説明

カルバメートを用いる赤血球のための多機能試薬及びその適用

【課題】より迅速かつより完全な作用を伴う赤血球のための新規試薬及び溶解法を提供すること。
【解決手段】赤血球のための多機能試薬であって、サイトメーター又は自動計数装置により検出及び計数できるような赤血球の溶解又は球状化を形成するのに十分な量の、カルバメート、又は、赤血球によるCOの吸収と組み合わせてカーボネート及び窒素化ヘテロ環もしくはアンモニウムイオンからの赤血球によるカルバメートの形成を誘導する剤、を含むことを特徴とする多機能試薬、赤血球を溶解又は球状化するための方法、および、白血球の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理、特に赤血球の溶解のための新規試薬及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤血球は、白血球より約1000倍多数であり、それらは血液の白血球画分の分析の障壁となる溶解剤での血液の処理はそれらの含有物の赤血球を空にし、その分析からこれらの細胞を単離することを可能にする。理想的な溶解法は、白血球の形態及び生存能にわずかな効果も与えることなく、全ての赤血球要素の完全な溶解を行うことを含む。
【0003】
多数の溶解試薬及び方法の中で低浸透圧溶解が知られているが、白血球の変形が観察される。
【0004】
界面活性剤も知られているが、これらは白血球の膜を悪化させ、それゆえ誤ってカウントされる。
【0005】
小さな中性の、一般に脂溶性の分子、例えばアルコール又はアルデヒドも用いられるが、これらは白血球に毒性である欠点を有する。
【0006】
実際、アミンを含む試薬は理想的な溶解過程に近い能力価値を有する。アミンを含む溶解試薬は、その使用が広範囲にわたる塩化アンモニウム試薬、及びFR−A−2778413に記載されるような窒素化ヘテロ環に基づく試薬を含む。塩化アンモニウムを伴う溶解試薬は155mMのNHCl,10mMのKHCOを含み、時折、0.1mMのEDTAも含む。
【0007】
しかしながら、FR−A−2778413に記載されるように、塩化アンモニウム溶解試薬は迅速かつ完全な溶解効果を有するので、それは白血球に毒性効果を有する。塩化アンモニウムの非特異的毒性の問題はおそらく、溶解混合物中の約1mMのアンモニア濃度の存在に関連している。約10μMの遊離塩基濃度でのより強い塩基、例えばピロリジン及びピペリジンの使用は非特異的毒性の問題を解決するが、よりゆっくりとした溶解反応を与え、これは慣用的な研究での使用についての欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、より迅速かつより完全な作用を伴う赤血球のための利用できる新しい試薬及び溶解方法を有することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
多くの調査の後、出願人は驚くことに、溶解試薬、特にカルバメートの、及び/又は赤血球によるCOの吸収の間のカルバメートの形成に関連する2つの反応である反応:
【0010】
【化2】

【0011】
及び/又は反応:
【0012】
【化3】

【0013】
の触媒の存在下でのアミンを含有する試薬が、これらの試薬の欠如下での赤血球のより迅速かつより完全な溶解をもたらすことを発見した。
【0014】
溶解の速度への溶解試薬中のカルバメートの存在の影響は以下の実験部に示す。
【0015】
これは、本願の対象が、赤血球のための多機能試薬であって、サイトメーター又は自動計数装置により検出及び計数できるような赤血球の溶解又は球状化を形成するのに十分な量の、
−窒素化ヘテロ環もしくはハライド、例えば塩化アンモニウムのカルバメート、
又は
−赤血球によるCOの吸収と組み合わせてカーボネート及び窒素化ヘテロ環もしくはアンモニウムイオンからの赤血球によるカルバメートの形成を誘導する剤
を含むことを特徴とする多機能試薬であるからである。
【0016】
本発明による多機能試薬は、赤血球の有効な溶解、又は必要に応じてそれらの単純な球状化の生産を許容する。
【0017】
本発明を行うための有利な条件においてカルバメートは、0.000001M〜0.1M、特に0.00001M〜0.1M、特に0.0001M〜0.005Mのモル濃度で用いることができる。上述の溶解試薬の操作のための完全に有利な条件において、0.0004Mの濃度が用いられる。
【0018】
本発明を行うための他の有利な条件において、赤血球によるCOの吸収と組み合わせてカーボネート又はアミン塩基からの赤血球によるカルバメートの形成を誘導する剤は、反応
【0019】
【化4】

