説明

カメラ装置、及び撮影補助光制御方法、撮影補助光制御プログラム

【課題】被写体の質によらず、被写体の見栄えの良い画像を取得することができるカメラ装置、及び撮影補助光制御方法、撮影補助光制御プログラムを提供する。
【解決手段】発光色が異なる複数のLED5a〜5hからなるLEDストロボ5を備えた構成である。制御回路31は、ストロボ撮影に先立ち、撮像素子63の撮像動作により取得された画像データに基づき被写体の種別を判定し、さらにその被写体の経時変化の状態を判定する。撮影時には、判定した被写体の種別、及び経時変化の状態に応じて各LED5a〜5hの発光パターンを変化させることにより、LEDストロボ5が被写体に照射する撮影補助光の分光特性(分光放射特性)を制御する。これにより、鮮度が低下している(外観品質が低下している)食材等を撮影しても、それが新鮮な状態にあるときと同様の見栄えの良い画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発光素子として複数色の発光ダイオードを含むストロボ装置が内蔵されたカメラ装置、及び撮影補助光制御方法、撮影補助光制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1には、複数色のLED(発光ダイオード)を備えるとともに、撮影者に手動操作により被写体種別を選択させ、選択された被写体種別に応じてLEDの発光パターンを変化させることによって異なる色温度のストロボ光を得るようにしたストロボ装置が開示されている。このストロボ装置によれば、簡単に美しい写真が撮影できる。
【特許文献1】特開2003−215675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、近年、例えばインターネット上のブログやホームページ等の管理者がその日に食べた食品を撮影して撮影画像を自身のブログ等に掲載する機会が増えている。また、例えば、インターネットオークションに出品するために、出品者自身が所有する商品を撮影してインターネットオークションのホームページに掲載する機会も増えている。そのため、食品を美味しく見えるように撮影したり、商品が新しく見えるように撮影できることが望まれている。ところが、食品や商品等は時間とともに品質が劣化していくため、その外観も時間とともに不可避的に変化していく。
【0004】
しかしながら、特許文献1のストロボ装置では同じ種別の被写体に対しては、常に同じ色温度のストロボ光を照射することとなる。そのため、例えば食品を撮影する場合には、被写体の撮影時の品質によっては美味しく見えるように撮影することができない場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、被写体の質によらず、被写体の見栄えの良い画像を取得することができるカメラ装置、及び撮影補助光制御方法、撮影補助光制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため請求項1記載の発明に係るカメラ装置にあっては、被写体の画像データを取得する撮像手段と、前記被写体に向けて撮影補助光を照射するとともに、当該撮影補助光の分光特性が制御可能な発光手段における撮影補助光の発光動作を制御する発光制御手段と、前記被写体の種別を特定する第1の特定手段と、この第1の特定手段により特定された種別の被写体における経時変化の状態を特定する第2の特定手段と、前記発光制御手段の制御に応じた発光動作により前記発光手段から被写体に向けて照射される撮影補助光の分光特性を、前記第2の特定手段により特定された特定の種別の被写体における経時変化の状態に応じて制御する特性制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記撮像手段により取得された画像データに基づき、前記第1の特定手段により特定された特定の被写体における経時変化の状態を判定する状態判定手段を備え、前記第2の特定手段は、前記状態判定手段により判定された状態を、前記第1の特定手段により特定された特定の被写体における経時変化の状態として特定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記状態判定手段は、被写体における経時変化の状態を複数の類型に区分けして判定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記状態判定手段は、前記撮像手段により取得された画像データに基づき被写体の分光反射率特性を取得する取得手段を含み、この取得手段により取得した分光反射率特性と前記第1の特定手段により特定された被写体の種別とに基づいて、被写体における経時変化の状態を判定