説明

カラオケデータストレージシステム

【課題】 カラオケ端末のインタフェイス性能を良好に維持するとともに、ネットワーク性能を損なうことがなく、しかも耐障害性に優れたカラオケデータストレージシステムとする。
【解決手段】 受信したカラオケデータを一時的に格納する書き込みバッファ12と、このカラオケデータを、RAID1方式で記憶部に書き込む第1ディスクアレイシステム14と、RAID5方式で記憶部に書き込む第2ディスクアレイシステム15と、各ディスクアレイシステムを制御するストレージ制御手段13とを備える。ストレージ制御手段13は、カラオケデータを楽曲データと映像データとに区分し、楽曲データを第1ディスクアレイシステム14で処理させ、映像データを第2ディスクアレイシステム15で処理させるように制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信手段を介して受信したカラオケデータを蓄積するためのカラオケデータストレージシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歌唱対象となる楽曲の演奏データ、歌詞データ、背景映像データ等からなるカラオケデータが公衆電話回線等の通信手段を介して送信され、カラオケ店に設置されたカラオケ端末で受信して再生するようにした通信カラオケシステムが普及している。
【0003】
このようなカラオケデータは、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)やMP3(MPEG-1 Audio Layer-3)等のデータ形式からなる。カラオケデータは、演奏データや歌詞文字を表示するための歌詞データからなる楽曲データと、背景映像等を表示するための映像データとから構成されている。歌詞データは、歌詞文字に関するテキストデータ、フォントデータ、レイアウトデータ、表示タイミングデータ、色変わりデータ等を含んでいる。また、映像データは主としてMPEG(Moving Picture Experts Group)規格のデータ形式からなる。
【0004】
カラオケデータは、センターサーバから公衆電話回線等の通信回線を介して、複数のカラオケ店に各々設置されたカラオケ端末へ直接的に送信されたり、複数のカラオケ端末が接続されたローカルサーバで中継された後、ローカルサーバとLAN接続された複数のカラオケ端末に送信されたりする。
【0005】
各カラオケ端末では、通信手段を介して受信した楽曲データ及び映像データが、書き込みバッファで一時的に格納された後、所定のタイミングでハードディスク記憶装置(以下、HDDと記す)に記憶される。さらに、楽曲データは、所定のタイミングでバックアップ用のHDDにも記憶される。一方、楽曲データと比較して大容量である映像データは、その容量が200MB乃至1GB程度であるため、現状ではバックアップされていない。
【0006】
近年の通信カラオケでは、映像効果にバリエーションを持たせるため、1つの楽曲に対して1つの映像が対応付けられた「1対1映像(専用映像)」が増加している。しかし、上述したように映像データについてはバックアップがなされていないため、万が一、1対1映像に対応した映像データが記録されているHDDが故障してしまった場合には、他のHDDに記憶されている汎用映像データを応急的に利用しているのが現状である。
【0007】
このため、せっかく映像効果にバリエーションを持たせようとしていたにもかかわらず、その目的を達成できない場合もあった。そこで、楽曲データだけではなく、映像データもバックアップすることが考えられるが、上述したように映像データは大容量であり、さらにハイビジョン化が進んだ結果、映像データの大容量化が一層顕著となっているため、現状の装置を用いて映像データのバックアップを行うことは困難である。
【0008】
ところで、大容量データに冗長性を持たせて記憶するための技術としてRAID(Redundant Arrays of Independent(Inexpensive) Disks)が知られている。RAIDは、ディスクアレイの代表的な実装形態であり、複数のHDDにデータを分散記憶することによりデータの信頼性を高めるようにした技術である。
【0009】
従来、RAIDを利用してデータの信頼性を向上させるための技術が種々提案されている。例えば、ネットワークRAIDシステムに関する技術が開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載されている技術は、ネットワークRAIDシステムに関するもので、ネットワークを介して相互に接続された複数のコンピュータと、各コンピュータにそれぞれ接続された記憶手段とを備えている。そして、各コンピュータにそれぞれ接続された記憶手段を利用して、ネットワーク内で仮想RAID装置を構成したものである。
【0010】
