説明

カルサイトを含有する塩基過剰の清浄剤を含む油分散体を清澄化する方法

【課題】カルサイトを含有するスルホネート清浄剤の油中の曇りのある分散体を清澄化する。
【解決手段】a)この分散体に、二酸化炭素;二酸化硫黄、少なくとも400の分子量を有する有機スルホン酸;および少なくとも7つの炭素原子を含む有機カルボン酸、二塩基酸および無水物からなる群から選択される少なくとも1つの酸性化化合物を添加するステップ、b)酸性化化合物、水および少なくとも1つの揮発性有機溶媒の存在下、分散体を反応させるステップ、及びc)このように反応された分散体から揮発物を蒸発によって除去するステップを包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はカルサイトを含有する塩基過剰の清浄剤(overbased detergent)を使用する油処方物に関し、またこのような油処方物を清澄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
内燃機関の部品を清浄に保ちそして油中でのスラッジの生成を低減するために潤滑油に清浄性を付与する物質のうちには、塩基過剰の清浄剤、特にスルホン酸カルシウムがある。このスルホネートは潤滑油のための添加剤として、特に内燃機関のためのクランクケースのエンジン油として有用であることが知られている。
【0003】
塩基過剰のスルホン酸カルシウムは、炭化水素、スルホン酸、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムと、メタノールおよび水のような促進剤との混合物を炭酸塩化することにより一般に製造される。炭酸塩化において、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムはガス状の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成する。スルホン酸は過剰のCaOまたはCa(OH)において中和されてスルホネートを生成する。スルホン酸カルシウムを塩基過剰にするための先行技術で知られた方法では、300〜400mgKOH/gm以上のTBNという大きなアルカリ保有が生まれ、このことにより、処方者がより少ない量の添加剤を使用することが可能になる一方、燃焼過程で酸が多量に生成する条件下でエンジンを十分に保護するように同等の清浄性が維持される。
【0004】
塩基過剰のスルホン酸カルシウムの炭酸カルシウム成分は、スルホン酸カルシウムのミセル構造のコア(core)を成す。炭酸カルシウムは非晶質形状でありそして/あるいはその1つ以上の結晶性形状、特にカルサイトである。
【0005】
非晶質でないあるいはいわゆる結晶性の炭酸カルシウムの分散体は一般に、極めて曇りがありまた粘性が著しい物質である。これらは米国特許第3242079号、米国特許第3376222号、米国特許第4560489号、米国特許第4597880号、米国特許第4824584号および米国特許第5338467号明細書中に開示されているような様々な方法によって調製される。これらの分散体は、防錆コーティング、レオロジー改質剤、極圧(EP)金属加工処方物およびグリースとして、応用が限定されている。結晶性炭酸カルシウムを含むコロイド分散体は、グリースを処方するのに広く使用されているが、許容できるほどに透明な処方物を与えずまた極めて大きい粘度を示すので、処方されたエンジン油潤滑剤中では一般に使用することができない。
【0006】
潤滑油技術では、特に自動車のクランクケース油および他のエンジン油に関するとき、必要とする消費者の美的感覚および受け入れのために、透明なあるいは実質的に曇りがない製品が不可欠である。この要求のため、曇りを生む結晶性炭酸カルシウムを含む先行技術の清浄剤の使用は排除される。
【0007】
Papkeらの米国特許第4995993号明細書においては、大きなミセル状の結晶性炭酸カルシウム構造は曇りを生じ、また結晶性炭酸カルシウムを含有する塩基過剰のスルホネート製品は常に好ましくなく、従って、結晶化はなんとしても回避すべきであることが認められた。米国特許第4995993号明細書の第4欄の第39〜42行を参照されたい。
【0008】
