説明

カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】 高コントラストなカラーフィルタを製造可能なカラーフィルタの製造方法の提供。
【解決手段】 基板と前記基板上に設けられた濃色離画壁とを備えたカラーフィルタ用基板上に、着色液体組成物の液滴をインクジェット法により付与して画素を形成する画素形成工程と、前記カラーフィルタ用基板の前記画素が形成された側の表面に液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を付与する樹脂組成物付与工程と、2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を硬化する硬化工程と、を含むカラーフィルタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ及び液晶表示装置に係り、特に液晶配向制御突起をマスクを用いることなくレーザー露光等により形成するカラーフィルタの製造方法とこれにより製造したカラーフィルタ、このカラーフィルタを備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRT(Cathode−Ray Tube)ディスプレイに代わるフラットパネルディスプレイとしては、液晶表示装置(LCD)が現在最も広く使用されており、その期待も大きい。中でも、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)方式のLCD(TFT−LCD)は、パーソナルコンピュータ、ワープロ、及びOA機器や、携帯テレビジョン等への応用によって市場の一層の拡大が期待されているとともに、画像品質の更なる向上が求められている。
【0003】
現在、TFT−LCDの中で最も広く使用されている方式は、ノーマリホワイトモードのTN(Twisted Nematic)型のLCDである。しかし、TN型のLCDは、視野角が狭いという欠点があり、表示画面を観察する位置によって表示状態が異なってしまう。このため、TN型のLCDは、その用途が限定されてしまうという問題があった。
【0004】
尚、TN型のLCDが有する問題は、電極を備える一対の基板間に液晶を挟持し、電極間に電圧印加して表示することが可能なLCD(例えば、単純マトリックス型やプラズマアドレス型LCD)においても同様に生じる問題である。
【0005】
即ち、このようなLCDは、電圧を印加しない白表示の状態では、どの方位においてもほぼ白に見ることができる。しかし、所定の電圧を印加した黒表示の状態では、斜めに入射する光が垂直方向に配向された液晶分子に対して斜めに通過する。このため、黒表示のLCDを斜めから観察した場合、光方向がある程度捩れてしまい、完全な黒ではなく中間調(グレイ)に見えてしまう。
【0006】
また、中間電圧を印加した中間調表示の状態においては、セルの中間部では液晶表示が途中まで立ち上がっており、垂直に入射する光に対しては中間調(グレイ)に表示される。しかし、中間調表示の状態においては左右斜めに入射する光に対しては、その入射した方位によって見え方が異なってしまう。具体的には、右下から左上に向かう光に対しては液晶分子は平行に配向されるため、LCDを左側から観察すると黒く見えてしまう。これに対し、左下から右上に向かう光に対しては液晶分子は垂直に配向されることから、LCDを右側から観察した場合には白に近い状態に見えてしまう。このように、上述のLCDには、表示状態が視野角に依存してしまうといった欠点がある。
【0007】
上述のような欠点を解決する手段としては、液晶層に対して突起を形成する技術が提案されている。かかる突起は液晶の配向を制御するために形成されるものであり、液晶配向制御突起と称される。該突起は、その表面に沿って局部的に液晶分子の配向状態に傾きを与え、液晶面に対して斜めから観察した場合であっても、液晶面を正面から観察した場合と同様の表示状態が得られるように視野角を拡げるものである。このような技術としては、フェノールノボラック樹脂を用いて液晶配向制御突起を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、カラーフィルタ上に液晶配向制御突起を形成するものである。
【0008】
カラーフィルタは、ガラス等の基板上に赤色、緑色、青色のドット状画像をそれぞれマトリックス状に配置し、その境界をブラックマトリックス等の濃色離画壁で区分した構造を有する。このようなカラーフィルタの製造方法としては、従来、支持体としてガラス等の基板を用い、1)染色法、2)印刷法、3)着色した感光性樹脂液の塗布と露光及び現像の繰り返しによる着色感光性樹脂液法(着色レジスト法)(例えば、特許文献2参照。)、4)仮支持体上に形成した画像を順次、最終又は仮の支持体上に転写する方法、5)予め着色した感光性樹脂液を仮支持体上に塗布することにより着色層を形成し、順次直接、基板上にこの感光性着色層を転写し、露光して現像することを色の数だけ繰り返す方法等により多色画像を形成する方法(転写方式)が知られている(例えば、特許文献3参照。)。またインクジェット法を用いる方法(特許文献4参照。)も知られている。
【0009】
これらの方法のうち、着色レジスト法は位置精度高く、カラーフィルタを作製できるものの、感光層樹脂液の塗布にロスが多くコスト的には有利とは言えない。一方、インクジェット法は樹脂液のロスが少なくコスト的に有利である。
インクジェット方式でカラーフィルタを形成する場合、始めにガラス基板上に濃色離画壁(ブラックマトリックス)を形成し、この中に着色インクを打ち込んで画素を形成する方法が通常用いられる。(例えば、特許文献5参照。)
【特許文献1】特開2002−122858号公報
【特許文献2】特開平1−152449号公報
【特許文献3】特開昭61−99102号公報
【特許文献4】特開平8−227012号公報
【特許文献5】特開2003−337426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インクジェット法により形成された画素の、濃色離画壁近傍における樹脂膜厚と画素中心部における樹脂膜厚とは不均一になりやすい。樹脂膜厚が不均一な画素上に液晶配向制御突起を形成すると、下地(樹脂膜厚)の影響を受けて該液晶配向制御突起の形状が変化してしまい、一定の形状の液晶配向制御突起を形成することが困難な場合があった。液晶配向制御突起の形状が不均一であると、液晶配向の乱れが生じ、液晶表示装置のコントラストの低下を起こすことがあった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高コントラストなカラーフィルタを製造可能なカラーフィルタの製造方法及びこの方法により製造されたカラーフィルタ並びにこのカラーフィルタを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、
<1> 基板と前記基板上に設けられた濃色離画壁とを備えたカラーフィルタ用基板上に、着色液体組成物の液滴をインクジェット法により付与して画素を形成する画素形成工程と、前記カラーフィルタ用基板の前記画素が形成された側の表面に液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を付与する樹脂組成物付与工程と、
2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を硬化する硬化工程と、を含むカラーフィルタの製造方法である。
【0012】
<2> 前記樹脂組成物付与工程が、仮支持体上に少なくとも一層の感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層を前記カラーフィルタ用基板に転写する転写工程を含む<1>に記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0013】
<3> 前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物が、ナフトキノンジアジド誘導体を含む<1>又は<2>に記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0014】
<4> 前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物が、フェノール樹脂を含む<1>乃至<3>のいずれか1つに記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0015】
<5> <1>乃至<4>のいずれか1つに記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたカラーフィルタである。
【0016】
<6> <5>に記載のカラーフィルタを有する液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高コントラストなカラーフィルタを製造可能なカラーフィルタの製造方法及びこの方法により製造されたカラーフィルタ並びにこのカラーフィルタを用いた液晶表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法及びこの方法により製造されたカラーフィルタ並びにこのカラーフィルタを用いた液晶表示装置について詳細に説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板と前記基板上に設けられた濃色離画壁とを備えたカラーフィルタ用基板上に、着色液体組成物の液滴をインクジェット法により付与して画素を形成する画素形成工程と、前記カラーフィルタ用基板の前記画素が形成された側の表面に液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を付与する樹脂組成物付与工程と、2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を硬化する硬化工程と、を含む。
また、本発明の液晶表示装置は、上述した本発明のカラーフィルタの製造方法により製造されたカラーフィルタを有する。
【0019】
本発明のカラーフィルタの製造方法では、画素をインクジェット法により形成するため、コストの削減をはかることができる。また、画素形成用のフォトマスクを用いる必要がないため、オンデマンドのカラーフィルタ製造が可能となる。
さらに、本発明では2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を硬化するため、液晶配向制御突起を形成する位置を正確に制御できる。そのため、一定の形状の液晶配向制御突起が形成でき、本発明のカラーフィルタを用いた液晶表示素子のコントラストを向上することができる。
【0020】
本発明に係るカラーフィルタ用基板は、基板と該基板上に設けられた濃色離画壁とを備える。
本発明に係るカラーフィルタ用基板に用いられる基板(永久支持体)としては、金属性支持体、金属張り合わせ支持体、ガラス、セラミックス、合成樹脂フィルム等が挙げられる。特に好ましくは、透明で寸度安定性の良好なガラスや透明合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0021】
濃色離画壁は、前記基板上に着色剤を含有する感光性樹脂組成物層(「濃色離画壁用感光性樹脂組成物層」、又は「濃色感光性樹脂組成物層」と称することがある。)を形成後、該組成物層を露光して硬化し、その後に現像することにより製造する。前記濃色感光性樹脂組成物層は、濃色感光性樹脂組成物を塗布する方法(塗布法)や濃色離画壁用感光性転写材料を転写する方法(転写法)により形成される。
以下、濃色感光性樹脂組成物及び濃色離画壁用感光性転写材料について説明する。
【0022】
[濃色感光性樹脂組成物]
基板上の濃色離画壁は、着色剤を含有する感光性樹脂組成物(「濃色感光性樹脂組成物」又は「濃色組成物」ともいう。)から形成される。ここで、濃色組成物とは、555nmにおける高い吸光度を有する組成物のことであり、その値は2.5以上が好ましく、2.5〜10.0がより好ましく、2.5〜6.0が更に好ましく、3.0〜5.0が特に好ましい。
また、この濃色組成物は、後述するように好ましくは光開始系で硬化させる為、露光波長(一般には紫外域)に対する吸光度も重要である。すなわち、その値は2.0〜10.0が好ましく、より好ましくは2.5〜6.0、最も好ましいのは3.0〜5.0である。2.0未満では離画壁形状が望みのものとならない恐れがあり、10.0を超えると、重合を開始することができず離画壁そのものを作ることが困難となる。
以下、該組成物中の成分について説明する。
【0023】
(着色剤)
本発明に用いる着色剤としては、具体的には、下記染料、顔料に記載のカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
本発明の濃色組成物には、有機顔料、無機顔料、染料等を好適に用いることができ、濃色感光性樹脂組成物層に遮光性が要求される際には、カーボンブラック、酸化チタン、4酸化鉄等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉といった遮光剤の他に、赤、青、緑色等の顔料の混合物等を用いることができる。公知の着色剤(染料、顔料)を使用することができる。該公知の着色剤のうち顔料を用いる場合には、濃色組成物中に均一に分散されていることが好ましい。
【0024】
前記濃色組成物の固形分中の着色剤の比率は、十分に現像時間を短縮する観点から、30〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましく、50〜55質量%であることが更に好ましい。
【0025】
上記公知の着色剤としては、具体的には、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
【0026】
本発明においては、前記着色剤の中でも黒色着色剤を用いることが好ましい。黒色着色剤として、更に例示すると、カーボンブラック、チタンカーボン、酸化鉄、酸化チタン、黒鉛などが挙げられ、中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0027】
上記顔料は分散液として使用することが望ましい。この分散液は、前記顔料と顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、後述する有機溶媒(又はビヒクル)に添加して分散させることによって調製することができる。前記ビビクルとは、塗料が液体状態にある時に顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。前記顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、朝倉邦造著、「顔料の事典」、第一版、朝倉書店、2000年、438項に記載されているニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に該文献310項記載の機械的摩砕により、摩擦力を利用し微粉砕してもよい。
【0028】
本発明における濃色組成物は前記着色剤以外に、バインダー(樹脂、ポリマー)、開始剤、モノマーを少なくとも含んでなることが好ましい。また、必要に応じて更に公知の添加剤、例えば、可塑剤、充填剤、安定化剤、重合禁止剤、界面活性剤、溶剤、密着促進剤等を含有させることができる。さらに濃色組成物は少なくとも150℃以下の温度で軟化もしくは粘着性になることが好ましく、熱可塑性であることが好ましい。かかる観点からは、相溶性の可塑剤を添加することで改質することができる。
【0029】
(バインダー(樹脂・ポリマー))
濃色組成物に用いるバインダーとしては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができる。この他に水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダーポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。
【0030】
(開始剤)
濃色組成物を硬化させる方法としては、熱開始剤を用いる熱開始系や光開始剤を用いる光開始系が一般的であるが、本発明では、光開始系を用いることが好ましい。ここで用いる光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の照射(露光ともいう)により、多官能性モノマーの重合を開始する活性種を発生し得る化合物であり、公知の光重合開始剤若しくは光重合開始剤系の中から適宜選択することができる。
例えば、トリハロメチル基含有化合物、アクリジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、等を挙げることができる。
【0031】
具体的には、特開2001−117230公報に記載の、トリハロメチル基が置換したトリハロメチルオキサゾール誘導体又はs−トリアジン誘導体、米国特許第4239850号明細書に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載のトリハロメチルオキサジアゾール化合物などのトリハロメチル基含有化合物;
9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、9−ピラジニルアクリジン、1,2−ビス(9−アクリジニル)エタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、1,4−ビス(9−アクリジニル)ブタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン等のビス(9−アクリジニル)アルカン、などのアクリジン系化合物;
6−(p−メトキシフェニル)−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、6−〔p−(N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ)フェニル〕−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン系化合物;その他、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ミヒラーズケトン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾールなどが挙げられる。
【0032】
上記のうち、トリハロメチル基含有化合物、アクリジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物から選択される少なくとも一種が好ましく、特に、トリハロメチル基含有化合物及びアクリジン系化合物から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。トリハロメチル基含有化合物、アクリジン系化合物は、汎用性でかつ安価である点でも有用である。
【0033】
特に好ましいのは、トリハロメチル基含有化合物としては、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾールであり、アクリジン系化合物としては、9−フェニルアクリジンであり、更に、6−〔p−(N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ)フェニル〕−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾールなどのトリハロメチル基含有化合物、及びミヒラーズケトン、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾールである。
