説明

カリウムチャネル阻害剤

本発明は心不整脈等を治療するためのカリウムチャネル阻害剤として有用な構造:


をもつ化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義にはカリウムチャネル阻害剤として有用な化合物に関する。この類の化合物は心不整脈等を治療及び予防するためのKv1.5アンタゴニストとして有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AF)は臨床医療において最も一般的な持続性心不整脈であり、人口の高齢化と共に有病率が増加する傾向にある。AFは致死性であることは稀であるが、心機能を悪化させ、鬱血性心不全、血栓塞栓症又は心室細動の発症等の合併症を併発する危険がある。
【0003】
現在入手可能な抗不整脈薬は心室性及び心房性/上室性不整脈の治療用に開発されている。悪性心室性不整脈は直接生命にかかわり、緊急処置が必要である。心室性不整脈の治療薬としてはクラスIa(例えばプロカインアミド、キニジン)、クラスIc(例えばフレカイニド、プロパフェノン)、及びクラスIII(アミオダロン)群薬が挙げられるが、催不整脈のリスクが大きい。これらのクラスI及びIII群薬はAFを洞調律に変換し、AFの再発を防ぐことが示されている(Mounsey,JP,DiMarco,JP,Circulation,102:2665−2670)が、潜在的に致死性の心室性催不整脈の危険が許容できないほど大きいため、死亡率が増加する可能性がある(Pratt,CM,Moye,LA,Am J.Cardiol,65:20B−29B,1990;Waldoら,Lancet,348:7−12,1996;Torp−Pedersenら,Expert Opin.Invest.Drugs,9:2695−2704,2000)。これらの知見によると、より安全で有効な心房性不整脈治療薬を開発する医学的必要性が未だに満たされていないことは明白である。クラスIII抗不整脈薬は心臓伝導又は収縮機能をさほど低下せずにAPDの選択的な延長を引き起こす。心房細動の臨床用として認可されている唯一の選択的クラスIII群薬はドフェチリドであり、ヒトの心房と心室の両者に存在するIの急速活性化成分であるIKrを遮断することによりその抗不整脈作用を生じる(Mounsey,JP,DiMarco,JP,Circulation,102:2665−2670)。IKr遮断薬は伝導自体に作用せずに心房及び心室両者のAPDと不応性を増加するので、理論的にはAF等の不整脈に潜在的に有用な治療薬である(Torp−Pedersenら,Expert Opin.Invest.Drugs,9:2695−2704,2000)。しかし、これらの薬剤は低心拍数で催不整脈のリスクを増す可能性が高い。
【0004】
超急速遅延整流K電流であるIKurはヒト心房で特異的に観察されており、心室では観察されていない。ヒト心房におけるIKurの分子相関はKv1.5と呼ばれるカリウムチャネルである。IKurはヒト心房で再分極に大きく寄与すると考えられている。従って、Kv1.5を遮断する化合物であるIKurの特異的遮断薬は現行のクラスIII群薬治療中に認められる不整脈惹起性後脱分極及び後天性QT延長症候群の根底にある心室再分極の遅延を生じずにヒト心房の再分極の遅延により不応性を延長させることにより他の化合物の欠点を解決すると思われる。これらの特性を示すKv1.5遮断薬は文献に記載されている(Peukertら,J.Med.Chem.,46:486−498,2003;Knoblochら,Naunyn−Schmedieberg’s Arch.Pharmacol.366:482−287,2002;Merck & Co.,Inc.WO0224655,2002)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に記載する化合物はKv1.5アンタゴニストである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はKv1.5カリウムチャネルを阻害する式I:
【0007】
【化2】

の化合物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は心不整脈等の治療及び予防に有用である。式Iの化合物と医薬キャリヤーを含有する医薬製剤も本発明の範囲に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は式1:
【0010】
【化3】

[式中、
、R及びRは、
1)水素、
2)ハロゲン、
3)NO
4)CN、
5)CR=C(R
6)C≡CR
7)(CROR
8)(CRN(R
9)(CRC(O)R
10)(CRC(O)OR
11)(CR
12)(CRS(O)
13)(CRS(O)N(R
14)OS(O)
15)N(R)C(O)R
16)N(R)S(O)
17)(CRN(R)R
18)(CRN(R)(CRC(O)N(R
19)(CRN(R)(CRC(O)OR
20)N(R)(CR
21)N(R)(CRN(R
22)(CRC(O)N(R
23)(CRC(O)NH(CR
24)(CRC(O)NHC(R(CRN(R
25)C(O)NH(CR)(CR)、
26)S(O)、及び
27)N(R)(R)から構成される群から独立して選択され;
は出現時毎に、
1)水素、
2)非置換又は置換のC−Cアルキル、
3)非置換又は置換のC−C10シクロアルキル、
4)非置換又は置換のアリール、
5)非置換又は置換の複素環、
6)CF
7)非置換又は置換のC−Cアルケニル、及び
8)非置換又は置換のC−Cアルキニルから構成される群から独立して選択され、
あるいはRがRでジ置換された窒素原子と結合している場合には、各RはC−Cアルキルから独立して選択され、窒素原子は各Rと一緒になって環を形成し;
は出現時毎に、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)ハロゲン、
4)アリール、
5)複素環、
6)C−C10シクロアルキル、
7)OR、及び
8)CHORから構成される群から独立して選択され、
前記アルキル、アリール、複素環及びシクロアルキルは置換されていないか、又はRから選択される少なくとも1個の置換基で置換されており;
は出現時毎に、
1)水素、
2)非置換又は置換のC−Cアルキル、
3)ハロゲン、
4)OR
5)CF
6)非置換又は置換のアリール、
7)非置換又は置換のC−C10シクロアルキル、
8)非置換又は置換の複素環、
9)S(O)N(R
10)C(O)OR
11)C(O)R
12)CN、
13)C(O)N(R
14)N(R)C(O)R
15)N(R)C(O)OR
16)N(R)C(O)N(R
17)OC(O)N(R
18)S(O)
19)OS(O)
20)NO
21)N(R
22)SC(O)R
23)N(R)S(O)、及び
24)S(O)から構成される群から独立して選択され;
上記式中、Rは上記に定義した基から独立して選択され;
mは独立して0、1及び2から選択され;
nは独立して0、1、2、3、4、5及び6から選択される]の化合物又は医薬的に許容可能な塩を包含する。
【0011】
式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の1態様において、Rは水素及びハロゲンから構成される群から選択される。この態様の好ましい1群は水素とFから構成される。このサブセットにおいて、他の全変項は当初に定義した通りである。
【0012】
式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の別の態様において、Rは水素、ハロゲン及びCFから構成される群から選択される。この態様の好ましい1群はClとCFから構成される。このサブセットにおいて、他の全変項は当初に定義した通りである。
【0013】
式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の別の態様において、Rは水素及びハロゲンから構成される群から選択される。この態様の好ましい1群は水素とClから構成される。このサブセットにおいて、他の全変項は当初に定義した通りである。
【0014】
本発明の別の態様は、
1 1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール
2 2,2−ジピリジン−3−イル−1−{2−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジン−3−イル}エタノール
3 1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2−(2−フルオロピリジン−3−イル)−2−ピリジン−3−イルエタノール
4 1−[2−(2−クロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール
5 1−[2−(2,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール
6 1−[2−(2,3−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールから構成される群から選択される化合物を含む。
【0015】
上記化合物の構造を以下に示す。
【0016】
【化4】

