カラーフィルターの製造方法
【課題】略長方形の被着色部をインクジェット方式により着色する方法において、インクの着弾順序によらず、インクの白抜けを有効に抑えることができる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】略長方形の被着色部の長手方向に対しインクジェットヘッドを垂直に走査しながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する吐出工程を含む方法において、(a)該1列の両端に着弾するインク滴a,a’の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離L1が、飛翔時のインク粒径の50〜150%であり、かつ両端に着弾するインク滴a,a’の中心位置と、それより内側に着弾する直近のインク滴の中心位置b、b’との間の最短距離L2が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%となるようにする。
【解決手段】略長方形の被着色部の長手方向に対しインクジェットヘッドを垂直に走査しながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する吐出工程を含む方法において、(a)該1列の両端に着弾するインク滴a,a’の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離L1が、飛翔時のインク粒径の50〜150%であり、かつ両端に着弾するインク滴a,a’の中心位置と、それより内側に着弾する直近のインク滴の中心位置b、b’との間の最短距離L2が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%となるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に関する。詳しくは、本発明は、被着色部にインクジェット方式によって着色インクを吐出する工程を含むカラーフィルターの製造方法において、被着色部内のインク白抜けの低減効果に優れ、且つ被着色部毎の充填インク量の均一性に優れた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶ディスプレイ等のカラー表示装置に使用されるカラーフィルターの製造方法として、インクジェット方式が採用されている。
インクジェット方式によるカラーフィルターの製造において、被着色部毎に充填するインク量が均一であることが重要とされている。
【0003】
しかしながら、同一ノズルから吐出されるインク量が1滴毎にバラツキをもつことや、異なるノズル間でのインク吐出量にバラツキを持つことにより、線状の欠陥を生じたり、また、異なる被着色部で充填されたインク量が異なる、即ち膜厚が被着色部間で異なることとなり、カラーフィルターとしての輝度や色度にムラを生じたりする問題がある。
【0004】
従来のインクジェット方式によるカラーフィルターの製造には、概ね長方形の被着色部の長手方向と平行にインクジェットヘッドを走査し、被着色部に1列に複数滴のインクを着弾させる。
【0005】
しかし、この方法は1つの被着色部に対し1つのノズルでインクを充填することになり、ノズル毎の吐出量のバラツキの影響を受ける。これにより、被着色部に1列に複数滴のインクを充填することで、1滴毎のインク吐出量のバラツキを分散させることはできても、異なる被着色部間で色濃度や膜厚が異なるといった問題があった。
【0006】
また、被着色部の間隔とインクジェットヘッドのノズル間隔を一致させることが、インクジェットヘッドの製造の点で困難である。この方法によると、1回の走査で使用されるインクジェットノズルは、被着色部とインクジェットノズルの位置が合ったものしか使われないため、ノズル間隔と走査時間との間で効率が悪い。
【0007】
これらの問題を解決するための手法として、被着色部の間隔とインクジェットノズル間隔を合わせるために、インクジェットヘッドを斜めに取り付けることで、工程時間の短縮が図られたが、インクジェットヘッドの取り付けや調整が困難であったり、また、インクジェットヘッドが被着色部に対して斜めに取り付けられており、各ノズルから被着色部にインクを着弾させるためのタイミングの制御が、ヘッドにより異なるため、困難であったりする問題があった(特許文献1参照)。
【0008】
以上に挙げた問題を解決する手法として、インクジェットヘッドを被着色部の長手方向と垂直に移動させながら、着色インクを被着色部の長手方向に対して1列に複数滴吐出する手法がある。この方法によれば、1つの被着色部に対して複数個のノズルを用いるのが容易となり、1滴毎のインク吐出量のバラツキを分散させられるだけでなく、ノズル毎のインク吐出量のバラツキをも分散させることができる。これにより、膜厚が被着色部間で均一化することができ、また、カラーフィルターとしての輝度や色度にムラを無くすことができる(特許文献2参照)。なお、この方法は1つの被着色部に対し1回の走査でノズルの個数分だけしかインクを着弾させることができないため、カラーフィルターの色度を満たすために必要なインク量を被着色部に着弾させるには、複数回の走査が必要となる場合がある。
【0009】
特許文献2記載の方法は、ノズル間隔と被着色部の長手方向の間隔が一致する必要がなく、また1回の走査あたりに使用するノズル個数が多いことから、時間効率の良い手法である。更には、インクジェットヘッドを斜めに取り付けることで、1つの被着色部に対して使用するノズルの数を多くすることも可能である。しかしながら、インクジェットヘッドの取り付けの点と、各ノズルから被着色部にインクを着弾させるためのタイミングを制御する必要がある点で、困難がある。
【0010】
また、この方法を用いて複数回の走査をする際、ノズル間隔と被着色部の長手方向の間隔が一致する必要がないことから、被着色部に対して一列にインクを着弾させる際、隣り合う被着色部でインク着弾順序が異なる場合がある。しかし、これにより最初に被着色部の中心付近にインク滴が着弾された場合、後に被着色部に着弾したインク滴は、インクの表面張力により最初に着弾したインク滴に引き寄せられて一つの液滴になる力が働き、被着色部のインク白抜けが発生しやすい状態となる。
【0011】
この表面張力による被着色部のインク白抜けを簡単に抑えるためには、着色インクの表面張力を小さくして被着色部のインク濡れ性を良くする(インクと被着色部との接触角を小さくする)ことが有効な手法である。
【0012】
しかし、インクジェット方式でインクを安定に吐出させるためには、インクの表面張力が高いほうが好ましい。インクの表面張力が低ければ、インクジェットヘッドから吐出されたインクが空気中を飛翔する際、液滴を形成し難く、被着色部に着弾した際にインク塵を伴うためである。そのため、インクの表面張力の調整のみでは被着色部のインク白抜けを十分に抑えることはできない。
【0013】
また、インクの表面張力以外にも被着色部のインク白抜けの原因として、被着色部とその被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキがある。
【0014】
被着色部のインク濡れ性を示す指標として、被着色部とインクとの接触角や、被着色部外周壁とインクとの接触角がある。被着色部内のインク白抜けをなくすためには、被着色部とインクとの接触角が低いほうが好ましい。また、隣接する被着色部へのインク溢れを抑えるためには、被着色部外周壁とインクとの接触角は大きいほうが好ましい。更には、被着色部に着弾したインク滴が、被着色部外周壁へ移動しないようにするためには、被着色部とインクとの接触角と被着色部外周壁とインクとの接触角との差が大きい方が好ましいことが知られている(特許文献3参照)。
【0015】
しかしながら、被着色部と被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキは、カラーフィルター用基板を製造する際、または製造した後に被着色部に対してインク滴を着弾させるまでに発生する。すなわち、例えばカラーフィルター用基板製造時に形成する遮光性の隔壁に対する露光、現像、洗浄等の工程において、しばしばインク濡れ性のバラツキが発生する。
【0016】
カラーフィルター用基板は、ガラス等の透明基板上に遮光性の隔壁を形成している。この隔壁の形成法としては、光感光性の黒色樹脂膜を塗布したのち、フォトマスクを介して所定の隔壁パターンを露光焼付けし現像処理する方法や、遮光性の樹脂膜上にフォトレジストパターンを公知の方法で形成したのち遮光性樹脂膜をエッチングする方法などを採用することが可能である。また、遮光性の膜を金属薄膜とし、エッチングに使用したレジスト膜を隔壁として使用しても良い。また、フォトマスクを用いた露光に替わって直接露光パターンを描画する直描機を用いてもよく、また遮光性樹脂をレーザー加工機で加工することで形成しても良い。
【0017】
被着色部と被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキを抑えるためには、上記の方法により形成する遮光性の隔壁に対して、均一な露光、現像、その後の洗浄が必要となる。また、実際に被着色部に対してインクを着弾させるまでに空気中の汚れ等が付着する場合がある。
【0018】
被着色部と被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキを抑え、被着色部のインク白抜けを抑えるための手法として被着色部を洗浄等により親水化し、インク濡れ性を向上させる方法があり、これによりインクの白抜けを抑えることは可能である。しかし、洗浄等によっても被着色部のインクの濡れ性を完全に均一化することは実際上困難であり、被着色部にインク白抜けが発生することを完全に抑えることはできなかった。
このように、被着色部のインク白抜けを低減する手段は未だ十分ではなく、インク白抜けを有効に低減しうるカラーフィルター製造方法の開発が望まれていた。
【0019】
【特許文献1】特開2006−099121号公報
【特許文献2】特開2004−358299号公報
【特許文献3】特開2005−352105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、長辺と短辺とからなる外周壁を有する略長方形の被着色部にインクジェット方式により着色インクを吐出してカラーフィルターを製造する方法において、インクの着弾順序によらず、インクの白抜けを有効に抑えることができる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、インクジェットヘッドを前記被着色部の長手方向に対し垂直に走査させながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する工程を含む方法において、(a)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離を、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲とし、かつ(b)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いものの中心位置との間の最短距離を、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲とすることにより、上記課題を有効に解決しうることを見いだし、本発明に到達した、
【0022】
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に示すカラーフィルターの製造方法を提供するものである。
1)長辺と短辺からなる外周壁を有する略長方形の被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査しながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する吐出工程を含むカラーフィルターの製造方法において、下記条件(a)及び(b)を満たすことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
(a)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲にあること。
(b)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いものの中心位置との間の最短距離が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲にあること。
【0023】
2)前記被着色部に吐出される着色インクの充填量のバラツキが、同一色の被着色部間において5%以下であることを特徴とする、1)記載のカラーフィルターの製造方法。
【0024】
3)前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを複数回走査することを特徴とする、1)又は2)記載のカラーフィルターの製造方法。
【0025】
4)前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査した後、前記被着色部の長手方向に対して平行にインクジェットヘッドもしくは被着色部を移動し、再度被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査することを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、インクジェットヘッドを、略長方形の被着色部の長手方向に垂直に複数回走査させて1滴毎又はノズル毎のインク吐出量のバラツキを分散させる方法において、被着色部ごとにインクの着弾順序が異なる場合でも、被着色部内のインク白抜けを低減することができる。したがって、被着色部毎のインク吐出量(充填量)の均一性を高く保ちながら、各被着色部のインク白抜けを有効に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、長辺と短辺からなる外周壁を有する略長方形の被着色部に向けてインクジェットヘッドから着色インクを吐出することによりカラーフィルターを製造する方法であって、インクジェットヘッドを前記被着色部の長手方向に対し垂直に移動させながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する工程を含む方法である。
