説明

カラーフィルタの欠陥修正方法

【課題】 欠陥部の修正作業が迅速、容易に行え、欠陥部の修正に使用する材料の無駄な消費や廃棄物の発生を少なくする。
【解決手段】 カラーフィルタ2の着色層2aに、平面視で、着色層2aの欠陥部Eを含んでそれより広い領域にわたって昇華性を有するマスキング剤f2を塗布し、欠陥部Eを含む着色層領域のマスキング剤f2をパルス発振レーザ光(第1のレーザ光)Laを照射して除去した後に、該マスキング剤を除去された着色層除去領域Kに修正インクf1をインクジェット装置によって塗布し、この着色層除去領域Kに塗布された修正インクf1を連続発振レーザ光(第2のレーザ光)Lbを照射して加熱、硬化させることにより、修正インクf1の成膜2a1を形成して欠陥部Eを修正すると共に、着色層2a上の残留マスキング剤f2を加熱昇華させて着色層2aから除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等におけるカラーフィルタに生じた突起欠陥部や白黒欠陥部等の欠陥部を修正するカラーフィルタの欠陥修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーフィルタの有機被膜パターン等のエマルジョン層に生じたピンホール、欠損等の白欠陥を修正する欠陥修正方法として、ガラス基材に形成したエマルジョン層に焼き付けられた画像の欠陥部に対し、該欠陥部を含めた周辺に、弱粘着性のフィルムからなる合成樹脂の保護膜層を貼り付け、前記欠陥部に合わせて紫外線レーザ光を保護膜層に照射し、前記欠陥部と共に保護膜層を除去し、この除去した部分に遮光性顔料を塗布した後、欠陥部の遮光性顔料を残して保護膜層を剥離除去することにより、欠陥部を修正する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2989809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のカラーフィルタ等の欠陥修正方法では、欠陥部を含めた周辺に塗布した保護膜層を工程の最後に除去するために、粘着テープを保護膜層に貼り付け、該粘着テープを剥がすことにより、保護膜層を粘着テープと一緒にエマルジョン層から剥離するようにしているので、保護膜層が弱粘着性とはいえ、剥離時にエマルジョン層の表面を損傷させないために剥離作業を慎重に行わねばならず、該剥離作業に手間がかかり、作業を迅速に行うことができないと共に、剥離された保護膜層やその表面に塗布された遮光性顔料、粘着テープ等の廃棄物が生じる問題がある。また、前記欠陥部に遮光性顔料を塗布するために、ディスペンサ方式の吐出機構を有する溶液塗布装置を用いているので、遮光性顔料の極微小量の液滴の制御を行うことができず、小さな欠陥部に対して余分な液滴の遮光性顔料を塗布することとなり、該遮光性顔料の無駄な消費を来すと共に、前記廃棄物を余分に出す問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、欠陥部の修正作業が迅速、容易に行え、前記欠陥部の修正に使用する材料の無駄な消費や廃棄物の発生を少なくすることができるカラーフィルタの欠陥修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の点を特徴としている。
すなわち、請求項1に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、カラーフィルタの着色層に、平面視で、着色層の欠陥部を含んでそれより広い領域にわたって昇華性を有するマスキング剤を塗布し、前記欠陥部を含む着色層領域のマスキング剤をレーザ光を照射して除去した後に、該マスキング剤を除去された着色層除去領域に修正インクを塗布し、この着色層除去領域に塗布された修正インクを硬化させ、前記マスキング剤を加熱昇華させて着色層から除去することにより前記欠陥部を修正することを特徴としている。
【0006】
この欠陥修正方法においては、検査装置によってカラーフィルタの着色部の欠陥部が検出されると、平面視で該欠陥部を含んでそれより広い領域にマスキング剤が溶液塗布装置によって塗布された後、レーザ加工装置によって前記マスキング剤に第1のレーザ光が照射されて、欠陥部を含む所定の着色層領域におけるマスキング剤が除去される。次に、そのマスキング剤が除去された着色層除去領域に、溶液塗布装置によって前記欠陥部の着色層に対応する色の修正インクが塗布され、この塗布された修正インクに、例えばレーザ加工装置によって第2のレーザ光が照射され、または硬化用の光が照射されると、該修正インクが硬化され、これにより修正インクの薄膜が欠陥部に形成されてカラーフィルタの欠陥部が修正される。また、前記着色層上に残留したマスキング剤は第2のレーザ光で加熱されるか、後工程でマスキング剤が加熱炉等で加熱されることにより、マスキング剤が昇華して着色層上から除去されてカラーフィルタが清浄化される。