【0034】
前記開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記開始剤の濃色組成物における総量としては、濃色組成物の全固形分(質量)の0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。前記総量が、0.1質量%未満であると、組成物の光硬化の効率が低く露光に長時間を要することがあり、20質量%を超えると、現像する際に、形成された画像パターンが欠落したり、パターン表面に荒れが生じやすくなることがある。
【0035】
前記開始剤は、水素供与体を併用して構成されてもよい。該水素供与体としては、感度をより良化することができる点で、以下で定義するメルカプタン系化合物、アミン系化合物等が好ましい。ここでの「水素供与体」とは、露光により前記光重合開始剤から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物をいう。
【0036】
前記メルカプタン系化合物は、ベンゼン環或いは複素環を母核とし、該母核に直接結合したメルカプト基を1個以上、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個有する化合物(以下、「メルカプタン系水素供与体」という)である。また、前記アミン系化合物は、ベンゼン環或いは複素環を母核とし、該母核に直接結合したアミノ基を1個以上、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個有する化合物(以下、「アミン系水素供与体」という)である。尚、これらの水素供与体は、メルカプト基とアミノ基とを同時に有していてもよい。
【0037】
上記のメルカプタン系水素供与体の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−2,5−ジメチルアミノピリジン、等が挙げられる。これらのうち、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾールが好ましく、特に2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0038】
上記のアミン系水素供与体の具体例としては、4、4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4、4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾニトリル等が挙げられる。これらのうち、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、特に4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0039】
前記水素供与体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、形成された画像が現像時に永久支持体上から脱落し難く、かつ強度及び感度も向上させ得る点で、1種以上のメルカプタン系水素供与体と1種以上のアミン系水素供与体とを組合せて使用することが好ましい。
【0040】
前記メルカプタン系水素供与体とアミン系水素供与体との組合せの具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。より好ましい組合せは、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンであり、特に好ましい組合せは、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。
【0041】
前記メルカプタン系水素供与体とアミン系水素供与体とを組合せた場合の、メルカプタン系水素供与体(M)とアミン系水素供与体(A)との質量比(M:A)は、通常1:1〜1:4が好ましく、1:1〜1:3がより好ましい。前記水素供与体の濃色組成物における総量としては、濃色組成物の全固形分(質量)の0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。
【0042】
(モノマー)
濃色組成物に用いる多官能性モノマーとしては、下記化合物を単独で又は他のモノマーと組み合わせて使用することができる。具体的には、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンジ(メタ)アクリレート、デカメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、スチレン、ジアリルフマレート、トリメリット酸トリアリル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。
【0043】
また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物とヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のジイソシアネートとの反応物も使用できる。
【0044】
これらのうち、特に好ましいのは、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートである。
【0045】
多官能性モノマーの濃色組成物における含有量としては、濃色組成物の全固形分(質量)に対して、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%が特に好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、組成物の露光部でのアルカリ現像液への耐性が劣ることがあり、80質量%を越えると、濃色組成物とした時のタッキネスが増加してしまい、取扱い性に劣ることがある。
【0046】
(溶剤)
本発明の濃色組成物においては、上記成分の他に、更に有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒の例としては、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム等を挙げることができる。
【0047】
(界面活性剤)
本発明においては、後述するスリット状ノズル等を用いることにより、濃色組成物を基板又は仮支持体に塗布することができるが、該濃色組成物中に適切な界面活性剤を含有させることにより、均一な膜厚に制御でき、塗布ムラを効果的に防止することができる。
上記界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。
尚、濃色組成物の全固形分に対する界面活性剤の含有量は、0.001〜1%が一般的であり、0.01〜0.5%が好ましく、0.03〜0.3%が特に好ましい。
【0048】
(紫外線吸収剤)
本発明の濃色組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物の他、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
具体的には、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3',5'−ジ−t−4'−ヒドロキシベンゾエート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジ−フェニルアクリレート、2,2'−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピリジン)−セバケート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、サルチル酸フェニル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリデニル)−エステル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、7−{[4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−5−トリアジン−2−イル]アミノ}−3−フェニルクマリン等が挙げられる。
尚、濃色組成物の全固形分に対する紫外線吸収剤の含有量は、0.5〜15%が一般的であり、1〜12%が好ましく、1.2〜10%が特に好ましい。
【0049】
(その他)
−熱重合防止剤−
また、本発明の濃色組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。該熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。
尚、濃色組成物の全固形分に対する熱重合防止剤の含有量は、0.01〜1%が一般的であり、0.02〜0.7%が好ましく、0.05〜0.5%が特に好ましい。
また、本発明における濃色組成物においては、上記添加剤の他に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0050】
本発明における前記濃色感光性樹脂組成物層の厚みとしては、濃色組成物の固形分含有量及び形成される濃色離画壁の厚さに依存し、特に限定されるものではないが、一般的に、1.0〜12μmが好ましく、1.5〜12μmがより好ましく、1.8〜8μmがさらに好ましく、2〜6μmが特に好ましい。
【0051】
[濃色離画壁用感光性転写材料]
本発明における濃色離画壁の形状を容易且つ低コストで実現するものとして、仮支持体上に少なくとも濃色感光性樹脂組成物からなる層と、必要に応じて更に、酸素遮断層とを、この順に有してなる濃色離画壁用感光性転写材料を使用する後述の手法(3),(4)がある。酸素遮断層を有する材料を用いた場合、濃色感光性樹脂組成物からなる層は酸素遮断層に保護されるため自動的に貧酸素雰囲気下となる。そのため露光工程を不活性ガス下や減圧下で行うことなく、感度を上げられるという利点がある。
【0052】
(仮支持体)
上記の濃色離画壁用感光性転写材料における仮支持体としては、化学的及び熱的に安定であって、可撓性の物質で構成されるものから適宜選択することができる。具体的には、テフロン(登録商標) 、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等、薄いシート若しくはこれらの積層体が好ましい。前記仮支持体の厚みとしては、5〜300μmが適当であり、好ましくは20〜150μmである。中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0053】
(濃色感光性樹脂組成物層)
上記の濃色離画壁用感光性転写材料における濃色感光性樹脂組成物層は、前記濃色組成物から形成され、その形状等の特性、形成方法等については、前記塗布法により形成された層と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0054】
(酸素遮断層)
本発明における濃色離画壁用感光性転写材料においては、露光時の酸素を遮断する目的から、仮支持体上に形成された感光性樹脂組成物層上に酸素遮断層を設けることが好ましい。
本発明で言う酸素遮断層とは、500cm3/(m2・day・atm)以下の酸素透過率を有する層であるが、酸素透過率は100cm3/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、50cm3/(m2・day・atm)以下であることがより好ましい。
酸素透過率が500cm3/(m2・day・atm)より多い場合は効率的に酸素を遮断することができないため、濃色離画壁を前記所望の形状にすることが困難となる。
具体的にはポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどを主成分とする層が好ましいが、このうちポリビニルアルコールを主成分とするものが好ましい。
ポリビニルアルコールとしては鹸化度が80%以上のものが好ましい。本発明の酸素遮断層における前記ポリビニルアルコールの含有量としては、25質量%〜99質量%が好ましく、50質量%〜90質量%がより好ましく、50質量%〜80質量%が特に好ましい。
また、必要に応じてポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドなどのポリマーを添加してもよいが、このうちポリビニルピロリドンが好ましい。これらのポリマーの添加量は層全体の1〜40質量%、より好ましくは10〜35質量%である。ポリビニルピロリドンの添加量が多すぎると酸素遮断性が不充分になる場合がある。
【0055】
(熱可塑性樹脂層)
上記の濃色離画壁用感光性転写材料は、必要に応じて熱可塑性樹脂層を有していてもよい。かかる熱可塑性樹脂層とは、アルカリ可溶性であることが好ましく、少なくとも樹脂成分を含んで構成され、該樹脂成分としては、実質的な軟化点が80℃以下であることが好ましい。このような熱可塑性樹脂層が設けられることにより、後述する濃色離画壁の形成において、永久支持体との良好な密着性を発揮することができる。
軟化点が80℃以下のアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂としては、エチレンとアクリル酸エステル共重合体のケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのケン化物、等が挙げられる。
熱可塑性樹脂層には、上記の熱可塑性樹脂の少なくとも一種を適宜選択して用いることができ、更に「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)による、軟化点が約80℃以下の有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することができる。
また、軟化点が80℃以上の有機高分子物質についても、その有機高分子物質中に該高分子物質と相溶性のある各種可塑剤を添加することで、実質的な軟化点を80℃以下に下げて用いることもできる。また、これらの有機高分子物質には、仮支持体との接着力を調節する目的で、実質的な軟化点が80℃を越えない範囲で、各種ポリマーや過冷却物質、密着改良剤或いは界面活性剤、離型剤、等を加えることもできる。
好ましい可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートビフェニルジフェニルフォスフェートを挙げることができる。
【0056】
(保護フイルム)
濃色感光性樹脂組成物層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄い保護フイルムを設けることが好ましい。保護フイルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、濃色感光性樹脂組成物層から容易に分離されねばならない。保護フイルム材料としては例えばシリコーン紙、ポリオレフィン若しくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。尚、保護フイルムの厚さは、4〜40μmが一般的であり、5〜30μmが好ましく、10〜25μmが特に好ましい。
【0057】
(濃色離画壁用感光性転写材料の作製方法)
本発明の濃色離画壁用感光性転写材料は、仮支持体上に熱可塑性樹脂層の添加剤を溶解した塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥することにより熱可塑性樹脂層を設け、その後熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤からなる酸素遮断層材料の溶液を塗布、乾燥し、その後濃色感光性樹脂組成物層用塗布液を、酸素遮断層(中間層)を溶解しない溶剤で塗布、乾燥して設けることにより作製することができる。熱可塑性樹脂層を設けない場合には酸素遮断層の溶剤は上記の制約は不要となる。
また、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層及び酸素遮断層を設けたシート、及び保護フイルム上に濃色感光性樹脂組成物層を設けたシートを用意し、酸素遮断層と濃色感光性樹脂組成物層とが接するように相互に貼り合わせることによっても、更には、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層を設けたシート、及び保護フイルム上に濃色感光性樹脂組成物層及び酸素遮断層を設けたシートを用意し、熱可塑性樹脂層と酸素遮断層とが接するように相互に貼り合わせることによっても、作製することができる。
尚、上記作製方法における塗布は、公知の塗布装置等によって行うことができるが、本発明においては、スリット状ノズルを用いた塗布装置(スリットコータ)によって行うことが好ましい。
【0058】
[濃色離画壁]
各画素の濃色離画壁は、上記濃色感光性樹脂組成物(濃色組成物)を用いた塗布法又は濃色離画壁用感光性転写材料を用いた転写法で形成する態様がある。形成は貧酸素雰囲気下で行ってもよい。又は酸素遮断層を設けて形成してもよい。
ここで、前記貧酸素雰囲気下とは、本発明における濃色組成物又は濃色組成物層を光硬化させる際の酸素の分圧が0.15気圧以下、又は、酸素を遮断しうる酸素遮断層下のことを指しており、これらは詳しくは以下の通りである。
通常、大気(1気圧)下では酸素の分圧は0.21気圧であるので、酸素の分圧を0.15気圧以下に下げるためには、(a)露光時の大気を減圧して0.71気圧以下にするか、(b)空気と酸素以外の気体(例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス)を空気に対して40vol%以上混合することにより達成できる。
本発明における貧酸素雰囲気については、特に限定されず前記いずれの方法も用いることが出来る。
前記酸素分圧を低下する方法を用いる場合、0.10気圧以下が好ましく、0.08気圧以下がより好ましく、0.05気圧以下が特に好ましい。酸素分圧が 0.15気圧より高いと、濃色離画壁の表面が十分に硬化せず、濃色離画壁の高さが目標より低くなる場合がある。
酸素分圧の下限には特に制限はない。真空又は雰囲気を空気以外の気体(例えば窒素)で置換することにより酸素分圧を事実上0にすることができるが、これも好ましい方法である。酸素分圧は酸素計を用いて測定することができる。
【0059】
前記不活性ガスとは、N2、H2、CO2、などの一般的な気体や、He、Ne、Arなどの希ガス類をいう。この中でも、安全性や入手の容易さ、コストの問題から、N2が好適に利用される。
【0060】
前記減圧下とは、500hPa以下、好ましくは100hPa以下の状態を指す。
【0061】
以上より、本発明の濃色離画壁は、前記濃色組成物を用いて形成されるが、下記(1)及び(2)の塗布法、並びに下記(3)及び(4)の転写法で製造することが好ましい。
即ち、(1)濃色離画壁は、着色剤を含有する濃色感光性樹脂組成物を、基板に塗布乾燥した後、貧酸素雰囲気下(酸素分圧が0.15気圧以下)で露光し現像して形成する。
また、(2)濃色離画壁は、着色剤を含有する濃色感光性樹脂組成物を、基板に塗布乾燥した後、貧酸素雰囲気下(前記濃色感光性樹脂組成物層上に酸素遮断層を設けた状態)で露光し現像して形成する。
(3)前記濃色感光性樹脂組成物により仮支持体上に形成された濃色感光性樹脂組成物層を有する濃色離画壁用感光性転写材料を、前記基板上に転写した後、貧酸素雰囲気下(酸素分圧が0.15気圧以下)で露光し現像して形成する。
(4)前記濃色感光性樹脂組成物により仮支持体上に形成された濃色感光性樹脂組成物層を有する濃色離画壁用感光性転写材料を、前記基板上に転写した後、貧酸素雰囲気下(前記濃色感光性樹脂組成物層上に酸素遮断層を設けた状態、又は仮支持体を設けた状態)で露光し現像して形成する。
