説明

カルシトリオールとプロピオン酸クロベタゾールとの組合せ、アルコール相、少なくとも1種の揮発性シリコーン、および1種の不揮発性油性相を含むスプレー組成物

本発明は、生理学的に許容できる媒体中に、薬剤有効成分としてのプロピオン酸クロベタゾールとカルシトリオールとの組合せ、アルコール相、少なくとも1種の揮発性シリコーン、および1種の不揮発性油性相を含む無水スプレー組成物、その調製方法、化粧品および皮膚科学におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的に許容できる媒体中に、薬剤有効成分としてのプロピオン酸クロベダゾールとカルシトリオールとの組合せ、アルコール相、少なくとも1種の揮発性シリコーン、および不揮発性油性相を含む、スプレーの形態の無水組成物、その調製方法、ならびに化粧品および皮膚科学におけるその使用に関する。この組成物は、皮膚層を通しての有効成分の良好な浸透を提供する。
【背景技術】
【0002】
皮膚科学的疾患の治療に有効成分の組合せを用いることは一般的ではない。2種の有効成分を組み合わせるときに当業者が直面する主な困難は、これらの有効成分が同一配合物中に存在するときに化学的に不安定になったり相互に作用したりすることがあるという問題である。
【0003】
したがって、カルシトリオールとコルチコイドとを組み合わせる治療法はほとんど存在しない。実際に、ビタミンDおよびその誘導体は、水性媒体中において不安定で酸性pH値に敏感であるのに対して、コルチコイド、特にプロピオン酸クロベダゾールは、塩基性媒体に敏感である。したがって、同一組成物中においてビタミンDタイプの有効成分とコルチコステロイドとを一緒にして安定化させることは、当業者にとってわかりきったことではなかった。
【0004】
カルシトリオールは、生物体中のカルシウム濃度を調節するのに使用されるビタミンD類似体である。皮膚病の治療におけるその使用は、特に乾癬の治療のための米国特許第4610978号に記載されている。前記特許は、コルチコステロイドなどの一定量の抗炎症薬を含むこともできるカルシトリオールを含む組成物を提案しているが、カルシトリオールとコルチコレステロイドとの組合せの具体的な実施形態は、有効性に関して記載されてなく試験もされていない。
【0005】
フランス特許出願第2848454号においては、出願人は、カルシトリオールをコルチコステロイドと組み合わせることで、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎および脂漏性皮膚炎など、特定の皮膚科学的疾患の治療において相乗効果を得ることができることを記載したが、両方の有効成分を組み合わせた安定な組成物を提供しなかった。
【0006】
さらに、皮膚科学の分野および薬剤組成物の配合においては、当業者は、物理的および化学的に安定でなければならないだけでなく、さらに、有効成分を放出し、その有効性を改善するために皮膚層を通した有効成分の浸透を促進することも可能にしなければならない組成物を探すようになってきている。
【0007】
そのうえ、上記薬剤組成物は、良好な化粧特性を有する必要があり、非刺激性であることが好ましい。
【0008】
現在、有効成分を含み、特に高い含有率の浸透促進性(propenetrating)グリコールの存在によって皮膚への浸透を促進することができる、非常に多くの局所用組成物がある。これらの組成物は、一般に「リポクリーム(lipocreams)」と呼ばれる高含有率の脂肪相を有するエマルションとして、「軟膏」と呼ばれる無水組成物として、頭皮への適用用で「ヘアローション」とも呼ばれる高含有率の揮発性溶媒(例えば、エタノールやイソプロパノールなど)を含む液体組成物として、または「水中油型クリーム(O/W cream)」とも呼ばれる粘稠な水中油型エマルションとして配合される。
【0009】
高い割合のグリコールを含む配合物を安定化させるには、エマルション中に、ステアリン酸グリセリルもしくはステアリン酸PEG-100タイプの乳化剤および安定剤、あるいは白ろうもしくはセトステアリルアルコールタイプの安定剤またはコンシステンシー付与剤(consistency factors)を使用することが必要であり、これにより粘性のクリーム、すなわち10パスカル秒(10,000センチポアズ、Brookfield LVDV II装置+ No.4カップ、30rpmの速度で30秒間、25℃±3℃の温度で測定)を超える粘度を有するクリームが形成される。したがって、この粘度により、上記製品は適用しにくくなっている。したがって、これらの組成物は、一方では、その粘度により化粧品許容可能性(cosmetic acceptability)が乏しく、他方では、高い割合のグリコールの存在に起因する過敏症のリスクを有している。さらに、これらの高粘度により、上記配合物は、上記病態に冒された種々の身体部分に塗りにくくなっている。したがって、クリーム、ゲルまたは軟膏の形態の、既存の治療法の大部分は、届きにくい領域にそれらを適用するために第三者の助けを必要とする。第三者は、したがって、有効成分を含有する製品および乾癬のプラークの両方と接触しなければならず、使用者の快適さおよび第三者の安全性の観点から理想的ではない状況をもたらす。前記の理由のために処方された治療法を遵守しないことが、治療の不奏功の主原因の一つであることにも当業者は気づいていおり、論文「Patients with psoriasis and their compliance with medication」(Richards他、J. Am. Acad. Dermatol.、99年10月、581〜583頁)は、乾癬のような慢性疾患を有する患者の40%近くがその治療法を守らないことを指摘している。患者が自らの治療法を遵守することが、適用される組成物の媒体の特性に直接的に関係していることが実証されている。論文「Patients with psoriasis prefer solution and foam vehicles: a quantitative assessment of vehicle preference」(Housman他、CUTIS、2002年12月、vol. 70、327〜332頁)は、乾癬患者は、軟膏、クリームまたはゲルよりも溶液またはフォーム(foam)を好むことを指摘している。
【0010】
当業者は、さらに、使用に快適な組成物をもたらすシリコーン化合物を含有する配合物を熟知している。このため、米国特許第6538039号においては、皮膚の表面上にフィルムを堆積させるためのシリコーン化合物を含む、有効成分の経皮投与のための新規配合が開発された。また、前記特許出願においては、経皮の通過が、吸収促進剤を必須的に存在させることにより促進されており、グリコールがその例として挙げられている。
【0011】
欧州特許出願EP0966972号においては、記載された組成物は、スプレーとして配合することができ、それらは、有効化合物、シリコーンゴム、および製薬上許容できる賦形剤を含む。EP0966972号に記載の発明が解決しようとする問題は、皮膚の表面上に実質的なフィルムを堆積することであり、前記問題はシリコーンゴムの存在により解決される。
【0012】