【0017】
本発明の化合物はキラル中心をもつ場合があり、例えば1個のキラル中心((R)及び(S)の2種の立体異性体が得られる)又は2個のキラル中心((R,R)、(S,S)、(R,S)及び(S,R)の4種までの立体異性体が得られる)をもつ場合がある。本発明は全光学異性体とその混合物を包含する。特に指定しない限り、1種の異性体の記載は可能な全異性体に適用される。異性体組成物を指定しない場合には、常に可能な全異性体が含まれる。
【0018】
式Iに定義する化合物の互変異性体も本発明の範囲に含まれる。例えば、カルボニル−CHC(O)−基(ケト形)を含む化合物は互変異性化し、ヒドロキシル−CH=C(OH)−基(エノール形)を形成する場合がある。ケト形とエノール形の両者が本発明の範囲に含まれる。
【0019】
更に、炭素−炭素二重結合をもつ化合物はZ形とE形で存在する場合があり、これらの化合物の全異性体が本発明に含まれる。
【0020】
本発明の化合物はアトロプ異性体(即ちキラル回転異性体)として存在する場合がある。本発明はラセミ体及び分割体の両者のアトロプ異性体を包含する。下図はアトロプ異性体として存在することが可能な化合物(Z)とその2種の可能なアトロプ異性体(A)及び(B)の一般構造を示す。同図は更にアトロプ異性体(A)及び(B)の各々をフィッシャー投影図で示す。同図中、Rは式Iについて記載したと同一の定義をもち、R’はR又はRの定義における置換基であり、RはR又はRの定義における水素以外の置換基である。
【0021】
【化5】

【0022】
上記化合物は下記Kv1.5アッセイの1種以上で活性である。
【0023】
本発明の別の態様はK1.5阻害により治療又は予防が実施又は助長される哺乳動物における症状の治療又は予防方法として、K1.5を阻害するのに有効な量の式Iの化合物を投与することを含む方法である。
【0024】
好ましい1態様は治療有効量の式Iの化合物を投与することを含む、哺乳動物における心不整脈(例えば心房細動、心房粗動、心房性不整脈及び上室性頻拍)の治療又は予防方法である。
【0025】
別の好ましい態様は脳卒中等の血栓塞栓イベントの予防方法である。
【0026】
別の好ましい態様は鬱血性心不全の予防方法である。
【0027】
別の好ましい態様は誘導された調律が同様の患者体格及び年齢特徴をもつ個体で正常であるとみなされる調律に対応するように、心房細動をもつ患者に正常洞調律状態を誘導する方法として、患者に本発明の化合物を投与することを含む方法である。
【0028】
別の好ましい態様は患者における頻拍(即ち、例えば100回/分の高心拍数)の治療方法として、請求項1に記載の化合物と併用して抗頻拍装置(例えば除細動器やペースメーカー)で患者を治療することを含む方法である。
【0029】
本発明は更に、医薬的に許容可能なキャリヤーと、式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な結晶形態もしくは水和物を含有する医薬組成物も包含する。好ましい1態様は第2の物質も含有する式Iの化合物の医薬組成物である。
【0030】
略語一覧:
AAS:原子吸収分光法
AF:心房細動
ACE:アンギオテンシン変換酵素
CHO:チャイニーズハムスター卵巣
DAST:三弗化(ジエチルアミノ)硫黄
DMSO:ジメチルスルホキシド
dppf:1,1’−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
EGTA:エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸
FAAS:火炎原子吸収分光法
FBS:胎仔ウシ血清
HBSS:ハンクス平衡塩溶液
HEPES:N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸
HF−Pyr:弗化水素ピリジン
HPLC:高圧液体クロマトグラフィー
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
LYS:溶解液
MS:質量分析
NaOtBu:ナトリウムtert−ブトキシド
NMR:核磁気共鳴
NSAID:非ステロイド性抗炎症薬
PBS:リン酸緩衝食塩水
Pddba:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
RMS:二乗平均平方根
RT:室温
SUP:上清
TBAF:弗化テトラブチルアンモニウム
TBDMSCl:塩化tert−ブチルジメチルシリル
TBSCl:塩化tert−ブチルジメチルシリル
THF:テトラヒドロフラン。
【0031】
特に指定しない限り、本明細書で使用する「アルキル」とは指定炭素原子数の分岐及び直鎖飽和脂肪族炭化水素基(全異性体を含む)を包含する。本明細書全体を通してアルキル基には通常使用されている略語を使用し、例えばメチルは「Me」又は「CH」で表し、エチルは「Et」又は「CHCH」で表し、プロピルは「Pr」又は「CHCHCH」で表し、ブチルは「Bu」又は「CHCHCHCH」で表し、以下同様に表す場合がある。例えば「C1−6アルキル」(又は「C−Cアルキル」)とは指定炭素原子数の直鎖又は分岐鎖アルキル基(全異性体を含む)を意味する。C1−6アルキルは全ヘキシルアルキル及びペンチルアルキル異性体と、n−、イソ−、sec−及びt−ブチル、n−及びイソプロピル、エチル並びにメチルを含む。「C1−4アルキル」とはn−、イソ−、sec−及びt−ブチル、n−及びイソプロピル、エチル並びにメチルを意味する。「アルコキシ」なる用語は酸素橋を介して結合した指定炭素原子数の直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。
【0032】
「アルケニル」なる用語は二重結合により結合した少なくとも2個の炭素原子を含む分岐及び直鎖不飽和炭化水素基を包含する。アルケンエチレンは例えば「CHCH」あるいは「HC=CH」で表される。例えば「C2−5アルケニル」(又は「C−Cアルケニル」)とは炭素原子数2〜5の直鎖又は分岐鎖アルケニル基を意味し、全ペンテニル異性体と、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びエテニル(又はエチレニル)を含む。「C2−3アルケニル」等の同様の用語も同様の意味をもつ。
【0033】
「アルキニル」なる用語は三重結合により結合した少なくとも2個の炭素原子を含む分岐及び直鎖不飽和炭化水素基を包含する。アルキンアセチレンは例えば「CHCH」あるいは「HC≡CH」で表される。例えば「C2−5アルキニル」(又は「C−Cアルキニル」)とは炭素原子数2〜5の直鎖又は分岐鎖アルキニル基を意味し、全ペンチニル異性体と、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−プロピニル、2−プロピニル及びエチニル(又はアセチレニル)を含む。「C2−3アルキニル」等の同様の用語も同様の意味をもつ。
【0034】
特に「非置換」又は「置換」に限定して指定しない限り、アルキル、アルケニル及びアルキニル基は置換されていないか又は各炭素原子上をハロ、C−C20アルキル、CF、NH、−NH(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)、NO、オキソ、CN、N、−OH、−O(C−Cアルキル)、C−C10シクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、(C−Cアルキル)S(O)0−2−、(C−Cアルキル)S(O)0−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)NH−、HN−C(NH)−、−O(C−Cアルキル)CF、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)−、(C−Cアルキル)O(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)1−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、アリール、アラルキル、複素環、ヘテロシクリルアルキル、ハロ−アリール、ハロ−アラルキル、ハロ−複素環、ハロ−ヘテロシクリルアルキル、シアノ−アリール、シアノ−アラルキル、シアノ−複素環及びシアノ−ヘテロシクリルアルキルの1〜3個の置換基で置換されている。
【0035】
「C0−6アルキル」等の術語で使用する「C」なる用語は直接共有結合を意味する。同様に、基における所定数の原子の存在を定義する整数が0に等しい場合には、これに隣接する原子が結合により直接結合していることを意味する。例えばsが0、1又は2に等しい整数である構造:
【0036】
【化6】

