説明

カメラ

【課題】 従来のカメラは、GPSアンテナが真上からある角度範囲以外では測位用電波が受信できない死角が存在し、ある姿勢の時に測位用電波の良い受信状態が得られても、姿勢を変えると受信状態が悪くなることがある。
【解決手段】 制御装置23は、姿勢センサ24の検知結果に基づき、測位用電波を受信しやすい天空部の方位に最も近い方位を向いたアンテナ13,14,15の出力を切替回路21に選択させる。このため、撮影時においてカメラ1の姿勢が横位置姿勢および縦位置姿勢のいずれの姿勢であっても、測位用電波を良好に受信することが可能になり、真上からある角度範囲以外では測位用電波が受信できないような、従来のカメラにおける死角は存在しなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位機能を内蔵するカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカメラは、GPS(Global Positioning System)衛星からの測位用電波を受信して、経度、緯度、高さ等の位置情報を検出する。検出された位置情報は、カメラで撮影した各画像のExif(Exchangeable image file format)形式の画像ファイルにおけるヘッダ領域に記録される。画像に記録した位置情報を基に、画像を地図に貼り付けたり、位置情報から画像を検索したりすることが可能になる。GPS衛星からカメラの位置情報を取り込む形態には、カメラの外部インターフェイスを経由してGPSハンディ機器等をカメラに接続するタイプと、GPS受信モジュールをカメラに内蔵するタイプとがあるが、持ち運び等の使い勝手を考えると、後者のタイプの方が望ましい。
【0003】
このタイプのカメラとして、特許文献1には、カメラ本体に対する角度が可変される起倒部の先端部にGPS受信機のアンテナ部が配置されたものが、開示されている。このカメラでは、起倒部の先端部に配置されたアンテナ部が天空部を向いていないことを判別手段が判別したとき、警告音を発生させて、アンテナ部が天空部を向くように撮影者にこの起倒部の姿勢を修正させて、測位用の電波を受信しやすくしている。また、上述した警告音の代わりに、起倒部の姿勢に応じて、モーター等の駆動手段によって起倒部の位置を移動させて、アンテナ部を天空部に向けさせている。
【0004】
また、特許文献2には、カメラ本体の上面に凸状をして形成されたストロボカバーの傾斜面にGPSアンテナを設け、カメラ本体の真上や斜め上方から送信される電波を受信しやすくしているカメラが開示されている。また、カメラ本体の上面には、FM放送局からの電波を受信するFMアンテナが配置されており、このFMアンテナの受信結果に基づいて、GPSアンテナの測位誤差を補正している。
【特許文献1】特開平8−334821号公報
【特許文献2】特開2003−315890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された上記従来のカメラは、撮影者に起倒部の姿勢を修正させて測位用電波を受信しやすくさせる構成の場合、撮影者にとって起倒部を起倒させる操作が面倒であり、利便性に欠ける。また、起倒部の姿勢に応じてモータ等の駆動手段によってアンテナ部を天空部に向けさせる構成の場合、モータ等の駆動手段を用いることで機構的に複雑になるため、カメラが大型化しやすく、また高価になりやすい。
【0006】
また、特許文献2に開示された上記従来のカメラは、ストロボカバーの傾斜面に設けられたGPSアンテナが、真上からある角度範囲以外では測位用電波が受信できない死角が存在する。従って、撮影者がカメラを横や縦に姿勢を変えて構える時、ある姿勢の時に測位用電波の良い受信状態が得られても、姿勢を変えると受信状態が悪くなることが考えられる。このため、GPSアンテナの受信精度を補正するために。同文献に開示されているようにGPSアンテナに加えてFMアンテナを配置することが必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、測位用衛星から測位用電波を受信する、複数の方位に向けて設置された複数のアンテナと、カメラの姿勢を検知する姿勢センサと、複数のアンテナの出力のいずれかを選択して切り替える切替回路と、姿勢センサで検知されたカメラの姿勢に基づき、複数のアンテナの中で最も天空部の方位に近い方位に向けられているものの出力を切替回路に選択させる制御装置とを備えてカメラを構成した。
【0008】