本発明が本明細書で解決しようとする問題は、カルシトリオールと、プロピオン酸クロベタゾール(またはクロベタゾール17-プロピオネート、以下ではこれらの2つの名称を無差別に使用する)とを同一の配合物中で組み合わせることを可能にする、物理的かつ化学的に安定な組成物を考案することである。上記組成物は、グリコールを高い含有率で存在させることを回避しつつ、薬剤有効成分の浸透性を改良しなければならない。本発明による上記組成物は、上記病態に冒されることのある全ての身体領域に適用するために、使用しやすいものでなければならず、許容できる化粧品特性も有していなければならない。
【0013】
本発明に最も近い先行技術は、国際特許出願第WO 00/64450号であり、ビタミンD類似体とコルチコステロイドとを含有する薬剤組成物の使用に言及している。前記特許出願のすべての組成物例は、もっぱら、カルシポトリオールとジプロピオン酸ベタメタゾンとを組み合わせている。この2種の有効成分の安定化を可能にする、上記特許出願に記載の好ましい組成物は、軟膏の形態の組成物である。しかし、これらの組成物は、適用の快適さおよび容易さについては上述した不利を示す。この先行技術を読んでも、当業者は、噴霧可能な、すなわち容易に適用可能な組成物、例えば、組成物中で可溶化されかつ安定化された有効成分であるプロピオン酸クロベタゾールとカルシトリオールとを有する本特許出願に記載の組成物などを少しも考えることはできない。
【特許文献1】米国特許第4610978号
【特許文献2】フランス特許出願第2848454号
【非特許文献1】Richards他、J. Am. Acad. Dermatol.、「Patients with psoriasis and their compliance with medication」、99年10月、581〜583頁
【非特許文献2】Housman他、CUTIS、2002年12月、vol. 70、327〜332頁
【特許文献3】米国特許第6538039号
【特許文献4】欧州特許出願EP0966972号
【特許文献5】国際特許出願WO 00/64450号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が本明細書で解決しようとする問題は、したがって、2種の有効成分であるカルシトリオールとプロピオン酸クロベタゾールとを同一の組成物中で組み合わせることを可能にし、前記成分が乾癬の治療に相乗的に作用する、物理的かつ化学的に安定な組成物を考案することであり、本発明によるこの組成物が、上記病態に冒されることのある全ての身体領域への適用のための、使用しやすくかつ許容できる化粧特性も有することである。
【0015】
「物理的安定性」は、本発明において、4℃および40℃の温度で2、4、8および12週間の貯蔵後に、巨視的な外観(相分離、色または外観の変化等)または微視的な外観(有効成分の再結晶化)がいずれも変化しない組成物に適用されると理解される。
【0016】
「化学安定性」は、本発明において、室温および40℃で3カ月後に有効成分含有率が安定したままである組成物に適用されると理解される。安定な有効成分含有率は、本発明において、含有率が最初の含有率と比較して極めてわずかしか変化しないこと、すなわち、時間Tにおける有効成分含有率の変化が、T0における最初の含有率の90%未満、好ましくはT0における最初の含有率の95%未満になってはならないことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
出願人は驚くべきことに、製薬上許容できる媒体中に、
a)治療有効量の可溶化された形態(solubilized form)のコルチコイド、特にプロピオン酸クロベタゾール、
b)治療有効量の可溶化された形態のビタミンD誘導体、特にカルシトリオール、
c)アルコール、
d)少なくとも1種の揮発性シリコーン、および
e)1種または複数種の油からなる不揮発性油性相を含む、噴霧可能な、すなわちスプレーの形態の包装に適した組成物が、提起された問題を解決することを見出した。
【0018】
有効成分の良好な浸透を可能にする一方、本発明の組成物は、本発明の実施例に記載のとおり、極めて良好な患者の許容性および耐性も有する。本発明の組成物は、したがって、特に皮膚科学的疾患の治療に適しており、より詳しくは乾癬の治療に適していることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、したがって、常温で液体であり、好ましくは噴霧可能であり、製薬上許容できる媒体中に、
a)治療有効量の可溶化された形態のプロピオン酸クロベタゾール、
b)治療有効量の可溶化された形態のカルシトリオール、
c)アルコール相、
d)少なくとも1種の揮発性シリコーン、および
e)1種または複数種の油からなる不揮発性油性相を含む組成物に関する。
【0020】
「可溶化された形態」は、裸眼でもまたは交差偏光光学顕微鏡でさえも有効成分の結晶体が見られない、液体中の分子状態の分散を意味する。
【0021】
「噴霧可能な組成物」は、室温においてそれ自体の重量で急速に流れる流動的な液体組成物に適用されると理解される。「室温」は、約25℃の温度に適用されると理解される。
【0022】
このスプレーは、本明細書で後述するとおり、当業者にとって公知の、通常の配合手段により得ることができる。
【0023】
好ましくは、組成物は無水物である。本発明の目的のためには、「無水組成物」は、実質的に水を含まない組成物、すなわち上記組成物の総重量に対して1重量%以下、特に0.5%以下、好ましくはゼロの水分を有する組成物に適用されると理解される。有利には、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、0.00001重量%〜0.1重量%の間、好ましくは0.0001重量%〜0.001重量%の間、および特に好ましくは0.0002重量%〜0.0005重量%の間の、ビタミンDから誘導される有効成分を含む。本発明の組成物は、特に、組成物の総重量に対して0.0003重量%のカルシトリオールを含む。
【0024】
有利には、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、0.0001重量%〜0.1重量%の間、好ましくは0.001重量%〜0.05重量%の間のコルチコイドを含む。本発明の好ましい組成物は、特に、組成物の総重量に対して0.025重量%または0.05重量%のプロピオン酸クロベタゾールを含む。
【0025】
本発明において「アルコール相」は、少なくとも1種のアルコール化合物を意味するものとして理解される。本発明において使用可能なアルコールの非制限的な例として、直鎖または分岐の脂肪族アルコール、例えば、無水エタノール、イソプロパノール、およびブタノール等を挙げることができる。本発明の組成物は、好ましくはエタノールを含む。有利には、本組成物は、組成物の総重量に対して5重量%〜60重量%の間、好ましくは10重量%〜40重量%の間のアルコールを含む。
【0026】
本発明の好ましい組成物は、10重量%〜40重量%の間のエタノールを含む。
【0027】
本発明において「揮発性シリコーン」は、環状であっても直鎖状であってもよく、周囲条件下で測定可能な圧力を有し得るポリオルガノシロキサン化合物を意味するものとして理解される。本発明の環状揮発性シリコーンは、一般的にシクロメチコンとして知られているポリジメチルシクロシロキサン、すなわち、次式:
【0028】
【化1】

