説明

カリックスアレーン類の製造方法

【課題】パラ置換フェノールとホルムアルデヒドとを用いて、省エネルギーおよび省溶媒を達成しつつ、カリックスアレーン類を高収率かつ短時間で合成することができるカリックスアレーン類の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】パラアルキル置換フェノールとホルムアルデヒドとを溶媒、塩基の存在下でマイクロ波エネルギーにより加熱する工程を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料、分子認識材料、機能性材料などのファインケミカル原料となるカリックスアレーン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール誘導体及びその関連化合物は、フェノール樹脂、染料、液晶、高分子などの製造に広範な利用が行われてきた。しかし、優れた分離・分析機能や光学的な機能を有する材料や電子材料分野への実用化は今後の研究開発に期待されるところである。
【0003】
因みに、分子認識物質・機能材料創製の物質としてクラウンエーテルやシクロデキストリンなどの包摂化合物とともに注目を集めてきたカリックスアレーン類は、環状化合物であって、たとえば、p-tert-ブチルフェノールなどのパラ置換フェノールとホルムアルデヒドとの縮合によって合成される。したがって、原料が安価であるとともに、以下のような多くの特徴を持つものとすることができる。
たとえば、機能性基の導入により期待する性質を有する化合物の合成が可能である。また、単一の分子量を持つオリゴマーとしての性質を有し、熱的安定性を得ることができるため、高度な物性を要求される材料として利用することが期待できる。
【0004】
上記のようなカリックスアレーン類の合成方法に関しては、アメリカのC.D.Gutscheらにより構造の確定とともに確立され、カリックスアレーン類としての環状4量体のカリックス[4]アレーン、環状6量体のカリックス[6]アレーン、環状8量体のカリックス[8]アレーンについては、ワンポットでの合成が可能で、反応条件により作り分けることができる(非特許文献1〜3参照)。
【0005】
例えば、非特許文献2には、以下のようにして、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーンおよびp-tert-ブチルカリックス[6]アレーンをそれぞれ合成できると記載されている。
(p-tert-ブチルカリックス[4]アレーンの合成)
p-tert-ブチルフェノールとホルムアルデヒドから少量のアルカリ存在下で、2時間以上の加熱により前駆体を合成する。その後、ジフェニルエーテル中で4時間から5時間還流し、さらに、酢酸エチルで沈殿を生成させる。ろ過物を酢酸エチル、酢酸、酢酸エチル、水、さらにアセトンで洗浄して収率61%の粗生成物を得る。これをトルエンから再結晶を行い収率49%の生成物を得ることができる。
(p-tert-ブチルカリックス[8]アレーンの合成)
p-tert-ブチルカリックス[8]アレーンの合成では、前駆体の合成を経ずに、キシレン中で5〜6時間の還流を行うことにより生成物を得、その後、ろ過物をトルエン、エーテル、アセトン、水で洗浄し乾燥する。さらにクロロホルムで再結晶すると62〜65%の収率で目的物を得ることができる。
(p-tert-ブチルカリックス[6]アレーンの合成)
p-tert-ブチルカリックス[8]アレーンの合成と同様であるが、使用するアルカリ量が異なる。収率は83−88%である。このように反応には5時間以上の時間が必要であり、反応後の生成物の各種溶媒に対する溶解性が悪いために精製には大量の溶媒が必要となる。
【0006】
また、カリックスアレーン類の合成は、オイルバスなどによる加熱状態で行われるとともに、上記のようにアルカリ使用量に大きく依存することが知られており、例えば、非特許文献3には、フェノールに対して0.03〜0,04モル当量の使用により環状4量体のカリックス[4]アレーンおよび環状8量体のカリックス[8]アレーンが生成し、0.3モル当量以上で環状6量体のカリックス[6]アレーンが生成して、カリックス[4]アレーンでは250℃で5時間、カリックス[6]アレーンおよびカリックス[8]アレーンで130℃、5時間以上の反応時間が必要となると記載されている。
【0007】
一方、近年、化学物質の製造において、原料から製造工程、製品に至るまで環境への負荷を低減する、いわゆる環境に優しい化学(グリーンケミストリー)が求められており、上記のようなカリックスアレーン類の製造においても、省エネルギー、省溶媒、高収率化、製造時間の短縮が臨まれている。
また、従来のカリックスアレーン類の製造方法においては、上記のように高温での長時間反応させなければならないため、副反応により生成物の収率を低下させる恐れもある。
【0008】
【非特許文献1】C. D. Gutsche, et al., J. Am. Chem. Soc., 103, 3782(1981).