【0007】
請求項2に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、請求項1に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法において、前記修正インクとして熱硬化性を有するインクを使用し、前記着色層除去領域に塗布された修正インクと前記着色層に残留したマスキング剤とにレーザ光を照射して、修正インクを加熱硬化させると共にマスキング剤を昇華させることを特徴としている。
【0008】
請求項3に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、請求項1に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法において、前記修正インクとして紫外線硬化性を有するインクを使用し、前記着色層除去領域に塗布された修正インクを紫外光を照射して硬化させた後、前記着色層に残留したマスキング剤をレーザ光を照射して昇華させることを特徴としている。
【0009】
請求項4に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタの欠陥修正方法において、前記修正インクをインクジェット装置によってマスキング剤の除去された着色層除去領域に滴下して塗布することを特徴としている。
【0010】
請求項5に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタの欠陥修正方法において、前記マスキング剤をインクジェット装置によって塗布することを特徴としている。
【0011】
請求項6に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、請求項4に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法において、前記インクジェット装置による修正インクの滴下量と、修正インクの滴下領域の面積と、滴下領域に滴下された修正インクの成膜後の膜厚との相関関係を示す基準データを予め求めておき、該基準データにもとづいて、前記欠陥部がある着色層の設定膜厚とレーザ光の照射により除去する着色層除去領域の面積とから、該着色層除去領域に対する修正インクの滴下量を求めることを特徴としている。
【0012】
請求項7に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、請求項4に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法において、前記インクジェット装置による修正インクの滴下量と、修正インクの滴下領域の面積と、滴下領域に滴下された修正インクの成膜後の膜厚との相関関係を示す基準データを予め求めておき、前記基準データにもとづいて、前記欠陥部がある着色層の設定膜厚と前記インクジェット装置による修正インクの最小可能滴下量の整数倍とから、前記レーザ光の照射により除去する着色層除去領域の面積を求めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の優れた効果を奏する。
請求項1に係るカラーフィルタの修正方法によれば、昇華性のマスキング剤で囲まれて限定された欠陥部を含む着色層除去領域に修正インクを塗布するので、該修正インクを硬化して形成された成膜によって前記着色層の欠陥部を的確に修正することができると共に、マスキング剤を加熱昇華して着色層から除去することができるので、従来のように、前記マスキング剤を粘着テープ等に貼り付けて着色層から剥離する等の作業が不要である。したがって、カラーフィルタにおける着色層の欠陥部の修正作業を、欠陥部の無い着色層に損傷を生じさせることなく、迅速、容易に行うことができると共に、前記欠陥部の修正に無用な材料を使用しなくて済み、材料の無駄な消費や廃棄物の発生を少なくすることができる。
【0014】
請求項2に係るカラーフィルタの修正方法によれば、修正インクを加熱硬化させるときに、同時にレーザ光の照射による加熱で着色層上に残ったマスキング剤を昇華して除去させることができるので、別途にマスキング剤の洗浄工程を設ける必要がなく、工程を短縮することができると共に、カラーフィルタの欠陥部の修正作業を一層容易、迅速に行うことができる。
【0015】
請求項3に係るカラーフィルタの修正方法によれば、修正インクを紫外光によって硬化させた後に、レーザ光の照射による加熱で着色層に残ったマスキング剤を昇華して除去することができるので、別途にマスキング剤の洗浄工程を設ける必要がなく、工程を短縮することができると共に、カラーフィルタの欠陥部の修正作業を一層容易、迅速に行うことができる。