【0029】
の化合物であり、式中、nは3〜6の間の平均値を有し、好ましくは4または5である。本発明の直鎖状揮発性シリコーンは、直鎖状ポリシロキサン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン、または低分子量ジメチコン等)である。直鎖状揮発性シリコーンは、一般的に、摂氏25°で約5センチストークス未満の粘度を有するが、環状揮発性シリコーンは、摂氏25°で約10センチストークス未満の粘度を有する。
【0030】
本発明の好ましい揮発性シリコーンは、直鎖状シロキサン、とりわけ好ましくはヘキサメチルジシロキサンである。DOW CORNINGにより市販されている製品 DC Fluid 0.65cStを、一例として挙げることができる。
【0031】
有利には、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、10重量%〜60重量%の間、好ましくは20重量%〜50重量%の間、特に好ましくは15重量%〜45重量%の間の揮発性シリコーンを含む。
【0032】
本発明において「不揮発性油性相」は、薬剤組成物または化粧品組成物に適した不揮発性油性相を意味するものとして理解される。不揮発性油は、通常、25℃で約10センチポアズを超える粘度を有し、25℃で最高1,000,000センチポアズまでの範囲の粘度に達し得る。不揮発性油は、多種多様の合成または天然のシリコーン油または有機油の1種でよく、その非網羅的なリストを目安の目的で示す。
【0033】
(a)エステル
本発明において使用可能な油の例は、式RCO-OR'のエステルを含み、式中、RおよびR'は、同一または異なって、炭素原子1個〜25個、好ましくは炭素原子4個〜20個を有する、直鎖または分岐のアルキル、アルケニル、アルコキシカルボニルアルキル、またはアルコキシカルボニルオキシアルキル鎖である。このようなエステルの例として、イソトリデシルイソノナノエート、PEG-4ジヘプタノエート、イソステアリルネオペンタノエート、トリデシルネオペンタノエート、セチルオクタノエート、セチルパルミテート、セチルリシノレエート、セチルステアレート、セチルミリステート、ココナツジカプリレート/カプレート、デシルイソステアレート、イソデシルオレエート、イソデシルネオペンタノエート、イソヘキシルネオペンタノエート、オクチルパルミテート、ジオクチルマレート、トリデシルオクタノエート、ミリスチルミリステートおよびオクチルドデカノールが挙げられる。
【0034】
(b)脂肪酸グリセリルエステル
油は、天然脂肪酸の脂肪酸エステル、または動物もしくは植物由来のトリグリセリドも含む。これらの油の例としては、ひまし油、ラノリン油、トリイソセチルシトレート、炭素原子10個〜18個を有するトリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、やし油、とうもろこし油、綿実油、あまに油、ミンク油、オリーブ油、パーム油、マーワバター(mahua butter)、ナタネ油、大豆油、ひまわり油、ラッカセイ油および同等の化合物が含まれる。
【0035】
(c)脂肪酸グリセリド
その他の適切な油は、合成または半合成グリセリルエステル(例えば、脂肪酸モノ、ジおよびトリグリセリド等)であり、これらは、変性された天然油または脂肪であり、例えば、グリセリルステアレート、グリセリルジオレエート、グリセリルジステアレート、グリセリルトリオクタノエート、グリセリルリノレエート、グリセリルミリステート、グリセリルイソステアレート、PEGひまし油、PEGグリセリルオレエート、PEGグリセリルステアレートおよび同等の化合物である。
【0036】
(d)不揮発性炭化水素
本発明の組成物に非常に適したその他の不揮発性の溶媒は、不揮発性炭化水素(例えば、パラフィン、イソパラフィン、鉱油および同等の化合物など)である。
【0037】
(e)ゲルベエステル(Guerbet esters)
ゲルベエステル(Guerbet esters)は、一般式:
【0038】
【化2】