本構成によれば、制御装置は、姿勢センサの検知結果に基づき、測位用電波を受信しやすい天空部の方位に最も近い方位を向いたアンテナの出力を切替回路に選択させる。このため、撮影時においてカメラの姿勢が横位置姿勢および縦位置姿勢のいずれの姿勢であっても、測位用電波を良好に受信することが可能になり、真上からある角度範囲以外では測位用電波が受信できないような、従来のカメラにおける死角は存在しなくなる。よって、従来のカメラのように、GPSアンテナに加えてFMアンテナを配置する必要もない。また、モータ等の駆動手段によってアンテナ部を天空部に向けさせるような、従来の機構的に複雑な構成は必要でないため、小型で安価に、受信感度の良いカメラを提供できる。また、制御装置が、測位用電波を受信しやすい方位を向いたアンテナの出力を切替回路に自動的に選択させるため、わざわざ撮影者が手を用いてカメラのアンテナ部を天空部へ向ける操作を行う必要もないので、利便性が向上する。
【0009】
また、本発明は、制御装置が、姿勢センサで検知されたカメラの姿勢に基づいて切替回路に選択させたアンテナが測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数のアンテナの中で最も受信感度の良いものの出力を切替回路に選択させることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、制御装置は、姿勢センサの検知結果に基づいて切替回路に選択させたアンテナが測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合でも、複数のアンテナの中で最も受信感度の良いものから、測位に必要な電波を受信することが可能となる。このため、天空部の方位に最も近い方位を向いたアンテナが、撮影者の手で覆われたり、天空部の方位に近い方位の周囲の建物が障壁となって測位用電波の受信を妨害されたり等した場合でも、測位に必要な電波を受信して、カメラに内蔵した測位機能を作動させることができる。
【0011】
また、本発明は、制御装置が、姿勢センサで検知されたカメラの姿勢に基づいて切替回路に選択させたアンテナが測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数のアンテナの間で予め決められた優先順位に従ってアンテナの出力のいずれかを切替回路に選択させることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、制御装置は、姿勢センサの検知結果に基づいて切替回路に選択させたアンテナが測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数のアンテナの間で予め決められた優先順位に従って、アンテナの出力のいずれかを切替回路に選択させる。このため、測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合に、複数のアンテナの中で最も受信感度の良いものから電波を受信するための複雑な回路を必要とせず、予め決められた順番で各アンテナの出力が受信されて、測位に必要な電波が検出される。このため、測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合に、より安価に、カメラに内蔵した測位機能を作動させることが可能となる。
【0013】
また、本発明は、アンテナが、非金属から成るカメラボディ部分に内蔵されていることを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、カメラボディが金属から構成される場合でも、アンテナの内蔵されたカメラボディ部分が非金属から成るため、内蔵されたアンテナによって測位に必要な電波を非金属から成るカメラボディ部分を介して検出することができる。
【0015】
また、本発明は、カメラボディ部分がカメラボディの表面から突出し、アンテナがこの突出部分に内蔵されていることを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、カメラボディの表面から突出した部分にアンテナが内蔵されているため、カメラボディの表面よりも内部にアンテナが内蔵されている場合と比較して、より測位用電波が受信しやすくなり、アンテナの受信感度は向上する。
【0017】
また、本発明は、アンテナが、金属から成るカメラボディに形成された開口部に内蔵され、この開口部が非金属製キャップで塞がれていることを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、アンテナは、金属から成るカメラボディの開口部に設けられた非金属製キャップを介して、測位に必要な電波を受信することができる。
【0019】