【0016】
請求項4と請求項5に係るカラーフィルタの修正方法によれば、インクジェット装置によって修正インクとマスキング剤を、それぞれ、所定の塗布領域に無駄なく、適量、円滑に塗布することができる。
【0017】
請求項6に係るカラーフィルタの修正方法によれば、レーザ光の照射により除去された着色層除去領域の体積に対し、修正インクの滴下量を適切に設定することができ、カラーフィルタの着色層の欠陥部を、それのなかった着色層の膜厚と均等に整合させた修正インクの成膜により修正することができて、その修正不良の発生を確実に防止することができる。
【0018】
請求項7に係るカラーフィルタの修正方法によれば、カラーフィルタの着色層の欠陥部がピンホールのような非常に小さな直径を有するものであっても、インクジェット装置による最小可能滴下量以上の修正インクを、これに適合させた面積を有する着色層除去領域に過不足無く滴下させることができ、カラーフィルタにおける着色層の修正後の膜厚を、欠陥部のなかった着色層の膜厚に対して均等に整合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法を実施する欠陥修正装置の一例について図1を参照して説明する。
図1において、1は本発明の一実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法を実施する欠陥修正装置である。該カラーフィルタの欠陥修正装置1は、カラーフィルタ2をクランプ3aで移動台3に支持し、駆動モータ4,4の作動で前記移動台3を基台(図示せず)上でY軸方向(図1の紙面に垂直な方向)に移動させることにより、該Y軸方向に前記カラーフィルタ2を移動させる基板移動装置5と、前記カラーフィルタ2の着色層の欠陥部を測定する測定装置6と、該測定装置6によって測定された着色層の欠陥部にレーザ光を照射して、該欠陥部を含む着色層(着色層除去領域)を除去するレーザ加工装置7と、前記レーザ加工装置7で除去された着色層除去領域に、該着色層の色と同一色の修正インクfを滴下するインクジェット装置(溶液塗布装置)8と、修正インクfが紫外線(以下、単に「UV」という)硬化性を有する場合に使用する硬化用のUV光照射用光源70と、前記基板移動装置5、測定装置6、レーザ加工装置7、インクジェット装置8の動作を制御する制御コンピュータ(制御装置)9と、カラーフィルタ2に関する基本情報等を記憶しているホストコンピュータ(制御装置)10とを備えている。
【0020】
前記測定装置6は、顕微鏡を通して撮像するCCDカメラ(撮像手段)11と,照明器12と、照明光学系13と、一対のミラー14,14と、対物レンズ15とを備え、前記照明器12の光で照明光学系13、ミラー14,14および対物レンズ15を介して前記カラーフィルタ2の表面を照明しながら前記CCDカメラで観察し、カラーフィルタ2の着色層の欠陥部を検出、測定して該欠陥部の位置、形状、寸法等に関する測定データを前記制御コンピュータ9に送信するようになっている。
【0021】
また、前記レーザ加工装置7は、レーザ電源16と、パルス発振レーザ光(第1のレーザ光)Laを発振する第1のレーザ発振器17aと、連続発振レーザ光(第2のレーザ光)Lbを発振する第2のレーザ発振器17bと、一対のミラー18a,18aと、アパーチャー機構18bを含むレーザ光学系18とを備え、前記制御コンピュータ9からの指令により、各レーザ発振器17a,17bが切り換えられて動作し、それらから発生されたパルス発振レーザ光Laを、前記アパーチャー機構18bにより整形した後、前記レーザ光学系18、前記測定装置6と共用される一方のミラー14および前記対物レンズ15を通して前記カラーフィルタ2の着色層に照射するようになっている。そして、前記パルス発振レーザ光Laにより前記着色層除去領域を除去する加工を行い、アパーチャー機構18bによる整形を解除し、連続発振レーザ光Lbにより前記着色層除去領域にインクジェット装置8によって滴下された修正インクを加熱、あるいはUV硬化させるようになっている。
【0022】
なお、アパーチャー機構18bは、図示しないが、一対のスリット板を前記光軸に直交して対向させて、各スリット板の相互間隔を調整することによりスリットの幅を可変にしたスリット機構を、前記レーザ光Lの光軸方向に位置をずらして上下に一対配設し、該一対のスリット機構を前記光軸の回りに個別に旋回するように構成され、一対のスリット機構における各スリットが重ね合わせられて形成される正四角形、矩形、平行四辺形からなる任意の大きさの四辺形の開口部をパルス発振レーザ光Laが通過することにより、前記カラーフィルタ2の表面に前記開口部によって定まる平面形状のパルス発振レーザ光Laが照射されるようになっている。