【0028】
(1)被着色部
本発明における被着色部は、ブラックマトリクス基板上に複数個形成されている。すなわち、本発明のカラーフィルター用基板は、多数の被着色部を持つブラックマトリクス基板に着色インクを着色させることで形成される。
【0029】
<ブラックマトリクス基板>
本発明に係る多数の被着色部を持つブラックマトリクス基板は、所定配列の複数の凹状のインク充填用被着色部と、その被着色部の外周を覆うブラックマトリクス(外周壁)を持つ。
【0030】
従来法によるブラックマトリクスは以下の2つに大別することができる。
一つはフォトリソグラフィー法により加工したCr等の金属膜からなるブラックマトリクスである。この利点は解像度及び遮光率が高く、光学濃度(OD)3.0以上のものが膜厚0.1μm近辺で容易に得られるという点である。問題点としては、金属膜であって可視光の反射率が約40%と高いため、外光の反射による表示画像のコントラストの低下や、周囲の明るい物体がブラックマトリクス面で反射して表示画像に重なるといった点、またCr膜のスパッタ及びフォトリソグラフィー加工と工程が長いので低コスト化が困難である、という点が挙げられる。
【0031】
もう一つは、黒色顔料を分散した有機樹脂膜をフォトリソグラフィー法、印刷法、あるいはフォトエッチング法でパターニングするか、または、感光性樹脂膜をパターニングした後、黒色顔料で染色して得られる黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリクスである。この利点は、黒色であるため可視光の反射率が数%以下と低く、外光の反射による表示画像のコントラストの低下や、周囲の明るい物体の写りこみが金属膜ブラックマトリクスに比べ大幅に減少し、画質が向上する点である。
【0032】
問題点は、遮光率が低い点である。即ち、フォトリソグラフィー法では遮光率を上げると、基板と界面に到達する露光光量が減少するため、高遮光率とすると(例えば光学濃度3.0では基板表面に到達する透過光量は1/1000)現像時に有機樹脂膜のパターン剥がれが生じブラックマトリクスが形成できなくなる。これを避けるために露光量を増やすと、パターン寸法の太りが生じ、所定の解像度が得られなくなる。
【0033】
また、印刷法やフォトエッチング法ではフォトリソグラフィー法に比べて制約は小さいが、黒色着色剤の含有量に限界があるため、高遮光率にすると印刷時の膜厚が大きくなり(例えば膜厚1.0μmで光学濃度2.0の場合、光学濃度を3.0に上げると膜厚は3.0μmとなる)、フォトリソグラフィー法に比べて解像度が低下する。
【0034】
以上に挙げた利点と問題点から、一般的には、ブラックマトリクスは、黒色有機樹脂膜をフォトリソグラフィー法により形成する方法で製造されている。
【0035】
黒色有機樹脂膜をフォトリソグラフィー法によって形成して得られるブラックマトリクスは、次のように作製される。透明基板上にフォトレジスト(このフォトレジストにはネガ型とポジ型があり、露光により露光部が硬化するものをネガ型、露光により露光部が可溶化するものをポジ型とする)を塗布した後、露光、現像、エッチングを行うことにより、所定配列の複数の凹状のインク充填用被着色部が形成され、また被着色部に外周壁としてブラックマトリクスが形成される。但し、この方法により、全ての被着色部または被着色部外周壁の表面状態(インク濡れ性)を均一にするためには、均一なフォトレジストの塗布、露光、現像、洗浄が必要とされる。
【0036】
<被着色部の形状>
本発明の被着色部は、長軸と短軸をもつ略長方形をしており、長方形状又は楕円形状であってもよい。また、長辺及び短辺を有する外周壁(ブラックマトリクス)により外周を覆われている。1個の被着色部のサイズは特に限定されないが、長辺が70〜420μm、短辺が20〜100μm程度のサイズを有する。
【0037】
(2)着色インク
本発明の着色インクは、着色剤(顔料、顔料分散剤)と透明樹脂成分(溶剤、樹脂、重合開始剤等)で構成されている。
【0038】
<着色剤>
着色剤としての顔料は、画素(画素部)のR、G、B等や被着色部外周壁の求める色に合わせて、有機着色剤及び無機着色剤の中から任意のものを選んで使用することができる。有機着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。また、無機着色剤としては、例えば、無機顔料、体質顔料等を用いることができる。
【0039】
これらの中で有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的にはカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0040】
また、前記無機顔料あるいは体質顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において、顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
画素を形成する場合には、顔料をインクジェットインクの固形分全量に対して、通常は1〜60重量%、好ましくは15〜40重量%の割合で配合する。顔料が少なすぎると、インクジェットインクを所定の膜厚(通常は0.1〜2.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがある。また、顔料が多すぎると、インクジェットインクを基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがある。
【0042】
<溶剤>
本発明で用いられる溶剤は、インクジェット装置の印刷適性により選択される。好ましくは沸点が200℃以上、より好ましくは240℃以上のものから選択される。前記溶剤の沸点が200℃以上であることにより、適度な乾燥性及び蒸発性を有するため、ヘッドから吐出した時の直進性、安定性に優れ、更に効率よく乾燥させることができ、着弾したインク滴がインク層形成領域全体の隅々にまで濡れ広がり易くなる。その結果、多様化している基板に対しても、被着色部外周壁の際部分にまで着弾したインクが濡れ広がることが可能になり、画素の色抜けや輝度低下を防止することができる。沸点が200℃未満であるとノズル近傍での乾燥性が著しく高くなり、その結果ノズル詰まり等の不良発生を招く場合がある。
【0043】
また、前記溶剤は、表面張力範囲が25〜35mN/mのものを用いることが好ましく、より好ましくは26〜32mN/mのものである。表面張力が高すぎるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼす、あるいは仕切部隙間内でインクが濡れ拡がらないという欠点が生じる場合がある。表面張力が低すぎるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼす、あるいはインクが仕切部を越えて拡散してしまい混色する可能性が高くなるという欠点が生じる場合がある。
かかる溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0044】
<顔料分散剤>
顔料分散剤は、顔料を良好に分散させるためにインク中に必要に応じて配合される。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。また、界面活性剤の中でも高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0045】
<樹脂>
本発明の着色インクの透明樹脂成分(透明樹脂溶液)に含まれる樹脂としては、光硬化型樹脂組成物、熱硬化型樹脂組成物等が挙げられる。
【0046】
(a)光硬化型樹脂組成物
光硬化型樹脂組成物としては、比較的分子量の高い重合体(高分子量重合体)、光重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマー、オリゴマー、光重合性官能基を2つ有する2官能モノマー、光重合性官能基を1つ有する単官能のモノマーや光により活性化する光重合開始剤から構成される。また、比較的低粘度の反応性モノマーを反応性希釈剤として配合することも可能である。その他の添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0047】
(高分子量重合体)
比較的分子量が高い重合体(高分子量重合体)とは、所謂モノマーやオリゴマーよりも分子量が高いものをいい、重量平均分子量5,000以上を目安にすることができる。前記重合体としては、それ自体は重合反応性のない重合体、及び、それ自体が重合反応性を有する重合体のいずれを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いても良い。
前記重合体は、上記透明樹脂成分(溶剤、樹脂、重合開始剤等)中の固形分全量に対して、通常、1〜50重量%の割合で配合する。ここで、配合割合を特定するためのインクの固形分とは、透明樹脂成分中の溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマー等も固形分に含まれる。
【0048】
本発明においてはカラーフィルター用透明樹脂溶液中に、比較的分子量が高い重合体を配合する。この中で、それ自体が重合反応性を有する重合体であるオリゴマーは、市場において最も容易に入手でき、例えば、エステルアクリレート類、エーテルアクリレート類、ウレタンアクリレート類、エポキシアクリレート類、アミノ樹脂アクリレート類、アクリル樹脂アクリレート類、不飽和ポリエステル類などを例示できる。
【0049】
本発明に係るインクの粘度が高すぎて吐出ヘッドからの吐出性に悪影響を及ぼさないように、それ自体が重合反応性を有する重合体として用いられるエチレン性二重結合含有化合物の分子量は、重量平均分子量で25,000以下であることが好ましい。
【0050】
(多官能モノマー)
本発明における着色インクは、前記透明樹脂溶液中に、多官能モノマーを配合する。従来から、光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化層の膜強度や基板に対する密着性を上げるために、光硬化性組成物中に重合性官能基を2個以上有するモノマー(多官能モノマー)が配合されているが、十分な膜強度や密着性を得るために、通常は3官能以上の多官能モノマーが用いられている。
【0051】
しかしながら、官能基の数が大きい多官能モノマーを光硬化性組成物に配合してインクジェット方式で基板上に吹き付けると、吹き付け作業の間にインクジェットヘッドの先端部分でインクが乾燥して粘度が徐々に大きくなっていき、インクの吐出性が悪くなる。
多官能モノマーの配合割合は、透明樹脂溶液の固形分全量に対して、通常、20〜70重量%の割合で配合する。
【0052】
ここで、前記多官能モノマーの配合割合が全固形分の20重量%に満たない場合には、塗膜の架橋密度が低くなり、塗膜の耐溶剤性、密着性、硬さが劣り、十分な特性が得られなくなるおそれがある。また、前記多官能モノマーの配合割合が全固形分の70重量%を超える場合には、インク組成物(透明樹脂溶液)がモノマーによって十分に希釈されず、インクの粘度が初めから高いか或いは溶剤の揮発後に高くなり、インクジェットヘッドの穴詰まりを起こすおそれがある。
【0053】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、比較的高分子量の重合体、多官能モノマー、2官能モノマーや単官能モノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)や、各材料の種類を考慮して適宜選択されるが、着色したインクを硬化させるために、必要に応じて添加する。
【0054】
重合開始剤は、光や熱によって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤が挙げられる。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
【0055】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0056】
(b)熱硬化型樹脂組成物
本発明で用いられる熱硬化型樹脂組成物は、熱重合性のバインダーと2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーとを少なくとも含有することを特徴とする。熱硬化型樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、分散剤、硬化促進剤、或いはその他の添加剤を配合してもよい。また、熱硬化性透明樹脂組成物に、インクジェット方式に適用するための適切な流動性、吐出性を付与するために、上記の各成分を溶剤(希釈剤)に溶解又は分散させてもよい。また、2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、4官能以上のエポキシ基含有樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(エポキシ基含有モノマー)
上記熱硬化型樹脂組成物には、熱硬化性成分として、2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーを1種又は2種以上組み合わせて用いる。2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーは、熱硬化性樹脂のなかでも比較的粘度が低いうえに、乾燥による粘度上昇が少ないので、このような2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーを熱硬化性成分として用いるインクは、インクジェット方式による吹き付け作業中に、ヘッドの先端での粘度上昇を起こし難く、ヘッドの目詰まりを発生させず、作業中におけるインクの吐出性が安定する。そのため、インクの吐出量や吐出方向が一定に保たれ、インクを基板上に所定のパターン通り正確に、且つ、均一に付着させることができる。
