説明

カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、カラムスペーサ及び液晶表示素子

【課題】低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供する。
【解決手段】カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物、及び、光反応開始剤を含有するカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は、2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するためのスペーサを具備し、これらの他に透明電極や偏光板及び液晶物質を配向させる配向層等から構成されている。現在スペーサとしては、主に粒子径が数μm程度の微粒子スペーサが用いられている。しかし、従来の液晶表示素子の製造方法では、ガラス基板上に微粒子スペーサをランダムに散布していたことから、画素部内に微粒子スペーサが配置されてしまうことがあった。画素部内に微粒子スペーサがあると、スペーサ周辺の液晶配向の乱れから光が漏れて画像のコントラストが低下したりする等、画像品質を低下させることがあるという問題がある。これに対して、微粒子スペーサが画素部に配置されないような微粒子スペーサの配置方法が種々検討されているが、いずれも操作が煩雑であり実用性に乏しいものであった。
【0003】
また、近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、ガラス基板の液晶封入面上に、所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル用基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても、液晶の封入が容易であることから、今後はODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
しかし、ODF法において微粒子スペーサを用いると、液晶の滴下時、又は、対向基板の貼り合わせ時に散布した微粒子スペーサが液晶の流動とともに流されて、基板上における微粒子スペーサの分布が不均一となる問題が生じる。微粒子スペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、従来の微粒子スペーサに代って、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したカラムスペーサが提案され、実用化されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。図1にカラムスペーサを用いた液晶表示素子の一例の部分断面を示す模式図を示した。カラムスペーサを用いれば、画素部内にスペーサが配置されてしまう問題や、ODF法においてスペーサムラが生じてしまう問題を解決することができる。
【0005】
しかしながら、カラムスペーサを用いてODF法により製造した大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題となっていた。この「重力不良」の現象は、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げ、その際にカラムスペーサから基板が浮き上がってしまい、このスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が重力によって下方への流動することにより生じると考えられる。
【0006】
このような「重力不良」を解消するためには、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げる際に、いったん圧縮されていたカラムスペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基板とカラムスペーサとの間に隙間が生じないようにすれば解決可能であると考えられる。しかし、従来の方法では、カラムスペーサに高い変形回復力を持たせるためには、カラムスペーサを形成する樹脂を高度に架橋し圧縮時に塑性変形を起こりにくくする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。このような硬い樹脂によりカラムスペーサを形成した場合には、カラムスペーサを圧縮変形させる課程において、大きな圧力が必要であり、得られた液晶表示素子においては、圧縮されたカラムスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。このようなカラムスペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を生じてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【特許文献2】特開2001−159707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、アルカリ可溶性高分子化合物、及び、光反応開始剤を含有するカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、レジスト用の硬化性樹脂組成物において、架橋モノマーとしてカプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を用いた場合には、圧縮変形からの高い回復性を有するとともに、柔軟で低弾性率であるカラムスペーサが得られることを見出し、このようなカラムスペーサによれば加熱時の液晶の膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。これは、架橋モノマーとしてカプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を用いることにより、塑性変形を抑えるための高度な架橋構造の中に柔軟性を与える直鎖構造が適度に形成されためと考えられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0010】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する。このような化合物を含有することにより、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を硬化してなるカラムスペーサは、圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立させることができる。
なお、本明細書において(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性するとは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイルオキシ基の間に、カプロラクトンの開環体又は開環重合体を導入することを意味し、また、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性体とは、このようなカプロラクトン変性が施された(メタ)アクリレート化合物を意味する。
【0011】
(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性する具体的な方法としては特に限定されず、例えば、触媒の存在下に高温でアルコールとカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性アルコールを合成した後に、該カプロラクトン変性アルコールと(メタ)アクリル酸とを酸性触媒の存在下、脱水溶媒を使用してエステル化反応させる方法;(メタ)アクリル酸とカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後に、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させる方法等が挙げられる。
【0012】
カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の変性度としては、ベースとなる3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとしてときに、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物1モルに対して0.5n〜5nモルのカプロラクトンを導入して変性することが好ましい。カプロラクトンの導入量が0.5nモル未満であると、得られるカラムスペーサの柔軟性が不充分となることがあり、5nモルを超えると、露光時に反応性が低下してスペーサのパターニングが困難となることがある。より好ましくは1n〜3nモルである。
【0013】