においてsが0であるとき、構造は
【0037】
【化7】

である。
【0038】
「C3−8シクロアルキル」(又は「C−Cシクロアルキル」)なる用語は合計炭素原子数3〜8の環状アルカン(即ちシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル)を意味する。「C3−7シクロアルキル」、「C3−6シクロアルキル」、「C5−7シクロアルキル」等の用語も同様の意味をもつ。
【0039】
環に関して使用する場合に「不飽和」なる用語は最大数の非累積環二重結合をもつ環を意味する。環に関して使用する場合に「飽和」なる用語は部分(最大数の環二重結合未満の少なくとも1個の二重結合をもつ)又は完全(二重結合をもたない)飽和環を意味する。
【0040】
「ハロゲン」(又は「ハロ」)なる用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する(フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及びヨード(I)と言う場合もある)。
【0041】
「C1−6ハロアルキル」(「C−Cハロアルキル」又は「ハロゲン化C−Cアルキル」と言う場合もある)なる用語は1個以上のハロゲン置換基をもつ上記定義によるC−C直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。「C1−4ハロアルキル」なる用語も同様の意味をもつ。「C1−6フルオロアルキル」なる用語はハロゲン置換基がフルオロに限定される以外は同様の意味をもつ。適切なフルオロアルキルとしては(CH0−4CF系列(即ちトリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル等)か挙げられる。
【0042】
本明細書で使用する「炭素環」なる用語(及び「炭素環式」や「カルボシクリル」等のその変形)は特に指定しない限り、(i)C−C単環式飽和もしくは不飽和環又は(ii)C7−12二環式飽和もしくは不飽和環系を意味する。(ii)の各環は相互に独立しているか又は他の環と縮合しており、各環は飽和又は不飽和である。炭素環は任意炭素原子で分子の残余と結合し、安定な化合物を形成することができる。縮合二環式炭素環は炭素環のサブセットであり、即ち「縮合二環式炭素環」なる用語は一般に各環が飽和又は不飽和であり、環系の各環が2個の隣接炭素原子を共有するC7−10二環系を意味する。一方の環が飽和であり、他方が飽和である縮合二環式炭素環は飽和二環系である。一方の環がベンゼンであり、他方が飽和である縮合二環式炭素環は不飽和二環系である。一方の環がベンゼンであり、他方が不飽和である縮合二環式炭素環は不飽和環系である。飽和炭素環はシクロアルキル環(例えばシクロプロピル、シクロブチル等)と言う場合もある。特に指定しない限り、炭素環は置換されていないか又はC1−6アルキル、C1−6アルケニル、C1−6アルキニル、アリール、ハロゲン、NHもしくはOHで置換されている。縮合二環式炭素環のサブセットは一方の環がベンゼン環であり、他方の環が飽和又は不飽和であり、任意炭素原子を介して結合することにより安定な化合物を形成する二環式炭素環である。このサブセットの代表例を以下に挙げる。
【0043】
【化8】

【0044】
「アリール」なる用語は単環式及び多環式芳香族炭素環系を意味し、多環系の個々の炭素環は単結合を介して相互に縮合又は結合している。適切なアリール基としてはフェニル、ナフチル及びビフェニレニルが挙げられる。
【0045】
「複素環」なる用語(及び「複素環式」や「ヘテロシクリル」等のその変形)は広義に(i)安定な4〜8員単環式飽和もしくは不飽和環、又は(ii)安定な7〜12員二環系を意味し、(ii)の各環は架橋、縮合又はスピロ環であり、独立して飽和又は不飽和であり、単環又は二環系はN、O及びSから選択される1個以上(例えば1〜6個又は1〜4個)のヘテロ原子と残余の炭素原子を含み(単環は一般に少なくとも1個の炭素原子を含み、環系は一般に少なくとも2個の炭素原子を含む)、窒素及び硫黄ヘテロ原子の任意1個以上は場合により酸化されており、窒素ヘテロ原子の任意1個以上は場合により四級化されている。結合の結果として安定な構造が形成される限り、複素環は任意ヘテロ原子又は炭素原子で結合することができる。複素環が置換基をもつ場合には、当然のことながら、安定な化学構造が得られる限り、置換基はヘテロ原子であるか炭素原子であるかを問わずに環の任意原子と結合することができる。
【0046】
特に「非置換」又は「置換」に限定して指定しない限り、シクロアルキル、アリール及び複素環基は非置換又は置換である。本明細書で使用する「置換のC−C10シクロアルキル」、「置換のアリール」及び「置換の複素環」なる用語は化合物の残余との結合点以外に1〜4個の置換基を含む環状基を包含する。置換基は限定されないが、ハロ、C−C20アルキル、CF、NH、−NH(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)、NO、オキソ、CN、N、−OH、−O(C−Cアルキル)、C−C10シクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、(C−Cアルキル)S(O)0−2−、アリール−S(O)0−2−、(C−Cアルキル)S(O)0−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)NH−、HN−C(NH)−、−O(C−Cアルキル)CF、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)−、(C−Cアルキル)O(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)1−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ハロ−アリール、ハロ−アラルキル、ハロ−複素環、ハロ−ヘテロシクリルアルキル、シアノ−アリール、シアノ−アラルキル、シアノ−複素環及びシアノ−ヘテロシクリルアルキルを含む群から選択することが好ましい。
【0047】
飽和複素環は複素環のサブセットを形成し、即ち「飽和複素環」なる用語は一般に(単環式であるか多環式であるかを問わずに)環系が飽和している上記定義による複素環を意味する。「飽和複素環」なる用語は炭素原子とN、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子から構成される4〜8員単環式飽和環又は安定な7〜12員二環系を意味する。代表例としてはピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾオキサジニル、テトラヒドロキノキサリニル、ベンゾジオキシニル、ジアザスピロ4.4]ノナニル、ピペラジノン及びテトラヒドロフリル(又はテトラヒドロフラニル)が挙げられる。
【0048】
複素芳香族は複素環の別のサブセットを形成し、即ち「複素芳香族」(あるいは「ヘテロアリール」)なる用語は一般に(単環式であるか多環式であるかを問わずに)環系全体が芳香環系である上記定義による複素環を意味する。「複素芳香環」なる用語は炭素原子とN、O及びSから選択される1個以上のヘテロアリール原子から構成される5もしくは6員単環式芳香環又は7〜12員二環系を意味する。少なくとも1個の窒素原子を含む置換のヘテロアリール環(例えばピリジン)の場合には、このような置換はN−オキシド形成を生じる置換とすることができる。複素芳香環の代表例としてはピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル(又はチオフェニル)、チアゾリル、フラニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル及びチアジアゾリルが挙げられる。
【0049】
二環式複素環の代表例としてはベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリニル、イソインドリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、クロマニル、イソクロマニル、テトラヒドロキノリニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ピリジノン、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−ジオキシニル(即ち
【0050】
【化9】