【0039】
のゲルベアルコール(Guerbet alcohol)と、一般式:
R3COOHまたはHOOC-R3-COOH
のカルボン酸との反応から得られるエステルであり、
式中、R1およびR2は、同一または異なって、炭素原子4個〜20個を有するアルキルであり、R3は、置換または非置換の脂肪族基(例えば、炭素原子1個〜50個を有する、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐の、アルキルまたはアルキレン鎖、または、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシルもしくはアルキルカルボニルヒドロキシルにより置換されていてもよいフェニル等)である。
【0040】
上述のゲルベアルコール、特に、Eutanol Gの名称で市販されているオクチルドデカノールタイプのゲルベアルコールも、本発明の組成物に適している。
【0041】
好ましくは、本発明の組成物の油性相を構成する化合物は、Miglyol 812の名称で市販されているカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、Cetiol SNの名称で市販されているセテアリルイソノナノエート、および植物油(甘扁桃油、ごま油、麦芽油、オリーブ油、ホホバ油等)であり、これらは単独でまたは混合物で使用される。
【0042】
本発明の組成物は、好ましくはMiglyol 812を含む。実際に、トリグリセリドは、皮膚の成分の一つであり、セラミド、コレステロール、およびリン脂質と共に皮膚の天然脂質の一部を構成する。これらは、表皮の深層に取り込まれ、皮膚の水和の損失を補う。皮膚の保護層は、特有の耐久性のある形態で再生される。
【0043】
中鎖トリグリセリドは、使用したMiglyol 812を含め、やし油またはパーム核油から誘導される、カプリル(C8)およびカプリン(C10)脂肪酸化合物である。
【0044】
これの主要な性質は以下のとおりである。
− 皮膚上への広がりを増す、低粘度の皮膚軟化剤(emollient)であり、
− 皮膚に迅速に浸透し有効成分の浸透を促進する、脂肪親和性の有効成分のための溶媒であり、かつ、
− 適用の際にべとべとした感じを与えず、べとべとした残留物を残さないことである。
【0045】
乾癬などの病態の場合には、皮膚軟化剤を使用することが特に推奨される。皮膚軟化剤は、乾癬プラークを水和し鎮静化するのに役立つ。
【0046】
例えば、高濃度のアルコールまたは揮発性溶媒を適用した場合、焼けるような感じが、著しく炎症を起こした皮膚の患者を悩ませることがある。
【0047】
これらの炎症の感じを埋め合わせるために、皮膚軟化剤として脂質を使用することにより、皮膚層の正常な機能を回復させ、これを外的な影響から保護することが可能になる。
【0048】
有利には、本発明の組成物は、総重量に対して1重量%〜80重量%の間、好ましくは20重量%〜60重量%の間、特に好ましくは30重量%〜45重量%の間の油性相を含む。
【0049】
好ましい一実施形態においては、本発明の組成物は、抗酸化剤化合物、例えば、DL-α-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソールもしくはブチルヒドロキシトルエン、プロピルガレート、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノールまたは特定の金属キレート化剤等も含む。本発明の組成物中に好ましく使用される抗酸化剤は、DL-α-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、およびブチルヒドロキシトルエンである。
【0050】
本発明の組成物の好ましい一実施形態においては、組成物は、シリコーンゴムも含む。出願人は、驚くべきことに、シリコーンゴムを以下に定義される濃度で含む組成物が、有効成分が種々の皮膚層を通してより急速に浸透することを可能にすることを実際に発見した。
【0051】
「シリコーンゴム」は、当業者に公知のシリコーンゴム、特に参照により本明細書に組み込まれている欧州特許出願第0966972号に記載のシリコーンゴムを意味するものと理解される。本発明の組成物のこの好ましい実施形態においては、シリコーンゴムは、0.001重量%〜3重量%の間、好ましくは0.01重量%〜1重量%の間の濃度で導入される。Dow Corningは、99%のヘキサメチルジシロキサンと1%のシリコーンゴムとからなる、DC Silmogen Carrierの名称で販売される製品を提供しており、有利には、この製品を本発明の組成物の一つに使用することができる。
【0052】
本発明の組成物は、界面活性剤を含むこともできる。本発明において使用可能な界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤タイプ、例えば、カルボキシレート、および特に石ケン、アルキルアリールスルホネート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルサルフェート、ならびにアルコールサルフェート等である。とりわけ、これらの界面活性剤の陰イオンは、金属ナトリウムまたは金属カリウムなどの陽イオンと結びついている。本発明のその他の好ましい界面活性剤は、ポリソルベートタイプおよびポロキサマータイプのものである。
【0053】
好ましくは、本発明において使用される界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80(UniqemaからのTWEEN 80)、およびポロキサマー124(UniqemaからのSYNPERONIC PEL44)である。
【0054】
本発明の製薬上許容できる媒体は、本発明に本質的に関連する有利な性質が、想定される添加により影響されないかまたは実質的に影響されないような方法で選択しなければならない。この媒体は、溶剤などの単一の賦形剤、またはエマルションを配合するのに使用されるような賦形剤の混合物から構成され得る。それ単独または混合物で使用できる薬剤品賦形剤として挙げられる非制限的な例は、水、溶剤、希釈剤、または、エマルション、ミルク、ゲル、軟膏もしくは発泡組成物を配合するのに使用することができる任意の賦形剤である。これらの賦形剤は、薬剤組成物の配合に一般的に使用される化合物である。好ましくは、本発明の賦形剤は、水、アルコール、ポリオール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、脂肪酸およびアルコール、ならびに脂肪酸エステルである。特に好ましくは、使用される賦形剤は、エタノールなどのアルコールである。
【0055】
本発明の特定の一実施形態においては、本発明の組成物は、製薬上許容できる媒体中に、
a)0.0001%〜0.1%の間のプロピオン酸クロベタゾール、
b)0.00001%〜0.1%の間のカルシトリオール、
c)5%〜60%の間のエタノール、
d)10%〜60%の間の揮発性シリコーン、および