また、本発明は、アンテナが、カメラボディのグリップ部における撮影者の手で握られる部分を避ける位置に内蔵されていることを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、アンテナによる測位用の電波の受信は、カメラのグリップ部を握っている撮影者の手によって遮られることなく、行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、撮影時においてカメラの姿勢が横位置姿勢および縦位置姿勢のいずれの姿勢であっても、測位用電波を良好に受信することが可能になり、真上からある角度範囲以外では測位用電波が受信できないような、従来のカメラにおける死角は存在しなくなる。よって、従来のカメラのように、GPSアンテナに加えてFMアンテナを配置する必要もない。また、モータ等の駆動手段によってアンテナ部を天空部に向けさせるような、従来の機構的に複雑な構成は必要でないため、小型で安価に、受信感度の良いカメラを提供できる。また、制御装置が、測位用電波を受信しやすい方位を向いたアンテナの出力を切替回路に自動的に選択させるため、わざわざ撮影者が手を用いてカメラのアンテナ部を天空部へ向ける操作を行う必要もないので、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の最良の実施の形態によるカメラについて説明する。
【0023】
図1は、この最良の実施の形態によるカメラの構成の概略を示す平面図であり、図2は、撮影時に撮影者によってグリップを握られたカメラの正面図である。
【0024】
カメラ1は、非金属の合成樹脂から成るカメラボディ2と、このカメラボディ2の前面に設けられた撮影レンズ3とから構成される。カメラボディ2の正面から見て左側には、撮影時に撮影者によって握られるグリップ部4が設けられている。このグリップ部4の上面には、撮影用のシャッターボタンであるレリーズボタン5が設けられており、レリーズボタン5の手前側のカメラボディ2の上面には、撮影情報や電池の残量等が表示される表示パネル6が設けられている。また、グリップ部4と反対側のカメラボディ2の上面には、コマンドロックボタン7や、撮影時における明るさを調製する露出補正ボタン8、およびオートブラケティングボタン9が、動作モードダイヤル10の上方に設けられている。また、カメラボディ2の中央の上面には、傾斜面を有するペンター部11が設けられており、ペンター部11の上面には、ストロボや付属部品等が装着されるアクセサリーシュー12が設けられている。
【0025】
また、カメラ1の正面から見た右側面,ペンター部11の上面,およびカメラ1の正面から見た左側面の3箇所には、測位用衛星であるGPS衛星から測位用電波をそれぞれ受信するアンテナ13,14,および15が、複数の方位に向けられてカメラボディ2に内蔵されている。アンテナ13,14,15は、面積が18[mm]×18[mm]、厚さが1.5〜2[mm]程度で平板状に形成された、感度の良いパッチアンテナから構成されており、アンテナ13,14,15の平面の法線方向で最大受信感度を有する。アンテナ13はカメラの右側面に垂直でグリップ部4と反対側の方位を向いており、アンテナ14はカメラ1の上面に垂直で上の方位を向いており、アンテナ15はカメラの左側面に垂直でアンテナ13と反対側の方位を向いている。また、グリップ部4側の左側面に設置されたアンテナ15は、図2に示すように、カメラボディ2のグリップ部4における撮影者の手16で握られる部分を避ける位置、本実施形態では、グリップ部4を握る撮影者の手16より上部に設置されている。これらのアンテナ13,14,15は、受信感度を良くするため、カメラボディ2のできるだけ表面側に内蔵されている。
【0026】
図3は、図1に示すカメラ1の回路構成の概略を示すブロック図である。
【0027】
上述したアンテナ13,14,15は、外部への信号の漏れが少なくノイズ障害に強い同軸ケーブルを介して切替回路21に接続されている。切替回路21と信号処理部22との間も、同様に同軸ケーブルを介して接続されている。また、アンテナ13,14,15には、図示しない信号増幅回路が設けられている。この信号増幅回路は、アンテナ13,14,15で受信した測位用電波の信号を増幅し、切替回路21へ出力する。
【0028】
切替回路21は、3入力で1出力の切替スイッチから構成され、制御装置23の制御により、複数のアンテナ13,14,15の出力のいずれかを選択して切り替えて、いずれか1つのアンテナが受信した測位用電波の信号を信号処理部22へ出力する。
【0029】
姿勢センサ24は、カメラボディ2内に内蔵されており、制御装置23に接続されている。姿勢センサ24は、内部に自由に移動できるボールがあり、このボールの位置を検出することで、カメラ1の姿勢を検出する。なお、加速度センサによってこの姿勢センサ24を構成するようにしてもよい。姿勢センサ24によって検出されたカメラ1の姿勢は、制御装置23へ出力される。
【0030】
制御装置23は、CPU(Central Processing Unit)から構成され、信号処理部22と共に基板25上に実装されて、切替回路21,信号処理部22,および姿勢センサ24に接続されている。制御装置23は、撮影時において、姿勢センサ24で検知されたカメラ1の姿勢に基づき、撮影者のカメラ1の構え方(横位置姿勢や縦位置姿勢等)を認識して、複数のアンテナ13,14,15の中で最も天空部の方位に近い方位に向けられているものの出力を、切替回路21に選択させる。切替回路21のこの切替制御に従い、その時最も天空部に近い方位を向いているアンテナの出力が信号処理部22へ出力される。
