説明

カラー画像形成装置及びカラー画像形成方法

【課題】非磁性一成分現像剤を使用し、かつ、クリーナーレス方式を採用しているにもかかわらず、連続画像形成を実施した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができるタンデム方式のカラー画像形成装置及びそれを用いたカラー画像形成方法を提供する。
【解決手段】カラー及びブラックの各色ごとの静電潜像が形成される複数の像担持体を有するとともに、当該像担持体上に形成された静電潜像を、非磁性一成分現像剤によって現像するタンデム方式であり、かつ、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式のカラー画像形成装置及びそれを用いたカラー画像形成方法であって、複数の像担持体のうち、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×105〜1×108Ω以上の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の像担持体を用いたタンデム方式のカラー画像形成装置及びカラー画像形成方法に関する。特に、連続画像形成を実施した場合であっても、黒点の発生を効果的に抑制できるカラー画像形成装置及びそれを用いたカラー画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高画質のカラー画像を、高スピードで形成すべく、タンデム方式を採用した画像形成装置が広く使用されている。
かかるタンデム方式のカラー画像形成装置では、各色の現像剤に対応した像担持体を備えた複数の画像形成ユニットを配列し、これらの各画像形成ユニットにおいて、各色の現像剤に対応した現像剤像をそれぞれの像担持体上に形成する。次いで、これらの各色の現像剤に対応した現像剤像を、記録材上または中間転写体上にて重ね合わせることによりカラー画像を形成している。
また、タンデム方式のカラー画像形成装置における像担持体としては、帯電特性に優れ、画像形成を高スピード化した場合であっても現像剤を安定的に担持できることから、有機感光体が広く用いられている。
一方、有機感光体を用いた場合、カラー画像形成装置においても、実際上モノクロ印字が頻繁に行なわれることから、ブラック現像剤に対応した有機感光体の方が、他色の現像剤に対応した有機感光体と比較して摩耗劣化しやすいという問題が見られた。
【0003】
そこで、かかる問題を解決すべく、ブラック現像剤に対応した像担持体のみを、耐摩耗性に優れたアモルファスシリコン感光体としたカラー画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
より具体的には、ブラック現像剤に対応した像担持体のみを、所定の厚みを有するアモルファスシリコンカーバイド光導電層を備えたアモルファスシリコン感光体とするとともに、他色の現像剤に対応した像担持体としては、有機感光体を用い、かつ、これらのアモルファスシリコン感光体と、有機感光体と、の帯電電位差を200V以下の値としたカラー画像形成装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1のようにアモルファスシリコン感光体を使用した場合、その帯電特性の低さを補うことが困難であるばかりか、帯電特性以外の露光特性や転写特性等についても、アモルファスシリコン感光体と、有機感光体と、では異なるため、これらを別個に制御することは、複雑かつ困難であるという問題が見られた。
【0004】
そこで、ブラック現像剤に対応した像担持体として有機感光体を用いつつも、その耐摩耗性を向上させたカラー画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献2)。
より具体的には、ブラック現像剤に対応した有機感光体のみに、非接触帯電方式を適用したり、あるいはブラック現像剤に対応した有機感光体の感光層を比較的厚くしたり、かかる感光層の結着樹脂における粘度平均分子量を比較的大きくしたりしたカラー画像形成装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10−333393号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−51467号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2にかかるカラー画像形成装置を用いた場合、確かに、ブラック現像剤に対応した有機感光体における感光層の耐摩耗性を向上させることができたものの、連続画像形成を実施した場合には、かかるブラック現像剤に対応した有機感光体において、フィルミングが発生しやすく、また、それに起因して、形成画像上に黒点が発生しやすいという問題が見られた。
より具体的には、ブラック現像剤に対応した有機感光体は、他色に対応した有機感光体よりも使用頻度が高い上、一般に転写手段や定着手段といった紙粉が発生する箇所の近傍に配置されているため、感光層表面に対して残留トナーや紙粉が強固に付着して、フィルミングが発生しやすくなる場合があった。
特に、現像剤として重合法により作成された非磁性一成分現像剤を用いるとともに、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式を採用して、連続画像形成を実施した場合には、ブラック現像剤に対応した有機感光体におけるフィルミング及び形成画像上の黒点の発生を抑制することが、さらに困難となるという問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、タンデム方式のカラー画像形成装置において、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を所定の範囲とすることにより、かかる像担持体においてフィルミングが発生した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、非磁性一成分現像剤を使用し、かつ、クリーナーレス方式を採用しているにもかかわらず、連続画像形成を実施した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができるタンデム方式のカラー画像形成装置及びそれを用いたカラー画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、カラー及びブラックの各色ごとの静電潜像が形成される複数の像担持体を有するとともに、当該像担持体上に形成された静電潜像を、非磁性一成分現像剤によって現像するタンデム方式であり、かつ、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式を採用したカラー画像形成装置であって、複数の像担持体のうち、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×105〜1×108Ωの範囲内の値とすることを特徴とするカラー画像形成装置が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、使用頻度等の影響により、特にフィルミングが発生しやすいブラック現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を所定の範囲とすることにより、連続画像形成の実施によって、かかる像担持体においてフィルミングが発生した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
より具体的には、像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を所定の範囲とすることにより、フィルミング箇所における像担持体−現像手段、転写手段及び帯電手段間等でのリーク電流の発生を抑制することができることから、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
なお、現像剤として非磁性一成分現像剤を用いた場合、一般にブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式が採用される場合が多いため、像担持体におけるフィルミングがさらに発生しやすくなるものの、そのような場合であっても、本発明のカラー画像形成装置であれば、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
また、本発明において、上述した「カラー及びブラックの各色」における「カラー」とは、主に、シアン、マゼンタ及びイエローの3色を意味するが、これらのうちの1または2色であってもよく、あるいは、これら以外の色であっても良い。
【0008】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、ブラック現像剤に対応した像担持体が、正帯電型の有機感光体であることが好ましい。
このように構成することにより、アモルファスシリコン感光体等の無機感光体と比較して、帯電特性を顕著に向上させることができる。また、負帯電型の像担持体と比較して、帯電時におけるオゾン等の発生を低減させることができる。
一方、像担持体を正帯電型とすることで、紙粉等が像担持体表面に付着しやすくなることから、フィルミングがより発生しやすくなるが、そのような場合であっても、本発明のカラー画像形成装置であれば、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