【0058】
(その他の熱硬化性成分)
また、熱硬化型樹脂組成物には、上記の2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、必要に応じて、単官能のエポキシ基含有モノマー、及び/又は、4官能以上のエポキシ基含有樹脂、及び/又は、エポキシ基含有モノマー以外の熱硬化性成分を配合してもよい。
【0059】
2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、4官能以上のエポキシ基含有樹脂を配合するのが好ましい。熱硬化型樹脂組成物中に配合されるエポキシ基含有成分が全て2官能乃至3官能である場合には、インクの乾燥による粘度上昇が起こり難いので、インクジェットヘッドの吐出性が安定するが、その反面、インク層を硬化して得られた硬化層の膜強度や基板に対する密着性が不十分となる場合がある。そこで、上記の2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、4官能以上のエポキシ基含有樹脂を適量配合することにより、硬化層のパターンに十分な膜強度と密着性を付与することができる。
【0060】
(硬化剤)
本発明で用いられる熱硬化型樹脂組成物には、通常、硬化剤が配合される。硬化剤としては、例えば多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸が用いられる。
【0061】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0062】
本発明における着色インクは、着色剤、溶剤、顔料分散剤、樹脂、重合開始剤等を1つの着色インクとして被着色部に着弾させても良いし、着色剤と透明樹脂溶液(溶剤、樹脂、重合開始剤等からなる溶液)の2種類のインク液に分け、被着色部に2回に分けて着弾させても良い。
【0063】
上記の被着色部外周壁と着色インクとの接触角は約20°であるのが好ましく、被着色部と着色インクとの接触角は5°〜10°が一般的である。被着色部のインク白抜けを抑えるためには、被着色部と着色インクとの接触角は5°未満が好ましいが、被着色部全てにわたって接触角を5°未満に抑えることは、基板製法や洗浄の工程時間、コスト等の面から難しいため、現実的には被着色部と着色インクとの接触角が5°〜10°の被着色部を使って製造される。
【0064】
(3)インクジェットヘッド
本発明では、被着色部に対し、インクジェット方式を用いて着色する。使用するインクジェット装置としては、インク吐出方法の相違によりピエゾ変換方式と熱交換方式があり、特にピエゾ変換方式が好適である。インクの粒子化周波数は4〜100KHz程度である。
【0065】
本発明では、インクジェットヘッドは略長方形の被着色部の長手方向と平行に取り付けられ、該長手方向と垂直に移動(走査)する。該インクジェットヘッドには、複数個のノズルが設けられており、1つの被着色部に対して該複数個のインクジェットヘッドノズルから着色インクが吐出されるようにするのが好ましい。インクジェットヘッド1個当たりのノズル数は特に限定されないが、可能な限り高解像度のヘッドを用いるのが好ましい。また、ピエゾ変換方式の場合、インクジェットヘッドの高解像度化は困難であるため、低解像度のヘッドを並列に並べて見かけの解像度を向上させても良い。
【0066】
各ノズルのノズル径としては10〜30μm程度である。また、複数個のノズル間の距離は特に限定されず、被着色部のサイズや、必要なインク量等に応じて適宜調整される。
その他、本発明においては、例えば特許公開2007−237599等に記載される公知の一般的な仕様のインクジェットヘッドを用いることができる。
【0067】
(4)インクジェットヘッドの走査
本発明のカラーフィルターの製造方法は、インクジェットヘッドを前記被着色部の長手方向に対し垂直に走査(移動)させながら、着色インクを該被着色部の長手方向に沿って1列に複数滴吐出し、着弾させる工程を含む。
【0068】
1つの被着色部に対して複数滴のインク滴を着弾させることで、インクジェットヘッド固有の1滴あたりの吐出量のバラツキを分散させることができる。また、この方法において1つの被着色部に対して2以上のノズルを用いて複数滴のインク滴を着弾させることにより、ノズル毎の吐出量のバラツキを分散させることができる。このような方法をとることにより、被着色部間の着色インク充填量のバラツキを5%以下とすることが可能となる。
【0069】
また、被着色部に着弾させる複数滴のインクは、複数回の走査で着弾することが好ましい。この際、被着色部へ着弾する順番は、隣り合う被着色部で異なることが好ましい。更には、被着色部の長手方向に対して1列に着弾する複数滴のインク位置を制御することが好ましい。
【0070】
<条件(a)及び(b)>
本発明の製造方法は、下記条件(a)及び(b)を満たすことを特徴とする。
(a)前記1列に吐出する複数滴のインクのうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲にあること。
(b)前記1列に吐出する複数滴のインクのうち、該1列の両端に着弾するインクの中心位置から、それより内側に着弾するインクであって前記両端に着弾するインクに最も近いものの中心位置までの最短距離が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲にあること。
【0071】
ここで、本発明の製造方法を、図を用いて説明する。図1は、本発明において、被着色部に1列に吐出する複数滴のインク滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴a、a’と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いもの(図1中b、b’;以下、「直近のインク滴」という)とが着弾した様子を示した概略図である。図1において、両端に着弾するインク滴a、a’の中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離は、各々「L1」と表示されている。また、両端に着弾するインク滴a、a’の中心位置と、それより内側に着弾する直近のインク滴の中心位置b、b’との最短距離は、各々「L2」と表示されている。
【0072】
本発明の製造方法においては、被着色部に1列に吐出する複数滴のインクのうち、両端に着弾するインク滴の中心位置a、a’と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離L1が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲となるようにする(条件(a))。1列の両端のインク滴を、この条件を満たすように着弾させることによって、被着色部に着弾したインク滴は前記被着色部の端部又は角にまで十分に広がり、該被着色部の端部又は角のインク白抜けを抑えることができる。
【0073】
また、本発明においては、被着色部の長手方向に1列に着弾する複数滴のインクのうち、該1列の両端に着弾するインクの中心位置a、a’と、それより内側に着弾する直近のインク滴の中心位置b、b’との最短距離L2が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲になるようにする(条件(b))。これによって、被着色部の中心に先に着弾したインク滴による表面張力の影響を小さくし、被着色部のインク白抜けを抑えることができる。また、このようにすることで、被着色部のインクの着弾順序によらず、被着色部のインク白抜けを抑えることができる。
【0074】
本発明によるカラーフィルターの製造方法の一例を図2に示す。図2は、複数の被着色部に対するインクジェットヘッドの走査方法を示す概略図である。
図2では、複数のノズルを有するインクジェットヘッドを被着色部の長手方向と平行に取り付け、1つの被着色部に対して複数のインクジェットヘッドノズルを用いて着色する。
【0075】
本発明では、被着色部の長手方向と垂直方向にインクジェットヘッドを走査しながら、被着色部に対して1列に複数滴のインクを着弾させる(主走査)。その際、1回の走査では全ての被着色部に対して1列に複数滴のインクを着弾させることができない場合があるため、複数回走査することが好ましい。これによって、全ての被着色部に対して適切にインク滴を着弾させることができる。
【0076】
複数回の走査で全ての被着色部にインクを着弾させるためには、1回毎の主走査終了後、インクジェットヘッドを被着色部の長手方向と平行方向に、もしくは被着色部をインクジェットヘッドと平行方向に移動させ(副走査)、再度主走査を行うのが好ましい。図3に、主走査と副走査とを組み合わせて複数回走査する方法の概略図を示す。図3に示すように、走査1回目(主走査)で各被着色部の両端にインク滴を着弾させた後、インクジェットヘッドを移動させ(副走査)、走査2回目(主走査)でより内側へインク滴を着弾させることにより、被着色部へ適切にインク滴を着弾させることができる。なお、インクの着弾順序は特に限定されず、先に両端部に着弾させた後に内側に着弾させても良く、また先に内側に着弾させた後両端部に着弾させても良い。
また、上記副走査による微細なノズル位置の移動とともに、複数ノズルのうち吐出するノズルを適宜選択し、これら副走査とノズル選択とを組み合わせることによって、より高精細な印刷を可能にすることもできる。
【0077】
副走査の際、インクジェットヘッドもしくは被着色部の移動する距離は、インクジェットノズル間の距離と走査回数から求めることができる。図4に示すように、ノズル間隔をL(μm)、走査回数をNとすると、1回の走査あたりにインクジェットヘッドもしくは被着色部の移動する距離はL/N(μm)となる。つまり、走査回数を増やすことで被着色部に対し、高精細にインクを着弾させることが可能となる。例えば走査回数16回、ノズル間隔を160μmとすると、10μm間隔でインクを着弾させることが可能となる。
【0078】
また、必ずしも1回の走査あたりにインクジェットヘッドもしくは被着色部が移動する距離をL/N(μm)としなくてもよく、複数回の走査の中でノズル間隔を埋められるように移動距離を適宜設定しても良い。
【0079】
上記の方法を用いることにより、1つの被着色部に対して複数個のノズルを用いて複数滴のインクを1列に着弾させることができる。これにより次の利点が生まれる。
インクジェットヘッドの同一ノズルから吐出される一滴毎のインク吐出量は5%以下のバラツキを持つため、1つの被着色部にn個のインクを着弾させることで、1/√n倍以下で、異なる被着色部間でのインク量のバラツキを分散させることができる。また、インクジェットのノズル間のインク吐出量は5%以下のバラツキを持つため、1つの被着色部にm個のノズルを用いてインクを着弾させることで、1/√m倍以下で、異なる被着色部間でのインク量のバラツキを分散させることができる。これらにより、全ての被着色部に対してインク量を平均化することができる。
【0080】
また、本発明によるカラーフィルターの製造方法では、図5(a)、(b)に示すように、赤(R)、緑(G)、及び青(B)用のインクジェットヘッド3個(図5(a)中、B、G、R)を被着色部の長手方向と直列に取り付けることで、1回の走査で3色同時の着色が可能となる。更に、赤、緑、青用のインクジェットヘッド3個を複数セット取り付けることで、時間効率を向上させることもできる。
【0081】
以上の方法を用いてカラーフィルターを製造するにあたり、本発明では、インクの表面張力に制限があり、且つ異なる被着色部においてインク濡れ性がばらついていても、インクの着弾させる位置を制御することで被着色部のインク白抜けを大幅に抑えることが可能である。
【0082】
図6に示すように、被着色部の両端に着弾させるインク滴a、a’については、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を飛翔時のインク粒径の50〜150%にすることで、被着色部に着弾したインクは飛翔時のインク粒径以上に濡れ広がり、被着色部の両端におけるインク白抜けを抑えることができる。
【0083】
このL1が飛翔時のインク粒径の下限値50%未満であると、被着色部の外周壁にインクが乗り上げるため、隣接する被着色部へのインク溢れが生じたり、また被着色部の外周壁上にインクが残り被着色部間でインク膜厚や色度に差が生じたりする場合がある。
【0084】
L1は50%に近いほうが好ましい。しかし、複数回の走査をさせることでカラーフィルターを製造する場合、1回の走査終了時にインクジェットヘッドもしくは被着色部が移動する距離は、カラーフィルター製造の時間効率をよくするためには、長いほうがよいため、L1の範囲の上限値は150%とする。このL1の値を150%以下にすることで、図6(a)、(b)、(c)のような被着色部の両端にインク白抜けが発生する可能性を小さくすることができる。
L1のさらに好ましい範囲は、飛翔時のインク粒径の50〜100%である。
【0085】
また本発明でのカラーフィルターの製造方法においては、被着色部に一列にインクを着弾させる際、被着色部の長手方向に1列に着弾する複数滴のインクの中で、1列の両端に着弾するインク滴a、a’の中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインク滴b、b’の中心位置との間の最短距離L2が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲、好ましくは120〜150%の範囲となるようにする。
【0086】
L2が100%未満であると、被着色部両端に着弾するインク滴a、a’と、それより内側に着弾する直近のインク滴b、b’とが、相互にインクの表面張力による影響を受けやすくなり、両インク滴が互いに引き寄せられる。その結果、図6(a)、(b)、(c)及び(d)に示すように被着色部にインク白抜けを生じやすい。
【0087】