前記対物レンズ15は、倍率の異なる複数のレンズを切換えて使用できるスライダー式またはレボルバー式となっており、必要に応じて倍率を換えてCCDカメラ11での測定を可能とすると共に、各レーザ光La,Lbのスポットの大きさを変化させることを可能としている。
前記UV光照射用光源70からの紫外光は、前記ミラー18aとアパーチャー機構18bとの間において光学系18の光軸上に配置されたハーフミラー18cによって、対物レンズ15側へ導くか、または前記照明器12と照明光学系13との間の光軸上に配置されたハーフミラー18cによって、照明光学系13、ミラー14,14を経て対物レンズ15側へ導いて、それぞれカラーフィルタ2に照射されるようにすることができるが、前者の方式を採用するのが望ましい。
【0023】
前記インクジェット装置8は、従来周知のインク吐出機構を有するものであり、インクジェット制御回路19と、異なる色の修正インクが充填された複数のインクカートリッジ20aと、マスキング剤が充填されたマスキング剤カートリッジ20bと、前記インクカートリッジ20aに対応して設けた最小可能滴下量が異なる複数の修正インク吐出用のインクジェットヘッド21aと、マスキング剤カートリッジ20bに対応して設けたマスキング剤吐出用のインクジェットヘッド21bとを備え、前記制御コンピュータ8からの指令で動作し、インクジェット制御回路19により吐出量(滴下量)を制御された修正インクf1とマスキング剤f2が各インクジェットヘッド21a,21bから前記カラーフィルタ2の前記着色層除去領域と着色層にそれぞれ滴下されるようになっている。
【0024】
なお、前記インクジェット装置8は複数の溶液用カートリッジを備え、そのうちの一部をインクカートリッジ20aとし、他の一部をマスキング剤カートリッジ20bとして、1つの装置で修正インクf1とマスキング剤f2の両方をカラーフィルタ2に塗布できるようにしているが、これに限らず、修正インクf1の塗布用インクジェット装置とマスキング剤f2の塗布用インクジェット装置とを個別に設けるようにしてもよい。
前記測定装置6とレーザ加工装置7とインクジェット装置8は、門型の支持部材(図示せず)に支持されて前記Y軸方向に直角なX軸方向(図1で左右方向)に移動自在の往復台(図示せず)に取り付けられており、前記制御コンピュータ9の指令でX軸駆動手段が作動されて前記往復台が移動されると、一緒にX軸方向に往復移動するようになっており、また、それぞれ、個別にX,Y軸に直行するZ軸方向(図1で上下方向)に移動調節可能となっている。
【0025】
なお、前記インクジェット装置8のインクジェットヘッド21aによる修正インクf1の滴下量と、修正インクf1の滴下領域(着色層除去領域に対応)の面積と、該滴下領域に滴下された修正インクが加熱、あるいはUV硬化されて形成された成膜の膜厚との関係を予め実験によって求めたところ、修正インクのf1の滴下量30pl〜300plの範囲で、図2に示すように、修正インクf1の滴下量が多いほど成膜の膜厚が大きくなり、滴下領域が広くなるにしたがって前記膜厚が双曲線状の曲線に沿った値で薄くなる相関関係を示す実験データ(以下「基準データ」と称する)が得られた。
前記制御コンピュータ9は、前記修正インクf1の滴下量と、滴下領域の面積と、成膜後の膜厚との相関関係を示す前記基準データや各装置5,6,7,8に所要の動作を実行させるシーケンスプログラム等を記憶するROM(記憶手段)と、前記測定装置6で得られた測定データ等を記憶するRAM(記憶手段)と、ROM内の前記基準データとRAM内の前記測定データを読み出して、前記カラーフィルタ2の着色層における欠陥部の着色層除去領域の面積や前記インクジェットヘッド21aからの修正インクf1の滴下量を演算する演算制御手段と、該演算制御手段の指令で前記CCDカメラ11により得られた前記欠陥部の画像や前記測定データを表示する表示器等とを備えている。
【0026】
次に、前記構成に係るカラーフィルタの欠陥修正装置1の作用と共に、該欠陥修正装置1によって実施する本発明の一実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法について、図3、図4をも参照して説明する。なお、図4(a)〜図4(e)において、上の図はカラーフィルタの断面図、下の図は同平面図である。
