説明

カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法

【課題】カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法において、操業性の向上、ならびに製造プロセスおよび製造機器の削減を可能とし、設備費の低減および製造コストの低減を図ること。
【解決手段】少なくとも凝固ゾーン100が形成されたバレル3の内部にスクリューが回転駆動自在に配置されている押出機1であって、スクリューの凝固ゾーン100に対応する領域の長さL1(mm)、凝固用スクリューブロックの外径Da(mm)、前記凝固用スクリューブロックの谷部の短径Di(mm)がL1/Da=4〜40、Da/Di=1.2〜2.5であり、スクリューの凝固ゾーン100に対応する領域に、凝固用ニーディングディスクが、長さL1に対して5〜30%の割合で形成された押出機1を用いた、カルボキシル基含有ニトリルゴムラテックスからのカルボキシル基含有ニトリルゴムを回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乳化重合で得られた重合体のラテックスから重合体を回収するには、まず凝固タンク内の重合体のラテックスに、たとえば酸あるいは無機塩の水溶液などの凝固剤を加え、撹拌しながらラテックスを凝固させ、次いでこの凝固操作で得られた重合体クラムを、たとえば遠心脱水機やスクイザーなどの脱水装置に導入して脱水した後、たとえばバンド乾燥機、気流乾燥機または押出乾燥機などの乾燥装置に導入して乾燥することにより行われている。なお、乾燥装置の下流側には、通常ペレタイザーあるいはベーラーマシーンが接続してあり、乾燥後の重合体は最終的にはペレット状、ベール状またはシート状に加工されて製品化されることが多い。
【0003】
しかしながら、重合体のラテックスから重合体を回収するために、これらの脱水・乾燥装置を利用したのでは、工程が多くなるほか、凝固タンクおよび付帯設備の装置コストが高くなり、しかも設置スペースが増大することからも問題が多い。
【0004】
このような問題を解決するために、たとえば特許文献1では、重合体のラテックスと凝固剤とを直接、スクリュー押出機の内部に供給し、押出機の内部で凝固・脱水・乾燥を行う方法が試みられている。しかしながら、この文献記載の方法では、凝固がスクリューの溝中で行われるため凝固される重合体の形状が小さく、脱水スリットから水と共に流出してしまい、重合体の回収率が著しく低下してしまうという欠点があった。
【0005】
このような欠点を補うために、たとえば、特許文献2では、凝固ゾーンに形成されたスクリューブロックの軸方向の長さをL1(mm)、スクリューブの谷の数をn(個)とし、スクリューの外径をD(mm)とした場合に、L1/(D×n)で求められる凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを0.5以下とした押出機を用いる方法が提案されている。しかしながら、この文献に開示されている方法では、重合体の種類によっては、押出機内で重合体自体が発熱し、物性が悪化してしまう等の不具合が発生してしまい、ゴム状重合体の回収を良好に行うことができない場合があった。
【0006】
【特許文献1】特開昭57−1742号公報
【特許文献2】特開2003−160611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させ、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法において、操業性の向上、ならびに製造プロセスおよび製造機器の削減を可能とし、設備費の低減および製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、押出機を用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからカルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する際に、押出機のバレル内部に形成される凝固ゾーンに対応する領域のスクリューの長さと凝固用スクリューブロックの外径との比、凝固用スクリューブロックの外径と谷部の短径との比、および、ニーディングディスク(kneading disk)の比率を制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、少なくとも凝固ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置されている押出機を用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからカルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法であって、
前記スクリューが、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックおよび凝固用ニーディングディスクを有しており、
前記スクリューの凝固ゾーンに対応する領域の長さをL1(mm)、前記凝固用スクリューブロックの外径をDa(mm)、前記凝固用スクリューブロックの谷部の短径をDi(mm)とした場合に、L1/Daが4〜40の範囲、Da/Diが1.2〜2.5の範囲であり、
前記スクリューには、前記凝固用ニーディングディスクが、前記長さL1に対して5〜30%の割合で、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成されていることを特徴とするカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法が提供される。
【0010】
本発明においては、前記凝固ゾーンの内部温度を、30〜100℃とすることが好ましい。
本発明においては、前記バレルの内部に形成された凝固ゾーンの下流側には、排水ゾーン、洗浄・脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンが順次設けられていることが好ましい。