上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、3官能では、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適であり、4官能以上では、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適である。これらのカプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、上述の方法により(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性して用いてもよいし、日本化薬社製の「KAYARAD DPCA−120」(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、新中村化学工業社製の「NKエステル AD−TMP−4CL」(カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)等の市販品を用いてもよい。
【0014】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、柔軟性を損なわない範囲内で、反応性等を調整する目的でカプロラクトン変性されていない多官能(メタ)アクリレート化合物を含有してもよい。
上記カプロラクトン変性されていない多官能(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されず、2官能のものとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレートや、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0015】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。
上記アルカリ可溶性高分子化合物としては特に限定されず、例えば、カルボン酸あるいは無水カルボン酸含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合した共重合体(以下、単に共重合体ともいう)等が挙げられる。
【0016】
上記カルボン酸あるいは無水カルボン酸含有単官能不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸不飽和化合物、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸、及び、これらジカルボン酸の無水物等が挙げられる。
【0017】
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル系単量体;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等が挙げられる。
【0018】
上記共重合体において、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は40重量%である。5重量%未満であると、アルカリ可溶性を付与することが困難であり、40重量%を超えると、現像時の膨潤が著しくパターンの形成が困難となることがある。より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0019】
上記共重合体の重量平均分子量としては、アルカリ現像可能であれば特に限定されないが、好ましい下限は5000、好ましい上限は10万であり、より好ましい下限は8000、より好ましい上限は3万である。
【0020】
上記カルボン酸あるいは無水カルボン酸含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により重合する方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
【0021】
溶液重合法により上記共重合体を製造する場合の溶媒としては特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のエチレングリコールアルキルエーテル類;メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等のプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられる。
また、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の非水系の分散重合により上記共重合体を製造する場合の媒体としては特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の液状の炭化水素や、その他の非極性の有機溶剤等を用いることができる。
【0022】
上記共重合体を製造する場合に用いるラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化物、アゾ開始剤等の従来公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100重量部に対して好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は5.0重量部であり、より好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0023】
上記分子量調節剤としては、例えば、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン系の連鎖移動剤等を用いることができる。なかでも、炭素数8以上の長鎖アルキルメルカプタンが、臭気や着色の少なさの点で好ましい。
【0024】
また、上記アルカリ可溶性高分子化合物は、下記(A1)成分、(A2)成分、(A3)成分及び(A4)成分を用いてなる不飽和基含有樹脂に、多塩基酸無水物を反応させたものであってもよい。
(A1);グリシジル(メタ)アクリレート
(A2);一分子中にトリシクロデカン骨格及び/又はジシクロペンタジエン骨格と不飽和結合とを有する化合物
(A3);(A1)成分及び(A2)成分と共重合可能な不飽和結合を有する化合物
(A4);不飽和カルボン酸
【0025】
上記(A1)成分は、グリシジル(メタ)アクリレートであり、該グリシジル(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、市販されているものを使用することもできる。
【0026】
上記(A2)成分は、一分子中にトリシクロデカン骨格及び/又はジシクロペンタジエン骨格と不飽和結合とを有する化合物であり、このような化合物としては特に限定されず、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(A2)成分としては、市販されているものも利用することができ、例えば、日立化成工業社製「FA−512A」、「FA−512M」、「FA−513A」、「FA−513M」等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記(A3)成分は、上記(A1)成分及び(A2)成分と共重合可能な不飽和結合を有する化合物であり、このような化合物としては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、iso−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸の無置換又は置換アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、シクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、シクロヘプテニル(メタ)アクリレート、シクロオクテニル(メタ)アクリレート、メンタジエニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ピナニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルネニル(メタ)アクリレート、ピネニル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸の脂環式基を含むエステル化合物;オリゴエチレングリコールモノアルキル(メタ)アクリレート等のグリコール類のモノ飽和カルボン酸エステル化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸の芳香環を含むエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等のようなマレイミド化合物などが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記(A4)成分は、不飽和カルボン酸であり、該不飽和カルボン酸としては特に限定されず、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記(A4)成分としては、これらのアクリル酸やメタクリル酸に加えて、その他の酸を用いることもできる。該その他の酸としては、例えば、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択される少なくとも1種の不飽和カルボン酸等が挙げられる。
