説明

カメラ

【課題】被写体を所定の位置で確実にセルフタイマー撮影すること。
【解決手段】セルフタイマー撮影の際、RGB測光センサ16が被写体人物の肌色を周期的に検出する。移動速度検出部22が、RGB測光センサ16からの検出信号に基づいて撮影範囲内での被写体人物の移動速度が所定値以上であることを検出すると、セルフタイマー時間延長部23は、当初セットされたセルフタイマー時間を所定時間だけ延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフタイマー機能を有するカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのセルフタイマー装置は、カメラの操作者がセルフタイマー装置を起動した後に予め定められた所定の時間の経過後にシャッターをレリーズする。カメラの操作者は、セルフタイマー装置を起動した後に、自身が被写体になるために被写体側に移動してカメラの撮影範囲内に入る。ところが、セルフタイマー装置は、起動してから所定時間後にシャッターをレリーズするので、カメラの操作者が迅速に被写体側に移動することができなかった場合には、カメラの撮影範囲内に入る前に、シャッターがレリーズされる、即ち撮影が開始されてしまうという不都合が起こる。
そこで、このような不都合を解決するカメラが提案されている。このカメラは、測距手段又は焦点検出手段によって、カメラ操作者が撮影範囲に入ったことを検出すると共にその後にフォーカシングレンズを動かして焦点調節した後にシャッターレリーズする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−184881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたカメラは、焦点検出手段などによってカメラ操作者がカメラの撮影範囲内に入ったことを検出し、且つフォーカシングレンズで焦点調節した後に、シャッターレリーズを行うので、カメラ操作者が撮影範囲内に入ったが、しかし、所定の撮影位置へ移動している途中でシャッターがレリーズされることがありうるという問題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1の発明によるカメラは、起動した後に第1の所定時間の経過後にレリーズを行うセルフタイマー装置と、セルフタイマーを起動する操作部材と、撮影範囲内での被写体の移動速度が所定値以上であることを検出する移動速度検出手段と、移動速度検出手段が第1の所定時間の経過前に被写体の移動速度が所定値以上であることを検出した時に、第1の所定時間を第2の所定時間だけ延長する時間延長手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のカメラによれば、被写体の移動速度が所定値以上の場合は、セルフタイマーの時間を延長できるので、所定の撮影位置まで移動した被写体を確実に撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図2】セルフタイマー撮影の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】セルフタイマー撮影時の延長時間の設定を説明するタイムチャートである。
【図4】セルフタイマー撮影時の残り時間と延長時間の関係を例示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<デジタルカメラの構成>
以下、本発明の実施の形態によるセルフタイマー機能を有するデジタルカメラについて、図1〜4を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、デジタルカメラは、撮影レンズ11、絞り12、撮像素子13、バッファメモリ14、画像処理部15を備える。また、デジタルカメラは、RGB測光センサ16、CPU(Central Processing Unit)17、ROM(Read Only Memory)18、バス19、ディスプレイ30、タイマー起動部31、セルフタイマー時間設定部32およびシーンモード選択部33を備える。
【0009】
画像処理部15、RGB測光センサ16、CPU17、ROM18、ディスプレイ30、タイマー起動部31、セルフタイマー時間設定部32およびシーンモード選択部33は、バス19を介して互いに接続されている。
【0010】
撮影レンズ11は、ズームレンズやフォーカスレンズを含む複数のレンズで構成され、被写体像を撮像素子13上に結像する。図1では簡単のため、撮影レンズ11は1枚のレンズで示されている。撮像素子13は、撮影レンズ11からの被写体光L1を光電変換することにより画像信号を生成する。