【非特許文献2】C. D. Gutsche, et al., Org. Synth., Coll. Vol.8., pp75-81(1993).
【非特許文献3】C. D. Gutsche Calixarenes, Monographs in Supramolecular Chemistry; J. F. Stoddat Ed.; the Royal Society of Chemistry: Cambridge, pp28-31(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて、パラ置換フェノールとホルムアルデヒドとを用いて、省エネルギーおよび省溶媒を達成しつつ、カリックスアレーン類を高収率かつ短時間で合成することができるカリックスアレーン類の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために、反応時間の大幅な短縮、精製工程の簡素化などのメリットを活かした化学反応への応用が期待されているマクロ波エネルギーに着目し、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明の請求項1に記載のカリックスアレーン類の製造方法(以下、「請求項1の製造方法」と記す)は、下記の一般式(I)
【化1】

(式中、置換基Rは、アルキル基である。)
で示されるパラ置換フェノールとホルムアルデヒドとを溶媒、塩基の存在下でマイクロ波エネルギーにより加熱する工程を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項2に記載のカリックスアレーン類の製造方法(以下、「請求項2の製造方法」と記す)は、請求項1の製造方法において、溶媒が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、nは1から1000の整数、置換基Rは、水素あるいはアルキル基である。)
で示されるエチレングリコール類、ポリエチレングリコール類およびそれらのアルキルエーテルの少なくともいずれか1種を含むことを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項3に記載のカリックスアレーン類の製造方法(以下、「請求項3の製造方法」と記す)は、請求項1の製造方法において、溶媒が、トリエチレングリコールおよびそのアルキルエーテルの少なくともいずれかを含むことを特徴としている。
【0014】
本発明において、カリックスアレーン類とは、基本的にパラ置換フェノールとホルムアルデヒドとを脱水縮合反応させることによって得られ、一般に、カリックス[n]アレーン(n=3〜10の整数)であらわされる環状化合物で、カリックス[4]アレーン、カリックス[6]アレーン、カリックス[8]アレーンが一般的である。
【0015】
また、上記一般式(I)で示されるパラ置換フェノールとしては、特に限定されないが、たとえば、置換基にメチル、エチル、プロピル、ブチルなど炭素数が1から10の直鎖あるいは分岐のあるアルキル基を有するものが挙げられ、具体的には、p-メチルフェノール、p-エチルフェノール、p-プロピルフェノール、i-プロピルフェノール、p-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-sec-ブチルフェノール、p-ペンチルフェノール、p-tert-ペンチルフェノール、p-ヘキシルフェノール、p-ヘプチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-デシルフェノールなどが挙げられ、特にp-メチルフェノール、p-tert-ペンチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール等が一般に用いられる。
【0016】
反応に使用するホルムアルデヒドは35〜37%のホルマリン水溶液や固体のパラホルムアルデヒドを用いることができる。
【0017】
反応に使用する塩基は、触媒として作用するものであって、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム.水酸化ルビジウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
【0018】
本発明の反応に用いる溶媒としては、特に限定されず、従来のカリックスアレーン類の製造方法に使用されるキシレンやジフェニルエーテルなどでも構わないが、極性を有し、マイクロ波加熱が容易であるアルコール類、エーテル類などの多くの一般溶媒並びにこれらの混合溶媒を含むことが好ましく、マイクロ波加熱が容易で沸点の種類が多く選択が容易な上記一般式(II)で示されるエチレングリコール類、ポリエチレングリコール類およびそれらのアルキルエーテルを含むことがより好ましい。
上記のようなマイクロ波加熱が容易な溶媒として、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどを挙げることができる。
【0019】
本発明において、マイクロ波エネルギーによる加熱は、特に限定されないが、たとえば、家庭用の電子レンジ等を用いて行うことができる。
反応容器は、マイクロ波が照射できれば特に限定されず、バッチ式でも連続流通式でも構わない。
