説明

カルバペネム合成体およびその製造法

【課題】カルバペネム誘導体の工業的に有用な製法を提供する。
【解決手段】以下の反応スキーム:
【化1】


(式中、R1はヒドロキシ保護基;R2はカルボキシ保護基;Xはハロゲン)により得られる化合物(I)、そのアミン塩、およびそれらを使用するカルバペネム誘導体の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性を有するカルバペネムの合成中間体およびその製造法に関する。詳しくは本発明は、該中間体、そのアミン塩、その結晶およびそれらを利用したカルバペネムの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
1−アルキルカルバペネムの合成中間体の製法として、特許文献1(参考例1〜2)には、Dieckmann縮合反応を利用するための中間体として以下に示す化合物5、6が開示されている。
【化1】

また特許文献2(実施例13)には、化合物5からドリペネムの製法が記載されている。
【化2】


(式中、TMS:トリメチルシリル)

非特許文献1には、上記化合物5のヒドロキシ保護体の製法として以下の反応が記載されている。
【化3】

a: 1) TBS-Cl, NaH, THF, 0℃, 1h 2) BrCH2CO2Allyl, NaH(TMS)2, THF, −50℃, 30min 3) K2CO3, H2O, 25℃, 10min 4) aq. HCl

【特許文献1】特開平1−79180
【特許文献2】特開平5−294970
【非特許文献1】Synlett, 315-316, 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化合物5を従来の方法で製造すると、副反応を十分に制御するのが容易ではなく、その結果、目的のカルバペネムを工業的に効率よく製造するのは極めて困難であった。例えば、β−ラクタム環の4位のカルボキシをチオエステルとした後、1位N原子をアルキル化した場合には、チオエステル基の一部が外れることが分かった。また出発物質のヒドロキシ保護基の種類によっては、該ヒドロキシ保護基に由来する副生成物が化合物5に混入し、それを完全に除去することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討した結果、化合物5およびその誘導体の製法として、新規中間体である化合物(I)またはそのアミン塩を経由すれば、工業的に効率よく目的化合物が製造できることを見出した。また化合物5を効率よく製造するための反応条件(例:縮合剤の種類)等についても検討し、以下に示す本発明を完成した。
(1)式:
【化4】

で示される化合物(I)またはそのアミン塩。
(2)アミンが1級アミンまたは2級アミンである、上記1記載のアミン塩。
(3)アミンが、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、(−)−α−メチルベンジルアミン、ジイソプロピルアミン、またはジシクロヘキシルアミンである、上記1記載のアミン塩。
(4)ジイソプロピルアミン塩である、上記1記載のアミン塩。
(5)結晶である、上記1〜4のいずれかに記載のアミン塩。
(6)粉末X線回折パターンにおいて、2θ=8.7, 9.7, 15.7, 22.4度に主ピークを示す結晶である、上記4記載のジイソプロピルアミン塩。
(7)以下の反応スキーム:
【化5】

(式中、R1はヒドロキシ保護基;R2はカルボキシ保護基;Xはハロゲン)で示され、以下の工程:
(第1工程)化合物(II)のカルボキシを保護して化合物(III)を製造する工程、
(第2工程)化合物(III)を化合物(IV)と反応させて化合物(V)を製造する工程、および
(第3工程)化合物(V)を脱保護反応に付した後、所望によりアミンと反応させる工程、
を包含することを特徴とする、上記1記載の化合物(I)またはそのアミン塩の製造方法。
(8)R1はアルキルシリルおよび/またはR2はアルコキシアルキルである、上記7記載の製造方法。
(9)R1はt−ブチルジメチルシリルおよび/またはR2は1−イソブトキシエチルである、上記7記載の製造方法。
(10)上記1に記載の化合物(I)またはそのアミン塩のカルボキシ部分を活性エステル化、活性酸無水物化、チオールエステル化、アリールエステル化またはヘテロアリールエステル化する工程を包含する、式:
【化6】

(式中、COZは、カルボキシル基の活性エステルもしくは活性酸無水物、保護基で保護されたチオールカルボキシル基、置換アリールオキシカルボニル基、またはヘテロアリールオキシカルボニル基)で示される化合物(VI)の製造方法。
(11)上記1に記載の化合物(I)またはそのアミン塩のカルボキシ部分を、縮合剤存在下、チオールエステル化することにより、COZがCOSPh(Phはフェニル)である化合物(VI)を製造する、上記10記載の製造方法。
(12)縮合剤が、Ph2P(O)Cl、(PhO)2P(O)Cl(Phはフェニル)または2-クロロ-4,6-ジメトキシトリアジンである、上記11記載の製造方法。
(13)上記10記載の方法により化合物(VI)を製造した後、これをヒドロキシの保護反応に付すことにより、式:
【化7】