前記濃色離画壁は、2以上の画素群を離画するものであり、一般には黒であることが多いが、黒に限定されるものではない。
【0062】
基板上において、上記で説明したような高吸光度の濃色組成物を、同じく上記で説明した貧酸素雰囲気下で光重合した場合、組成物自身の吸収により組成物表面から基板方向への露光量は減衰するため、結果として表面の硬化がより進む。さらに、貧酸素雰囲気下であるために組成物表面での重合阻害が抑制され、こちらも結果として表面の硬化がより進む。
こうして得られた離画壁形状を固定化する工程を経ることで、例えば、カラーフィルタに用いた場合、一旦その空隙に打滴されたインクは該濃色離画壁を乗り越えにくくなる。その結果、隣接画素との混色などを防いで良好なカラーフィルタを得ることができる。
【0063】
本発明において、前記濃色離画壁の高さh(前記濃色離画壁の最も高さの高い点Hと、Hから基板におろした垂線の足Gとの距離)は、1.0μm以上であることが好ましい、より好ましくは1.5μm以上10μm以下であり、更に好ましくは1.8μm以上7.0μm以下、特に好ましくは2.0μm以上5.0μm以下である。1.0μm以上10μm以下とすることにより、より効果的に混色を防止できる。高さが1.5μm未満であると混色が起こり場合があり、10μmを超えると濃色離画壁の形成が難しくなる。
これらの値は、実際には基板上に形成された濃色離画壁を、基板ごと垂直にカットして断面を露出させ、顕微鏡等で直接観察することで測定する。
【0064】
本発明の濃色離画壁の555nmにおける吸光度は、2.5以上が好ましく、2.5〜10.0がより好ましく、2.5〜6.0が更に好ましく、3.0〜5.0が特に好ましい。
前記吸光度の範囲とすることにより、コントラストの高い表示装置が得られ好ましい。また表示装置の表示品位の点から、濃色離画壁の色は黒であることが好ましい。
【0065】
(濃色離画壁の形成)
−濃色組成物を用いる濃色離画壁の形成−
濃色組成物を基板上に塗布して濃色離画壁を形成する方法の一例を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、基板を洗浄した後、該基板を熱処理して表面状態を安定化させる。該基板を温調後、前記濃色組成物を塗布する。引き続き、溶媒の1部を乾燥して塗布層の流動性をなくした後、EBR(エッジ・ビード・リムーバー)等にて基板周囲の不要な塗布液を除去し、プリベークして濃色感光性樹脂組成物層を得る。
【0066】
前記塗布としては、特に限定されず、公知のスリット状ノズルを有するガラス基板用コーター(例えば、エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)等を用いて行うことができる。
前記乾燥は、公知の乾燥装置(例えば、VCD(真空乾燥装置;東京応化工業社製)等)を用いて行うことができる、
プリベークとしては、特に限定されないが、例えば、120℃3分間することにより達成することができる。
【0067】
次いで濃色感光性樹脂組成物層上に酸素遮断層を同様にして形成する。続いて、基板と画像パターンを有するマスク(例えば、石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該濃色感光性樹脂層の間の距離を適宜(例えば、200μm)に設定し、露光する。
該露光としては、例えば、超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(例えば、日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)等で行い、露光量としては適宜(例えば、300mJ/cm2)選択することができる。
【0068】
次に、現像液で現像してパターニング画像を得、引き続き必要に応じて、水洗処理して濃色離画壁を得る。
前記現像の前には、純水をシャワーノズル等にて噴霧して、該濃色感光性樹脂層の表面を均一に湿らせることが好ましい。前記現像処理に用いる現像液としては、アルカリ性物質の希薄水溶液が用いられるが、更に水と混和性の有機溶剤を少量添加したものでもよい。
光照射に用いる光源としては、中圧〜超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0069】
前記濃色組成物の塗布による方法及び濃色離画壁用感光性転写材料を用いる方法におけるアルカリ性物質としては、アルカリ金属水酸化物類(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩類(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属重炭酸塩類(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属ケイ酸塩類(例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、アルカリ金属メタケイ酸塩類(例えば、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム)、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、テトラアルキルアンモンニウムヒドロキシド類(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、燐酸三ナトリウム、等が挙げられる。アルカリ性物質の濃度は、0.01〜30質量%が好ましく、pHは8〜14が好ましい。
【0070】
前記「水と混和性の有機溶剤」としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等が好適に挙げられる。水と混和性の有機溶剤の濃度は0.1〜30質量%が好ましい。更に、公知の界面活性剤を添加することもでき、該界面活性剤の濃度としては0.01〜10質量%が好ましい。
【0071】
前記現像液は、浴液としても、あるいは噴霧液としても用いることができる。濃色感光性樹脂組成物層の未硬化部分を除去する場合、現像液中で回転ブラシや湿潤スポンジで擦るなどの方法を組合わせることができる。現像液の液温度は、通常室温付近から40℃が好ましい。更に、現像処理した後に、水洗処理する工程を入れることもできる。現像時間は、濃色感光性樹脂組成物層の組成、現像液のアルカリ性や温度、有機溶剤を添加する場合にはその種類と濃度、等に依るが、通常10秒〜2分程度である。短すぎると非露光部の現像が不充分となると同時に紫外線の吸光度も不充分となることがあり、長すぎると露光部もエッチングされることがある。いずれの場合にも、濃色離画壁の形状を好適なものとすることが困難となる。この現像工程にて、濃色離画壁の形状は前述のごとく形成される。
【0072】
−濃色離画壁用感光性転写材料を用いた濃色離画壁の形成−
まず、前述の濃色離画壁用感光性転写材料の保護フィルムを剥離除去した後、露出した濃色感光性樹脂組成物層の表面を永久支持体(基板)上に貼り合わせ、ラミネータ等を通して加熱、加圧して積層する(積層体)。ラミネータには、従来公知のラミネータ、真空ラミネータ等の中から適宜選択したものが使用でき、より生産性を高めるには、オートカットラミネータも使用可能である。
【0073】
次いで、仮支持体を除去し、仮支持体除去後の除去面の上方に、光を照射し、照射後所定の処理液を用いて現像処理して、パターニング画像を得て、引き続き必要に応じて、水洗処理して、濃色離画壁を得る。
現像処理に用いる現像液及び露光の詳細については、前記塗布法を用いた形成における現像液及び露光が同様に用いられる。また、露光方法として、後述する、2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで2次元画像の形成を行う露光方法を用いることもできる。
【0074】
上述の方法により形成された濃色離画壁の空隙に、着色液体組成物の液滴をインクジェット法により付与してRGB等の画素を形成する。
また、このように各画素を形成する前に、濃色離画壁の形状を固定化してもよく、その手段は特に限定されないが以下のようなものが挙げられる。
すなわち、1)現像後、再露光を行う(ポスト露光と呼ぶことがある)、2)現像後、比較的低い温度で加熱処理を行う等である。ここで言う加熱処理とは濃色離画壁を有する基板を電気炉、乾燥器等の中で加熱する、あるいは赤外線ランプを照射するということをさす。
【0075】
ここで、上記1)を行う場合の露光量は、大気下であれば500〜3000mJ/cm2、好ましくは1000〜2000mJ/cm2であり、貧酸素雰囲気下である場合にはそれより低い露光量で露光することも可能である。また、同じく2)を行う場合の加熱温度は50〜120℃、好ましくは70〜100℃程度であり、その加熱時間は、10〜40分程度である。温度が50℃より低い場合には濃色離画壁の硬化が進まない懸念があり、120℃より大きい場合には濃色離画壁形状が崩れてしまう懸念がある。
【0076】
各画素形成のために用いるインクジェット法に関しては、インクを熱硬化させる方法、光硬化させる方法、あらかじめ基板上に透明な受像層を形成しておいてから打滴する方法など、公知の方法を用いることができる。
【0077】
好ましくは、各画素を形成した後、加熱処理(いわゆるベーク処理)する加熱工程を設ける。即ち、光照射により光重合した層を有する基板を電気炉、乾燥器等の中で加熱する、あるいは赤外線ランプを照射する。加熱の温度及び時間は、濃色組成物の組成や形成された層の厚みに依存するが、一般に充分な耐溶剤性、耐アルカリ性、及び紫外線吸光度を獲得する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
【0078】
このようにして形成されたカラーフィルタのパターン形状は特に限定されるものではなく、一般的なブラックマトリックス形状であるストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0079】
(インクジェット法)
本発明に用いるインクジェット法としては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
用いるインクは油性、水性であっても使用できる。また、そのインクに含まれる着色材は染料、顔料ともに使用でき、耐久性の面からは顔料の使用がより好ましい。また、公知のカラーフィルタ作製に用いる、塗布方式の着色インク(着色液体組成物、例えば、特開2005−3861号公報[0034]〜[0063]記載)や、特開平10−195358号公報[0009]〜[0026]に記載のインクジェット用組成物を使用することもできる。
本発明におけるインクには、着色後の工程を考慮し、加熱によって硬化する、又は紫外線などのエネルギー線によって硬化する成分を添加することもできる。加熱によって硬化する成分としては各種の熱硬化性樹脂が広く用いられ、またエネルギー線によって硬化する成分としては例えばアクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体に光反応開始剤を添加したものを例示できる。特に耐熱性を考慮してアクリロイル基、メタクリロイル基を分子内に複数有するものがより好ましい。これらのアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体は水溶性のものが好ましく使用でき、水に難溶性のものでもエマルション化するなどして使用できる。
この場合、上記<濃色感光性樹脂組成物>の項で挙げた、顔料などの着色剤を含有させた感光性樹脂組成物を、好適なものとして用いることができる。
【0080】
また、本発明において用いることができるインクとしては、少なくともバインダー、及び、2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーを含有するカラーフィルター用熱硬化性インクも好適なものとして用いることができる。
【0081】
本発明におけるカラーフィルタは、インクジェット方式で画素形成されたカラーフィルタであり、RGB3色のインクを吹き付けて3色のカラーフィルタを形成することが好ましい。
【0082】
上述したカラーフィルタ用基板の画素が形成された側の表面には、液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物(以下、突起用組成物と称することがある。)が付与される。これにより、カラーフィルタ用基板の画素が形成された側の表面に液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物層(以下、突起用組成物層と称することがある。)が形成される。突起用組成物層は、突起用組成物用塗布液を塗布する方法(塗布法)や、液晶配向制御突起用感光性転写材料(以下、突起用転写材料と称することがある。)を転写する方法(転写法)により形成される。
【0083】
《突起用転写材料》
本発明に用いる突起用転写材料は、少なくとも1層の感光性樹脂層(突起用組成物層)を有し、必要に応じて、熱可塑性樹脂層と、中間層とを有することができる。以下、仮支持体上に熱可塑性樹脂層、中間層及び突起用組成物層をこの順で積層した態様を例に、本発明に用いる突起用転写材料について説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、仮支持体上に直接突起用組成物層が形成された態様であってもよいし、仮支持体と突起用組成物層との間に、熱可塑性樹脂層及び中間層のいずれかのみが形成された態様であってもよい。
【0084】
<突起用組成物層>
上記突起用組成物層は、フェノール樹脂を含有することが好ましく、更に、必要に応じてナフトキノンジアジドエステルを含むことが好ましく、更には、可塑剤や残存溶媒として高沸点溶媒、その他の添加剤を含むことができる。フェノールノボラック樹脂等については、公知の樹脂でよく、特開平6−308722号公報、特開平8−272091号公報、特開平6−14888号公報、特開平6−194827号公報記載のものを挙げることができる。
【0085】
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、及びクレゾールノボラック樹脂などが挙げられ、中でも、現像ラチチュードが広い観点から、クレゾールノボラック樹脂を含有することが特に好ましい。
【0086】
(フェノールノボラック樹脂)
前記フェノールノボラック樹脂としては、フェノールに対するホルムアルデヒドのモル比が0.5〜1.0程度のものが好ましく、現像性及び焼き付きの観点から0.8〜1.0が更に好ましい。また、前記フェノールノボラック樹脂の重量平均分子量としては、300〜4,000が好ましく、400〜800が特に好ましい。
前記フェノールノボラック樹脂はこれらの誘導体であってもかまわない。
前記フェノールノボラック樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、分子量が異なる2種以上を混合して用いることもでき、本発明の目的を損なわない範囲でクレゾールノボラック樹脂等の他の樹脂と混合して用いてもよい。
前記フェノールノボラック樹脂の含有量としては、突起用組成物層中の全固形分量に対して、40〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
【0087】
(クレゾールノボラック樹脂)
上記クレゾールノボラック樹脂としては、クレゾールに対するホルムアルデヒドのモル比が0.7〜1.0程度のものが好ましく、0.8〜1.0が更に好ましい。また、上記クレゾール樹脂の質量平均分子量としては、800〜8000が好ましく、1000〜6000が特に好ましい。
【0088】
上記クレゾール樹脂の異性体比(o−体/m−体/p−体のモル比率)は特に限定はないが、現像性を高める観点から全異性体に対するp−体の比率が10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが更に好ましい。また、液晶パネル性能(焼き付け防止能など)を高める観点からは、m−体の比率が5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましい。
【0089】
上記クレゾール樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いることもできる。この場合、フェノール樹脂等の他の樹脂と混合して用いてもよい。また、本発明においては、上記クレゾール樹脂として、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとの反応生成物等のクレゾール樹脂の誘導体を用いてもよい。
【0090】
上記クレゾール樹脂の使用量としては、0.1〜10g/m2が好ましく、0.5〜5g/m2がさらに好ましい。
【0091】
(ナフトキノンジアジドエステル)
上記突起用組成物層には、ナフトキノンジアジドエステルをクレゾール樹脂と併用することが好ましい。上記ナフトキノンジアジドエステルは、1官能の化合物であってもよいし2官能以上の化合物であってもよく、更にこれらの混合物であってもよい。1官能のナフトキノンジアジドエステルとしては、ナフトキノン−4−スルホン酸クロリド若しくはナフトキノン−5−スルホン酸クロリドと、置換フェノールとを反応させたエステル化合物であることが好ましい。
【0092】
また、2官能以上のナフトキノンジアジドエステルとしては、ナフトキノン−4−スルホン酸クロリド若しくはナフトキノン−5−スルホン酸クロリドと、フェノール性水酸基を複数有する化合物とを反応させたエステル化合物であることが好ましい。上記フェノール性水酸基を複数有する化合物としては、例えば、ビスフェノール類、トリスフェノール類、テトラキスフェノール類等のポリフェノール類;ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン等の多官能フェノール;ビス型又はトリス型のジヒドロキシベンゼン若しくはトリヒドロキシベンゼン、非対称の多核フェノール、並びに、これらの混合物等が好ましい。
【0093】
上記フェノール性水酸基を有する化合物の具体例としては、例えば、4−t−ブチルフェノール、4−イソアミルフェノール、4−t−オクチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、2−アセチルフェノール、4−ヒドロキシベンゾフェノン、3−クロロフェノール、4−ベンジルオキシカルボニルフェノール、4−ドデシルフェノール、レゾルシノール、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−1,3−ベンゼンジオール、フロログルシノール、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4,4'−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]等が挙げられる。
【0094】
上記ナフトキノンジアジドエステルの具体例としては、例えば、4'−t−オクチルフェニルナフトキノンジアジド−4−スルホネート、4'−t−オクチルフェニルナフトキノンジアジド−5−スルホネート、4'−ベンゾイルフェニルナフトキノンジアジド−5−スルホネート、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとの反応物、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとの反応物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