【0011】
撮像素子13から出力される画像信号は、バッファメモリ14を介して画像処理部15に送られ、ここで所定の種々の画像処理が施される。撮影開始前の段階では、撮像素子13からの画像信号は、バッファメモリ14、画像処理部15を介してディスプレイ30に送られ、カラーのスルー画像として表示される。
なお、撮影段階では、撮像素子13からの画像信号は、バッファメモリ14、画像処理部15を介して不図示の画像記録部にて記録される。
【0012】
RGB測光センサ16は、撮影レンズ11と撮像素子13との間の光路に配置された不図示の光路分岐光学系によって分岐された光束を受光する位置に配設され、撮像素子13の撮影範囲内に対応する光束を測光し、R,G,Bの色信号を出力する。すなわち、RGB測光センサ16は、測光範囲中の各地点の色に対応する色信号を出力する。
【0013】
CPU17は、肌色領域検出部20、セルフタイマー部21、移動速度検出部22、セルフタイマー時間延長部23、顔検出部24およびシーンモード設定部25として機能する。また、CPU17は、撮影手段である撮影レンズ11、絞り12、撮像素子13を制御する。
ROM18は、顔データ記憶部26、シーンモードデータ記憶部27として機能する。
【0014】
肌色領域検出部20は、RGB測光センサ16からのR,G,Bの色信号に基づき、撮影範囲内の被写体の肌色領域を被写体人物として検出する。
セルフタイマー部21は、セルフタイマーの起動からレリーズ動作までの時間であるセルフタイマー時間をカウントし、そのセルフタイマー時間の経過後にレリーズ信号を送出する。このレリーズ信号に応じて撮影レンズ11、絞り12、撮像素子13による撮影動作が行われる。
【0015】
移動速度検出部22は、肌色領域検出部20が検出した肌色領域部分の信号を周期的にサンプリングすることにより、被写体人物の移動速度を検出し、移動速度が所定値以上であることを検出した時点に検出信号を出力する。
【0016】
セルフタイマー時間延長部23は、セルフタイマー時間のカウント動作中に移動速度検出部22から検出信号が出力されたときに、セルフタイマー時間の延長を行う。この延長しようとする時間は、当初設定されたセルフタイマー時間の残存時間に基づいて設定される。例えば、延長しようとする時間と残存時間との合計がほぼ一定となるように、延長時間の長さが調整される。
また、セルフタイマー時間延長部23は、被写体の移動速度の大小に応じて延長時間の長さを調節する。例えば、被写体の移動速度が大きい場合は、所定の撮影位置までの距離が長いので延長しようとする時間を長くし、被写体の移動速度が小さい場合は、延長しようとする時間を短くする。
【0017】
顔検出部24は、被写体のスルー画像データについて、顔データ記憶部26に予め記憶されている顔データと比較することにより、画像中の被写体人物の顔を検出する。画像処理部15は、スルー画データ中の被写体人物の顔画像データを周期的に認識することによって被写体人物の位置変動、すなわち動きを検知することができる。
顔データ記憶部26は、例えば、眉、眼、鼻、唇の形状に関する特徴点のデータを記憶している。
【0018】
顔検出には、例えば、特開2001−16573号公報に開示されている検出手法を用いることができる。この検出手法は、入力画像中から特徴点を抽出して被写体の顔領域、顔の大きさ等を検出するものである。特徴点としては、眉、眼、鼻、唇の各端点、および顔の輪郭点、例えば頭頂点や顎の下端点が挙げられる。
【0019】
他の顔検出としては、例えば、特開2005−157679号公報に開示されている検出手法を用いることができる。この検出手法は、先ず、入力画像中の2画素間の輝度差を特徴量として学習しておき、その特徴量に基づいて入力画像中の所定領域に顔が存在するか否かを示す推定値を算出し、推定値が1以上のときにその所定領域に顔が存在すると判別するものである。
【0020】
シーンモード設定部25は、被写体の環境を認識して自動的に撮影シーンモードを設定する。撮影シーンモードには、撮影範囲(撮影画面)が全体的に暗い夜景モード、被写界深度を浅く設定し人物撮影に適するポートレートモード、シャッタスピードを高速に設定し動きの速い被写体の撮影に適するスポーツモードなど様々なものがある。
シーンモード設定部25は、被写体のスルー画像データについて、シーンモードデータ記憶部27に予め記憶されているシーンモードデータと比較することにより、画像中の被写体の環境がどのような撮影シーンに類似しているかを認識して自動的に撮影シーンモードを設定する。
【0021】
ディスプレイ30は、上述したスルー画像やシャッタスピード、絞りなどの撮影情報を表示する。