(式中、COZは、カルボキシル基の活性エステルもしくは活性酸無水物、チオールカルボキシル基の保護基で保護されたチオールカルボキシル基、置換アリールオキシカルボニル基、またはヘテロアリールオキシカルボニル基;R3はヒドロキシ保護基)で示される化合物(VII)を製造した後、これを塩基で処理し、さらに水酸基の活性エステル化剤で処理する工程を包含する、式:
【化8】

(式中、R3はヒドロキシ保護基;Lはエステル化されたヒドロキシ基)で示される化合物(VIII)の製造方法。
(14)R3はアルキルシリル、Zは−SPh、および/またはLは−OP(O)(OPh)2(Phはフェニル)である、上記13記載の製造方法。
(15)上記14記載の方法により化合物(VIII)を製造した後、式:R4−SH(R4はカルバペネム誘導体の2位に結合し得るチオエーテル型側鎖の残基)で示される化合物(IX)またはその塩と反応させ、得られた化合物を脱保護する工程を包含する、式
【化9】

(式中、R4は前記と同意義)で示される化合物(X)、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、カルバペネム誘導体の新規な合成中間体、その製造方法、およびそれを用いたカルバペネム誘導体の製造方法を提供する。本発明の製法により目的のカルバペネム誘導体を効率よく、高収率で合成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明中、各用語は特に断らない限り、単独または併用で、以下の意味を示す。
ヒドロキシの保護基としては、トリアルキルシリル(例:トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル)、アシル(例:アセチル、ピバロイル)、低級アルキル(例:メチル、エチル)、低級アルコキシ低級アルキル(例:メトキシメチル、メトキシエチル)、低級アルキルスルホニル(例:メタンスルホニル)、低級アルコキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル)、アラルキルオキシカルボニル(例:ベンジルオキシカルボニル、o−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル)、置換メチル(例:メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル)、テトラヒドロピラニル等が例示される。
カルボキシの保護基としては、低級アルキル(例:メチル、エチル、n−プロポキシ、イソプロピル、t−ブチル)、置換された低級アルキル(置換基の例:低級アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ))、置換または無置換のアラルキル(例:ベンジル、フェネチル、p−メトキシベンジル、2,4−ジメトキシベンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−クロロベンジル)、ヘテロ原子(例:O,S,N)が介在していてもよいC3〜C8シクロアルキル、アルキルシリル(例:トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル)、低級アルコキシメチル(例:メトキシメチル、エトキシメチル、イソブトキシメチル)、低級脂肪族アシルオキシメチル(例:アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル)、低級アルコキシカルボニルオキシエチル(例:1−メトキシカルボニルオキシエチル、1−エトキシカルボニルオキシエチル)、置換または無置換の炭素数3〜10の2−低級アルケニル基(例:アリル、2−メチルアリル、3−メチルアリル、3−フェニルアリル)、置換あるいは無置換のジアリールアルキル基(例:ジフェニルメチル、ジ−p−アニシルメチル)、置換あるいは無置換のアリール基(例:フェニル、p−クロロフェニル、2,4,5−トリクロロフェニル、p−ニトロフェニル、o−ニトロフェニル、p−メトキシフェニル)、ヘテロアリール(例:2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、2−(4,6−ジメチル)ピリミジル)が例示される。
「低級」は、好ましくはC1〜C6、さらに好ましくはC1〜C4を意味する。
ハロゲンは、F、Cl、Br、Iを示す。
【0007】
化合物(I)のアミン塩のアミンは、1級アミン、2級アミン、および3級アミンを包含する。
1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン, イソアミルアミン、n-デシルアミン、3-メトキシプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、4-メトキシフェネチルアミン、2,2-ジメトキシエチルアミン、3,3-ジメトキシプロピルアミン、p-クロロアニリン、2-(p-クロロフェニル)エチルアミン、(-)-α-メチルベンジルアミン、3,4-ジメトキシフェネチルアミン、ベンズヒドリルアミン、2-(4-アミノフェニル)エチルアミン、2-アミノベンジルアミン、(+)-ジヒドロアビエチルアミン、4-メトキシベンジルアミン、3-メトキシフェネチルアミン、 4-tert-ブチルベンジルアミン、アニリン、4-ブロモ-2-フルオロアニリン、4,4'-ジチオアニリン、2,2'-ジチオジアニリンが例示され、好ましくは、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、(-)-α-メチルベンジルアミンである。
2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、3,5-ジクロロ-4,4'-ジヒドロキシジフェニルアミン、ベンジル-N-メチルエタノールアミンが例示され、好ましくは、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミンである。
3級アミンとしては、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、 トリアリルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミンが例示される。
化合物(I)のアミン塩は好ましくは結晶である。上記アミンの内、化合物(I)に関して結晶性が良いのは1級または2級アミンであり、好ましくはメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、(-)-α-メチルベンジルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミンであり、さらに好ましくはメチルアミン、ジイソプロピルアミンである。この内、ジイソプロピルアミンは、特に結晶性がよく、毒性がなく、かつβ−ラクタム環への反応性が低い等の利点を有するので特に好ましい。また次工程縮合の際、塩基(酸トラップ剤)としても利用できる。
上記アミン塩またはその結晶は、溶媒和物であってもよい。該溶媒としては、水、アルコールが例示される。
本発明者らの検討結果では、化合物(I)をアミン塩に変換することにより結晶性が改善され、高純度の結晶として単離することに成功した。これによって、化合物(I)の合成過程で混入してくる種々の副生成物(例:TBS−OH、TBS−Cl、(TBS)2O)を容易に除去できる(TBS=t−ブチルジメチルシリル)。その結果、カラム処理が不要になり、またそれ以降の工程における反応効率が高まる等の利点が生じる。よって、本発明製法では特に化合物(I)のアミン塩、好ましくはその結晶を経由することにより、種々のカルバペネム誘導体を工業的に効率よく合成できる。
上記アミン塩結晶は、粉末X線解析によって、後記実施例に示すX線回折パターンを示す(X線回折測定条件:管球CuKα線、管電圧40Kv、管電流15mA、dsinθ=nλ(nは整数、dは面間隔(単位:オングストローム)、θは回折角(単位:度)))。
これらの結晶は、各回折角または面間隔の値によって特徴づけられる。
【0008】
化合物(I)およびそのアミン塩の製法について説明する。
【化10】