図6(a)、(b)、(c)はb、b’のインクがa、a’がより先に着弾した場合において発生しやすい。例えば、図6(a)では、インク滴bが先に着弾し、次いで着弾したインク滴aがインク滴bに引き寄せられた結果、インク滴aの被着色部端部(短辺)側に着色インクが十分に行き渡らず、白抜けが生じたものである。また、図6(b)では、インク滴b’が先に着弾し、次いで着弾したインク滴a’がインク滴b’に引き寄せられた結果、インク滴a’の被着色部端部(短辺)側に着色インクが十分に行き渡らず、白抜けが生じたものである。図6(c)は、かかる状況がインク滴a、a’両側の被着色部端部に生じたものである。
【0088】
また、図6(d)の被着色部のインク白抜けは、インク滴a、a’がインク滴b、b’より先に着弾した場合において発生しやすい。すなわち、インク滴a、a’の着弾後に着弾したインク滴b、b’が、先に着弾したインク滴a、a’に引き寄せられた結果、本来の位置よりも被着色部端部(短辺)側に寄ったため、被着色部中心部に着色インクが十分に行き渡らず、白抜けが生じたものである。
【0089】
またL2が150%を超えると、被着色部両端に着弾するインクa、a’と、それより内側に着弾する直近のインクb、b’との距離が広すぎることにより、図(d)のような被着色部のインク白抜けが発生しやすい。
【0090】
また、図7に示すように、インク滴a、a’、だけでは、カラーフィルターとしての色度を達成するためのインク量が不足する場合、直近のインク滴b−b’間の距離L3の領域に不足している分のインクを可能な限り等間隔に着弾させることで、被着色部のインク白抜けがなく、色度を満たしたカラーフィルターを製造することができる。
【0091】
なお、本発明における飛翔時のインク粒径は、着色インクの種類、インクジェットヘッドに加える電圧等により異なるため特に限定されないが、被着色部の短辺よりも小さいインク粒径とするのが好ましい。インクジェットヘッドノズルは、ノズルの位置精度にもバラツキを持っているため、その位置ずれによる影響を小さくするためにも、被着色部の短辺よりも小さいインク粒径とするのが良い。
【0092】
より好ましくは、飛翔時のインク粒径は被着色部の短辺の50%以下とするのがよい。すなわち、例えば被着色部の短辺をYμmとした場合、飛翔時のインク粒径は被着色部の短辺Yμmの50%以下とする。飛翔時のインク粒径が被着色部の短辺Yμmの50%を超えると、隣接する被着色部へのインク溢れが発生しやすくなる。
【0093】
一方、飛翔時のインク粒径の下限は20μmとするのが好ましい。飛翔時のインク粒径を小さくすればするほど、被着色部へ着弾させるインク滴の個数を増やす必要があり、インクジェットヘッドを走査する回数が増え、カラーフィルターを製造する上で時間効率が悪くなる。そのため、インクジェットヘッドノズルから吐出されるインクの大きさの下限値は20μmとするのが好ましい。
なお、飛翔時のインク粒径は、インクジェットヘッドに加える電圧により調整することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0095】
[ブラックマトリクス基板の製造例]
本実施例で使用するブラックマトリクス基板は、次のような方法で製造した。すなわち、被着色部の外周壁の素材としてネガ型樹脂ブラックマトリクス材料(住友化学株式会社製、商品名「XK−L304SF」)を用い、これをガラス基板上に、ポストベーク後の最終的な膜厚が2μmとなるようにスピンコート塗工した。
次いで、パターンマスクを介して露光量200mJ/cm2でパターンニング露光した後、90℃で110秒間のプリベークを行った。その後、0.5%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を用いて温度24℃で現像し、被着色部を形成した。さらに、室温から230℃まで1時間で昇温し、同温度で20分間維持するポストベークを行うことで被着色部外周壁を形成した。このようにして、大きさ70μm×230μmの略長方形で、被着色部外周壁の高さ1.6μmを持つ被着色部を縦20個、横20個並べたブラックマトリクス基板を製造した。
【0096】
[赤色着色インクの調製例]
被着色部を着色する着色インクを、以下に示す組成(赤色)で調製した。すなわち、以下に示すRed顔料、顔料分散剤、光硬化樹脂及び有機溶剤を下記の割合で混合し、直径0.3mmのジルコニアビーズを500部加え、ペイントシェーカーを用いて4時間分散させた。なお、このインク組成例における「部」とは「重量部」を表す。
【0097】
Red顔料(C.I.ピグメントレッド254):10〜15部
顔料分散剤(AVECIA社製:ソルスパース24000):5部
多官能モノマー(1,9−ノナンジオールジアクリレート):10部
2官能モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):5部
反応性モノマー(2−エチルへキシルアクリレート):10〜20部
オリゴマー(東亜合成社製:M−8030):5部
光重合開始剤(チバスペシャルケミカルズ社製:イルガキュアー369):0.5部
溶剤(ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート):残部
【0098】
[実施例1]
上記カラーフィルター用基板の形成例で製造された大きさ70μm×230μmの略長方形で、被着色部外周壁の高さ1.6μmを持つ被着色部を縦20個、横20個並べたブラックマトリクス基板に対し、インクジェット方式を用いて着色インクを吐出し、該被着色部を着色した。
被着色部を着色する走査は、インクジェットヘッドノズル間隔が160μmのヘッドを用い、16回の走査回数で行った。この16回の走査をさせる際、1回の走査あたりにインクジェットヘッドもしくは被着色部が移動する距離は10μmとする。本実施例1では、インクジェットヘッドを移動させた。
【0099】
上記インクジェットヘッドノズルを用いて、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
なお、飛翔時のインク粒径は次の方法で測定した:シャーレ上にインクを1千万滴吐出させ、インクを乾燥させる。吐出前と乾燥後のシャーレの重さの変化と、インクの固形分、比重からインクジェットヘッドノズル1個あたりから吐出した1滴の体積(平均値)を計算する。得られた体積から飛翔時のインク粒径を計算する。
【0100】
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を30μm(飛翔時のインク粒径の100%)とした。また、1列の両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2を30μm(飛翔時のインク粒径の100%)とした。残りの6滴はL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは確認できなかった。図7に本実施例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
【0101】
また、被着色部の着色インクの充填量を、インクを乾燥させた後、被着色部の膜厚を測定することにより、算出した。被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0102】
[実施例2]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を20μm(飛翔時のインク粒径の約67%)とした。また、1列の両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2を40μm(飛翔時のインク粒径の約133%)とした。残りの6滴はL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは確認できなかった。図8に本実施例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0103】
[比較例1]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。飛翔時のインク粒径は30μmであった。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を30μm(飛翔時のインク粒径の100%)とした。残りの8滴をL2とL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。その結果、1列の両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2は20μm(飛翔時のインク粒径の約67%)であった。
この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜け箇所が約20箇所発生した。図9に本比較例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0104】
[比較例2]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
飛翔時のインク粒径は30μmであった。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を50μm(飛翔時のインク粒径の約167%)とした。また、両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2を30μm(飛翔時のインク粒径の約167%)とした。残り6滴は図のL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。
この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは約40箇所発生した。図10に本比較例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0105】
[比較例3]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
飛翔時のインク粒径は30μmであった。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を20μm(飛翔時のインク粒径の約67%)とした。また、両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置L2までの最短距離を50μm(飛翔時のインク粒径の約167%)とした。残りの6滴はL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは約5箇所発生した。図11に本比較例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、インクジェットヘッドを、略長方形の被着色部の長手方向に垂直に複数回走査させて1滴毎又はノズル毎のインク吐出量のバラツキを分散させる方法において、被着色部ごとにインクの着弾順序が異なる場合でも、被着色部内のインク白抜けを低減することができる。したがって、被着色部毎のインク吐出量の均一性を高く保ちながら、各被着色部のインク白抜けを有効に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のカラーフィルターの製造方法の一例を示す概略図であり、被着色部に1列に吐出する複数滴のインク滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴a、a’と、その直近のインク滴b、b’とが着弾した様子を示した概略図である。
【図2】本発明によるカラーフィルターの製造方法の一例を示す図であり、複数の被着色部に対するインクジェットヘッドの走査方法を示す概略図である。
【図3】本発明において、主走査と副走査とを組み合わせて複数回走査する方法の一例を示す概略図である。
【図4】副走査におけるインクジェットヘッドもしくは被着色部の移動する距離と、インクジェットノズル間の距離L及び走査回数Nとの関係を示す概略図である。
【図5】本発明において、R、G、及びB用のインクジェットヘッド3個を被着色部の長手方向と直列に取り付けて被着色部を着色する方法を示す概略図である。
【図6】本発明において、インク白抜けの様子を表す概略図である。
【図7】実施例1における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図8】実施例2における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図9】比較例1における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図10】比較例2における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図11】比較例3における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【符号の説明】
【0108】
a,a’,b,b’・・・・インク滴
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に関する。詳しくは、本発明は、被着色部にインクジェット方式によって着色インクを吐出する工程を含むカラーフィルターの製造方法において、被着色部内のインク白抜けの低減効果に優れ、且つ被着色部毎の充填インク量の均一性に優れた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶ディスプレイ等のカラー表示装置に使用されるカラーフィルターの製造方法として、インクジェット方式が採用されている。
インクジェット方式によるカラーフィルターの製造において、被着色部毎に充填するインク量が均一であることが重要とされている。
【0003】
しかしながら、同一ノズルから吐出されるインク量が1滴毎にバラツキをもつことや、異なるノズル間でのインク吐出量にバラツキを持つことにより、線状の欠陥を生じたり、また、異なる被着色部で充填されたインク量が異なる、即ち膜厚が被着色部間で異なることとなり、カラーフィルターとしての輝度や色度にムラを生じたりする問題がある。
【0004】
従来のインクジェット方式によるカラーフィルターの製造には、概ね長方形の被着色部の長手方向と平行にインクジェットヘッドを走査し、被着色部に1列に複数滴のインクを着弾させる。
【0005】
