説明

カラーフィルタの製造方法およびカラーフィルタ

【課題】インクジェット方式を用いてカラーフィルタを製造するに際し、画素形状、及びCF表面の平坦なカラーフィルタの製造方法およびカラーフィルタを提供する。
【解決手段】少なくとも、透明基板上に所定のパターンよりなる遮光層を形成する工程と、前記遮光層の開口部に、着色材料をインクジェット法により規定の配列となるように吐出した後、溶剤を蒸発させて着色層を形成する乾燥工程と、前記着色層を熱硬化させて形成される加熱工程と、からなるカラーフィルタの製造方法において、前記乾燥工程で得られる前記着色層内の膜厚分布を、前記遮光層の膜厚に対して85〜120%の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶ディスプレー等に使用されるカラーフィルタの製造方法に係り、特に、インクジェット法を用いたカラーフィルタの製造方法及びそのカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ、薄型カラーテレビの発展に伴い、カラー液晶ディスプレー(以下LCDと記す)の需要が増加しており、特に、薄型カラーテレビの大型化が著しい。しかしながら、需要の増加に合わせて低価格化の進行も著しく、部材の中でもコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
このようなカラーフィルタにおいては、透明基板上に所定のパターンよりなる遮光層(ブラックマトリックス、以下BMと略称する)が設けられ、このBMの開口部に、通常赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の着色層からなる画素を備え、R、G、Bのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、Bのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
【0004】
従来、行われているカラーフィルタの着色層の製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に、染色される透明の水溶性の高分子材料をフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染料水溶液に浸漬して透明なパターンを染色する。これを3回繰り返すことによりR、G、Bのカラーフィルタの着色層からなる着色画素を形成するものである。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより着色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、Bの着色層からなる着色画素を形成する。
【0006】
さらに、他の方法としては、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、Bの3回印刷を行った後、樹脂を加熱硬化させる方法等を挙げることができる。しかしながら、いずれの方法も、R、G、Bの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。
【0007】
これらの問題点を解決するカラーフィルタの製造方法として、近年、インクジェット方式を利用したカラーフィルタの製造方法が、前記した染色法および顔料分散法に比べて工程数が少なく低コスト化が可能として検討されている。一方でインクジェット法には、各着色領域の画素のにじみ、混色が避けられず、カラーフィルタとしての品質は劣るものになる欠点があった。
【0008】
インクジェット方式を用いた低コストでなおかつ高品質なカラーフィルタの製造方法として、例えば、特許文献1には、仕切りパターン(BM)の臨界表面張力と、間隙の被印刷面(画素部)の臨界表面張力との間の表面張力を有する印刷インキを用いることで、均一な光透過性が得られ、インクジェット方式による着色インクの吐出の際、ガラス基板上の所望する着色領域外への着色インクの広がりを防止する技術が開示されている。また、特許文献2、特許文献3には、含フッ素化合物及び/または含ケイ素化合物を含有するBMを、着色工程におけるインクにじみ、混色を防止するための仕切り壁とすることが記載されている。
【0009】
また、特許文献4には、遮光パターン上部の撥インク性と、遮光パターン間(すなわち画素部)の撥インク性を水の接触角で、それぞれ、90〜120°、30°以下とすることにより、遮光パターン間(画素部)での着色インクの広がりを良好にし、遮光パターン上部には、着色インクが付着しにくくすることで、画素周辺での色抜けのないカラーフィルタが開示されている。ここでは、遮光パターン間を親インク処理剤により表面処理し、撥インク性をコントロールしている。
【0010】
更に近年、ハイビジョン対応の大型液晶テレビ等の拡大に伴い、液晶表示装置等への高精細の要求が高まっている。しかし、インクジェット方式特有の「平坦化不良」による、着色部内で色むらが生じる不具合や、パネル化した際の基板間に挟まれた液晶分子の配向不良などの不具合が発生しやすい問題がある。そこで、特許文献5には、表面張力が特定範囲のインクを、隔壁で囲まれた領域の容積の3〜10倍の体積付与する技術が開示され、また、特許文献6には、インクジェット方式での、インクの物性や付与量、透明基板表面のインク濡れ性を制御して、着色部の膜厚差が0.5μm以下、着色部の最薄部とBMの厚さとの差を0.5μm以下とする技術が開示され、特許文献7には、乾燥、硬化工程におけるインク収縮時に、インクが隔壁に良好に付着することで、画素周縁部の膜厚が隔壁の80%以上で、画素の平均膜厚が隔壁の80%未満で、画素の平均膜厚に対する最大・最小膜厚の差が20%以下とする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−347637号公報