(式中、R1はヒドロキシ保護基;R2はカルボキシ保護基;Xはハロゲン)

(第1工程)
化合物(II)のカルボキシを保護することにより化合物(III)を得る。当該反応は、通常のカルボキシの保護反応に準じて行えば良い。
1としては前記のヒドロキシ保護基が例示されるが、好ましくは、トリアルキルシリル、特にt−ブチルジメチルシリル(TBS)である。
2としては前記のカルボキシの保護基が例示されるが、好ましくは、低級アルコキシで置換された低級アルキルであり、例えば、1−メトキシエチル、1−エトキシエチル、1−イソプロポキシエチル、1−n−プロポキシエチル、1−n−ブトキシエチル、1−イソブトキシエチル、1−t−ブトキシエチルであり、特に好ましくは、1−イソブトキシエチルである。これらの保護基は、反応中で1位N原子への転位等の副反応が起こりにくい。
所望により酸等の反応促進剤を使用してもよい。酸としては、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸などが例示される。
反応溶媒としては、炭化水素(例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、トルエン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素)、アルコール(例:メタノール、エタノール)、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酢酸エチル、アセトン、ホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、エーテル(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル)、水それらの混合溶媒等が例示されるが、好ましくは、トルエン、アセトニトリル、またはその混合溶媒である。
反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは10〜30℃である。
反応時間は数時間から数十時間である。
得られる化合物(III)は、単離せずに次工程の反応に付してもよい。
(第2工程)
化合物(III)を化合物(IV)と反応させて化合物(V)を製造する。
Xで示されるハロゲンは好ましくは、ClまたはBrである。
所望により塩基等の反応促進剤を使用してもよい。塩基としては、NaH、ソジウム tert-ブトキサイド、ポタシウム tert-ブトキサイド、ソジウム tert-ペントキサイド、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ソジウムビス(トリメチルシリル)アミドが例示される。また所望により層間移動触媒を併用してもよい。層間移動触媒としては、4級アンモニウム塩(例:テトラn-ブチルアンモニウムクロライド、テトラn-ブチルアンモニウムブロマイド等が使用できる。
反応溶媒としては、炭化水素(例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、トルエン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素)、アルコール(例:メタノール、エタノール)、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酢酸エチル、アセトン、ホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、エーテル(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル)、水それらの混合溶媒等が例示されるが、好ましくは、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフランまたはその混合溶媒である。
反応温度は、通常−70〜0℃、好ましくは−50〜−30℃である。
反応時間は数時間から数十時間である。
得られる化合物(V)は、単離せずに次工程の反応に付してもよい。
【0009】
(第3工程)
化合物(V)を脱保護反応に付した後、所望によりアミンと反応させることにより、化合物(I)またはそのアミン塩を得る。
脱保護反応は、通常のカルボキシの脱保護反応の条件に準じて行えばよい。好ましくは化合物(V)を酸で処理すればよい。酸としては、塩酸、硫酸、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、硝酸、燐酸、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウムが例示される。反応時間は、通常、数分〜数十時間である。
アミンとの反応は、通常、氷冷下〜室温で行われる。アミン塩として晶析させる場合、所望により、種晶を添加してもよい。晶析に使用する溶媒としては、炭化水素(例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、トルエン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素)、アルコール(例:メタノール、エタノール)、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、ホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、エーテル(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル)、水それらの混合溶媒等が例示される。また結晶化において、所望により、加熱処理、超音波処理や攪拌等を行ってもよい。
【0010】
さらに化合物(I)またはそのアミン塩は、特開平6−316559号に記載の方法に従い、4位のカルボキシ部分を活性エステル化、活性酸無水物化、チオールエステル化、アリールエステル化またはヘテロアリールエステル化することにより、以下に示す公知化合物(VI)に変換できる。
【化11】