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記状態判定手段により判定可能な複数の被写体の種別にそれぞれ対応する、基準となる分光反射率特性を記憶する記憶手段を備え、前記状態判定手段は、前記取得手段により取得した分光反射率特性と、前記記憶手段に記憶されている前記第1の特定手段により特定された被写体の種別に対応する基準となる分光反射率特性との比較に基づき前記経時変化の状態を判定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記第1の特定手段により特定された被写体の種別が物品である場合に前記第2の特定手段により特定される被写体における経時変化の状態は外観品質であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記第1の特定手段により特定された被写体の種別が人物である場合に前記第2の特定手段により特定される被写体における経時変化の状態は年代であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記撮像手段により取得された画像データに基づき、前記被写体の種別を判定する種別判定手段を備え、前記第1の特定手段は、前記種別判定手段により判定された種別を前記被写体の種別として特定することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9記載の発明に係る撮影補助光制御方法にあっては、被写体に向けて照射する撮影補助光の分光特性を制御する方法であって、前記被写体の種別を特定する工程と、特定した種別の被写体における経時変化の状態を特定する工程と、前記撮影補助光の分光特性を、特定した経時変化の状態に応じて制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項10記載の発明に係る撮影補助光制御プログラムにあっては、コンピュータを、被写体の種別を特定する手段、特定した種別の被写体における経時変化の状態を特定する手段、前記被写体に向けて発光手段が照射する撮影補助光の分光特性を、特定した経時変化の状態に応じて制御する手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、被写体の質等によらず、被写体の見栄えの良い画像を取得することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。図1は、本実施の形態に係るデジタルカメラ1の外観を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0018】
図示したようにデジタルカメラ1の本体2の正面には撮像レンズ3、光学ファインダー4が設けられており、光学ファインダー4の両側には本発明の発光手段である左右1組のLEDストロボ5,5が設けられている。また、本体2の上面には、電源ON/OFFキー6、シャッターキー7、ズームレバー8、撮影モードダイヤル9等が設けられている。
【0019】
図2は、前記デジタルカメラ1の回路構成を示すブロック図である。図に示すように、前記シャッターキー7は、半押し時点と全押し時点とにおいてオンとなる2段スイッチ27に連係され、前記ズームレバー8はこれを操作している間のみオンとなる常開スイッチ28の上部に配置されている。その他の入力操作部29は、シャッターキー7とズームレバー8以外の図1(a)、同図(b)に示した各種キーに対応するスイッチ群で構成され、このスイッチ群および前記各スイッチのオン・オフ情報は、入力回路30を介して、制御回路31に入力される。
【0020】
制御回路31は、CPUおよびその周辺回路と、後述するフローチャートによって示される本発明に係る撮影補助光制御プログラムや、デジタルカメラとしての各種の機能を実現するのに必要なプログラム等が格納されているROM、CPUの作業用メモリであるRAM等から構成されるマイクロコンピュータであり、デジタルカメラ1の各部を制御する。なお、上記ROMが本発明の記憶手段であるとともに、上記撮影補助光制御プログラムに従い動作することにより制御回路31は本発明の発光制御手段、第1の設定手段、第2の設定手段、特性制御手段、状態判定手段、取得手段、種別判定手段として機能する。
【0021】
一方、制御回路31には、表示メモリ32、表示駆動ブロック33、画像バッファメモリ34、画像信号処理部35、圧縮符号化/伸長復号化部36、静止画/動画画像メモリ37、外部メモリインタフェース38、外部I/Oインターフェース39、および電源制御ブロック40が接続されている。表示メモリ32には、デジタルカメラ1の本体2の背面に設けられているLCDパネルからなる電子ファインダー26に表示される各種表示データが一時的に記憶される。表示駆動ブロック33は電子ファインダー26を駆動し、画像バッファメモリ34は、画像データの各種処理に際して各段階の画像データを一時的に格納する。