【特許文献2】特開平7−35915号公報
【特許文献3】特開平7−35917号公報
【特許文献4】特開平9−203803号公報
【特許文献5】特開平11−202124号公報
【特許文献6】特開平2000−89023号公報
【特許文献7】特開平2002−148429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1〜7に開示された方法を用いても、インクジェット方式では、着色材料を高濃度にするとノズルが詰まるため、通常、低濃度にしてBM開口部に吐出している。溶媒分の多い着色層は、吐出直後の膜厚がBMの膜厚以上になることから、そのまま急激に加熱すると、乾燥が進行してゆく際に同時にインキの硬化も進行するため、吐出直後にみられる凸形状が維持されてしまう。さらに溶媒が蒸発した後にはインキの粘度が大幅に上昇しているため、インキの流動は起こりえない。したがって、それ以降の加熱工程において形状が変化することはなく、乾燥工程において形成された形状が着色層の形状となり、平坦化の制御が困難な問題があった。
【0012】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、本発明は、インクジェット方式によるカラーフィルタの製造に際し、遮光層と着色層からなるカラーフィルタ表面の平坦性と着色層内の平坦性を改善したカラーフィルタの製造方法を提供することを課題としている。あわせて、着色部内で色むらが生じる不具合や、パネル化した際の基板間に挟まれた液晶分子の配向不良などの不具合が発生しないカラーフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、(1)透明基板上に所定のパターンよりなる遮光層を形成する工程と、(2)前記遮光層の開口部に、着色材料をインクジェット法により規定の配列となるように吐出した後、溶剤を蒸発させて着色層を形成する乾燥工程と、(3)前記着色層を熱硬化させて形成される加熱工程と、からなるカラーフィルタの製造方法において、前記乾燥工程で得られる前記着色層内の膜厚分布を、前記遮光層の膜厚に対して85〜120%の範囲内とすることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記着色材料は、顔料及びバインダー樹脂を含み、該バインダー樹脂の質量平均分子量が、500〜10000であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタの製造方法である。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記バインダー樹脂がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上の熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0016】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記着色材料は、顔料対バインダー樹脂の固形分比率が、質量比で1:4〜3:2であることを特徴とする請求項2または3に記載するカラーフィルタの製造方法である。
【0017】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記着色材料の粘度が、1〜20mPa・sの範囲にあることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載するカラーフィルタの製造方法である。
【0018】
次に、本発明の請求項6に係る発明は、透明基板上に、少なくとも遮光層パターンと、その遮光層の開口部に各色の着色層を、インクジェット法により規定の配列となるよう形成したカラーフィルタであって、請求項1〜5のいずれか1項に記載するカラーフィルタの製造方法により製造されたことを特徴とするカラーフィルタである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、予め形成されたBMの開口部にインクジェット方式により着色材料を吐出した後、溶剤を蒸発させるプレベーク工程での乾燥後に得られる膜厚分布を、BMの膜厚に対して85〜120%となるように着色層の膜厚を減少させている。このような割合で膜厚を減少させた場合、加熱処理(ポストベーク)後においても均一な膜厚の着色層が得られ、色ムラが発生することはない。さらに、加熱処理後の着色層の収縮を考慮しても遮光部分(BM部)と着色部における膜厚差も抑制でき、カラーフィルタとして平坦性に優れたものとなる。すなわち、色むらのない平坦性にすぐれたカラーフィルタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のカラーフィルタの製造方法及びカラーフィルタを一実施形態に基づいて、図面を参照して以下に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を、側断面で工程順に示した概略図である。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、透明基板1上に隔壁を構成する光硬化性の遮光層2を形成する。