【0009】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、ブラック現像剤に対応した像担持体における基体がアルミニウムを含むことが好ましい。
このように構成することにより、基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を容易に所定の範囲に調節することができる。
【0010】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、ブラック現像剤に対応した像担持体における基体が、表面にアルマイト層を有することが好ましい。
このように構成することにより、基体表面を直接的に改質させて、その単位面積当たりの抵抗値を、より容易に所定の範囲に調節することができる。
【0011】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、アルマイト層の厚さを1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、所定の抵抗を有するアルマイト層を、均一かつ安定的に形成することができる。
【0012】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、ブラック現像剤に対応した像担持体における中間層が、無機微粒子と、結着樹脂と、を含むことが好ましい。
このように構成することにより、基体の材料物質にかかわらず、中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を、容易に所定の範囲に調節することができる。
【0013】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、無機微粒子が、酸化チタンであることが好ましい。
このように構成することにより、中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を、さらに容易に所定の範囲に調節することができる。
【0014】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、カラー現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×104Ω以下の値とすることが好ましい。
このように構成した場合であっても、ブラック現像剤に対応した像担持体と比較して、根本的にフィルミングが発生しにくいこれらの像担持体においては、黒点の発生という問題が生じにくいばかりか、このように構成することにより、感光層中の電荷の移動が効率的になって、より高品質な画像を形成することができる。
【0015】
また、本発明のカラー画像形成装置を構成するにあたり、カラー現像剤に対応した像担持体の基体が、アルミニウムを含むとともに、基体の表面にアルマイト層及び中間層を有さないことが好ましい。
このように構成した場合であっても、黒点の発生という問題が生じにくいばかりか、感光層中の電荷の移動がより効率的になって、さらに高品質な画像を形成することができる。
【0016】
また、本発明の別の態様は、上述したいずれかのカラー画像形成装置を用いたカラー画像形成方法である。
すなわち、本発明において使用されるカラー画像形成装置であれば、特にブラック現像剤に対応した像担持体においてフィルミングが発生した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
したがって、連続画像形成を実施した場合であっても、黒点の発生を効果的に抑制した高品質画像を、安定的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、カラー及びブラックの各色ごとの静電潜像が形成される複数の像担持体を有するとともに、当該像担持体上に形成された静電潜像を、非磁性一成分現像剤によって現像するタンデム方式であり、かつ、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式のカラー画像形成装置であって、図1に示すように、複数の像担持体のうち、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体表面、あるいは中間層を介した基体表面における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×105〜1×108Ω以上の値とすることを特徴とするカラー画像形成装置である。
以下、第1の実施形態としてのカラー画像形成装置について、各構成要件に分けて、具体的に説明する。
【0018】
1.基本構成
図2は、本発明としてのタンデム方式のカラー画像形成装置の一例を示す図である。このカラー画像形成装置10は、無端状ベルト(搬送ベルト)15を備えており、この無端状ベルト15は給紙カセット18から給紙された記録紙を定着装置20に向かって搬送するように構成されている。また、無端状ベルト15の上側には、マゼンタ用現像装置11M、シアン用現像装置11C、イエロー用現像装置11Y、及びブラック用現像装置11BKが、それぞれ記録紙の搬送方向に沿って配置されている。
また、現像ローラ12M〜12BKに対面して、それぞれ像担持体13M〜13BKが配置されている。また、これら像担持体13M〜13BKの周囲には、それぞれ像担持体13M〜13BKの表面を帯電させるための帯電器14M〜14BK及び像担持体13M〜13BK表面に静電潜像を形成するための露光装置15M〜15BK等が配置されている。 したがって、各色に対応した像担持体13M〜13BK上に形成された静電潜像は、各色に対応した現像装置11M〜11BKによってそれぞれ現像されることとなる。
なお、各色に対応した像担持体の配置順は、図2に示す通り、上流からマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの順とすることが好ましい。
かかる配置順とすることにより、各色の使用頻度との関係から、各像担持体間での他色現像剤による汚染が生じにくくなるためである。
特に、最も使用頻度の高いブラック現像剤に対応した像担持体は、最も下流に配置されることが好ましい。
また、無端状ベルト15で搬送されてくる記録紙上に、順次、各色現像剤像を転写するための転写装置16M〜16BKが、無端状ベルト15を介してそれぞれの像担持体13M〜13BKの反対側に配置されている。
【0019】
2.像担持体
本発明において使用されるカラー及びブラックの各色に対応した像担持体としては、アモルファスシリコン感光体等の無機感光体を使用することもできるが、有機感光体を用いることが好ましい。
この理由は、有機感光体であれば、無機感光体と比較して、帯電特性に優れ、画像形成を高スピード化した場合であっても現像剤を効率的に担持することができるためである。
したがって、以下においては、像担持体としての有機感光体を例にとって説明する。
【0020】
(1)基本的構成
本発明における像担持体としては、図3(a)に示すように、基体112上に、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、からなる単層型感光層114を設けた単層型像担持体110であることが好ましい。
また、図3(b)に例示するように、この感光層114と、基体112と、の間に、中間層116を形成した単層型像担持体110´とすることもできる。
また、本発明における像担持体としては、図4(a)に示すように、基体112上に、電荷発生剤と、結着樹脂と、からなる電荷発生層124、及び電荷輸送剤と、結着樹脂と、からなる電荷輸送層122からなる積層型感光層126を設けた積層型像担持体120であることも好ましい。
【0021】
(2)基体
(2)−1 抵抗値
本発明のカラー画像形成装置においては、複数の像担持体のうち、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体における基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×105〜1×108Ωの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、使用頻度等の影響により、特にフィルミングが発生しやすいブラック現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を所定の範囲とすることにより、連続画像形成の実施によってかかる像担持体においてフィルミングが発生した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができるためである。
すなわち、像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を所定の範囲とすることにより、フィルミング箇所における像担持体−現像手段、転写手段及び帯電手段間等でのリーク電流の発生を抑制することができることから、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
【0022】