上記突起用組成物中のナフトキノンジアジドエステルのフェノール樹脂に対する質量比は、現像性を高める観点から1〜200質量%が好ましく、5〜50質量%が更に好ましい。
【0096】
(その他の添加剤)
上記突起用組成物層には、突起用組成物層の現像性を促進させるために、2価以上の脂肪族カルボン酸や、2〜6価のフェノール化合物を含有していてもよい。上記2価以上の脂肪族カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシコハク酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられ、マロン酸、コハク酸が好ましい。
上記突起用組成物中の全固形分に対する上記2価以上の脂肪族カルボン酸の含有量としては、0.5〜20質量%が好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
【0097】
また、上記2〜6価のフェノール化合物としては、2〜4価のフェノール化合物が特に好ましい。上記2〜6価のフェノール化合物としては、例えば、レゾルシノール、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−1,3−ベンゼンジオール、フロログルシノール、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4,4'−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]等が挙げられ、レゾルシノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。
上記突起用組成物中の全固形分に対する上記2〜6価のフェノール化合物の含有量としては、0.5〜20質量%が好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
【0098】
更に、上記突起用組成物層には、液晶配向制御突起の形成時における転写不良や精度不良等の故障の認識を可能とし、製造適性を向上させる観点から、消色性染料を添加することもできる。上記消色性染料とは、一般に、200℃、1時間の加熱により消色し得る色素を意味し、ベーク時に消色可能な有色染料である。上記消色性染料としては、180℃、1時間の加熱により消色する色素が好ましい。このような色素は、通常、熱による分解若しくは酸化等による構造変化を起こすか、或いは熱によって蒸発若しくは昇華するものである。また、消色性染料を用いて液晶配向制御突起を作製した場合、該液晶配向制御突起は、消色後に、400〜800nmの平行光線に対して90%以上の光透過率を有することが好ましい。
【0099】
上記消色性染料としては、熱によって分解する色素として、例えば、ビクトリアピュアブルーBOH、ビクトリアピュアブルーBOH−M、マラカイトグリーン、アイゼンマラカイトグリーン、マラカイトグリーン塩酸塩、アイゼンダイヤモンドグリーン等のジアルキルアミノトリフェニルメタン系の染料等が挙げられる。また、熱により蒸発又は昇華する色素としては、例えば、オリエントオイルブラウン、メチルイエロー、スミカロンブリリアントブルーB、1,3,5−トリフェニルテトラゾリウムホルマザンなどが挙げられる。
【0100】
上記消色性染料としては、上記のほか、染料便覧(有機合成化学協会編、丸善、昭和47年7月20日発行)に記載される、昇華堅牢試験の耐汚染性の評価(180℃、1時間以下の条件)が1〜3のものも使用可能である。具体的には、C.I. Disperse Yellow 8, 31, 72、C.I. Disperse Orange 1, 3,20, 21 、C.I. Disperse Red 15, 55, 60, 65、C.I.Disperse Violet 8, 23,26, 37、C.I. Disperse Blue 20, 26, 55, 56, 72, 90, 91, 92, 106、C.I. Disperse Black 29、 Diacellition Direct Black B M/D (三菱化成(株)製)、Sumikaron Violet RS (住友化学(株)製)、Dianix Fast Sky Blue B M/D(三菱化成(株)製)、Miketon Polyester Blue BCL, GRN (三井石油化学(株)製)、KayaronPolyester Navy Blue GF(日本化薬(株)製)等が挙げられる。加熱装置の適性、環境汚染を考慮すると、前記消色性染料としては、熱分解性の染料が好ましい。
【0101】
前記消色性染料の添加量としては、突起用組成物層の全固形分に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0102】
また、上記突起用組成物層には、熱可塑性の結合剤を用いることができる。上記熱可塑性の結合剤としては、例えば、エチレン性不飽和化合物等の公知の結合剤が挙げられる。上記結合剤及び可塑剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定される。
【0103】
上記突起用転写材料は、突起用組成物層にフェノール樹脂とナフトキノンジアジドエステルとを併用することで、所望のパターンで露光した際に該露光部をアルカリ水溶液等による現像によって除去するポジ型の感光性転写材料とすることができる。即ち、アルカリ可溶性のフェノール樹脂に対し、ナフトキノンジアジドエステルは溶解禁止剤として作用するが、光を受けるとインデンカルボン酸を生成し、溶解禁止効果がなくなる。このため、フェノール樹脂とナフトキノンジアジドとを含む、上記感光性樹脂層は、アルカリ現像により光照射部のみが溶解されるポジ型レジストとして機能する。
【0104】
上記突起用組成物層の層厚としては、0.5〜10μmが好ましく、1〜6μmが更に好ましい。上記膜厚が0.5〜10μmの範囲内にあると、突起用組成物層用塗布液を仮支持体上に塗布する際に、ピンホールが発生しにくく、現像持に露光部の除去を容易におこなうことができる。
【0105】
上記突起用組成物層は、上述のフェノール樹脂やナフトキノンジアジドエステル等の突起用組成物層に含まれる成分を溶剤に溶解した突起用組成物を、仮支持体(仮支持体と突起用組成物層との間に熱可塑性樹脂層や中間層が設けられている場合にはその層)上に、種々の塗布手段を用いて塗布、乾燥することで形成することができる。
【0106】
上記突起用組成物に用いられる溶剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で公知の溶剤から適宜選定したものを用いることができる。上記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキンプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられる。これらの有機溶剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0107】
これらの中でも、各成分の溶解性、及び膜形成性の点で、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコール類が特に好適である。
【0108】
上記突起用組成物層を形成するための上記塗布手段としては、公知の塗布手段を適宜選定することができる。
また、塗布法により突起用組成物層を形成する場合に用いられる突起用組成物用塗布液は、上述の各成分を所定量含んでなる。
【0109】
<仮支持体>
上記仮支持体としては、後述する熱可塑性樹脂層に対して、転写の支障とならない程度の剥離性を有するものが好ましく、化学的、熱的に安定で可撓性のものが好ましい。上記仮支持体としては、濃色離画壁用感光性転写材料の説明で挙げられたものと同様のものを用いることができる。
【0110】
上記仮支持体と熱可塑性樹脂層との間には、良好な剥離性を確保するために、グロー放電等の表面処理は施さず、またゼラチン等の下塗り層も設けないことが好ましい。上記仮支持体の厚みとしては、5〜300μmが適当であり、20〜150μmが好ましい。
【0111】
<熱可塑性樹脂層>
熱可塑性樹脂層は、仮支持体上の第一層目として設けられ、主として熱可塑性樹脂を含んでなり、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、転写後のアルカリ現像を可能とし、或いは転写時の転写条件によっては熱可塑性樹脂が周囲にはみ出して被転写体である基板上を汚染してしまう場合に除去処理を可能とするために、アルカリ性水溶液に可溶な樹脂が好適である。更に、熱可塑性樹脂層は、被転写体である基板上(又はカラーフィルタ上)に転写する際、基板上(又はカラーフィルタ上)に存在する凸部に起因して生じうる転写不良を防止するクッション材としての機能をも発揮させる観点から、加熱密着時に被転写物表面の凸部に応じて変形しうる性質を有することが好ましい。
【0112】
上記の点から、上記熱可塑性樹脂としては、アルカリ可溶性であって、実質的な軟化点が80℃以下の樹脂が好ましい。軟化点が80℃以下の熱可塑性樹脂としては、上述の熱可塑性樹脂の具体例と同様のものが挙げられる。
【0113】
本発明の突起用転写材料は、仮支持体上に熱可塑性樹脂層の他、後述の中間層、及び上記突起用組成物層を順次積層して構成することができるが、特に熱可塑性樹脂層と仮支持体との間の接着強度が他の層間における接着強度よりも小さくすることが必要である。これにより転写の後、仮支持体を容易に剥離することができ、更に剥離の際に熱可塑性樹脂層表面の破壊を伴うことなく仮支持体を除去することができる。これは、仮支持体除去後の突起用組成物層への露光を均一に行うことが可能となる点で好ましい態様である。
【0114】
上記熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂と必要に応じて他の成分とを有機溶剤に溶解して塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を調製し、例えば、スピンコート法等の公知の塗布方法で塗布等して形成することが可能である。
【0115】
上記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキンプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられる。これらの有機溶剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0116】
これらの中でも、各成分の溶解性、及び膜形成性の点で、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコール類が特に好適である。
【0117】
更に、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。
【0118】
上記熱可塑性樹脂層の層厚としては、6〜100μmが好ましく、6〜50μmがより好ましい。上記層厚が、6〜100μmの範囲内にあると、基板(又はカラーフィルタ)上の1μm以上の凸部を完全に吸収することができると共に、現像性、製造適性を向上させることができる。
【0119】
<中間層>
上記突起用組成物層や上記熱可塑性樹脂層には有機溶剤が用いられることから、上記中間層は、両層が互いに混ざり合うのを防止する機能を有する。また、上記中間層は、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものであればよい。
【0120】
上記中間層は、水又はアルカリ水溶液に分散、溶解可能な樹脂成分を主に構成され、必要に応じて、界面活性剤等の他の成分を含んでいてもよい。上記中間層を構成する樹脂成分としては、公知のものの中から適宜選択でき、例えば、特開昭46−2121号公報や特公昭56−40824号公報に記載の、ポリビニルエーテル/無水マレイン酸重合体、カルボキシアルキルセルロースの水溶性塩、水溶性セルロースエーテル類、カルボキシアルキル澱粉の水溶性塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、各種のポリアクリルアミド類、各種水溶性ポリアミド、ポリアクリル酸の水溶性塩、ゼラチン、エチレンオキサイド重合体、各種澱粉及びその類似物からなる群の水溶性塩、スチレン/マレイン酸の共重合体、マレイネート樹脂、及びこれらを2種以上組合せたもの等が挙げられる。
【0121】
中でも、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを組合せてなるものが特に好ましく、更に添加剤を加えてもよい。更に、上記ポリビニルアルコールとしては、鹸化率が99%以下であるのものが好ましく、90%以下であるものが特に好ましい。また、上記ポリビニルピロリドンの含有量としては、中間層の固形分の1〜75質量%であることが好ましく、1〜60質量%であることが更に好ましく、10〜50質量%であることが最も好ましい。上記ポリビニルピロリドンの含有量が、1〜75質量%の範囲内にあると、突起用組成物層との密着性を十分に高めることができる。
添加剤としては、用いる樹脂成分を可塑化するものが好ましく、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びそれらのモノエーテル体、ジエーテル体、モノエステル体、ジエステル体、モノアミド体、ジアミド体、などが挙げられる。添加剤の添加量としては、樹脂の0〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0122】
上記中間層は、樹脂成分等を水系溶媒に溶解、分散して塗布液(中間層用塗布液)を調製し、該塗布液を上記熱可塑性樹脂層上に公知の塗布方法により塗布して形成することが可能である。
上記水系溶媒としては、蒸留水等の水を主成分とし、所望により本発明の効果を損なわない範囲でアルコール等の水と親和性のある溶剤や塩等を添加した溶媒が挙げられる。
【0123】
上記中間層の層厚としては、約0.1〜5μmが好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。上記層厚が、0.1から5μmの間にあると、熱可塑性樹脂層と突起用組成物層の層混合を起こすことがなく、現像や中間層除去を容易に行うことができる。
【0124】
<表面保護フィルム>
上記突起用組成物層上には、保管等の際の汚れや損傷から保護する目的で、表面保護フィルムを設ける。上記表面保護フィルムは、突起用組成物層に容易に貼付可能で、また、突起用組成物層から容易に剥離可能なものの中から選択でき、上記仮支持体と同一又は類似の材料からなるものであってもよい。具体的には、シリコーン紙、ポリオレフィン又はポリテトラフルオロエチレンシート等が好ましく、中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムがより好ましい。さらに、表面保護フィルムの突起用組成物層と接する面に深さ0.3μm以上の凹部が1cm2あたり1000個以上あることが好ましく、深さ0.3μm以上の凹部が1cm2あたり5000個以上あることがより好ましい。該凹部は、フィルムのエンボス加工により形成されても良いし、マット化処理(サンドブラスト法)により形成されていても良く、さらにエッチング処理により凹凸をなめらかにしても良い。これらは特開平1−110930記載の方法などにより作製することができる。表面保護フィルム表面の凹部の数は光学顕微鏡で観察することにより計測できる。
また、表面保護フィルム表面の凹部の深さとは、中心面平均高さから各凹部の最深部までの距離のことであり、まず中心面平均高さをもとめた後に、各凹部の最深部までの距離を測ることによりもとめられ、具体的にはレーザー顕微鏡、表面粗さ形状測定機(サーフコム;東京精密(株)製)などにより計測できる。
【0125】
上記表面保護フィルムの厚みとしては、約5〜100μmが好ましく、10〜60μmがより好ましい。
【0126】
<突起用転写材料の製造方法>
本発明に用いる突起用転写材料は、上記仮支持体上に、まず、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解し調製した塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布・乾燥して、熱可塑性樹脂層を設け、続いて該熱可塑性樹脂層上に、熱可塑性樹脂層を溶解しない溶媒を用いてなる塗布液(中間層用塗布液)を塗布、乾燥して中間層を設け、更に該中間層上に、中間層を溶解しない溶剤にフェノール樹脂等を溶解し調製した塗布液(突起用組成物層用塗布液)を塗布、乾燥して突起用組成物層を設けることにより形成することができる。或いは、上記表面保護フィルム上に突起用組成物層を設けると共に、別途仮支持体上に熱可塑性樹脂層と中間層とを設け、それぞれを中間層と突起用組成物層とが接するように貼り合わせることにより形成することもできる。また、本発明に用いる突起用転写材料は、上記表面保護フィルム上に突起用組成物層と中間層とを設けると共に、別途仮支持体上に熱可塑性樹脂層を設け、それぞれを上述と同様に、中間層と突起用組成物層とが接するように貼り合わせることによって、製造することができる。
【0127】
また、後述するように、本発明に用いる突起用転写材料を被転写体である基板やカラーフィルタ上に密着させた後、突起用転写材料の仮支持体を剥離する過程では、仮支持体や基板等が帯電する結果、周囲のゴミ等を引き寄せ、剥離後の突起用組成物層上にゴミ等が付着することがある。このような場合、その後の露光過程で突起用組成物層に未露光部ができ、その部分が現像の際に残ってしまうことがある。このため、帯電を防止する目的で、仮支持体の少なくとも一方の表面に導電性層を設けたり、或いは導電性を付与した仮支持体を用いることによって、その表面の電気抵抗を1013Ω以下にまで低下させることが好ましい。
【0128】
上述のように仮支持体に導電性を付与するためには、仮支持体中に導電性物質を含有させればよい。このような方法としては、例えば、金属酸化物の微粒子や帯電防止剤を予め練り込んでおく方法が好適である。上記金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化モリブデン等の結晶性金属酸化物、及び/又は、その複合酸化物の微粒子が挙げられる。
【0129】
上記帯電防止剤としては、エレクトロストリッパーA(花王(株)製)、エレノンNo.19(第一工業製薬(株)製)等のアルキル燐酸塩系アニオン界面活性剤;アモーゲンK(第一工業製薬(株)製)等のベタイン系両性界面活性剤;ニッサンノニオンL(日本油脂(株)製)等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル系非イオン界面活性剤;エマルゲン106、120、147、420、220、905、910(花王(株)製)やニッサンノニオンE(日本油脂(株)製)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系非イオン界面活性剤、等が好適である。その他、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルアミン系等のものが挙げられる。
【0130】
仮支持体上に導電性層を設ける場合、該導電性層は公知のものの中から、適宜選択して用いることができる。上記導電性層に用いる導電性物質として、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3等から選ばれる少なくとも1種の結晶性金属酸化物、及び/又は、その複合酸化物の微粒子等が挙げられる。これらの導電性物質を導電性層に含有させて用いる方法が湿度環境に影響されず、安定した導電効果を発揮する点で好ましい。