(式中、COZは、カルボキシル基の活性エステルもしくは活性酸無水物、保護基で保護されたチオールカルボキシル基、置換アリールオキシカルボニル基、またはヘテロアリールオキシカルボニル基)
COZがカルボキシル基の活性エステルまたは活性酸無水物である場合には、Z基としては例えば塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン原子;例えばエトキシカルボニルオキシ、イソプロピルオキシカルボルオキシ、sec−ブチルオキシカルボニルオキシのような炭素数1〜5の低級アルキルオキシカルボニルオキシ基;例えばメタンスルホニルオキシのような炭素数1〜4の低級アルカンスルホニルオキシ基;例えばp−トルエンスルホニルオキシのようなアリールスルホニルオキシ基;例えばジメチルホスホリルオキシ、ジエチルホスホリルオキシのようなジ(炭素数1〜4の低級アルキル)ホスホリルオキシ基;例えばジ(フェニル)ホスホリルオキシのようなジアリールホスホリルオキシ基;例えばN−サクシイミドオキシ、N−フタルイミドオキシのような環状イミドオキシ基;イミダゾール、トリアゾールのようなヘテロアリール基;例えば3−(2−チオキソ)−チアゾリジニルのようなヘテロシクロアルキル基等を挙げることができる。
COZが保護されたカルボキシル基またはチオールカルボキシル基である場合に用いられるカルボキシル基の保護基およびチオールカルボキシル基の保護基は前述と同様のものを好適なものとして挙げることができる。さらに置換アリールオキシ基としては好適なものとしてp−ニトロフェニルオキシ、o−ニトロフェニルオキシ、2,4,5−トリクロロフェニルオキシ等を挙げることができ、ヘテロアリールオキシ基としてはo−ピリジルオキシ、p−ピリジルオキシ等を挙げることができる。
上記の化合物(I)から(VI)への変換は、好ましくは縮合剤存在下で行われる。より好ましくは、化合物(I)またはそのアミン塩のカルボキシ部分を、縮合剤存在下、チオールエステル化することにより、COZがCOSPh(Phはフェニル)である化合物(VI)を製造できる。
縮合剤としては、種々のものが使用可能であるが、好ましくは、ClCOOiBu、tBuCOCl、CDI(カルボキシジイミダゾール)、Ph2P(O)Cl、(PhO)2P(O)Cl,(PhO)P(O)Cl2、2−クロロ−4,6−ジメトキシトリアジンが例示され、より好ましくはPh2P(O)Cl、(PhO)2P(O)Clまたは2−クロロ−4,6−ジメトキシトリアジンである。縮合剤の選択に応じて、上記反応は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の高収率で反応する。
また上記反応は所望により酸捕捉剤を併用してもよい。酸捕捉剤としては前記アミンが使用可能である。
【0011】
さらに化合物(VI)をヒドロキシの保護反応に付すことにより、式:
【化12】

(式中、COZは、カルボキシル基の活性エステルもしくは活性酸無水物、チオールカルボキシル基の保護基で保護されたチオールカルボキシル基、置換アリールオキシカルボニル基、またはヘテロアリールオキシカルボニル基;R3はヒドロキシ保護基)で示される化合物(VII)を製造した後、特開平6−316559号に記載の方法に従い、これを塩基で処理し、さらに水酸基の活性エステル化剤で処理することにより、式:
【化13】

