作動する方向へ張り出すように形成されている。尚、これらの張出部2k,2m,2n,2pと上記のストッパ1g,1i,1h,1jとの各相互間の構成は、いずれも同じである。そのため、それらの構成は、張出部2nとストッパ1hとの場合で、具体的に後述する。
【0021】
カバー板2には、さらに、三つの段差部2q,2r,2sが形成されている。そして、このカバー板2は、段差部2qに地板1のフック部1uを引っ掛けておき、ねじ6,7を、段差部2r,2sに形成された孔に通し、上記の受け部1p,1rに形成されたねじ穴にねじ込むことによって、地板1に取り付けられている。また、この装置は、いずれも重なるように形成されている取付孔1b,2bと、取付孔1c,2cとの2箇所において、カメラ本体に取り付けられるようになっている。
【0022】
ここで、略同じ形状をしている上記の複数のストッパを代表し、ストッパ1hの具体的な形状を説明すると共に、そのストッパ1hの先端と張出部2nとの構成関係を、主に、図2及び図4(b)を用いて説明する。先ず、ストッパ1hは、地板1に対して垂直な当たり面1h−1を、地板1の面から先端面1h−2まで形成している。そして、このストッパ1hの先端には、シャッタ羽根4の略作動方向(図4(b)における上下方向)に沿って溝が形成されており、その底面を段差面1h−3としている。他方、カバー板2は、逃げ孔2iの縁に、シャッタ羽根4の略作動方向に沿いストッパ1hに向けて張出部2nを形成しており、その張出部2nをストッパ1hの溝に嵌め込み、常態では、段差面1h−3に接触させている。
【0023】
そのため、装置の製作や運搬などの段階において、図2の上方から、張出部2nの近傍領域に、カバー板2を押し下げる不測の力が加わったとしても、カバー板2が大きく撓まされて変形させられたり破壊されたりするおそれがないようになっている。このように、ストッパ1hは、本来のストッパ以外の役目もしているが、その必要性がない場合には、段差面1h−3を本実施例よりも低いところに形成し、張出部2nが接触しないようにしても構わない。また、本実施例では、ストッパ1hの断面形状がD字状をしているが、本発明のストッパは、このような断面形状に限定されず、本実施例のような当たり面1h−1が形成されてさえいれば、どのような断面形状であっても構わない。
【0024】
更に、本実施例では、ストッパ1hの先端が、逃げ孔2iに挿入されているが、本発明の逃げ部は、逃げ孔2iのような孔形状である必要はない。例えば、本実施例のストッパ1hが、地板1の外周部に立設されるように構成された場合には、本実施例においてカバー板2が受け部1tを逃げているところの形状のように、切り込み部として形成しても構わない。また、本実施例では、ストッパ1gの逃げ孔とストッパ1iの逃げ孔とが、連設された大きな一つの逃げ孔2hとして形成されているが、それと同じようにして、例えば、逃げ孔2iを、他の目的で形成されている孔や切り込み部と連設するようにしても構わない。
【0025】
次に、羽根室内において、一部が重なり合っているようにして配置されている2枚のシャッタ羽根3,4の構成を説明する。先ず、地板1側に配置されているシャッタ羽根3は、長孔3aを有していて、上記の羽根取付軸1eに対して回転可能に取り付けられている。また、カバー板2側に配置されているシャッタ羽根4は、長孔4aを有していて、上記の羽根取付軸1fに対して回転可能に取り付けられている。そして、それらの長孔3a,4aの両方に、後述する回転子5の出力ピン5cが嵌合している。
【0026】
地板1の羽根室側とは反対の面に、シャッタ羽根3,4を往復回転させるための電磁アクチュエータが取り付けられている。本実施例の場合、その電磁アクチュエータは、上記の特許文献1に記載されている周知の電磁アクチュエータと実質的に同じであって、永久磁石を有する回転子が、固定子コイルに供給される電流方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内においてだけ回転させられるようにした電流制御式の電磁アクチュエータである。そのため、その全体の構成については、詳細に説明するまでもないので、図1に示されている回転子5についてだけ説明をしておく。
【0027】
この電磁アクチュエータの回転子5は、地板1の回転子取付軸1vに回転可能に取り付けられていて径方向に2極に着磁されている円筒形の永久磁石5aと、その径方向へ延伸しているように一体成形された合成樹脂製の腕部5bと、その先端に形成された出力ピン5cとからなっており、その出力ピン5cは、地板1の長孔1dを貫通してシャッタ羽根3,4の長孔3a,4aに嵌合し、先端をカバー板2の長孔2dに挿入している。尚、本実施例の回転子5は、このような構成をしているが、腕部5bと出力ピン5cを含めて永久磁石製としたものも知られている。