【0020】
の触媒剤、例えば炭酸脱水酵素、例えば炭酸脱水酵素I又は炭酸脱水酵素IIである。その酵素は多様な等電点を有し得、それらの起源として多様なソースを有し得る。その酵素の能力はWilbur−Anderson単位で表される。炭酸脱水酵素は、1W−A U/リッター〜1,000,000W−A U/リッター、特に10W−A U/リッター〜500,000W−A U/リッター、特に100W−A U/リッター〜100,000W−A U/リッターの濃度で存在し得る。上述の溶解試薬の操作のための完全に有利な条件において、約50,000W−A U/リッターの濃度が用いられる。
【0021】
本願及び以下において、カルバメートを部分的に構成する窒素化へテロ環は、例えば2環及び好ましくは単環であり得る。それは不飽和であり得、この場合、例えば5、好ましくは4、特に3、特に2の二重結合を含み、それは好ましくは飽和されている。それは、例えば、3〜8、特に3〜6、特に3〜5、特に4又は5の炭素原子を含む。それは、2、特に1の1つの窒素原子を含む。
【0022】
飽和窒素化ヘテロ環としては、例えばピラゾリジン、イミダゾリジン、イミダゾリン及びピペラジン、特にモルホリン及び特にピペリジン又はピロリジンを言及することができる。
【0023】
本発明を行うための他の有利な条件において、赤血球のための多機能試薬は、更に、窒素化ヘテロ環又はアンモニウム塩、例えばクロライドのようなハライドを含む。
【0024】
窒素化ヘテロ環は上述のもののうちの1つであり得る。
【0025】
本発明による多機能試薬において、窒素化ヘテロ環は、0.01〜0.250M、特に0.08〜0.19M、特に0.12〜0.18Mのモル濃度で存在し得る。上述の多機能試薬の操作のための全体的に有利な条件において、0.17Mの濃度が用いられる。
【0026】
赤血球溶解の間に反応媒体(多機能試薬+血液サンプル)に関する化合物の濃度は、好ましくは0.01〜0.225M、特に0.072〜0.17M、特に0.11〜0.17Mである。
【0027】
炭酸脱水酵素を用いる本発明による多機能試薬において、カーボネート又は炭酸水素塩は、血清が天然にそれらを含むので、一緒に分散させることができる。本発明を行うための他の有利な条件において、例えば溶解を加速させるために、赤血球のための多機能試薬は更に、カーボネート又は炭酸水素塩を含む。
【0028】
例えば炭酸ナトリウムもしくはカリウム又は炭酸水素塩を言及することができる。
【0029】
本発明による多機能試薬において、カーボネート又は炭酸水素塩は、0.1Mのモル濃度まで、特に0.01Mまで、特に0.005Mまでで存在し得る。上述の多機能試薬の操作のための極めて有利な条件において、0.0025Mの濃度が用いられる。
【0030】
赤血球溶解のための反応媒体(多機能試薬+血液サンプル)に関する化合物の濃度は、好ましくは0.0001〜0.1M、特に0.001〜0.01M、特に0.001〜0.005Mである。
【0031】
本発明を行うための他の有利な条件において、赤血球のための多機能試薬は、更に、白血球の劣化に対する保護剤、例えば固定剤、特に脂肪族アルデヒド、例えばC−Cのもの、例えばパラホルムアルデヒド及び特にホルムアルデヒドを含む。
【0032】
脂肪族アルデヒドは0.01%〜5%、特に0.14%〜1%、特に0.1%〜0.5%の濃度で存在し得る。
【0033】
本発明を行うためのなお更に有利な条件において、本発明の多機能試薬は、有効量の抗凝固剤も含む。
【0034】
ヘパリン、特にシトレートイオン、EGTA及び特にEDTAを、例えば抗凝固剤として言及することができる。
【0035】
溶解の間及び後に中性pHで緩衝液なしでのその混合物のpHは増加する傾向にあり、これにより細胞分解を誘発する。それゆえほぼ中性のpHの緩衝液の使用が要求される。緩衝液が溶解を阻害する傾向があるという事実にかかわらず、触媒、例えば炭酸脱水酵素の加速効果のおかげで、少量の緩衝液(例えば1〜20mM)を用いることができる。本発明によるカルバメートの使用はほぼ中性のpHの緩衝液の使用を許容する。
【0036】
これは、本発明を行うための他の有利な条件において、本発明の多機能試薬は有効量の緩衝剤、特にpH6.5〜7.5のものも含むからである。例えば、緩衝剤として、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、特にMOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)及び特にHEPES(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸))及び特に緩衝剤DIPSOpH7.5を言及することができる。
【0037】
本発明による多機能試薬において、緩衝剤は、0.0001〜0.050M、特に0.0005〜0.03M、特に0.001〜0.010Mのモル濃度で存在し得る。
【0038】
固定剤なしでの上述の多機能試薬の形成のための有利な条件において、0.17Mのピロリジンヒドロクロライド、2.5mMの炭酸水素カリウム、3mMのDIPSO緩衝液pH7.5、10mg/Lの炭酸脱水酵素及び0.1mMのEDTAが用いられる。
【0039】
固定剤を伴う上述の多機能試薬の形成のための極めて有利な条件において、0.3%のホルムアルデヒドも用いられる。
【0040】
上述のように、反応:
【0041】
【化5】