【0023】
透明基板1は、カラーフィルタとしての透明性や、機械的強度の特性が満足するものであれば、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフィン、及びポリアクリレート等のプラスチックシート及びプラスチックフィルムなどでも良いが、一般的にはガラス基板を用いる。
【0024】
遮光層2は、光硬化性の感光性着色組成物を用いて透明基板1上に設けられる。感光性着色組成物は、黒色顔料、インク用バインダー樹脂、光開始剤、撥水剤等を溶媒に分散して構成されたものである。
【0025】
この感光性着色組成物は、例えばバーコーター、ロールコーター、スピンコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の塗布方法を用いて透明基板1上に塗布することが出来る。
【0026】
感光性着色組成物に含まれる黒色顔料としては、有機黒色顔料、無機黒色顔料の一般的な顔料を用いることが出来る。例えば、有機顔料、カーボンブラック、アニリンブラック、黒鉛、酸化チタン、鉄黒などを単体あるいは混合して用いるものである。
【0027】
ここで、感光性着色組成物に含まれる撥水剤とは、BMの開口部に着色組成物の充填時に、着色組成物をはじき、隣接する画素への侵入を防止する役割を有するものである。撥水剤の材料は特には限定されないが、フッ素化合物や、ケイ素化合物が撥水性に優れるために好ましい。
【0028】
また、撥水剤は過剰に含有させると、ブラックマトリクス形成工程の最終工程であるポストベーク(本硬化)の際に、蒸発し、ブラックマトリクス開口部に露出したガラス基板表面に薄く付着することで、インクを付与する際にガラス基板表面とインクとの濡れ性が悪くなり、開口部内にインクが均一に拡がらず、白抜けや色ムラが発生する。
【0029】
撥水剤の具体的な例を挙げると、主鎖または側鎖に有機シリコーンやアルキルフルオロ基を有するもので、シロキサン成分を含むシリコーン樹脂やシリコーンゴム、この他にはフッ化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化エチレン等やこれらの共重合体等のフッ素樹脂などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
次に、図1(b)に示すように、フォトマスク3を介して光照射を行い、遮光層2をパターン状に硬化させ、現像等の処理を行うことにより、図1(c)に示すように、光遮蔽パターン4を有するブラックマトリクス(BM)基板を得ることができる。なお、図1(c)では、光遮蔽パターン4の厚さはT1である。
【0031】
遮光層2の露光手段としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ等のラジカル重合性化合物が反応する波長の光を放出するものを使用することができる。
【0032】
光遮蔽パターン4の形成後、一般的な洗浄工程(水洗浄、エアー洗浄等)を行った後、任意に加熱(ポストベーク)を行うことが出来る。これにより、パターン化された樹脂層を十分に熱硬化することができ、且つBM表面から撥インク剤を溶出させる効果により、BM(隔壁)の撥インク性をより高くすることが出来る。加熱温度は、例えば120℃〜250℃であり、加熱時間は、3分〜60分程度である。
【0033】
その後、図1(d)に示すように、インクジェット法により、複数色の着色材料を光遮蔽パターン4の開口部に吐出し、例えば赤色着色層5R、緑色着色層5G、及び青色着色層5Bを形成する。この場合、開口部への着色材料の吐出量は最適化する必要がある。
【0034】
インクジェットに用いる装置としては、インク吐出方法の相違によりピエゾ変換方式と熱変換方式があるが、ピエゾ変換方式の装置を用いることが望ましい。また。インクジェット装置のインクの粒子化周波数は5〜100kHz程度が望ましい。また、インクジェット装置のノズル径は、5〜80μm程度が望ましい。また、インクジェット装置はヘッドを複数個配置し、1ヘッドにノズルを60〜500個程度組み込んだものを用いるのが好ましい。
【0035】
着色材料に使用する溶剤としては、インクジェット印刷における適性を考慮し、表面張力が35mN/m以下で、且つ、沸点が130℃以上のものが好ましい。表面張力が35mN/m以上であるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼし、また、沸点が130℃以下であるとノズル近傍での乾燥性が著しく高くなり、その結果、ノズル詰まり等の不良発生を招く傾向となる。
【0036】
具体的には、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、上記要件を満たす溶剤であれば好ましく用いることができ、また、必要に応じて2種類以上の溶剤を混合して用いても構わない。
【0037】
インクジェット用着色材料の顔料としては、耐候性に優れるものを用いることが好ましい。具体的にはC.I.Pigment Red 9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、208、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254、Pigment Blue15、15:6、16、22、29、60、64、C.I.Pigment Green 7、36、C.I.Pigment Yellow 20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、185、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Violet23等を使用することができる。さらに所望の色相を得るために2種以上の材料を混合して用いることができる。