【0031】
信号処理部22は、切替回路21を介してアンテナ13,14,15から入力した測位用電波の信号を解析、信号処理して、制御装置23へ所定のフォーマットで経度、緯度、高さ等の位置情報に関するデータを送る。なお、アンテナ13,14,15に設けられていた信号増幅回路は、信号処理部22に設けてもよい。また、信号処理部22の上記の測位機能は、制御装置23と統合してもよい。
【0032】
次に、上述した構成を持つ本実施形態によるカメラ1の動作について説明する。
【0033】
撮影者が横長画面で被写体を撮影する場合、ペンター部11に設けられたアンテナ14が上面となって上空を向く。この場合、姿勢センサ24は、カメラ1の横位置姿勢を検出し、制御装置23へ検出信号を出力する。制御装置23は、姿勢センサ24の検出信号によりカメラ1の横位置姿勢を認識し、複数のアンテナ13,14,15のうち、天空部に向けられているアンテナ14の出力を切替回路21に選択させる。
【0034】
また、撮影者がグリップ部4を上に向けて縦長画面で撮影する場合、アンテナ15が上面となって上空を向く。この場合、姿勢センサ24がカメラ1のグリップ部4を上に向けた縦位置姿勢を検出し、制御装置23は、姿勢センサ24の検出信号によりカメラ1の上記の縦位置の姿勢を認識し、複数のアンテナ13,14,15のうち、天空部に向けられているアンテナ15の出力を切替回路21に選択させる。
【0035】
また、撮影者がグリップ部4を下に向けて縦長画面で撮影する場合、アンテナ13が上面となって上空を向く。この場合、姿勢センサ24がカメラ1のグリップ部4を下に向けた縦位置姿勢を検出し、制御装置23は、姿勢センサ24の検出信号によりカメラ1の上記の縦位置姿勢を認識し、複数のアンテナ13,14,15のうち、天空部に向けられているアンテナ13の出力を切替回路21に選択させる。
【0036】
信号処理部22は、切替回路21を介して入力したいずれかのアンテナからの測位用電波の信号を基に、経度、緯度、高さ等の位置情報を算出し、制御装置23へ出力する。制御装置23は、カメラ1で撮影した各画像のExif形式の画像ファイルにおけるヘッダ領域に、入力した位置情報を記録する。
【0037】
このような本実施形態によるカメラ1によれば、制御装置23は、姿勢センサ24の検知結果に基づき、測位用電波を受信しやすい天空部の方位に最も近い方位を向いたアンテナ13,14,15の出力を切替回路21に選択させる。このため、撮影時においてカメラ1の姿勢が横位置姿勢および縦位置姿勢のいずれの姿勢であっても、測位用電波を良好に受信することが可能になり、真上からある角度範囲以外では測位用電波が受信できないような、従来のカメラにおける死角は存在しなくなる。よって、従来のカメラのように、GPSアンテナに加えてFMアンテナを配置する必要もない。また、モータ等の駆動手段によってアンテナ部を天空部に向けさせるような、従来の機構的に複雑な構成は必要でないため、小型で安価に、受信感度の良いカメラ1を提供できる。また、制御装置23が、測位用電波を受信しやすい方位を向いたアンテナ13,14,15の出力を切替回路21に自動的に選択させるため、わざわざ撮影者が手を用いてカメラ1のアンテナ13,14,15を天空部へ向ける操作を行う必要もないので、利便性が向上する。
【0038】
また、本実施形態によるカメラ1は、アンテナ15が、カメラボディ2のグリップ部4における撮影者の手16で握られる部分を避ける位置に内蔵されているので、アンテナ15による測位用の電波の受信は、カメラ1のグリップ部4を握っている撮影者の手16によって遮られることなく、行われる。
【0039】
なお、制御装置23は、姿勢センサ24で検知されたカメラ1の姿勢に基づいて切替回路21に選択させたアンテナが測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数のアンテナ13,14,15の中で最も受信感度の良いものの出力を切替回路21に選択させる構成にしてもよい。
【0040】
この構成によれば、制御装置23は、姿勢センサ24の検知結果に基づいて切替回路21に選択させたアンテナ13,14,15が測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合でも、複数のアンテナ13,14,15の中で最も受信感度の良いものから、測位に必要な電波を受信することが可能となる。このため、天空部の方位に最も近い方位を向いたアンテナ13,14,15が、撮影者の手16で覆われたり、天空部の方位に近い方位の周囲の建物が障壁となって測位用電波の受信を妨害されたり等した場合でも、測位に必要な電波を受信して、カメラ1に内蔵した信号処理部22による測位機能を作動させることができる。