【0042】
の触媒剤、例えば炭酸脱水酵素は、赤血球によるCOの吸収と組み合わせて、カーボネート又はアミン塩基からの赤血球によるカルバメートの形成を誘導する窒素化ヘテロ環のカルバメートは、赤血球の溶解を行うために直接、用いることもできる。これらのいくつかは新規生成物である。
【0043】
これは、本発明の対象が、
−ピロリジンカルバメート
−ピペリジンカルバメート
から選択されるカルバメートでもあるからである。
【0044】
本発明の対象である試薬は、極めて有利な特性を有する。それらは、赤血球に関して溶解性である顕著な特性を有する。
【0045】
これらの特性は、以下の実験部に詳述される。それらは赤血球の溶解又は球状化のための方法において上述の試薬の使用を正当化する。赤血球の溶解は、白血球及びそれらの副次集団、血小板、溶解後の赤血球残留物、又はいずれかの他の細胞性の又は懸濁された、添加された又はそうでない要素、例えば小球体のフローサイトメーターを用いる分析及び/又はトリアージを許容する。
【0046】
それらは、白血球の調製のための方法において、上述の試薬の使用を正当化する。
【0047】
それゆえ、本発明の対象は、赤血球の溶解の方法であって、抗凝固剤、例えばEDTA,EGTA、ヘパリン又はクエン酸イオンで処理した全血のサンプルを上述の溶解試薬の作用にかけて、30分未満で赤血球の少なくとも95%の溶解を行う方法でもある。
【0048】
白血球細胞のラベリングを行うために、モノクローナル抗体の欠如又は存在下で作業を行うことが可能である。これらの抗体は、蛍光化合物、例えば後述のものに結合させてもさせなくてもよい。操作の有利な条件において、これらの抗体は蛍光化合物に結合される。
【0049】
上述の多機能試薬は次の通り用いることができる:
抗凝固剤で処理し、モノクローナル抗体で、もしくは蛍光マーカーと組み合わせてモノクローナル抗体で、又は蛍光マーカーと組み合わせたモノクローナル抗体の混合物で処理した血液の0.1mLのサンプルを上述の2mLの多機能試薬に接触させ、溶解を終える間の10分間、放置した。このようなマーカーは、例えばCD45−FITC(フルオレセインイソチオシアネートと組み合わせたCD45)又はフイコエソトリンと組み合わせたCD14であり、例えばDAKO,BECTON and DICKINSON又はBECKMAN COULTER社により市販される。次に、例えばBECTON and DICKINSON Facscan又はBECKMAN COULTER XLタイプのサイトメーターの読み取りを、溶解直後又はその後3日までに行う。
【0050】
本発明による溶解の方法を行うための有利な条件において、多機能試薬のための上述の有利な条件が選択される。
【0051】
本発明により包含される溶解のシステムは、浸透剤、例えば脂肪族アルコール又は界面活性剤の存在下でも用いることができる。触媒、例えば炭酸脱水酵素又はカルバメートを含む細胞内免疫標識化を許容する浸透触媒も本発明の一部である。このような溶解及び浸透段階は、任意に脂肪族アルデヒドによる固定化の後に行うことができる。
【0052】
上述の方法を行うための有利な条件において全血のサンプルは10分未満で赤血球の少なくとも95%の溶解を行うのに十分な量の試薬に接触させる。
【0053】
上述の方法を行うための他の有利な条件において試薬及びサンプルの混合物のpHは4〜9である。