【0022】
画像信号処理部35は、後述する撮像素子63から制御回路31が取り込んだ画像信号に対する各種処理を実行するDSPからなる。圧縮符号化/伸長復号化部36は、この画像信号処理部で処理された画像データを記録時には伸長処理し、記録した画像データを再生する際には伸長復号化する。静止画/動画画像メモリ37は、シャッターキー7の操作により撮像された画像データ(静止画データ、動画データ)を記録保存する。外部メモリインタフェース38は、着脱自在な外部メモリ41に接続されている。なお、外部メモリ41が装着されているとき、圧縮後の画像データは静止画/動画画像メモリ37に記録保存する。
【0023】
外部I/Oインターフェース39は、LAN通信IF42を介してLANコネクタ43に接続され、USB通信IF44を介してUSBコネクタ45に接続されているとともに、コネクタ46に接続されている。電源制御ブロック40には、電池47と充電制御ブロック48とが接続されており、これら電池47と充電制御ブロック48からの電力は電源制御ブロック40および制御回路31を介して各部に供給される。電池47は、DC入力コネクタ70を介して充電制御ブロック48に接続される図示しないACアダプタから供給される電力により充電可能となっている。
【0024】
さらに、制御回路31には、表示駆動ブロック49、焦点制御ブロック50、ズーム制御ブロック51、絞り制御ブロック52、シャッター制御ブロック53、A/D回路54、タイミング制御&ドライバ55、色温度検出ブロック56、測光部57、測距部58、およびストロボ制御ブロック59が接続されている。
【0025】
表示駆動ブロック49は、前記光学ファインダー4から視認可能な位置に配置され透光性を有する液晶表示パネルからなる情報表示部60を駆動する。なお、情報表示部60には、必要に応じて種々の情報(シャッター速度や絞り値等)が表示される。焦点制御ブロック50は、被写体像を合焦させるべく撮像レンズ3のフォーカス機構を駆動するレンズ駆動ブロック61を制御し、ズーム制御ブロック51は、ズームレバー8の操作に応じて被写体像を拡大又は縮小すべく撮像レンズ3のズーム機構を駆動するレンズ駆動ブロック62を制御する。
【0026】
絞り制御ブロック52は、撮像レンズ3と、CCDからなる撮像素子63との間に配置された絞り64を制御し、シャッター制御ブロック53は、絞り64と撮像素子63との間に配置されたシャッター65を制御する。A/D回路54は、CDS/AGC66を介して撮像素子63より入力されるアナログ画像信号をデジタル信号に変換する。タイミング制御&ドライバ55は、タイミング信号を発生して撮像素子63とCDS/AGC66とを駆動する。CDS/AGC66は、撮像素子63から出力された撮像信号のノイズを除去するCDSと、CDSから撮像信号を供給されるアナログアンプであるゲイン調整アンプ(AGC)とからなる。すなわちタイミング制御&ドライバ55と、撮像素子63、CDS/AGC66、A/D回路54により本発明の撮像手段が構成される。
【0027】
色温度検出ブロック56は、制御回路31から送られた画像データに基づき色温度情報を検出し、その検出結果を制御回路31に入力する。測光部57は、測光、測距センサ67からの測光信号を処理して制御回路31に入力し、測距部58は、測光、測距センサ67からの測距信号を処理して制御回路31に入力する。ストロボ制御ブロック59は、ストロボ駆動ブロック68を制御し、電池47から電源制御ブロック40を介して供給される電力により前記LEDストロボ5,5を必要に応じて発光させる。
【0028】
ここで、LEDストロボ5,5は、図3(a)に示したように発光色が異なる8個のLED(発光ダイオード)5a〜5hから構成されている。各LED5a〜5hの発光色は、B(青)、BG(青緑)、G(緑)、YG(黄緑)、W(白)、Y(黄)、O(橙)、R(赤)の8種類であり、白色LED5eを除く他のLEDの光の波長は図3(b)に示した分光特性図の通りである。そして、LEDストロボ5,5は、ストロボ駆動ブロック68によって、各LED5a〜5hを選択的に駆動されるとともに、その相対発光強度を個別に制御されることにより種々の分光特性を有するストロボ光を発光する。分光特性とは、発光色が異なる各LEDの光における各波長成分の相対発光強度の分布を示すものである。
【0029】