イミダゾ(2,1−b)(1,3)チアゾール(即ち
【0051】
【化10】

及びベンゾ−1,3−ジオキソリル(即ち
【0052】
【化11】

が挙げられる。本発明の所定状況では、
【0053】
【化12】

は2個の隣接する炭素原子に結合したメチレンジオキシを置換基とするフェニルと言う場合もある。
【0054】
特に逆の記載がない限り、「飽和」環は部分又は完全飽和環である。例えば、「飽和単環式C炭素環」はシクロヘキサンを意味する。
【0055】
特に逆の記載がない限り、本明細書に記載する全範囲は両端を含む。例えば、複素環が「1〜4個のヘテロ原子」を含むと言う場合には複素環が1、2、3又は4個のヘテロ原子を含むことを意味する。
【0056】
本発明の化合物を表す任意成分又は任意式中に任意変項が2回以上出現する場合には、出現時毎のその定義は他の全出現時のその定義から独立している。また、置換基及び/又は変項の組み合わせはこのような組み合わせにより安定な化合物が得られる場合に限って許容される。
【0057】
(例えば「場合により1個以上の置換基で置換されたアリール」等における)「置換」なる用語はこのような一置換及び多置換(同一部位の多置換を含む)が化学的に許容される範囲での指定置換基による一置換及び多置換を含む。
【0058】
N−オキシド部分(例えばピリジル−N−オキシド部分)をもつ本発明の化合物において、N−オキシド部分は慣用表記を使用して構造を表す。例えば、ピリジル−N−オキシド部分は
【0059】
【化13】

で構造を表し、上記2式は等価意味をもつ。
【0060】
反復項(例えば(CR(式中、rは整数2であり、Rは規定変項であり、Rは規定変項である))をもつ項を含む変項定義では、Rの意味は出現毎に異なっていてもよく、Rの意味は出現毎に異なっていてもよい。例えばRとRがメチル、エチル、プロピル及びブチルから構成される群から独立して選択される場合には、(CR
【0061】
【化14】

となる。
【0062】
医薬的に許容可能な塩としては金属(無機)塩と有機塩の両者が挙げられ、その一覧はRemington’s Pharmaceutical Sciences,17版,1418頁(1985)に記載されている。当業者に周知の通り、適切な塩形態は物理的及び化学的安定性、流動性、吸湿性並びに溶解度に基づいて選択される。当業者に自明の通り、医薬的に許容可能な塩としては限定されないが、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩及び硝酸塩等の無機酸塩又はリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、琥珀酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩ないしパモ酸塩、サリチル酸塩及びステアリン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。同様に、医薬的に許容可能なカチオンとしては限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウム(特に第2級アミンをもつアンモニウム塩)が挙げられる。上記理由で好ましい本発明の塩としてはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。式Iの化合物の結晶形態、水和物及び溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。
【0063】
本発明の化合物の製造方法を下記スキーム及び実施例に例証する。他の合成プロトコールも当業者に自明である。以下のスキーム及び実施例は式Iの化合物の製造を例証するものであり、従って、特許請求の範囲に記載する本発明を限定するものではない。下記実施例は本発明の別の態様を含む。
【0064】
【化15】

【0065】
上記スキーム中、変項R、R及びRは「式I」で定義した通りである。
【実施例1】
【0066】
1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール
【0067】
【化16】

【0068】
ステップA:2−クロロ−3−ピリジンカルボキシアルデヒド(961mg,6.79mmol)、3,5−ジクロロフェニルボロン酸(1.29g,6.79mmol)、及びジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(277mg,0.34mmol)のTHF(10mL)溶液をCsCO水溶液(1M溶液10mL,10mmol)で処理し、20mL容マイクロ波反応管に密閉した。混合物に160℃で20分間照射し、冷却し、HO 100mLで希釈し、EtOAc(3×60mL)で抽出した。有機抽出層をプールし、乾燥し(NaSO)、減圧濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(SiO 120g,0−20% EtOAc/ヘキサン勾配溶出)により精製し、2−(3,5−ジクロロフェニル)ニコチンアルデヒドを得た。ESI+MS:252.0[M+H]
【0069】
ステップB:3,3’−メチレンジピリジン(340mg,1.99mmol)の−78℃のTHF(20mL)溶液をリチウムジイソプロピルアミド(モノ−THF錯体の1.5Mシクロヘキサン溶液2.65mL,3.98mmol)で滴下処理した。−78℃で30分間撹拌後、2−(3,5−ジクロロフェニル)ニコチンアルデヒド(THF 6mLの溶液として500mg,1.99mmol)をシリンジで滴下した。反応混合物を1時間−78℃で撹拌し、5分間かけて0℃まで昇温した後、HO 100mLを加えてクエンチした。混合物をEtOAc(3×60mL)で抽出し、有機抽出層をプールし、乾燥し(NaSO)、減圧濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(SiO 40g,0−10% MeOH/CHCl勾配溶出)により精製し、ラセミ体の1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールを得た。キラル固定相(ChiralPak AD,5cm×50cm,20μ,40−100% i−PrOH/ヘキサン勾配溶出+1mL/Lジエチルアミン,80mL/分)を使用してHPLCにより分割し、標記化合物を得た。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.53(dd,J=0.8,4.7Hz,1H),8.49(d,J=1.9Hz,1H)5 8.46(dd,J=1.4,4.8Hz,1H),8.37(dd,J=1.8,4.3Hz,1H),8.06(d,J=1.3Hz,1H),7.99(dd,J=1.7,8.1Hz,1H),7.63(dt,J=1.6,7.9Hz,1H),7.43(dd,J=1.8,1.8Hz,1H),7.34(dd,J=4.8,8.0Hz,1H),7.27(m,1H),7.08(m,4H),5.58(d,J=8.2Hz,1H),4.15(d,J=8.2Hz,1H)。HRMS[M+H]C2317ClO計算値422.0822,実測値422.0835。
【0070】
ラセミ体の1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールと各エナンチオマーのKv1.5 HT−クランプIC50値:
ラセミ体:116nM
(R)−1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール:90nM
(S)−1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール:2920nM。
【0071】
スキーム1に従って以下の化合物を製造した(なお、スキームの中間体は文献方法に従って修飾した)。特に指定しない限り、下記実施例2〜6の化合物の構造は構造:
【0072】
【化17】

の変項R、R及びRを定義することにより表される。
【実施例2】
【0073】
2,2−ジピリジン−3−イル−1−{2−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジン−3−イル}エタノール
【0074】
【化18】

H NMR(300MHz,CDCl):δ8.54(dd,J=1.3,4.5Hz,1H),8.45(d,J=1.5Hz,1H),8.43(d,J=4.5Hz,1H),8.31(d,J=4.5Hz,1H),8.04(d,J=1.5Hz,1H),7.96(d,J=8.0Hz,1H),7.71(d,J=7.8Hz,1H),7.58(m,2H),7.51(m,2H),7.31(dd,J=4.7,7.9Hz,1H),7.23(dd,J=4.8,7.8Hz,1H),7.03(dt,J=1.7,8.2Hz,1H),6.99(dd,J=4.5,7.8Hz,1H),5.61(d,J=7.7Hz,1H),4.12(d,J=7.7Hz,1H)。HRMS[M+H]C2418O計算値422.1475,実測値422.1484。
【0075】
ラセミ体の2,2−ジピリジン−3−イル−1−{2−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジン−3−イル}エタノールと各エナンチオマーのKv1.5 HT−クランプIC50値:
ラセミ体:266nM
エナンチオマーA:290nM
エナンチオマーB:8218nM。
【実施例3】
【0076】
1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2−(2−フルオロピリジン−3−イル)−2−ピリジン−3−イルエタノール
【0077】
【化19】