また、RAID0乃至6がそれぞれ有する利点及び欠点を考慮して、効率良くデータのバックアップを行う技術が開示されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載されている技術は、RAID5又はRAID6構成のディスクアレイシステムを備えたバックアップ装置に適用するものである。そして、書き込みバッファの使用状況を監視し、書き込みバッファの空き容量が少なくなった場合に書き込みバッファ内の情報を別途用意した高速ディスクシステム(RAID0/1)に書き出し、使用状況が好転すると、高速ディスクシステム(RAID0/1)に待避させたデータを再び書き込みバッファに書き戻すようにしたものである。
【0011】
【特許文献1】特開2006−106898号公報
【特許文献2】特開2006−268420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、カラオケデータについても、ディスクアレイシステムであるRAID5を利用することにより、記憶すべきデータ量を全体として減少させるとともに、耐障害性を高めることが考えられる。このRAID5は、書き込みデータに対して冗長性を持たせるために、誤り符号であるパリティを生成し、複数のHDDに対して元データとパリティデータとを分散させて記録することにより、耐障害性を飛躍的に向上させるようにした方式である。
【0013】
しかし、RAID5では、複数のHDDに書き込みデータを分散して書き込むとともに、所定の演算を行って誤り符号であるパリティを生成しなければならない。したがって、パリティ生成のためのデータ読み出し及び演算と、書き込みデータ及びパリティデータの書き込み処理に時間を要し、迅速な処理を行うことができないという不都合があった。すなわち、RAID5には、ライトペナルティが存在するため、カラオケデータの全てをRAID5で処理すると、1回の送信曲数が多い場合には書き込みバッファが満杯となり、良好なインタフェイス性能を維持できずに、ネットワーク性能を十分に引き出すことができないおそれがあった。
【0014】
また、RAIDの他の方式としてミラーリングのみを行うRAID1がある。このRAID1は、複数(最低2台)のHDDに同時に同一のデータを書き込むことにより、データに冗長性を持たせるようにした方式である。RAID1は、パリティ等の誤り符号を生成しないため、RAID5と比較して高速処理を行うことができるという利点がある。しかし、RAID1ではデータを二重化してミラーリングを行うため、RAID5と比較して全データ量が著しく膨大なものとなるという不都合がある。
【0015】
ここで、通信カラオケシステムについて考えると、カラオケデータの全てをRAID5で処理しようとすると、ライトペナルティ等により書き込みバッファに支障が生じたり、大容量の書き込みバッファを用意しなくてはならない。一方、カラオケデータの全てをRAID1で処理しようとすると、大容量のHDDを必要として、カラオケ端末の生産コスト及び維持管理費用が上昇するという問題がある。
【0016】
そこで、データ容量がそれほど大きくない楽曲データと、この楽曲データと比較して大容量の映像データとを含むカラオケデータの特色に着目し、仕様の異なる複数のRAID方式を用いて、効率良くカラオケデータのバックアップを行うことが可能な技術の開発が望まれていた。
【0017】
なお、上述した特許文献1に記載された技術は、ネットワーク内に分散配置されたHDD等の記憶手段を総合的に用いて仮想RAID装置を構築しようとするもので、この技術を通信カラオケシステムにそのまま適用することはできない。すなわち、通信カラオケシステムでは、所有者や管理者等が異なる複数のカラオケ端末が独立して存在しており、これらのカラオケ端末を構成するHDD等の記憶手段を総合的に用いることは、実質的に不可能である。
【0018】
また、上述した特許文献2に記載された技術は、仕様の異なる複数のRAID方式を用いて書き込みバッファにおけるライトペナルティを解消しようとする技術である。しかし、一旦、高速ディスクシステム(RAID0/1)に待避させたデータを、再び書き込みバッファに書き戻してRAID5またはRAID6構成のディスクアレイシステムに記憶させているため、データの記憶処理が複雑になるとともに多大な処理時間を要するという不都合がある。したがって、この技術を通信カラオケシステムにそのまま適用してもメリットは少ない。
【0019】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、通信カラオケシステムにおいて各端末のインタフェイス性能を良好に維持するとともに、ネットワーク性能を損なうことがなく、しかも耐障害性に優れたカラオケデータストレージシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のカラオケデータストレージシステムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。