より具体的には、像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値が1×105Ω未満の値となると、像担持体全体としての抵抗値が過度に低下してしまい、像担持体上の静電潜像を現像するために像担持体−現像手段間等に印加されている電圧に起因して、像担持体表面へのリーク電流が発生しやすくなる場合がある。特に、ブラック現像剤に対応した像担持体のようにフィルミングが発生しやすい像担持体の場合には、発生したフィルミング内に現像剤に由来した酸化チタン等の無機微粒子が含まれていることから、フィルミング箇所において上述したリーク電流が発生しやすくなる。
そして、像担持体上におけるリーク電流発生箇所では、その電荷の状態が著しく変化することから、形成画像上の黒点(ブラック現像剤に対応した像担持体の場合)の原因となる。
一方、像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値が過度に大きくなると、静電潜像を形成する際に必要となる感光層内での電荷の移動が困難となって、感光層内に残留電荷が蓄積しやすくなる場合がある。
したがって、像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を1×105〜5×108Ωの範囲内の値とすることがより好ましく、1×105〜1×107Ωの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0023】
また、カラー現像剤に対応した像担持体については、基本的に基体等の抵抗値を規定する必要はないが、より高品質な画像を形成することが可能となることから、これらの像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×104Ω以下の値とすることが好ましい。
すなわち、カラー現像剤に対応した像担持体においては、基体等の抵抗値をかかる範囲とした場合であっても、ブラック現像剤に対応した像担持体と比較して、根本的にフィルミングが発生しにくいことから、黒点の発生という問題が生じにくいためである。そればかりか、かかる抵抗値の範囲とすることにより、感光層中の電荷の移動が効率的になって、より高品質な画像を形成することができるためである。
したがって、カラー現像剤の使用頻度を考慮して設定されるべきではあるが、これらの像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×10-2〜1×104Ωの範囲内の値とすることがより好ましく、1×10-1〜1×103Ωの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、カラー現像剤に対応した像担持体における基体等の抵抗値を上述した範囲とするにあたり、これらの基体が、アルミニウムを含むとともに、基体の表面に、後の項において記載するアルマイト層及び中間層を有さないことが好ましい。
この理由は、カラー現像剤における一般的な使用頻度を考慮すると、導電性のアルミニウム基体に対して直接感光層を形成した場合であっても、黒点の発生という問題が生じにくく、逆に高品質な画像形成に寄与する割合の方が大きくなるためである。
但し、カラー現像剤に対応した像担持体においても、使用頻度等との関係からフィルミングが発生しやすい場合には、適宜、ブラック現像剤に対応した像担持体と同様に基体等の抵抗値を規定することで、形成画像における斑点(各色)を抑制することができることは、言うまでも無い。
【0024】
また、像担持体における基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(Ω)(印加電圧100V)の測定は、以下のようにして行なうことができる。
すなわち、基体上に中間層を設けない場合には、基体から当該基体の表面における1cm2分の小片を切り出し、サンプル小片とする。次いで、かかるサンプル小片の片面、すなわち、基体の表面に相当する面に対して、金電極を蒸着する。最後に、電源と、金電極及び基体と、をそれぞれ導線にて繋いだ後、100Vの電圧を印加して、その際流れた電流を電流計にて測定し、抵抗値(Ω)を得ることができる。
なお、基体上に中間層を設けた場合にも、中間層を介して電圧を印加する以外は、中間層を設けない場合と同様にして、抵抗値を得ることができる。
なお、かかる抵抗値の測定方法は、後の実施例において記載する。
【0025】
次いで、図1を用いて、像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値と、黒点発生数と、の関係について説明する。
すなわち、図1においては、横軸にブラック現像剤に対応した像担持体における基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(Ω)(印加電圧100V)を採り、縦軸に形成画像上の黒点発生数(個/感光体1周分相当)を採った特性曲線を示している。
なお、基体としては、アルミニウム基体を用い、基体あるいは中間層を介した基体における抵抗値は、基体表面にアルマイト層または中間層を形成することにより調節した。
また、カラー現像剤としてのシアン、マゼンタ及びイエロー現像剤に対応した像担持体における基体としては、アルマイト層または中間層を有さないアルミニウム基体を用いた。
また、黒点発生数の測定条件としては、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー現像剤を全色均等に用いたカラーソリッド画像と、黒色現像剤のみを用いたモノクロソリッド画像と、を交互に5000枚ずつ印刷した後、白紙画像を印刷し、感光体1周分(9.4cm×21cm)に相当する面積における黒点発生数を目視にて計数した。
さらに、カラー画像形成装置としては、タンデム方式及びクリーナーレス方式を採用したカラー画像形成装置を用い、現像剤としては、非磁性一成分現像剤を用いた。
その他の詳細については、後の実施例において記載する。
【0026】
かかる特性曲線から理解されるように、ブラック現像剤に対応した像担持体における1cm2当たりの基体における抵抗値(以下、所定の基体における抵抗値と称する)が増加するほど、黒点発生数が減少している。
より具体的には、所定の基体における抵抗値が1Ωから1×105Ωへと増加するのにともなって、黒点発生数は少なくとも100個以上の値から20個以下の値にまで、急激に減少していることがわかる。
一方、所定の基体における抵抗値が1×105Ω以上の値となると、かかる値の変化にかかわらず、黒点発生数は20個以下の値を安定的に保持できることがわかる。
したがって、ブラック現像剤に対応した像担持体における基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧100V)を1×105Ω以上の値とすることにより、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制できることがわかる。
【0027】
(2)−2 材料物質
本発明のカラー画像形成装置においては、像担持体の基体がアルミニウムを含むことが好ましい。
この理由は、基体がアルミニウムを含むことにより、基体、あるいは中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を容易に所定の範囲に調節することができるためである。
すなわち、後述するように、アルミニウムを含む基体であれば、基体表面にアルマイト化処理を施したり、中間層を積層したりすることによって、その抵抗値を所定の範囲に調節することが容易となるためである。
また、より具体的には、JIS 1000系、JIS 3000系、JIS 5000系及びJIS 6000系等のアルミニウム合金を使用することが好ましい。
なお、基体の材料物質としては、アルミニウム合金の他にも導電性を有する種々の材料を使用することができる。
例えば、鉄、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、アルマイト、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよく、また、使用に際して、充分な機械的強度を有していればよい。
また、基体の形状は使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、及びドラム状などのいずれであってもよい。
【0028】
(2)−3 酸化皮膜
また、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体表面に対して酸化処理を行ない、酸化皮膜を形成することが好ましい。
この理由は、基体表面に対して酸化処理を行なうことによって、基体表面が直接的に改質されることから、その単位面積当たりの抵抗値を、容易に所定の範囲に調節することができるためである。
なお、特に、アルミニウムを含む基体表面に対して酸化処理を行い、アルマイト層を形成することが好ましい。
【0029】
また、アルマイト層の厚さを1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、アルマイト層の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、所定の抵抗を有するアルマイト層を、均一かつ安定的に形成することができるためである。
すなわち、アルマイト層の厚さが1μm未満の値となると、基体に対して十分な抵抗値を付与することが困難となる場合があるためである。一方、アルマイト層の厚さが50μmを超えた値となると、基体の抵抗値が過度に増加する場合があるためである。
したがって、アルマイト層の厚さを2〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましく、5〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