e)カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セテアリルイソノナノエート、および植物油から選択される1種または複数種の油からなる、1%〜80%の間の油性相を含む。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態においては、本発明の組成物は、製薬上許容できる媒体中に、
a)0.001%〜0.05%の間のプロピオン酸クロベタゾール、
b)0.0002%〜0.0005%の間のカルシトリオール、
c)10%〜40%の間のエタノール、
d)15%〜45%の間の揮発性シリコーン、および
e)カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セテアリルイソノナノエート、および植物油から選択される1種または複数種の油からなる、30%〜45%の間の油性相を含む。
【0057】
本発明の好ましい組成物は、したがって、常温において液体で、好ましくは噴霧可能であり、製薬上許容できる媒体中に、
a)治療有効量の、可溶化された形態のプロピオン酸クロベタゾール、
b)治療有効量の、可溶化された形態のカルシトリオール、
c)アルコール相、
d)少なくとも1種の揮発性シリコーン、
e)1種または複数種の油からなる不揮発性油性相、
f)抗酸化剤、および
g)シリコーンゴムを含む組成物である。
【0058】
本発明の薬剤組成物は、例えば、
湿潤剤;
風味向上剤;
p-ヒドロキシ安息香酸エステルなどの保存料;
安定剤;
湿度調節剤;
pH調節剤;
浸透圧調整剤;
乳化剤;
UV-AおよびUV-Bフィルタ;
浸透促進剤;および
合成高分子などの不活性な添加剤またはこれらの添加剤の組合せを含むこともできる。
【0059】
当然、当業者は、本発明に本質的に関連する有利な性質が、想定される添加により影響されないかまたは実質的に影響されないように注意して、これらの組成物に添加する任意の化合物を選択するであろう。
【0060】
本発明の組成物は、とりわけ皮膚および粘膜の処置を意図しており、噴霧可能であり、スプレーの形態の包装に適している。
【0061】
スプレーは、当業者に公知の通常の製剤方法により得ることができる。例えば、上記組成物は、組成物を容器、ボトルまたは同等の器からポンプで汲み上げる機械的噴霧器により噴霧することができる。同様に、本組成物は、当業者に周知の方法で、ガスにより噴射することができる。組成物を害さないかぎり、空気や炭化水素などの通常の噴射ガスは有効である。組成物は、所望の適用部位に直接向けられるノズルを通る。このノズルは、当業者に公知の技術により、上記組成物を蒸気または液滴の噴射の形態で適用するように選択することができる。選択された薬剤有効成分に応じて、この噴霧機構は、常に同量の有効成分を分与することができなければならない。噴霧器により分配される組成物の量を制御する機構も、当業者に公知である。例えば、噴射ガスの量は、所望する厳密な量の製品を噴射するように算出することができる。
【0062】
本発明の組成物は、その適用領域および用量の特性が制御されていて再現可能な投薬噴霧ボトルを用いて分与することが好ましい。例えば、噴霧器は、25μl用量弁を備えたボトルからなる。
【0063】
本発明は、さらに、
− 分化および増殖に関連する角化障害に伴う皮膚科学的疾患、特に尋常性座瘡、くろにきび、多形性座瘡、酒さ性座瘡、結節嚢胞性座瘡、集簇性座瘡、老人性座瘡、および二次的座瘡(例えば、日光性座瘡、薬物性座瘡または職業性座瘡など);
− 魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエー病、掌蹠角皮症、白斑症および白斑症様の状態、ならびに皮膚または粘膜(口腔)の苔癬;
− 炎症性免疫アレルギー性要素を有し、細胞増殖障害を伴うかまたは伴わない皮膚科学的疾患、特に皮膚、粘膜または爪の乾癬、乾癬性関節症、および皮膚アトピー(例えば湿疹など)、呼吸性アトピーまたは歯肉肥大;
− 良性または悪性の、ウイルス由来かまたはウイルス由来でない皮膚または表皮増殖、特に、ゆうぜい、扁平ゆうぜい、ゆうぜい状表皮発育異常症、口部乳頭腫症または顕症期の乳頭腫症、およびTリンパ腫;
− 紫外線により誘発され得る増殖、特に基底細胞上皮腫および有棘細胞上皮腫;
− 前癌皮膚病変、特に角化棘細胞腫;
− 免疫性皮膚病、特に紅斑性狼瘡;
− 水疱性免疫疾患;
− 膠原病、特に強皮症;
− 免疫学的要素を有する皮膚科学的または全身性疾患;
− 紫外線への暴露に起因する皮膚障害、光誘導性もしくは経時的な皮膚老化、または光線性色素沈着および光線性角化症、あるいは経時的または光線性老化に伴う何らかの病態、特に乾皮症;
− 脂腺機能障害、特に脂漏過剰性座瘡、単純性脂漏症または脂漏性皮膚炎;
− 治癒障害または萎縮性皮膚線条;
− 色素沈着障害、例えば色素沈着過剰、黒皮症、色素沈着低下または白斑など;
− 脂質代謝の疾患、例えば肥満、高脂血症、インシュリン非依存性糖尿病またはX症候群など;
− 炎症性疾患、例えば関節炎など;
− 癌または前癌状態;
− 様々な原因の脱毛症、特に化学療法または放射線による脱毛症;
− 免疫系障害、例えば喘息、I型糖尿病、多発性硬化症または免疫系のその他の選択的機能不全など;あるいは
− 心血管系疾患、例えば動脈硬化症または高血圧症など
の処置を意図した薬剤の調製のための本発明の組成物の使用に関する。
【0064】
特に、本発明は、乾癬の処置を意図した薬剤組成物の調製のための、上述により定義した組成物の使用に関する。
【0065】
本組成物の使用の好ましい一方法においては、組成物は、エタノールの存在下で0.025%のクロベタゾール17-プロピオネートと0.0003%のカルシトリオールとを含み、乾癬の処置を意図した薬剤の調製のために使用される。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態においては、揮発性溶媒/不揮発性相の比は、有効成分の浸透に有利な急速な溶媒の蒸発を維持するが、不揮発性相の十分な割合を提供して本組成物に実体を与え、したがって生成物が皮膚上により長く留まり、皮膚の軟化を助けるように最適化される。
【0067】
揮発性溶媒/不揮発性相の比は、好ましくは1〜2.5の間である。
【0068】
以下の実施例は、本発明の組成物の配合例の非網羅的な提示であり、化学的および物理的安定性の結果を含んでいる。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
様々な油性相および/またはアルコール相におけるカルシトリオールの安定性試験
エタノール100、エタノール100(75%)/シクロメチコン5(25%)混合物、またはMiglyol 812およびCetiol SNなどの油を含む様々な賦形剤中において、カルシトリオールの安定性データを得た。
【0070】
a)エタノール中のカルシトリオールの安定性
0.02%のBHTの存在下、100%とする量の無水エタノール中のカルシトリオールの30ppm溶液。
【0071】
対照物質に対するHPLC検定の技術。
【0072】
開始時間(T0)においては、組成物は、100%のカルシトリオールを含むとみなされる。
【0073】
測定されたカルシトリオール濃度(T0に対する%):
【0074】
【表1】