コロイド状耐摩耗添加剤2.穏和な摩耗レジームでのコロイド状添加剤の摩損学的挙動(“Colloidal Anti−wear Additives 2. Tribological Behavior of Colloidal Additives in Mild Wear Regime,”),J.L.Mansot,et al.,Colloids and Surfaces A:Physico Chemical and Engineering Aspects,75(1993),pp.25−31においては、非晶質の炭酸カルシウムコアを含むいくつかの形の塩基過剰のスルホネートの場合、ドデカン中の2重量%の分散体中にありそして金属摩擦面に曝される時、炭酸カルシウムは金属摩擦面に接着する多結晶性フィルムを形成し、これは結果として耐摩耗的保護を与える。Mansotらは、穏和な摩耗レジームにおいて非晶質の顆粒間相(intergranular phase)を通して微結晶性凝集物への変形を受けるであろう非晶質ミセル構造体を、塩基過剰のスルホン酸カルシウムに提供することに注目した。このようにして、Mansotらは非晶質炭酸カルシウムミセル状分散体の塩基過剰スルホン酸カルシウム清浄剤を提供するという先行技術の指向をさらに確認している。
【0009】
WO 0004113号公報には、エンジン油処方物中で使用するのに好適である、可溶性の塩基過剰のカルサイトを含有する清浄剤を製造する方法が記載されている。しかしながら、多くの目的からみて、慣用的に製造されているカルサイトを含有する清浄剤をエンジン油処方物中に使用できるのが一層有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3242079号
【特許文献2】米国特許第3376222号
【特許文献3】米国特許第4560489号
【特許文献4】米国特許第4597880号
【特許文献5】米国特許第4824584号
【特許文献6】米国特許第5338467号
【特許文献7】米国特許第4995993号
【特許文献8】WO 0004113号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Colloidal Anti−wear Additives 2. Tribological Behavior of Colloidal Additives in Mild Wear Regime”,J.L.Mansot,et al.,Colloids and Surfaces A:Physico Chemical and Engineering Aspects,75(1993),pp.25−31
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
慣用的に製造されるカルサイト含有清浄剤物質を含有する油分散体が、エンジン油への応用において効用が認められる透明な分散体を生成するように様々な酸性化合物と反応されることができ、腐食防護、耐摩耗および極圧の利益、清浄性、および摩擦低減特性を包含する多機能的な便益が供与される方法が開発されている。
【0013】
非晶質の塩基過剰のスルホン酸カルシウムを透明なカルサイト含有製品へと転換する方法を利用するWO 0004113号公報の方法とは異なり、本発明の方法は慣用のカルサイト塩基過剰製品の分散体から出発し、溶媒またはその混合物の存在下、分散体を酸性化合物と後に反応して透明な分散体を生成する。
【0014】
1つの局面で本発明は、カルサイトを含有するスルホネート清浄剤の油中の曇りのある分散体を清澄化する方法であり、この方法は、
a)この分散体に、二酸化炭素;二酸化硫黄、少なくとも400の分子量を有する有機スルホン酸;および少なくとも7つの炭素原子を含む有機カルボン酸、二塩基酸および無水物からなる群から選択される少なくとも1つの酸性化化合物を添加すること、
b)酸性化化合物、水および少なくとも1つの揮発性有機溶媒の存在下、分散体を反応させること、及び
c)このように反応された分散体から揮発物を蒸発によって除去すること、
を含む。
【0015】
本発明の別な局面は上記の方法によって製造される潤滑油である。
【0016】
発明に関する詳述
本発明は広範な種類の潤滑油に適用することができる。この潤滑油は1つ以上の天然の油、1つ以上の合成油、あるいはこれらの混合物からなることができる。天然の油には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラード油)、石油系の液状油そして水添精製され、溶媒処理されあるいは酸処理されたパラフィンタイプ、ナフテンタイプおよび混合パラフィンタイプの鉱物潤滑油が含まれる。石炭または頁岩から得られる潤滑粘度の油もまた有用な基油である。
【0017】
合成潤滑油には、重合されたおよび相互重合されたオレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン));アルキルベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルサルファイドならびにこれらの誘導体、類縁体および同族体のような炭化水素油およびハロ置換炭化水素油が含まれる。
【0018】