本発明のカラオケデータストレージシステムは、通信手段を介して受信したカラオケデータを蓄積するためのカラオケデータストレージシステムに関するものである。このカラオケデータストレージシステムは、受信したカラオケデータを一時的に格納するための書き込みバッファと、書き込みバッファ内に一時的に格納されたカラオケデータを、相対的に記憶部への書き込み性能が高い第1のRAID方式で所定の記憶部に書き込むための第1ディスクアレイシステムと、相対的に記憶部の利用効率が高い第2のRAID方式で所定の記憶部に書き込むための第2ディスクアレイシステムと、第1ディスクアレイシステム及び第2ディスクアレイシステムを制御するためのストレージ制御手段とを備える。ストレージ制御手段は、書き込みバッファ内に一時的に格納されたカラオケデータを、所定の基準に基づいて容量が小さい第1のデータと容量が大きい第2のデータとに区別する。さらに、ストレージ制御手段は、第1のデータを第1ディスクアレイシステムで処理させる一方、第2のデータを第2ディスクアレイシステムで処理させるように制御することを特徴とする。
なお、「相対的に」とは、「第1のRAID方式と第2のRAID方式との比較において」という意味である。また、「記憶部への書き込み性能が高い」とは、「書き込みバッファにおけるライトペナルティが存在しない、あるいはライトペナルティが極めて小さい」という意味であり、「記憶部の利用効率が高い」とは、「記憶部に記憶される総データ量が少ない」という意味である。
【0021】
このような構成からなるカラオケデータストレージシステムでは、公衆電話回線、光回線等の通信手段を介して受信したカラオケデータを書き込みバッファに一時的に格納する。書き込みバッファに一時的に格納されたカラオケデータは、相対的に記憶部への書き込み性能が高いRAID方式を採用した第1ディスクアレイシステムと、相対的に記憶部の利用効率が高い第2のRAID方式を採用した第2ディスクアレイシステムとを用いて、記憶部に書き込まれる。
【0022】
ストレージ制御手段は、所定の基準に基づいて、書き込みバッファに一時的に格納されたカラオケデータの容量を判断し、容量が小さい第1のデータと容量が大きい第2のデータとに区別する。そして、容量が小さい第1のデータを第1ディスクアレイシステムで処理し、容量が大きい第2のデータを第2ディスクアレイシステムで処理する。なお、所定の基準とは、データの容量値やデータの種類等のことである。
【0023】
ここで、本発明のカラオケデータストレージシステムでは、複数の記憶手段に対して同一のデータを重複して記憶するRAID1を第1のRAID方式とし、複数の記憶手段に対して元データと誤り訂正符号データとを分散して記憶するRAID5を第2のRAID方式とすることが可能である。
【0024】
すなわち、RAID1はいわゆるミラーリングを行う方式であり、処理速度は早いが大容量の記憶部を必要とするため、容量が小さい第1のデータの処理に適している。一方、RAID5はパリティデータと書き込みデータとを複数の記憶部に分散して記憶する方式であり、処理速度は遅いが記憶部の容量を削減することができるため、容量が大きい第2のデータの処理に適している。
【0025】
また、楽曲データを第1のデータとし、映像データを第2のデータとすることが可能である。
すなわち、楽曲データと映像データとを比較すると、楽曲データの方が容量が小さい。そこで、楽曲データをRAID1を採用した第1ディスクアレイシステムで処理し、映像データをRAID5を採用した第2ディスクアレイシステムで処理することにより、データ処理能力を向上させるとともに記憶部を有効的に利用することができる。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明のカラオケデータストレージシステムによれば、データ記憶処理方法の異なる2つのディスクアレイシステムを用意し、楽曲データ等の小容量データについては、相対的に記憶部への書き込み性能が高いRAID1等を用いたディスクアレイシステムで処理し、映像データ等の大容量データについては、相対的に記憶部の利用効率が高いRAID5等を用いたディスクアレイシステムで処理している。
【0027】
一般的に、通信カラオケシステムにおいてセンターサーバから送信されてくるカラオケデータは、楽曲データと映像データとが完全に1対1の関係とはなっておらず、複数の楽曲データに対して汎用的に使用する汎用映像データを含んでいる。このため、配信曲数割合では、楽曲データと映像データとの比率が、ほぼ10乃至20:1程度となっており、書き込みバッファへの送信データ量に占める楽曲データの割合は、楽曲単位に比べて20乃至30倍程度と、相対的に大きくなっている。