【0038】
着色材料のバインダー樹脂としては、カラーフィルタ製造装置および製造工程の簡略化から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。特にカラーフィルタに要求される耐溶剤性、耐アルカリ性、耐酸性、耐熱性などの物性を満足させるため、熱黄変性の少ない熱硬化性樹脂である、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。
【0039】
また、バインダー樹脂の質量平均分子量は、500〜10000の範囲内であることが好ましく、さらに500〜8000の範囲内であることがより好ましい。バインダー樹脂の質量平均分子量が10000を超えると、着色層2の乾燥工程時にインキの流動性が不足し、パターン平坦性が劣ってしまう。また、バインダー樹脂の質量平均分子量が500未満では、カラーフィルタに要求される耐溶剤性、耐熱性などの物性を満足させることができない。
【0040】
また、顔料対バインダー樹脂の固形分比率が、質量比で1:4〜3:2であることが好ましい。顔料対バインダー樹脂の固形分比率が1:4未満では顔料濃度が低く、必要な濃度を得るための着色層の厚みが厚く成り、作業性が悪くなり、3:2を超えて顔料を多くすると、着色層2の乾燥工程時にインキの流動性が不足し、パターン平坦性が劣ってしまう。
【0041】
着色材料の分散剤は、溶剤への顔料の分散性を向上させるために用いることができる。分散剤として、イオン性、非イオン性界面活性剤などを用いることができる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等があり、その他に有機顔料誘導体、ポリエステルなどが上げられる。分散剤は1種類を単独で使用しても良く、また、必要に応じて2種以上を混合して用いることも可能である。
【0042】
着色材料の粘度としては、1〜20mPa・sの範囲にあることが好ましく、さらにいえば、5〜15mPa・sの範囲にあるとさらに好ましい。着色材料の粘度が20mPa・sを超えると、インクジェット吐出時にインキが所定の位置に着弾しない不良や、ノズル詰りといった不良を招く傾向がある。一方、着色材料の粘度が1mPa・s未満である場合、インキを吐出する際に、インキが飛散するような状況を招く傾向がある。
【0043】
次に、図1(e)に示すように、赤色着色層5R、緑色着色層5G、及び青色着色層5Bを形成した後、50〜150℃で1〜5分間加熱する。その結果、各着色層中の溶媒の蒸発により、着色層5R、5G,5Bの体積は減少し、図2に示すような膜厚分布(最小膜厚(T2)、最大膜厚(T3))を有する塗膜となる。
【0044】
このように着色層5R、5G、5Bの形成後、プレベークにより所定の膜厚まで減少させるのは、次のような理由による。
【0045】
即ち、前述したように、インクジェット方式では、着色材料を高濃度にするとノズルが詰まるため、通常、低濃度にしてBM開口部に吐出しているが、溶媒分の多い着色材料は、吐出直後の膜厚がBMの膜厚以上になることから、そのまま急激に加熱すると、乾燥が進行してゆく際に同時にインキの硬化も進行するため、吐出直後にみられる凸形状が維持されてしまう。さらに溶媒が蒸発した後にはインキの粘度が大幅に上昇しているため、インキの流動は起こりえない。したがって、それ以降の加熱工程において形状が変化することはなく、乾燥工程において形成された形状が着色層の形状となる。
【0046】
これに対し、本発明の製造方法では、インクジェット方式により膜厚T1のBMの開口部に着色材料を吐出した後、プレベークによる乾燥後に得られる膜厚分布を、膜厚T1に対して85〜120%となるように着色層の膜厚を減少させている。このような割合で膜厚を減少させた場合、加熱処理(ポストベーク)後においても均一な膜厚の着色層が得られ、色ムラが発生することはない。さらに、加熱処理後の着色層の収縮を考慮しても遮光部分(BM部)と着色部における膜厚差も抑制でき、カラーフィルタとして平坦性に優れたものとなる。
【0047】
膜厚分布が85%未満となる場合では、遮光部と着色部との膜厚差が大きく、カラーフィルタ表面の凹凸形状により液晶パネル作製工程での工程不良の要因となるため好ましくない。また、120%を超えるような膜厚を有する場合、加熱硬化後において画素形状が凸形状になることで膜厚に不均一が生じ、色むらが発生してしまう。
【0048】
次に、プレベークの後、光遮蔽パターン4及び着色層5R、5G、5Bが設けられた透明基板1を加熱炉に導入し、180℃〜250℃でポストベークする。その結果、着色層5R、5G、5Bは硬化するとともに、その膜厚は図1(f)に示すように光遮蔽パターン4内に均一な膜が形成される。
【0049】
その後、図1(g)に示すように、表面に保護層6を形成して、カラーフィルタが完成する。
【0050】
ここで、保護層6はカラーフィルタ表面の平滑性、耐候性を向上させるために設けるものである。保護層6は、カルボキシル基を有する化合物とエポキシ基を有する化合物を溶媒等に溶解したものをスピンコート法やダイコート法等の適切な塗工方法を用いてコーティングした後、加熱により架橋させて形成することができる。カルボキシル基を有する化合物としては、加熱により、エポキシ基と架橋反応を行うことができるカルボキシル基を有する化合物であればよい。ところで、カルボキシル基とエポキシ基は反応性が高いので、製造工程で問題が生じることがある。このため、前記カルボキシル基がアルキルビニルエーテルによりブロックされた化合物を用いることが望ましい。