【0020】
反応終了後は、エーテル、酢酸エチル、アセトンなどの生成物を溶かさない有機溶媒に分散させ、ろ過、洗浄、乾燥、することにより95%以上の純度でカリックスアレーン類が得られる。従って、従来法に比較して精製工程の大幅な簡素化が可能となる。また、環状6量体の製造などのようにアルカリ使用量が多い場合には中和させるために分散液に塩酸を添加してろ過、洗浄、乾燥により精製することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるカリックスアレーンの製造方法は、以上のように、マイクロ波エネルギーによって加熱するようにしたので、反応溶液が瞬時に加熱され、数分〜15分程度の短時間で反応が終了する。しかも、溶媒量が少なくても反応させることができる。
【0022】
また、カリックスアレーン類の合成プロセスは基本的に脱水縮合反応により進行し、通常加熱においては、長時間の溶媒の還流により生成する水をディーンスタークトラップにより除去する必要があるが、マイクロ波加熱による反応は、上記のように、数分から15分程度の加熱で終了するとともに使用する溶媒量が少なくすることができる(従来の製造方法に比べ、最大100分1まで極端に減らすことが可能である)ので、急激な加熱により生成する水は溶媒の蒸発ともに即座に反応系外へ排出され、溶媒の留去とともに反応を終了させることができる。なお、溶媒量が多い場合は生成する水を除去するために硫酸ナトリウムやモレキュラーシーブスなどの脱水剤を反応系内に共存させることも可能である。
すなわち、本発明の製造方法によれば、省エネルギーおよび省溶媒を達成しつつ、カリックスアレーン類を高収率かつ短時間で合成することができ、グリーンケミストリーにも対応することができる。
【0023】
さらに、請求項2の製造方法のように、溶媒として、上記一般式(II)で示されるエチレングリコール類、ポリエチレングリコール類およびそれらのアルキルエーテルの少なくともいずれか1種を用いるようにすれば、より短時間で加熱を行うことができる。
【0024】
また、溶媒として、請求項3の製造方法のようにトリエチレングリコールを用いるようにすれば、カリックス[4]アレーンを選択的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の詳細について実施例によって具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよび36%ホルマリン水溶液0.31mLをナスフラスコに入れ、10MNaOH水溶液0.015mLを添加し、マイクロ波(出力300W)で5分間加熱した(到達温度150℃)。その後、溶媒としてのジフェニルエーテル2mLとトリエチレングリコール4mLとを添加し、マイクロ波(出力300W)で10分間加熱した(到達温度230℃)。直ちに冷却した後、アセトン20mLを加え未反応物を溶解し、6N塩酸1〜2mLで酸性にし、不溶成分をろ過、アセトン、水、アセトンで洗浄し、乾燥後305mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMR(核磁気共鳴)を用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率56%)のみが検出され、その他の生成物は認められなかった。
【0027】
(実施例2)
溶媒としてジフェニルエーテル1mLとトリエチレングリコール3mLとを用いた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、220mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率41%)のみが検出され、その他のカリックスアレーン類は認められなかった。
【0028】
(実施例3)
溶媒としてトリエチレングリコール3mLのみを用いた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、118mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率22%)のみが検出され、その他のカリックスアレーン類は認められなかった。
【0029】
(実施例4)
溶媒としてジフェニルエーテル1.5mLとトリエチレングリコール1.5mLとを用いた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、203mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率38%)のみが検出され、その他のカリックスアレーン類は認められなかった。
【0030】
(実施例5)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよび37%ホルマリン水溶液0.34mLをナスフラスコに入れ、4MNaOH水溶液0.02mLと、溶媒としてのジエチレングリコール0.1mLとを添加し、マイクロ波(出力150W)で5分間加熱した(到達温度125℃)。その後、マイクロ波(出力300W)で10分間加熱した(到達温度250℃)。直ちに冷却した後、アセトンを加え未反応物を溶解し、不溶成分をろ過、アセトンで洗浄し、乾燥後323mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率47%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率6%)と、不溶成分とを含む混合物であった。