しかし、この方法は1つの被着色部に対し1つのノズルでインクを充填することになり、ノズル毎の吐出量のバラツキの影響を受ける。これにより、被着色部に1列に複数滴のインクを充填することで、1滴毎のインク吐出量のバラツキを分散させることはできても、異なる被着色部間で色濃度や膜厚が異なるといった問題があった。
【0006】
また、被着色部の間隔とインクジェットヘッドのノズル間隔を一致させることが、インクジェットヘッドの製造の点で困難である。この方法によると、1回の走査で使用されるインクジェットノズルは、被着色部とインクジェットノズルの位置が合ったものしか使われないため、ノズル間隔と走査時間との間で効率が悪い。
【0007】
これらの問題を解決するための手法として、被着色部の間隔とインクジェットノズル間隔を合わせるために、インクジェットヘッドを斜めに取り付けることで、工程時間の短縮が図られたが、インクジェットヘッドの取り付けや調整が困難であったり、また、インクジェットヘッドが被着色部に対して斜めに取り付けられており、各ノズルから被着色部にインクを着弾させるためのタイミングの制御が、ヘッドにより異なるため、困難であったりする問題があった(特許文献1参照)。
【0008】
以上に挙げた問題を解決する手法として、インクジェットヘッドを被着色部の長手方向と垂直に移動させながら、着色インクを被着色部の長手方向に対して1列に複数滴吐出する手法がある。この方法によれば、1つの被着色部に対して複数個のノズルを用いるのが容易となり、1滴毎のインク吐出量のバラツキを分散させられるだけでなく、ノズル毎のインク吐出量のバラツキをも分散させることができる。これにより、膜厚が被着色部間で均一化することができ、また、カラーフィルターとしての輝度や色度にムラを無くすことができる(特許文献2参照)。なお、この方法は1つの被着色部に対し1回の走査でノズルの個数分だけしかインクを着弾させることができないため、カラーフィルターの色度を満たすために必要なインク量を被着色部に着弾させるには、複数回の走査が必要となる場合がある。
【0009】
特許文献2記載の方法は、ノズル間隔と被着色部の長手方向の間隔が一致する必要がなく、また1回の走査あたりに使用するノズル個数が多いことから、時間効率の良い手法である。更には、インクジェットヘッドを斜めに取り付けることで、1つの被着色部に対して使用するノズルの数を多くすることも可能である。しかしながら、インクジェットヘッドの取り付けの点と、各ノズルから被着色部にインクを着弾させるためのタイミングを制御する必要がある点で、困難がある。
【0010】
また、この方法を用いて複数回の走査をする際、ノズル間隔と被着色部の長手方向の間隔が一致する必要がないことから、被着色部に対して一列にインクを着弾させる際、隣り合う被着色部でインク着弾順序が異なる場合がある。しかし、これにより最初に被着色部の中心付近にインク滴が着弾された場合、後に被着色部に着弾したインク滴は、インクの表面張力により最初に着弾したインク滴に引き寄せられて一つの液滴になる力が働き、被着色部のインク白抜けが発生しやすい状態となる。
【0011】
この表面張力による被着色部のインク白抜けを簡単に抑えるためには、着色インクの表面張力を小さくして被着色部のインク濡れ性を良くする(インクと被着色部との接触角を小さくする)ことが有効な手法である。
【0012】
しかし、インクジェット方式でインクを安定に吐出させるためには、インクの表面張力が高いほうが好ましい。インクの表面張力が低ければ、インクジェットヘッドから吐出されたインクが空気中を飛翔する際、液滴を形成し難く、被着色部に着弾した際にインク塵を伴うためである。そのため、インクの表面張力の調整のみでは被着色部のインク白抜けを十分に抑えることはできない。
【0013】
また、インクの表面張力以外にも被着色部のインク白抜けの原因として、被着色部とその被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキがある。
【0014】
被着色部のインク濡れ性を示す指標として、被着色部とインクとの接触角や、被着色部外周壁とインクとの接触角がある。被着色部内のインク白抜けをなくすためには、被着色部とインクとの接触角が低いほうが好ましい。また、隣接する被着色部へのインク溢れを抑えるためには、被着色部外周壁とインクとの接触角は大きいほうが好ましい。更には、被着色部に着弾したインク滴が、被着色部外周壁へ移動しないようにするためには、被着色部とインクとの接触角と被着色部外周壁とインクとの接触角との差が大きい方が好ましいことが知られている(特許文献3参照)。
【0015】
しかしながら、被着色部と被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキは、カラーフィルター用基板を製造する際、または製造した後に被着色部に対してインク滴を着弾させるまでに発生する。すなわち、例えばカラーフィルター用基板製造時に形成する遮光性の隔壁に対する露光、現像、洗浄等の工程において、しばしばインク濡れ性のバラツキが発生する。
【0016】
カラーフィルター用基板は、ガラス等の透明基板上に遮光性の隔壁を形成している。この隔壁の形成法としては、光感光性の黒色樹脂膜を塗布したのち、フォトマスクを介して所定の隔壁パターンを露光焼付けし現像処理する方法や、遮光性の樹脂膜上にフォトレジストパターンを公知の方法で形成したのち遮光性樹脂膜をエッチングする方法などを採用することが可能である。また、遮光性の膜を金属薄膜とし、エッチングに使用したレジスト膜を隔壁として使用しても良い。また、フォトマスクを用いた露光に替わって直接露光パターンを描画する直描機を用いてもよく、また遮光性樹脂をレーザー加工機で加工することで形成しても良い。
【0017】
被着色部と被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキを抑えるためには、上記の方法により形成する遮光性の隔壁に対して、均一な露光、現像、その後の洗浄が必要となる。また、実際に被着色部に対してインクを着弾させるまでに空気中の汚れ等が付着する場合がある。
【0018】
被着色部と被着色部外周壁のインク濡れ性のバラツキを抑え、被着色部のインク白抜けを抑えるための手法として被着色部を洗浄等により親水化し、インク濡れ性を向上させる方法があり、これによりインクの白抜けを抑えることは可能である。しかし、洗浄等によっても被着色部のインクの濡れ性を完全に均一化することは実際上困難であり、被着色部にインク白抜けが発生することを完全に抑えることはできなかった。
このように、被着色部のインク白抜けを低減する手段は未だ十分ではなく、インク白抜けを有効に低減しうるカラーフィルター製造方法の開発が望まれていた。
【0019】
【特許文献1】特開2006−099121号公報
【特許文献2】特開2004−358299号公報
【特許文献3】特開2005−352105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、長辺と短辺とからなる外周壁を有する略長方形の被着色部にインクジェット方式により着色インクを吐出してカラーフィルターを製造する方法において、インクの着弾順序によらず、インクの白抜けを有効に抑えることができる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、インクジェットヘッドを前記被着色部の長手方向に対し垂直に走査させながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する工程を含む方法において、(a)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離を、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲とし、かつ(b)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いものの中心位置との間の最短距離を、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲とすることにより、上記課題を有効に解決しうることを見いだし、本発明に到達した、
【0022】
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に示すカラーフィルターの製造方法を提供するものである。
1)長辺と短辺からなる外周壁を有する略長方形の被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査しながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する吐出工程を含むカラーフィルターの製造方法において、下記条件(a)及び(b)を満たすことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
(a)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲にあること。
(b)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いものの中心位置との間の最短距離が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲にあること。
【0023】
2)前記被着色部に吐出される着色インクの充填量のバラツキが、同一色の被着色部間において5%以下であることを特徴とする、1)記載のカラーフィルターの製造方法。
【0024】
3)前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを複数回走査することを特徴とする、1)又は2)記載のカラーフィルターの製造方法。
【0025】
4)前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査した後、前記被着色部の長手方向に対して平行にインクジェットヘッドもしくは被着色部を移動し、再度被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査することを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、インクジェットヘッドを、略長方形の被着色部の長手方向に垂直に複数回走査させて1滴毎又はノズル毎のインク吐出量のバラツキを分散させる方法において、被着色部ごとにインクの着弾順序が異なる場合でも、被着色部内のインク白抜けを低減することができる。したがって、被着色部毎のインク吐出量(充填量)の均一性を高く保ちながら、各被着色部のインク白抜けを有効に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、長辺と短辺からなる外周壁を有する略長方形の被着色部に向けてインクジェットヘッドから着色インクを吐出することによりカラーフィルターを製造する方法であって、インクジェットヘッドを前記被着色部の長手方向に対し垂直に移動させながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する工程を含む方法である。
【0028】
(1)被着色部
本発明における被着色部は、ブラックマトリクス基板上に複数個形成されている。すなわち、本発明のカラーフィルター用基板は、多数の被着色部を持つブラックマトリクス基板に着色インクを着色させることで形成される。
【0029】
<ブラックマトリクス基板>
本発明に係る多数の被着色部を持つブラックマトリクス基板は、所定配列の複数の凹状のインク充填用被着色部と、その被着色部の外周を覆うブラックマトリクス(外周壁)を持つ。
【0030】
従来法によるブラックマトリクスは以下の2つに大別することができる。
一つはフォトリソグラフィー法により加工したCr等の金属膜からなるブラックマトリクスである。この利点は解像度及び遮光率が高く、光学濃度(OD)3.0以上のものが膜厚0.1μm近辺で容易に得られるという点である。問題点としては、金属膜であって可視光の反射率が約40%と高いため、外光の反射による表示画像のコントラストの低下や、周囲の明るい物体がブラックマトリクス面で反射して表示画像に重なるといった点、またCr膜のスパッタ及びフォトリソグラフィー加工と工程が長いので低コスト化が困難である、という点が挙げられる。
【0031】
もう一つは、黒色顔料を分散した有機樹脂膜をフォトリソグラフィー法、印刷法、あるいはフォトエッチング法でパターニングするか、または、感光性樹脂膜をパターニングした後、黒色顔料で染色して得られる黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリクスである。この利点は、黒色であるため可視光の反射率が数%以下と低く、外光の反射による表示画像のコントラストの低下や、周囲の明るい物体の写りこみが金属膜ブラックマトリクスに比べ大幅に減少し、画質が向上する点である。
【0032】
問題点は、遮光率が低い点である。即ち、フォトリソグラフィー法では遮光率を上げると、基板と界面に到達する露光光量が減少するため、高遮光率とすると(例えば光学濃度3.0では基板表面に到達する透過光量は1/1000)現像時に有機樹脂膜のパターン剥がれが生じブラックマトリクスが形成できなくなる。これを避けるために露光量を増やすと、パターン寸法の太りが生じ、所定の解像度が得られなくなる。
【0033】
また、印刷法やフォトエッチング法ではフォトリソグラフィー法に比べて制約は小さいが、黒色着色剤の含有量に限界があるため、高遮光率にすると印刷時の膜厚が大きくなり(例えば膜厚1.0μmで光学濃度2.0の場合、光学濃度を3.0に上げると膜厚は3.0μmとなる)、フォトリソグラフィー法に比べて解像度が低下する。
【0034】
以上に挙げた利点と問題点から、一般的には、ブラックマトリクスは、黒色有機樹脂膜をフォトリソグラフィー法により形成する方法で製造されている。
【0035】