【0131】
また、上記結晶性金属酸化物又はその複合酸化物の微粒子の体積抵抗値としては、107Ω・cm以下が好ましく、105Ω・cm以下が更に好ましい。また、その粒子径としては、0.01〜0.7μmが好ましく、0.02〜0.5μmが更に好ましい。
【0132】
上記結晶性金属酸化物及びその複合酸化物の微粒子の製造方法は、特開昭56−143430号公報等に詳細に記載されている。即ち、第1に、金属酸化物微粒子を焼成によって作製し、導電性を向上させる異種原子の存在下で熱処理する方法、第2に、焼成によって金属酸化物微粒子を作製する際に導電性を向上させるための異種原子を共存させる方法、第3に、焼成により金属微粒子を作製する際に雰囲気中の酸素濃度を下げて、酸素欠陥を導入する方法等が記載されている。上記異種原子を含む具体例としては、ZnOに対してはAl、In等;TiO2に対してはNb、Ta等;、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等を存在させることが挙げられる。
【0133】
上記異種原子の添加量としては、0.01〜30mol%が好ましく、0.1〜10mol%がより好ましい。導電性粒子の使用量としては、0.05〜20g/m2が好ましく、0.1〜10g/m2がより好ましい。
【0134】
本発明の突起用転写材料の仮支持体に設けられる導電性層には、バインダーとして、例えば、ゼラチン、セルロースナイトレート、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、炭素数1〜4のアルキルアクリレート、ビニルピロリドン等を含むホモポリマー又は共重合体;可溶性ポリエステル、ポリカーボネート、可溶性ポリアミド等を使用することができる。
【0135】
また、これらのバインダー中に導電性粒子を分散する場合、チタン系分散剤又はシラン系分散剤等の分散液を添加してもよく、更に、必要に応じてバインダー架橋剤等を添加することもできる。
【0136】
上記チタン系分散剤としては、例えば、米国特許第4,069,192号公報、同第4,080,353号公報等に記載の、チタネート系カップリング剤、プレンアクト(味の素(株)製)などが挙げられる。上記シラン系分散剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、「シランカップリング剤」(信越化学工業(株)製)として市販されている。上記バインダー架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられる。
【0137】
上記導電性層は、導電性微粒子をバインダー中に分散させて仮支持体上に塗設したり、仮支持体上に下引処理(例えば、下塗り層等)を施した上に導電性微粒子を付着させたりすることにより設けることができる。
【0138】
上記導電性層は、仮支持体の突起用組成物層を塗設した面とは反対の表面上に設けてもよく、この場合には、十分な耐傷性を確保する目的で、導電性層上に更に疎水性重合体層を設けることが好ましい。この疎水性重合体層は、疎水性重合体を有機溶剤に溶解した状態又は水性ラテックスの状態で塗布すればよく、その塗布量としては、乾燥質量で0.05〜1g/m2程度が好ましい。
【0139】
上記疎水性重合体としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート等のセルロースエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアクリレート等を含むビニル系ポリマー;有機溶剤可溶性ポリアミド、ポリエステル等のポリマーを挙げることができる。
【0140】
上記疎水性重合体層には、スベリ性を付与する目的で、例えば、特開昭55−79435号公報に記載の有機カルボン酸アミド等のスベリ剤を使用することができる。また、必要に応じて、マット剤等を使用することもできる。このような疎水性重合体層を設けても、導電性層の効果は実質的に影響を受けない。
【0141】
また、下塗り層を設ける場合、特開昭51−135526号公報、米国特許第3,143,421号公報、同第3,586,508号公報、同第2,698,235号公報、同第3,567,452号公報等に記載の塩化ビニリデン系共重合体、特開昭51−114120号公報、米国特許第3,615,556号公報等に記載のブタジエン等のジオレフイン系共重合体、特開昭51−58469号公報等に記載のグリシジルアクリレート又はグリシジルメタアクリレート含有共重合体、特開昭48−24923号公報等に記載のポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、特開昭50−39536号公報に記載の無水マレイン酸含有共重合体等を用いることができる。
【0142】
本発明においては、特開昭56−82504号公報、特開昭56−143443号公報、特開昭57−104931号公報、特開昭57−118242号公報、特開昭58−62647号公報、特開昭60−258541号公報等に記載の導電性層も必要に応じて用いることができる。
【0143】
仮支持体上に、導電性層を塗布する場合、ローラーコート、エアナイフコート、グラビアコート、バーコート、カーテンコート等の公知の方法を用いることができる。十分な帯電防止効果を得るためには、導電性層又は導電性を付与した仮支持体の表面電気抵抗値を、1013Ω以下とすることが好ましく、1012Ω以下とすることが更に好ましい。
【0144】
また、熱可塑性樹脂層と仮支持体との強固な接着を防止するため、仮支持体面に公知の微粒子を含有する滑り剤組成物、シリコーン化合物を含有する離型剤組成物等を塗布することもできる。
【0145】
仮支持体の熱可塑性樹脂層を設けない側の表面に導電性層を設ける場合には、熱可塑性樹脂層と仮支持体との接着性を向上させる目的で、仮支持体に、例えば、グロー放電処理、コロナ処理、紫外線照射処理等の表面処理、フェノール性物質、ポリ塩化ビニリデン樹脂、スチレンブタジエンゴム、ゼラチン等の下塗り処理又はこれらの処理を組み合わせた処理を施すことができる。
【0146】
仮支持体用のフィルムは押し出し成形により形成することが可能であるが、導電性物質又は導電性層を仮支持体と同一又は異質のプラスチック原料に含有させ、上記フィルムと同時に押し出し成形した場合には、接着性、耐傷性に優れた導電性層を容易に得ることができる。この場合、上記疎水性重合体層や下塗り層を設ける必要はなく、転写材料を構成する導電性付与仮支持体として最も好ましい実施形態である。
【0147】
<突起用転写材料を用いたパターン形成方法>
続いて、本発明のパターン形成方法について説明する。ここでは、本発明に用いる突起用転写材料として、仮支持体上にアルカリ可溶な熱可塑性樹脂層、中間層、突起用組成物層及び表面保護フィルムがこの順に積層されてなる突起用転写材料を用い、更に、基体上の全面に画素(カラーフィルタ層)が設けられた基板(カラーフィルタ用基板)を用いた一例を示す。
【0148】
まず、本発明に用いる突起用転写材料の表面保護フィルムを取り除き、突起用組成物層を加圧、加熱下で被転写体であるカラーフィルタ用基板の画素の形成された側の表面上に密接し貼り合わせる。基板と突起用組成物層との貼り合わせには、従来公知のラミネーター、真空ラミネーター等の中から適宜選択したものが使用でき、より生産性を高めるには、オートカットラミネーターも使用可能である。
【0149】
この際、本発明のカラーフィルタの製造方法では少なくとも一層のナフトキノンジアジド誘導体を含む突起用転写材料をラミネートすることが好ましい。突起用転写材料をラミネートする方法には、ラミネートする前にあらかじめ基板を加熱しておく方法や、ラミネート時のラミネーターのロール温度を上げる方法や、ラミネート時のラミネーターを通過するときの基板の搬送速度を遅くする方法、などがある。
ラミネートする前にあらかじめ基板を加熱しておく方法では、基板温度を80℃以上180℃以下とすることが好ましく、100℃以上130℃以下とすることがより好ましい。基板を加熱するには、ホットプレートなどの接触型の加熱器を基板に接触させて用いることもできるし、また非接触で用いることもできる。また温風加熱器、IRヒーターなどの非接触型の加熱器を非接触で用いることもできる。基板温度が120℃未満であるとパターン形成後に画素の欠けを生じることがあり、基板温度が180℃を超えると突起用転写材料中の素材が分解し、感度変化、着色などを起こすことがある。
ラミネート時のラミネーターのロール温度を上げる方法では、そのロール温度を80℃以上160℃以下とすることが好ましく、80℃以上130℃以下とすることがより好ましい。ロール温度が80℃未満であるとパターン形成後に画素の欠けを生じることがあるし、ロール温度が160℃を超えると突起用転写材料中の素材が分解し、感度変化、着色などを起こしたり、転写材料と基板間にシワを生じたりすることがある。
【0150】
ラミネート時のラミネーターを通過するときの基板の搬送速度を遅くする方法では、搬送速度を1.0m/分以上10m/分以下とすることが好ましく、1.2m/分以上5m/分以下とすることがより好ましい。搬送速度を1.0m/分未満にすると性能上の不具合はないものの、生産性の低下が問題となることがあるし、10m/分を超えるとパターン形成後に画素の欠けを生じることがある。
【0151】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法では、突起用転写材料を基板に転写する転写工程と所望のパターンで露光する露光工程との間に、前記突起用転写材料を転写した基板を加熱する基板加熱工程を含むことが好ましい。この際の突起用転写材料はナフトキノンジアジド誘導体を含んでいても、含んでいなくてもよい。突起用転写材料を転写した基板を加熱する工程はホットプレートなどの接触型の加熱器を基板に接触させて用いることもできるし、また非接触で用いることもできる。また温風加熱器、IRヒーターなどの非接触型の加熱器を非接触で用いることもできる。この突起用転写材料を転写した基板を加熱する工程は120℃から180℃の温度範囲で、20秒から120秒の時間範囲で行うことが好ましく、120℃から150℃の温度範囲で、20秒から50秒の時間範囲で行うことがより好ましい。120℃未満、または20秒未満であるとパターン形成後に画素の欠けを生じることがあるし、180℃を超えると突起用転写材料中の素材が分解し、感度変化、着色などを起こすことがあるし、また120秒を超えると生産性の低下が問題となることがある。
【0152】
突起用転写材料を基板に転写した後、所望のパターンで露光する前に、仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥がし取るが、突起用転写材料を転写した基板を加熱する工程は、仮支持体を剥がし取る前に行ってもよいし、仮支持体を剥がし取った後に行ってもよい。
【0153】
さらに、本発明のカラーフィルタの製造方法では、少なくとも一層のナフトキノンジアジド誘導体を含む突起用転写材料を基板に転写する転写工程と所望のパターンで露光する露光工程との間に、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去する工程を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂層と中間層とを除去する工程は、公知の方法により行え、熱可塑性樹脂層と中間層とを溶解して突起用組成物層を溶解しないような溶剤若しくは水性の現像液、特にアルカリ水溶液などを用いて、例えば、(a)露光後の基板自体を現像浴中に浸漬する、(b)露光後の基板にスプレー等により噴霧する等して、更に必要に応じて、溶解性を高める目的で、回転ブラシや湿潤スポンジ等で擦ったり、超音波を照射しながら行うことができる。上記アルカリ水溶液としては、アルカリ性物質の希薄水溶液が好ましく、更に水混和性のある有機溶剤を少量添加したものも好適に使用することができる。上記アルカリ性物質としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩類、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩類、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩類、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等のアルカリ金属メタケイ酸塩類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、燐酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0154】
突起用転写材料を基板に転写した後、所望のパターンで露光する前に、仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥がし取るが、突起用転写材料の熱可塑性樹脂層と中間層とを除去する工程は、仮支持体を剥がし取った後に行うのが好ましい。
【0155】
これらの、突起用転写材料をラミネートする方法、転写工程と露光工程との間に突起用転写材料を転写した基板を加熱する方法、転写工程と露光工程との間に熱可塑性樹脂層と中間層とを除去する方法は、それぞれ単独で行ってもよいし、併せて行ってもよい。
【0156】
前述のように、突起用転写材料をラミネートし、及び/または、転写工程と露光工程との間に突起用転写材料を転写した基板を加熱し、及び/または、転写工程と露光工程との間に熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した後、熱可塑性樹脂層と中間層がある場合には、熱可塑性樹脂層の上方から熱可塑性樹脂層及び中間層を通して、また熱可塑性樹脂層と中間層がない場合には、突起用組成物層の上方から、突起用組成物層をポジ用の露光(パターニング)する。
【0157】
次に本発明におけるカラーフィルタの製造方法において、2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで2次元画像の形成を行う露光により突起用組成物を硬化する硬化工程について説明する。
【0158】
(2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査する露光の定義)
本発明に用いられる2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査する露光は、マスクレスパターン露光とも呼ばれることがある。露光光を透過させない、または、弱めて透過させる材質で画像(露光パターン、パターンとも言う)を形成した「マスク」と呼ばれる物体を露光光の光路に配置し、感光層を、該画像に対応したパターン状に露光する従来の露光方式(マスク露光と言う)に対し、前記の「マスク」を使用せずに感光層をパターン状に露光する露光方式の事である。
本発明に用いられるマスクレスパターン露光は、より詳しくは、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで2次元画像の形成を行う露光ということができる。
【0159】
(光源の説明)
マスクレスパターン露光では、光源として超高圧水銀灯や、レーザーが用いられる。
超高圧水銀灯とは、石英ガラスチューブなどに水銀を封入した放電灯であり水銀の蒸気圧を高く設定して発光効率を高めたものである(点灯時の水銀の蒸気圧はおよそ5MPaになるものもある W. Elenbaas : Light Sources 、Philips Technical Library 148-150)。輝線スペクトルのうち、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)が、中でも365nmが主として用いられる。
【0160】
レーザーとは、英語のLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光の増幅)の頭字語である。反転分布を持った物質中で起きる誘導放出の現象を利用し、光波の増幅、発振によって干渉性と指向性が一層強い単色光を作り出す発振器及び増幅器。励起媒質として結晶、ガラス、液体、色素、気体などあり、これらの媒質から固体レーザー(YAGレーザー)、液体レーザー、気体レーザー(アルゴンレーザー、He−Neレーザー、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー)、半導体レーザーなどの公知のレーザーを用いることができる。
【0161】
半導体レーザーは 搬送子の注入、電子ビームによる励起、衝突によるイオン化、光励起などによって電子と正孔とが接合部に流出する時、pn接合で可干渉光を誘導放出するような発光ダイオードを用いるレーザーである。この放出される可干渉光の波長は、半導体化合物によって決まる。
レーザーの波長は、特に限定されないが、中でも解像度とレーザー装置のコスト、入手のしやすさの観点から、半導体レーザーでは、300〜500nmの波長域から選択するのが好ましいが、340〜450nmがより好ましく、特に405nmは好ましい。
また固体レーザーでは、YAG-SHG固体レーザー の 532nmが挙げられる。更に、半導体励起固体レーザーでは 532・355・266nmが挙げられ、従来のレジスト用光重合開始剤が感度を有すという点では355nmが好ましく選ばれる。
気体レーザーでは、KrFレーザーの249nm ArFレーザーの193nmが用いられる。
これらの光源の中で、表示装置の製造工程で、感光性材料を露光する場合を考えると、露光波長が、410nmとなる光源を選択することが、表示領域の透過率を高くする観点で好ましい。
【0162】
本発明のマスクレスパターン露光(2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査する方法(相対走査露光))について説明する。
そのひとつの代表的な方法は、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス、例えば、1987年、米国テキサス・インスツルメンツの ラリー・ホーンベック博士他が開発した光半導体)のような、微小なミラーが二次元に並んだ空間変調素子を用いる方法である。
この場合、光源からの光は、適切な光学系によってDMD上に照射され、DMDに二次元に並んだ各ミラーからの反射光が、別の光学系などを経て、感光層上に、二次元に並んだ光点の像を形成する。このままでは光点と光点の間は露光されないが、前記二次元に並んだ光点の像を、二次元の並び方向に対して、やや傾いた方向に移動させると、最初の列の光点と光点の間を、後方の列の光点が露光する、という形で、感光層の全面を露光することができる。DMDの各ミラーの角度を制御し、前記光点をON-OFFする事で、画像パターンを形成することができる。このようなDMDを有す露光ヘッドを並べて用いることで色々な幅の基板に対応することができる。
前記DMDでは、前記光点の輝度は、ONかOFFの2階調しかないが、ミラー階調型空間変調素子を用いると、256階調の露光を行うことができる。
【0163】
一方、本発明の光を変調しながら相対走査する方法の、別の代表的な方法は、ポリゴンミラーを用いる方法である。ポリゴンミラー ( polygon mirror ) とは 周囲に一連の平面反射面を持った回転部材の事。感光層上に光源からの光を反射して照射するが、反射光の光点は、該平面鏡の回転によって走査される。この走査方向に対して直角に基板を移動させることで、基板上の感光層の全面を露光することができる。光源からの光の強度を適切な方法でON-OFFまたは、中間調に制御することで、画像パターンを形成することができる。光源からの光を複数本とすることで、走査時間を短縮することができる。
【0164】
