説明

カラークリアー塗料による光沢ある金属感を有する表面装飾方法

【課題】落ち着いた光沢ある金属感を生じる表面装飾方法を提供する。
【解決手段】光沢感は[(鏡面反射光2)/(拡散反射光3)]の比率に関係する。切削加工したアルミニウム基金属部材8に化成処理等の塗装前処理をした後、カラークリアー塗料を塗装する。カラークリアー塗膜10の着色成分が拡散反射光3を吸収して、落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法である。必要により下地メタリック塗装し、下地カラークリアー塗料にて塗装し、ティンクルメタリック塗装した後、さらに上部カラークリアー塗料にて塗装してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラークリアー塗料を使用した表面装飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、オートバイの部品、建築部品には、金属や高分子材料が多く使用されている。これら金属、高分子材料は表面処理によって耐食性、耐候性さらに美的外観を向上させるため塗装やめっきが施されている。近年顧客のニーズの多様化に伴い塗装、めっきが、単に材料を保護し美観を与えるといった目的だけでなく、これまでのイメージから脱却した高級感を有する表面装飾が施された自動車、オートバイの部品が求められている。
【0003】
なかでもアルミニウム基金属は、軽量で強度が強く耐食性もあることから自動車等の部品に多く使用され、その表面装飾方法についても多くの先行技術がある。電解着色した又はしていない陽極酸化皮膜にカラークリアー電着塗装を被覆する方法(特許文献1)、アルミナフレーク顔料等の多色性クリアー塗料の塗膜を形成しその上にめっき調クリアー塗膜を形成する方法(特許文献2)等がある。
【特許文献1】特許公開平9−41194
【特許文献2】特開2004−267983
【0004】
さらに材料そのものが有する特性を生かし、その表面を研磨してクリアー塗膜を形成させ材料の素地を生かす方法も多く出願されている。アルミニウムホイールにショットブラストをした後めっきする方法(特許文献3)、単結晶ダイヤモンドバイトにより鏡面加工する方法(特許文献4)、一部を鏡面研磨して全体をクリアー塗装あるいはカラークリアー塗装して光沢ある金属感をだす方法(特許文献5)などがある。
【特許文献3】特開平6−293993
【特許文献4】特開平8−34201
【特許文献5】登録実用新案第3115961
【0005】
しかし、上記表面装飾方法は塗膜を重ね合わせたり、材料を鏡面研磨したりして手間がかかるものであった。さらに顧客のニーズは多様な高級感のある表面装飾を必要としている。発明者は、試行錯誤により各種塗料や塗装法を試した結果、カラークリアー塗料を利用することによりこれまでとは異なった光沢ある金属感を有する表面装飾法を開発するとともに、さらにカラークリアー塗料を用いることにより、これまでの研磨、塗装の工程を短縮できる方法を発明した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はカラークリアー塗料の特性を利用して、研磨工程等を省略し、落ち着いた光沢のある金属感を有する表面を作り出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1の発明は、カラークリアー塗料を使用して、落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法である。カラークリアー塗料は内部を隠蔽せず、カラークリアー塗膜下の素材やめっき面の光沢を生かしつつ、これを着色することに使用されてきた。カラークリアー塗料とは顔料や染料(以下着色剤と言う場合もある。)を含んだ内部を隠蔽しない透明性のある塗料であり粉体塗料、溶剤塗料、水溶性塗料がある。溶剤系カラークリアー塗料の成分と配合率の代表的な例を表2〜4に示す。クリアー塗料の成分と配合率の代表的な例を表1に示す。表1ないし表4よりカラークリアー塗料はクリアー塗料に着色剤を添加したものということができる。ここで隠蔽とは塗料を塗ることによってその塗膜下の白黒の格子模様が見えなくなることをいう。
【0008】
発明者は、新たな表面装飾方法を検討している経過において、本カラークリアー塗膜の着色成分がそのカラークリアー塗膜下からの拡散反射光を吸収する傾向にあることを見出し、カラークリアー塗料を使用した新たな塗装仕様を見出したものである。
【0009】