【0075】
これらの結果は、カルシトリオールがエタノール中で良好な安定性を有することを示している。
【0076】
b)エタノール/シクロペンタシロキサン中におけるカルシトリオールの安定性
0.02%のBHTの存在下、75%を占める量の無水エタノール+25%を占める量のシクロペンタシロキサン中に溶解したカルシトリオールの30ppm溶液。
【0077】
対照物質に対するHPLC検定の技術。
【0078】
開始時間(T0)においては、組成物は100%のカルシトリオールを含むとみなされる。
【0079】
測定されたカルシトリオール濃度(T0に対する%):
【0080】
【表2】

【0081】
これらの結果は、カルシトリオールがエタノール/シクロペンタシロキサン混合液中で良好な安定性を有することを示している。
【0082】
c)Miglyol 812(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)中におけるカルシトリオールの安定性
0.4%のBHTの存在下、100%とする量の Miglyol 812中のカルシトリオールの30ppm溶液。
【0083】
対照物質に対するHPLC検定の技術。
【0084】
開始時間(T0)においては、組成物は100%のカルシトリオールを含むとみなされる。
【0085】
測定されたカルシトリオール濃度(T0に対する%):
【0086】
【表3】

【0087】
これらの結果は、カルシトリオールがMiglyol 812中において良好な安定性を有することを示している。
【0088】
d)Cetiol SN(セテアリルイソノナノエート)中におけるカルシトリオールの安定性
0.4%のBHTの存在下、Cetiol SN(セテアリルイソノナノエート)に100%溶解したカルシトリオールの30ppm溶液。
【0089】
対照物質に対するHPLC検定の技術。
【0090】
開始時間(T0)においては、組成物は100%のカルシトリオールを含むとみなされる。
【0091】
測定されたカルシトリオール濃度(T0に対する%):
【0092】
【表4】