前記欠陥修正装置1が作動が開始されると、制御コンピュータ9が、ホストコンピュータ10からカラーフィルタ2に関する基板情報を入力してそのRAMに記憶する(ステップS1)と共に、前記基板移動装置5の駆動モータ4と前記X軸駆動手段(図示せず)を作動させ、カラーフィルタ2をY軸方向へ、測定装置6をX軸方向へ移動させて、その顕微鏡の視野内にカラーフィルタ2の着色層2aの欠陥部Eが入るようようにする(ステップS2)。これにより、前記顕微鏡を介してCCDカメラ11で測定された画像データが前記制御コンピュータ9に送られて画像処理が行われ、顕微鏡の視野の中央に前記欠陥部Eが位置されるように、カラーフィルタ2と顕微鏡とがX、Y軸方向に相対移動される(ステップS3)。なお、図4において、2bはカラーフィルタ2の基板、2cはブラックマトリックスである。
【0027】
次に、前記対物レンズ15が高倍率のものに変換されて前記欠陥部Eの形状が自動的に認識され(ステップS4)、CCDカメラ11から得られた測定データ(画像データ)にもとづいて、前記制御コンピュータ9の演算制御手段が、前記欠陥部Eを含むX、Y軸方向の辺を有する直角四辺形の最小領域を最小の着色層除去領域(加工エリア)Kとして、X、Y軸方向の各辺の寸法x、yを算出する(ステップS5)(図4(a)参照)。
さらに、前記制御コンピュータ9の演算制御手段は、カラーフィルタ2に関する基板情報のうちの着色層2aの膜厚(設定膜厚)tをもとに、該膜厚tと前記着色層除去領域Kの面積(x・y)とから、着色層除去領域Kにおける着色層2aの体積Vd(=x・y・t)を算出する(ステップS6)。そして、前記インクジェット装置8を作動させてマスキング剤吐出用のインクジェットヘッド21bを着色層除去領域Kの上方に移動、位置決めさせて、該インクジェットヘッド21bから前記体積Vdより十分大きな量のマスキング剤f2を、着色層除去領域Kを含む周辺の着色層2aに及ぶ塗布領域Aに滴下、塗布させる(ステップS7)(図4(b)参照)。
なお、前記塗布領域Aに塗布されたマスキング剤f2は、図示しないが、適宜照明機構により白色光を照射して、その熱により硬化される。
【0028】
次に、前記制御コンピュータ9は、前記対物レンズ15を着色層除去領域Kの上方に移動、位置決めさせ、前記レーザ加工装置7によって着色層2aとその上に塗布されたマスキング剤f2に照射されるパルス発振レーザ光Laが、前記着色層除去領域Kに対応するビーム形に整形されるように前記アパーチャー機構18bを作動させる(ステップS8)。そして、前記制御コンピュータ9は、前記体積Vdが、前記インクジェット装置8における修正インク吐出用のインクジェットヘッド21aからの修正インクf1の最小可能滴下量Vijminに、加熱処理により修正インクf1が縮小するのを見込んだ係数Fを乗算した最小滴下量(Vijmin×F)より大きい(Vd≧Vijmin×F)か否かを比較する(ステップS9)。前記体積Vdが最小滴下量(Vijmin×F)より大きい場合には、前記制御コンピュータ9からレーザ加工装置7に指令が送られて、前記ステップS5において算出された最小の着色層除去領域Kの寸法x,yで、塗布された前記マスキング剤f2と着色層2aの欠陥部Eの周辺とを同時にパルス発振レーザ光Laの照射により除去する加工が行われる(ステップS10)(図4(c)参照)。
【0029】
前記マスキング剤f2としては、カラーフィルタ2の耐熱温度より低い温度で昇華できる材料、例えばパラジクロベンゼン等を使用することができる。また、前記マスキング剤f2の除去加工時にパルス発振レーザ光Laを吸収し易くするために、マスキング剤f2の材料にパルス発振レーザ光Laの波長を吸収する染料を加えて不透明度を適宜に調節して、有色不透明な色材料とするのが望ましい。前記マスキング剤f2の透明性が高いと、例えば、前記整形加工を行わずに着色層とその上に塗布されたマスキング剤とを同時に着色層除去領域Kを除去する加工を行う場合、パルス発振レーザ光Laをマスキング剤f2に照射した際、マスキング剤f2でパルス発振レーザ光Laが吸収されず、マスキング剤の下に存在する有色であるカラーフィルタが先に加工されてしまい、塗布されたマスキング剤f2に前記着色層除去領域Kに対応する所定の加工穴K1が良好に形成されない。
【0030】
次いで、前記インクジェット装置8のインクジェットヘッド21aから最小可能滴下量Vijminで熱硬化性を有する修正インクf1を前記着色層除去領域Kに滴下する場合には、滴下回数の演算(Vd/Vijmin)を行って、修正インクf1の滴下回数を求めて、求めた滴下回数だけ前記修正インクfを着色層除去領域Kに滴下する(ステップS11)(図4(d)参照)。この場合、滴下回数の計算値が端数になったときは、該計算値に近い正の整数(ゼロを除く)の滴下回数が選択される。また、前記インクジェットヘッド21aに体積Vdに相当する量の滴下量を一度に滴下できる容量の基準データがあれば、もしくは、最小可能滴下量Vijminの正の整数倍量を滴下できる容量の基準データの複数個(前記演算で得られた滴下回数より少ない数)を加算することにより前記体積Vdに相当する滴下量を滴下できる基準データがあれば、前記インクジェット制御回路19によって滴下量を前記体積Vdに合うように制御して1回だけ、もしくは前記加算数だけを滴下するようにすると、前記欠陥部Eの修正処理時間を短縮できて好ましい。