請求項2の発明は、下記切削加工条件にて切削加工したアルミニウム基金属部材を塗装前処理した後、カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法である。

刃の送り寸法は、旋盤加工では1回転(/回転)あたり、直線加工では1工程(/工程)の意味とする。刃先の形は円弧状で、Rは被削物を加工する箇所の曲率半径を表す。
【0010】
切削加工には広義には砥石による加工、砥粒による加工も含まれるが、本文では狭義の刃物(切削工具)による加工をいうものとする。鋳造品を切削加工する時には、削り代が2〜3mmと大きいので一般的には2回に分けて加工する。1回目を荒加工といい、切削刃の送り量は大きく刃こぼれしにくい金属製バイトを使用する。2回目は仕上げ加工といい、切削刃の送り量を少なくして面粗度を高くすなわち面を平滑化する。(以下面粗度を高くするあるいは面粗度を向上させるとは面を平滑化させることをいう。)金属感をだすため天然ダイヤの単結晶バイトを使用する場合もある。本切削条件は、仕上げ加工時のものであり、金属バイトだけではなく人工あるいは天然ダイヤモンドバイトを使用することができる。
【0011】
アルミニウム基金属とは金属アルミニウムを主成分としたアルミニウム合金をいう。アルミニウム合金にはシリコンやマグネシウムといった剛性を高めるための在界物が多種含まれる。アルミニウム基金属部材としたのは、部品だけでなく、アルミニウム基金属が全体の一部分に含まれている材料を表現したためである。
【0012】
塗装前処理とはここでは金属を対象とし、この被塗物に付着したごみ等を除去し、脱脂、水洗、りん酸塩あるいはクロメート処理、水洗等の一連の工程をいう。
【0013】
塗装前処理した後密着性を向上させるためプライマー塗料を塗装しその上にカラークリアー塗料を塗装する場合もある。またカラークリアー塗膜の上にクリアー塗料を塗装することもある。カラークリアー塗料やクリアー塗料には紫外線吸収剤を添加することもできる。クリアー塗料としては、粉体塗料、溶剤系塗料、水溶性塗料がある。溶剤系クリアー塗料の成分と配合率の例を表1に示す。
【0014】
これまでも切削加工後クリアー塗膜する仕様は、削りだされた金属の輝きを生かすために多く使用されてきた。しかし金属感をだすために、ダイヤ単結晶の刃を使用したり、刃の送りを遅らせて面粗度を向上させていた。さらにバレル研磨やバフ研磨にて面粗度を向上させていたが、これらの作業は時間がかかるものであった。さらにこの切削面は金属感があってもクリアー塗料を塗装することにより、金属感が弱められ、白ボケと光沢感の不足の現象が生じていた。そのためクリアー塗料の膜厚を厚くする必要があった。この白ボケと光沢不足の原因が拡散反射光の影響ではないかと考えた発明者は、試行錯誤によって、拡散反射光を吸収することができる請求項2の表面装飾方法により、この欠点を是正することができた。以下詳細を述べる。
【0015】
請求項2において、「落ち着いた光沢のある金属感」と表現している。鏡面というと一般的には「ガラス鏡」をいい、ガラスに銀メッキしたものである。しかし、これとは別に鏡面とは古代より使用されてきた金属鏡をいうこともある。古代では銅の表面を磨いて鏡として使用してきた。物体に光が入射すると、図1に示すように、表面で一部は反射され、一部は透過される。反射光は鏡面反射光と拡散反射光に分けられる。鏡面反射と拡散反射の比率は物体表面の粗さに影響され、平滑な面であるほど鏡面反射光の比率が高くなる。拡散反射光は鏡面反射光に比べその強度は低くなる。鏡面反射光は一方向に反射されるに過ぎないが、拡散反射光では入射光が分散されすなわち拡散されて反射するためである。金属では、自由電子により光の電界を遮断するため、光は金属内部に入りにくく、入射光の大部分は反射光となる。表面を最も平滑にできるのはガラスであり、現在ではガラス鏡が一般的である。金属鏡はガラス鏡に比べその表面が平滑ではないため、鏡面反射光の割合が少なく、拡散反射光の割合が高くなる。そのために金属鏡では写りが柔らかく感じられる。なお、本文において反射とした場合には鏡面反射と拡散反射が含まれ、反射光とした場合には鏡面反射光と拡散反射光が含まれるものとする。
【0016】