末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって変性されているアルキレンオキサイドポリマーおよびインターポリマーならびにこれらの誘導体は、既知の合成潤滑油の別な部類をなす。これらは、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの重合によって製造されるポリオキシアルキレンポリマー、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテルおよびアリールエーテル(例えば平均分子量1000を有するメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量500〜1000を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000〜1500を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル);およびこれのモノ−およびポリカルボン酸エステル例えば酢酸エステル、C3〜C8の混合脂肪酸エステルおよびテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0019】
合成潤滑油の好適な別な部類には、ジカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と様々なアルコール、例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールとのエステルが含まれる。これらのエステルの特定の例には、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸と反応することにより生成される複合エステルが含まれる。
【0020】
合成油として有用なエステルには、C5〜C12モノカルボン酸と、ポリオールおよびポリオールエーテル例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリペンタエリスリトールからつくられるものが含まれる。
【0021】
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−およびポリアリールオキシシロキサン油およびシリケート油のような珪素をベースとする油は、合成潤滑油の別な有用な部類を含み、これにはテトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ−(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(p−t−ブチルフェニル)シリケート、ヘキサ−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサンおよびポリ(メチルフェニル)シロキサンが含まれる。他の合成潤滑油には、燐を含有する酸の液体エステル(例えばトリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)およびポリマー性テトラヒドロフランが含まれる。
【0022】
本発明の潤滑剤中では、未精製油、精製油および再精製油を使用することができる。未精製油は、さらに精製処理することなく天然のまたは合成的な源泉から直接得られる油である。例えばレトルト操作から直接得られる頁岩油、蒸留から直接得られる石油系の油またはエステル化プロセスから直接得られ及びさらに処理することなく使用されるエステル油が未精製油であろう。精製油は、それが1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製段階でさらに処理されることを除けば、未精製油と類似している。このような多くの精製技術例えば蒸留、溶媒抽出、酸または塩基での抽出、濾過およびパーコレーションは当業者に知られている。再精製油は、すでに使用されている精製油を得るために用いられる方法と類似した方法によって得られる。このような再精製油は再生油または再処理油として知られてもおり、そしてしばしば使用済みの添加物をそして油の分解生成物を除去するための技術によって追加的に処理される。
【0023】
本発明はエンジン油処方物およびそのための添加剤に特に関する。本記載で用いる場合、『エンジン油』という用語はエンジン油中で有用であろう潤滑油を意味し、また例としては自動車油またはディーゼルエンジン油がある。
【0024】
処方された油は典型的に100°Fで約45SUSから100°Fで約6000SUSまでの潤滑粘度範囲の粘度を有すべきである。潤滑油は1つ以上の塩基過剰のアルカリ土類金属清浄剤をやはり含有し、これの少なくとも一部分はここに記載するように変性されたカルサイト含有スルホネート清浄剤である。清浄剤成分は全体として、0.01重量%から25重量%まで、好ましくは0.1〜10重量%、一層好ましくは0.1〜5.0%の範囲に通常ある有効量を占める。本記載では特記しないかぎり、すべての重量百分率は全潤滑油組成物の重量を基準とする。