黒色有機樹脂膜をフォトリソグラフィー法によって形成して得られるブラックマトリクスは、次のように作製される。透明基板上にフォトレジスト(このフォトレジストにはネガ型とポジ型があり、露光により露光部が硬化するものをネガ型、露光により露光部が可溶化するものをポジ型とする)を塗布した後、露光、現像、エッチングを行うことにより、所定配列の複数の凹状のインク充填用被着色部が形成され、また被着色部に外周壁としてブラックマトリクスが形成される。但し、この方法により、全ての被着色部または被着色部外周壁の表面状態(インク濡れ性)を均一にするためには、均一なフォトレジストの塗布、露光、現像、洗浄が必要とされる。
【0036】
<被着色部の形状>
本発明の被着色部は、長軸と短軸をもつ略長方形をしており、長方形状又は楕円形状であってもよい。また、長辺及び短辺を有する外周壁(ブラックマトリクス)により外周を覆われている。1個の被着色部のサイズは特に限定されないが、長辺が70〜420μm、短辺が20〜100μm程度のサイズを有する。
【0037】
(2)着色インク
本発明の着色インクは、着色剤(顔料、顔料分散剤)と透明樹脂成分(溶剤、樹脂、重合開始剤等)で構成されている。
【0038】
<着色剤>
着色剤としての顔料は、画素(画素部)のR、G、B等や被着色部外周壁の求める色に合わせて、有機着色剤及び無機着色剤の中から任意のものを選んで使用することができる。有機着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。また、無機着色剤としては、例えば、無機顔料、体質顔料等を用いることができる。
【0039】
これらの中で有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的にはカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0040】
また、前記無機顔料あるいは体質顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において、顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
画素を形成する場合には、顔料をインクジェットインクの固形分全量に対して、通常は1〜60重量%、好ましくは15〜40重量%の割合で配合する。顔料が少なすぎると、インクジェットインクを所定の膜厚(通常は0.1〜2.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがある。また、顔料が多すぎると、インクジェットインクを基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがある。
【0042】
<溶剤>
本発明で用いられる溶剤は、インクジェット装置の印刷適性により選択される。好ましくは沸点が200℃以上、より好ましくは240℃以上のものから選択される。前記溶剤の沸点が200℃以上であることにより、適度な乾燥性及び蒸発性を有するため、ヘッドから吐出した時の直進性、安定性に優れ、更に効率よく乾燥させることができ、着弾したインク滴がインク層形成領域全体の隅々にまで濡れ広がり易くなる。その結果、多様化している基板に対しても、被着色部外周壁の際部分にまで着弾したインクが濡れ広がることが可能になり、画素の色抜けや輝度低下を防止することができる。沸点が200℃未満であるとノズル近傍での乾燥性が著しく高くなり、その結果ノズル詰まり等の不良発生を招く場合がある。
【0043】
また、前記溶剤は、表面張力範囲が25〜35mN/mのものを用いることが好ましく、より好ましくは26〜32mN/mのものである。表面張力が高すぎるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼす、あるいは仕切部隙間内でインクが濡れ拡がらないという欠点が生じる場合がある。表面張力が低すぎるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼす、あるいはインクが仕切部を越えて拡散してしまい混色する可能性が高くなるという欠点が生じる場合がある。
かかる溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0044】
<顔料分散剤>
顔料分散剤は、顔料を良好に分散させるためにインク中に必要に応じて配合される。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。また、界面活性剤の中でも高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0045】
<樹脂>
本発明の着色インクの透明樹脂成分(透明樹脂溶液)に含まれる樹脂としては、光硬化型樹脂組成物、熱硬化型樹脂組成物等が挙げられる。
【0046】
(a)光硬化型樹脂組成物
光硬化型樹脂組成物としては、比較的分子量の高い重合体(高分子量重合体)、光重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマー、オリゴマー、光重合性官能基を2つ有する2官能モノマー、光重合性官能基を1つ有する単官能のモノマーや光により活性化する光重合開始剤から構成される。また、比較的低粘度の反応性モノマーを反応性希釈剤として配合することも可能である。その他の添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0047】
(高分子量重合体)
比較的分子量が高い重合体(高分子量重合体)とは、所謂モノマーやオリゴマーよりも分子量が高いものをいい、重量平均分子量5,000以上を目安にすることができる。前記重合体としては、それ自体は重合反応性のない重合体、及び、それ自体が重合反応性を有する重合体のいずれを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いても良い。
前記重合体は、上記透明樹脂成分(溶剤、樹脂、重合開始剤等)中の固形分全量に対して、通常、1〜50重量%の割合で配合する。ここで、配合割合を特定するためのインクの固形分とは、透明樹脂成分中の溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマー等も固形分に含まれる。
【0048】
本発明においてはカラーフィルター用透明樹脂溶液中に、比較的分子量が高い重合体を配合する。この中で、それ自体が重合反応性を有する重合体であるオリゴマーは、市場において最も容易に入手でき、例えば、エステルアクリレート類、エーテルアクリレート類、ウレタンアクリレート類、エポキシアクリレート類、アミノ樹脂アクリレート類、アクリル樹脂アクリレート類、不飽和ポリエステル類などを例示できる。
【0049】
本発明に係るインクの粘度が高すぎて吐出ヘッドからの吐出性に悪影響を及ぼさないように、それ自体が重合反応性を有する重合体として用いられるエチレン性二重結合含有化合物の分子量は、重量平均分子量で25,000以下であることが好ましい。
【0050】
(多官能モノマー)
本発明における着色インクは、前記透明樹脂溶液中に、多官能モノマーを配合する。従来から、光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化層の膜強度や基板に対する密着性を上げるために、光硬化性組成物中に重合性官能基を2個以上有するモノマー(多官能モノマー)が配合されているが、十分な膜強度や密着性を得るために、通常は3官能以上の多官能モノマーが用いられている。
【0051】
しかしながら、官能基の数が大きい多官能モノマーを光硬化性組成物に配合してインクジェット方式で基板上に吹き付けると、吹き付け作業の間にインクジェットヘッドの先端部分でインクが乾燥して粘度が徐々に大きくなっていき、インクの吐出性が悪くなる。
多官能モノマーの配合割合は、透明樹脂溶液の固形分全量に対して、通常、20〜70重量%の割合で配合する。
【0052】
ここで、前記多官能モノマーの配合割合が全固形分の20重量%に満たない場合には、塗膜の架橋密度が低くなり、塗膜の耐溶剤性、密着性、硬さが劣り、十分な特性が得られなくなるおそれがある。また、前記多官能モノマーの配合割合が全固形分の70重量%を超える場合には、インク組成物(透明樹脂溶液)がモノマーによって十分に希釈されず、インクの粘度が初めから高いか或いは溶剤の揮発後に高くなり、インクジェットヘッドの穴詰まりを起こすおそれがある。
【0053】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、比較的高分子量の重合体、多官能モノマー、2官能モノマーや単官能モノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)や、各材料の種類を考慮して適宜選択されるが、着色したインクを硬化させるために、必要に応じて添加する。
【0054】
重合開始剤は、光や熱によって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤が挙げられる。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
【0055】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0056】
(b)熱硬化型樹脂組成物
本発明で用いられる熱硬化型樹脂組成物は、熱重合性のバインダーと2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーとを少なくとも含有することを特徴とする。熱硬化型樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、分散剤、硬化促進剤、或いはその他の添加剤を配合してもよい。また、熱硬化性透明樹脂組成物に、インクジェット方式に適用するための適切な流動性、吐出性を付与するために、上記の各成分を溶剤(希釈剤)に溶解又は分散させてもよい。また、2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、4官能以上のエポキシ基含有樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(エポキシ基含有モノマー)
上記熱硬化型樹脂組成物には、熱硬化性成分として、2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーを1種又は2種以上組み合わせて用いる。2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーは、熱硬化性樹脂のなかでも比較的粘度が低いうえに、乾燥による粘度上昇が少ないので、このような2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーを熱硬化性成分として用いるインクは、インクジェット方式による吹き付け作業中に、ヘッドの先端での粘度上昇を起こし難く、ヘッドの目詰まりを発生させず、作業中におけるインクの吐出性が安定する。そのため、インクの吐出量や吐出方向が一定に保たれ、インクを基板上に所定のパターン通り正確に、且つ、均一に付着させることができる。
【0058】
(その他の熱硬化性成分)
また、熱硬化型樹脂組成物には、上記の2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、必要に応じて、単官能のエポキシ基含有モノマー、及び/又は、4官能以上のエポキシ基含有樹脂、及び/又は、エポキシ基含有モノマー以外の熱硬化性成分を配合してもよい。
【0059】
2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、4官能以上のエポキシ基含有樹脂を配合するのが好ましい。熱硬化型樹脂組成物中に配合されるエポキシ基含有成分が全て2官能乃至3官能である場合には、インクの乾燥による粘度上昇が起こり難いので、インクジェットヘッドの吐出性が安定するが、その反面、インク層を硬化して得られた硬化層の膜強度や基板に対する密着性が不十分となる場合がある。そこで、上記の2官能乃至3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、4官能以上のエポキシ基含有樹脂を適量配合することにより、硬化層のパターンに十分な膜強度と密着性を付与することができる。
【0060】
(硬化剤)
本発明で用いられる熱硬化型樹脂組成物には、通常、硬化剤が配合される。硬化剤としては、例えば多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸が用いられる。
【0061】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0062】
本発明における着色インクは、着色剤、溶剤、顔料分散剤、樹脂、重合開始剤等を1つの着色インクとして被着色部に着弾させても良いし、着色剤と透明樹脂溶液(溶剤、樹脂、重合開始剤等からなる溶液)の2種類のインク液に分け、被着色部に2回に分けて着弾させても良い。
【0063】
上記の被着色部外周壁と着色インクとの接触角は約20°であるのが好ましく、被着色部と着色インクとの接触角は5°〜10°が一般的である。被着色部のインク白抜けを抑えるためには、被着色部と着色インクとの接触角は5°未満が好ましいが、被着色部全てにわたって接触角を5°未満に抑えることは、基板製法や洗浄の工程時間、コスト等の面から難しいため、現実的には被着色部と着色インクとの接触角が5°〜10°の被着色部を使って製造される。
【0064】
(3)インクジェットヘッド
本発明では、被着色部に対し、インクジェット方式を用いて着色する。使用するインクジェット装置としては、インク吐出方法の相違によりピエゾ変換方式と熱交換方式があり、特にピエゾ変換方式が好適である。インクの粒子化周波数は4〜100KHz程度である。
【0065】
本発明では、インクジェットヘッドは略長方形の被着色部の長手方向と平行に取り付けられ、該長手方向と垂直に移動(走査)する。該インクジェットヘッドには、複数個のノズルが設けられており、1つの被着色部に対して該複数個のインクジェットヘッドノズルから着色インクが吐出されるようにするのが好ましい。インクジェットヘッド1個当たりのノズル数は特に限定されないが、可能な限り高解像度のヘッドを用いるのが好ましい。また、ピエゾ変換方式の場合、インクジェットヘッドの高解像度化は困難であるため、低解像度のヘッドを並列に並べて見かけの解像度を向上させても良い。