なお、アルミニウムを含む基体表面に対してアルマイト層を形成する方法としては、例えば、硫酸、しゅう酸、クロム酸、ホウ酸等の酸性浴中で陽極酸化処理を行なうことによって陽極酸化皮膜を形成し、さらに、陽極酸化皮膜に対して封孔処理を施す方法を挙げることができる。
【0031】
(2)−4 中間層
また、図3(b)及び図4(b)に例示するように、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体112上に、結着樹脂と、無機微粒子等と、を含有する中間層116を設けて、かかる中間層116を介した基体112における単位面積当たりの抵抗値を所定の範囲とすることも好ましい。
以下、中間層について、各構成要件ごとに説明する。
【0032】
(i)結着樹脂
(i)−1 種類
結着樹脂として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
また、上述した結着樹脂の中でも、特に、ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
この理由は、結着樹脂としてポリアミド樹脂を用いることによって、中間層と、基体及び感光層と、の密着性が向上するばかりか、中間層の抵抗を調節するために含有させる無機微粒子の分散性も向上させることができるためである。
なお、好適に使用されるポリアミド樹脂としては、溶剤への溶解性に優れることから、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12等を共重合させた共重合体ナイロンと呼ばれるものや、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチルナイロン等のように、ナイロンを化学的に変性させた変性ナイロンと呼ばれるものを用いることが好ましい。
【0034】
(i)−2 数平均分子量
また、結着樹脂の数平均分子量を1,000〜50,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、結着樹脂の数平均分子量をかかる範囲内の値とすることによって、中間層の膜厚を、より均一に形成することができるばかりか、中間層に無機微粒子等を含有させる場合には、その分散性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、結着樹脂の数平均分子量が1,000未満になると、中間層を形成する際の塗布液の粘度が著しく低下し、均一な膜厚を得ることが困難になったり、機械的強度や成膜性、あるいは接着性が著しく低下したりする場合があるためである。一方、結着樹脂の数平均分子量が50,000を超えると、中間層を形成する際の塗布液の粘度が著しく増加し、中間層の膜厚を制御することが困難になったり、抵抗が著しく増加したりする場合があるためである。
したがって、結着樹脂の数平均分子量を2,000〜30,000の範囲内の値とすることがより好ましく、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、結着樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン換算の分子量として測定することもできるし、あるいは、結着樹脂が縮合系樹脂の場合には、その縮合度から計算により算出することもできる。
また、数平均分子量の代替として、粘度平均分子量を上述した範囲とした場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0035】
(i)−3 粘度
また、結着樹脂の溶液粘度(エタノール/トルエン=1/1溶剤中、5重量%濃度、25℃条件下)を10〜200mPa・secの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、結着樹脂の溶液粘度が10mPa・sec未満になると、中間層の成膜性が低下して膜厚差が大きくなったり、中間層の機械的強度や密着性が著しく低下したり、さらには無機微粒子の分散性についても低下したりする場合があるためである。一方、結着樹脂の溶液粘度が200mPa・secを超えると、均一な厚さの中間層を形成することが困難になったりする場合があるためである。
したがって、結着樹脂の溶液粘度(エタノール/トルエン=1/1溶剤中、5重量%濃度)を30〜180mPa・secの範囲内の値とすることがより好ましく、50〜150mPa・secの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0036】
(i)−4 水酸基量
また、結着樹脂が水酸基を有する皮膜形成樹脂の場合、その水酸基量を10〜40mol%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水酸基を有する皮膜形成樹脂の水酸基量が10mol%未満になると、中間層の機械的強度や成膜性、あるいは密着性が著しく低下したり、あるいは無機微粒子等の分散性についても低下したりする場合があるためである。一方、水酸基を有する皮膜形成樹脂の水酸基量が40mol%を超えると、ゲル化しやすくなったり、均一な厚さの中間層を形成することが困難になったりする場合があるためである。
したがって、結着樹脂として、水酸基を有する皮膜形成樹脂を使用する場合、その水酸基量を20〜38mol%の範囲内の値とすることがより好ましく、25〜35mol%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、水酸基を有する皮膜形成樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂や、ポリビニルホルマール樹脂等を挙げることができる。
【0037】
(ii)無機微粒子
また、中間層が、上述した結着樹脂とともに、無機微粒子を含むことが好ましい。
この理由は、中間層に対して無機微粒子を含有させることによって、基体の材料物質にかかわらず、中間層を介した基体表面における単位面積当たりの抵抗値を、容易に所定の範囲に調節することができるためである。
すなわち、所定の導電性を有する無機微粒子を、その粒子径や添加量等を変えて中間層に対して含有させることによって、中間層を介した基体の抵抗値を、所定の範囲に調節することが容易となるためである。
また、このような無機微粒子としては、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化亜鉛及び酸化スズ等を挙げることができる。
【0038】
また、上述した無機微粒子として、特に酸化チタンを用いることが好ましい。
この理由は、中間層に対して酸化チタンを含有させることによって、中間層を介した基体における単位面積当たりの抵抗値を、さらに容易に調節することができるためである。
すなわち、酸化チタンであれば、その比抵抗や粒径等の面から、中間層の抵抗をより容易に調節することができるためである。
さらには、酸化チタンであれば、表面処理を施すことで、その導電性や分散性を容易に調節することができる。
なお、酸化チタンは、結晶質、非結晶質のいずれも使用することができる。また、酸化チタンが結晶質である場合には、その結晶型がアナタース型、ルチル型及びブルッカイト型のいずれの場合であっても使用することができるが、特にルチル型を用いることがより好ましい。
【0039】
(ii)−1 平均一次粒子径
また、酸化チタンにおける平均一次粒子径(数平均一次粒子径、以下同様である。)を5〜30nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、酸化チタンの平均一次粒子径を5〜30nmの範囲内の値とすることによって、中間層内における分散性が良好となって、中間層の抵抗を均一にすることができるためである。
すなわち、酸化チタンの平均一次粒子径が5nm未満の値となると、そのような酸化チタン粒子を精度良く製造することが困難となるばかりか、粒子同士が凝集しやすくなる場合があるためである。一方、酸化チタンの平均一次粒子径が30nmを超えた値となると、中間層内における分散性が低下して、中間層における抵抗が不均一となる場合があるためである。
したがって、酸化チタンの平均一次粒子径を10〜20nmの範囲内の値とすることがより好ましく、12〜18nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、酸化チタンの平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真及び画像処理装置を組み合わせて測定することができる。
より具体的には、例えば、酸化チタンの、走査型電子顕微鏡による倍率3万倍の写真を得た後、CCDを用いて撮影後、画像データをパーソナルコンピュータに取り込む。次いで、例えば、三谷商事(株)製のWIN ROOF等の汎用画像処理ソフトを用いて、画像中に映し出された任意の酸化チタン100個以上の数平均粒径(長径)を求めて、酸化チタンの平均一次粒子径とすることができる。
【0040】
(ii)−2 含有量
また、酸化チタンの含有量を、結着樹脂100重量部に対して150〜350重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、酸化チタンの含有量をかかる範囲とすることによって、中間層の抵抗を所定の範囲に調節することが容易となるとともに、酸化チタンの分散性をより向上させることができるためである。