【0093】
これらの結果は、カルシトリオールがCetiol SN中で良好な安定性を有することを示している。
【0094】
(実施例2)
以下の実施例の組成物の調製方法
本発明の組成物を、室温で、覆いをして、非作用光(inactinic light)中で調製する。
【0095】
抗酸化剤、カルシトリオール、およびアルコールを、フラスコ中に入れ、カルシトリオールが完全に可溶化されるまで撹拌する。
【0096】
次いで、プロピオン酸クロベタゾールを添加し、プロピオン酸クロベタゾールが可溶化されるまで撹拌を継続する。
【0097】
2種の有効成分が完全に可溶化されたとき、配合の残りの成分を連続して導入する。
【0098】
混合物を、完全に均質になるまで撹拌する。
【0099】
(実施例3)
【0100】
【表5】

【0101】
手順は、実施例2に記載のとおりである。
【0102】
無色の溶液が得られた。
【0103】
(実施例4)
a)組成物
【0104】
【表6】

【0105】
手順は、実施例2に記載のとおりである。
【0106】
無色の溶液が得られた。
【0107】
b)組成物の物理的安定性
配合物の物理的安定性を、2、4、8および12週間後に室温および4℃での、配合物の巨視的および微視的観察により評価する。室温において、巨視的な観察により、製品の物理的完全性を保証することができ、微視的な観察により、可溶化された有効成分の再結晶化がないことを検証することができる。
【0108】
4℃での微視的観察により、可溶化された有効成分の再結晶化がないことを検証した。
【0109】
T0における特性
巨視的外観:無色の溶液
【0110】
微視的外観:カルシトリオールおよびクロベタゾール17-プロピオネートの結晶なし
【0111】
【表7】

【0112】
c)組成物の化学安定性
− カルシトリオールの安定性:
HPLCを用いた外部較正による有効成分の分析。
【0113】
結果を、理論値に対する回収率%で表す。
【0114】
【表8】

【0115】
− クロベタゾール17-プロピオネートの安定性:
HPLCを用いた内部較正による有効成分の分析。
【0116】
結果を、理論値に対する回収率%で表す。
【0117】
【表9】

【0118】
(実施例5)
a)組成物
【0119】
【表10】

【0120】
手順は、上記実施例2に記載のとおりである。
【0121】
無色の溶液が得られた。
【0122】
b)組成物の物理的安定性
T0における特性
巨視的外観:無色の溶液
【0123】
微視的外観:カルシトリオールおよびクロベタゾール17-プロピオネートの結晶なし
【0124】
【表11】

【0125】
c)組成物の化学安定性
− カルシトリオールの安定性:
HPLCを用いた外部較正による有効成分の分析。
【0126】
結果を、理論値に対する回収率%で表す。
【0127】
【表12】

【0128】
− クロベタゾール17-プロピオネートの安定性:
HPLCを用いた内部較正による有効成分の分析。
【0129】
結果を、理論値に対する回収率%で表す。
【0130】
【表13】

【0131】
(実施例6)
a)組成物
【0132】
【表14】

【0133】
手順は、上記実施例2に記載のとおりである。
【0134】
(実施例7)
【0135】
【表15】

【0136】
手順は、上記実施例2に記載のとおりである。無色の溶液が得られた。
【0137】
(実施例8)
実施例7の組成物の物理的安定性
配合物の安定性を、2、4、8および12週間後に、室温、4℃および40℃で、組成物の巨視的および微視的観察により評価する。
【0138】
室温において、巨視的な観察により、製品の物理的完全性を保証することができ、微視的な観察により、可溶化された有効成分の再結晶化がないことを検証することができる。
【0139】
可溶化された有効成分の再結晶化がないことを、4℃での微視的観察により検証した。
【0140】
最終製品の完全性を、40℃での巨視的観察により検証した。
【0141】
T0における特性
巨視的外観:無色またはかすかにわずかに黄みがかった液体スプレー
【0142】
微視的外観:カルシトリオールおよびクロベタゾール17-プロピオネートの結晶なし
【0143】
【表16】

【0144】
(実施例9)
実施例7の組成物中の有効成分の化学安定性
【0145】
【表17】

【0146】
【表18】

【0147】
(実施例10)
【0148】
【表19】

【0149】
手順は、上記実施例2に記載のとおりである。無色の溶液が得られた。
【0150】
(実施例11)
【0151】
【表20】

【0152】
手順は、上記実施例2に記載のとおりである。無色の溶液が得られた。
【0153】
(実施例12)
【0154】
【表21】

【0155】
手順は、上記実施例2に記載のとおりである。無色の溶液が得られた。
【0156】
(実施例13)
3種の異なる配合物(そのうち1種が本発明による配合物)中に含まれる有効成分クロベタゾール17-プロピオネートの、ヒト皮膚への放出/浸透のin vitro研究
様々な配合物に配合された有効成分の皮膚中への浸透を、適用の16時間後に、ヒトの皮膚についてin vitroで定量化することが目的である。
【0157】
試験された配合物:
− 0.05%(w/w)のクロベタゾール17-プロピオネートを含有するTemovate(登録商標)エモリエントクリーム
− 0.05%(w/w)のクロベタゾール17-プロピオネートを含有するTemovate(登録商標)クリーム
− 下記配合Aの本発明の組成物:
【0158】
【表22】