【0078】
異性体1
H NMR(300MHz,CDCl):δ8.81(m,1H),8.59(m,2H),8.15(d,J=4.7Hz,1H),8.02(dd,J=8.3,8.3Hz,1H),7.90(d,J=8.0Hz,1H),7.63(m,1H),7.56(m,1H),7.47(m,1H),7.34(dd,J=4.9,7.8Hz,1H),7.24(m,3H),5.77(d,J=4.7Hz,1H),4.44(d,J=4.8Hz,1H)。HRMS[M+H]C2316ClFNO計算値440.0727,実測値440.0745。
【0079】
異性体2
H NMR(300MHz,CDCl):δ9.07(m,1H),8.62(m,1H),8.58(d,J=4.4Hz,1H),8.11(d,J=5.0Hz,1H),8.09(m,1H),8.03(d,J=8.4Hz,1H),7.70(m,1H),7.45(dd,J=1.8,1.8Hz,1H),7.41(dd,J=4.8,8.1Hz,1H),7.33(m,1H),7.17(d,J=1.8Hz,2H),7.05(ddd,J=1.6,4.9,7.1Hz,1H),5.71(d,J=8.6Hz,1H),4.60(d,J=8.3Hz,1H)。HRMS[M+H]C2316ClFNO計算値440.0727,実測値440.0741。
【0080】
1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2−(2−フルオロピリジン−3−イル)−2−ピリジン−3−イルエタノールエナンチオマーの混合物と各エナンチオマーのKv1.5 HT−クランプIC50値:
4種の異性体の混合物:85nM
異性体1,エナンチオマーA:96nM
異性体1,エナンチオマーB:10000nMで72%阻害
異性体2,エナンチオマーA:154nM
異性体2,エナンチオマーB:10000nMで89%阻害。
【実施例4】
【0081】
1−[2−(2−クロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール
【0082】
【化20】

【0083】
各種ROESYシグナルの化学交換により示されるようなアトロプ異性体の2:1混合物として単離した。H NMR(600MHz,CDCl):主要異性体δ8.52(m,1H),8.40(m,1H),8.39(m,1H),8.30(m,1H),8.0(s,1H),7.88(d,J=7.9Hz,1H),7.6.5(m,1H),7.47(d,J=8.2H,1H),7.39(t,J=7.6Hz,1H),7.35(t,J=7.6Hz,1H),7.29(m,1H),7.21(m,1H),7.10(m,1H),7.01(dd,J=4.9,7.6Hz,1H),6.89(d,J=7.6Hz,1H),5.32(d,J=6.8Hz,1H),4.06(d,J=6.8Hz,1H)。少量異性体δ8.52(m,1H),8.45(s,1H),8.40(m,1H),8.29(m,1H),8.23(s,1H),7.66(m,1H),7.59(d,J=8.2Hz,1H),7.52(d,J=7.9Hz,1H),7.39(dd,J=7.6,7.9Hz,1H),7.37(m,1H),7.28(m,1H),7.23(m,1H),7.14(m,2H),7.09(m,1H),5.36(m,1H),4.10(m,1H)。HRMS[M+H]C2318ClNO計算値388.1211,実測値388.1219。
【0084】
ラセミ体の1−[2−(2−クロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールと各エナンチオマーのKv1.5 HT−クランプIC50値:
ラセミ体:422nM
エナンチオマーA:171nM
エナンチオマーB:25000nM。
【実施例5】
【0085】
1−[2−(2,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール
【0086】
【化21】

【0087】
各種ROESYシグナルの化学交換により示されるようなアトロプ異性体の2.6:1混合物として単離した。H NMR(600MHz,CDCl):主要異性体δ8.56(dd,J=1.7,4.9Hz,1H),8.48(s,1H),8.44(m,1H),8.38(m,1H),8.05(dd,J=1.6,8.0Hz,1H),7.96(m,1H),7.63(dt,J=1.7,7.9Hz,1H),7.40(m,2H),7.35(dd,J=2.4,8.5Hz,1H),7.25(m,1H),7.06(dd,J=4.8,8.0Hz,1H),7.01(dt,J=1.8,7.9Hz,1H),6.56(d,J=2.4Hz,1H),5.28(d,J=8.2Hz,1H),4.12(d,J=8.3Hz,1H)。少量異性体δ8.54(dd,J=1.7,4.9Hz,1H),8.44(m,1H),8.43(m,1H)5 8.37(m,1H),8.32(s,1H),7.67(dt,J=1.6,7.9Hz,1H),7.52(m,3H),7.47(dt,J=1.7,7.9Hz,1H),7.27(m,1H),7.18(m,1H),7.13(dd,J=4.6,7.8Hz,1H),7.07(m,1H),5.33(m,1H),4.12(m,1H)。HRMS[M+H]C2317ClO計算値422.0822,実測値422.0835。
【0088】
ラセミ体の1−[2−(2,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールと各エナンチオマーのKv1.5 HT−クランプIC50値:
ラセミ体:77nM
エナンチオマーA:3197nM
エナンチオマーB:75nM。
【実施例6】
【0089】
1−[2−(2,3−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール
【0090】
【化22】