本発明の光を変調しながら相対走査する方法としては、例えば、以下の方法も適用することができる。
特開平5−150175に記載のポリゴンミラーを用いて描画する例、特表2004−523101(WO2002/039793)に記載の下部レイヤの画像の一部を視覚的に取得し、ポリゴンミラーを用いた装置で上部レイヤの位置を下部レイヤ位置に揃えて露光する例、特開2004−56080に記載のDMD有する露光する例、特表2002−523905に記載のポリゴンミラー備えた露光装置、特開2001−255661に記載のポリゴンミラー備えた露光装置、特開2003−50469に記載のDMD、LD、多重露光の組み合わせ例、特開2003−156853に記載の基板の部位により露光量を変える露光方法の例、特開2005−43576に記載の位置ずれ調整を行う露光方法の例等である。
【0165】
以下、相対走査露光について詳細に説明する。
(相対走査露光)
本発明の露光方法としては超高圧水銀灯を用いる方法とレーザーを用いる方法があるが、好ましいのは後者である。
本発明で用いられるレーザーとしてはアルゴンレーザー、He−Neレーザー、半導体レーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザーなどの公知のレーザーを用いることができる。
レーザーの波長は、特に限定されないが、中でも、画像パターン(例えば、液晶配向制御突起)の解像度とレーザー装置のコスト、入手のしやすさの観点から、300〜500nmの波長域から選択するのが好ましいが、340〜450nmがより好ましく、特に405nmは好ましい。
レーザーのビーム径は、特に限定されないが、中でも、画像パターン(例えば、液晶配向制御突起)の解像度の観点から、ガウシアンビームの1/e2値で5〜30μmが好ましく、7〜20μmがより好ましい。
レーザービームのエネルギー量としては、特に限定されないが、中でも、露光時間と解像度の観点から、1〜100mJ/cm2が好ましく、5〜20mJ/cm2がより好ましい。
本発明ではレーザー光を画像データに応じて空間光変調することが必要である。この目的のため空間光変調素子であるデジタル・マイクロ・デバイスを用いることが好ましい。
【0166】
前記露光装置としては、例えば、下記の装置を用いて露光することができる。
【0167】
以下にレーザー光を用いた3次元露光装置の一例を示すが、本発明における露光装置はこれに限定されるものではない。
露光ユニットは、図1に示すように、感光材料150を表面に吸着して保持する平板状のステージ152を備えている。4本の脚部154に支持された厚い板状の設置台156の上面には、ステージ移動方向に沿って延びた2本のガイド158が設置されている。ステージ152は、その長手方向がステージ移動方向を向くように配置されると共に、ガイド158によって往復移動可能に支持されている。なお、この露光装置には、ステージ152をガイド158に沿って駆動するための図示しない駆動装置が設けられている。
【0168】
設置台156の中央部には、ステージ152の移動経路を跨ぐようにコ字状のゲート160が設けられている。コ字状のゲート160の端部の各々は、設置台156の両側面に固定されている。このゲート160を挟んで一方の側にはスキャナ162が設けられ、他方の側には感光材料150の先端及び後端を検知する複数(例えば、2個)の検知センサ164が設けられている。スキャナ162及び検知センサ164はゲート160に各々取り付けられて、ステージ152の移動経路の上方に固定配置されている。なお、スキャナ162及び検知センサ164は、これらを制御する図示しないコントローラに接続されている。
【0169】
スキャナ162は、図2及び図3(B)に示すように、m行n列(例えば、3行5列)の略マトリックス状に配列された複数(例えば、14個)の露光ヘッド166を備えている。この例では、感光材料150の幅との関係で、3行目には4個の露光ヘッド166を配置した。なお、m行目のn列目に配列された個々の露光ヘッドを示す場合は、露光ヘッド166mnと表記する。
【0170】
露光ヘッド166による露光エリア168は、副走査方向を短辺とする矩形状である。従って、ステージ152の移動に伴い、感光材料150には露光ヘッド166毎に帯状の露光済み領域170が形成される。なお、m行目のn列目に配列された個々の露光ヘッドによる露光エリアを示す場合は、露光エリア168mnと表記する。
【0171】
また、図3(A)及び(B)に示すように、帯状の露光済み領域170が副走査方向と直交する方向に隙間無く並ぶように、ライン状に配列された各行の露光ヘッドの各々は、配列方向に所定間隔(露光エリアの長辺の自然数倍、ここでは2倍)ずらして配置されている。このため、1行目の露光エリア16811と露光エリア16812との間の露光できない部分は、2行目の露光エリア16821と3行目の露光エリア16831とにより露光することができる。
【0172】
露光ヘッド16611〜166mn各々は、図4、図5(A)及び(B)に示すように、入射された光ビームを画像データに応じて各画素毎に変調する空間光変調素子として、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)50を備えている。このDMD50は、データ処理部とミラー駆動制御部とを備えた図示しないコントローラに接続されている。このコントローラのデータ処理部では、入力された画像データに基づいて、各露光ヘッド166毎にDMD50の制御すべき領域内の各マイクロミラーを駆動制御する制御信号を生成する。なお、制御すべき領域については後述する。また、ミラー駆動制御部では、画像データ処理部で生成した制御信号に基づいて、各露光ヘッド166毎にDMD50の各マイクロミラーの反射面の角度を制御する。なお、反射面の角度の制御に付いては後述する。
【0173】
DMD50の光入射側には、光ファイバの出射端部(発光点)が露光エリア168の長辺方向と対応する方向に沿って一列に配列されたレーザー出射部を備えたファイバアレイ光源66、ファイバアレイ光源66から出射されたレーザ光を補正してDMD上に集光させるレンズ系67、レンズ系67を透過したレーザー光をDMD50に向けて反射するミラー69がこの順に配置されている。
【0174】
レンズ系67は、ファイバアレイ光源66から出射されたレーザー光を平行光化する1対の組合せレンズ71、平行光化されたレーザー光の光量分布が均一になるように補正する1対の組合せレンズ73、及び光量分布が補正されたレーザー光をDMD上に集光する集光レンズ75で構成されている。組合せレンズ73は、レーザー出射端の配列方向に対しては、レンズの光軸に近い部分は光束を広げ且つ光軸から離れた部分は光束を縮め、且つこの配列方向と直交する方向に対しては光をそのまま通過させる機能を備えており、光量分布が均一となるようにレーザー光を補正する。
【0175】
また、DMD50の光反射側には、DMD50で反射されたレーザー光を感光材料150の走査面(被露光面)56上に結像するレンズ系54、58が配置されている。レンズ系54及び58は、DMD50と被露光面56とが共役な関係となるように配置されている。
【0176】
DMD50は、図6に示すように、SRAMセル(メモリセル)60上に、微小ミラー(マイクロミラー)62が支柱により支持されて配置されたものであり、画素(ピクセル)を構成する多数の(例えば、600個×800個)の微小ミラーを格子状に配列して構成されたミラーデバイスである。各ピクセルには、最上部に支柱に支えられたマイクロミラー62が設けられており、マイクロミラー62の表面にはアルミニウム等の反射率の高い材料が蒸着されている。なお、マイクロミラー62の反射率は90%以上である。また、マイクロミラー62の直下には、ヒンジ及びヨークを含む支柱を介して通常の半導体メモリの製造ラインで製造されるシリコンゲートのCMOSのSRAMセル60が配置されており、全体はモノリシック(一体型)に構成されている。
【0177】
DMD50のSRAMセル60にデジタル信号が書き込まれると、支柱に支えられたマイクロミラー62が、対角線を中心としてDMD50が配置された基板側に対して±α度(例えば±10度)の範囲で傾けられる。図7(A)は、マイクロミラー62がオン状態である+α度に傾いた状態を示し、図7(B)は、マイクロミラー62がオフ状態である−α度に傾いた状態を示す。従って、画像信号に応じて、DMD50の各ピクセルにおけるマイクロミラー62の傾きを、図6に示すように制御することによって、DMD50に入射された光はそれぞれのマイクロミラー62の傾き方向へ反射される。
【0178】
なお、図6には、DMD50の一部を拡大し、マイクロミラー62が+α度又は−α度に制御されている状態の一例を示す。それぞれのマイクロミラー62のオンオフ制御は、DMD50に接続された図示しないコントローラによって行われる。なお、オフ状態のマイクロミラー62により光ビームが反射される方向には、光吸収体(図示せず)が配置されている。
【0179】
また、DMD50は、その短辺が副走査方向と所定角度θ(例えば、1°〜5°)をなすように僅かに傾斜させて配置するのが好ましい。図8(A)はDMD50を傾斜させない場合の各マイクロミラーによる反射光像(露光ビーム)53の走査軌跡を示し、図8(B)はDMD50を傾斜させた場合の露光ビーム53の走査軌跡を示している。
【0180】
DMD50には、長手方向にマイクロミラーが多数個(例えば、800個)配列されたマイクロミラー列が、短手方向に多数組(例えば、600組)配列されているが、図8(B)に示すように、DMD50を傾斜させることにより、各マイクロミラーによる露光ビーム53の走査軌跡(走査線)のピッチP2が、DMD50を傾斜させない場合の走査線のピッチP1より狭くなり、解像度を大幅に向上させることができる。一方、DMD50の傾斜角は微小であるので、DMD50を傾斜させた場合の走査幅W2と、DMD50を傾斜させない場合の走査幅W1とは略同一である。
【0181】
また、異なるマイクロミラー列により同じ走査線上が重ねて露光(多重露光)されることになる。このように、多重露光されることで、露光位置の微少量をコントロールすることができ、高精細な露光を実現することができる。また、主走査方向に配列された複数の露光ヘッドの間のつなぎ目を微少量の露光位置制御により段差無くつなぐことができる。
【0182】
なお、DMD50を傾斜させる代わりに、各マイクロミラー列を副走査方向と直交する方向に所定間隔ずらして千鳥状に配置しても、同様の効果を得ることができる。
【0183】
ファイバアレイ光源66は、図9(A)に示すように、複数(例えば、6個)のレーザーモジュール64を備えており、各レーザモジュール64には、マルチモード光ファイバ30の一端が結合されている。マルチモード光ファイバ30の他端には、コア径がマルチモード光ファイバ30と同一で且つクラッド径がマルチモード光ファイバ30より小さい光ファイバ31が結合され、図9(C)に示すように、光ファイバ31の出射端部(発光点)が副走査方向と直交する主走査方向に沿って1列に配列されてレーザー出射部68が構成されている。なお、図9(D)に示すように、発光点を主走査方向に沿って2列に配列することもできる。
【0184】
光ファイバ31の出射端部は、図9(B)に示すように、表面が平坦な2枚の支持板65に挟み込まれて固定されている。また、光ファイバ31の光出射側には、光ファイバ31の端面を保護するために、ガラス等の透明な保護板63が配置されている。保護板63は、光ファイバ31の端面と密着させて配置してもよく、光ファイバ31の端面が密封されるように配置してもよい。光ファイバ31の出射端部は、光密度が高く集塵し易く劣化し易いが、保護板63を配置することにより端面への塵埃の付着を防止することができると共に劣化を遅らせることができる。
【0185】
ここでは、クラッド径が小さい光ファイバ31の出射端を隙間無く1列に配列するために、クラッド径が大きい部分で隣接する2本のマルチモード光ファイバ30の間にマルチモード光ファイバ30を積み重ね、積み重ねられたマルチモード光ファイバ30に結合された光ファイバ31の出射端が、クラッド径が大きい部分で隣接する2本のマルチモード光ファイバ30に結合された光ファイバ31の2つの出射端の間に挟まれるように配列されている。
【0186】
このような光ファイバは、例えば、図10に示すように、クラッド径が大きいマルチモード光ファイバ30のレーザー光出射側の先端部分に、長さ1〜30cmのクラッド径が小さい光ファイバ31を同軸的に結合することにより得ることができる。2本の光ファイバは、光ファイバ31の入射端面が、マルチモード光ファイバ30の出射端面に、両光ファイバの中心軸が一致するように融着されて結合されている。上述した通り、光ファイバ31のコア31aの径は、マルチモード光ファイバ30のコア30aの径と同じ大きさである。
【0187】
また、長さが短くクラッド径が大きい光ファイバにクラッド径が小さい光ファイバを融着させた短尺光ファイバを、フェルールや光コネクタ等を介してマルチモード光ファイバ30の出射端に結合してもよい。コネクタ等を用いて着脱可能に結合することで、クラッド径が小さい光ファイバが破損した場合等に先端部分の交換が容易になり、露光ヘッドのメンテナンスに要するコストを低減できる。なお、以下では、光ファイバ31を、マルチモード光ファイバ30の出射端部と称する場合がある。
【0188】
マルチモード光ファイバ30及び光ファイバ31としては、ステップインデックス型光ファイバ、グレーテッドインデックス型光ファイバ、及び複合型光ファイバの何れでもよい。例えば、三菱電線工業(株)製のステップインデックス型光ファイバを用いることができる。ここでは、マルチモード光ファイバ30及び光ファイバ31は、ステップインデックス型光ファイバであり、マルチモード光ファイバ30は、クラッド径=125μm、コア径=25μm、NA=0.2、入射端面コートの透過率=99.5%以上であり、光ファイバ31は、クラッド径=60μm、コア径=25μm、NA=0.2である。
【0189】
一般に、赤外領域のレーザー光では、光ファイバのクラッド径を小さくすると伝搬損失が増加する。このため、レーザー光の波長帯域に応じて好適なクラッド径が決定されている。しかしながら、波長が短いほど伝搬損失は少なくなり、GaN系半導体レーザーから出射された波長405nmのレーザー光では、クラッドの厚み{(クラッド径−コア径)/2}を800nmの波長帯域の赤外光を伝搬させる場合の1/2程度、通信用の1.5μmの波長帯域の赤外光を伝搬させる場合の約1/4にしても、伝搬損失は殆ど増加しない。従って、クラッド径を60μmと小さくすることができる。
【0190】
但し、光ファイバ31のクラッド径は60μmには限定されない。従来のファイバ光源に使用されている光ファイバのクラッド径は125μmであるが、クラッド径が小さくなるほど焦点深度がより深くなるので、マルチモード光ファイバのクラッド径は80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。一方、コア径は少なくとも3〜4μm必要であることから、光ファイバ31のクラッド径は10μm以上が好ましい。
【0191】
レーザーモジュール64は、図11に示す合波レーザー光源(ファイバ光源)によって構成されている。この合波レーザー光源は、ヒートブロック10上に配列固定された複数(例えば、7個)のチップ状の横マルチモード又はシングルモードのGaN系半導体レーザーLD1,LD2,LD3,LD4,LD5,LD6,及びLD7と、GaN系半導体レーザLD1〜LD7の各々に対応して設けられたコリメータレンズ11,12,13,14,15,16,及び17と、1つの集光レンズ20と、1本のマルチモード光ファイバ30と、から構成されている。なお、半導体レーザーの個数は7個には限定されない。例えば、クラッド径=60μm、コア径=50μm、NA=0.2のマルチモード光ファイバには、20個もの半導体レーザー光を入射することが可能であり、露光ヘッドの必要光量を実現して、且つ光ファイバ本数をより減らすことができる。
【0192】
GaN系半導体レーザーLD1〜LD7は、発振波長が総て共通(例えば、405nm)であり、最大出力も総て共通(例えば、マルチモードレーザでは100mW、シングルモードレーザーでは30mW)である。なお、GaN系半導体レーザーLD1〜LD7としては、350nm〜450nmの波長範囲で、上記の405nm以外の発振波長を備えるレーザーを用いてもよい。
【0193】
上記の合波レーザー光源は、図12及び図13に示すように、他の光学要素と共に、上方が開口した箱状のパッケージ40内に収納されている。パッケージ40は、その開口を閉じるように作成されたパッケージ蓋41を備えており、脱気処理後に封止ガスを導入し、パッケージ40の開口をパッケージ蓋41で閉じることにより、パッケージ40とパッケージ蓋41とにより形成される閉空間(封止空間)内に上記合波レーザー光源が気密封止されている。
【0194】
パッケージ40の底面にはベース板42が固定されており、このベース板42の上面には、前記ヒートブロック10と、集光レンズ20を保持する集光レンズホルダー45と、マルチモード光ファイバ30の入射端部を保持するファイバホルダー46とが取り付けられている。マルチモード光ファイバ30の出射端部は、パッケージ40の壁面に形成された開口からパッケージ外に引き出されている。
【0195】
また、ヒートブロック10の側面にはコリメータレンズホルダー44が取り付けられており、コリメータレンズ11〜17が保持されている。パッケージ40の横壁面には開口が形成され、この開口を通してGaN系半導体レーザーLD1〜LD7に駆動電流を供給する配線47がパッケージ外に引き出されている。
【0196】
なお、図13においては、図の煩雑化を避けるために、複数のGaN系半導体レーザーのうちGaN系半導体レーザーLD7にのみ番号を付し、複数のコリメータレンズのうちコリメータレンズ17にのみ番号を付している。
【0197】
図14は、上記コリメータレンズ11〜17の取り付け部分の正面形状を示すものである。コリメータレンズ11〜17の各々は、非球面を備えた円形レンズの光軸を含む領域を平行な平面で細長く切り取った形状に形成されている。この細長形状のコリメータレンズは、例えば、樹脂又は光学ガラスをモールド成形することによって形成することができる。コリメータレンズ11〜17は、長さ方向がGaN系半導体レーザLD1〜LD7の発光点の配列方向(図14の左右方向)と直交するように、上記発光点の配列方向に密接配置されている。
【0198】
一方、GaN系半導体レーザーLD1〜LD7としては、発光幅が2μmの活性層を備え、活性層と平行な方向、直角な方向の拡がり角が各々例えば10°、30°の状態で各々レーザビームB1〜B7を発するレーザーが用いられている。これらGaN系半導体レーザーLD1〜LD7は、活性層と平行な方向に発光点が1列に並ぶように配設されている。
【0199】
従って、各発光点から発せられたレーザービームB1〜B7は、上述のように細長形状の各コリメータレンズ11〜17に対して、拡がり角度が大きい方向が長さ方向と一致し、拡がり角度が小さい方向が幅方向(長さ方向と直交する方向)と一致する状態で入射することになる。つまり、各コリメータレンズ11〜17の幅が1.1mm、長さが4.6mmであり、それらに入射するレーザービームB1〜B7の水平方向、垂直方向のビーム径は各々0.9mm、2.6mmである。また、コリメータレンズ11〜17の各々は、焦点距離f1=3mm、NA=0.6、レンズ配置ピッチ=1.25mmである。
【0200】
集光レンズ20は、非球面を備えた円形レンズの光軸を含む領域を平行な平面で細長く切り取って、コリメータレンズ11〜17の配列方向、つまり水平方向に長く、それと直角な方向に短い形状に形成されている。この集光レンズ20は、焦点距離f2=23mm、NA=0.2である。この集光レンズ20も、例えば、樹脂又は光学ガラスをモールド成形することにより形成される。