すなわち、酸化チタンの含有量が、結着樹脂100重量部に対して150重量部未満の値となると、中間層の抵抗が過度に大きくなる場合があるためである。一方、酸化チタンの含有量が、結着樹脂100重量部に対して350重量部を超えた値となると、中間層の抵抗が過度に小さくなったり、酸化チタンの分散性が低下したりする場合があるためである。
したがって、酸化チタンの含有量を、結着樹脂100重量部に対して180〜320重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、200〜300重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
(ii)−3 表面処理
また、酸化チタンに対して、アルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物による表面処理が施されていることが好ましい。
この理由は、かかる表面処理を施すことによって、中間層における酸化チタンの分散性をさらに向上させつつ、中間層の抵抗を好適な範囲に調節することができるためである。
すなわち、酸化チタンに対してアルミナ(Al23)及びシリカ(SiO2)による表面処理を施すことによって、中間層における酸化チタンの基本的な分散性を向上させることができるためである。
また、酸化チタンに対して、アルミナ及びシリカによる表面処理を施すことによって、後述する有機ケイ素化合物による表面処理量を、容易に調節することができるようになるためである。
そして、さらに、有機ケイ素化合物によって表面処理を施すことによって、酸化チタンの分散性をより向上させることができるばかりか、その表面処理量を変化させることによって、酸化チタンの導電性を容易に調節することができるためである。
なお、好適に使用される有機ケイ素化合物としては、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、ビニル基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、アミノ基含有シラン化合物、あるいはこれらの縮合重合物であるポリシロキサン化合物が挙げられる。より具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサンやジメチルポリシロキサン等のシロキサン化合物が好ましく、特に、メチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
なお、アルミナ及びシリカの含有量としては、酸化チタン100重量部に対して1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。また、有機ケイ素化合物の含有量としては、酸化チタン100重量部に対して1〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0042】
また、酸化チタンに対して、上述した有機ケイ素化合物による表面処理を施すことによって、かかる表面処理を施された酸化チタンを含有した中間層と、基体及び感光層と、の密着力が向上することが知られている。
かかる効果の理由は、有機ケイ素化合物が、ポリアミド樹脂と相互作用して、かかるポリアミド樹脂の凝集力を向上させているためとも考えられるし、有機ケイ素化合物が、プライマーのように、中間層における表面を改質する効果を発揮しているためとも考えられる。
いずれにしても、酸化チタンに対して有機ケイ素化合物による表面処理を施すことによって、酸化チタンの分散性及びその導電性を調節することができるばかりか、中間層と、基体及び感光層と、の密着力を調節することも可能となる。
【0043】
(iii)添加剤
また、中間層には、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する目的、分散性向上等の目的により、上述した酸化チタンとは別の各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を含有させることも好ましい。
特に、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が好ましい添加剤である。
また、微粉末等の添加剤を含有させる場合、その粒径を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる粒径が大きすぎると中間層の凹凸が大きくなったり、電気的に不均一な部分が生じたり、さらには、画質欠陥を生じ易くなったりする場合があるためである。一方、かかる粒径が小さすぎると、十分な光散乱効果が得られない場合があるためである。
なお、微粉末等の添加剤を含有させる場合、その含有量を、中間層の固形分に対して重量比で1〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0044】
また、中間層に電荷輸送剤を含有させることも好ましい。すなわち、電荷輸送剤を含有させることにより、感光層で発生した電荷を速やかに基体側に移動させて、像担持体における電気特性をより安定化させることができるためである。
【0045】
(iv)製造方法
(iv)−1 中間層用塗布液の準備
また、中間層を形成するにあたり、樹脂成分を溶解した溶液中に酸化チタン等の添加剤を加えて、分散処理を行い、塗布液を形成することが好ましい。
このとき、塗布液に使用される溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
また、分散処理を行う方法は特に制限されるものではないが、一般的に公知のロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライタ、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等を用いることが好ましい。
【0046】
また、中間層用塗布液を製造するに際して、複数段階に分けて結着樹脂を溶解させるとともに、上述した酸化チタンと混合することが好ましい。
より具体的には、中間層用塗布液の製造に際して、下記工程(A)〜(B)を含むことが好ましい。
(A)酸化チタンを、中間層を構成する全結着樹脂量の31〜65重量%に該当する結着樹脂を溶解させてなる結着樹脂溶液中に加えて、一次分散液とする工程
(B)一次分散液に対して、全結着樹脂量の35〜69重量%に該当する結着樹脂を溶解させて、中間層用塗布液とする工程
この理由は、複数段階に分けずに、最初から全量の結着樹脂と、全量の酸化チタンと、有機溶剤と、を一段階で混合した場合、酸化チタン粒子表面における樹脂及び有機溶剤との接触割合が不均一となりやすいためである。したがって、中間層用塗布液中における酸化チタン表面の性質が変化し、酸化チタンの分散性が悪化する場合があるためである。また、一段階で混合した場合、特に、平均一次粒径が0.015μm以下の酸化チタンを使用すると、顕著に分散性が低下する場合があるためである。
【0047】
一方、中間層用塗布液の製造にあたり、(A)、(B)二つの工程を設けた場合、まず、(A)工程において一次分散液中の酸化チタンが、非常に高濃度となるため、個々の酸化チタン粒子表面における樹脂との接触割合と、有機溶剤との接触割合とを均一にすることが容易となる。したがって、続く(B)工程において、全樹脂量とした場合であっても、酸化チタンの分散性が一定状態で保持されることになる。その結果、中間層用塗布液は、保存安定性が向上して、所定の中間層を容易かつ安定的に形成することができる。
したがって、工程(A)において加える結着樹脂の量を、全結着樹脂の35〜60重量%に相当する分量とすることがより好ましく、40〜55重量%に相当する分量とすることがさらに好ましい。
【0048】
(iv)−2 中間層用塗布液の塗布方法
また、中間層用塗布液の塗布方法については特に制限されるものではないが、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いることができる。
なお、中間層およびその上の感光層をより安定的に形成するためには、中間層用塗布液の塗布後、30〜200℃で、5分〜2時間、加熱乾燥処理を実施することが好ましい。
【0049】
(iv)−3 酸化チタンの表面処理
また、中間層に含有させる酸化チタンに対して表面処理を施す方法としては、例えば、粉砕機を用いて、溶媒を用いずに、アルミナ、シリカ、有機ケイ素化合物及び酸化チタンを混合、分散させて酸化チタンの表面処理をする乾式処理方法を用いることが好ましい。
また、適当な溶媒に溶解させたアルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物を、酸化チタンスラリーに対して加えた後、撹拌し、その後、乾燥させて酸化チタンの表面処理をする湿式処理方法を用いることも好ましい。
なお、乾式処理方法と、湿式処理方法とでは、より均一な表面処理が可能であることから、湿式処理方法がより好ましい。
【0050】
また、湿式処理方法としては、湿式メディア分散型装置を用いることが好ましい。
この理由は、かかる湿式メディア分散型装置であれば、分散能に優れるため、酸化チタンの凝集粒子を効果的に粉砕及び分散させながら、均一な表面処理を施すことができるためである。
ここで、湿式メディア分散型装置とは、装置内にメディアが充填されているとともに、例えば、高速回転可能な撹拌ディスク等の分散力を向上させる部材を備えた装置である。