【0091】
各種ROESYシグナルの化学交換により示されるようなアトロプ異性体の2:1混合物として単離した。H NMR(600MHz,CDCl):主要異性体δ8.53(m,1H),8.39(m,1H),8.33(m,1H),8.32(m,1H),8.02(d,J=1.8Hz,1H),7.90(d,J=8.0Hz,1H),7.66(dt,J=1.7,7.8Hz,1H),7.54(dd,J=1.4,8.0Hz,1H),7.32(m,1H),7.28(m,1H),7.23(m,1H),7.14(dd,J=1.6,8.0Hz,1H),7.04(dd,J=4.7,7.9Hz,1H),6.69(m,1H),5.22(d,J=7.1Hz,1H),4.08(d,J=7.0Hz,1H)。少量異性体δ8.53(m,1H),8.45(m,1H),8.42(m,1H),8.32(m,1H),8.29(m,1H),7.64(dt,J=1.6,7.9Hz,1H),7.57(m,1H),7.56(m,1H),7.35(m,1H),7.32(m,1H),7.28(m,1H),7.23(m,1H),7.17(m,1H),7.11(dd,J=4.9,7.9Hz,1H),5.35(d,J=4.2Hz,1H),4.10(d,J=4.0Hz,1H)。HRMS[M+H]C2317ClO計算値422.0822,実測値422.0832。
【0092】
ラセミ体の1−[2−(2,3−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールと各エナンチオマーのKv1.5 HT−クランプIC50値:
ラセミ体:110nM
エナンチオマーA:5212nM
エナンチオマーB:236nM。
【0093】
下記方法を使用して本発明の代表的化合物を評価した処、Kv1.5アッセイで活性を示すことが判明したため、本発明の化合物はKv1.5阻害剤及び抗不整脈薬として有用であることが実証及び確認された。この種の化合物は順方向心拍数依存性を示し、より高い程度まで又は好ましくはより速い脱分極速度もしくは心拍数で外向きK電流を遮断すると思われる。このような化合物は下記のような電気生理学的試験で同定することができる。例えば、1Hzと3Hzの周波数で発生される脱分極パルス系列中において、3Hzの10秒系列中に観察される遮断量が1Hzで観察される遮断量よりも大きい場合に遮断は「心拍数依存性」である。Kv1.5遮断薬は使用依存性を示す場合もあり、外向きK電流の遮断は使用と共に増加するか又は心筋細胞の反復脱分極中に増加する。遮断の使用依存性は所与心拍数又は周波数のパルス又は脱分極の系列又はシーケンスで各連続脱分極と共に依存程度が増加する。例えば、周波数1Hzの脱分極パルス10回の系列中において、系列の10回目のパルスの遮断量が最初のパルスの遮断量よりも大きい場合に遮断は「使用依存性」である。Kv1.5遮断薬は使用依存性と心拍数依存性の両方を示す場合もある。
【0094】
Kv1.5遮断薬は限定されないが、ヒト、ラット、マウス、イヌ、サル、フェレット、ウサギ、モルモット又はヤギ等の種々の種に由来する心臓単球又は他の組織を使用して天然IKurの電気生理学的試験により同定することもできる。天然組織においてKv1.5はホモオリゴマーとして存在する場合もあるし、他のKvファミリーメンバーと共にヘテロオリゴマーとして存在する場合もあるし、βサブユニットとの複合体として存在する場合もある。本発明の化合物はKv1.5ホモオリゴマーもしくはヘテロオリゴマー又はβサブユニットとの複合体におけるKv1.5を遮断すると思われる。
【0095】
Kv1.5アッセイ
高スループットKv1.5プレーナー型パッチクランプアッセイは総合的一次スクリーンである。このアッセイは活性を確認し、Kv1.5カリウムチャネルに特異的に作用する物質の効力の機能的尺度を提供する。Kissら(Assay and Drug Dev.Tech.,1(1−2):127−135,2003)とSchroederら(J.of Biomol.Screen.,8(1);50−64,2003)はKv1.5及び他の電位依存性イオンチャネルに関するこの装置の使用について記載している。
【0096】
10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1000μg/ml G−418硫酸を補充したハムF12培地にヒト心臓からクローニングしたヒトKv1.5カリウムチャネルαサブユニットを安定に発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を90−100%コンフルエンスまで増殖させる。Versene処理により細胞を継代した後、リン酸緩衝食塩水(PBS)に懸濁し、遠心する。細胞ペレットをPBSに再懸濁し、得られた懸濁液をIonWorks(登録商標)HT装置のセルレザバーに入れる。
【0097】
K−グルコース100mM,KCl 40mM,MgCl 3.2mM,EGTA 3mM,N−2−ヒドロキシルエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)5mMを細胞内液に添加し、pH7.3に調整して電気生理学的記録を実施する。アンホテリシン(Sigma)を30mg/mlストック溶液として調製し、内液緩衝液で最終使用濃度0.1mg/mlまで希釈する。外液はダルベッコPBS(Invitrogen)とし、CaCl 0.90mM、KCl 2.67mM、KPO 1.47mM、MgCl 0.50mM、NaCl 138mM、NaPO 8.10mMを添加し、pH7.4に調整する。全成分をDMSO中10mMストック溶液として調製する。化合物を外液緩衝液で希釈した後、実験中に薬剤プレートからパッチプレートに移す(DMSO終濃度<0.66容量%)。
【0098】
Kv1.5イオン電流を室温で記録する。膜電流を増幅し(RMS〜10pA)、10kHzでサンプリングする。テストパルスの200ms前に160ms過分極(10mV)プレパルスを印加してリークコンダクタンスを測定することにより全実験でリークサブトラクションを実施した。パッチクランプ刺激プロトコールは以下の通りである。
1.パッチプレートウェルに外液緩衝液3.5μLを加える。
2.各孔に10mV,160ms電位差を印加することによりプレーナー型マイクロピペット孔抵抗(Rp)を測定する(ホールテスト)。
3.細胞をパッチプレートにピペッティングし、各パッチプレートウェルの底の1〜2μm孔との間に高抵抗シールを形成する。シールテストスキャンを実施し、シールを形成した細胞を含むパッチプレートウェル数を測定する。
4.細胞との電気的接触を得るために、アンホテリシンを添加した細胞内液をパッチプレートの底面に4分間流す。
5.パッチプレートの各ウェルに化合物添加前テストパルスを印加する。プロトコールは以下の通りとする。細胞を−80mVの膜保持電位に15秒間ボルテージクランプする。その後、5Hz刺激パルス系列を印加する(+40mVまでの150ms脱分極×27回)。+40mVまでの膜電位ステップにより外向き(陽)イオン電流を誘起させる。
6.パッチプレートの各ウェルに化合物を添加する。化合物を5分間インキュベートする。
7.化合物添加後テストパルスプロトコールを適用する。プロトコールは以下の通りとする。細胞を−80mVの膜保持電位に15秒間ボルテージクランプする。その後、5Hz刺激パルス系列を印加する(+40mVまでの150ms脱分極×27回)。
【0099】
オフラインでデータ分析を実施する。薬剤添加前と添加後の一対比較を使用して各化合物の阻害効果を測定する。(5Hzパルス系列で)27回目の+40mVまでの脱分極中のピーク対照電流の阻害%をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットする。ヒルの方程式を濃度応答データにフィットさせることにより、電流を50%抑制するために必要な薬剤濃度(IC50):対照の%=100×(1+([薬剤]/IC50−1を求める。
【0100】
各細胞に以下の4種の測定数値が得られる。
1)シール抵抗。
2)ベースライン測定値(1回目の+40mVまでの脱分極から5〜45ms前の−70mVにおける平均電流)。
3)電流増加測定値(1回目の+40mVまでの脱分極中の化合物添加前平均電流振幅から27回目の+40mVまでの脱分極中の化合物添加前平均電流振幅を引いた値)。
4)ピーク電流(5Hzパルス系列で27回目の+40mVまでの脱分極中の最大電流振幅)。
【0101】
化合物添加前と添加後の両者のトレース中で全測定値を得る。以下の場合には細胞をその後の分析に加えない。
1)シール抵抗<50MΩ、
2)化合物添加前のベースライン測定値>±100pA、
3)電流増加測定値>−0.2nA、
4)先行読取ピーク測定値<400pA。
【0102】
上記化合物は上記高スループットKv1.5プレーナー型パッチクランプアッセイにおいて阻害を生じる。
【0103】
原子吸収分光法プロトコール:
本アッセイは火炎原子吸収分光法(Flame Atomic Absorption Spectroscopy:FAAS)を使用してRb流量により測定した場合にCHO細胞で異種発現させたヒトKv1.5K+チャネルを特異的に遮断する物質を同定する。イオンチャネル活性の測定におけるFAASの適用はTerstappenら,Anal.Biochem.,272:149−155,1999を応用した。
【0104】