【0031】
前記ステップS9において、前記体積Vdが最小滴下量(Vijmin×F)に満たない場合には、前記制御コンピュータ9の演算制御手段は、前記インクジェットヘッド21aからの最小滴下量(Vijmin×F)を前記膜厚tで除算(Vijmin×F/t)して、着色層2aの除去すべき着色層除去領域Kの面積(x’・y’=Vijmin×F/t)を演算し、x’≧x、y’≧yを条件として、着色層除去領域Kの寸法x’、y’を逆算した後、これらの寸法x’、y’にもとづいて、着色層2aの着色層除去領域Kに対応する部分のマスキング剤f2を、レーザ加工装置7のパルス発振レーザ光Laの照射により除去加工する(ステップS12)。しかる後に、演算(x’・y’・t/Vijmin)を行って、ステップS11の場合と同様に、修正インクf1の前記最小可能滴下量Vijminによる滴下回数を求めて、求めた滴下回数だけ前記修正インクf1を着色層除去領域Kに滴下する(ステップS13)。
【0032】
なお、前記演算において、滴下回数が端数になったときは、その端数分の滴下量はインクジェットヘッド21aから得られないので、計算上の滴下回数に近い正の整数倍(最小可能滴下量Vijminの正の整数(ゼロを除く)倍)の滴下回数が得られるように、前記着色層除去領域Kの面積(x’・y’)から割り出して着色層除去領域Kの加工をし直してから修正インクf1を滴下することも可能である。この場合も、体積(x’・y’・t)に相当する量の滴下量の基準データ、もしくは、最小可能滴下量Vijminの正の整数倍量を滴下できる容量の基準データの複数個(前記演算で得られた滴下回数より少ない数)を加算することにより前記体積Vdに相当する滴下量を滴下できる基準データがあれば、前記インクジェット制御回路19によって滴下量を前記体積(x’・y’・t)に合うように制御して1回だけ、もしくは前記加算数だけを滴下するようにすると、前記欠陥部Eの修正処理時間を短縮できて好ましい。
【0033】
前記カラーフィルタ2の着色層2aの着色層除去領域Kに修正インクf1が滴下されると、滴下された修正インクf1は、着色層除去領域Kの全面に広がり、かつ着色層2aに塗布されたマスキング剤f2に形成された前記加工穴K1の内側において着色層2aの表面より盛り上がって基板2上に塗布された状態となる。この後、その塗布された修正インクf1に対して、前記レーザ加工装置7(インク硬化装置)によって連続発振レーザ光Lbが照射され、該連続発振レーザ光Lbにより修正インクf1が加熱、硬化(焼成)される。これにより、前記修正インクf1が縮小されて欠陥部Eのなかった正常な着色層2aに整合された厚さの、着色層2aと同色の修正インクの成膜2a1が形成され、欠陥修正装置1によるカラーフィルタ2における欠陥部Eの修正処理が完了する(図4(e)参照)。
なお、前記着色層除去領域Kの着色層2aに塗布された修正インクf1を加熱硬化させる際には、アパーチャー機構18bによる整形を解除し、また、前記対物レンズ15の倍率が下げられて連続発振レーザ光Lbの照射範囲が拡大されるので、着色層2a上に塗布されたまま残留しているマスキング剤f2の範囲全体に連続発振レーザ光Lbが照射され、前記残留マスキング剤f2が連続発振レーザ光Lbにより加熱されて昇華し、着色層2aから完全に除去され、これにより、カラーフィルタ2を清浄化が行われる。
【0034】
前記実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法は、カラーフィルタ2の着色層2aに、平面視で、着色層2aの欠陥部Eを含んでそれより広い領域にわたって昇華性を有するマスキング剤f2をインクジェット装置8で塗布し、前記欠陥部Eを含む着色層領域Kとそれに対応するマスキング剤f2をレーザ加工装置7のパルス発振レーザ光Laを照射して除去した後に、該マスキング剤f2を除去された着色層除去領域Kにインクジェット装置8によって修正インクf1を滴下して塗布し、この着色層除去領域Kに塗布された修正インクf1をレーザ加工装置7からの連続発振レーザ光Lbの照射による加熱で硬化させると共に、前記連続発振レーザ光Lbの照射により前記マスキング剤f2を加熱昇華させて着色層2aから除去することにより前記欠陥部Eを修正するように構成されている。
【0035】