【0031】
(実施例6)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよび37%ホルマリン水溶液0.34mLをナスフラスコに入れ、4MNaOH水溶液0.04mLと、溶媒としてのジエチレングリコール0.2mLとを添加し、マイクロ波(出力250W)で10分間加熱した(到達温度255℃)。直ちに冷却した後、アセトンを加え未反応物を溶解し、不溶成分をろ過、アセトンで洗浄し、乾燥後222mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率36%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率7%)とを含む混合物であった。
【0032】
(実施例7)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよび37%ホルマリン水溶液0.34mLをナスフラスコに入れ、4MNaOH水溶液0.02mLを添加し、マイクロ波(出力100W)で5分間加熱した(到達温度150℃)。その後、溶媒としてのエチレングリコール0.2mLを添加し、マイクロ波(出力250W)で10分間加熱した(到達温度225℃)。直ちに冷却した後、アセトンを加え未反応物を溶解し、不溶成分をろ過、アセトンで洗浄し、乾燥後311mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率36%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率7%)と、不溶成分とを含む混合物であった。
【0033】
(実施例8)
溶媒としてジエチレングリコール0.2mLを使用した以外は実施例7と同様の反応を行った結果、307mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率35%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率7%)と、不溶成分とを含む混合物であった。
【0034】
(実施例9)
溶媒としてジフェニルエーテル0.2mLを使用した以外は実施例7と同様の反応を行った結果、182mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率32%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率4%)と、少量の不溶成分とを含む混合物であった。
【0035】
(実施例10)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよびパラホルムアルデヒド124mgをナスフラスコに入れ、4MNaOH水溶液0.04mLと、溶媒としてのエチレングリコール0.2mLを添加し、マイクロ波(出力250W)で10分間加熱した(到達温度204℃)。直ちに冷却した後、アセトンを加え未反応物を溶解し、不溶成分をろ過、アセトンで洗浄し、乾燥後346mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率36%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率6%)と、不溶成分とを含む混合物であった。
【0036】
(実施例11)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよびパラホルムアルデヒド124mgをナスフラスコに入れ、炭酸ナトリウム12mgと、溶媒としてのエチレングリコール0.2mLを添加し、マイクロ波(出力250W)で10分間加熱した(到達温度235℃)。直ちに冷却した後、アセトンを加え未反応物を溶解し、不溶成分をろ過、アセトンで洗浄し、乾燥後148mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率21%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率7%)とを含む混合物であった。
【0037】
(実施例12)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよびパラホルムアルデヒド0.175gをナスフラスコに入れ、10MNaOH水溶液0.01mLと、硫酸ナトリウム0.5gと、溶媒としてのキシレン1mLとを添加し、マイクロ波(出力250W)で20分間加熱した(到達温度140℃)。直ちに冷却した後、アセトン20mLを加え未反応物を溶解し、6N塩酸1〜2mLで酸性にし、不溶成分をろ過、アセトン、水、アセトンで洗浄し、乾燥後127mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率24%)のみが検出され、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーンなどその他のカリックスアレーン類は認められなかった。