ヒトKv1.5を発現するCHO細胞を上記のように培養した後、トリプシン−EDTAで回収し、培地で洗浄する。
1.96ウェル細胞培養プレート(アッセイプレート)に細胞40,000個/ウェルを播種し、48時間37℃で増殖させる。
2.培地を除去し、Rb Load Buffer(Aurora Biomed,Vancouver,BC)200μlを5% CO下に37℃で3時間加える。
3.細胞をハンクス平衡塩溶液(HBSS)200μlで5回洗浄した後、試験化合物又は0.5% DMSOを添加したHBSS 100μlを加える。
4.10分後に140mM KClを添加したHEPES緩衝食塩水100μlを加え、プレートを静かに振盪しながら室温で5分間インキュベートする。
5.その直後に上清150μlを別の96ウェルプレートに移し、残りの上清を吸引する。
6.Cell Lysis Buffer(Aurora Biomed,Vancouver,BC)120μlをアッセイプレートに加え、分析前10分間振盪する。
7.ICR−8000自動AAS装置(Aurora Biomed,Vancouver,BC)を使用して上清(SUP)及び溶解液(LYS)のサンプル中のRb濃度を測定する。
% FLUX=100%*(SUP/(LYS+SUP))。% INH=100%*(1−(A−B)/(C−B))、式中、Aは試験化合物の存在下の% FLUXであり、Bは10mM(6−メトキシ−2−メチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)−N,N−ジメチルメタンアミニウムクロリドの存在下の% FLUXであり、Cは0.25% DMSOの存在下の% FLUXである。
【0105】
上記化合物は上記AASアッセイにおいて25μM以下の濃度で≧25%阻害を生じる。
【0106】
本発明の化合物は活性成分化合物を温血動物の体内の作用部位と接触させる任意手段により本発明に従って障害、疾患及び疾病を治療又は予防するために投与することができる。例えば、投与は経口、局所(例えば経皮、眼内、口腔、鼻腔内、吸入、膣内、直腸、槽内)及び非経口とすることができる。本明細書で使用する「非経口」なる用語は皮下、静脈内、筋肉内、関節内注射又は輸液、胸骨内及び腹膜内等の投与方法を意味する。
【0107】
本発明の化合物は個々の治療剤として又は治療剤の併用剤としての薬剤と共に利用可能な任意慣用手段により投与することができる。本発明の化合物は単独投与してもよいが、一般には選択した投与経路と標準医薬プラクティスに基づいて選択された医薬キャリヤーと共に投与する。
【0108】
本開示の趣旨では、温血動物とは恒常性維持機構をもつ動物界の一員であり、哺乳動物と鳥類が挙げられる。
【0109】
投与用量はレシピエントの年齢、健康状態及び体重、疾患の程度、併用治療を行っている場合にはその種類、投与頻度並びに所望効果の種類により異なる。通常、活性成分化合物の1日用量は約1〜500mg/日となるであろう。通例は、10〜100mg/日を1回又は2回以上に分けて投与すると、所望結果を得るために有効である。これらの用量は上記障害、疾患及び疾病(例えば心房細動、心房粗動、心房性不整脈、上室性頻拍等の心不整脈;脳卒中や鬱血性心不全等の血栓塞栓イベント;免疫調節異常等の自己免疫疾患;及び特に心臓拡張障害の帰結としての心不全)の治療と予防に有効な量である。
【0110】
免疫調節異常は全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、I型及びII型糖尿病、炎症性腸疾患、胆汁性肝硬変、ブドウ膜炎、多発性硬化症並びに他の疾患(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、乾癬、魚鱗癬、グレーブス病及び喘息)等の多様な自己免疫疾患及び慢性炎症性疾患に存在する。本発明の化合物はこれらの免疫調節異常等の自己免疫疾患の治療と予防に有用である。
【0111】
本発明は更に心不整脈や血栓塞栓イベント等のK1.5阻害により治療が実施又は助長される哺乳動物における症状の治療用医薬の製造における本発明の化合物の使用を包含する。本発明は更に心不整脈や血栓塞栓イベント等のK1.5阻害により治療が実施又は助長される哺乳動物における症状の予防用医薬の製造における本発明の化合物の使用を包含する。
【0112】
活性成分はカプセル剤、錠剤、トローチ剤、ドラジェ剤、顆粒剤及び散剤等の固体剤形、又はエリキシル剤、シロップ剤、エマルション、分散液剤及び懸濁液剤等の液体剤形で経口投与することができる。活性成分は分散液剤、懸濁液剤又は溶液剤等の滅菌液体剤形で非経口投与することもできる。活性成分を投与するために同様に使用することができる他の剤形としては、局所投与用として軟膏、クリーム、滴剤、経皮パッチ又は散剤、眼内投与用として眼科用溶液剤又は懸濁液剤(即ち点眼剤)、吸入又は鼻腔内投与用としてエアゾールスプレー又は粉末組成物、あるいは直腸又は膣投与用としてクリーム、軟膏、スプレー又は座剤が挙げられる。
【0113】
ゼラチンカプセル剤は活性成分と、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等の粉末状キャリヤーを含有する。同様の希釈剤を使用して圧縮錠剤を製造することができる。錠剤とカプセル剤はいずれも薬剤を長時間にわたって連続放出できるように徐放製剤として製造することができる。圧縮錠剤は不快な味をマスクし、錠剤を大気から保護するために糖衣又はフィルムコーティングしてもよいし、胃腸管で選択的に崩壊するように腸溶コーティングしてもよい。
【0114】
経口投与用液体製剤には患者に受け入れ易くするために着色剤や香味剤を添加してもよい。
【0115】
一般に、水、適切な油、食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液及び同類の糖溶液並びにグリコール類(例えばプロピレングリコールやポリエチレングリコール)が非経口溶液剤に適切なキャリヤーである。非経口投与用溶液剤は活性成分の水溶性塩と、適切な安定剤と、必要に応じて緩衝物質を含有することが好ましい。亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸等の酸化防止剤が適切な安定剤であり、単剤でも併用してもよい。クエン酸及びその塩とEDTAナトリウムも使用する。更に、非経口溶液剤には塩化ベンズアルコニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン及びクロロブタノール等の防腐剤を添加してもよい。
【0116】
適切な医薬キャリヤーは当分野の標準参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osolに記載されている。
【0117】
吸入投与には、本発明の化合物を加圧パック又はネブライザーからエアゾールスプレーとして簡便に送達することができる。化合物は散剤として送達してもよく、その場合には散剤を製剤化してもよいし、吸入散剤インヘラー装置により粉末組成物を吸入してもよい。好ましい吸入用送達システムは定量式吸入(MDI)エアゾールであり、式Iの化合物をフルオロカーボンや炭化水素等の適切な噴射剤の懸濁液又は溶液として製剤化することができる。
【0118】
眼内投与には、化合物を眼球の角膜及び内部領域に浸透させるために十分な時間にわたって化合物を眼球表面と接触させるように、式Iの化合物を適切な重量百分率で適切な眼科用ビヒクルの溶液又は懸濁液として眼科用製剤に製剤化することができる。
【0119】
本発明の化合物を投与するための有用な医薬剤形としては限定されないが、ハード及びソフトゼラチンカプセル剤、錠剤、非経口注射剤並びに経口懸濁液剤が挙げられる。
【0120】
標準2部分ハードゼラチンカプセルに各々粉末状活性成分100mg、ラクトース150mg、セルロース50mg及びステアリン酸マグネシウム6mgを充填することにより多数の単位カプセル剤を製造する。
【0121】
大豆油、綿実油又はオリーブ油等の消化性油に活性成分を加えた混合物を調製し、容量型ポンプによりゼラチンに注入し、活性成分100mgを含有するソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄し、乾燥する。
【0122】
1錠当たり活性成分100mg、コロイド状二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、微結晶セルロース275mg、澱粉11mg及びラクトース98.8mgとなるように慣用手順により多数の錠剤を製造する。口当たりをよくするため又は吸収を遅らせるために適当なコーティングを施してもよい。
【0123】
プロピレングリコール10容量%中で活性成分1.5重量%を撹拌することにより注射投与に適した非経口組成物を製造する。溶液を注射用水で希釈し、滅菌する。
【0124】
5ml当たり微粉状活性成分100mg、ナトリウムカルボキシメチルセルロース100mg、安息香酸ナトリウム5mg、U.S.P.ソルビトール溶液1.0g及びバニリン0.025mlを含有するように経口投与用水性懸濁液剤を製造する。
【0125】
本発明の化合物を段階的に投与する場合又は別の治療剤と併用投与する場合には、一般に同一剤形を使用することができる。薬剤を物理的に併用投与する場合には、併用する薬剤の適合性に応じて剤形と投与経路を選択すべきである。従って、併用投与なる用語は2種の薬剤の同時又は順次投与、あるいは2種の活性成分の固定用量併用剤としての投与を包含する。