【0041】
また、制御装置23は、姿勢センサ24で検知されたカメラ1の姿勢に基づいて切替回路21に選択させたアンテナ13,14,15が測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数のアンテナ13,14,15の間で予め決められた優先順位に従って、アンテナ13,14,15の出力のいずれかを切替回路21に選択させるような構成にしてもよい。例えば、最も受信範囲が広いと考えられる中央のアンテナ14を最も優先し、撮影者の手16
がかかりずらい右側面のアンテナ13を次に優先し、撮影者の手16がかかるおそれの高い左側面のアンテナ15を最も低い優先順位とする。
【0042】
この構成によれば、制御装置23は、姿勢センサ24の検知結果に基づいて切替回路21に選択させたアンテナ13,14,15が測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数のアンテナ13,14,15の間で予め決められた優先順位に従って、アンテナ13,14,15の出力のいずれかを切替回路21に選択させる。このため、測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合に、複数のアンテナ13,14,15の中で最も受信感度の良いものから電波を受信するための複雑な回路を必要とせず、予め決められた順番で各アンテナ13,14,15の出力が受信されて、測位に必要な電波が検出される。このため、測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合に、より安価に、カメラ1に内蔵した信号処理部22による測位機能を作動させることが可能となる。
【0043】
また、上記実施形態では、アンテナ13,14,15が、カメラボディ2の表面よりも奥に内蔵されている構成であったが、アンテナ13,14,15はカメラボディ2の表面から突出したカメラボディ部分に内蔵されるように構成してもよい。この構成によれば、カメラボディ2の表面から突出した部分にアンテナ13,14,15が内蔵されるため、カメラボディ2の表面よりも内部にアンテナ13,14,15が内蔵されている上記の実施形態の場合と比較して、より測位用電波が受信しやすくなり、アンテナ13,14,15の受信感度は向上する。
【0044】
また、上記実施形態ではアンテナ13,14,15をカメラ1の3箇所に設置した場合について説明したが、アンテナは3箇所に限らず、複数箇所設置された構成にしてもよい。この場合、アンテナは、カメラ1の構え方によらず、必ず内蔵したアンテナの中の1つが測位用電波の電波を受信可能な状態(フールスカイ状態)になるような位置に設置されているのが望ましい。
【0045】
また、上記実施形態ではアンテナ13,14,15をカメラ1の左右方向に設置した場合について説明したが、アンテナはカメラ1の左右方向に限らず、カメラ1の前後方向に設置された構成にしてもい。
【0046】
また、上記実施形態では、アンテナ13,14,15として平板状のパッチアンテナを用いたが、セラミック等で構成され、面積が10[mm]×2[mm]、厚さが3[mm]程度で比較的小さい直方体状のチップアンテナや、基板でパターンを形成させたアンテナ等を用いても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、アンテナ14は、カメラボディ2のグリップ部4における撮影者の手16で握られる部分を避ける位置で、かつ撮影者の手16の位置より上部に設置されていたが、撮影者の手16の位置より下側に設置される構成であってもよい。
【0048】
また、上記実施形態ではカメラ1のカメラボディ2がすべて非金属の合成樹脂から構成されている場合について説明したが、カメラボディ2が金属から成り、アンテナ13,14,15の付近のカメラボディ2のみが非金属から成るような構成であってもよい。この構成によれば、カメラボディ2が金属から構成される場合でも、アンテナ13,14,15の内蔵されたカメラボディ部分が非金属から成るため、内蔵されたアンテナ13,14,15によって測位に必要な電波を非金属から成るカメラボディ部分を介して検出することができる。
【0049】