【0025】
本発明で利用されるカルサイト含有スルホネート清浄剤は、以下のa)〜c)を含む方法によって、カルサイトを含有するスルホネート清浄剤の油中の曇りのある分散体から製造されることができる。
a)二酸化炭素;二酸化硫黄、少なくとも400の分子量を有する有機スルホン酸;および少なくとも7つの炭素原子を含む有機カルボン酸、二塩基酸および無水物からなる群から選択される少なくとも1つの酸性化化合物を分散体に添加すること、
b)酸性化化合物、水および少なくとも1つの揮発性有機溶媒の存在で分散体を反応させること、及び
c)このように反応された分散体から揮発物を蒸発によって除去すること。
【0026】
出発物であるカルサイト含有スルホネート清浄剤の油中の曇りのある分散体は、約45%までの炭酸カルシウム濃度を有する粘度が比較的高いカルサイト含有スルホネート、またはカルサイト含有スルホネート分散体の一層希薄な油分散体であってよい。希釈は所望の最終スルホネート濃度でなされ、そしてカルサイト含有スルホネート成分によってもたらされる曇りは別として油が仕上げられたと考えられるように処方されてよく、又はグリースと潤滑油製品との間のある中間的な希釈度にあってよい。CK Witco Corpからともに入手できるWitco Calcinate C400WおよびGO26のような市販で入手できるカルサイト含有分散体が使用できる。このような製品は一般に100から500超までのTBN(ASTM D−2896に従う全塩基価(total base number))を有し、全強塩基価(酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの含有率を反映する)は約10〜約80、一層しばしば約30〜40である。
【0027】
カルサイト含有スルホネートが得られるスルホン酸は、石油の分溜から得られるもののようなアルキル置換芳香族炭化水素をスルホン化することによりそして/あるいは、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニルおよびハロゲン誘導体例えばクロロベンゼン、クロロトルエンおよびクロロナフタレンをアルキル化することにより得られるもののように、芳香族炭化水素をアルキル化することにより典型的に得られる。アルキル化は約3個から30個超までの炭素原子を有するアルキル化剤によって触媒の存在で実施されることができる。アルキル化剤の例には、ハロパラフィン、パラフィンの脱水素によって得られるオレフィン、エチレン、プロピレンなどからつくられるポリオレフィンポリマーが含まれる。アルキルアリールスルホネートは、アルキル置換された芳香族部分1つあたり約9〜約70個またはそれより多くの炭素原子を通常含む。脂肪族スルホネートは塩基過剰化されうるのでやはり有用であろう。
【0028】
本発明に従って処理する結果として、分散体の全強塩基価が、ある清浄剤処方物の場合で、例えば約10〜80から約0〜5まで低下する。酸性化化合物反応体が例えばスルホン酸またはカルボン酸であるなら、スルホン酸カルシウムまたはカルボン酸カルシウムを生成する反応のため、清浄剤のTBNはある程度低下する。しかしながら、二酸化炭素のような酸性ガスを酸性化化合物反応体として使用するなら、TBNは本質的に不変のままである一方、水酸化カルシウムは炭酸カルシウムに転化されるであろう。
【0029】
本発明に従って処理される処方された潤滑油またはそれにこのように処理された清浄剤が添加されているものの場合、このような処方された油は分散剤、酸化防止剤、防錆剤、粘度調整剤などのような慣用の他の成分もまた含有しうる。このような他の成分の、およびその量の選定はこの分野の当業者にとってなじみある事柄である。
【0030】
酸性化化合物は二酸化炭素;二酸化硫黄;少なくとも400の分子量を有する有機スルホン酸;および炭素原子を少なくとも7個含む有機カルボン酸、二塩基酸および無水物;ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
好適な有機スルホン酸は、R1が線状または分枝状のアルキル基、あるいはアリールアルキル、アルキルアリールアルキルまたはアルキルアリール基であり、アリール部分がフェニルまたは縮合2環式、例えばナフタレン、インダニル、インデニル、ビシクロペンタジエニルなどでありうる式R1−SO3Hによって特徴づけられることができる。アリール部分は1つ以上のアルキル基によって置換されることができ、好ましい例は分子量約520のモノアルキルベンゼンスルホン酸である。
【0032】