【0066】
各ノズルのノズル径としては10〜30μm程度である。また、複数個のノズル間の距離は特に限定されず、被着色部のサイズや、必要なインク量等に応じて適宜調整される。
その他、本発明においては、例えば特許公開2007−237599等に記載される公知の一般的な仕様のインクジェットヘッドを用いることができる。
【0067】
(4)インクジェットヘッドの走査
本発明のカラーフィルターの製造方法は、インクジェットヘッドを前記被着色部の長手方向に対し垂直に走査(移動)させながら、着色インクを該被着色部の長手方向に沿って1列に複数滴吐出し、着弾させる工程を含む。
【0068】
1つの被着色部に対して複数滴のインク滴を着弾させることで、インクジェットヘッド固有の1滴あたりの吐出量のバラツキを分散させることができる。また、この方法において1つの被着色部に対して2以上のノズルを用いて複数滴のインク滴を着弾させることにより、ノズル毎の吐出量のバラツキを分散させることができる。このような方法をとることにより、被着色部間の着色インク充填量のバラツキを5%以下とすることが可能となる。
【0069】
また、被着色部に着弾させる複数滴のインクは、複数回の走査で着弾することが好ましい。この際、被着色部へ着弾する順番は、隣り合う被着色部で異なることが好ましい。更には、被着色部の長手方向に対して1列に着弾する複数滴のインク位置を制御することが好ましい。
【0070】
<条件(a)及び(b)>
本発明の製造方法は、下記条件(a)及び(b)を満たすことを特徴とする。
(a)前記1列に吐出する複数滴のインクのうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲にあること。
(b)前記1列に吐出する複数滴のインクのうち、該1列の両端に着弾するインクの中心位置から、それより内側に着弾するインクであって前記両端に着弾するインクに最も近いものの中心位置までの最短距離が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲にあること。
【0071】
ここで、本発明の製造方法を、図を用いて説明する。図1は、本発明において、被着色部に1列に吐出する複数滴のインク滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴a、a’と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いもの(図1中b、b’;以下、「直近のインク滴」という)とが着弾した様子を示した概略図である。図1において、両端に着弾するインク滴a、a’の中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離は、各々「L1」と表示されている。また、両端に着弾するインク滴a、a’の中心位置と、それより内側に着弾する直近のインク滴の中心位置b、b’との最短距離は、各々「L2」と表示されている。
【0072】
本発明の製造方法においては、被着色部に1列に吐出する複数滴のインクのうち、両端に着弾するインク滴の中心位置a、a’と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離L1が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲となるようにする(条件(a))。1列の両端のインク滴を、この条件を満たすように着弾させることによって、被着色部に着弾したインク滴は前記被着色部の端部又は角にまで十分に広がり、該被着色部の端部又は角のインク白抜けを抑えることができる。
【0073】
また、本発明においては、被着色部の長手方向に1列に着弾する複数滴のインクのうち、該1列の両端に着弾するインクの中心位置a、a’と、それより内側に着弾する直近のインク滴の中心位置b、b’との最短距離L2が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲になるようにする(条件(b))。これによって、被着色部の中心に先に着弾したインク滴による表面張力の影響を小さくし、被着色部のインク白抜けを抑えることができる。また、このようにすることで、被着色部のインクの着弾順序によらず、被着色部のインク白抜けを抑えることができる。
【0074】
本発明によるカラーフィルターの製造方法の一例を図2に示す。図2は、複数の被着色部に対するインクジェットヘッドの走査方法を示す概略図である。
図2では、複数のノズルを有するインクジェットヘッドを被着色部の長手方向と平行に取り付け、1つの被着色部に対して複数のインクジェットヘッドノズルを用いて着色する。
【0075】
本発明では、被着色部の長手方向と垂直方向にインクジェットヘッドを走査しながら、被着色部に対して1列に複数滴のインクを着弾させる(主走査)。その際、1回の走査では全ての被着色部に対して1列に複数滴のインクを着弾させることができない場合があるため、複数回走査することが好ましい。これによって、全ての被着色部に対して適切にインク滴を着弾させることができる。
【0076】
複数回の走査で全ての被着色部にインクを着弾させるためには、1回毎の主走査終了後、インクジェットヘッドを被着色部の長手方向と平行方向に、もしくは被着色部をインクジェットヘッドと平行方向に移動させ(副走査)、再度主走査を行うのが好ましい。図3に、主走査と副走査とを組み合わせて複数回走査する方法の概略図を示す。図3に示すように、走査1回目(主走査)で各被着色部の両端にインク滴を着弾させた後、インクジェットヘッドを移動させ(副走査)、走査2回目(主走査)でより内側へインク滴を着弾させることにより、被着色部へ適切にインク滴を着弾させることができる。なお、インクの着弾順序は特に限定されず、先に両端部に着弾させた後に内側に着弾させても良く、また先に内側に着弾させた後両端部に着弾させても良い。
また、上記副走査による微細なノズル位置の移動とともに、複数ノズルのうち吐出するノズルを適宜選択し、これら副走査とノズル選択とを組み合わせることによって、より高精細な印刷を可能にすることもできる。
【0077】
副走査の際、インクジェットヘッドもしくは被着色部の移動する距離は、インクジェットノズル間の距離と走査回数から求めることができる。図4に示すように、ノズル間隔をL(μm)、走査回数をNとすると、1回の走査あたりにインクジェットヘッドもしくは被着色部の移動する距離はL/N(μm)となる。つまり、走査回数を増やすことで被着色部に対し、高精細にインクを着弾させることが可能となる。例えば走査回数16回、ノズル間隔を160μmとすると、10μm間隔でインクを着弾させることが可能となる。
【0078】
また、必ずしも1回の走査あたりにインクジェットヘッドもしくは被着色部が移動する距離をL/N(μm)としなくてもよく、複数回の走査の中でノズル間隔を埋められるように移動距離を適宜設定しても良い。
【0079】
上記の方法を用いることにより、1つの被着色部に対して複数個のノズルを用いて複数滴のインクを1列に着弾させることができる。これにより次の利点が生まれる。
インクジェットヘッドの同一ノズルから吐出される一滴毎のインク吐出量は5%以下のバラツキを持つため、1つの被着色部にn個のインクを着弾させることで、1/√n倍以下で、異なる被着色部間でのインク量のバラツキを分散させることができる。また、インクジェットのノズル間のインク吐出量は5%以下のバラツキを持つため、1つの被着色部にm個のノズルを用いてインクを着弾させることで、1/√m倍以下で、異なる被着色部間でのインク量のバラツキを分散させることができる。これらにより、全ての被着色部に対してインク量を平均化することができる。
【0080】
また、本発明によるカラーフィルターの製造方法では、図5(a)、(b)に示すように、赤(R)、緑(G)、及び青(B)用のインクジェットヘッド3個(図5(a)中、B、G、R)を被着色部の長手方向と直列に取り付けることで、1回の走査で3色同時の着色が可能となる。更に、赤、緑、青用のインクジェットヘッド3個を複数セット取り付けることで、時間効率を向上させることもできる。
【0081】
以上の方法を用いてカラーフィルターを製造するにあたり、本発明では、インクの表面張力に制限があり、且つ異なる被着色部においてインク濡れ性がばらついていても、インクの着弾させる位置を制御することで被着色部のインク白抜けを大幅に抑えることが可能である。
【0082】
図6に示すように、被着色部の両端に着弾させるインク滴a、a’については、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を飛翔時のインク粒径の50〜150%にすることで、被着色部に着弾したインクは飛翔時のインク粒径以上に濡れ広がり、被着色部の両端におけるインク白抜けを抑えることができる。
【0083】
このL1が飛翔時のインク粒径の下限値50%未満であると、被着色部の外周壁にインクが乗り上げるため、隣接する被着色部へのインク溢れが生じたり、また被着色部の外周壁上にインクが残り被着色部間でインク膜厚や色度に差が生じたりする場合がある。
【0084】
L1は50%に近いほうが好ましい。しかし、複数回の走査をさせることでカラーフィルターを製造する場合、1回の走査終了時にインクジェットヘッドもしくは被着色部が移動する距離は、カラーフィルター製造の時間効率をよくするためには、長いほうがよいため、L1の範囲の上限値は150%とする。このL1の値を150%以下にすることで、図6(a)、(b)、(c)のような被着色部の両端にインク白抜けが発生する可能性を小さくすることができる。
L1のさらに好ましい範囲は、飛翔時のインク粒径の50〜100%である。
【0085】
また本発明でのカラーフィルターの製造方法においては、被着色部に一列にインクを着弾させる際、被着色部の長手方向に1列に着弾する複数滴のインクの中で、1列の両端に着弾するインク滴a、a’の中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインク滴b、b’の中心位置との間の最短距離L2が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲、好ましくは120〜150%の範囲となるようにする。
【0086】
L2が100%未満であると、被着色部両端に着弾するインク滴a、a’と、それより内側に着弾する直近のインク滴b、b’とが、相互にインクの表面張力による影響を受けやすくなり、両インク滴が互いに引き寄せられる。その結果、図6(a)、(b)、(c)及び(d)に示すように被着色部にインク白抜けを生じやすい。
【0087】
図6(a)、(b)、(c)はb、b’のインクがa、a’がより先に着弾した場合において発生しやすい。例えば、図6(a)では、インク滴bが先に着弾し、次いで着弾したインク滴aがインク滴bに引き寄せられた結果、インク滴aの被着色部端部(短辺)側に着色インクが十分に行き渡らず、白抜けが生じたものである。また、図6(b)では、インク滴b’が先に着弾し、次いで着弾したインク滴a’がインク滴b’に引き寄せられた結果、インク滴a’の被着色部端部(短辺)側に着色インクが十分に行き渡らず、白抜けが生じたものである。図6(c)は、かかる状況がインク滴a、a’両側の被着色部端部に生じたものである。
【0088】
また、図6(d)の被着色部のインク白抜けは、インク滴a、a’がインク滴b、b’より先に着弾した場合において発生しやすい。すなわち、インク滴a、a’の着弾後に着弾したインク滴b、b’が、先に着弾したインク滴a、a’に引き寄せられた結果、本来の位置よりも被着色部端部(短辺)側に寄ったため、被着色部中心部に着色インクが十分に行き渡らず、白抜けが生じたものである。
【0089】
またL2が150%を超えると、被着色部両端に着弾するインクa、a’と、それより内側に着弾する直近のインクb、b’との距離が広すぎることにより、図(d)のような被着色部のインク白抜けが発生しやすい。
【0090】
また、図7に示すように、インク滴a、a’、だけでは、カラーフィルターとしての色度を達成するためのインク量が不足する場合、直近のインク滴b−b’間の距離L3の領域に不足している分のインクを可能な限り等間隔に着弾させることで、被着色部のインク白抜けがなく、色度を満たしたカラーフィルターを製造することができる。
【0091】
なお、本発明における飛翔時のインク粒径は、着色インクの種類、インクジェットヘッドに加える電圧等により異なるため特に限定されないが、被着色部の短辺よりも小さいインク粒径とするのが好ましい。インクジェットヘッドノズルは、ノズルの位置精度にもバラツキを持っているため、その位置ずれによる影響を小さくするためにも、被着色部の短辺よりも小さいインク粒径とするのが良い。
【0092】
より好ましくは、飛翔時のインク粒径は被着色部の短辺の50%以下とするのがよい。すなわち、例えば被着色部の短辺をYμmとした場合、飛翔時のインク粒径は被着色部の短辺Yμmの50%以下とする。飛翔時のインク粒径が被着色部の短辺Yμmの50%を超えると、隣接する被着色部へのインク溢れが発生しやすくなる。
【0093】
一方、飛翔時のインク粒径の下限は20μmとするのが好ましい。飛翔時のインク粒径を小さくすればするほど、被着色部へ着弾させるインク滴の個数を増やす必要があり、インクジェットヘッドを走査する回数が増え、カラーフィルターを製造する上で時間効率が悪くなる。そのため、インクジェットヘッドノズルから吐出されるインクの大きさの下限値は20μmとするのが好ましい。
なお、飛翔時のインク粒径は、インクジェットヘッドに加える電圧により調整することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0095】
[ブラックマトリクス基板の製造例]
本実施例で使用するブラックマトリクス基板は、次のような方法で製造した。すなわち、被着色部の外周壁の素材としてネガ型樹脂ブラックマトリクス材料(住友化学株式会社製、商品名「XK−L304SF」)を用い、これをガラス基板上に、ポストベーク後の最終的な膜厚が2μmとなるようにスピンコート塗工した。