【0159】
Temovate(登録商標)クリームは、GlaxoSmithKline社により市販されている。
【0160】
実験条件:ヒトの皮膚で隔てられた2つの区画からなる拡散セルを用いて、経皮吸収を評価する。配合物を、中断することなく16時間適用した。配合物は、cm2あたり配合物10mgの割合(すなわち、10マイクログラムのクロベタゾール17-プロピオネート)で適用した。試験中、皮膚は、時間の関数として入れ替えない受容側の液体(静的モード)と接触する。これらの実験を、3人の異なる提供者からの3種の皮膚サンプルで実施した。適用期間の最後に、表面の過剰量を除去し、様々な皮膚の区画中、および受容側の液体中におけるクロベタゾール17-プロピオネートの分布を定量化する。クロベタゾール17-プロピオネートの濃度を、当業者に従来公知のHPLC/MS/MS法を用いて定量化した(LQ:1 ng.mL-1)。
【0161】
結果を、適用した用量の%(平均+/-標準偏差)として表し下表に示す。
【0162】
【表23】

【0163】
結果は、本発明の組成物と一緒に浸透したクロベタゾールの量は、Temovateクリームと一緒に浸透したクロベタゾールの量よりも優れていることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製薬上許容できる媒体中に、
a)治療有効量の可溶化された形態のプロピオン酸クロベタゾール、
b)治療有効量の可溶化された形態のカルシトリオール、
c)アルコール相、
d)少なくとも1種の揮発性シリコーン、
e)1種または複数種の油からなる不揮発性油性相
を含み、常温で液体であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
噴霧可能であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコール相がエタノールであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記揮発性シリコーンがヘキサメチルジシロキサンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記油性相が、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セテアリルイソノナノエートおよび植物油からなる群から選択される1種または複数種の油を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
製薬上許容できる媒体中に、
a)0.001%から0.05%の間のプロピオン酸クロベタゾール、
b)0.0002%から0.0005%の間のカルシトリオール、
c)10%から40%の間のエタノール、
d)15%から45%の間の揮発性シリコーン、ならびに
e)カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セテアリルイソノナノエートおよび植物油から選択される1種または複数種の油からなる、30%から45%の間の油性相
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗酸化剤化合物も含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗酸化剤が、DL-α-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソールおよびブチルヒドロキシトルエンから選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
シリコーンゴムも含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
a)治療有効量の可溶化された形態のプロピオン酸クロベタゾール、
b)治療有効量の可溶化された形態のカルシトリオール、
c)アルコール相、
d)少なくとも1種の揮発性シリコーン、
e)1種または複数種の油からなる不揮発性油性相、
f)抗酸化剤、および
g)シリコーンゴム
を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤化合物も含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマーおよびポリソルベートから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
− 分化および増殖に関連する角化障害に伴う皮膚科学的疾患、特に尋常性座瘡、くろにきび、多形性座瘡、酒さ性座瘡、結節嚢胞性座瘡、集簇性座瘡、老人性座瘡、および二次的座瘡(例えば、日光性座瘡、薬物性座瘡または職業性座瘡など);
− 魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエー病、掌蹠角皮症、白斑症および白斑症様の状態、ならびに皮膚または粘膜(口腔)の苔癬;
− 炎症性免疫アレルギー性要素を有し、細胞増殖障害を伴うかまたは伴わない皮膚科学的疾患、特に皮膚、粘膜または爪の乾癬、乾癬性関節症、および皮膚アトピー(例えば湿疹など)、呼吸性アトピーまたは歯肉肥大;
− 良性または悪性の、ウイルス由来かまたはウイルス由来でない皮膚または表皮増殖、特に、ゆうぜい、扁平ゆうぜい、ゆうぜい状表皮発育異常症、口部乳頭腫症または顕症期の乳頭腫症、およびTリンパ腫;
− 紫外線により誘発され得る増殖、特に基底細胞上皮腫および有棘細胞上皮腫;
− 前癌皮膚病変、特に角化棘細胞腫;
− 免疫性皮膚病、特に紅斑性狼瘡;
− 水疱性免疫疾患;
− 膠原病、特に強皮症;
− 免疫学的要素を有する皮膚科学的または全身性疾患;
− 紫外線への暴露に起因する皮膚障害、光誘導性もしくは経時的な皮膚老化、または光線性色素沈着および光線性角化症、あるいは経時的または光線性老化に伴う何らかの病態、特に乾皮症;
− 脂腺機能障害、特に脂漏過剰性座瘡、単純性脂漏症または脂漏性皮膚炎;
− 治癒障害または萎縮性皮膚線条;
− 色素沈着障害、例えば色素沈着過剰、黒皮症、色素沈着低下または白斑など;
− 脂質代謝の疾患、例えば肥満、高脂血症、インシュリン非依存性糖尿病またはX症候群など;
− 炎症性疾患、例えば関節炎など;
− 癌または前癌状態;
− 様々な原因の脱毛症、特に化学療法または放射線による脱毛症;
− 免疫系障害、例えば喘息、I型糖尿病、多発性硬化症または免疫系のその他の選択的機能不全など;あるいは
− 心血管系疾患、例えば動脈硬化症または高血圧症など
の処置を意図した薬剤の調製のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
乾癬の処置を対象とした組成物の調製のための、請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2008−502664(P2008−502664A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515999(P2007−515999)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001497
【国際公開番号】WO2006/005845
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(500247183)ガルデルマ・ソシエテ・アノニム (29)
【Fターム(参考)】