【0201】
次に、上記露光装置の動作について説明する。
スキャナ162の各露光ヘッド166において、ファイバアレイ光源66の合波レーザー光源を構成するGaN系半導体レーザーLD1〜LD7の各々から発散光状態で出射したレーザビームB1,B2,B3,B4,B5,B6,及びB7の各々は、対応するコリメータレンズ11〜17によって平行光化される。平行光化されたレーザービームB1〜B7は、集光レンズ20によって集光され、マルチモード光ファイバ30のコア30aの入射端面に収束する。
【0202】
ここでは、コリメータレンズ11〜17及び集光レンズ20によって集光光学系が構成され、その集光光学系とマルチモード光ファイバ30とによって合波光学系が構成されている。即ち、集光レンズ20によって上述のように集光されたレーザービームB1〜B7が、このマルチモード光ファイバ30のコア30aに入射して光ファイバ内を伝搬し、1本のレーザービームBに合波されてマルチモード光ファイバ30の出射端部に結合された光ファイバ31から出射する。
【0203】
各レーザーモジュールにおいて、レーザービームB1〜B7のマルチモード光ファイバ30への結合効率が0.85で、GaN系半導体レーザーLD1〜LD7の各出力が30mWの場合には、アレイ状に配列された光ファイバ31の各々について、出力180mW(=30mW×0.85×7)の合波レーザービームBを得ることができる。従って、6本の光ファイバ31がアレイ状に配列されたレーザー出射部68での出力は約1W(=180mW×6)である。
【0204】
ファイバアレイ光源66のレーザー出射部68には、この通り高輝度の発光点が主走査方向に沿って一列に配列されている。単一の半導体レーザーからのレーザー光を1本の光ファイバに結合させる従来のファイバ光源は低出力であるため、多数列配列しなければ所望の出力を得ることができなかったが、合波レーザー光源は高出力であるため、少数列、例えば1列でも所望の出力を得ることができる。
【0205】
例えば、半導体レーザーと光ファイバを1対1で結合させた従来のファイバ光源では、通常、半導体レーザーとしては出力30mW(ミリワット)程度のレーザーが使用され、光ファイバとしてはコア径50μm、クラッド径125μm、NA(開口数)0.2のマルチモード光ファイバが使用されているので、約1W(ワット)の出力を得ようとすれば、マルチモード光ファイバを48本(8×6)束ねなければならず、発光領域の面積は0.62mm2(0.675mm×0.925mm)であるから、レーザー出射部68での輝度は1.6×106(W/m2)、光ファイバ1本当りの輝度は3.2×106(W/m2)である。
【0206】
これに対して上述した通り、マルチモード光ファイバ6本で約1Wの出力を得ることができ、レーザー出射部68での発光領域の面積は0.0081mm2(0.325mm×0.025mm)であるから、レーザー出射部68での輝度は123×106(W/m2)となり、従来に比べ約80倍の高輝度化を図ることができる。また、光ファイバ1本当りの輝度は90×106(W/m2)であり、従来に比べ約28倍の高輝度化を図ることができる。
【0207】
ここで、図15(A)及び(B)を参照して、露光ヘッドによる焦点深度の違いについて説明する。図15(A)において、露光ヘッドのバンドル状ファイバ光源の発光領域の副走査方向の径は0.675mmであり、図15(B)において、露光ヘッドのファイバアレイ光源の発光領域の副走査方向の径は0.025mmである。図15(A)に示すように、この露光ヘッドでは、光源(バンドル状ファイバ光源)1の発光領域が大きいので、DMD3へ入射する光束の角度が大きくなり、結果として走査面5へ入射する光束の角度が大きくなる。このため、集光方向(ピント方向のずれ)に対してビーム径が太りやすい。
【0208】
一方、図15(B)に示すように、この露光ヘッドでは、ファイバアレイ光源66の発光領域の副走査方向の径が小さいので、レンズ系67を通過してDMD50へ入射する光束の角度が小さくなり、結果として走査面56へ入射する光束の角度が小さくなる。即ち、焦点深度が深くなる。この例では、発光領域の副走査方向の径は従来の約30倍になっており、略回折限界に相当する焦点深度を得ることができる。従って、微小スポットの露光に好適である。この焦点深度への効果は、露光ヘッドの必要光量が大きいほど顕著であり、有効である。この例では、露光面に投影された1画素サイズは10μm×10μmである。なお、DMDは反射型の空間変調素子であるが、図15(A)及び(B)は、光学的な関係を説明するために展開図とした。
【0209】
露光パターンに応じた画像データが、DMD50に接続された図示しないコントローラに入力され、コントローラ内のフレームメモリに一旦記憶される。この画像データは、画像を構成する各画素の濃度を2値(ドットの記録の有無)で表したデータである。
【0210】
感光材料150を表面に吸着したステージ152は、図示しない駆動装置により、ガイド158に沿ってゲート160の上流側から下流側に一定速度で移動される。ステージ152がゲート160下を通過する際に、ゲート160に取り付けられた検知センサ164により感光材料150の先端が検出されると、フレームメモリに記憶された画像データが複数ライン分ずつ順次読み出され、データ処理部で読み出された画像データに基づいて各露光ヘッド166毎に制御信号が生成される。そして、ミラー駆動制御部により、生成された制御信号に基づいて各露光ヘッド166毎にDMD50のマイクロミラーの各々がオンオフ制御される。
【0211】
ファイバアレイ光源66からDMD50にレーザー光が照射されると、DMD50のマイクロミラーがオン状態のときに反射されたレーザー光は、レンズ系54、58により感光材料150の被露光面56上に結像される。このようにして、ファイバアレイ光源66から出射されたレーザー光が画素毎にオンオフされて、感光材料150がDMD50の使用画素数と略同数の画素単位(露光エリア168)で露光される。また、感光材料150がステージ152と共に一定速度で移動されることにより、感光材料150がスキャナ162によりステージ移動方向と反対の方向に副走査され、各露光ヘッド166毎に帯状の露光済み領域170が形成される。
【0212】
図16(A)及び(B)に示すように、DMD50には、主走査方向にマイクロミラーが800個配列されたマイクロミラー列が、副走査方向に600組配列されているが、ここではコントローラにより一部のマイクロミラー列(例えば、800個×100列)だけが駆動されるように制御する。
【0213】
図16(A)に示すように、DMD50の中央部に配置されたマイクロミラー列を使用してもよく、図16(B)に示すように、DMD50の端部に配置されたマイクロミラー列を使用してもよい。また、一部のマイクロミラーに欠陥が発生した場合は、欠陥が発生していないマイクロミラー列を使用するなど、状況に応じて使用するマイクロミラー列を適宜変更してもよい。
【0214】
DMD50のデータ処理速度には限界があり、使用する画素数に比例して1ライン当りの変調速度が決定されるので、一部のマイクロミラー列だけを使用することで1ライン当りの変調速度が速くなる。一方、連続的に露光ヘッドを露光面に対して相対移動させる露光方式の場合には、副走査方向の画素を全部使用する必要はない。
【0215】
例えば、600組のマイクロミラー列の内、300組だけ使用する場合には、600組全部使用する場合と比較すると1ライン当り2倍速く変調することができる。また、600組のマイクロミラー列の内、200組だけ使用する場合には、600組全部使用する場合と比較すると1ライン当り3倍速く変調することができる。即ち、副走査方向に500mmの領域を17秒で露光できる。更に、100組だけ使用する場合には、1ライン当り6倍速く変調することができる。即ち、副走査方向に500mmの領域を9秒で露光できる。
【0216】
使用するマイクロミラー列の数、即ち、副走査方向に配列されたマイクロミラーの個数は、10以上で且つ200以下が好ましく、10以上で且つ100以下がより好ましい。1画素に相当するマイクロミラー1個当りの面積は15μm×15μmであるから、DMD50の使用領域に換算すると、12mm×150μm以上で且つ12mm×3mm以下の領域が好ましく、12mm×150μm以上で且つ12mm×1.5mm以下の領域がより好ましい。
【0217】
使用するマイクロミラー列の数が上記範囲にあれば、図17(A)及び(B)に示すように、ファイバアレイ光源66から出射されたレーザー光をレンズ系67で略平行光化して、DMD50に照射することができる。DMD50によりレーザー光を照射する照射領域は、DMD50の使用領域と一致することが好ましい。照射領域が使用領域よりも広いとレーザー光の利用効率が低下する。
【0218】
一方、DMD50上に集光させる光ビームの副走査方向の径を、レンズ系67により副走査方向に配列されたマイクロミラーの個数に応じて小さくする必要があるが、使用するマイクロミラー列の数が10未満であると、DMD50に入射する光束の角度が大きくなり、走査面56における光ビームの焦点深度が浅くなるので好ましくない。また、使用するマイクロミラー列の数が200以下が変調速度の観点から好ましい。なお、DMDは反射型の空間変調素子であるが、図17(A)及び(B)は、光学的な関係を説明するために展開図とした。
【0219】
スキャナ162による感光材料150の副走査が終了し、検知センサ164で感光材料150の後端が検出されると、ステージ152は、図示しない駆動装置により、ガイド158に沿ってゲート160の最上流側にある原点に復帰し、再度、ガイド158に沿ってゲート160の上流側から下流側に一定速度で移動される。
【0220】
以上説明した通り、露光ユニット(露光装置)は、主走査方向にマイクロミラーが800個配列されたマイクロミラー列が、副走査方向に600組配列されたDMDを備えているが、コントローラにより一部のマイクロミラー列だけが駆動されるように制御するので、全部のマイクロミラー列を駆動する場合に比べて、1ライン当りの変調速度が速くなる。これにより高速での露光が可能になる。
【0221】
次に上記露光工程の後、現像処理して、熱可塑性樹脂層と中間層がある場合には熱可塑性樹脂層と中間層と感光性樹脂層の不要部(ポジの場合は、露光部分)を、熱可塑性樹脂層と中間層がない場合には感光性樹脂層の不要部(ポジの場合は、露光部分)を除去する。すると、未照射部(ポジ型の場合)のみが導電層上に残り、パターンが形成される。
【0222】
上記現像は、公知の方法により行え、溶剤若しくは水性の現像液、特にアルカリ水溶液等を用いて、例えば、(a)露光後の基板自体を現像浴中に浸漬する、(b)露光後の基板にスプレー等により噴霧する等して、更に必要に応じて、溶解性を高める目的で、回転ブラシや湿潤スポンジ等で擦ったり、超音波を照射しながら行うことができる。
【0223】
上記アルカリ水溶液としては、上述したアルカリ性物質の希薄水溶液が好ましく、アルカリ性物質などの具体例は上述と同様のものが挙げられる。
【0224】
本発明の突起用転写材料を用いて液晶配向制御突起やスペーサーの一部を形成する場合、露光、現像後に、ベークと呼ばれる熱処理を行うことにより、パターンをより硬化させることができる。また、ベークを行うことにより、パターンの収縮、適度な流動によってパターンの形状を適度になだらかにすることができる。
【0225】
上記ベークの温度は、好ましくは200℃〜300℃、より好ましくは220℃〜260℃、最も好ましくは230℃〜250℃である。上記ベークの時間は、好ましくは10〜120分、更に好ましくは20〜70分、最も好ましくは30〜60分である。このように温度及び時間を設定して上記ベークを行うことで、突起用組成物中の架橋反応が進行しやすく、カラーフィルタの変色を防止し生産性を高めることができる。
【0226】
《液晶配向制御突起》
液晶配向制御突起のパターンは、前述のように本発明に用いる突起用転写材料の突起用組成物層を基板上に転写し(転写工程)、転写後、感光性樹脂層に光をパターン状に照射し(パターニング工程)、現像処理により不要部(露光部)を除去することによって形成することができる。また、転写の代わりに突起用組成物用塗布液を塗布して突起用組成物層を形成してもよい。
上述のようにして形成される液晶配向制御突起は、液晶分子の配向の向きを規制し得る形状及び形態を有していればよく、その形状、形態には特に制限はない。液晶配向制御突起の形状としては、公知の形状の中から適宜選択することができ、例えば、基板面(又はカラーフィルタ面)を底面とする角錐型(三角錐、四角錐等)、半球型のものや、基板面(又はカラーフィルタ面)を底面とする円錐型、台形型、蒲鉾型のもの、又は、帯状に基板上(又はカラーフィルタ上)に形成されその長さ方向と直交する断面形状が三角形である三角柱状のもの、更に、その長さ方向と直交する断面形状が半円形、四角形、台形、蒲鉾形等の柱状体のものなどを用いることができる。液晶配向制御突起は、例えば、特許第2947350号公報等に記載された形状等に形成することができる。
【0227】
また、液晶配向制御突起の配置態様としては、公知の態様の中から適宜選択することができ、例えば、特許第2947350号公報等に記載の態様で形成できる。例えば、帯状に基板上に形成されその長さ方向と直交する断面形状が台形である複数の柱状体が等ピッチで1方向に平行に延びたパターンで配置され、且つ2枚の基板の各導電層と基板との両方の間に設けられてなる態様であってもよい(特許第2947350号公報の図14参照)。本発明の液晶配向制御突起が両方の基板の導電層基板との間に設けられる場合には、必ずしも同形状の構造体を形成する必要はなく、異形状の構造体を組合せて形成してもよい。また、基板(又はカラーフィルタ)上に帯状に形成される液晶配向制御突起は、直線状の形態に限られず、所定の角度をなして屈曲状の形態で設けられてもよい(特許第2947350号公報の図42及び図55等参照)。
【0228】
その他、上記液晶配向制御突起の大きさ、配置間隔、配置形状等の詳細については、特許第2947350号公報等の記載を参照できる。
【0229】
上記パターンの形状の中でも、十分な視野角が得られる点で、基板と直交する断面が台形及び蒲鉾形のいずれかの形状を有するパターンが好ましく、上記した基板面(又はカラーフィルタ面)を底面とする台形型、蒲鉾型や、帯状に基板(カラーフィルタ)上に形成され、その長さ方向と直交する断面形状が半円形、台形、蒲鉾形の柱状体などが好ましい。
【0230】
また本発明に用いる突起用転写材料を用いてスペーサーの一部を形成することもできる。この場合、例えば、カラーフィルタの形成時に、カラーフィルタの画素材料等が2種以上重なった部分を形成しておき、透明電極などを形成後、この上に、本発明に用いる突起用転写材料の突起用組成物層を転写することによってスペーサーの一部を形成することができる。
上記スペーサーの厚みは、一般にはセルギャップと等しくする必要があり、液晶配向制御突起の厚みより厚いが、前述の構成では、カラーフィルタ材の厚みとスペーサーの厚みの合計の厚みでセルギャップを規定できるので、突起用組成物層を厚く形成する必要は無い。このため、液晶配向制御突起とスペーサーとを同時に形成することができる。
【0231】
以上の通り、本発明のパターン形成方法により液晶配向制御突起を、導電層の内側(導電層と液晶層との間)に液晶層側に凸部となるように設けることによって、構造体の凸部面に沿って液晶分子の配向の向きが傾斜するように規制されるので、液晶面を観察する位置(視野角)に依存しない広視野角を確保することができる。
【0232】
本発明のカラーフィルタを有する液晶表示装置は、一般には、カラーフィルタと該カラーフィルタ上に導電層(電極)とを備えるカラーフィルタ側基板と、これと対向配置される導電層(電極)付きの対向基板との2枚の基板(前記カラーフィルタ側基板及び対向基板のいずれに薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子が備えられていてもよい。)によって液晶層が挟持されてなる。上述の方法により形成された液晶配向制御突起は、前記2枚の基板にそれぞれ設けられた導電層の少なくとも一方の内側(特に基板と導電層の間)に、液晶層側に凸部となるパターンとして設けられる。本発明の液晶配向制御突起を設けることで、液晶分子の配向の向きを規制し、液晶面に対する観察位置(視野角)に依存しない広視野角を確保することができる。
【0233】
また、上述のように液晶配向制御突起は、カラーフィルタの無い液晶表示装置(白黒表示のための装置、あるいは、バックライトの色を短時間に変更しながら表示するフィールドシーケンシャル型の装置)に適用することもできる。
【0234】
《液晶表示装置》
本発明の液晶表示装置は、互いに対向し合う側の表面に導電層が設けられた2枚の基板間に液晶層が挟持され、既述の液晶配向制御突起を基板上の導電層の外側(導電層と液晶層との間)から液晶層側に凸部となるように備えて構成することができる。また、導電層上にはこれらを覆って配向膜を形成することもできる。
【0235】
本発明の液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(1)薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という場合がある。)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、画素及び対向電極(導電層)を備えるカラーフィルタ側基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成されるもの、(2)画素が上記駆動側基板に直接形成されたカラーフィルタ一体型駆動基板と、対向電極(導電層)を備える対向基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成されるもの等が挙げられる。
【0236】
上記導電層としては、例えば、ITO膜;Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属膜;SiO2等の金属酸化膜などが挙げられ、中でも透明性のものが好ましく、ITO膜が特に好ましい。上記駆動側基板、カラーフィルタ側基板、対向基板は、その基材として、例えば、ソーダガラス板、低膨張ガラス板、ノンアルカリガラス板、石英ガラス板等の公知のガラス板、或いはプラスチックフィルム等を用いて構成される。
【0237】
TFT等の駆動素子と画素電極とが配列形成された駆動側基板としては、例えば、互いに垂直に交わってマトリックス状に配設されたデータバスライン及びゲートバスラインと接続されたTFT、及びTFTを介してデータバスラインと接続する導電層が設けられたものなどが挙げられる。
【0238】
上記態様のいずれにおいても、液晶表示素子を構成する基板の両方に導電層が形成され、該両導電層間に電圧が印加されその間に挟持される液晶材料がその電圧に応じて配向状態を変化させ表示を行う。従って、既述の構造体は、いずれの導電層の内側(導電層と基板の間)にも所望の形状、形態で形成することができる。
【0239】
液晶表示装置における液晶配向制御突起の設置箇所について図18を用いて説明する。図18は、液晶配向制御突起を用いた液晶表示装置を示す概略図である。図18において、液晶表示装置10は、ガラス基板12と、導電層14と、液晶分子15を含む液晶層16と、導電層18と、画素24と、ガラス基板20とをこの順で積層した構造を有している。図18において液晶配向制御突起22は、導電層14と液晶層16との間、及び、導電層18と液晶層16との間に設けることができる。尚、液晶配向制御突起22と液晶層16との間には、液晶配向膜(ポリイミド膜)が設けられていてもよい。
【0240】