(式中、R3はヒドロキシ保護基;Lはエステル化されたヒドロキシ基)で示される化合物(VIII)を製造できる。
3としては前記のヒドロキシ保護基が例示されるが、好ましくは、トリアルキルシリル、特にトリメチルシリル(TMS)である。特に化合物(VIII)を使用してドリペネムを製造する場合には、脱保護のしやすさの点でTMSが好ましく使用される。
詳しくは、化合物(VII)を不活性溶媒中、塩基で処理後、中間体を単離せず反応液中の活性エステルもしくは活性酸無水物の残基または保護されたチオールカルボキシル基のチオール残基(Z-)をヨードメタン、ヨードプロパン、臭化アリル、臭化ベンジル、p−トルエンスルホン酸メチルエステル等のアルキル化剤、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド等のアシル化剤によって捕捉した後、水酸基の活性エステル化剤と処理すればよい。
Lで示される水酸基の活性エステルとは、例えば置換もしくは無置換アリールスルホン酸エステル基(置換もしくは無置換アリールスルホニルオキシ基)、低級アルカンスルホン酸エステル基(低級アルカンスルホニルオキシ基)、ハロゲノ低級アルカンスルホン酸エステル基(ハロゲノ低級アルカンスルホニルオキシ基)またはジアリールホスホリックアシッドエステル基(ジアリールホスホリルオキシ基)を示すか、またはハロゲン化水素とのエステルであるハロゲン化物原子を示す。したがって、水酸基の活性エステル化剤とは、上述のような活性エステルを生成する試剤である。さらに、置換もしくは無置換アリールスルホン酸エステルとしては、例えばベンゼンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、p−ニトロベンゼンスルホン酸エステル、p−ブロモベンゼンスルホン酸エステルなどを、低級アルカンスルホン酸エステルとしては、例えばメタンスルホン酸エステル、エタンスルホン酸エステルなどを、ハロゲノ低級アルカンスルホン酸エステルとしては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸エステルなどを、ジアリールホスホリックアシッドエステルとしては、例えばジフェニルホスホリックアシッドエステルなどを、またハロゲン化物としては、例えば塩素、臭素、ヨウ素化物などを挙げることができる。このようなアルコールの活性エステルの中で好適なものとしては、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、ジフェニルホスホリック酸エステルを挙げることができ、好ましくは、ジフェニルホスホリック酸エステルである。よって活性エステル化剤として好ましくは、ジフェニルホスホリック酸クロライド(例:ジフェニルホスホリック酸クロライド)である。
化合物(VII)を不活性溶媒中で処理する際の塩基としては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ソジウムアミド等のアミン類の金属塩、ポタシウムt−ブトキサイド等のアルコール類の金属塩、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類およびソジウムメチルスルフィニルメチド等を挙げることができる。塩基の使用量は、通常、1.5〜3当量である。好適な反応温度は−75℃〜50℃である。
上記反応において好ましくは、R3はアルキルシリル、Zは−SPh、および/またはLは−OP(O)(OPh)2(Phはフェニル)である。
【0012】
化合物(VIII)は、特開平1−79180、特開平6−316559、特開平5−294970号、USP 5,317,016等に記載の方法に準じて、式:R4−SH(R4はカルバペネム誘導体の2位に結合し得るチオエーテル型側鎖の残基)で示される化合物(IX)またはその塩と反応させ、得られた化合物を所望により脱保護することにより、式
【化14】

(式中、R4は前記と同意義)で示される化合物(X)、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物が製造できる。
製薬上許容される塩としては、塩基性塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩またはエチレンジアミン塩等の脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ベネタミン塩等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等のヘテロ環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。酸性塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等が挙げられる。溶媒和物としては、水和物やアルコール和物が例示される。
化合物(X)としては、(1)チエナマイシン、(2)イミペネム、(3)メロペネム、(4)ビアペネム、(5)パニペネム、(6)BQ−2727、(7)S−4661(ドリペネム)などが例示される(各“−SR4”を以下に示す)。
【化15】

【0013】
以下に実施例を示す。
(略号)
TBS:t−ブチルジメチルシリル TMS:トリメチルシリル tBu:t−ブチル
iPr:イソプロピル Ph:フェニル Allyl:CH2CH=CH2 Alloc:CO2 CH2CH=CH2
DMF:ジメチルホルムアミド THF:テトラヒドロフラン

【化16】

【0014】
実施例1(1→4)
(1)ソジウムハイドライド(純度:60%) 12.21 g(1.15 eq)、トルエン 120 ml、アセトニトリル 40 mlの懸濁液に40℃加熱下、tert-アミルアルコール 34.9 ml(1.2 eq)のトルエン 40 ml溶液を滴下し、そのまま20分撹拌した後、室温まで冷却した(以下、ソジウムtert-ペントキサイドのトルエン-アセトニトリル溶液という)。
化合物1(80.00 g,0.2654 mol )にパラトルエンスルホン酸91 mg(0.002 eq)、無水トルエン400 mlを加え、室温撹拌下、イソブチルビニルエーテル 44.99 g(1.3 eq)を加え、そのまま2.5時間撹拌した。
(2)反応溶媒をトルエンからd8-THFに変更して、上記(1)と同様の反応を行った。反応液の一部を経時的に取り出してNMR測定を行い、原料化合物1のピークの消失を確認した。その場合のNMR値を以下に示す。NMR値から化合物2が生成していることが確認でき、このことから上記(1)の場合にも同様に化合物2が生成していることが分かる。
1H-NMR (d8-THF): 0.08 ( 6H, s ), 0.89 ( 9H, s ), 0.90 ( 6H, m ), 1.18 ( 3H, d, J=7.2 Hz ), 1.19 ( 3H, d, J=7.2 Hz ), 1.34 ( 3H, m ), 1.78 ( 1H, m ), 2.64 ( 1H, m), 2.91 ( 1H, m ), 3.22 ( 1H, m ), 3.42 ( 1H, m ), 3.76 ( 1H, m ), 4.15 ( 1H, m ), 5.87 ( 1H, q, J=5.4 Hz ) ppm