更に、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸等の同一分子中にヒドロキシ基及びカルボキシル基を含有するモノマーを併用することもできる。
【0029】
上記(A1)〜(A4)成分を用いて不飽和基含有樹脂を製造する方法としては、例えば、(1)上記(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分を共重合させて得られる共重合体(以下、グリシジル基を有する共重合体ともいう)に、下記(A4)成分を反応させる方法、(2)上記(A2)成分、(A3)成分及び(A4)成分を共重合させて得られる共重合体(以下、カルボキシル基を有する共重合体ともいう)に、上記(A1)成分を反応させる方法等が挙げられる。
また、上記不飽和基含有樹脂として、例えば、昭和高分子社製「リポキシ」等の市販されているものを用いることもできる。
【0030】
上記(1)の方法により不飽和基含有樹脂を製造する場合、上記(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分を共重合させてグリシジル基を有する共重合体を得る方法、及び、該グリシジル基を有する共重合体に、上記(A4)成分を反応させる方法としては特に限定されず、従来公知の方法が挙げられる。
【0031】
上記グリシジル基を有する共重合体の組成比としては、(A1)成分の好ましい下限が2モル%、好ましい上限が95モル%であり、(A2)成分の好ましい下限が0.02モル%、好ましい上限が95モル%であり、(A3)成分の好ましい下限が2モル%、好ましい上限が95%モル%である。組成比が上記範囲を外れると、上記グリシジル基を有する共重合体の可とう性及び耐熱性のバランスが崩れることがある。(A1)成分のより好ましい下限は20モル%、より好ましい上限は80モル%であり、(A2)成分のより好ましい下限は0.03モル%、より好ましい上限は80モル%であり、(A3)成分のより好ましい下限は20モル%、より好ましい上限は80モル%である。
【0032】
上記(1)の方法において、上記(A4)成分は、上記グリシジル基を有する共重合体に含まれるグリシジル基の5〜100%に付加させることが好ましい。上記(A4)成分の上記グリシジル基を有する共重合体への付加は、具体的には、上記グリシジル基を有する共重合体のグリシジル基1.0当量に対して、上記(A4)成分の好ましい下限が0.05当量、好ましい上限が1.0当量である。上記範囲内であると二重結合の反応により露光感度が良好となる。上記(A4)成分のより好ましい下限は0.2当量であり、より好ましい上限は0.8当量である。
【0033】
上記(2)の方法により不飽和基含有樹脂を製造する場合、上記(A2)成分、(A3)成分及び(A4)成分を共重合させてカルボキシル基を有する共重合体を得る方法、及び、該カルボキシル基を有する共重合体に、上記(A1)成分を反応させる方法としては特に限定されず、従来公知の方法が挙げられる。
【0034】
上記カルボキシル基を有する共重合体の組成比としては、(A2)成分の好ましい下限が0.02モル%、好ましい上限が95モル%であり、(A3)成分の好ましい下限が2モル%、好ましい上限が95%モル%であり、(A4)成分の好ましい下限が2モル%、好ましい上限が95モル%である。組成比が上記範囲を外れると、上記カルボキシル基を有する共重合体の可とう性及び耐熱性のバランスが崩れることがある。(A2)成分のより好ましい下限は0.03モル%、より好ましい上限は80モル%であり、(A3)成分のより好ましい下限は20モル%、より好ましい上限は80モル%であり、(A4)成分のより好ましい下限は20モル%、より好ましい上限は80モル%である。
【0035】
上記(2)の方法において、上記(A1)成分は、上記カルボキシル基を有する共重合体に含まれるカルボキシル基の5〜100%に付加させることが好ましい。上記(A1)成分の上記カルボキシル基を有する共重合体への付加は、具体的には、上記カルボキシル基を有する共重合体のカルボキシル基1.0当量に対して、上記(A1)成分の好ましい下限が0.05当量、好ましい上限が1.0当量である。上記範囲内であると二重結合の反応により露光感度が良好となる。上記(A1)成分のより好ましい下限は0.2当量、より好ましい上限は0.8当量である。
【0036】
上記不飽和基含有樹脂の重量平均分子量としては特に限定されないが、好ましい下限は3000、好ましい上限は10万である。3000未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際の現像性が低下することがあり、10万を超えると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際の解像度が低下することがある。より好ましい下限は5000、より好ましい上限は5万である。
【0037】
上記多塩基酸無水物としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸化物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物等が挙げられる。なかでも、テトラヒドロ無水フタル酸又は無水コハク酸が好適である。
【0038】
上記不飽和基含有樹脂に上記多塩基酸無水物を反応させる方法としては特に限定されず、従来公知の方法が挙げられる。
上記不飽和基含有樹脂に上記多塩基酸無水物を反応させる際には、上記不飽和基含有樹脂に含まれる水酸基の5〜100%に上記多塩基酸無水物を反応させることが好ましい。5%未満であると、充分なアルカリ可溶性が得られないことがある。
【0039】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物における上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物とアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物との配合比としては特に限定されないが、上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物100重量部に対する上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の配合量の好ましい下限は25重量部、好ましい上限は900重量部である。25重量部未満であると、充分に光硬化せずにフォトリソグラフィーによりパターンを形成することができないことがあり、900重量部を超えると、アルカリ現像液への溶解性が不足し、現像性が不充分となることがある。より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は500重量部であり、更に好ましい下限は100重量部、更に好ましい上限は300重量部である。
【0040】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有する。
上記光反応開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等の従来公知の光反応開始剤を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物における上記光重合開始剤の配合量としては、上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、光硬化しないことがあり、50重量部を超えると、フォトリソグラフィーにおいて裏面反射光による残膜の発生や、液晶の汚染源になる等の悪影響が発生しやすくなる。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0042】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、酸素による反応障害を軽減するために反応助剤を含有してもよい。このような反応助剤と水素引き抜き型の光反応開始剤とを併用することにより光照射したときの硬化速度を向上させることができる。