【0028】
したがって、ミラーリング処理等を行っても大容量とならない楽曲データ等と、この楽曲データ等と比較して大容量の映像データ等とを区別して、それぞれ処理方法の異なるディスクアレイシステムによりバックアップすることにより、カラオケ端末のインタフェイス性能を良好に維持するとともに、ネットワーク性能を損なうことがなく、しかも耐障害性に優れたシステムを構築することが可能となる。
【0029】
より具体的に説明すると、楽曲データ等は高速処理されるため書き込みバッファ内の滞留が抑制され、映像データ等はパリティ生成に時間を要したとしても処理量が少ないので書き込みバッファの占有時間が短くて済み、書き込みバッファを有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明のカラオケデータストレージシステムの実施形態を説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係るカラオケデータストレージシステムに関するもので、図1はカラオケデータストレージシステムの構成を示すブロック図、図2はデータ記憶処理の手順を示すフローチャートである。
【0031】
<カラオケデータストレージシステム>
本発明のカラオケデータストレージシステムは、カラオケ端末の構成要素として構築されるもので、通信手段を介して受信したカラオケデータを蓄積するためのシステムである。具体的には、図1に示すように、カラオケ端末10の構成要素として、通信インタフェイス11、書き込みバッファ12、ストレージ制御手段13、第1ディスクアレイシステム14、及び第2ディスクアレイシステム15を備えている。
【0032】
<通信手段>
通信手段は、センターサーバで管理されるカラオケデータをカラオケ端末10へ送信するとともに、カラオケ端末10からのデータをセンターサーバへ送信するための手段である。通信手段を構成する通信回線は、データの送受信を行うことができればどのような回線であっても良いが、例えば、公衆電話回線、光回線、専用通信回線等の有線回線や、無線公衆電話回線、無線通信回線等の無線回線を用いることができる。なお、通信手段としてインターネット回線を用いる場合には、セキュリティを高めるという点で、VPN(Virtual Private Network)を用いることが好ましい。
【0033】
なお、センターサーバから直接カラオケ端末10へカラオケデータを送信するのではなく、一旦、センターサーバからローカルサーバへカラオケデータを送信し、さらにローカルサーバにLAN接続されている複数のカラオケ端末10に対してカラオケデータを送信するようなシステムとしてもよい。
【0034】
<通信インタフェイス>
通信インタフェイス11は、通信回線とカラオケ端末10との間におけるデータの送受信を補助するための装置で、例えば、モデム、ターミナルアダプタ、DCE(Data Circuit-terminating Equipment:回線終端装置)、DSL装置等からなる。
【0035】
<書き込みバッファ>
書き込みバッファ12は、受信したカラオケデータを一時的に格納するための装置で、例えば、半導体メモリ等からなる。書き込みバッファ12の容量は特に制限はないが、製造コスト及び処理速度との関係から、例えば1MB〜8MB程度の容量のものが使用される。
【0036】
<第1ディスクアレイシステム>
第1ディスクアレイシステム14は、書き込みバッファ12内に一時的に格納されたカラオケデータを、第1のRAID方式で所定の記憶部に書き込むためのシステムで、2台のHDDに対してデータを書き込むようになっている。
【0037】
本実施形態における第1のRAID方式は、RAID1となっている。このRAID1は、複数のHDDに同時に同一のデータを格納すること(ミラーリング)により、耐障害性を高めるようにした技術である。
【0038】
ここで、RAID1における具体的な記録方法及び障害時におけるデータ復元方法を説明する。2台のHDDを用いたRAID1では、書き込みバッファ12に一時的に格納したデータを、記憶部D(16d)及び記憶部E(16e)に対して同時に格納する。このようなデータ格納処理を行うことにより、記憶部D(16d)及び記憶部E(16e)には同一のデータが重複して格納されることになる。
【0039】
通常時におけるデータの読み出しは、記憶部D(16d)または記憶部E(16e)の一方から、あるいは記憶部D(16d)及び記憶部E(16e)から並行して行われる。そして、記憶部D(16d)または記憶部E(16e)で故障が発生した場合には、正常に動作している記憶部からデータを復元する。
【0040】
なお、第1ディスクアレイシステム14を構成するHDDの台数は、製造コスト及び管理コストの低減化やカラオケ端末10をコンパクト化するという点から2台とすることが好ましいが、これに限られるものではなく、3台、4台、あるいはそれ以上の台数とすることもできる。