【0126】
本発明の化合物は単独活性成分として投与してもよいし、第2の活性成分と併用投与してもよく、第2の成分としては、Kv1.5遮断活性をもつ他の抗不整脈薬(例えばキニジン、プロパフェノン、アンバシリド、アミオダロン、フレカイニド、ソタロール、ブレチリウム、ドフェチリド、アルモカラント、ベプリジル、クロフィリウム)、Kv1.5遮断活性をもつ他の化合物(例えばクロトリマゾール、ケトコナゾール、ブピバカイン、エリスロマイシン、ベラパミル、ニフェジピン、ザテブラジン、ビスインドリルマレイミド)、又は他の心臓血管薬として限定されないが、ACE阻害剤(例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリルエルブミン、キナプリル、ラミプリル及びトランドラプリル)、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(例えばカンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン及びバルサルタン)、強心配糖体(例えばジゴキシン)、L型カルシウムチャネル遮断薬、T型カルシウムチャネル遮断薬、選択的及び非選択的β遮断薬、免疫抑制化合物、エンドセリンアンタゴニスト、トロンビン阻害剤、アスピリン、アスピリン以外の非選択的NSAID(例えばナプロキセン)、ワルファリン、第Xa因子阻害剤、低分子量ヘパリン、未分画ヘパリン、クロピドグレル、チクロピジン、IIb/IIIa受容体アンタゴニスト(例えばチロフィバン)、5HT受容体アンタゴニスト、インテグリン受容体アンタゴニスト、トロンボキサン受容体アンタゴニスト、TAFI阻害剤並びにP2T受容体アンタゴニストが挙げられる。本発明の化合物は単独活性成分として投与してもよいし、ペースメーカーや除細動器と併用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
、R及びRは、
1)水素、
2)ハロゲン、
3)NO
4)CN、
5)CR=C(R
6)C≡CR
7)(CROR
8)(CRN(R
9)(CRC(O)R
10)(CRC(O)OR
11)(CR
12)(CRS(O)
13)(CRS(O)N(R
14)OS(O)
15)N(R)C(O)R
16)N(R)S(O)
17)(CRN(R)R
18)(CRN(R)(CRC(O)N(R
19)(CRN(R)(CRC(O)OR
20)N(R)(CR
21)N(R)(CRN(R
22)(CRC(O)N(R
23)(CRC(O)NH(CR
24)(CRC(O)NHC(R(CRN(R
25)C(O)NH(CR)(CR)、
26)S(O)、及び
27)N(R)(R)から構成される群から独立して選択され;
は出現時毎に、
1)水素、
2)非置換又は置換のC−Cアルキル、
3)非置換又は置換のC−C10シクロアルキル、
4)非置換又は置換のアリール、
5)非置換又は置換の複素環、
6)CF
7)非置換又は置換のC−Cアルケニル、及び
8)非置換又は置換のC−Cアルキニルから構成される群から独立して選択され、
あるいはRがRでジ置換された窒素原子と結合している場合には、各RはC−Cアルキルから独立して選択され、窒素原子は各Rと一緒になって環を形成し;
は出現時毎に、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)ハロゲン、
4)アリール、
5)複素環、
6)C−C10シクロアルキル、
7)OR、及び
8)CHORから構成される群から独立して選択され、
前記アルキル、アリール、複素環及びシクロアルキルは置換されていないか、又はRから選択される少なくとも1個の置換基で置換されており;
は出現時毎に、
1)水素、
2)非置換又は置換のC−Cアルキル、
3)ハロゲン、
4)OR
5)CF
6)非置換又は置換のアリール、
7)非置換又は置換のC−C10シクロアルキル、
8)非置換又は置換の複素環、
9)S(O)N(R
10)C(O)OR
11)C(O)R
12)CN、
13)C(O)N(R
14)N(R)C(O)R
15)N(R)C(O)OR
16)N(R)C(O)N(R
17)OC(O)N(R
18)S(O)
19)OS(O)
20)NO
21)N(R
22)SC(O)R
23)N(R)S(O)、及び
24)S(O)から構成される群から独立して選択され;
上記式中、Rは上記に定義した基から独立して選択され;
mは独立して0、1及び2から選択され;
nは独立して0、1、2、3、4、5及び6から選択される]の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは光学異性体。
【請求項2】
が水素及びハロゲンから構成される群から選択される請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくはその光学異性体。
【請求項3】
が水素及びFから構成される群から選択される請求項2に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくはその光学異性体。
【請求項4】
が水素、ハロゲン及びCFから構成される群から選択される請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくはその光学異性体。
【請求項5】
が水素、Cl及びCFから構成される群から選択される請求項4に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくはその光学異性体。
【請求項6】
が水素及びハロゲンから構成される群から選択される請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくはその光学異性体。
【請求項7】
が水素及びClから構成される群から選択される請求項6に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくはその光学異性体。
【請求項8】
1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール、
2,2−ジピリジン−3−イル−1−{2−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジン−3−イル}エタノール、
1−[2−(2−クロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール、
1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2−(2−フルオロピリジン−3−イル)−2−ピリジン−3−イルエタノール、
1−[2−(2,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノール、及び
1−[2−(2,3−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールから構成される群から選択される請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項9】
1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールである請求項8に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項10】
(R)−1−[2−(3,5−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イル]−2,2−ジピリジン−3−イルエタノールである請求項9に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項11】
1.5阻害により治療が実施又は促進される哺乳動物における症状の治療用医薬の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項12】
心不整脈又は血栓塞栓イベントの治療用医薬の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項13】
1.5阻害により治療が実施又は促進される哺乳動物における症状の予防用医薬の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項14】
心不整脈又は血栓塞栓イベントの予防用医薬の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項15】
医薬的に許容可能なキャリヤーと、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な結晶形態もしくは水和物を含有する医薬製剤。

【公表番号】特表2009−512702(P2009−512702A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536717(P2008−536717)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/040409
【国際公開番号】WO2007/050347
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】