本発明においては、二軸噛合型で同方向回転型のスクリューを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、凝固ゾーンに対応する領域におけるスクリューの長さと凝固用スクリューブロックの外径との比、凝固用スクリューブロックの外径と谷部の短径との比、および、ニーディングディスクの比率を制御することにより、押出機による、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからのカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を可能とするものである。そして、押出機による、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからのカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収が可能となることにより、従来用いていた大型のタンクからなる凝固装置が不要となり、これにより、製造プロセスおよび製造機器の削減が可能となり、設備費の低減および製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
特に、従来の押出機(たとば、上述の特許文献1,2)を用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからカルボキシル基含有ニトリルゴムを回収しようとすると、押出機内でカルボキシル基含有ニトリルゴムが発熱してしまい物性が悪化してしまう等の不具合が発生したり、カルボキシル基含有ニトリルゴムのカルボキシル基の有する粘着性のために該ニトリルゴムを良好に回収することができない場合があるという問題があった。これに対して、本発明は、上記構成を採用することにより、このような問題を有効に解決するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス
まず、本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスについて説明する。
本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを構成するカルボキシル基含有ニトリルゴムとしては、特に限定されず、乳化重合で製造され、フリーのカルボキシル基(金属塩などで置換されていないカルボキシル基)を含有するニトリルゴム(不飽和ニトリル−共役ジエン共重合体ゴム)でも良いし、あるいは、これを水素化したものであっても良いが、特に、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を有するカルボキシル基含有ニトリルゴムが好ましい。
【0014】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋物とした場合に、耐油性が低下する場合があり、多すぎると、耐寒性が低下する場合がある。
【0015】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を構成するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、炭素数4〜11のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルが挙げられる。
【0016】
炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−不飽和ジカルボン酸としては、フマル酸またはマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げられる。
炭素数4〜11のα,β−不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;などが挙げられる。これらのなかでも、イタコン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチルおよびマレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。
【0017】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%である。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が、少なすぎると、架橋物とした場合における架橋が不十分となり、引裂強さおよび引張強さが低下する場合がある。一方、多すぎると疲労性が低下する可能性がある。
【0018】
カルボキシル基含有ニトリルゴムは、上記のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の他に、架橋物がゴム弾性を保有するために、通常、ジエンおよび/またはα−オレフィン単量体単位をも有する。
【0019】
ジエン単量体単位を構成するジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、共役ジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。α−オレフィン単量体単位を構成するα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数が2〜12のものであり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。ジエンおよび/またはα−オレフィン単量体単位の含有量は、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは35〜80重量%、さらに好ましくは45〜75重量%である。ジエンおよび/またはα−オレフィン単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋物とした場合に、ゴム弾性が低下する場合があり、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる場合がある。
【0020】