また、上述したメディアとしては、ボールやビーズ等を用いることが好ましく、より均一な表面処理をするためには、ビーズを用いることが好ましい。
また、ビーズの原材料としては、アルミナ、ガラス、ジルコン、ジルコニア、スチール及びフロント石等が好適に使用される。
なお、ビーズの直径としては、0.3〜2mmの範囲内とすることが好ましい。
【0051】
(3)感光層
また、本発明における感光層は、図3(a)〜(b)に示すような単層型感光層114であっても、図4(a)〜(b)に示すような積層型感光層126であってもよい。単層型感光層は、感光層内に電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂を同一層内に全て含有させており、その構成及び製造方法を簡素化することができる。一方、積層型感光層は、電荷発生剤を含む電荷発生層と、電荷輸送剤を含む電荷輸送層と、が順次形成してあり、電荷発生と電荷輸送の機能が分離されていることから、それぞれの層における最適材料の選択幅を広げ、その電気特性を向上させることができる。
【0052】
(3)−1 単層型感光層
また、単層型感光層の構成材料は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の材料を用いることができる。
例えば、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアリレート樹脂等が挙げられる。
また、電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料及びビスアゾ顔料等が挙げられる。
また、正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物及びエナミン系化合物等が挙げられる。
さらに、電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、フルオレノン系化合物等が挙げられる。
【0053】
また、電荷発生剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
また、正孔輸送剤及び電子輸送剤の含有量は、それぞれ結着樹脂100重量部に対して1〜120重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、感光層の厚さについては、5〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0054】
(3)−2 積層型感光層
また、積層型感光層の構成材料についても、特に限定されるものではなく、例えば、単層型感光層において使用可能な種々の材料を用いることができる。
また、電荷発生層における電荷発生剤の含有量は、電荷発生層の結着樹脂100重量部に対して5〜1000の範囲内の値とすることが好ましい。
また、電荷輸送層における電荷輸送剤の含有量は、電荷輸送層の結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、電荷発生層の厚さを0.1〜5μmの範囲内の値とすることが好ましく、電荷輸送層の厚さを5〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、単層型及び積層型感光層の製造方法は、基本的に中間層の製造方法と同様であるため、省略する。
【0055】
(3)−3 帯電型
また、本発明における像担持体の帯電型を、正帯電型とすることが好ましい。
この理由は、負帯電型の像担持体と比較して、帯電時におけるオゾン等の発生を低減させることができるためである。
一方、像担持体を正帯電型とすることで、紙粉等が像担持体表面に付着しやすくなるため、フィルミングがより発生しやすくなる場合があるが、そのような場合であっても、所定の像担持体における基体等の抵抗値を規定していることから、本発明のカラー画像形成装置であれば、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
【0056】
3.現像装置
【0057】
次に、図5を用いて、本発明の現像装置11について説明する。
なお、本発明における現像装置11は、現像ローラ12上に形成された非磁性一成分現像剤からなる薄層を、像担持体13に対して直接的に接触させて、像担持体13上に形成された静電潜像を現像する方式を採用している。
また、現像ローラ12が、像担持体13上に残留した未転写現像剤を掻き取りつつ現像を行なうことができることから、像担持体13上に残留した未転写現像剤を掻き取るためのブレードクリーナーを省略することが可能となる。
したがって、本発明のカラー画像形成装置は、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式を採用している。
なお、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式を採用した場合、像担持体におけるフィルミングがさらに発生しやすくなるものの、そのような場合であっても、本発明のカラー画像形成装置であれば、所定の像担持体における基体等の抵抗値を規定していることから、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができる。
【0058】
まず、図示の実施形態における現像装置11は、非磁性一成分トナーからなる現像剤が収容された現像ハウジング31を具備している。この現像ハウジング31は、撹拌室32と現像室33を有している。撹拌ハウジング32内には、二つの撹拌手段34、35が配置されており、現像剤を撹拌によって摩擦帯電させつつ、撹拌室32から現像室33へと移動させる。
また、現像室33内には、現像ローラ12と、補給ローラ36と、が配設されており、撹拌室32から移動された現像剤を、補給ローラ36を経て現像ローラ12表面へと移動させる。
また、補給ローラ36は、現像ハウジング31の現像室33内に現像ローラ12と平行に配設され、現像ローラ12とのニップ部である現像剤保持域37において現像ローラ12に圧接している。補給ローラ36は、矢印で示す方向、即ち補給ローラ36と現像ローラ12とのニップ部である現像剤保持域37において上側から下側に向けて回転駆動する。
なお、現像ローラ12及び補給ローラ36間には、非磁性一成分現像剤を効率的に移動させるために、バイアスを印加することが好ましい。
【0059】
また、現像ローラ12は、現像ハウジング31に形成されている図面左方向に位置する開口部において露出しつつ、像担持体13に対向している。そして、現像ローラ12の周表面は、現像域において像担持体13の周表面に圧接して、現像領域38を形成している。
また、現像ローラ12は、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向、即ち現像ローラ12と像担持体13との接触部である現像領域38において下側から上側に向けて回転駆動する。
そして、かかる現像領域38にて、現像ローラ12表面に担持された現像剤が、像担持体13上の静電潜像に対して静電的に付着して、現像がなされる。
【0060】
また、像担持体13の周速度V1と、現像ローラ12の周速度V2と、補給ローラ36の周速度V3とが、V1<V2<V3の関係を満足することが好ましい。
この理由は、像担持体13、現像ローラ12及び補給ローラ36の周速度が、かかる関係を満足することによって、像担持体13への現像剤の供給を安定化させることができるとともに、像担持体13上に残留した未転写現像剤を、現像ローラ12によって、効果的に掻き取ることができるためである。
【0061】
また、現像装置11は、現像ローラ12の周表面に圧接せしめられる可撓弾性を有する薄板鋼板等からなる規制ブレード39を具備している。
かかる規制ブレードによって、現像ローラ12上における現像剤の量及び帯電量を調節することができる。
また、規制ブレード39は、例えば、厚さが0.1〜0.2mm程度のステンレス鋼板またはばね鋼板によって構成されていることが好ましく、現像ローラ12の長さと略同じ長手方向寸法を有している。この規制ブレード39は、金属材料の弾性を利用して、現像ローラ12に対して押圧させる線圧を0.1〜0.6kg/mm以上の範囲内の値とすることが好ましい。
【0062】
4.現像剤
本発明においては、非磁性一成分現像剤を使用することを特徴とする。
この理由は、非磁性一成分現像剤であれば、現像剤に対して磁性粉を含有させる必要がないことから、鮮やかなカラー画像を形成することができるためである。
また、磁性現像剤や、二成分現像剤を用いた場合と異なり、マグネットロールを使用する必要もないことから、現像装置の簡易化及びコンパクト化に資することができ、さらには、現像装置の項においても記載したように、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式のカラー画像形成装置として構成することが可能となるためである。
以下、非磁性一成分現像剤の基本的構成を説明する。
【0063】
トナー粒子に用いられる結着樹脂は、特に制限されるものではなく、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂及びスチレン−アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
また、トナー粒子に含有させる着色剤についても、特に制限されるものではなく、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック、アゾ系顔料、黄色酸化鉄、黄土、ニトロ系染料、油溶性染料、ベンジジン系顔料、キナクリドン系顔料、銅フタロシアニン系顔料等を使用することが好ましい。