したがって、前記実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法によれば、昇華性のマスキング剤f2の加工穴K1で囲まれて限定された欠陥部Eを含む着色層除去領域Kに修正インクf1を塗布するので、該修正インクf1を硬化して形成された成膜2a1によって前記着色層2aの欠陥部Eを的確に修正することができると共に、着色層2a上に残留したマスキング剤f2を加熱昇華して着色層2aから除去することができるので、従来のように、前記マスキング剤f2を粘着テープ等に貼り付けて着色層2aから剥離する等の作業が不要である。このため、カラーフィルタ2における着色層2aの欠陥部Eの修正作業を、欠陥部Eの無い着色層2aに損傷を生じさせることなく、迅速、容易に行うことができると共に、前記欠陥部Eの修正に無用な材料を使用しなくて済み、廃棄物の発生を少なくすることができる。
また、修正インクf1の加熱、硬化と同時に着色層2a上に残留したマスキング剤f2を昇華して除去させることができるので、別途に残留マスキング剤f2の洗浄工程を設ける必要がなく、工程を短縮することができると共に、カラーフィルタ2の欠陥部Eの修正作業を一層容易、迅速に行うことができる。
さらに、前記インクジェット装置8によって修正インクf1とマスキング剤f2を、それぞれ、所定の塗布領域に無駄なく、適量、円滑に塗布することができる。
【0036】
また、前記実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法によれば、前記インクジェット装置8からのインクジェットヘッド21aによる修正インクf1の滴下量(体積)Vdと、修正インクf1の滴下領域の面積(x・y)と、滴下領域に滴下された修正インクf1の成膜2a1を形成した後の膜厚tとの相関関係を示す基準データを予め求めておき、該基準データにもとづいて、前記欠陥部Eがある着色層2aの設定膜厚tとレーザ光Lの照射により除去する着色層2aの着色層除去領域Kの面積(x・y)とから、該着色層除去領域Kに対する修正インクf1の滴下量Vdを求めるようにしたので、レーザ加工装置7からの連続発振レーザ光Lbにより除止された着色層の着色層除去領域Kの体積(x・y・t)に対し、修正インクf1の滴下量Vdを適切に設定することができ、カラーフィルタ2の着色層2aの欠陥部Eを、それの無かった着色層2aの膜厚tと均等に整合させた修正インクの成膜2a1により修正することができて、修正不良の発生を確実に防止することができる。
【0037】
さらに、実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法によれば、前記相関データにもとづいて、前記欠陥部Eがある着色層2aの設定膜厚tと前記インクジェットヘッド2121aのインクジェットによる修正インクf1の最小可能滴下量Vijminの整数倍とから、前記連続発振レーザ光Lbの照射により除去する着色層2aの着色層除去領域Kの面積(x’・y’)を求めるようにしたので、前記カラーフィルタ2の着色層2aの欠陥部Eがピンホールのような非常に小さな直径を有するものであっても、前記インクジェット装置8のインクジェットヘッド21aによる最小可能滴下量Vijmin以上の修正インクf1を、これに適合させた面積を有する着色層除去領域Kにほぼ過不足無く滴下させることができ、カラーフィルタ2における着色層2aの修正後の膜厚を、欠陥部Eがなかった着色層2aの膜厚tに対して均等に整合させることができる。
【0038】
なお、前記実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法においては、前記レーザ加工装置7をインク硬化装置として使用し、それから発生される連続発振レーザ光Lbを前記着色層除去領域Kに塗布された修正インクf1に照射して該修正インクf1を加熱、硬化させるようにしたが、これに限らず、前記欠陥修正装置1内の前記インクジェット装置8の近く、もしくはその対向側のカラーフィルタ2の下面側に配置したランプ加熱手段でカラーフィルタ2の前記着色層除去領域Kに塗布された修正インクf1を加熱、硬化させるもの、または欠陥修正装置1とは別に設置された加熱炉内のヒータで、欠陥修正装置1による処理の後工程において前記着色層除去領域Kに塗布された修正インクf1を加熱、硬化させるようにすることができる。
【0039】
また、前記欠陥部Eを修正する修正インクf1として熱硬化性インクを使用したが、これに代えて紫外線硬化性インクを使用し、前記着色層除去領域Kに塗布された紫外線硬化性インクを、前記UV光照射用光源70からの紫外光の照射により硬化させるようにしてもよい。
また、前記実施の形態に係るカラーフィルタの欠陥修正方法においては、溶液塗布装置としてインクジェット装置8を用いて修正インクf1を着色層除去領域Kに、マスキング剤f2を前記着色層除去領域Kを含む着色層2a上にそれぞれ塗布するようにしたが、これに限らず、前記欠陥部Eが比較的大きい場合には、着色層除去領域Kもそれに合わせて大きく加工されるので、ディスペンサ方式の吐出機構を有する溶液塗布装置を使用して能率良く塗布するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカラーフィルタの修正方法を実施する欠陥修正装置の一例を示すブロック図である。