次いで、パターンマスクを介して露光量200mJ/cm2でパターンニング露光した後、90℃で110秒間のプリベークを行った。その後、0.5%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を用いて温度24℃で現像し、被着色部を形成した。さらに、室温から230℃まで1時間で昇温し、同温度で20分間維持するポストベークを行うことで被着色部外周壁を形成した。このようにして、大きさ70μm×230μmの略長方形で、被着色部外周壁の高さ1.6μmを持つ被着色部を縦20個、横20個並べたブラックマトリクス基板を製造した。
【0096】
[赤色着色インクの調製例]
被着色部を着色する着色インクを、以下に示す組成(赤色)で調製した。すなわち、以下に示すRed顔料、顔料分散剤、光硬化樹脂及び有機溶剤を下記の割合で混合し、直径0.3mmのジルコニアビーズを500部加え、ペイントシェーカーを用いて4時間分散させた。なお、このインク組成例における「部」とは「重量部」を表す。
【0097】
Red顔料(C.I.ピグメントレッド254):10〜15部
顔料分散剤(AVECIA社製:ソルスパース24000):5部
多官能モノマー(1,9−ノナンジオールジアクリレート):10部
2官能モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):5部
反応性モノマー(2−エチルへキシルアクリレート):10〜20部
オリゴマー(東亜合成社製:M−8030):5部
光重合開始剤(チバスペシャルケミカルズ社製:イルガキュアー369):0.5部
溶剤(ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート):残部
【0098】
[実施例1]
上記カラーフィルター用基板の形成例で製造された大きさ70μm×230μmの略長方形で、被着色部外周壁の高さ1.6μmを持つ被着色部を縦20個、横20個並べたブラックマトリクス基板に対し、インクジェット方式を用いて着色インクを吐出し、該被着色部を着色した。
被着色部を着色する走査は、インクジェットヘッドノズル間隔が160μmのヘッドを用い、16回の走査回数で行った。この16回の走査をさせる際、1回の走査あたりにインクジェットヘッドもしくは被着色部が移動する距離は10μmとする。本実施例1では、インクジェットヘッドを移動させた。
【0099】
上記インクジェットヘッドノズルを用いて、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
なお、飛翔時のインク粒径は次の方法で測定した:シャーレ上にインクを1千万滴吐出させ、インクを乾燥させる。吐出前と乾燥後のシャーレの重さの変化と、インクの固形分、比重からインクジェットヘッドノズル1個あたりから吐出した1滴の体積(平均値)を計算する。得られた体積から飛翔時のインク粒径を計算する。
【0100】
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を30μm(飛翔時のインク粒径の100%)とした。また、1列の両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2を30μm(飛翔時のインク粒径の100%)とした。残りの6滴はL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは確認できなかった。図7に本実施例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
【0101】
また、被着色部の着色インクの充填量を、インクを乾燥させた後、被着色部の膜厚を測定することにより、算出した。被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0102】
[実施例2]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を20μm(飛翔時のインク粒径の約67%)とした。また、1列の両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2を40μm(飛翔時のインク粒径の約133%)とした。残りの6滴はL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは確認できなかった。図8に本実施例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0103】
[比較例1]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。飛翔時のインク粒径は30μmであった。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を30μm(飛翔時のインク粒径の100%)とした。残りの8滴をL2とL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。その結果、1列の両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2は20μm(飛翔時のインク粒径の約67%)であった。
この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜け箇所が約20箇所発生した。図9に本比較例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0104】
[比較例2]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
飛翔時のインク粒径は30μmであった。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を50μm(飛翔時のインク粒径の約167%)とした。また、両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置までの最短距離L2を30μm(飛翔時のインク粒径の約167%)とした。残り6滴は図のL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。
この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは約40箇所発生した。図10に本比較例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【0105】
[比較例3]
実施例1と同様に、被着色部1個に対し、飛翔時のインク粒径30μmのインク滴を、被着色部の長手方向(長さ;230μm)に1列に着弾するように、10滴吐出させた。
飛翔時のインク粒径は30μmであった。
このとき、1列に着弾する10滴のインクのうち、両端に着弾するインクの中心位置と、被着色部の外周壁の短辺までの距離L1を20μm(飛翔時のインク粒径の約67%)とした。また、両端に着弾するインクの中心位置と、それより内側に着弾させる直近のインクの中心位置L2までの最短距離を50μm(飛翔時のインク粒径の約167%)とした。残りの6滴はL3の領域に可能な限り等間隔に着弾させた。この際、インク接触角のバラツキ5°〜10°を持つ被着色部400個に対し、被着色部のインク白抜けは約5箇所発生した。図11に本比較例における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図を示す。
また、被着色部400個の膜厚を測定しインク充填量を算出した結果、そのバラツキは3%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、インクジェットヘッドを、略長方形の被着色部の長手方向に垂直に複数回走査させて1滴毎又はノズル毎のインク吐出量のバラツキを分散させる方法において、被着色部ごとにインクの着弾順序が異なる場合でも、被着色部内のインク白抜けを低減することができる。したがって、被着色部毎のインク吐出量の均一性を高く保ちながら、各被着色部のインク白抜けを有効に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のカラーフィルターの製造方法の一例を示す概略図であり、被着色部に1列に吐出する複数滴のインク滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴a、a’と、その直近のインク滴b、b’とが着弾した様子を示した概略図である。
【図2】本発明によるカラーフィルターの製造方法の一例を示す図であり、複数の被着色部に対するインクジェットヘッドの走査方法を示す概略図である。
【図3】本発明において、主走査と副走査とを組み合わせて複数回走査する方法の一例を示す概略図である。
【図4】副走査におけるインクジェットヘッドもしくは被着色部の移動する距離と、インクジェットノズル間の距離L及び走査回数Nとの関係を示す概略図である。
【図5】本発明において、R、G、及びB用のインクジェットヘッド3個を被着色部の長手方向と直列に取り付けて被着色部を着色する方法を示す概略図である。
【図6】本発明において、インク白抜けの様子を表す概略図である。
【図7】実施例1における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図8】実施例2における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図9】比較例1における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図10】比較例2における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【図11】比較例3における被着色部へのインク滴の着弾の様子を表す模式図である。
【符号の説明】
【0108】
a,a’,b,b’・・・・インク滴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺と短辺からなる外周壁を有する略長方形の被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査しながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する吐出工程を含むカラーフィルターの製造方法において、下記条件(a)及び(b)を満たすことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
(a)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲にあること。
(b)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いものの中心位置との間の最短距離が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲にあること。
【請求項2】
前記被着色部に吐出される着色インクの充填量のバラツキが、同一色の被着色部間において5%以下であることを特徴とする、請求項1記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対する垂直のインクジェットヘッド走査を、複数回行うことを特徴とする、請求項1又は2記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項4】
前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査した後、前記被着色部の長手方向に対して平行にインクジェットヘッドもしくは被着色部を移動し、再度被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項1】
長辺と短辺からなる外周壁を有する略長方形の被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査しながら、着色インクを該長手方向に沿って1列に複数滴吐出する吐出工程を含むカラーフィルターの製造方法において、下記条件(a)及び(b)を満たすことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
(a)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、前記被着色部の外周壁の短辺までの距離が、飛翔時のインク粒径の50〜150%の範囲にあること。
(b)前記1列に吐出する複数滴のうち、該1列の両端に着弾するインク滴の中心位置と、それより内側に着弾するインク滴であって前記両端に着弾するインク滴に最も近いものの中心位置との間の最短距離が、飛翔時のインク粒径の100%〜150%の範囲にあること。
【請求項2】
前記被着色部に吐出される着色インクの充填量のバラツキが、同一色の被着色部間において5%以下であることを特徴とする、請求項1記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対する垂直のインクジェットヘッド走査を、複数回行うことを特徴とする、請求項1又は2記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項4】
前記吐出工程において、被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査した後、前記被着色部の長手方向に対して平行にインクジェットヘッドもしくは被着色部を移動し、再度被着色部の長手方向に対して垂直にインクジェットヘッドを走査することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−186550(P2009−186550A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23661(P2008−23661)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
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