例えば図4(c)に示したように、BG(青緑)、W(白)、R(赤)のLED5b,5e,5hが選択的に駆動され、かつW(白)LED5eの相対発光強度が最大強度(「1」)に設定され、かつBG(青緑)R(赤)のLED5b,5hの相対発光強度が最大強度の1/2(「0.5」)に制御されたときには、太陽光に近似する分光特性を有するストロボ光を発光する。なお、図4(a)は、W(白)LED5eのみが最大強度で駆動された場合のストロボ光の分光特性であり、図4(b)は、BG(青緑)R(赤)のLED5b,5hのみがそれぞれ最大強度の1/2で発光した場合のストロボ光の分光特性である。
【0030】
また、前述した制御回路31のROMには、後述するストロボ撮影時に使用されるとともに、複数の被写体種別にそれぞれ対応した以下の各種データが記憶されている。本実施形態において被写体種別は、図5、図7、図8に示したように「人物」、「鮮魚」、「野菜」、「精肉」等であり、被写体種別は、さらに各々の被写体の経時変化の状態に応じた3つの類型に細分化されている。すなわち「人物」については概略的な年齢で区分した「赤ちゃん」、「子供及び若者」、「老人」であり、これ以外の「鮮魚」、「野菜」、「精肉」については、各々の物品の外観品質により区分した「鮮度・新」、「鮮度・中」、「鮮度・古」である。
【0031】
そして、制御回路31のROMには、図5に示したように、上記の被写体種別を表す見本画像(サムネイルデータ)101と、その内容が各々の被写体種別に対応して予め決められている撮影条件設定データ102が記憶されている。撮影条件設定データ102は、ストロボ発光条件103と、ホワイトバランス104、ISO感度105、測光方式106、フォーカスモード107、AFエリア108等の複数の設定パラメータから構成されており、ストロボ発光条件103については、他の撮影条件設定データ102とは異なり、その内容が前述した類型に対応して予め決められている。
【0032】
ここで、ストロボ発光条件103の具体的な内容について説明する。ストロボ発光条件103は、LEDストロボ5,5に特定の分光特性(分光放射特性)を有する撮影補助光を発光させるための各LED5a〜5hの相対発光強度(非点灯時の「0」を含む)の組合せ(以下、発光パターンともいう)であって、上記特定の分光特性とは、撮影対象が、対応する被写体種別及び類型に該当する特定の被写体である場合に、その被写体の分光反射率特性をより理想的な状態に近づける(適正化する)ための相対発光強度の組合せである。また、より理想的な状態の分光反射率特性とは、例えば被写体種別が「人物」の場合には、対応する類型に応じた年齢層の健康な人物の平均的な肌の分光反射率特性であり、また、被写体種別の「鮮魚」、「野菜」、「精肉」等の食材の場合には、各々の食材の鮮度が良好な状態であるときの分光反射率特性である。なお、分光反射率特性とは、被写体像における各波長成分の相対強度(分光反射率)の分布を示すものである。
【0033】
すなわち図6(a)は、一般的な精肉(図の例は豚肉の赤み部分)における鮮度が良好な状態の分光反射率特性Aと、保存日数の経過(この例では4日)に伴い鮮度が低下した状態の分光反射率特性Bとを示した図であって、「精肉」の「鮮度・古」に対応したストロボ発光条件103には、撮影時における被写体の分光反射率特性を鮮度が良好な状態の分光反射率特性Aに近づける、図6(b)に示したような分光特性を有する撮影補助光が得られる発光パターンが予め設定されている。
【0034】
また、制御回路31のROMには、前述した各々の被写体種別に対応して、図7に示した複数の種別判定用データ110が記憶されている。種別判定用データ110は、撮影した画像に含まれる被写体の種別を判定する際に判定基準として使用されるデータであり、対応する種別の被写体に関する、代表的な輪郭形状を示す輪郭図形データ111と、代表的な色・柄・テクスチャ等の特徴を示す特徴データ112と、代表的な構造的特徴を示すモデルデータ113から構成されている。
【0035】
さらに、制御回路31のROMには、図8に示した複数の分光反射率特性データ120が、前述したストロボ発光条件103(図5)と同様、各々の被写体種別における各々の類型に対応して記憶されている。分光反射率特性データ120は、撮影対象の種別が前述した被写体種別のいずれかである場合に、被写体が前述した類型のいずれに該当するのかを判定する際に基準として使用されるデータであって、具体的には、各々の類型に該当する標準的な被写体の分光反射率特性を示すデータである。例えば、被写体種別「精肉」で、その類型が「鮮度・新」に対応する分光反射率特性データである特性Jは、図6(a)に示した分光反射率特性Aとなる。また、被写体種別「精肉」で、その類型が「鮮度・中」に対応する分光反射率特性データである特性Kは、図6(a)に示した分光反射率特性Bとなる。
【0036】