【0038】
(実施例13)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよび36%ホルマリン水溶液0.675mLをナスフラスコに入れ、KOH75mgを添加し、マイクロ波(出力250W)で5分間加熱した(到達温度120℃)。その後、硫酸ナトリウム0.5gと、溶媒としてのキシレン1mLとを添加し、マイクロ波(出力250W)で10分間加熱した(到達温度140℃)。直ちに冷却した後、アセトン20mLを加え未反応物を溶解し、6N塩酸1〜2mLで酸性にし、不溶成分をろ過、アセトン、水、アセトンで洗浄し、乾燥後190mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率33%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率2%)とを含む混合物であった。
【0039】
(実施例14)
上記実施例8に従い、十倍量のスケールで反応を行った。すなわち、p-tert-ブチルフェノール5gおよび36%ホルマリン水溶液6.75mLをナスフラスコに入れ、KOH750mgを添加し、マイクロ波(出力250W)で5分間加熱した(到達温度110℃)。その後、キシレン5mL、硫酸ナトリウム5gを添加し、マイクロ波(出力250W)で15分間加熱した(到達温度140℃)。直ちに冷却した後、アセトン20mLを加え未反応物を溶解し、6N塩酸10〜20mLで酸性にし、不溶成分をろ過、アセトン、水、アセトンで洗浄し、乾燥後2.7gの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率44%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率6%)とを含む混合物であった。
【0040】
(実施例15)
p-tert-ブチルフェノール0.5gおよび36%ホルマリン水溶液0.675mLをナスフラスコに入れ、水酸化ルビジウム110mgを添加し、マイクロ波(出力250W)で5分間加熱した(到達温度120℃)。その後、モレキュラーシーブス0.5gと、溶媒としてのキシレン1mLとを添加し、マイクロ波(出力250W)で10分間加熱した(到達温度150℃)。直ちに冷却した後、アセトン20mLを加え未反応物を溶解し、6N塩酸10〜20mLで酸性にし、不溶成分をろ過、アセトン、水、アセトンで洗浄し、乾燥後222mgの白色粉末を生成物として得た。得られた生成物は、NMRを用いて分析すると、p-tert-ブチルカリックス[6]アレーン(収率25%)と、p-tert-ブチルカリックス[8]アレーン(収率13%)と、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン(収率2%)とを含む混合物であった。
【0041】
上記実施例1〜15から、本発明においてはアルカリ使用量よりもむしろ使用する溶媒の沸点が大きく作用し、溶媒選択により環状4量体のカリックス[4]アレーンおよび環状8量体のカリックス[8]アレーンを作り分けることができることがわかる。
すなわち、沸点がキシレンなどの100〜150℃の溶媒の使用はカリックス[8]アレーンの生成に有効であり、ジフェニルエーテルなどの200℃以上の溶媒ではカリックス[4]アレーンの生成に有効となる。カリックス[6]アレーンの生成は水酸化ルビジウムを使用により生成すること、溶媒としてトリエチレングリコールを用いれば、カリックス[4]アレーンのみを選択的に製造できることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にかかるカリックスアレーン類の製造方法で得られるカリックスアレーン類は、特に限定されないが、たとえば、分子認識を利用した化学センサーへの応用をはじめとして、トナー用耐電剤、その他機能性材料のファインケミカル原料として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】

(式中、置換基Rは、アルキル基である。)
で示されるパラ置換フェノールとホルムアルデヒドとを溶媒、塩基の存在下でマイクロ波エネルギーにより加熱する工程を備えていることを特徴とするカリックスアレーン類の製造方法。
【請求項2】
溶媒が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、nは1から1000の整数、置換基Rは、水素あるいはアルキル基である。)
で示されるエチレングリコール類、ポリエチレングリコール類およびそれらのアルキルエーテルの少なくともいずれか1種を含む請求項1に記載のカリックスアレーン類の製造方法。
【請求項3】
溶媒がトリエチレングリコールおよびそのアルキルエーテルの少なくともいずれかを含む請求項1に記載のカリックスアレーン類の製造方法。

【公開番号】特開2006−232676(P2006−232676A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45272(P2005−45272)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【Fターム(参考)】