上記反応助剤としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系;トリ−n−ブチルホスフィン等のホスフィン系;s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等のスルホン酸のもの等を用いることができる。これらの反応助剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有してもよい。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は熱架橋剤として働き、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるものが挙げられる。これらの2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような2以上のブロックイソシアネート基を有する熱架橋剤のうち市販されているものとしては、例えば、デュラネート17B−60PX、デュラネートE−402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0044】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物における上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物の配合量としては、上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、充分に熱硬化しないことがあり、50重量部を超えると、得られる硬化物の架橋度が高くなりすぎて上述の弾性特性を満たさないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0045】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、粘度を調整するために希釈剤により希釈してもよい。上記希釈剤としては、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組との相溶性、塗工方法、乾燥時の膜均一性、乾燥効率等を考慮して選択すればよく特に限定されないが、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組をスピンコーター、スリットコーターを用いて塗工する場合には、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール類;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のエチレングリコールアルキルエーテル類;メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等のプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサノン等のケトン類;3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のエステル類等の有機溶媒が好適である。これらの希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、基板との密着性を向上するためのシランカップリング剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0047】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物、光反応開始剤、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物、及び、必要に応じて使用する希釈剤等を従来公知の方法により混合する方法が挙げられる。
【0048】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、光照射及び/又は加熱により硬化させたときの硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎてセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて基板貼り合わせ時にカラーフィルタ層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0049】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、光照射及び/又は加熱により硬化させたときの硬化物の25℃において15%圧縮変形したときの回復率の好ましい下限が70%である。70%未満であると、得られた液晶表示素子の基板間におけるカラムスペーサが回復しようとする力が弱すぎて、充分な重力不良抑制効果が得られないことがある。より好ましい下限は80%である。回復率の上限については特に限定されない。
【0050】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いれば、光硬化(及び/又は熱硬化)させることにより圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立したカラムスペーサを製造することができる。このようなカラムスペーサを用いれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制した液晶表示素子を得ることができる。
【0051】
次に、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する方法を説明する。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する場合には、まず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を所定の厚さになるように基板上に塗工して被膜を形成させる。塗工の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート等の従来公知の塗工法を用いることができる。
【0052】
次いで、得られた被膜上に、所定のパターンが形成されたマスクを介して、紫外線等の活性光線を照射する。これにより、光照射部においては、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物中に含まれるカプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物と光反応開始剤とが反応して光硬化する。これをアルカリ現像すれば、基板上に光硬化したカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物からなる所定のパターンが得られる。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する場合には、更に加熱することにより、含有されるアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物と2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物とが反応する。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサもまた、本発明の1つである。
【0053】
本発明のカラムスペーサの高さをセルギャップより若干高くなるように設計して、ODF法等の従来公知の方法により製造することにより、重力不良による色ムラのない液晶表示素子が得られる。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、又は、本発明のカラムスペーサを用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
(1)アルカリ可溶性高分子化合物の重合
3Lのセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)60重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、メタクリル酸メチル10重量部、メタクリル酸8重量部、メタクリル酸n−ブチル12重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル10重量部、アゾビスバレロニトリル0.4重量部、及び、n−ドデシルメルカプタン0.8重量部を3時間かけて連続的に滴下した。その後、90℃にて30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続し、アルカリ可溶性高分子化合物溶液(固形分40重量%)を得た。
得られたアルカリ可溶性高分子化合物をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は約20000であった。
【0057】
(2)カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の調製
得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1モルにカプロラクトン12モルを付加したもの、日本化薬社製、DPCA−120)80重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュアー907)15重量部、光反応開始剤(日本化薬社製、DETX−S)10重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート17B−60PX)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0058】
(3)カラムスペーサの作製