【0051】
カルボキシル基を有する化合物の具体例としては、1−イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−t−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1−(1−メチルヘキシロキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(1,1−ジメチルプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−イソプロプキシエチル(メタ)アクリルアミド、1−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、1−t−ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド、1−(1−メチルヘキシロキシ)エチル(メタ)アクリルアミド、1−(1,1−ジメチルプロポキシ)エチル(メタ)アクリルアミド、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸−2,4−ビス(プロポキシエチル)−1−((メタ)アクリロキシエチル)エステル等の単量体もしくは共重合体が一例として挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルイタコネート、グリシジルフマレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単量体、あるいは共重合体などが一例として挙げられる。特にエポキシ基を有する化合物にアクリル樹脂を用いると、透明性、耐候性に優れた保護層を得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0053】
<実施例1>
[BM用着色組成物の調製]
ポリイミド前駆体(東レ(株)製:「セミコファインSP−510」)10質量部、カーボンブラック7.5質量部、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)130質量部、分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」)5質量部、開始剤5質量部及び撥インク剤(ポリアルキルシロキサン)0.5質量部をビーズミル分散機で冷却しながら3時間分散しブラックマトリックス用の着色組成物を調製した。
【0054】
[BMパターンの形成]
調整されたブラックマトリックス用の着色組成物を、無アルカリガラス(品番1737:コーニング(株)製)上にスピンコート法により塗布した後、オーブンで90℃×20分プリベークを行った。次いで、所定のパターンのマスクを介して露光し、現像処理を行った後に、オーブンで230℃×1時間のポストベークを行い、ブラックマトリックスを形成した。形成されたブラックマトリックスは、開口幅170μm×520μmとなるセル状パターンであった。ここで、光遮蔽パターンの厚み(T1)即ちBM厚みは、1.5μm、2.0μm、2.5μmの3種を作製した。
【0055】
[顔料分散液の作製]
次いで、着色材料を作製した。カラーフィルタの製造に用いる着色材料に含まれる着色する顔料には次のものを用いた。赤色(R)顔料として、C.I.Pigment Red 254(「イルガフォーレッドB−CF」:チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)、緑色(G)顔料として(「リオノールグリーン 6YK」:東洋インキ製造(株)製)、青色(B)顔料として、C.I.Pigment Blue 15;6(「ヘリオゲンブルー」:BASF(株)製)を用い、表1に示す処方で、ビーズミル分散により十分混連錬し、赤色顔料分散液、緑色着色材料及び青色顔料分散液を作製した。表1に、各色の顔料分散液の組成を示す。
【表1】

【0056】
[着色材料の作製]
このようにして得た顔料分散液に、表2に示す処方で、熱硬化性樹脂及び有機溶剤を加えて良く攪拌し、6種のカラーフィルタ用着色材料を(インクA〜F)を作製した。表2に、インクA〜Fの材料組成を示す。
【表2】

【0057】
このようにして調整された6種のカラーフィルタ用着色材料を(インクA〜F)を用いて、先に形成されたブラックマトリックス上頂部の、各着色インク(表面張力30mN/m)に対する接触角を測定したところ、30°であり、前記ブラックマトリックス上頂部が各着色インクに対して、撥インク性が有ることを確認した。
【0058】
[カラーフィルタ基板の作製]
次いで、カラーフィルタの基板を作製した。ガラス基板上に形成されたブラックマトリクスの開口部に、12pl、180dpi(2.54cm当たり180ドット)ヘッド(セイコーインスツルメンツ(株)製)を搭載したインクジェット印刷装置を用いて、前記赤色(R)、緑色(G)、青色(B)各色の着色材料のインキAを、各々の厚さ1.5μm厚みのBM隔壁に囲まれたパターン内に660pl(6.6×10−13)充填した。その後、ホットプレートにて100℃×5分乾燥させて、プリベーク後の着色層を形成した。さらに、230℃×60分間ポストベークを行い、パターン状着色層を形成し、実施例1のカラーフィルタを得た。