切削加工したアルミニウム基金属部材を塗装前処理した後、カラークリアー塗料にて塗装した表面に光が入射すると、入射光は図2のようになる。入射光の一部はカラークリアー塗膜の表面あるいはカラークリアー塗料の着色成分にて反射されるが、入射光のほとんどはカラークリアー塗膜により屈折しながらもアルミニウム基金属部材の表面に届き反射する。カラークリアー塗膜内を長く透過するほど光の減衰は大きくなる。鏡面反射光は一方向であり光の強度が強く、カラークリアー塗膜内での透過距離は短く、カラークリアー塗膜及びその着色成分を透過する割合が大きい。一方拡散反射光は、光の強度が弱くさらに拡散反射のためカラークリアー塗膜内での透過距離が長くなるため、拡散反射光はカラークリアー塗膜の着色成分に吸収されてしまう傾向にある。鏡面反射光の一部及び拡散反射光の多くが吸収されるため、外から見ると全体としては暗くなる。一方拡散反射光はアルミ基金属部材表面の凸凹のより生ずるため、拡散反射光が吸収されることによってアルミニウム基金属部材の凸凹の状態は目に入らなくなり、アルミニウム基金属製部材の表面は平滑な感じと見られる。また「艶感」とか「光沢」という表現があるが、これは、[(鏡面反射光)/(拡散反射光)]の比率に関係するものと思われ、この比率が高い場合に艶あるいは光沢があるといわれるものとなる。
【0017】
前述のように外から見ると全体としては暗くなるが、アルミニウム基金属製部材表面での拡散反射光はカラークリアー塗膜により特にその着色成分により吸収されるため、[(鏡面反射光)/(拡散反射光)]の比率は高くなり光沢感は向上する。そこで、「落ち着いた光沢のある金属感」という表現を用いたものである。これまでカラークリアー塗料は素地を隠蔽せず、素材の表面状態を生かしながらこれを着色することに使用されてきた。すなわち前述したごとく、拡散反射光は鏡面反射光に比較しその強度は弱く、さらにクリアー塗膜内透過距離が長いため、拡散反射光の多くはカラークリアー塗膜内で吸収される。拡散反射光は素材表面の面粗度に比例し、面粗度が低いすなわち表面が平滑ではないときには拡散反射光は多くなる。そのため拡散反射光が吸収されることにより素材の表面の面粗度が向上したと同様の効果を与え、さらに[(鏡面反射光)/(拡散反射光)]の比率が高くなる。そのためこれまで面粗度をあげるためにされてきた、バレル研磨やバフ研磨等の鏡面研磨も省くことができる方法を見出すとともに落ち着いた光沢の金属感を有する表面装飾法を開発したものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2の表面装飾方法により加工したアルミニウム基金属製のホイール、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、ドラムブレーキパネル、ハブその他のアルミニウム基金属製の自動車及びオートバイ部品である。これらの部品は構造部材として必要なものであるが、外から見えるものであり美的な外観を必要とするものである。
【0019】
請求項4の発明は、切削加工したアルミニウム基金属製部材を塗装前処理した後、下地カラークリアー塗料にて塗装し、ティンクルメタリック塗装した後、さらに上部カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法である。
【0020】
請求項4において、切削加工の条件は示さず、「切削加工」としたのは、一般的な仕上げ加工を表現したものである。アルミニウム基金属部材、塗装前処理は前述のとおりである。アルミニウム基金属部材の表面と下地カラークリアー塗膜の間にはアルミニウム用透明プライマー塗膜又は粉体クリアー塗膜をおく場合もある。下地カラークリアー塗料と上部カラークリアー塗料とは同じ色彩であってもよく、異なる色彩の組み合わせでもよい。ティンクルメタリック塗料とは透明ワニスに基本的にアルミニウム粉を混合した塗料である。アルミニウム粉はリーフィング、ノンリーフィングいずれも可能であり、粒径、粒径分布、濃度は任意であるが、キラキラ感、明るい輝きのみを与え下地を隠蔽しないことが重要である。隠蔽力を下げ、下地からの鏡面反射光をできるだけ透過させるため。アルミニウム粉の重なりを避けて薄く均一に塗装することが重要である。
【0021】
これまで切削加工の後、金属感を出すためメタリック塗装が主に用いられてきた。しかし素材表面を隠蔽させるためアルミニウム粉を積み重ねる必要があり白ボケが生じ、ざらついた感じに見え、白く輝く金属表面のようにはならなかった。またアルミニウム粉は拡散反射成分が多く鏡面反射成分は少ない。そこで素材切削面の輝きを生かしつつ透明で光沢のある表面装飾方法として請求項4の方法を発明したものである。
【0022】