タイマー起動部31は、セルフタイマー撮影の際のタイマー計時を開始させる操作部である。
セルフタイマー時間設定部32は、セルフタイマー時間を手動で設定する操作部である。
シーンモード選択部33は、上述した様々な撮影シーンモードの中から任意の撮影シーンモードを手動で選択するための操作部である。
【0022】
<デジタルカメラの動作>
以上のように構成されたデジタルカメラのセルフタイマー撮影動作を、図2〜4も参照しながら説明する。
図2のフローチャートを参照すると、ステップS11で、不図示の操作部によってセルフタイマー撮影モードにセットする。ステップS12で、セルフタイマー時間設定部32によってセルフタイマー時間、すなわちセルフタイマーカウンタをN秒にセットする。ステップS13で、タイマー起動部31によってタイマー計時を開始する。これにより、セルフタイマー部21はカウンタのデクリメント(カウントダウン)を開始する。カウンタのデクリメントは、例えば、1秒単位でもよいし、1/10秒単位でもよい。
【0023】
タイマー計時を開始すると同時に、肌色領域検出部20は、RGB測光センサ16からのR,G,Bの色信号に基づき、肌色領域部分を検出する。移動速度検出部22は、肌色領域検出部20が検出した肌色領域部分の移動速度を検出する。
【0024】
ステップS14で、カウンタが0秒であるか否か判定する。肯定判定であれば、ステップS15へ進みシャッターレリーズ動作を行い、セルフタイマー撮影を終了する。ステップS14で、否定判定であれば、ステップS16へ進む。
【0025】
ステップS16では、移動速度検出部22によって肌色領域部分すなわち被写体人物の移動速度が所定値以上であるか否かを検出する。否定判定であれば、ステップS17へ進み、カウンタのデクリメントを行い、ステップS14へ戻る。この動作は、カウンタが0秒、すなわち当初セットされたN秒が経過するまで繰り返される。
【0026】
一方、ステップS16で肯定判定であれば、すなわち、移動速度検出部22が被写体人物の移動速度が所定値以上であることを検出して検出信号を出力すると、ステップS18へ進み、セルフタイマー時間延長部23は、セルフタイマー時間をM秒間だけ延長する。
【0027】
この延長時間M秒は、当初設定されたセルフタイマー時間N秒の残存時間n秒に基づいて設定される。
図3に示されるように、セルフタイマー時間Nを10秒とした場合、タイマー計時を開始してから7秒後に移動速度が所定値以上であるとの検出信号が出力されたとすると、残存時間は3秒であり、延長時間Mを2秒とする。すなわち、当初のセルフタイマー時間10秒は2秒間延長される。
【0028】
また、延長時間M秒は、延長時間M秒と残存時間n秒との和が5秒となるように設定する。これは、被写体人物が所定値以上の動きをしてから5秒間経過すれば動きが微小になるか静止するであろうとの予測に基づいて設定される。なお、延長時間M秒と残存時間n秒との和は5秒に限らず、5秒よりも長くしてもよいし、短くしてもよい。
【0029】
図4に示されるように、タイマー計時を開始してから5秒間は、その間に被写体人物が所定値以上の動きを検出したとしても延長時間M=0秒である。そして、タイマー計時を開始してから6秒後(残存時間n=4秒)に所定値以上の動きを検出した場合は、延長時間M=1秒とし、同様に、7秒後に所定値以上の動きを検出した場合は、延長時間M=2秒とする。以下も同様である。
【0030】
再び図2のフローチャートを参照すると、ステップS18で、セルフタイマー時間延長部23がセルフタイマー時間をM秒間だけ延長すると、ステップS14へ戻る。
なお、ステップS14へ戻った場合、再度の延長が必要になる場合もあり得る。この場合、セルフタイマー撮影がいつまでも行われない事態を回避するために、例えば、延長回数は3回までに制限してもよい。
以上の動作説明では、被写体人物の動きに着目しているので、撮影範囲に被写体人物以外の動く物体、例えば、自動車や犬が存在していてもセルフタイマー撮影は支障なく行われる。
【0031】
本実施の形態によるデジタルカメラによれば、以下の作用効果を奏する。
(1)被写体人物の移動速度が所定値以上の場合は、セルフタイマー時間を延長できるので、被写体を所定の撮影位置で静止した状態で撮影することができる。
(2)延長しようとする時間M秒は、当初設定されたセルフタイマー時間N秒の残存時間n秒に基づいて設定されるので、いたずらに長い延長時間を設定することがない。
【0032】
以下、本実施の形態によるデジタルカメラの変形例を説明する。
(1)上述の実施の形態では、被写体人物の動きを検出するのに、RGB測光センサ16の肌色カラー信号を利用したが、撮像素子13からのスルー画像データから被写体人物の移動速度を検知するようにしてもよい。例えば、顔検出部24が撮像素子13からのスルー画像データ中の被写体人物の顔画像を検出し、この顔画像の移動速度を検知するようにしてもよい。