また、カルボキシル基含有ニトリルゴムは、上記各単量体と共重合可能な他の単量体の単位を有していてもよい。このような他の単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル、芳香族ビニル、フッ素含有ビニル、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物、共重合性老化防止剤などが挙げられる。これら他の単量体の単位の含有量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0021】
本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムにおけるカルボキシル基の含有量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム100g当たりのカルボキシル基のモル数で、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、さらに好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。カルボキシル基含有量が少なすぎると、架橋物とした場合における架橋が不十分となり、引裂強さおよび引張強さが低下する場合がある。一方、多すぎると疲労性が低下する可能性がある。
【0022】
本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムは、ムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕が、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜150、さらに好ましくは20〜100である。
【0023】
本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスは、たとえば重合反応装置等を用いて、従来公知(例えば、WO2007/049651A1記載の方法)の乳化重合法により、上記した単量体を共重合することにより調製することができる。また、必要に応じて、共重合して得られた共重合体のヨウ素価が、好ましくは120以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは25以下となるように、共重合体の水素化(水素添加反応)を行っても良い。
【0024】
カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法
次いで、上記のようにして得られるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法について、説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法に用いる押出機を示す概略図、図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図、図3は図2のスクリューの凝固ゾーンを構成する領域を説明するための一部破談概略図、図4は図1のIV−IV線と図2のIV−IV線に沿う断面図、図5は図1のV−V線と図2のV−V線に沿う断面図である。
【0025】
以下、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収装置として図1に示す押出機1を例示し、その構成を説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収装置としての押出機1は、駆動ユニット2、および分割された14個のバレルブロック31〜44で構成される単一のバレル3を有する。バレル3の内部には、凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄・脱水ゾーン104、および乾燥ゾーン106が、バレル3の上流側から下流側にかけて順次形成されている。
【0027】
凝固ゾーン100は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固剤を接触させて重合体を凝固させ、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムのスラリー液(クラムスラリー)を形成する領域である。排水ゾーン102は、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固後に生じる液体(セラム水)をクラムスラリーから分離し排出して含水状態のクラムを形成する領域である。洗浄・脱水ゾーン104は、含水状態のクラムを洗浄し、洗浄後のクラムから洗浄水を脱水して排出する領域である。乾燥ゾーン106は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
【0028】
本実施形態では、バレルブロック31〜33の内部が凝固ゾーン100に対応し、バレルブロック34の内部が排水ゾーン102に対応し、バレルブロック35〜38の内部が洗浄・脱水ゾーン104に対応し、バレルブロック39〜44の内部が乾燥ゾーン106に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、取り扱うカルボキシル基含有ニトリルゴムの組成等に応じて最適な数をもって実施することができ、本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0029】
凝固ゾーン100の一部を構成するバレルブロック31には、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固剤を受け入れるフィード口310が形成されている。排水ゾーン102を構成するバレルブロック34には凝固後のカルボキシル基含有ニトリルゴムの水スラリーから分離されたセラム水を排出する排出スリット340が形成されている。洗浄・脱水ゾーン104の一部を構成するバレルブロック36には、洗浄水を受け入れる洗浄水フィード口360が形成されており、バレルブロック37には洗浄排水を外部へ排出する排水スリット370が形成されている。乾燥ゾーン106の一部を構成するバレルブロック40,42,43には、脱気のためのベント口400,420,430が、それぞれ形成されている。
【0030】