請求項4の装飾方法もカラークリアー塗料の特徴を生かしたものである。図3に示すように、本請求項の仕様により加工された部材に光が入射されると、その一部はティンクルメタリック塗膜により鏡面反射及び拡散反射される。この拡散反射光は、ティンクルメタリック塗膜の上に塗装された上部カラークリアー塗膜に吸収され、ティンクルメタリック塗料中のアルミニウム粉の鏡面反射光は上部カラークリアー塗膜を透過して光沢感を有するようになる。また他の入射光はアルミ基金属部材の表面に達する。このアルミ基金属部材の表面は一般的な切削加工のため表面は平滑ではなく、拡散反射光が多くなる。この拡散反射光は、各塗膜内での透過距離が長く、下地カラークリアー塗膜により吸収され、さらにティンクルメタリック塗膜及び上部カラークリアー塗膜に吸収される。一方アルミ基金属部材の鏡面反射光は、下地カラークリアー塗膜、ティンクルメタリック塗膜、上部カラークリアー塗膜を透過して弱められるが、その透過距離は短いため各塗膜を透過する割合が多い。そして全体として、[(鏡面反射光)/(拡散反射光)]の比率が上がり光沢感を与えることとなる。このようにして、カラークリアー塗料を単に下地の表面をその色彩を変化させて表現するだけでなく、拡散反射光を吸収させる機能に注目するものである。なお、請求項4においても上部カラークリアー塗膜の上にクリアー塗料を塗装することも自由である。またカラークリアー塗料やクリアー塗料に紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0023】
請求項5の発明は、請求項4の表面装飾方法により加工したアルミニウム基金属製のホイール、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、ドラムブレーキパネル、ハブその他のアルミニウム基金属製の自動車及びオートバイ部品である。請求項4の発明を適用する部材等を挙げたものである。
【0024】
請求項6の発明は、アルミニウム基金属製部材を塗装前処理した後、下地メタリック塗装し、下地カラークリアーにて塗装し、ティンクルメタリック塗装をした後、上部カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法である。
【0025】
請求項6の発明ではアルミニウム基金属の表面状態は問わず、鋳造されたままあるいは荒削りの状態でも良い。メタリック塗料とはアルキッド樹脂塗料やアクリル樹脂塗料等に隠蔽力が小さくて着色力の大きい顔料とリーフィング性のないアルミニウム粉やブロンズ粉を加えて造るものであり、その成分の一例を表5に示す。アルミニウム基金属、塗装前処理は前述のとおりである。
【0026】
塗装前処理後下地メタリック塗装する前にプライマー塗装あるいは粉体塗装しても良い。密着性等を向上させるためである。
【0027】
請求項6の発明では切削加工面を下部メタリック塗膜に置き換えたものである。図4に示すように本請求項においても、カラークリアー塗料の機能を発揮させるものである。入射光の一部は下部メタリック塗膜に達する。下部メタリック塗膜は平滑な金属面と比較し拡散反射の割合が多い。下部メタリック塗膜の拡散反射光は前述のように下地カラークリアー塗膜、ティンクルメタリック塗膜、及び上部カラークリアー塗膜によって吸収される。そのため、[(鏡面反射光)/(拡散反射光)]の比率が上がり、落ち着いた光沢ある金属感を生じさせるものである。すなわちアルミニウム基金属の素地に代わり下部メタリック塗膜にて鏡面反射光を生じさせるものであり、その機構は請求項4と同じである。また上部カラークリアー塗膜の上にクリアー塗装することもできる。カラークリアー塗料やクリアー塗料に紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0028】
請求項7の発明は、請求項6の応用範囲を示したものである。すなわち、請求項6の表面装飾方法により加工したアルミニウム基金属製のホイール、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、ドラムブレーキパネル、ハブその他のアルミニウム基金属製の自動車及びオートバイ部品である。
【0029】
請求項8の発明は、アルミニウム基金属を除く金属材料並びにプラスチック材料を塗装前処理した後、下地メタリック塗装をし、下地カラークリアー塗料にて塗装し、ティンクルメタリック塗装した後、上部カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法である。
【0030】
カラークリアー塗料を用いた落ち着いた光沢ある金属感を有する表面装飾方法をアルミニウム基金属だけでなく、他の材料にも適用したものである。かかる「落ち着いた光沢ある金属感」の外観を必要とする部品は多くの分野で必要とするためである。