そして、以上の構成からなるデジタルカメラ1においては、撮影モードダイヤル9により、予め用意されているとともに前記LEDストロボ5,5を強制的に発光させる所定のストロボ撮影モードが設定されると、前記制御回路31は前記プログラムに基づき、図9のフローチャートに従って処理を実行する。
【0037】
すなわち制御回路31は、ストロボ撮影モードが設定されると直ちに撮像素子63の駆動を開始して、スルー画像の取得、及び取得したスルー画像の電子ファインダー26での表示を開始する(ステップS1)。次に、ユーザーにより設定されているデジタルカメラ1における機能設定内容を確認し、被写体判別モードとして「自動」と「手動」とのいずれのモードが選択されているのかを確認する(ステップS2)。なお、被写体判別モードの内容はスルー画像の表示中においても所定のキー操作により適宜変更可能である。しかる後、制御回路31は被写体判別モードの設定内容に応じて、以下の処理を実行する。
【0038】
ここでは、まず、被写体判別モードとして手動モードが選択されている(又は選択された)場合の処理について説明する。手動モードにおいて制御回路31は、ユーザーに所定のキー操作を行わせることにより、これから撮影しようとする被写体の種別を選択する(ステップS3)、さらに上記被写体が、選択した被写体種別におけるどの類型に区分けされるかを選択する(ステップS4)。
【0039】
すなわちステップS3においては、電子ファインダー26に、選択可能な被写体種別の候補を示す選択画面であって、前述した見本画像のサムネイルデータ101等からなる第1の選択画面(図示せず)を表示して該当する被写体種別を選択させ、いずれかの候補が選択されたら、選択された被写体種別について選択可能な類型(図5参照)を示す第2の選択画像(図示せず)をさらに表示して、上記第1及び第2の選択画面から所望とする被写体の種別、及び類型を選択させる。これにより、被写体の種別、及びその被写体が該当する類型を特定する。
【0040】
このときユーザーは、例えば撮影対象が赤ちゃんである場合には、被写体種別として「人物」を選択し、さらにその類型として「赤ちゃん」を選択する。また、例えば撮影対象が鮮度のやや低下した精肉である場合には、被写体種別として「精肉」を選択し、さらにその類型として「鮮度・中」を選択することとなる。
【0041】
次に、制御回路31は、先の選択結果に基づいて、選択された被写体種別及び類型に対応するストロボ発光条件を前記ROMから読み出し、撮影時におけるストロボ発光条件として決定する(ステップS5)。さらに、シャッターキーが半押しされたことを検出したら(ステップS6でYES)、選択された被写体種別及び類型に対応する他の撮影条件を前記ROMから読み出し、その撮影条件に従ったAF制御により被写体へのピント合わせを行うとともに、撮影条件に従ったAE制御によって撮影時の絞り値やシャッタースピードを決定する(ステップS7)。なお、シャッターキーが半押しされるまでは(ステップS6でNO)、ユーザーによる被写体の種別や、その類型の変更を許容する。
【0042】
引き続き、シャッターキーが全押しされたことを検出したら(ステップS14でYES)、その時点で、ステップS5で決定したストロボ発光条件、及び他の撮影条件に従ったストロボ撮影処理を実行する(ステップS15)。すなわち、例えばユーザーにより選択されていた被写体種別が「人物」であり、かつ類型が「赤ちゃん」であったときには、被写体に照射する撮影補助光の分光特性を赤ちゃんの撮影に適した分光特性(ストロボ発光条件103における条件1)に制御した状態でのストロボ撮影を行い、またユーザーにより選択されていた被写体種別が「精肉」であり、かつ類型が「鮮度・中」であったときには、被写体に照射する撮影補助光の分光特性を鮮度がやや低下した精肉の撮影に適した分光特性(ストロボ発光条件103における条件5)に制御した状態でのストロボ撮影を行う。
【0043】
そして、係るストロボ撮影により取得した撮影画像を静止画/動画画像メモリ37、又は外部メモリ41に記録保存し(ステップS16)、1回の撮影を完了する。
【0044】
したがって、被写体判別モードとして手動モードが選択されている場合、ユーザーは、これから撮影しようとする被写体の種別、及びその被写体が該当する類型を撮影に先立ち選択しておくだけで、年齢に関係なく肌の色がより自然で美しい人物の画像や、鮮度に関係なく新鮮であるように見える(美味しく見える)画像、つまり見栄えの良い画像を簡単に取得することができる。
【0045】
次に、被写体判別モードとして自動モードが選択されている(又は選択された)場合の処理について説明する。自動モードにおいて制御回路31は、スルー画像の表示開始後は、シャッターキーの半押しの有無を逐次確認しており、シャッターキーが半押しされたことを検出したら(ステップS8でYES)、AF制御により被写体へのピント合わせを行うと共に、AE制御により撮影時の絞り値やシャッタースピードを決定する(ステップS9)。