【0028】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、このとき、シャッタ羽根3,4は、開口部1a,2aを全開にしている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニター(液晶ファインダなど)によって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、電磁アクチュエータの固定子コイルには通電されていないが、周知のように、永久磁石5aの磁極と固定子ヨークの磁極部との対向位置関係により、回転子5には時計方向へ回転する力が与えられている。ところが、回転子5は、シャッタ羽根3がストッパ1gの当たり面(符号なし)に接触し、シャッタ羽根4がストッパ1hの当たり面1h−1に接触しているため、その回転を阻止され、この状態が維持されている。
【0029】
撮影に際してカメラのレリーズボタンが押されると、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されて撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、電磁アクチュエータの固定子コイルに対して電流が供給される。それにより、回転子5は反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cが、シャッタ羽根3を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根4を時計方向へ回転させる。従って、シャッタ羽根3,4は、開口部1a,2aを閉じていく。
【0030】
そして、開口部1a,2aを閉じると、その直後に、先ず、シャッタ羽根3がストッパ1jの当たり面(符合なし)に当接する。その当接によってシャッタ羽根3が瞬間的に撓まされるので、続いてシャッタ羽根4もストッパ1iの当たり面(符合なし)に当接して撓まされる。その後、シャッタ羽根3,4が原形に復して静止した状態が図3に示されている。従って、この状態においては、シャッタ羽根3は、ストッパ1jの当たり面に接触しているが、シャッタ羽根4は、ストッパ1iの当たり面から離れている。
【0031】
この状態で、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として画像記憶装置に転送されると、電磁アクチュエータの固定子コイルには、上記とは逆方向に電流が供給される。そのため、回転子5は、図3の状態から時計方向へ回転させられるので、出力ピン5cが、シャッタ羽根3を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根4を反時計方向へ回転させて、開口部1a,2aを開かせていく。そして、開口部1a,2aを全開にした直後に、略同時に、シャッタ羽根3がストッパ1gの当たり面(符号なし)に当接し、シャッタ羽根4がストッパ1hの当たり面1h−1に当接する。その当接によって、シャッタ羽根3,4は、瞬間的に撓まされ、その後、原形に復して静止する。その静止状態が、図1に示された撮影待機状態である。
【0032】
尚、上記の作動は、本実施例のシャッタ装置をデジタルカメラに採用した場合で説明したが、フィルムを使用するカメラに採用した場合には、図3に示された状態が撮影待機状態であって、撮影に際しては、シャッタ羽根3,4は、図1に示された状態になってから図3に示された状態に復帰するようになる。
【0033】
ところで、シャッタ羽根3,4は、上記のように作動させられるが、それらの作動を詳細に見てみると、実際には、同じシャッタ装置であっても、常に同じように作動するわけではなく、また、同じ規格で製作されたシャッタ装置同士であっても、同じように作動することは殆どない。それは、撮影時におけるカメラの姿勢によっても異なってしまうことがあるし、加工公差などに起因する個体差によっても異なってしまうからである。従って、上記のように、シャッタ羽根3,4が各々のストッパの当たり面に当接する場合にも、様々な当接の仕方をすることになる。
【0034】