好適な他の酸性化化合物には、好ましくは少なくとも7〜8個の炭素原子を含む有機カルボン酸、二塩基酸および無水物が含まれる。好適な化合物には、直鎖および分枝鎖のアルカン酸およびアルケン酸例えばステアリン酸およびオレイン酸;アリール、アリールアルキル、アルキルアリールおよびアルキルアリールアルキルカルボン酸;サリチル酸、アルキルサリチル酸及び2つのエチレン性不飽和脂肪酸を一緒に反応することにより生成されうるような二量体酸を包含する、アルカン酸、アルケン酸、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールおよびアルキルアリールアルキルカルボン酸の二塩基酸類縁体;そしてこのような酸および二塩基酸のすべての無水物が含まれる。
【0033】
酸性化化合物が固体または液体であるなら、それは油に単純に添加されそして均一になるまで撹拌されることができる。二酸化炭素または二酸化硫黄は、多孔分散管のような好適な任意の機構を用いて、全強塩基価の所望の低下を所定の期間で達成する速度で油中に吹き込まれる。油の撹拌は酸性化化合物との固体の接触を増大しまた必要な時間を減少する。典型的に添加は約120°F以上、好ましくは135〜160°Fの温度で約2時間〜約30分の時間にわたって実施される。
【0034】
反応を実施するために、水(典型的に結晶性の塩基過剰のスルホネート分散体の約1〜約20重量%の量)および少なくとも1つの揮発性溶媒を使用するのが好ましい。揮発性溶媒は周囲圧力で約400°F(204℃)より低い沸点を有するものである。低級(C1〜C4)アルコールのような溶媒、および/または炭化水素溶媒が使用できる。アルコール溶媒は結晶性の塩基過剰のスルホネート分散体の約1〜約20%の量を利用するのが好適であろう。主に希釈剤として働く炭化水素溶媒は70%以上もの大量が存在してよい。揮発性溶媒(単数種または複数種)は、反応された混合物を周囲圧力で約400°F(204℃)以上に加熱することにより除去されることができる。減圧下ではより低い除去温度を用いることができる。溶媒除去工程は酸性化合物を撹拌しつつ添加した後に、温度が400°F(204℃)以上に到達するまで温度を徐々に上昇することにより、あるいは溶媒が除去されてしまうまで、添加後に圧力を徐々に低下することにより、あるいはこのような変化を組み合わせることにより、反応工程と組み合わされてもよい。
【0035】
酸性化化合物との反応の進行は、周囲条件で清澄度を周期的に検査することによりあるいは全強塩基価について油を周期的に分析することによりモニターすることができる。
【0036】
固体が生成する傾向の顕著な低減を実現するために、10〜80の全強塩基価を有するカルサイト清浄剤製品はこのようにして、典型的に約10以下に低下されるべきである。より希薄な分散体で対応して低下させることも同様に推奨される。しかしながら、これらの推奨から逸脱することは、使用する特定の分散体の他の特性に応じて多くの場合に可能であろう。いずれの場合でも、反応体の量、タイミングおよび温度は、モニターすることができまた清澄度について得られるそして所望する改善に応じて調整することができる。
【0037】
以下の非限定的な実施例によって本発明を例示する。
【実施例】
【0038】
実施例1〜5、比較例A&B
CK Witco Corp.によって発売のCalcinate G026は油中での曇りが極めて大きいカルサイト分散体である。
【0039】
実施例1〜3において、G026製品をある量の水、溶媒(単数種または複数種)および25重量%のスルホン酸(RSO3H)、25%の油および50%のVM&Pナフサを含むスルホン酸混合物と130〜145°Fで混合した。スルホン酸は約500の重量当量を有する。すべての成分を完全に混合した後、1時間にわたって温度を410°Fまで上昇して揮発物を除去した。量および結果を表1に示す。
【0040】
実施例4〜5および比較例Aにおいて、指示する速度で20分にわたって吹き込むことにより添加されるCO2と145〜155°Fで混合することにより、表1に示すように混合物を調製した。次いで、混合物の温度をゆっくり410°Fまで上げた。結果を表1に示す。
【0041】
比較例Bでは、指示する速度で20分にわたって吹き込むことにより添加される指示する量のCO2によって表1に示される混合物を330°Fで調製した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
結果は、透明な分散体製品を製造するためにスルホン酸処理および炭酸塩化処理の双方を用いることができるが、水および/または溶媒を用いない炭酸塩化は有効でなかったことを示す。
【0044】
実施例6
実施例1〜3に似た方法で、CK Witco Corp.によってCalcinate C400Wとして発売の別な市販の曇りのある結晶性カルサイト分散体を、分子量が〜500であり線状アルキル置換を有するスルホン酸と、水およびメタノールの存在下反応し、続いて、高められた温度で脱水した。最初の結晶性カルサイト反応体は油中での曇りがあり、またその外見および油不溶性のためエンジン油添加剤としてまったく不適当であった。本発明に従って処理した後の結果は、溶解力が劣悪であるブライトストック留分を包含する基油中に可溶である明色で透明なカルサイト分散体であった。