バレル3の内部には、図2に示すようなスクリュー5が配置されている。スクリュー5の基端には、これを駆動するために、駆動ユニット2(図1参照)に格納されたモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー5は回転駆動自在に保持される。スクリュー5の形状は、特に限定されないが、好ましくは多種のスクリュー構成を持つスクリューブロックとニーディングディスクとを適宜組合せて構成することができる。
【0031】
本実施形態では、スクリュー5は、バレル3の内部に形成された上述した各ゾーン100,102,104,106に対応する領域に、それぞれ異なる態様のスクリュー構成を有する。
【0032】
図2に示すように、本実施形態では、スクリュー5の長さをL(mm)とし、スクリュー5の外径をDa(mm)とした場合に、L/Daは、好ましくは30〜100であり、より好ましくは40〜80である。なお、スクリュー5の外径Daは、スクリューを構成するスクリューブロック50の山部50A(図3参照)の、軸方向から見た場合における直径で定義される。また、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100を構成する領域の軸方向の長さをL1(mm)とした場合に、L1/Daは4〜40、好ましくは10〜30であり、より好ましくは10〜20である。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、スクリュー5のうち凝固ゾーン100に対応する領域を、凝固用スクリューブロック50と、凝固用ニーディングディスク52とからなる構成とする。ここで、図3に示すように、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100に対応する領域を、凝固用スクリューブロック50および凝固用ニーディングディスク52のみからなる構成とした場合には、長さL1(mm)は、凝固用スクリューブロック50および凝固用ニーディングディスク52の軸方向の長さの合計と同義となる。
【0034】
また、図4に示すように、本実施形態では、このようなスクリュー5を2本用いて、軸芯を平行にして互いに噛み合った状態とした二軸押出機としている。なお、図4に示す断面図は、押出機1の凝固用スクリューブロック50部分の断面図であって、谷部50Bを横切る断面図である。すなわち、図4に示すように、2本のスクリュー5,5は、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bに噛み合わせるとともに、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aに噛み合わせる状態とした二軸噛合型である。二軸噛合型とすることにより、凝固ゾーン100における混合性を向上させることができる。また、2本のスクリュー5の回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。
【0035】
図4に示すように、本実施形態では、凝固用スクリューブロック50の外径をDa(mm)、凝固用スクリューブロック50の谷部50Bの短径をDi(mm)とした場合に、凝固ゾーン100に対応する領域の長さL1と、Daと、Diとを次の関係とする。すなわち、L1/Daが4〜40の範囲であり、好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20である。また、Da/Diが1.2〜2.5の範囲、好ましくは1.4〜2.0、より好ましくは1.5〜1.8の範囲である。本実施形態においては、後述する凝固用ニーディングディスク52の占有割合を所定の範囲とし、かつ、凝固ゾーン100におけるL1、凝固用スクリューブロック50のDaおよびDiの関係を、上記範囲とすることにより、押出機1による、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからのカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を可能とすることができる。L1/Daおよび/またはDa/Diが小さ過ぎると回収率や生産レート(単位時間あたりに得られる乾燥されたカルボキシル基含有ニトリルゴムの量)が低下したり、詰まりが発生して回収できない場合がある。また、L1/Daおよび/またはDa/Diが大き過ぎると、設備が大がかりなものになったり、過剰な混練により、乾燥されたカルボキシル基含有ニトリルゴムの物性が悪化する。
【0036】
また、谷部50Bの短径Diは、図4に示すように、谷部50Bのうち、谷部50Bの深さが、最も深くなっている部分である深さDi’(mm)である部分における、軸方向から見た場合における径である。すなわち、谷部50Bの短径Diは、外径Da、および谷部50Bのうち深さが最も深い部分である深さDi’から、Di=Da−Di’×2により求めることができる。
【0037】
また、図3に示すように、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100に対応する領域は、凝固用スクリューブロック50の他、凝固用ニーディングディスク52を有する構成となっている。凝固ゾーン100に対応する領域に、凝固用ニーディングディスク52を導入することにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を促進させることができる。
【0038】
凝固用ニーディングディスク52は、その断面形状が擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの形状と、一定の厚みとを有し、その断面形状の対称軸を所定角度ずつずらしながら、複数枚積み重ね、かつスクリュー軸がその断面形状の回転中心軸と対応するように固定されて使用するものである。本実施形態では、図3および図5に示すように、凝固用ニーディングディスク52を擬似楕円形の断面形状を有するものとし、これらを45度ずつずらし、5枚重ねた態様としている。なお、図5に示す断面図は、押出機1の凝固用ニーディングディスク52部分における断面図である。
【0039】