そのため、シャッタ羽根3,4は、ストッパに当接したとき、その衝撃で一時的に変形させられ、いわゆる暴れ作動をすることになるが、その暴れ作動は様々な態様で行われることになる。そして、本実施例のように、カバー板2が薄い場合には、その暴れ作動によってカバー板2を一時的に撓ませてしまい、シャッタ羽根3,4の一部が、ストッパの先端面に乗り上げるような格好で身動きできない状態になってしまう現象を生じさせることがある。しかも、そのような現象は、カバー板2からのストッパの突き出し量が小さければ小さいほど生じ易い。ところが、本実施例は、そのような現象を生じさせにくい構成になっている。そこで、そのことを、図4を用いて、シャッタ羽根4とストッパ1hとの関係で説明する。
【0035】
図4(a)は、従来の構成を示したものであり、図4(b)は、本実施例の構成を示したものである。そこで先ず、従来の構成について説明する。従来のストッパ1hは、本実施例と同様に、当たり面1h−1を形成し、断面形状がD字状であって、カバー板2からの先端の突き出し量も同じである。しかしながら、このストッパ1hの先端には、本実施例のように、先端面1h−2よりも低い段差面1h−3が形成されていない。そして、カバー板2の方にも、本実施例のような張出部2nが形成されていない。
【0036】
このような構成においては、シャッタ羽根4が、図4(a)の上方から作動してきて、ストッパ1hの当たり面1h−1に当接すると、薄いシャッタ羽根4は、静止するまでの間に種々の形状に連続的に変形させられるが、その過程において、シャッタ羽根4の作動方向(開口部1a,2aの開き作動方向)の先端縁の近傍領域の一部が、カバー板2の逃げ孔2iの縁の端面と、それに対向しているストッパ1hの当たり面1h−1との間の隙間に入り込んできてしまうことがある。
【0037】
即ち、図4(a)において、逃げ孔2iに対して、ストッパ1hの当たり面1h−1のところで左右に引いた空間直線Lの寸法は、逃げ孔2iの最大径に近い寸法である。そのため、逃げ孔2iに臨んでいるシャッタ羽根4の先端縁の近傍領域も比較的大きくて、図4(a)の手前側に変形し易くなっており、且つそのように変形したときには、逃げ孔2i内に入り込み易くなっている。その場合、カバー板2が厚くてよい場合には、ストッパ1hの、カバー板2の羽根室側の面に相当する位置から先端までの距離が大きいために、変形によってシャッタ羽根4の先端縁が、ストッパ1hの先端へは達しなくても、カバー板2が薄い場合には、先端縁が瞬間的に当たり面1h−1を先端までせり上がり、シャッタ羽根4の先端縁に隣接する領域の一部が、カバー板2によって、ストッパ1hの先端に筋交い状に押し付けられた状態になり、身動きできなくさせられてしまうことがある。
【0038】
ところが、本実施例の場合には、図4(b)に示されているように、カバー板2に形成されている張出部2nが、上記の空間直線距離Lの略中間を通るようになっていて、段差面1h−3を覆うようにして溝に嵌まっている。そのため、上記のようにして、シャッタ羽根4の作動方向の先端縁が当たり面1h−1をせり上がってきたときに、張出部2nがそのせり上がりを抑止する働きをし、先端縁がストッパ1hの先端へ乗り上げないようになっている。
【0039】
尚、本実施例においては、シャッタ羽根3は、開き作動時にストッパ1gに当接する部位の形状が、張出部2kが形成されていない場合には、カバー板2を殆ど変形させなくても、逃げ孔2hとストッパ1gとの間に入り込み易い形状をしている。また、同様に、シャッタ羽根4も、閉じ作動時にストッパ1iに当接する部位の形状が、張出部2mが形成されていない場合には、逃げ孔2hとストッパ1iとの間に入り込み易い形状をしている。しかしながら、本実施例の場合は、ストッパ1g,1iに形成されている段差面(符号なし)を覆うようにして張出部2k,2mが形成されているので、上記した場合と同様に、それらの部位が、ストッパ1g,1iの先端に乗り上げてしまうことがない。
【0040】
このように、本実施例の場合には、四つの張出部2k,2m,2n,2pは、すべて同じ形状をしている。しかしながら、本発明の張出部の形状は、それらの形状に限定されるものではない。要するに、本発明におけるカバー板の張出部は、逃げ部における上記の空間直線距離L(逃げ孔2hのような逃げ部の場合には、一つずつの逃げ部に相当する空間直線距離)が、従来よりもトータルとして短くなるような形状にしていればよいことになる。
【0041】
そのため、図4(b)に示されている張出部2nは、平行に形成した二つの張出部としてもよく、また、そのようにした場合には、溝は、実施例のように一つのままであってもよいし、別々に独立した二つ溝にしても構わない。また、張出部を二つ形成する場合は、図4(b)において、段差面1h−3を形成しているところを先端面にし、その両側の先端面領域を段差面にするようにしてもよい。更に、図4(b)において、段差面1h−3の右側又は左側の先端面領域も段差面とすることによって、実質的に段差面1h−3の面積を大きくし、一つの大きな張出部が、その大きくした段差面の殆どを覆うようにしても構わない。そのため、その場合には、張出部がカバー板に、図4(b)において、上方でだけ繋がっているのではなく、左右いずれか一方と下方でも繋がっているようにしてもよい。