【0046】
引き続き、前述した種別判定用データ110(図7参照)に基づき、AF制御でピント合わせが行われた被写体部分における被写体種別を自動的に判定する(ステップS10)。係る処理においては、まず、撮像素子63により直前に取り込んだ画像において、輝度(諧調値)または色差信号に基づき被写体領域を判断する。次に、その被写体領域の画像データを用いて3種類の類似度を取得する。すなわち、被写体領域から輪郭線を抽出し、抽出した輪郭線の形状と、被写体種別に対応する各々の輪郭図形データ111との類似度を取得する。また、被写体領域の色や柄やテクスチャ等の特徴を分析し、その分析結果と被写体種別に対応する各々の特徴データ112との類似度を取得する。さらに、被写体領域の構造的特徴を分析し、その分析結果と被写体種別に対応する各々のモデルデータとの類似度を取得する。しかる後、上記3種類の類似度のうちで予め決められている基準値以上の最も高い類似度が得られた種別判定用データ110を特定し、それが対応する被写体種別を、ピント合わせが行われた部分の被写体の種別と判定する。
【0047】
引き続き、上記判定に使用した画像において、AF制御でピント合わせが行われた被写体部分の画像データに含まれる色情報の成分比に基づいて被写体部分の分光反射率特性を取得するとともに、先に判定した被写体種別の各々の類型のうちで、取得した分光反射率特性に最も近い特性を示す分光反射率特性データ120が対応する類型を特定し、その類型を、ピント合わせが行われた部分の被写体が該当する類型であると判定する(ステップS11)。例えば、ピント合わせが行われた部分の被写体が「赤ちゃん」である場合、ステップS10において被写体の種別が「人物」と判定され、ステップS11においては、被写体種別「人物」に対応する特性A、特性B、特性Cのそれぞれの分光反射率特性が、判定された被写体種別「人物」の類型を特定するための基準として使用される。そして、画像データに基づき取得された被写体部分の分光反射率特性と、特性A、特性B、特性Cにそれぞれ対応する分光反射率特性のそれぞれとが比較される。その結果、特性Aに対応する分光反射率特性が、画像データに基づき取得された分光反射率特性に最も近いのであれば、判定された被写体種別「人物」、つまりピント合わせが行われた部分の被写体の類型は、特性Aに対応する類型である「赤ちゃん」と特定される。
【0048】
次に、ステップS10,S11で判定した被写体種別及び類型に対応するストロボ発光条件を前記ROMから読み出し、それを撮影時におけるストロボ発光条件として決定し(ステップS12)、さらに、決定したストロボ発光条件に対応する、つまり判定した被写体種別及び類型に対応する撮影条件設定データ102により示される他の撮影条件を、撮影の他の撮影条件として決定する(ステップS13)。
【0049】
その後、シャッターキーが全押しされたことを検出したら(ステップS14でYES)(ステップS14でYES)、その時点で、ステップS12で決定したストロボ発光条件、及びステップS13で決定した他の撮影条件に従ったストロボ撮影処理を実行する(ステップS15)。すなわち、例えば撮影対象が「赤ちゃん」であったときには、被写体に照射する撮影補助光の分光特性を自動的に赤ちゃんの撮影に適した分光特性(ストロボ発光条件103における条件1)に制御した状態でのストロボ撮影を行い、また撮影対象が鮮度がやや落ちた状態の「精肉」であったときには、被写体に照射する撮影補助光の分光特性を自動的に鮮度がやや低下した精肉の撮影に適した分光特性(ストロボ発光条件103における条件5)に制御した状態でのストロボ撮影を行う。
【0050】
そして、係るストロボ撮影により取得した撮影画像を静止画/動画画像メモリ37、又は外部メモリ41に記録保存し、1回の撮影を完了する。
【0051】
なお、図9では省略したが、前述したステップS10で被写体種別が判定できない場合、すなわち既説した3種類の類似度のいずれもが予め決められている基準値に達していない場合、制御回路31は被写体種別が判定不能と判断し、その旨を示すメッセージやマークを前記電子ファインダー26や前記情報表示部60に表示させるとともに、ストロボ発光条件を含む全ての撮影条件をAE制御にしたがって設定する通常のストロボ撮影に移行する。
【0052】
したがって、被写体判別モードとして自動モードが選択されている場合、ユーザーは、単にシャッターキーを押すだけで、年齢に関係なく肌の色がより自然で美しい人物の画像や、鮮度に関係なく新鮮であるように見える(美味しく見える)画像、つまり見栄えの良い画像を極めて簡単に取得することができる。
【0053】