ここで擬似楕円形とは楕円の長径の両端部を、小判形とは平行条の両端を、また切頂三角形とは正三角形の各頂点を含む部分を、それぞれの図形の回転中心を中心とする円弧でカットした形状を指す。いずれの形状の場合も、バレル3の内壁面3aに各該ディスクの端部が所定0.1〜5mm程度のクリアランス(間隙)を保持するように設けられる。小判形または切頂三角形の場合は、各辺を凹形として鼓形または三角糸巻形としても良い。
【0040】
スクリュー5において、凝固ゾーン100に対応する領域の軸方向の長さL1に対する凝固用ニーディングディスク52の占める割合は、5〜30%の範囲であり、好ましくは6〜30%、より好ましくは8〜20%の範囲である。本実施形態においては、凝固ゾーン100におけるL1、凝固用スクリューブロック50のDaおよびDiの関係を、上記した所定の範囲とすることに加え、凝固用ニーディングディスク52の割合をこのような範囲とすることにより、押出機1による、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからのカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を可能とすることができる。凝固用ニーディングディスク52の占める割合が多すぎると、送り量が不足し、バレル3内部で詰まりが発生し、少なすぎると凝固が不十分となり、いずれにしても、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収ができなくなる場合がある。
【0041】
また、凝固用ニーディングディスク52は、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を促進させるという観点より、1〜6枚程度連続させて配置することが好ましい。さらに、図3に示すように、凝固用ニーディングディスク52は、1〜3枚程度連続させて配置するとともに、これら連続して配置した凝固用ニーディングディスク52のグループ(図3においては、3つのグループ)を、複数箇所に分けて配置するような構成としてもよいし、あるいは、一カ所に固まって配置された構成としてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、スクリュー5の凝固ゾーン100に対応する領域における、谷50Bおよび52Bの合計数をnとした場合に、L1/(Da×n)で求められるピッチ指数Hが、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下である。スクリュー5の凝固ゾーン100に対応する領域における、谷の数は、スクリュー5を上から見てカウントしていけばよい。また、ニーディングディスク52の谷52Bの数をカウントする際には、位相をずらした板同士の間もカウントすることとする。
【0043】
また、排水ゾーン102、洗浄・脱水ゾーン104、および乾燥ゾーン106におけるスクリュー構成としては、特に限定されないが、たとえば、次のような構成とすることが好ましい。
【0044】
すなわち、排水ゾーン102においては、スクリュー5における、排水ゾーン102に対応する領域の軸方向の長さをL2(mm)とした場合に、L2/Daが、好ましくは2〜12であり、より好ましくは3〜6である。
【0045】
洗浄・脱水ゾーン104においては、スクリュー5における、洗浄・脱水ゾーン104に対応する領域の軸方向の長さをL3(mm)とした場合に、L3/Daが、好ましくは5〜30であり、より好ましくは10〜20である。また、L3に対する洗浄・脱水用ニーディングディスクの占める割合は、好ましくは5〜30%であり、より好ましくは10〜20%である。さらに、洗浄・脱水ゾーン104においては、スクリュー5に、逆送りスクリューが形成されていてもよい。L3に対する逆送りスクリューの占める割合は、好ましくは1〜20%であり、より好ましくは3〜15%である。洗浄・脱水ゾーン104をこのような構成とすることにより、脱水ゾーンから出てくるカルボキシル基含有ニトリルゴムの含水率が下がるため、乾燥ゾーンの負荷を低減できる。
【0046】
乾燥ゾーン106においては、スクリュー5における、乾燥ゾーン106に対応する領域の軸方向の長さをL4(mm)とした場合に、L4/Daが、好ましくは10〜50であり、より好ましくは20〜40である。また、L4に対する乾燥用ニーディングディスクの占める割合は、好ましくは1〜50%であり、より好ましくは2〜20%である。さらに、乾燥ゾーン106においては、スクリュー5に、逆送りスクリューが形成されていてもよい。L4に対する逆送りスクリューの占める割合は、好ましくは0〜20%であり、より好ましくは0〜10%である。乾燥ゾーン106をこのような構成とすることにより、発熱による物性の低下やポリマー分子鎖の切断を防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、上述したバレルブロック44の下流側には、バレル3内で凝固・脱水・乾燥処理されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを、所定形状に押し出し製品化するためのダイ4が接続され、例えばシート状に押出すことができる。
【0048】
次に、本実施形態に係る押出機1を用いたカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法を説明する。
まず、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを凝固剤とともにフィード口310から凝固ゾーン100に導入する。導入される凝固剤としては、特に限定されず、たとえば硫酸、塩酸などの無機酸類;酢酸などの有機酸類;塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウムなどの無機塩類;およびこれらの混合物などが挙げられるが、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに使用されている乳化剤の種類などにより適宜決定すればよい。
【0049】