(3)上記(1)で得られた反応液を−45℃まで冷却し、アリルブロモアセテート 61.76 g(1.3 eq)を加え、−40〜−45℃で、先に調製したソジウムtert-ペントキサイドのトルエン-アセトニトリル溶液を滴下した。同温度にて1.5時間撹拌後、塩化アンモニウム 4.26 g(0.3 eq)を溶解した水200 mlに注ぎ込み、分液した。トルエン層は水200 mlで2回洗浄し、水層はトルエン 200 mlで抽出した。トルエン層を合わせ、減圧濃縮し、3のアメ状残渣 170.97 gを得た。
化合物3
1H-NMR (CDCl3): 0.07 ( 6H, s ), 0.89 ( 9H, s ), 0.90 ( 6H, m ), 1.25 ( 6H, m ), 1.38 ( 3H, m ), 1.83 ( 3H, m ), 2.87 ( 1H, m ), 2.99 ( 1H, m ), 3.21 ( 1H, m ), 3.40 ( 1H, m ), 3.83 ( 1H, d, J=18.0 Hz ), 4.15 ( 1H, m ), 4.16 ( 1H, m ), 4.29 ( 1H, dd, J=1.5, 18.0 Hz ), 4.62 ( 2H, m ), 5.30 ( 2H, m ), 5.89 ( 1H, q, J=5.1 Hz ), 5.90 ( 1H, m ) ppm
(4)上記(3)の抽出残渣 170.97 gをアセトニトリル 400 mlに溶解し、氷冷撹拌下、3N-塩酸 44.2 ml(0.5 eq)を加え、そのまま16時間撹拌した。重曹 35.67 g(1.6 eq)と水 160 mlを加えた後、減圧濃縮でアセトニトリルを留去し、トルエン 200 mlを加え、分液した。トルエン層は水 100 mlで洗浄、水層はトルエン 100 mlで抽出し、水層を合わせ、氷冷撹拌下、濃塩酸でpHを3.0とし、酢酸エチル 400 ml、食塩 95.4 gを加え、分液した。酢酸エチル層は飽和食塩水 50 mlで洗浄、水層は酢酸エチル 100 mlで抽出した。酢酸エチル層を合わせ、減圧濃縮し、4のフリー体のアメ状残渣 74.84 gを得た。
4のフリー体のアメ状残渣 1.38 gを酢酸ブチル 5 mlに溶解し、氷冷撹拌下、ジイソプロピルアミン 0.75 ml(1.5 eq)を1.5時間で滴下した。そのまま2時間撹拌し、析出した結晶をろ過、氷冷した酢酸ブチル 3 mlで洗浄し、ジイソプロピルアミン塩4 を1.23 g(収率:65%)得た。
Anal. Calcd for C19H34N2O6・0.2H2O: C, 58.50; H, 8.89; N, 7.18; H2O, 0.92. Found: C, 58.74; H, 8.72; N, 7.25, H2O, 0.97. 1H-NMR (CDCl3): 1.23 ( 3H, d, J=7.2 Hz ), 1.29 ( 6H, d, J=6.3 Hz ), 1.32 ( 3H, d, J=6.3 Hz ), 2.51 ( 1H, m ), 2.89 ( 1H, dd, J=2.1, 9.3 Hz ), 3.34 ( 1H, m ), 3.82 ( 1H, dd, J=1.8, 8.7 Hz ), 3.87 ( 1H, d, 18.6 Hz ), 4.11 ( 1H, m ), 4.31 ( 1H, d, 18 Hz ), 4.63 ( 2H, d, J=5.7 Hz ), 5.31 ( 2H, m ), 5.90 ( 1H, m ), 7.0 ( 4H, br ) ppm
ジイソプロピルアミン塩4の粉末X線回折パターンを図1に示す。特に、2θ=8.7, 9.7, 15.7, 22.4度に主ピークを示した。
【0015】
実施例2(4→6)
化合物4 80.00 g(純度:97.2%, 0.201 mol)に酢酸エチル 311 mlを加え、氷冷撹拌下、ジフェニルリン酸クロライド 64.80 g(1.2 eq)を滴下し、室温で1時間撹拌した。再び氷冷し、DMF 78 mlとチオフェノール 22.7 ml(1.1 eq)を加えた後、ジイソプロピルアミン 37.1 ml(1.3 eq)を滴下し、そのまま1.5時間撹拌した。この時点で化合物5が生成していることをHPLC(高速液体クロマト)で確認した。さらに同温度で、トリメチルシリルクロライド 33.2 ml(1.3 eq)とジイソプロピルアミン 42.8 ml(1.5 eq)を順次滴下し、そのまま1.5時間撹拌した。6%重曹水 367 ml(1.3 eq)を加え、室温で10分撹拌した後、水を1.2 L加え、分液した。酢酸エチル層は水 389 mlで2回洗浄、水層は酢酸エチル 311 mlで抽出、酢酸エチル層を合わせ、減圧濃縮した後、トルエン 200 mlを加え、減圧濃縮し、6のアメ状残渣 108.16 g(定量値:85.0 g, 収率:94%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): 0.15 ( 9H, s ), 1.29 ( 6H, d, J=6.9Hz ), 3.08 ( 1H, dd, J=2.7, 8.1 Hz ), 3.15 ( 1H, qd, J=6.9, 3.0 Hz ), 2.85 ( 1H, dd, J=0.6, 18.0 Hz ), 4.12 ( 1H, dd, J=2.4, 3.0 Hz ), 4.32 ( 1H, d, 18.0 Hz ), 4.60 ( 2H, m ), 5.27 ( 2H, m ), 6.87 ( 1H, m ), 7.40 (5H, m ) ppm