【0031】
切削加工面を下部メタリック塗膜に置き換え金属感を生じるようにしたことは請求項6と同様である。またカラークリアー塗料を使用した理由は前述のとおりである。プラスチックの塗装前処理には、表面に付着したごみの除去や脱脂だけでなく、金属の場合と異なりプラスチックと塗膜の密着性を上げるためのエッチング工程等が含まれクロメート処理等は行われない。上部カラークリアー塗膜の上にクリアー塗装することもできる。また紫外線吸収剤の添加も前述と同じである。
【0032】
請求項9の発明は、請求項8の表面装飾方法により加工した自動車ボディー、グリル、ドアミラー、スポイラ、バンパー、ホイール、ホイールキャップその他の自動車用部品並びに燃料タンク、ハンドル、フロントフォーク、ホイール、フレーム、リアスイングアーム、ブレーキパネル、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、フロントカウル、リアカウルその他のオートバイ部品である。自動車、オートバイの分野において適用できる範囲を挙げたものである。
【0033】
請求項10の発明は、請求項8の表面装飾方法により加工した冷蔵庫、洗濯機、電子レンジその他の家庭電化製品とその部品並びにパソコン、通信機器、音楽再生機器、楽器、輸送機器及びこれらの部品である。
上記表面装飾方法は自動車、オートバイの分野だけでなく家庭電化製品等広く適用できるためである。
【0034】
クリアー塗料、カラークリアー塗料及びメタリック塗料の成分表と配合率の例を表1〜表5に示す。ただし各表の成分としての加熱算分は、約50%である。



【表1】

【表2】


【表3】


【表4】

【表5】

【発明の効果】
【0035】
本発明におけるカラークリアー塗料の使用法は、カラークリアー塗料の新たな使途を見出したものであり、これまでバレル研磨、バフ研磨等手間がかかる工程を経過させなければ得られなかった表面装飾方法をより手軽に作ることができるものである。鏡面反射光も拡散反射光も塗膜に吸収され全体としては暗くなる。しかし吸収される程度が違い、カラークリアー塗料の着色成分は前述のように拡散反射光をより吸収するため、[(鏡面反射光)/(拡散反射光)]の比率が上がり、光沢感を向上させるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
上記発明について実施した形態を以下に示す。
【実施例1】
【0037】
アルミニウム鋳造ホイールを刃先の曲率半径2.0mm、刃の送り寸法0.12mm/回転にて切削加工した後、塗装前処理としてクロム酸処理をした。次にカラークリアー塗膜を150℃×20分焼付けし、膜厚10〜20μmとし、さらにアクリル系クリアー塗膜を150℃×20分焼付けし、膜厚20〜30μmとした。その結果、アルミニウム基金属を鏡面研磨しクリアー塗装したときと同様にざらつきのない光沢ある金属感を有する表面となった。なお、このホイールの現行仕様は、切削加工した後アクリルクリアー粉体塗装して膜厚100〜150μmとしている。
【実施例2】
【0038】
アルミニウム鋳造ホイールを刃先2.0mm、刃の送り寸法0.2mm/回転にて切削加工した。刃の送り速度が実施例1と比較し速くなりそれだけ面粗度は低くなる。クロム酸処理をした後、粉体塗装 160℃×20分 膜厚80〜120μm、下地カラークリアー塗装 150℃×20分 膜厚30〜60μm、ティンクルメタリック塗装 150℃×20分 膜厚5〜20μm、上部カラークリアー塗装 150℃×20分 膜厚5〜20μm、クリアー塗装 150℃×20分 膜厚20〜30μmとした。その結果やや暗めのメタリック鏡面ができた。透明でキラキラ感がそろい光沢があり映りこみもよく、鏡のようなメタリックの感じが出た。素材を鏡面研磨しその上に塗装したものと同じ状態となった。
【実施例3】
【0039】
アルミニウム鋳造ホイールを刃先2.0mm、刃の送り寸法0.2mm/回転にて切削加工した。クロム酸処理をした後、粉体塗装 160℃×20分 膜厚80〜120μm、下地メタリック塗装 150℃×20分 膜厚10〜30μmとし、さらに実施例2の下地カラークリアー塗装からクリアー塗装まで同様に塗装した。その結果やや暗めのガラス鏡面が生じた。映り込みもよくガラス面のようなメタリック表面が完成した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