フィード口310から導入する凝固剤の量は、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際における凝固剤の濃度が、カルボキシル基含有ニトリルゴム以外の全成分の合計に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜10重量%となるように、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび凝固剤を供給する。凝固剤の濃度を、上記範囲とすることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。なお、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスは、カルボキシル基含有ニトリルゴムと水とを含有してなるものであり、また、凝固液は、凝固剤と水とを含有してなるものであるため、通常は、ラテックス中の水と、凝固液中の凝固剤と水と、の合計に対する凝固剤の濃度を上記範囲とすれば良い。
【0050】
なお、凝固剤は、水などに溶解して、凝固液として、フィード口310から投入してもよい。この場合における凝固液中の凝固剤の濃度は、特に限定されないが、凝固液全体に対して、1〜35重量%程度とする。また、凝固剤は、必ずしもフィード口310から凝固ゾーン100に直接供給される必要はなく、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと予め混合した後に供給しても良い。
【0051】
凝固ゾーン100に導入されたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固剤とは、スクリュー5の回転により接触させられ、カルボキシル基含有ニトリルゴムは凝固し、直径約5〜30mm程度のクラムとなって水中に懸濁し、クラム濃度が5〜30重量%程度のスラリー液(クラムスラリー)となる。凝固ゾーン100内部の温度は、30〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは40〜100℃とする。凝固ゾーンの温度をこのような範囲とすることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を良好なものとしながら、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。
【0052】
凝固ゾーン100で得られたクラムスラリーは、スクリュー5の回転により排水ゾーン102に送られる。排水ゾーン102では、バレルブロック34に設けられたスリット340から、クラムスラリーに含まれる高濃度の凝固剤をセラム水として排出させ、凝固剤濃度が8重量%程度以下に低減され、40〜70重量%程度の水分を含有する含水状態のクラムが得られる。
【0053】
排水ゾーン102で得られた含水状態のクラムは、スクリュー5の回転により洗浄・脱水ゾーン104に送られる。洗浄・脱水ゾーン104では、バレルブロック36に設けられた洗浄水フィード口360から内部に洗浄水が導入され、クラムが洗浄され、次いで、脱水される。洗浄済みの排水はバレルブロック37に設けられたスリット370から排出される。洗浄・脱水ゾーン104のうち、洗浄水フィード口360より前の領域においては、内部温度を40〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは50〜100℃とする。また、洗浄水フィード口360より後の領域においては、内部温度を50〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは80〜100℃とする。そして、凝固剤濃度が0.2重量%程度以下にさらに低減され、5〜10重量%程度の水分を含有するクラムが得られる。
なお、上記洗浄水フィード口360から内部に導入される洗浄水量は、フィード口310から供給されるカルボキシル基含有ニトリルゴムラテックス(固形分)の重量を1とした場合に、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜2である。
【0054】
洗浄・脱水ゾーン104で得られたクラムは、スクリュー5の回転により乾燥ゾーン106に送られる。乾燥ゾーン106に送られたクラムは、スクリュー5の回転により可塑化混練されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。そして、この融体がバレルブロック40,42,43に設けられたベント口400,420,430に達すると、圧力が解放されるために、融体中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン106内部の温度は、90〜200℃とすることが好ましく、より好ましくは100〜180℃である。また、内部圧力(ダイ部での圧力)は1000〜5000KPa(G:ゲージ圧)程度である。なお、乾燥ゾーン106は、減圧にしても良い。
【0055】
乾燥ゾーン106を通過した水分が分離されたクラムは、スクリュー5により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量が0.5重量%以下)でダイ4に導入され、ここで、たとえばシート状で排出された後、シートカッター(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされて製品化される。
【0056】
本実施形態によれば、スクリュー5の凝固ゾーン100に対応する領域の長さL1(mm)と、凝固用スクリューブロック50の外径Da(mm)と、凝固用スクリューブロック50の谷部50Bの短径をDi(mm)とをL1/Da=4〜40の範囲、Da/Di=1.2〜2.5の範囲とし、かつ、L1に対する凝固用ニーディングディスク52の占める割合を5〜30%の範囲とした押出機1を用いるため、押出機1による、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからのカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収が可能となる。そのため、従来用いていた大型のタンクからなる凝固装置が不要となり、これにより、製造プロセスおよび製造機器の削減が可能となり、設備費の低減および製造コストの低減を図ることができる。
【0057】