実施例3(6→7)
ソジウムハイドライド(純度:60%) 9.86 g(2.3 eq)、トルエン‐アセトニトリル(85‐15) 160 mlの懸濁液に35℃加熱下、tert-アミルアルコール 28.2 ml(1.2 eq)のトルエン‐アセトニトリル(85‐15) 37 ml溶液を滴下し、そのまま15分撹拌した。−45℃冷却撹拌下、実施例2で得た6(純度:78.6%, 0.107 mol)のトルエン‐アセトニトリル(85‐15) 95 ml溶液を−40℃以下で滴下し、そのまま1.5時間撹拌した。さらに同温度でヨウ化メチル 8.67 ml(1.2 eq)を滴下し、1.5時間撹拌した後、ジフェニルリン酸クロライド 30.22 g(1.05 eq)のトルエン‐アセトニトリル(85‐15) 27 ml溶液を滴下、氷冷し2時間40分撹拌した。これに重曹 13.5 g(1.5 eq)の水270 ml溶液を加え、分液。トルエン層は水 270 ml、飽和食塩水 270 mlで順次洗浄、水層はトルエン 160 mlで抽出、トルエン層を合わせ、減圧濃縮し、7のアメ状残渣 92.70 g(定量値:53.36 g, 収率:87%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): 0.12 ( 9H, s ), 1.19 ( 3H, d, J=7.2 Hz ), 1.25 ( 3H, d, J=6.0 Hz ), 3.25 ( 1H, dd, J=3.0, 6.9 Hz ), 3.46 ( 1H, m ), 4.11 ( 1H, dd, J=3.0, 9.9 Hz ), 4.19 ( 1H, qu, J=6.6 Hz ), 4.66 ( 1H, m ), 5.29 ( 2H, m ), 5.87 ( 1H, m ), 7.31 ( 15H, m ) ppm

実施例4(7→9)
実施例3で得られた化合物7を、特開平5−294970の実施例13に記載の方法に準じて、2位側鎖形成用の縮合反応に付して化合物8を合成し、さらに脱保護反応に付すことにより、化合物9(ドリペネム)を得る。
【0016】
実施例5
実施例1の方法に準じて、化合物4のフリー体に、ジイソプロピルアミン以外の前記の各種アミンを反応させることにより、対応するアミン塩を得た。ジシクロヘキシルアミン塩、メチルアミン塩、エチルアミン塩、イソプロピルアミン塩、t−ブチルアミン塩、および(−)−α−メチルベンジルアミン塩は結晶として得られた。特にジシクロヘキシルアミン塩、メチルアミン塩、t−ブチルアミン塩、および(−)−α−メチルベンジルアミン塩は良好な結晶性を示した。粉末X線回折パターンを図2〜5に示し、主なピークの回折角を以下に示す。
ジシクロヘキシルアミン塩
2θ=8.5, 15.0, 18.1, 19.3, 21.7, 22.6, 24.5 度
メチルアミン塩
2θ=9.5, 11.3, 17.6, 18.0, 21.6, 22.3, 23.8, 26.0, 30.5、33.6 度
t−ブチルアミン塩
2θ=6.7, 8.1, 9.7, 13.3, 16.2, 17.7, 19.3, 20.0, 22.7 度
(−)−α−メチルベンジルアミン塩
2θ=7.2, 17.1, 17.4, 18.0, 18.3, 20.6, 22.5, 25.1, 26.6, 27.3度