ニーズの多様化により多くの表面装飾方法が求められている。本発明はカラークリアー塗料の新しい用途を見出した塗装法であり、鏡面研磨等の工程を省略することも可能である。今後多くの需要が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】光の物体への作用
【図2】請求項2の塗装仕様
【図3】請求項4の塗装仕様
【図4】請求項6の塗装仕様
【図5】請求項8の塗装仕様
【符号の説明】
【0042】
1:入射光 2:鏡面反射光 3:拡散反射光 4内部反射光 5:内部鏡面反射光
6:内部拡散反射光 7:通過正光 8:アルミニウム基金属部材 9:切削面
10:カラークリアー塗膜 11:クリアー塗膜 12:下地カラークリアー塗膜
13:上部カラークリアー塗膜 14:ティンクルメタリック塗膜 15:メタリック塗膜
16:粉体塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラークリアー塗料を使用して、落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法。
【請求項2】
下記切削加工条件にて切削加工したアルミニウム基金属部材を塗装前処理した後、カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法。

刃の送り寸法は、旋盤加工では1回転(/回転)あたり、直線加工では1工程(/工程)の意味とする。刃先の形は円弧状で、Rは被削物を加工する箇所の曲率半径を表す。
【請求項3】
請求項2の表面装飾方法により加工したアルミニウム基金属製のホイール、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、ドラムブレーキパネル、ハブその他のアルミニウム基金属製の自動車及びオートバイ部品。
【請求項4】
切削加工したアルミニウム基金属製部材を塗装前処理した後、下地カラークリアー塗料にて塗装し、ティンクルメタリック塗装した後、さらに上部カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法。
【請求項5】
請求項4の表面装飾方法により加工したアルミニウム基金属製のホイール、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、ドラムブレーキパネル、ハブその他のアルミニウム基金属製の自動車及びオートバイ部品。
【請求項6】
アルミニウム基金属製部材を塗装前処理した後、下地メタリック塗装し、下地カラークリアーにて塗装し、ティンクルメタリック塗装をした後、上部カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法。
【請求項7】
請求項6の表面装飾方法により加工したアルミニウム基金属製のホイール、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、ドラムブレーキパネル、ハブその他のアルミニウム基金属製の自動車及びオートバイ部品。
【請求項8】
アルミニウム基金属を除く金属材料並びにプラスチック材料を塗装前処理した後、下地メタリック塗装をし、下地カラークリアー塗料にて塗装し、ティンクルメタリック塗装した後、上部カラークリアー塗料にて塗装することを特徴とする請求項1の落ち着いた光沢のある金属感を生ずる表面装飾方法。
【請求項9】
請求項8の表面装飾方法により加工した自動車ボディー、グリル、ドアミラー、スポイラ、バンパー、ホイール、ホイールキャップその他の自動車用部品並びに燃料タンク、ハンドル、フロントフォーク、ホイール、フレーム、リアスイングアーム、ブレーキパネル、エンジンカムシャフトカバー、クランクケース、フロントカウル、リアカウルその他のオートバイ部品。
【請求項10】
請求項8の表面装飾方法により加工した冷蔵庫、洗濯機、電子レンジその他の家庭電化製品とその部品並びにパソコン、通信機器、音楽再生機器、楽器、輸送機器及びこれらの部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−203260(P2007−203260A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27814(P2006−27814)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(305033859)
【Fターム(参考)】