【0054】
しかしながら、本発明により多機能試薬は、赤血球の単純な球状化の生産も許容する。
【0055】
これは、本発明の対象が赤血球の球状化の方法であって、抗凝固剤で処理した全血のサンプルを、自動計数装置によるそれらの分析を許容するように、赤血球の球状化(膨潤)を誘発するのに十分な量の上述の試薬に接触させることを特徴とする方法でもあるからである。
【0056】
赤血球の球状化のための有利な条件において血液のサンプルは10秒〜400秒の間隔で球状化を行うのに十分な球状化試薬の量に接触させる。時間間隔での赤血球の溶解を避けるため及び球状化の速度を制御するため、本発明による多機能試薬は好ましくは等張溶液に希釈させることができる。同量の0〜10倍、好ましくは0.5〜5倍、特に1〜3倍の希釈剤を例えば加えることができる。特に有利な条件において、等張溶液の選択は、Beckman CoulterからのIso Flow(登録商標)であり、それは、NaCl:7.92g/L,KCl:0.4g/L,NaHPO:0.19g/L,NaHPO:1.95g/L,EDTA:0.38g/L,2−フェノキシエタノール:3g/L、及びNaF:0.3g/Lを含む。
【0057】
他の有利な条件において、1又は複数のアジュバント、例えば固定化剤、核酸の着色剤、及び/又はイソフフィアリング(isosphering)剤、例えばマルトンド(D.H.Tycko,US−A−5194909)が球状化試薬に添加される。
【0058】
先に見られるように、本発明の多機能試薬は、白血球について攻撃的でなく、それゆえそれらの調製に関して用いることができる。それゆえ、本発明により包含される溶解システムは、生存可能な白血球細胞の調製のための道具でもあり、Ficoll−Hypaqueに基づく細胞調製の技術におきかわることができる。血液、骨髄及びいずれかの他の体液の溶解後の生存可能細胞の調製は、例えば機能的細胞テストのための調査、細胞の凍結及び保存等の目的のための適用を有する。細胞生存能の制御が考慮される限り、その溶解法は、生存能着色剤、例えばエオシン、ブルートリプタン、7−AAD,LDS751等と一緒に用いられる。最後に、本出願人の研究による溶解は赤血球がCOを吸収する能力の関数であるので、溶解のシステムは、赤血球の機能的パラメーターとして用いることができる。
【0059】
これは、本発明の対象が白血球の調製のための方法であって、上述のような多機能試薬を用いる赤血球の溶解の段階を含むことを特徴とする方法でもあるからである。
上述の方法を行うための有利な条件は上述の本発明の他の対象にも適用される。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)赤血球のための多機能試薬であって、サイトメーター又は自動計数装置により検出することができるような赤血球の溶解又は赤血球の球状化を形成するのに十分な量の、カルバメート、又は赤血球によるCOの吸収と組み合わせてカーボネート及び窒素化ヘテロ環もしくはアンモニウムイオンからの赤血球によるカルバメートの形成を誘導する剤を含むことを特徴とする多機能試薬。
(項目2)前記赤血球によるCOの吸収と組み合わせてカーボネート又はアミン塩基からの赤血球によるカルバメートの形成を誘導する剤が、反応:
【化1】