実施例6
実施例5で得られた各種アミン塩を原料にして、実施例2〜4の方法に準じて化合物9を得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1で得られたジイソプロピルアミン塩結晶の粉末X線回折パターンとそのピーク値である。縦軸は強度(単位:cps)、横軸は回折角度(2θ、単位:度)を示す。
【図2】実施例5で得られたジシクロヘキシルアミン塩結晶の粉末X線回折パターンとそのピーク値である。
【図3】実施例5でメチルアミン塩結晶の粉末X線回折パターンとそのピーク値である。
【図4】実施例5でt−ブチルアミン塩結晶の粉末X線回折パターンとそのピーク値である。
【図5】実施例5で(−)−α−メチルベンジルアミン塩結晶の粉末X線回折パターンとそのピーク値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

で示される化合物(I)またはそのアミン塩。
【請求項2】
アミンが1級アミンまたは2級アミンである、請求項1記載のアミン塩。
【請求項3】
アミンが、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、(−)−α−メチルベンジルアミン、ジイソプロピルアミン、またはジシクロヘキシルアミンである、請求項1記載のアミン塩。
【請求項4】
ジイソプロピルアミン塩である、請求項1記載のアミン塩。
【請求項5】
結晶である、請求項1〜4のいずれかに記載のアミン塩。
【請求項6】
粉末X線回折パターンにおいて、2θ=8.7, 9.7, 15.7, 22.4度に主ピークを示す結晶である、請求項4記載のジイソプロピルアミン塩。
【請求項7】
以下の反応スキーム:
【化2】

(式中、R1はヒドロキシ保護基;R2はカルボキシ保護基;Xはハロゲン)で示され、以下の工程:
(第1工程)化合物(II)のカルボキシを保護して化合物(III)を製造する工程、
(第2工程)化合物(III)を化合物(IV)と反応させて化合物(V)を製造する工程、および
(第3工程)化合物(V)を脱保護反応に付した後、所望によりアミンと反応させる工程、
を包含することを特徴とする、請求項1記載の化合物(I)またはそのアミン塩の製造方法。
【請求項8】
1はアルキルシリルおよび/またはR2はアルコキシアルキルである、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
1はt−ブチルジメチルシリルおよび/またはR2は1−イソブトキシエチルである、請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物(I)またはそのアミン塩のカルボキシ部分を活性エステル化、活性酸無水物化、チオールエステル化、アリールエステル化またはヘテロアリールエステル化する工程を包含する、式:
【化3】

(式中、COZは、カルボキシル基の活性エステルもしくは活性酸無水物、保護基で保護されたチオールカルボキシル基、置換アリールオキシカルボニル基、またはヘテロアリールオキシカルボニル基)で示される化合物(VI)の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物(I)またはそのアミン塩のカルボキシ部分を、縮合剤存在下、チオールエステル化することにより、COZがCOSPh(Phはフェニル)である化合物(VI)を製造する、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
縮合剤が、Ph2P(O)Cl、(PhO)2P(O)Cl(Phはフェニル)または2-クロロ-4,6-ジメトキシトリアジンである、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法により化合物(VI)を製造した後、これをヒドロキシの保護反応に付すことにより、式:
【化4】

(式中、COZは、カルボキシル基の活性エステルもしくは活性酸無水物、チオールカルボキシル基の保護基で保護されたチオールカルボキシル基、置換アリールオキシカルボニル基、またはヘテロアリールオキシカルボニル基;R3はヒドロキシ保護基)で示される化合物(VII)を製造した後、これを塩基で処理し、さらに水酸基の活性エステル化剤で処理する工程を包含する、式:
【化5】

(式中、R3はヒドロキシ保護基;Lはエステル化されたヒドロキシ基)で示される化合物(VIII)の製造方法。
【請求項14】
3はアルキルシリル、Zは−SPh、および/またはLは−OP(O)(OPh)2(Phはフェニル)である、請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法により化合物(VIII)を製造した後、式:R4−SH(R4はカルバペネム誘導体の2位に結合し得るチオエーテル型側鎖の残基)で示される化合物(IX)またはその塩と反応させ、得られた化合物を脱保護する工程を包含する、式
【化6】

(式中、R4は前記と同意義)で示される化合物(X)、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−44847(P2008−44847A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317592(P2004−317592)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】