また、カメラボディ2が金属から成り、アンテナは金属から成るカメラボディ2に形成された開口部に内蔵されるように構成してもよい。この場合、開口部は非金属製キャップで塞がれる。例えば、図4に示すように、グリップ部4と反対側の右側面から見たカメラ1の側面に、主にパソコン接続用の端子であるUSB端子のゴム蓋31,電源入力端子であるDC入力端子のゴム蓋32,および主に家電やAV機器向けのデジタル映像・音声入出力端子であるHDMI(High Definition Multimedia Interface)端子のゴム蓋33に加えて、ゴム製のアンテナ蓋34を備える構成にする。このゴム製のアンテナ蓋34は、金属製のカメラボディ2に形成されてアンテナが埋め込まれた開口部を塞いでいる。この構成によれば、アンテナ蓋34の下方に内蔵されたアンテナは、金属から成るカメラボディ2の開口部に設けられた非金属製のゴムキャップを介して、測位に必要な電波を受信することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記実施形態では、カメラ1の種類がデジタルカメラである場合について説明したが、画像記録媒体として銀塩フィルムを用いたカメラであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、本発明を静止画像を撮像するカメラ1に適用した場合について説明したが、動画像を撮像するビデオカメラや、携帯電話等に内蔵されるカメラ等の他の撮像装置にも適用することが可能である。このような撮像装置に本発明を適用した場合においても、上記実施形態と同様な作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の最良の実施形態によるカメラの構成の概略を示す平面図である。
【図2】図1に示すカメラの撮影時に撮影者によってグリップ部を握られたカメラの正面図である。
【図3】図1に示すカメラの回路構成の概略を示すブロック図である。
【図4】グリップ部と反対側の側面から見た変形例によるカメラの側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…カメラ
2…カメラボディ
3…撮影レンズ
4…グリップ部
5…レリーズボタン
6…表示パネル
7…コマンドロックボタン
8…露出補正ボタン
9…オートブラケティングボタン
10…動作モードダイヤル
11…ペンター部
12…アクセサリーシュー
13,14,15…アンテナ
16…撮影者の手
21…切替回路
22…信号処理部
23…制御装置
24…姿勢センサ
25…基板
34…アンテナ蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位用衛星から測位用電波を受信する、複数の方位に向けて設置された複数のアンテナと、カメラの姿勢を検知する姿勢センサと、複数の前記アンテナの出力のいずれかを選択して切り替える切替回路と、前記姿勢センサで検知されたカメラの姿勢に基づき、複数の前記アンテナの中で最も天空部の方位に近い方位に向けられているものの出力を前記切替回路に選択させる制御装置とを備えることを特徴とする測位機能を内蔵するカメラ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記姿勢センサで検知されたカメラの姿勢に基づいて前記切替回路に選択させた前記アンテナが測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数の前記アンテナの中で最も受信感度の良いものの出力を前記切替回路に選択させることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記姿勢センサで検知されたカメラの姿勢に基づいて前記切替回路に選択させた前記アンテナが測位に必要な電波を検出できない、または受信した電波が一定強度以下の場合、複数の前記アンテナの間で予め決められた優先順位に従って前記アンテナの出力のいずれかを前記切替回路に選択させることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項4】
前記アンテナは、非金属から成るカメラボディ部分に内蔵されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項5】
前記カメラボディ部分はカメラボディの表面から突出し、前記アンテナはこの突出部分に内蔵されていることを特徴とする請求項4に記載のカメラ。
【請求項6】
前記アンテナは、金属から成るカメラボディに形成された開口部に内蔵され、この開口部は非金属製キャップで塞がれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項7】
前記アンテナは、カメラボディのグリップ部における撮影者の手で握られる部分を避ける位置に内蔵されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−192900(P2009−192900A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34378(P2008−34378)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】