【0064】
また、トナー粒子に対して、例えば、ニグロシン、第四級アンモニウム塩化合物、樹脂にアミン系化合物を結合させた樹脂タイプの電荷制御剤等の正帯電特性を示す電荷制御剤を使用することも好ましい。
さらに、トナー粒子に対して、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等のワックスを使用することも好ましい。
なお、現像剤の流動性や帯電特性を調節するために、トナー粒子に対して、シリカ微粒子や酸化チタン微粒子といった無機微粒子を外添させて、その流動性や帯電特性を調節することも好ましい。
【0065】
また、トナー粒子の体積平均粒子径は、6〜10μmの範囲内の値とすることが好ましく、その製造方法としては、粉砕法や重合法等、従来公知の製造方法を用いることができる。
【0066】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態において説明したカラー画像形成装置を用いたカラー画像形成方法である。
以下、第1の実施形態と重複する内容は省略し、第2の実施形態としてのカラー画像形成方法について、具体的に説明する。
【0067】
まず、図2に示すように、画像形成装置10の像担持体13M〜13BKを、矢印で示す方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転させた後、その表面を帯電器14M〜14BKによって所定電位に帯電させる。
次いで、露光装置15M〜15BKにより、画像情報に応じて光変調させながら反射ミラー等を介して、像担持体13M〜13BKの表面を露光する。この露光により、像担持体13M〜13BKの表面に各色ごとの静電潜像が形成される。
次いで、これらの静電潜像に基づいて、現像手段11M〜11BKにより潜像現像が行われる。この現像装置11M〜11BKの内部にはそれぞれ各色(ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー)の現像剤が収納されており、この現像剤が像担持体13M〜13BK表面の静電潜像に対応して付着することで、現像剤像が形成される。
また、記録紙は、所定の転写搬送経路に沿って、像担持体13M〜13BK下部まで搬送される。このとき、像担持体13M〜13BKと転写装置16M〜16BKとの間に、所定の転写バイアスを印加することにより、記録材上に現像剤像を転写することができる。
【0068】
次いで、現像剤像が転写された後の記録紙は、分離手段(図示せず)によって像担持体13M〜13BK表面から分離され、搬送ベルト15によって定着装置20に搬送される。次いで、この定着装置20によって、加熱、加圧処理されて表面に現像剤像が定着された後、排出ローラによって画像形成装置10の外部に排出される。
一方、現像剤像転写後の像担持体13M〜13BKはそのまま回転を続け、像担持体13M〜13BK表面に残留した未転写現像剤が、現像装置11M〜11BKに備えられた現像ローラ12M〜12BKによって掻き取られる。
すなわち、かかる現像装置11M〜11BKに備えられた現像ローラ12M〜12BKは、像担持体13M〜13BKの表面に形成された静電潜像を現像する役割と、像担持体13M〜13BKの表面に残留した未転写現像剤を掻き取るクリーナーとしての役割と、の二役を担っている。
また、像担持体13M〜13BKの表面に残留した電荷は、図示しない除電器からの除電光の照射によって消去することもできる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの記載内容に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
1.像担持体の製造
(1)基体の準備
直径30mm、長さ238.5mm、厚さ1.5mmのアルミニウム基体を用意し、その表面に厚さ7μmのアルマイト層を形成した。
すなわち、このアルミニウム基体に対して、硝酸濃度180g/リットル、温度20℃、18Vの電解電圧条件下に、20分間陽極酸化処理を行い、6μmの厚さを有する陽極酸化被膜を形成した。
次いで、濃度6g/リットルの酢酸ニッケル溶液を用い、液温を55℃、10分の条件で、封孔処理を行った。
その後、140℃、60分の条件でアルミニウム素管を加熱してアルミニウム基体の表面にアルマイト層を形成した。
【0071】
(2)感光層の形成
次いで、容器内に、電荷発生剤としての無金属フタロシアニン3重量部と、下記式(1)で表される正孔輸送剤(HTM−1)50重量部と、下記式(2)で表される電子輸送剤(ETM−1)30重量部と、結着樹脂としての平均分子量30,000のポリカーボネート樹脂100重量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン800重量部と、を収容し、これらの混合物を得た。次いで、かかる混合物をボールミルを用いて50時間混合分散し、感光層用塗布液を得た。
次いで、得られた感光層用塗布液を、上述した基体上に、ディップコート法にて塗布した後、100℃、40分間の条件下で熱風乾燥し、膜厚が25μmの感光層を形成し、単層型の像担持体を得た。
【0072】
【化1】

【0073】
【化2】

【0074】
2.抵抗値の測定
また、上述した基体と同じ構成である基体を別途用意して、その抵抗値を測定した。
すなわち、基体の表面における1cm2(1cm×1cm)分の小片を切り出し、サンプル小片とした。次いで、かかるサンプル小片の片面、すなわち、アルマイト層が形成されている面に対して、イオンスパッタリング装置により、金電極を、厚さ40nmとなるようにスパッタ蒸着し、サンドイッチセルを得た。
次いで、得られたサンドイッチセルの金電極と、基体と、をそれぞれ導線にてつないだ後、100Vの電圧を印加して、その際流れた電流を電流計にて測定した。
最後に、得られた電流値から、基体の抵抗値(Ω)を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0075】
3.黒点発生数の評価
また、得られた像担持体を、タンデム方式及びクリーナーレス方式を採用したカラー画像形成装置(京セラミタ(株)製、KM−C3232改造機)に対し、ブラック現像剤に対応した像担持体として搭載した。なお、その他のマゼンタ、シアン及びイエロー現像剤に対応した像担持体としては、基体に対してアルマイト層を形成していない以外は、ブラック現像剤に対応した像担持体と同様の構成である像担持体を用いた。
次いで、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー現像剤を全色均等に用いたカラーソリッド画像と、ブラック現像剤のみを用いたモノクロソリッド画像と、を交互に5000枚ずつ印刷した後、白紙画像を印刷し、像担持体(感光体)1周分(9.4cm×21cm)に相当する面積における黒点発生数を目視にて計数した。このとき、ブラック現像剤以外の各色現像剤に対応した像担持体に由来した各色の斑点発生数についても、黒点発生数と同様にして計数した。得られた結果を表1に示す。
なお、その他の画像形成条件は、以下に示す通りである。
帯電方式:スコロトロン帯電方式(帯電電位:800V)
露光方式:レーザ光源露光方式(露光強度:0.5μJ/cm2
現像剤 :非磁性一成分現像剤(重合法)
転写方式:中間転写方式(ベルト状転写方式)
【0076】
[実施例2]
1.像担持体の製造
(1)基体の準備
基体として、表面にアルマイト層を有さないほかは、実施例1と同様のアルミニウム基体を準備した。
【0077】
(2)中間層の形成
次いで、容器内に、酸化チタン(テイカ製、MT−02、数平均一次粒子径:10nm)220重量部と、メタノール1000重量部と、ブタノール250重量部と、アミランCM8000(東レ(株)製、四次元共重合ポリアミド樹脂)100重量部と、を収容した後、ペイントシェーカーを用いて10時間分散させ、中間層用塗布液を得た。
次いで、得られた中間層用塗布液を孔径5μmのフィルターにてろ過した後、上述した基体上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱処理し、膜厚が2μmの中間層を形成した。
【0078】
(3)感光層の形成
次いで、得られた中間層上に、実施例1と同様にして感光層を形成し、単層型の像担持体を得た。
【0079】
2.抵抗値の測定
また、上述したアルミニウム基体上に、上述した中間層と同じ構成である中間層のみを形成した状態の基体を用意して、中間層を介した基体における抵抗値を測定した。
すなわち、中間層を形成した基体における1cm2(1cm×1cm)分の小片を切り出し、サンプル小片とした。次いで、かかるサンプル小片の片面、すなわち、中間層が形成されている面に対して、イオンスパッタリング装置により、金電極を、厚さ40nmとなるようにスパッタ蒸着し、サンドイッチセルを得た。
次いで、得られたサンドイッチセルの金電極と、基体と、をそれぞれ導線にてつないだ後、100Vの電圧を印加して、その際流れた電流を電流計にて測定した。
最後に、得られた電流値から、基体の抵抗値(Ω)を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0080】
3.黒点発生数の評価
また、得られた像担持体を用いたほかは、実施例1と同様にして黒点発生数及びその他の各色の斑点発生数を計数した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3]