【図2】カラーフィルタの着色層におけるレーザ加工エリアの面積と修正インクの成膜後の膜厚と修正インクの滴下量との相関関係を示す線図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るカラーフィルタの修正方法を示すフロー図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るカラーフィルタの修正方法の作業工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 欠陥修正装置
2 カラーフィルタ
3 移動台
5 基板移動装置
6 測定装置
7 レーザ加工装置
8 インクジェット装置
9 制御コンピュータ(制御装置)
10 ホストコンピュータ(制御装置)
11 CCDカメラ(撮像手段)
12 照明器
15 対物レンズ
17a,17b レーザ発振器
19 インクジェット制御回路
20a インクカートリッジ
20b マスキング剤カートリッジ
21a,21b インクジェットヘッド
E 欠陥部
K 着色層除去領域(加工エリア)
La パルス発振レーザ(第1のレーザ光)
Lb 連続発振レーザ(第2のレーザ光)
f1 修正インク
f2 マスキング剤
x 着色層除去領域のX軸方向の寸法
y 着色層除去領域のY軸方向の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタの着色層に、平面視で、着色層の欠陥部を含んでそれより広い領域にわたって昇華性を有するマスキング剤を塗布し、前記欠陥部を含む着色層領域のマスキング剤をレーザ光を照射して除去した後に、該マスキング剤を除去された着色層除去領域に修正インクを塗布し、この着色層除去領域に塗布された修正インクを硬化させ、前記マスキング剤を加熱昇華させて着色層から除去することにより前記欠陥部を修正することを特徴とするカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項2】
前記修正インクとして熱硬化性を有するインクを使用し、前記着色層除去領域に塗布された修正インクと前記着色層に残留したマスキング剤とにレーザ光を照射して、修正インクを加熱硬化させると共にマスキング剤を昇華させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項3】
前記修正インクとして紫外線硬化性を有するインクを使用し、前記着色層除去領域に塗布された修正インクを紫外光を照射して硬化させた後、前記着色層に残留したマスキング剤をレーザ光を照射して昇華させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項4】
前記修正インクをインクジェット装置によってマスキング剤の除去された着色層除去領域に滴下して塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項5】
前記マスキング剤をインクジェット装置によって塗布することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項6】
前記インクジェット装置による修正インクの滴下量と、修正インクの滴下領域の面積と、滴下領域に滴下された修正インクの成膜後の膜厚との相関関係を示す基準データを予め求めておき、該基準データにもとづいて、前記欠陥部がある着色層の設定膜厚とレーザ光の照射により除去する着色層除去領域の面積とから、該着色層除去領域に対する修正インクの滴下量を求めることを特徴とする請求項4に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項7】
前記インクジェット装置による修正インクの滴下量と、修正インクの滴下領域の面積と、滴下領域に滴下された修正インクの成膜後の膜厚との相関関係を示す基準データを予め求めておき、前記基準データにもとづいて、前記欠陥部がある着色層の設定膜厚と前記インクジェット装置による修正インクの最小可能滴下量の整数倍とから、前記レーザ光の照射により除去する着色層除去領域の面積を求めることを特徴とする請求項4に記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−11244(P2006−11244A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191239(P2004−191239)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】