【0042】
従って、これらの本発明の態様を全てまとめて表現すると、ストッパは、地板に対して垂直であって羽根の先端縁が当接する当たり面を形成していると共に、先端には、羽根の略作動方向に沿った少なくとも一つの線を境にし、少なくとも一つの先端面と、該先端面よりも低い少なくとも一つの段差面とを形成しており、他方、カバー板は、逃げ部の縁から少なくとも羽根がストッパへ向けて作動する方向へ張り出していて、上記の段差面の少なくとも一部を覆うようにした張出部を形成している構成ということになる。
【0043】
尚、本実施例は、2枚のシャッタ羽根3,4を備えているシャッタ装置として構成したものであるが、いずれか一方のシャッタ羽根を大きくし、他方のシャッタ羽根を備えていないようにすれば、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置になることが知られている。そして、いずれのシャッタ装置の場合も、殆どそのまま、レンズバリア装置として採用することが可能であることも知られている。また、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置において、シャッタ羽根を円形の開口部を形成した絞り羽根に代えれば絞り装置になるし、その開口部をフィルタシートで覆ってフィルタ羽根に代えればフィルタ装置になることも知られている。
【0044】
また、本実施例においては、羽根室内に2枚のシャッタ羽根3,4を配置しているが、同じ羽根室内に、1枚又は2枚のシャッタ羽根のほか、上記のような絞り羽根やフィルタ羽根を配置することによって、二つ以上の装置を一つのユニットとして構成することが知られているし、本実施例の地板1とカバー板2の間を周知の中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、二つ以上の装置の羽根を、それらの羽根室に分けて配置するようにすることも知られている。従って、それらの装置は、全て本発明のカメラ用羽根駆動装置である。
【符号の説明】
【0045】
1 地板
1a,2a 開口部
1b,1c,2b,2c 取付孔
1d,2d,2g,3a,4a 長孔
1e,1f 羽根取付軸
1g,1h,1i,1j ストッパ
1h−1 当たり面
1h−2 先端面
1h−3 段差面
1k 位置決めピン
1m,1n,1p,1q,1r,1s,1t 受け部
1u フック部
1v 回転子取付軸
2 カバー板
2e,2f 孔
2h,2i,2j 逃げ孔
2k,2m,2n,2p 張出部
2q,2r,2s 段差部
3,4 シャッタ羽根
5 回転子
5a 永久磁石
5b 腕部
5c 出力ピン
6,7 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのストッパを垂直に立設している地板と、薄板状に形成されていて前記地板との間に少なくとも一つの羽根室を構成しており前記ストッパの先端を逃げ部から前記地板とは反対の面側に突き出させているカバー板と、前記羽根室内に往復作動可能に配置されていて作動の最終段階で前記ストッパに当接して停止させられる少なくとも1枚の羽根と、を備えているカメラ用羽根駆動装置において、前記ストッパは、前記地板に対して垂直であって前記羽根が当接する当たり面を形成していると共に、先端には、前記羽根の略作動方向に沿った少なくとも一つの線を境にして、少なくとも一つの先端面と、該先端面よりも低い少なくとも一つの段差面とを形成しており、前記カバー板は、前記逃げ部の縁から少なくとも前記羽根が前記ストッパへ向けて作動する方向へ張り出していて、前記段差面の少なくとも一部を覆うようにした張出部を形成していることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記段差面は、前記先端面に形成された一つの溝の底面として形成されており、前記張出部は、該溝に嵌め込まれているようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記張出部が、常態では、前記段差面に接触しているようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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