【0059】
<実施例2〜6、比較例1〜24>
実施例1と同様にして、表3に示したインク、インク吐出量、BM膜厚の組み合わせで、実施例2〜6、および比較例1〜24のカラーフィルタを得た。
【0060】
これらのカラーフィルタ試料について、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)各色の着色層の形状を観察し、プリベーク後の膜厚、ポストベーク後の膜厚、遮光層と着色層との段差(最大となる段差)即ちBMとの段差、および画素形状品質を評価した。それらの結果を表3に示す。
【表3】

【0061】
なお、画素形状の評価では、以下の通りとした。
・ 平坦:画素内の形状が平坦でかつ、画素中の最小膜厚部と最大膜厚部の色差ΔEab(自乗平均L色差)が3以下。
・ 凸形状:画素内の形状が凸形状でかつ、画素中の最小膜厚部と最大膜厚部の色差ΔEabが5以上。
・ 凹形状:画素内の形状が凹形状でかつ画素中の最小膜厚部と最大膜厚部の色差ΔEabが5以上。
【0062】
<比較結果>
表3に示した結果から、以下のことが明らかである。即ち、比較例2〜4,6〜8、10〜24のように着色層の膜厚分布が85%未満となる場合、画素形状が凸形状、もしく凹形状を有する。または画素形状が平坦であっても遮光層と着色層との段差が25%以上となり、画素内及びCF平坦性に対して、好ましくない。
【0063】
また、比較例1〜14、21〜24のように着色層の膜厚分布が120%以上である場合、画素形状が凸形状を有し、かつ遮光層と着色層との段差が25%以上となり、画素内およびカラーフィルタの平坦性に対して好ましくない。
【0064】
これに対し、実施例1〜6の着色層の膜厚分布が85%〜120%範囲内の場合には、いずれも着色層は良好な形状を示しており、かつ遮光層と着色層との段差も少なく、良好であった。
【0065】
また、上記表3に示すように、添加した分子量が大きいインクB,Dについては、遮光層の高さを上げた場合以外はいずれも凸形状となり、画素内、及びCF平坦性に対して好ましくない。
【0066】
また、顔料対樹脂比が3:2以上となるインクC、D、Fについても同じく、遮光層の高さを上げた場合以外はいずれも凸形状となり、画素内、及びCF平坦性に対して好ましくない。
【0067】
これに対して、添加した樹脂の分子量が500〜10000以内であり、かつ顔料対樹脂比が1:4〜3:2にあるインクA、Eについては画素形状が平坦性を有し、かつ遮光層と着色層との段差も少なく、良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を、側断面で工程順に示した概略図。
【図2】本発明の一実施形態に係る着色層を断面で説明する拡大概略図。
【符号の説明】
【0069】
1・・・透明基板 2・・・遮光層 3・・・フォトマスク
4・・・光遮蔽パターン 5R・・・赤色着色層 5G・・・緑色着色層
5B・・・青色着色層 6・・・保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
・ 透明基板上に所定のパターンよりなる遮光層を形成する工程と、
・ 前記遮光層の開口部に、着色材料をインクジェット法により規定の配列となるように吐出した後、溶剤を蒸発させて着色層を形成する乾燥工程と、
・ 前記着色層を熱硬化させて形成される加熱工程と、
からなるカラーフィルタの製造方法において、
前記乾燥工程で得られる前記着色層内の膜厚分布を、前記遮光層の膜厚に対して85〜120%の範囲内とすることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記着色材料は、顔料及びバインダー樹脂を含み、該バインダー樹脂の質量平均分子量が、500〜10000であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記バインダー樹脂がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上の熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項2に記載するカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記着色材料は、顔料対バインダー樹脂の固形分比率が、質量比で1:4〜3:2であることを特徴とする請求項2または3に記載するカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記着色材料の粘度が、1〜20mPa・sの範囲にあることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載するカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
透明基板上に、少なくとも遮光層パターンと、その遮光層の開口部に各色の着色層を、インクジェット法により規定の配列となるよう形成したカラーフィルタであって、請求項1〜5のいずれか1項に記載するカラーフィルタの製造方法により製造されたことを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−102226(P2010−102226A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275301(P2008−275301)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】