以上のように本実施形態のデジタルカメラ1においては、予め用意されている所定のストロボ撮影モードによる撮影時には、LEDストロボ5,5による撮影補助光の分光特性を、被写体種別のみならず、被写体が該当する類型に応じて制御することにより、被写体の年齢や鮮度といった質とは関係なく、見栄えの良い画像を簡単に得ることができる。また、被写体判別モードとして手動モードが設定されている場合には、ユーザーが被写体の種別、及び類型を選択する必要はあるものの、撮影補助光の分光特性をより正確に制御することができ、また、被写体判別モードとして自動モードが設定されている場合には、上記制御の精度はやや低下するものの、撮影時には被写体の種別、及び類型を選択する必要がなく、より高い利便性を確保することができる。
【0054】
ここで、本実施形態においては、被写体種別と被写体が該当する類型との双方を組としてユーザーに選択させたり、自動的に判定したりするようにしたが、以下のようにしてもよい。例えば被写体判別モードとして、被写体種別をユーザーに選択させ、被写体が該当する類型のみを自動で判定するモードを別途設けるようにしてもよい。また、被写体判別モードとして自動モードが設定されているとき、被写体種別が判定不能な場合については、それユーザーに選択させた後、被写体が該当する類型のみを自動で判定するようにしてもよい。
【0055】
また、被写体判別モードとして自動モードが設定されている場合における、被写体が該当する類型の判定を、被写体種別と被写体の分光反射率特性とに基づいて行うようにしたが、上記類型の具体的な判定手法については、これに限られるものではなく、他の情報に基づき被写体が該当する類型を判定するようにしてもよい。また、被写体種別の判定に関しても同様であり、前述した以外の方法によって被写体種別を判定するようにしてもよい。
【0056】
また、以上の説明においては、本発明を左右1組のLEDストロボ5,5が内蔵されたデジタルカメラ1に適用したものについて説明したが、本発明は、例えばLEDストロボ5,5と同様に発光色が異なる複数のLEDを備えた構成の他のストロボ装置が装着可能なデジタルカメラ1にも適用することができる。ただし、そのストロボ装置が汎用性を有するものである場合においては、そのストロボ装置により得られる撮影補助光の基本的な分光特性に関する情報をカメラ側に記憶しておくか、又はストロボ装置から取得するものとし、それに応じて撮影時における撮影補助光の分光特性を制御する必要がある。
【0057】
また、本発明において分光特性を制御する撮影補助光は、瞬間的に発せられるストロボ光である必要はなく、本発明の発光手段は、所謂ストロボ装置に限らず撮影タイミングの前後の比較的長い時間内に継続して発光(点灯)されるものであっても構わない。また、内蔵又は装着されるストロボ装置等については、それが発する撮影補助光の分光特性が制御可能な構成であれば、例えばLED以外の発光素子を有するものであっても構わない。
【0058】
また、本発明は、上述したストロボ装置が内蔵又は装着可能なデジタルカメラに限らず、例えばデジタルビデオカメラ等の他のカメラ装置や、さらには任意のカメラ装置に装着されるストロボ装置等にも適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態に係るデジタルカメラの外観を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】同デジタルカメラの回路構成を示すブロック図である。
【図3】(a)は同デジタルカメラのLEDストロボの構成、(b)は同LEDストロボの全発光時における分光特性図である。
【図4】同LEDストロボの発光パターン及び、そのときのストロボ光の分光特性の一例を示す図である。
【図5】制御回路のROMに記憶されている見本画像データ及び撮影条件設定データを示す概念図である。
【図6】(a)は、一般的に精肉における鮮度に応じた分光反射率特性の例を示した図、(b)は、鮮度が低下した状態の精肉に対応するLEDストロボの各LEDの相対発光強度の組合せを示す図である。
【図7】制御回路のROMに記憶されている種別判定用データを示す概念図である。
【図8】同ROMに記憶されている分光反射率特性データを示す概念図である。
【図9】本実施形態における制御回路の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 デジタルカメラ
3 撮像レンズ
5 LEDストロボ
5a〜5h LED
7 シャッターキー
9 撮影モードダイヤル
26 電子ファインダー
31 制御回路
49 表示駆動ブロック
54 A/D回路
55 タイミング制御&ドライバ
56 色温度検出ブロック
59 ストロボ制御ブロック
60 情報表示部
63 撮像素子
66 CDS/AGC
68 ストロボ駆動ブロック