実施例3では、中間層の形成を、以下のように行ったほかは、実施例2と同様に像担持体を製造するとともに、抵抗値の測定及び黒点発生数の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
すなわち、酸化チタン(テイカ製、MT−02、数平均一次粒子径:10nm)220重量部と、エタノール1200重量部と、ブタノール300重量部とを、共重合ポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ製、ベスタメルトX4685)100重量部に対して加えた後、ペイントシェーカーを用いて10時間分散させ、中間層用塗布液とした。
次いで、得られた中間層用塗布液を孔径5μmのフィルターにてろ過した後、実施例2と同様の基体上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱処理し、膜厚が2μmの中間層を形成した。
【0082】
[実施例4]
実施例4では、中間層の形成を、以下のように行ったほかは、実施例2と同様に像担持体を製造するとともに、抵抗値の測定及び黒点発生数の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
すなわち、酸化チタン(テイカ製、SMT−02、数平均一次粒子径:10nm)220重量部と、エタノール1200重量部と、ブタノール300重量部とを、共重合ポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ製、ベスタメルトX4685)100重量部に対して加えた後、ペイントシェーカーを用いて10時間分散させ、中間層用塗布液とした。
次いで、得られた中間層用塗布液を孔径5μmのフィルターにてろ過した後、上述した基体上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱処理し、膜厚が2μmの中間層を形成した。
【0083】
[実施例5]
実施例5では、中間層の形成を、以下のように行ったほかは、実施例2と同様に像担持体を製造するとともに、抵抗値の測定及び黒点発生数の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
すなわち、酸化チタン(テイカ製、SMT−02、数平均一次粒子径:10nm)220重量部とメタノール1000重量部と、ブタノール250重量部と、アミランCM8000(東レ(株)製、四次元共重合ポリアミド樹脂)100重量部と、を収容した後、ペイントシェーカーを用いて10時間分散させ、中間層用塗布液を得た。
次いで、得られた中間層用塗布液を孔径5μmのフィルターにてろ過した後、上述した基体上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱処理し、膜厚が2μmの中間層を形成した。
【0084】
[比較例1]
比較例1では、中間層を形成しなかったほかは、実施例2と同様に像担持体を製造するとともに、黒点発生数の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
なお、比較例1における基体は導体であることから、抵抗の測定は省略した。
【0085】
[比較例2]
比較例2では、中間層の膜厚を0.8μmとしたほかは、実施例2と同様に像担持体を製造するとともに、抵抗値の測定及び黒点発生数の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0086】
[比較例3]
比較例3では、中間層の膜厚を0.2μmとしたほかは、実施例2と同様に像担持体を製造するとともに、抵抗値の測定及び黒点発生数の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0087】
[比較例4]
比較例4では、カラー画像形成装置に対してクリーニング装置を搭載させ、像担持体に対してブレードクリーナーを当接させた構成とした。
また、非磁性一成分現像剤用の現像装置を取り外し、代わりに二成分現像剤用の現像装置を搭載させた。
そのほかは、比較例1と同様に像担持体を製造するとともに、黒点発生数の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明にかかるカラー画像形成装置及びそれを用いたカラー画像形成方法によれば、タンデム方式のカラー画像形成装置において、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体表面、あるいは中間層を介した基体表面における単位面積当たりの抵抗値を所定の範囲とすることにより、かかる像担持体においてフィルミングが発生した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制できるようになった。
その結果、非磁性一成分現像剤を使用し、かつ、クリーナーレス方式を採用しているにもかかわらず、連続画像形成を実施した場合であっても、形成画像上の黒点の発生を効果的に抑制することができるようになった。
したがって、本発明のカラー画像形成装置及びそれを用いたカラー画像形成方法は、画像形成装置の高画質化、小型化等に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、所定の基体等における単位面積当たりの抵抗値と、黒点発生数と、の関係を説明するために供する図である。
【図2】図2は、本発明としてのカラー画像形成装置の構成を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(b)は、単層型像担持体の構成を説明するために供する図である。
【図4】(a)〜(b)は、積層型像担持体の構成を説明するために供する図である。
【図5】図5は、現像装置の構成を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0091】
10:カラー画像形成装置、11:現像装置、12:現像ローラ、13:像担持体、14:帯電器、15:露光装置、16:転写装置、18:給紙カセット、20:定着装置、31:現像ハウジング、32:撹拌室、33:現像室、34:撹拌手段1、35:撹拌手段2、36:補給ローラ、37:現像剤保持域、38:現像領域、39:規制ブレード、110:単層型潜像担持体、112:基体、114:単層型感光層、116:中間層、120:積層型像担持体、122:電荷輸送層、124:電荷発生層、126:積層型感光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー及びブラックの各色ごとの静電潜像が形成される複数の像担持体を有するとともに、当該像担持体上に形成された静電潜像を、非磁性一成分現像剤によって現像するタンデム方式であり、かつ、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式のカラー画像形成装置であって、
前記複数の像担持体のうち、少なくともブラック現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×105〜1×108Ωの範囲内の値とすることを特徴とするカラー画像形成装置。
【請求項2】
前記ブラック現像剤に対応した像担持体が、正帯電型の有機感光体であることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像形成装置。
【請求項3】
前記ブラック現像剤に対応した像担持体における基体がアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のカラー画像形成装置。
【請求項4】
前記ブラック現像剤に対応した像担持体における基体が、表面にアルマイト層を有することを特徴とする請求項3に記載のカラー画像形成装置。
【請求項5】
前記アルマイト層の厚さを1〜50μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項4に記載のカラー画像形成装置。
【請求項6】
前記ブラック現像剤に対応した像担持体における中間層が、無機微粒子と、結着樹脂と、を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項7】
前記無機微粒子が、酸化チタンであることを特徴とする請求項6に記載のカラー画像形成装置。
【請求項8】
カラー現像剤に対応した像担持体の基体、あるいは中間層を介した基体における1cm2当たりの抵抗値(印加電圧:100V)を1×104Ω以下の値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項9】
カラー現像剤に対応した像担持体の基体が、アルミニウムを含むとともに、前記基体の表面にアルマイト層及び中間層を有さないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置を用いたカラー画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−48176(P2009−48176A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162045(P2008−162045)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】