【0045】
上記の実施例および開示は例示的であると解されまた網羅的ではない。これらの実施例および記載は本分野の当業者に対して多くの変改および代替案を示唆するであろう。これらの変改および代替案のすべては、前記の特許請求の範囲に含まれると解される。当該技術に馴染みのあるものなら、ここに記載する特定の態様の別な同等物を認識することができ、この同等物は前記した特許請求の範囲に包含されるとやはり解される。さらにそれぞれの従属請求項に記載された特定の特徴は、独立請求項および他の任意の従属請求項の特徴と他の任意の方法で組み合わされることができ、またこのような組み合わせはすべて本発明の範囲に属すると解釈されるのは明白である。
【0046】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、『含む』(“comprises”の訳語)という用語は『含む』(“includes”の訳語)と同じであると定義される。つまりそれに添加されてよい追加的な主題物質は限定されない。また、この用語から導かれる様々な用語(例えば『含んでいる』(“comprising”))は対応して定義される。
【0047】
本出願の随所で言及される米国特許文献を含めて公開されているすべての文献は参照によってそれらの全体が本記載に明白に加入されている。本出願の随所で言及される任意の同時係属中の特許出願もまた、参照によってそれらの全体が本記載に明白に加入されている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルサイトを含有するスルホネート清浄剤の油中の曇りのある分散体を清澄化する方法であって、
a)分散体に、二酸化炭素;二酸化硫黄、少なくとも350の分子量を有する有機スルホン酸;および少なくとも7つの炭素原子を含む有機カルボン酸、二塩基酸および無水物からなる群から選択される少なくとも1つの酸性化化合物を添加すること、
b)酸性化化合物、水および少なくとも1つの揮発性有機溶媒の存在下で分散体を反応させること、及び
c)このように反応された分散体から揮発物を蒸発によって除去すること、
を含む上記分散体を清澄化する方法。
【請求項2】
揮発性溶媒が低級(C1〜C4)アルコールおよび約400°F(204℃)以下の沸点を有する炭化水素溶媒からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応段階b)が70°F(21℃)以上の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
周囲圧力で、少なくとも400°F(204℃)に加熱することにより揮発物が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カルサイトを含有するスルホネートが50〜約400のTBNを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸性化化合物が二酸化炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸性化化合物が少なくとも350の分子量を有する有機スルホン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
分散体が約0.1〜5.0%のスルホネート清浄剤を含むエンジン油処方物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって調製されるカルサイトを含有するスルホネート清浄剤の清澄化された分散体を含むエンジン油。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によって調製されるカルサイトを含有するスルホネート清浄剤の清澄化された分散体を含む油分散体。
【請求項11】
自動車エンジンのクランクケース油として処方され、及び請求項10に記載の油分散体を含む潤滑油。
【請求項12】
ディーゼルエンジン油として処方され、及び請求項10に記載の油分散体を含む潤滑油。


【公開番号】特開2009−293038(P2009−293038A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187928(P2009−187928)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【分割の表示】特願2002−502050(P2002−502050)の分割
【原出願日】平成13年5月15日(2001.5.15)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】