102 撮影条件設定データ
103 ストロボ発光条件
110 種別判定用データ
120 分光反射率特性データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の画像データを取得する撮像手段と、
前記被写体に向けて撮影補助光を照射するとともに、当該撮影補助光の分光特性が制御可能な発光手段における撮影補助光の発光動作を制御する発光制御手段と、
前記被写体の種別を特定する第1の特定手段と、
この第1の特定手段により特定された種別の被写体における経時変化の状態を特定する第2の特定手段と、
前記発光制御手段の制御に応じた発光動作により前記発光手段から被写体に向けて照射される撮影補助光の分光特性を、前記第2の特定手段により特定された特定の種別の被写体における経時変化の状態に応じて制御する特性制御手段と
を備えることを特徴とするカメラ装置。
【請求項2】
前記撮像手段により取得された画像データに基づき、前記第1の特定手段により特定された特定の被写体における経時変化の状態を判定する状態判定手段を備え、
前記第2の特定手段は、前記状態判定手段により判定された状態を、前記第1の特定手段により特定された特定の被写体における経時変化の状態として特定する
ことを特徴とする請求項1記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記状態判定手段は、被写体における経時変化の状態を複数の類型に区分けして判定することを特徴とする請求項2記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記状態判定手段は、前記撮像手段により取得された画像データに基づき被写体の分光反射率特性を取得する取得手段を含み、この取得手段により取得した分光反射率特性と前記第1の特定手段により特定された被写体の種別とに基づいて、被写体における経時変化の状態を判定することを特徴とする請求項2又は3記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記状態判定手段により判定可能な複数の被写体の種別にそれぞれ対応する、基準となる分光反射率特性を記憶する記憶手段を備え、
前記状態判定手段は、前記取得手段により取得した分光反射率特性と、前記記憶手段に記憶されている前記第1の特定手段により特定された被写体の種別に対応する基準となる分光反射率特性との比較に基づき前記経時変化の状態を判定する
ことを特徴とする請求項3又は4記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記第1の特定手段により特定された被写体の種別が物品である場合に前記第2の特定手段により特定される被写体における経時変化の状態は外観品質であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記第1の特定手段により特定された被写体の種別が人物である場合に前記第2の特定手段により特定される被写体における経時変化の状態は年代であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載のカメラ装置。
【請求項8】
前記撮像手段により取得された画像データに基づき、前記被写体の種別を判定する種別判定手段を備え、
前記第1の特定手段は、前記種別判定手段により判定された種別を前記被写体の種別として特定する
ことを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載のカメラ装置。
【請求項9】
被写体に向けて照射する撮影補助光の分光特性を制御する方法であって、
前記被写体の種別を特定する工程と、
特定した種別の被写体における経時変化の状態を特定する工程と、
前記撮影補助光の分光特性を、特定した経時変化の状態に応じて制御する工程と、
を含むことを特徴とする撮影補助光制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、
被写体の種別を特定する手段、
特定した種別の被写体における経時変化の状態を特定する手段、
前記被写体に向けて発光手段が照射する撮影補助光の分光特性を、特定した経時変化の状態に応じて制御する手段、
として機能させる撮影補助光制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−225384(P2009−225384A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70528(P2008−70528)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】