しかも、本実施形態では、バレル3の内部に形成された凝固ゾーン100の下流側に、洗浄・脱水ゾーン104の前に排水ゾーン102を設けることにより、凝固ゾーン100で得られた高濃度の凝固剤(残留凝固剤)を含むクラムスラリーから、前記凝固剤の大部分を効率的に除去できる。その結果、その後の洗浄・脱水ゾーン104で残留する低濃度の凝固剤を確実に除去でき、ひいては乾燥ゾーン106を経て最終的に回収される重合体に含まれる凝固剤残留量を確実に少なくすることができる。
【0058】
加えて、本実施形態では、スクリュー5を二軸噛合型とし、しかも同方向回転型とすることで、セルフクリーニング性を付与でき、従来の凝固タンクにより重合体の凝固を行う凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することもできる。
【0059】
また、本実施形態では、凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄・脱水ゾーン104および乾燥ゾーン106を単一のバレル3内に形成してあるので、省スペース・省コストの面からも有利である。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。たとえば、上述した実施形態では、スクリュー5を,二軸噛合型としたが、それ以上の多軸式(3本以上)であってもよく、あるいは単軸式(1本)であってもよい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0062】
実施例1
まず、WO2007/049651A1記載の方法に準じて、乳化重合法により得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(アクリロニトリル単量体単位:34重量%、ブタジエン単量体単位:59重量%、マレイン酸n−モノブチル単量体単位:7重量%、ヨウ素価:10、固形分濃度:10.8重量%)、および凝固液としての硫酸マグネシウム水溶液(凝固剤濃度:5重量%)を準備した。
【0063】
そして、準備したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、および硫酸マグネシウム水溶液を使用して、図1〜図5に示す押出機1を用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を行った。
【0064】
本実施例では、押出機1として、バレル3内に2本のスクリュー(全長L=3005mm、外径Da=48mm、L/Da=63)5,5を平行に設け、これらのスクリュー5,5を同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリューの山部を他方のスクリューの谷部に噛み合わせ、一方のスクリューの谷部を他方のスクリューの山部に噛み合わせる状態とした、同方向に回転する二軸噛合型のスクリュー押出機1を用いた。
【0065】
スクリュー5は、単一のバレル3の内部に形成された凝固ゾーン100に対応する領域において、凝固用スクリューブロック50および凝固用ニーディングディスク52を有しており、本実施例では、図3、図5に示すように、5枚のニーディングディスク52を3組と、2条(小判のような形状のスクリュー)の凝固用スクリューブロック(フルフライト)50とを組み合わせて構成した。なお、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100に対応する領域の軸方向の長さL1に対して、11%をニーディングディスク52で構成した。また、L1は651mm、凝固用スクリューブロック50の外径Daは48mm、凝固用スクリューブロック50の谷部の径Diは31mmであり、L1/Daを14、Da/Diを1.55とした。凝固ゾーン100に対応する領域における、谷部50B,52Bの数nは46であり、ピッチ指数H(L1/(Da×n))は0.29であった。
【0066】
さらに、スクリュー5のうち、排水ゾーン102に対応する領域の軸方向の長さL2を200mm、L2/Daを4とし、洗浄・脱水ゾーン104に対応する領域の軸方向の長さL3を760mm、L3/Daを16、L3に対するニーディングディスクの占有割合を13%、逆送りスクリューの占有割合を7%とし、乾燥ゾーン106に対応する領域の軸方向の長さL4を1394mm、L4/Daを29、L4に対するニーディングディスクの占有割合を4%、逆送りスクリューの占有割合を0%とした。
【0067】
そして、このような構成の押出機1のフィード口310に、準備したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを407kg/hrのレートで供給した。その際、硫酸マグネシウム水溶液を132kg/hrのレートで供給した。すなわち、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際の凝固剤濃度〔マグネシウム/(ラテックス中の水+凝固液中の水)〕を1.4重量%とした。そして、洗浄水フィード口360に洗浄水を30kg/hrのレートで供給しながら、スクリュー回転数220rpmで重合体の回収を行った。なお、本実施例では、凝固ゾーン100の内部温度を90℃、洗浄・脱水ゾーン104のうち、洗浄水フィード口360より前の領域の内部温度を90℃、洗浄水フィード口360より後の領域の内部温度を90℃、乾燥ゾーン106の内部温度を120℃、にそれぞれ設定した。
【0068】
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ4から、シート状の乾燥したカルボキシル基含有ニトリルゴムが44kg/hrのレートで回収された。また、押出機1のモーターの比動力は、カルボキシル基含有ニトリルゴムの重量当たりで0.40kwh/kg、回収量とスクリュー回転数との比(Q/N)は0.20であった。なお、凝固・乾燥後得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのJIS K6300−1に従って測定したムーニー粘度:ML1+4(100℃)は、40であった。
【0069】
実施例2