上記構成態様(1)について上述の図18を用いて説明する。上記構成態様(1)の一例としては、上述の図18で示される液晶表示装置が挙げられる。図18を例に説明すると、一方の基板30は、カラーフィルタ側基板である。ガラス基板20の液晶層16に対向する側の表面には、画素24、共通電極をなす導電層(ITO膜)18、及び、等ピッチで形成された断面台形の液晶配向制御突起22が形成されている。更に、導電層18及び液晶配向制御突起22と液晶層16との間には、図示を省略する配向膜を設けることができる。他方の基板32は、TFTを備える駆動側基板である。基板32の液晶層16に対向する側の表面には、TFT(図示せず)、該TFTのドレイン電極と接合する導電層(ITO膜)14、及び、等ピッチで形成された断面台形の液晶配向制御突起22(図18では1個のみ示す)が形成されている。上記基板32には、図示を省略するゲート電極をなすゲートバスラインが複数本形成されており、該ゲートバスラインに直交して図示を省略する複数本のデータバスラインが平行に形成され、これらゲートバスラインとデータバスラインの交点に対応して複数個のTFTが配列されている。更に、TFT、導電層14及び液晶配向制御突起22と液晶層16との間には、図示を省略する配向膜を設けることができる。上記基板30及び基板32の間には、液晶材料を封入してなる液晶層16が挟持され、液晶配向制御突起22は導電層18又は14の外側から液晶層16側に凸部に突起し、該凸部面に沿って液晶分子15が配向している。
【0241】
以上の通り、本発明の液晶表示装置は、基板の導電層の内側(導電層と液晶層の間)に、着色のない透明な液晶配向制御突起が設けられるので、液晶表示面に対する観察位置(視野角)に依存しない広視野角を確保することができると共に、3原色(B(青色)、G(緑色)、R(赤色))の色純度をも損なわれず、色相ズレのない鮮明なフルカラー画像を表示し得る液晶表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0242】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、「分子量」とは「質量平均分子量」のことを示す。
【0243】
(実施例1)
−転写材料(1)の作製−
仮支持体として、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を準備し、該仮支持体上に、下記組成からなる熱可塑性樹脂層用塗布液H1を塗布、乾燥して、乾燥層厚14.6μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0244】
<熱可塑性樹脂層用塗布液H1の組成>
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、分子量=8万、Tg≒70℃)のメチルエチルケトン、1−メトキシプロピル−2−アセテート溶液(三井化学(株)製、FM−601) 55.5部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=63/37、
分子量=7000、Tg≒100℃)のメタノール、メチルエチルケトン、1−メトキシプロピル−2−アセテート溶液(日本触媒(株)製、アロセット7055) 64.8部
・ビスフェノールAにペンタエチレングリコールモノメタクリートを2当量脱水縮合した化合物の1−メトキシプロピル−2−アセテート溶液(新中村化学工業(株)製、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン) 18.1部
・C6F13CH2CH2OCOCH=CH2、H(OCH (CH3) CH2)7OCOCH=CH2、H(OCHCH2)7OCOCH=CH2の共重合体(共重合モル組成比(質量比)=40/55/5、分子量=3万)のメチルエチルケトン溶液(大日本インキ化学工業(株)製 メガファックF−780F) 1.08部
・メチルエチルケトン 60.5部
【0245】
続いて、上記熱可塑性樹脂層上に、下記組成よりなる中間層用塗布液B1を塗布、乾燥して、乾燥層厚1.6μmの中間層を形成した。
<中間層用塗布液B1の組成>
・ポリビニルアルコール(鹸化度88%、重合度500)((株)クラレ製PVA−205 3.22部
・ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン製:PVP K−30)
1.49部
・メタノール 42.9部
・蒸留水 52.4部
【0246】
続いて、下記組成よりなる突起用組成物層用塗布液T1を調製し、上記中間層上に更に塗布し、乾燥して乾燥層厚1.8μmの突起用組成物層を積層した。
<突起用組成物層用塗布液T1の組成>
・ポジ型レジスト液(富士エレクトロニクスマテリアルズ(株)製FH−2413F、フェノールノボラック樹脂(14〜20質量%)とナフトキノンジアジドエステル(4〜8質量%)含有) 53.3部
・メチルエチルケトン 46.7部
・メガファックF−780F(大日本インキ化学工業(株)製) 0.04部
【0247】
更に、上記突起用組成物層上に、表面保護フィルムとしてOSM−Nフィルム(Tredegar Film Products製、23μm)を圧着貼付して設け、仮支持体上に、熱可塑性樹脂層、中間層、突起用組成物層、表面保護フィルムがこの順に積層された転写材料(1)を作製した。
【0248】
−カラーフィルタ用基板の作製−
まず、所定サイズのガラス基板に、以下に示す濃色感光性樹脂組成物K1を用いて高さ1.0μm、130μmの開口部を有する線幅13μmのストライプ状濃色離画壁パターンと額縁状の遮光部を形成した。
次いで、インクジェット装置を用い、R、G、Bそれぞれのインクを濃色離画壁の間隙に付与して着色した。R、G、Bそれぞれのインクは以下の用にして得た。
下記の成分のうち、先ず、顔料、高分子分散剤及び溶剤を混合し、3本ロールとビーズミルを用いて顔料分散液を得、その顔料分散液をディソルバー等で十分攪拌しながら、その他の材料を少量ずつ添加し、R(赤色)インクを調製した。
〈Rインクの組成〉
・顔料(C.I.ピグメントレッド254) 5部
・高分子分散剤(AVECIA社製ソルスパース24000) 1部
・バインダー(グリシジルメタクリレート−スチレン共重合体) 3部
・第一エポキシ樹脂(ノボラック型エポキシ樹脂、油化シェル社製エピコート154) 2部
・第二エポキシ樹脂(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル) 5部
・硬化剤(トリメリット酸) 4部
・溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 80部
【0249】
上記組成中のC.I.ピグメントレッド254に代えてC.I.ピグメントグリーン36を同量用いるほかはRインクの場合と同様にしてG(緑色)インキを調製した。さらに、上記組成中のC.I.ピグメントレッド254に代えてC.I.ピグメントブルー15:6を同量用いるほかはRインクの場合と同様にしてB(青色)インクを調製した。
画素着色後のカラーフィルターを230℃オーブン中で30分ベークすることで、濃色離画壁、各画素共に完全に硬化させた。
更にこの上に透明電極膜をITOのスパッタリングにより形成してカラーフィルタ用基板を得た。
【0250】
<濃色感光性樹脂組成物K1の組成>
・黒顔料分散物1(カーボンブラックを13.1%、分散剤1(下記化1)を0.65%、ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3.7万)を6.72%、1−メトキシプロピル−2−アセテートを残部) 25部
・1−メトキシプロピル−2−アセテート 8.0部
・メチルエチルケトン 53部
・バインダー1(共重合組成がモル比でベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22のランダム共重合物、分子量3.8万を27%、1−メトキシプロピル−2−アセテート 73%) 9.1部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002部
・DPHA液 (ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを主成分とする日本化薬(株)商品名 KAYARAD DPHA(重合禁止剤MEHQ500ppm含有)を76% 1−メトキシプロピル−2−アセテート を24%) 4.2部
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4'−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチルアミノ)−3'−ブロモフェニル]−s−トリアジン 0.16部
・メガファックF−780F(大日本インキ化学工業(株)製) 0.044部
【0251】
【化1】

【0252】
−突起用組成物の付与−
続いて、上記より得た転写材料(1)から表面保護フィルムを剥がし、その突起用組成物層の表面と上記カラーフィルタ用基板のITO膜が設けられた側の表面とを重ね合わせ、ラミネーター(株式会社日立インダストリイズ製(LamicII型)を用いて、基板加熱温度(T1)120℃、ロール温度(T2)120℃、基板搬送速度(V)2.2m/分、ラミネート圧100N/cmの条件下で貼り合わせた。その後、転写材料(1)の仮支持体のみを熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、除去した。この状態では、カラーフィルタ用基板上に、突起用組成物層、中間層、熱可塑性樹脂層がこの順に積層されている。
【0253】
−硬化(露光)工程−
基板上の前記突起用組成物層及び前記中間層に対し、大気雰囲気下で、下記のパターン形成装置を用い、前記突起用組成物層と露光ヘッドとを相対移動させながら、波長405nm、80mJ/cm2の露光量で露光し、画像を形成した。
−パターン形成装置−
図19に記載の露光ヘッドを備えたパターン形成装置を用いた。図19は、DMD50、DMD50にレーザ光を照射する光照射手段144、DMD50で反射されたレーザ光を拡大して結像するレンズ系(結像光学系)454、458、DMD50の各描素部に対応して多数のマイクロレンズ474が配置されたマイクロレンズアレイ472、マイクロレンズアレイ472の各マイクロレンズに対応して多数のアパーチャ478が設けられたアパーチャアレイ476、アパーチャを通過したレーザ光を被露光面56(突起用組成物層)に結像するレンズ系(結像光学系)480、482で構成される露光ヘッドを表す。
図19において、光照射手段144としては、図9〜14に示す合波レーザ光源を用いた。DMD50としては、図16に示す主走査方向にマイクロミラーが800個配列されたマイクロミラー列が、副走査方向に600組配列された前記光変調手段の内、800個×200列のみを駆動するように制御されたDMDを用いた。また、マイクロレンズアレイ472の集光位置近傍に配置されるアパーチャアレイ476は、その各アパーチャ478に、それと対応するマイクロレンズ474を経た光のみが入射するように配置されている。表1中にDI露光と記す。
【0254】
硬化工程の後、本発明および比較例でそれぞれ露光したサンプルについて、1%トリエタノールアミン水溶液を、シャワー式現像装置にて30℃で60秒間基板に噴霧して、熱可塑性樹脂層及び中間層を溶解除去した。この段階では、突起用組成物層は実質的に現像されていなかった。
【0255】
続いて、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、シャワー式現像装置にて33℃で30秒間基板に噴霧しながら現像し、突起用組成物層の不要部(露光部)を現像除去した。すると、カラーフィルタ用基板上には、所望の形状にパターニングされた突起用組成物層よりなる液晶配向制御突起パターンが形成された。
次いで、該液晶配向制御突起パターンが形成されたカラーフィルタ用基板を230℃下で30分ベークすることにより、カラーフィルタ用基板上に液晶配向制御突起パターンを形成することができた。尚、液晶配向制御突起の形状は直径5μmのト゛ット状であった。
【0256】
得られたカラーフィルタ用基板を用いて公知の方法(特開平11−248921号公報)により液晶表示装置を作製し、表示性能を評価したところ十分な性能を示した。
【0257】
−液晶表示装置のコントラスト−
得られた液晶表示装置の各々について、黒表示させたときの輝度Laと白表示させたときの輝度Lbとの比(=La:Lb)を求め、この比をコントラスト比として下記評価基準にしたがって評価した。測定は、色彩輝度計BM−5(トプコン社製)を、観察者が観る正面となる側に貼り付けた反射防止フィルムの表面から該表面の鉛直方向50cmの距離に設置し、300ルクスの照明下(一般家庭のリビング環境を想定)で行なった。
〔評価基準〕
◎:コントラスト比が400:1以上であった。
○:コントラスト比が200:1以上400:1未満であった。
△:コントラスト比が150:1以上200:1未満であった。
×:コントラスト比が150:1未満であった。
評価結果を表1に示す。
【0258】
(実施例2〜6)
実施例1において、液晶配向制御突起の形状を下記表1に記載の形状に変更した以外は、実施例1と同様の方法で液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0259】
(実施例7)
実施例1と同様の方法で作製したITO付カラーフィルタ用基板に、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(平田機工株式会社製)にて、上記で調製した突起用組成物層用塗布液T1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃3分間プリベークして膜厚1.8μmの突起用組成物層を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で硬化(露光)工程を経て、上記実施例1と同様に液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0260】
(比較例1〜6)
実施例1において、液晶配向制御突起の形状を下記表1に記載の形状に変更し、露光方法を下記のプロキシミティ露光に変更した以外は、実施例1と同様の方法で液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0261】
<プロキシミティ露光>
最外層である熱可塑性樹脂層の上方に、所定のフォトマスクが突起用組成物層の表面から100μmの距離となるようにプロキシミティ露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー150mJ/cm2でプロキシミティ露光した。
表1中に面露光と記す。
【0262】
【表1】

【0263】
表1から、本発明の製造方法により得られたカラーフィルタを有する液晶表示装置はいずれもコントラスト比が200:1以上400:1未満であり、面露光で得られたカラーフィルタを有する液晶表示装置に比較し、コントラストに優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】本発明に係る露光ユニットの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る露光ユニットのスキャナの構成を示す斜視図である。
【図3】(A)は感光材料に形成される露光済み領域を示す平面図であり、(B)は各露光ヘッドによる露光エリアの配列を示す図である。
【図4】本発明に係る露光ヘッドの概略構成を示す斜視図である。
【図5】(A)は図4に示す露光ヘッドの構成を示す光軸に沿った副走査方向の断面図であり、(B)は(A)の側面図である。
【図6】デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)の構成を示す部分拡大図である。
【図7】(A)及び(B)はDMDの動作を説明するための説明図である。
【図8】(A)及び(B)は、DMDを傾斜配置しない場合と傾斜配置する場合とで、露光ビームの配置及び走査線を比較して示す平面図である。
【図9】(A)はファイバアレイ光源の構成を示す斜視図であり、(B)は(Aの部分拡大図であり、(C)及び(D)はレーザ出射部における発光点の配列を示す平面図である。
【図10】マルチモード光ファイバの構成を示す図である。
【図11】合波レーザ光源の構成を示す平面図である。
【図12】レーザモジュールの構成を示す平面図である。
【図13】図12に示すレーザモジュールの構成を示す側面図である。
【図14】図12に示すレーザモジュールの構成を示す部分側面図である。
【図15】(A)及び(B)は、露光装置における焦点深度を示す断面図である。
【図16】(A)及び(B)は、DMDの使用領域の例を示す図である。
【図17】(A)はDMDの使用領域が適正である場合の側面図であり、(B)は(A)の光軸に沿った副走査方向の断面図である。
【図18】本発明の液晶表示装置の一実施の形態を表す概略的構成図である。
【図19】実施例に用いたパターン形成装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0265】
10 液晶表示装置
12、20 ガラス基板
14、18 導電層
16 液晶層
22 液晶配向制御突起
24 画素
50 デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)
54 レンズ系
66 ファイバアレイ光源
166 露光ヘッド(本発明に係る露光ユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と前記基板上に設けられた濃色離画壁とを備えたカラーフィルタ用基板上に、着色液体組成物の液滴をインクジェット法により付与して画素を形成する画素形成工程と、
前記カラーフィルタ用基板の前記画素が形成された側の表面に液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を付与する樹脂組成物付与工程と、
2次元状に並んだ空間光変調デバイスを用いて、画像データに基づいて光を変調しながら相対走査することで前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物を硬化する硬化工程と、
を含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物付与工程が、仮支持体上に少なくとも一層の感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層を前記カラーフィルタ用基板に転写する転写工程を含む請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物が、ナフトキノンジアジド誘導体を含む請求項1又は2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記液晶配向制御突起用光硬化樹脂組成物が、フェノール樹脂を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたカラーフィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載のカラーフィルタを有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−108498(P2007−108498A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300199(P2005−300199)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】