の触媒剤、例えば炭酸脱水酵素であることを特徴とする項目1に記載の赤血球のための多機能試薬。
(項目3)窒素化ヘテロ環又はアンモニウム塩も含むことを特徴とする項目1又は2に記載の赤血球のための多機能試薬。
(項目4)カーボネート又は炭酸水素塩も含むことを特徴とする項目1〜3のいずれか一に記載の赤血球のための多機能試薬。
(項目5)白血球の劣化に対して保護する剤、例えば脂肪族アルデヒドも含むことを特徴とする項目1〜4のいずれか一に記載の赤血球のための多機能試薬。
(項目6)ピロリジンカルバメート、
ピペリジンカルバメート
から選択されるカルバメート。
(項目7)赤血球の溶解又は球状化のための方法であって、抗凝固剤で処理した全血のサンプルを、30分未満で赤血球の少なくとも95%の溶解を導くか、又は自動計数装置による分析を許容するように球状化を誘発するのに十分な量の、項目1〜5のいずれか一に記載の試薬に接触させることを特徴とする方法。
(項目8)全血のサンプルを30分未満で赤血球の少なくとも95%の溶解を導くのに十分な量の試薬に接触させることを特徴とする項目7に記載の方法。
(項目9)前記試薬及び前記サンプルの混合物のpHが4〜9であることを特徴とする項目7又は8に記載の方法。
(項目10)赤血球の球状化のための方法であって、抗凝固剤で処理した全血のサンプルを、自動計数装置による分析を許容するように球状化を誘発するのに十分な量の、項目1〜5のいずれか一に記載の試薬に接触させることを特徴とする方法。
(項目11)白血球の調製のための方法であって、項目1〜5のいずれか一に記載の多機能試薬を用いる、赤血球の溶解の段階を含むことを特徴とする方法。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1による溶解後のフローサイトメトリー(BECKMAN COULTER XL)を用いて分析した血液サンプルのサイズ−構造拡散ダイアグラムを示す。領域Aはリンパ球に相当し、領域Bは単球に相当し、そして領域Cは顆粒球に相当する。
【図2】実施例6による球状化後のフローサイトメトリー(BECKMAN COULTER XL)を用いて分析した血液サンプルのサイズ−構造拡散ダイアグラムを示す。実施例6に記載される球状化剤との赤血球の接触後の、赤血球のサイズ−構造の存在を100秒の4間隔で示す(図2(A))。経時的に生じる赤血球の球状化及び均質化をサイズ−構造ダイアグラムに示す;図2(B),100秒後;図2(C),200秒後;図2(D),300秒後;図2(E),400秒後。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は本願を詳述する。
【0062】
実施例1:
以下の組成を有する赤血球のための多機能試薬を調製した:
ピロリジンクロライド 170mM
炭酸水素カリウム 2.5mM
DIPSO緩衝液 pH7.5 3mM
ウシ炭酸脱水酵素(SIGMA) 10mg/L
(50000W−Aユニット)
EDTA 0.1mM
pH7.3
実施例2:
以下の組成を有する赤血球のための多機能試薬を調製した:
ピロリジンクロライド 170mM
炭酸水素カリウム 2.5mM
DIPSO緩衝液 pH7.5 3mM
ウシ炭酸脱水酵素(SIGMA) 10mg/L
(50000W−Aユニット)
EDTA 0.1mM
ホルムアルデヒド 0.1%
pH7.3
実施例3:
以下の組成を有する赤血球のための多機能試薬を調製した:
ピペリジンクロライド 170mM
炭酸水素カリウム 2.5mM
DIPSO緩衝液 pH7.5 3mM
ウシ炭酸脱水酵素(SIGMA) 10mg/L
(50000W−Aユニット)
EDTA 0.1mM
pH7.3
実施例4:
以下の組成を有する赤血球のための多機能試薬を調製した:
塩化アンモニウム 155mM
炭酸水素カリウム 2.5mM
DIPSO緩衝液 pH7.5 3mM
ウシ炭酸脱水酵素(SIGMA) 10mg/L
(50000W−Aユニット)
EDTA 0.1mM
pH7.3
実施例5:溶解の能力
全血100μLを実施例1の溶解剤1mLと混合する。その溶液を環境温度で10分、放置し、白血球をサイトメトリーにより計数する。
【0063】
実施例6〜8:ピロリジン、ピペリジン及びモルホリンカルバメートの調製
重炭酸ナトリウム及び所定量の各々の化合物の混合物(モル比1:2)を撹拌しながら100℃に加熱した。その反応は、約1時間後におこる混合物の固体化を特徴とする。求めるカルバメートをメタノールでの抽出後に回収した。これらの合成した化合物の分子構造を200MHzでNMR分光測定13Cにより確認した。
【0064】
これらの分析(ジエーテリオメタノール)は以下の化学シフトを得るのを可能にする(δ:ppm):
1/ピロリジンカルバメート:26.44;27.24;47.32;47.63(CH;165.02(C=O)
2/ピペリジンカルバメート:25.69;26.58;27.39;28.71;47.65(CH;162.76(C=O)
3/モルホリンカルバメート:47.14;68.42(CH;162.81(C=O)
実施例9:球状化剤の調製
球状化剤を、実施例1により試薬及びBECKMAN COULTERにより市販される等張組成物、所定容量のIsoflow(登録商標)を混合することにより調製した。
【0065】
実施例10:球状化後のサイトメトリー
4マイクロリッターの容量の血液を1mLの実施例9の球状化剤に接触させた。球状化の過程を、BECKMAN COULTEP XLサイトメーターで時間の関数としてサイトメトリーにより追跡した。結果を上述の図2に示す。
【0066】
実験1:
KHCO(10mM)の存在下又は各々のカルバメート誘導体(0.4mM)の存在下でのアンモニウムイオンによる及び窒素化ヘテロ環による溶解の速度を研究した。抗凝固剤(EDTA)で処理した0.1mLの容量の全血のために2mLの容量の試薬を用いた。pHのバリエーションは、カルバメートの添加前にHClの1M水溶液を加えることにより得た。カルバメート(メタノール中100mM)を反応の開始時にその混合物に加えた。その反応混合物のpHを測定した。その溶解過程を、分光光度測定(700nmでの光学密度の測定)により追跡した。その溶解時間は、最小レベルを得るために必要な時間により決定する。
【0067】
得られた結果は次の通りである:
【0068】
【表1】