【0041】
<第2ディスクアレイシステム>
第2ディスクアレイシステム15は、書き込みバッファ12内に一時的に格納されたカラオケデータを、第2のRAID方式で所定の記憶部に格納するためのシステムで、3台のHDDに対してデータを格納するようになっている。
【0042】
本実施形態における第2のRAID方式は、RAID5となっている。このRAID5は、誤り符号であるパリティを生成し、複数のHDDに対して元データとパリティデータとを分散させて格納することにより、耐障害性を高めるようにした技術である。
【0043】
ここで、RAID5における具体的な記録方法及び障害時におけるデータ復元方法を説明する。3台のHDDを用いたRAID5では、データを3分割して、記憶部A(16a)、記憶部B(16b)、及び記憶部C(16c)にそれぞれ格納する。そして、記憶部A(16a)及び記憶部B(16b)に分割して格納されたデータに対してXOR(排他的論理和)演算を行ってパリティを作成し、記憶部C(16c)に格納する。同様に、記憶部B(16b)及び記憶部C(16c)に分割して格納されたデータに対してXOR演算を行ってパリティを作成し、記憶部A(16a)に格納し、記憶部C(16c)及び記憶部A(16a)に分割して格納されたデータに対してXOR演算を行ってパリティを作成し、記憶部B(16b)に格納する。
【0044】
データの読み出しは、記憶部A(16a)、記憶部B(16b)、及び記憶部C(16c)から並行して行われる。そして、記憶部A(16a)で故障が発生した場合には、記憶部B(16b)に記憶されたデータと記憶部C(16c)に記憶されたパリティデータに対してXOR演算を行って、記憶部A(16a)のデータを復元する。同様に、記憶部B(16b)で故障が発生した場合には、記憶部C(16c)に記憶されたデータと記憶部A(16a)に記憶されたパリティデータに対してXOR演算を行って、記憶部B(16b)のデータを復元する。さらに、記憶部C(16c)で故障が発生した場合には、記憶部A(16a)に記憶されたデータと記憶部B(16b)に記憶されたパリティデータに対してXOR演算を行って、記憶部C(16c)のデータを復元する。一般的なRAID5におけるデータの分割処理は、データのブロック単位で行われる。
【0045】
なお、第2ディスクアレイシステム15を構成するHDDの台数は、製造コスト及び管理コストの低減化やカラオケ端末10をコンパクト化するという点から3台とすることが好ましいが、これに限られるものではなく、4台、5台、あるいはそれ以上の台数とすることもできる。
【0046】
<ストレージ制御手段>
ストレージ制御手段13は、第1ディスクアレイシステム14及び第2ディスクアレイシステム15を制御するための手段であり、CPU、ROM、RAM等の機能を有するハードウェアにより構成される。そして、CPU等が所定のアプリケーションプログラムに従って動作することにより、ストレージ制御手段13としての機能を発揮するようになっている。
【0047】
このストレージ制御手段13は、書き込みバッファ12内に一時的に格納されたカラオケデータを、所定の基準に基づいて容量が小さい第1のデータと容量が大きい第2のデータとに区別し、第1のデータを第1ディスクアレイシステム14で処理させるとともに、第2のデータを第2ディスクアレイシステム15で処理させるような制御を行う。
【0048】
本実施形態では、楽曲データを第1のデータとし、映像データを第2のデータとしている。第1のデータと第2のデータとを区別する基準として、例えば、データ容量を用いることができる。すなわち、楽曲データの容量は1曲あたり200KB乃至5MB程度であり、映像データの容量は200MB乃至1GB程度である。そこで、第1のデータと第2のデータとを区別する基準を例えば10MBとしておき、この基準値よりも小さな容量を有するデータは第1のデータ(楽曲データ)であると判断し、基準値よりも大きな容量を有するデータは第2のデータ(映像データ)であると判断することができる。
【0049】
また、第1のデータと第2のデータとを区別する他の基準として、データ形式を用いることができる。すなわち、一般的に、楽曲データのデータ形式はMIDIであり、映像データのデータ形式はMP3である。そこで、第1のデータと第2のデータとを区別する基準をデータ形式として、データ形式がMIDIであるデータは第1のデータ(楽曲データ)であると判断し、データ形式がMP3であるデータは第2のデータ(映像データ)であると判断することができる。
【0050】