(2)被写体人物の移動速度が所定値以上であることを検出した場合に、延長しようとする時間M秒を一律に定めず、その移動速度の大小によって延長時間M秒を可変としてもよい。
(3)シーンモード設定部25が被写体の環境を認識して自動的に撮影シーンを設定した状態で、被写体人物の移動速度が所定値以上であることを検出した場合は、設定された撮影シーンに応じて延長しようとする時間M秒を設定してもよい。例えば、撮影シーンとして夜景モードを設定した場合、暗い環境での移動は緩慢になる傾向があるから、延長しようとする時間M秒を本実施の形態の場合よりも長めに設定するのが合理的である。
シーンモード選択部33によって撮影シーンモードを手動で選択した場合も同様とすることができる。
本発明は、その特徴を損なわない限り、以上説明した実施の形態に何ら限定されない。
【符号の説明】
【0033】
13:撮像素子 15:画像処理部
16:RGB測光センサ 17:CPU
18:ROM 19:バス
20:肌色領域検出部 21:セルフタイマー部
22:移動速度検出部 23:セルフタイマー時間延長部
24:顔検出部 25:シーンモード設定部
31:タイマー起動部 32:セルフタイマー時間設定部
33:シーンモード選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動した後に第1の所定時間の経過後にレリーズを行うセルフタイマー装置と、
前記セルフタイマーを起動する操作部材と、
撮影範囲内での被写体の移動速度が所定値以上であることを検出する移動速度検出手段と、
前記移動速度検出手段が前記第1の所定時間の経過前に前記被写体の移動速度が所定値以上であることを検出した時に、前記第1の所定時間を第2の所定時間だけ延長する時間延長手段と、を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記被写体を検出するRGB測光センサを更に備え、
前記移動速度検出手段は、前記RGB測光センサからの出力信号に基づいて前記被写体の所定値以上の移動速度を検出することを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1に記載のカメラにおいて、
被写体を撮像し、その映像信号を出力する撮像手段を更に備え、
前記移動速度検出手段は、前記撮像手段からの前記映像信号に基づいて前記被写体の所定値以上の移動速度を検出することを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記時間延長手段は、前記移動速度検出手段が前記被写体の所定値以上の移動速度を検出した検出時点に応じて、前記第2の所定時間の長さを調整することを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記時間延長手段は、前記被写体の移動速度の大小に応じて前記第2の所定時間の長さを調整することを特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記時間延長手段は、前記速度検出手段による前記検出時点から前記第1の所定時間の残存時間と前記第2の所定時間との合計がほぼ一定となるように、前記第2の所定時間の長さを調整することを特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のカメラにおいて、
複数の撮影シーンモードから択一的にシーンモードを選択するシーンモード選択手段を更に備え、
前記時間延長手段は、前記移動速度検出手段が前記被写体の所定値以上の移動速度を検出した時、前記選択されたシーンモードに応じて前記第2の所定時間の長さを調整することを特徴とするカメラ。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記被写体の環境を認識して自動的に撮影シーンモードを設定するシーンモード設定手段を更に備え、
前記時間延長手段は、移動速度検出手段が前記被写体の所定値以上の移動速度を検出した時、前記設定されたシーンモードに応じて前記第2の所定時間の長さを調整することを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−113062(P2011−113062A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272271(P2009−272271)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】