【0069】
結論:アンモニウムイオンへ及び窒素化ヘテロ環への異なるカルバメートの添加は、カルバメートの濃度の25倍の濃度で炭酸水素塩を加えることにより得られるよりかなり速い速度の溶解を誘導するのが見られよう。表に示すように、カルバメートの溶解効果はpHに依存しない。
【0070】
実験2:
反応:
【0071】
【化6】

【0072】
における炭酸脱水酵素の触媒の役割の証明。
【0073】
反応:
【0074】
【化7】

【0075】
を、カルバメートでなくカーボネートが沈殿する85%のアセトンの水溶液中の溶解度の差により測定して、アンモニウムカルバメートのアンモニウムカーボネートへの変換を介して研究した。
【0076】
【表2】

【0077】
結論:結果は、炭酸脱水酵素は、公知である変換:
【0078】
【化8】

【0079】
を触媒することに加えて、変換:
【0080】
【化9】

【0081】
も触媒することを示す。
【0082】
実験3:
異なるソースから得られた炭酸脱水酵素の溶解の速度への効果の証明
実施例1による溶解反応において、50,000W−A U/Iでの成分炭酸脱水酵素を各々5000W−A U/Iで表に示すような炭酸脱水酵素の調製物に置きかえた。その溶解過程を分光光度測定(700nmでのODの測定)により追跡した。溶解の持続時間を、最小レベルを達成するのに必要な時間により決定する。
【0083】
【表3】

【0084】
結論:炭酸脱水酵素の異なる調製物は全て溶解の速度を増加させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローサイトメトリーを用いて白血球を分析する方法であって、該方法は、以下:
(a)全血サンプルを、炭酸脱水酵素と、アンモニウム塩またはヘテロ環アミンもしくはその塩とを含む溶解試薬と混合して、混合物を形成する工程;
(b)該混合物中の白血球を保持し、かつ、該白血球の形態および生存能を維持しつつ、赤血球を溶解するのに十分な所定の時間にわたり該混合物をインキュベートする工程;ならびに
(c)該混合物中の該白血球をフロサイトメーター上で分析する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
フローサイトメトリーを用いて白血球を分析する方法であって、該方法は、以下:
(a)全血サンプルを、アンモニウム塩またはヘテロ環アミンもしくはその塩と、赤血球の存在下でカルバメートの形成を誘導可能な触媒剤とを含む溶解試薬と混合して、混合物を形成する工程;
(b)所定の時間にわたり該混合物をインキュベートする工程であって、ここで、該触媒剤が、該混合物中のカルバメートの形成を誘導し、それによって、該混合物中の白血球を保持し、かつ、該白血球の形態および生存能を維持しつつ、赤血球の十分な溶解を引き起こす、工程;ならびに
(c)該混合物中の該白血球をフローサイトメーター上で分析する工程
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−174947(P2011−174947A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−129354(P2011−129354)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【分割の表示】特願2001−279304(P2001−279304)の分割
【原出願日】平成13年9月14日(2001.9.14)
【出願人】(591069237)
【Fターム(参考)】