凝固ゾーンの温度を20℃に変更し、スクリュー5の回転数を200rpmに変更した以外は、実施例1と同様の押出機1を用い、実施例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を行った。結果を表1に示す。
【0070】
比較例1
スクリュー5の凝固ゾーンに対応する領域に、凝固用ニーディングディスク52を形成しなかった以外は、実施例1と同様の構成を有する押出機1を用い、実施例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を行ったが、乾燥したカルボキシル基含有ニトリルゴムは回収できなかった。
【0071】
比較例2
スクリュー5の凝固ゾーンに対応する領域における、凝固用ニーディングディスク52の占有割合を33%とした以外は、実施例1と同様の構成を有する押出機1を用い、実施例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を行ったが、乾燥したカルボキシル基含有ニトリルゴムは回収できなかった。
【0072】
比較例3
凝固用スクリューブロック50の谷部の径Diを44mmとし、Da/Diを1.1とした以外は、実施例1と同様の構成を有する押出機1を用い、実施例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を行ったが、乾燥したカルボキシル基含有ニトリルゴムは回収できなかった。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示すように、L1/Da=4〜40の範囲、Da/Di=1.2〜2.5の範囲とし、かつ、L1に対する凝固用ニーディングディスク52の占める割合を5〜30%の範囲とした押出機1を用いることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収を良好に行うことが可能であった(実施例1,2)。
【0075】
これに対して、スクリュー5の凝固ゾーン100に対応する領域にニーディングディスクを形成しなかった場合には、凝固反応がほとんど進行しない結果となり、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収することができなかった(比較例1)。
また、スクリュー5の凝固ゾーン100に対応する領域におけるニーディングディスクの割合が多すぎる場合には、バレル3内で詰まりが発生してしまい、同様にカルボキシル基含有ニトリルゴムを回収することができなかった(比較例2)。
さらに、Da/Diが、小さすぎる場合にも、カルボキシル基含有ニトリルゴムのカルボキシル基が粘着性を有し、谷部とバレルとの間隔が狭くなって互着・付着が起こって、同様にカルボキシル基含有ニトリルゴムを回収することができなかった(比較例3)。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法に用いる押出機を示す概略図である。
【図2】図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
【図3】図3は図2のスクリューの凝固ゾーンに対応する領域を説明するための一部破談概略図である。
【図4】図4は図1のIV−IV線と図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図5は図1のV−V線と図2のV−V線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1… 押出機
2… 駆動ユニット
3… バレル
3a… 内壁面
31〜44… バレルブロック
4… ダイ
5… スクリュー
50… 凝固用スクリューブロック
52… ニーディングディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも凝固ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置されている押出機を用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスからカルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法であって、
前記スクリューが、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックおよび凝固用ニーディングディスクを有しており、
前記スクリューの凝固ゾーンに対応する領域の長さをL1(mm)、前記凝固用スクリューブロックの外径をDa(mm)、前記凝固用スクリューブロックの谷部の短径をDi(mm)とした場合に、L1/Daが4〜40の範囲、Da/Diが1.2〜2.5の範囲であり、
前記スクリューには、前記凝固用ニーディングディスクが、前記長さL1に対して5〜30%の割合で、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成されていることを特徴とするカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法。
【請求項2】
前記凝固ゾーンの内部温度を、30〜100℃とする請求項1に記載のカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法。
【請求項3】
前記バレルの内部に形成された凝固ゾーンの下流側には、排水ゾーン、洗浄・脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンが順次設けられている請求項1または2に記載のカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法。
【請求項4】
二軸噛合型で同方向回転型のスクリューを用いる請求項1〜3のいずれかに記載のカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−179686(P2009−179686A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18963(P2008−18963)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】