なお、第1のデータと第2のデータは、上述した楽曲データ及び映像データに限られず、他のデータについても同様の基準で区分することができる。すなわち、カラオケデータには主として楽曲データと映像データとが含まれているが、その他の識別データや制御データ等も含まれている。したがって、楽曲データ及び映像データ以外のデータであって、バックアップが必要なデータについても、同様の基準に従って区分し、バックアップ処理を行うことが好ましい。
【0051】
<他方式のディスクアレイシステム>
また、カラオケ端末10のインタフェイス性能を良好に維持するとともに、ネットワーク性能を損なうことがなく、しかも耐障害性に優れているという点で、上述した実施形態のようにRAID1及びRAID5を用いることが好ましいが、このような目的を達成できれば、他のRAID方式を用いることもできる。すなわち、RAID方式には、上述したRAID1及びRAID5の他に、ストライピング処理を行うRAID0と、ハミング符号を用いて冗長化を行うRAID2と、ビットあるいはバイト単位でアクセスを行うための専用のパリティドライブを有するRAID3と、ブロック単位でアクセスを行うための専用のパリティドライブを有するRAID4と、RAID5を拡張して複数のパリティを分散記録するRAID6とがある。そこで、上述した本発明の目的を達成することができれば、他のRAID方式やその他のバックアップ方式を適宜組み合わせて利用することもできる。
【0052】
<データ記憶処理の手順>
次に、図2を参照して、本発明のカラオケデータストレージシステムにおけるデータ記憶処理の手順を説明する。
【0053】
本発明のカラオケデータストレージシステムでは、公衆電話回線や光回線等を介してカラオケデータを受信すると(S1)、通信インタフェイス11により受信処理がなされて、カラオケデータが書き込みバッファ12に一時的に格納される(S2)。
【0054】
ストレージ制御手段13は、書き込みバッファ12に一時的に格納されたデータを楽曲データと映像データとに区分する(S3)。そして、楽曲データは、第1ディスクアレイシステム14において処理される(S4)。具体的には、第1ディスクアレイシステム14において、RAID1を用いて、同一データを同時に記憶部D(16d)及び記憶部E(16e)に格納する。一方、映像データは、第2ディスクアレイシステム15において処理される(S5)。具体的には第2ディスクアレイシステム15において、RAID5を用いて、パリティを生成し、元データとパリティデータとを記憶部A(16a)、記憶部B(16b)、及び記憶部C(16c)に分散記憶する(S5)。
【0055】
その後、万が一、記憶部に障害が発生した場合には、RAID1あるいはRAID5の方式に基づいて、データの復元を行う。
【0056】
このように、楽曲データをRAID1でバックアップ処理し、映像データをRAID5でバックアップ処理することにより、書き込みバッファ12におけるライトペナルティを極力回避しつつ、カラオケデータを適切かつ効果的にバックアップすることができる。特に、映像データのハイビジョン化が促進され、映像データが大容量化している現状において、本発明のカラオケデータストレージシステムは有用な技術となる。
【0057】
<カラオケ端末の全体構成>
次に、図3を参照して、本発明のカラオケデータストレージシステムを適用するカラオケ端末の代表的な一例について説明する。図3は、本発明のカラオケデータストレージシステムを適用するカラオケ端末の一例を示すブロック図である。なお、図3に示すカラオケ端末は、上述したカラオケデータストレージシステムを含んだ全体構成を示すものであるが、上述した構成とは異なる観点からカラオケ端末を捉えており、図3に示す各手段は上述した各手段の一部を含んでいたり、重複した概念を有することがある。
【0058】
本発明のカラオケデータストレージシステムを適用するカラオケ端末は、図3に示すように、バス51を介して相互に接続された制御手段52、ROM53、RAM54、記憶手段55、通信手段56、映像出力手段57、操作制御手段58、音楽曲出力手段59、送受信手段60を備えている。
【0059】
また、映像出力手段57には表示手段61が接続されており、音楽曲出力手段59にはマイク62及びスピーカ63が接続されている。
【0060】
制御手段52は、上述したストレージ制御手段13としての機能を含むとともに、カラオケデータストレージシステムを総合的に制御するための手段であり、例えばCPU及びその周辺機器により構成されており、ROM53等に記憶されたアプリケーションプログラムに従って動作することにより、制御機能を発揮することができるようになっている。
【0061】
ROM53は、カラオケ端末を構成する各機器を制御するためのアプリケーションプログラムデータや数値データを記憶するための機器で、例えば半導体メモリ等で構成される。また、RAM54は、アプリケーションプログラムや種々のデータを一時的に読み込む一時記憶領域として機能するための機器で、例えば半導体メモリ等で構成される。
【0062】