透明導電膜が形成されたガラス基板(300mm×400mm、厚さ0.7mm)上に、得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、オーブン中で100℃、2分間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、ドットパターンマスクを介して200mJ/cmの紫外線を照射した後、0.04%KOH溶液により80秒間現像し、純水にて30秒間洗浄してカラムスペーサのパターンを形成した。更に、220℃、1時間のベーキング処理を行った。得られたカラムスペーサの底面積は30μm×30μm(900μm)、高さは4.6μmであり、このような形状のカラムスペーサを1平方ミリあたり4ヶの密度で形成した。
【0059】
(4)液晶表示素子の製造
得られたカラムスペーサが形成されたガラス基板上に配向膜を形成し、ラビングを施した。
次に、シール剤(積水化学工業社製)を長方形の枠を描く様にディスペンサーで塗布し、液晶(チッソ社製、JC−5004LA)の微小滴をガラス基板の枠内全面に滴下した。続いて、真空貼合により、対向するガラス基板を貼り合わせ、シール部に高圧水銀ランプを用いて紫外線を50mW/cmで60秒照射して硬化した。
最後に、液晶アニールを120℃にて1時間行い液晶表示素子を作製した。
【0060】
(実施例2)
実施例1で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート1モルにカプロラクトン8モルを付加したもの)80重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュアー369)15重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートE−402−B80T)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0061】
(実施例3)
実施例1で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレート1モルにカプロラクトン8モルを付加したもの)60重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュアー369)15重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートE−402−B80T)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0062】
(実施例4)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM−AC)145重量部を取り、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
次に、スチレン10.4重量部(0.1モル)、グリシジルメタクリレート71重量部(0.5モル)及びジシクロペンタジエン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製、FA−511A)82重量部(0.4モル)からなるモノマー混合物に、t−ブチルヒドロパーオキサイド(日本油脂社製、パーブチルO)を7.6重量部(モノマー混合物100部に対し4.5部)を添加した。これを滴下ロートから2時間かけてフラスコに滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けエージングを行い、グリシジル基を有する共重合体を得た。
次に、フラスコ内を空気置換に替え、アクリル酸34.2重量部(0.475モル、グリシジル基の95%)にトリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)0.9重量部及びハイドロキノン0.145重量部を、得られたグリシジル基を有する共重合体中に投入し、120℃で6時間反応を続けたところで反応を終了し、不飽和基含有樹脂を得た。GPCにより測定した重量平均分子量は14500であった。
得られた不飽和基含有樹脂に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)60.8重量部(0.4モル、生成した水酸基の84.2%)、トリエチルアミン0.8重量部を加え120℃で3.5時間反応させて、アルカリ可溶性高分子化合物(固形分40%)を得た。
得られたアルカリ可溶性高分子化合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0063】
(比較例1)
実施例1で調製したアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、DPHA)80重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア−907)15重量部、光反応開始剤(日本化薬社製、DETX−S)10重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート17B−60PX)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0064】
(比較例2)
実施例1で得られたアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学工業社製)80重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュアー369)15重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートE−402−B80T)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0065】
(評価)
実施例1、2、3、4及び比較例1、2で得られたカラムスペーサ及び液晶表示素子について以下の方法により評価を行った。
【0066】
(1)カラムスペーサの評価(15%圧縮)
温度25℃に調整した室内において、カラムスペーサを10mN/秒の荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮した。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとした。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとした。得られた各値を用いて、下記式(1)及び下記式(2)により15%圧縮時の圧縮弾性係数E及び15%圧縮変形したときの回復率Rを算出した。
【0067】
【数1】

【0068】
(2)液晶表示素子の評価
液晶表示素子を点灯表示し、セルギャップの均一性を表示画面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
また、液晶表示素子を垂直に立てた状態で、60℃の条件下にて2日間放置した。放置後、クロスニコル間に液晶表示素子を設置し、目視により表示画像を観察して、重力不良の発生について以下の基準により評価した。
更に、液晶表示素子を0℃の条件下にて24時間放置した後、クロスニコル間に液晶表示素子を設置し、目視により観察して、低温発泡の発生について以下の基準により評価した。
セルギャップの評価
〇:均一
×:色ムラあり
重力不良の評価
〇:均一
×:色ムラあり
低温発泡の評価
〇:発泡なし
×:発泡あり
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】カラムスペーサを用いた液晶表示素子の一例の部分断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0072】
2:液晶
10:カラーフィルタ基板
12:ブラックマトリックス
14:カラーフィルタ
16:透明導電膜
18:カラムスペーサ
20:アレイ基板
22:画素電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、アルカリ可溶性高分子化合物、及び、光反応開始剤を含有することを特徴とするカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体、又は、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体であることを特徴とする請求項1記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体、又は、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性体であることを特徴とする請求項1記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラムスペーサ。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物又は請求項5記載のカラムスペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【公開番号】特開2006−113563(P2006−113563A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263934(P2005−263934)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】