記憶手段55は、種々のデータを記憶するための手段で、例えばHDD等からなる。この記憶手段55は、上述した第1ディスクアレイシステム14及び第2ディスクアレイシステム15を含む手段である。
【0063】
映像出力手段57は、選択された楽曲データに対応した映像データを楽曲に同期させて表示手段61に出力するための手段である。
【0064】
リモコン装置64はGUI機能を有しており、例えば液晶ディスプレイとタッチセンサとを重畳したインタフェイスが搭載されている。カラオケ端末の利用者は、タッチセンサを用いて楽曲の選択やその他のデータ入力を行うことができる。
【0065】
操作制御手段58は、端末本体及びリモコン装置64からの入力データを制御するための手段である。
音楽曲出力手段59は、記憶手段55に格納されたカラオケデータの中から選択された楽曲の伴奏データを再生するとともに、これとマイク62から入力される歌唱音声をミキシングし、アンプ機能により増幅してスピーカ63から出力するための手段である。
【0066】
送受信手段60は、リモコン装置64との間で有線あるいは無線によりデータの授受を行うための手段である。
通信手段56は、通信ネットワーク66上に配置されたセンターサーバ65との間で所定の通信プロトコルに従って通信を行うための手段である。
【0067】
なお、カラオケ端末を構成する機器や手段は上述したものに限定されず、カラオケ端末の設置場所や用途等に応じて、必要な機器や手段のみの構成としたり、適宜他の機器や手段を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のカラオケデータストレージシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のカラオケデータストレージシステムにおけるデータ記憶処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明のカラオケデータストレージシステムを適用するカラオケ端末の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
10 カラオケ端末
11 通信インタフェイス
12 書き込みバッファ
13 ストレージ制御手段
14 第1ディスクアレイシステム
15 第2ディスクアレイシステム
16a〜16e 記憶部
51 バス
52 制御手段
53 ROM
54 RAM
55 記憶手段
56 通信手段
57 映像出力手段
58 操作制御手段
59 音楽曲出力手段
60 送受信手段
61 表示手段
62 マイク
63 スピーカ
64 リモコン装置
65 センターサーバ
66 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信手段を介して受信したカラオケデータを蓄積するためのカラオケデータストレージシステムであって、
受信したカラオケデータを一時的に格納するための書き込みバッファと、
前記書き込みバッファ内に一時的に格納されたカラオケデータを、相対的に記憶部への書き込み性能が高い第1のRAID方式で所定の記憶部に書き込むための第1ディスクアレイシステムと、相対的に記憶部の利用効率が高い第2のRAID方式で所定の記憶部に書き込むための第2ディスクアレイシステムと、
前記第1ディスクアレイシステム及び前記第2ディスクアレイシステムを制御するためのストレージ制御手段とを備え、
前記ストレージ制御手段は、前記書き込みバッファ内に一時的に格納されたカラオケデータを、所定の基準に基づいて容量が小さい第1のデータと容量が大きい第2のデータとに区別し、前記第1のデータを前記第1ディスクアレイシステムで処理させるとともに、前記第2のデータを前記第2ディスクアレイシステムで処理させるように制御する、
ことを特徴とするカラオケデータストレージシステム。
【請求項2】
前記第1のRAID方式は、複数の記憶手段に対して同一のデータを重複して記憶するRAID1方式であり、
前記第2のRAID方式は、複数の記憶手段に対して元データと誤り訂正符号データとを分散して記憶するRAID5方式である、
ことを特徴とする請求項1に記載のカラオケデータストレージシステム。
【請求項3】
前記第1のデータは、楽曲データであり、
前記第2のデータは、映像データである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカラオケデータストレージシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−139357(P2008−139357A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322708(P2006−322708)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】