説明

カルボラニルポルフィリン及びそれらの使用

本発明は低毒性ホウ素化化合物、並びに腫瘍の治療、視覚化及び診断におけるそれらの使用方法に関する。特に、本発明は低毒性カルボラン含有5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリン化合物、並びに特に脳部、頭部、首部及び周辺組織の腫瘍治療のためのホウ素中性子捕捉療法(BNCT)及び光線力学療法(PDT)におけるそれらの使用方法に関する。また本発明は、MRI、SPECT又はPETのような腫瘍の画像化及び/又は診断方法へのこれらのカルボラン含有テトラフェニルポルフィリン化合物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)によって与えられた認可番号DE−AC02−98CH10886の政府支援によってなされた。米国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
癌治療における放射法及び化学療法の有効性は、治療薬による腫瘍細胞の選択的ターゲティングの不足によって制限されている。正常細胞に損傷を与えないために、現在の腫瘍治療法では、放射線治療量及び/又は化学的治療量は最適又は臨床上適切なレベルよりかなり低いレベルにまで制限される。従って、単独で、又は治療法の一部として、選択的ターゲティング及び腫瘍細胞の破壊が可能である化合物の設計は精力的に研究される分野である。
【0003】
新生物組織へのポルフィリンの親和性が既知であるため、脳部、頭部及び首部に存在する新生物並びに関連腫瘍の治療において送達剤としてポルフィリンを使用することに強い関心が持たれてきた。ポルフィリンは、一般的に着色した芳香族テトラピロール化合物の種類に属し、それらのいくつかは天然に植物及び動物、例えば、それぞれ葉緑素及びヘムにおいて見出される。
【0004】
ポルフィリン及び比較的長い一重項期間を有する他のテトラピロールは、光線力学療法(PDT)の使用による悪性腫瘍の治療において既に使用されている。PDTでは、最初に患者に光増感性薬剤、典型的にポルフィリンを注射する。光増感された腫瘍細胞はレーザー赤色光の強力ビームへの暴露時に破壊を引き起こし得る。PDTにおける細胞損傷の生化学的メカニズムは主として、光励起されたポルフィリン分子から酸素分子へのエネルギー移動によって生産された一重項酸素によって仲介されるものとして考えられる。しかしながら、PDTは主として、腫瘍細胞に対して適切より低い選択性及び正常細胞に対して最適より高い毒性を有する光増感性化合物によって制限されている。
【0005】
癌療法の有望な新形態はホウ素中性子捕捉療法(BNCT)である。BNCTは、ホウ素−10又は10Bとして既知のホウ素の安定核種の選択的蓄積と、それに続く熱化中性子による腫瘍の照射をベースとする二項性の癌治療である。熱化中性子はホウ素−10に衝突し、核分裂(減衰反応)を引き起こす。核分裂反応によって高い線エネルギー付与(LET)放射の形態で多量のエネルギーの高局在性放出が引き起こされ、これによってX線のような低LET放射よりも有効に細胞を殺すことが可能である(より高い生物学的効果比)。
【0006】
BNCTにおいて、ホウ素含有化合物は治療有効量での投与時に非毒性であるか、又は低毒性でなければならず、また癌組織において選択的累積が可能でなければならない。例えば、ブルックヘブン国立研究所医療部(Brookhaven National Laboratory Medical Department)において、ホウ素担体としてp−ボロノフェニルアラミン(BPA)を使用して悪性脳腫瘍の臨床BNCTを実行した(チャナナ(Chanana)ら、ニューロサージェリー(Neurosurgery)、44、1182−1192、1999)。BPAは低化学毒性という利点を有するが、望ましいよりも低いレベルで臨界正常組織において蓄積する。特に腫瘍−正常脳及び腫瘍−血液ホウ素濃度は約3:1の比率である。正常組織への許容用量が制限要因であるため、かかる低い特異性によって腫瘍へのBPAの最大用量は制限される。
【0007】
テトラフェニルポルフィリンとして既知の特定の種類の合成ポルフィリンは、BNCT用の新規ホウ素担体化合物の設計において強い関心を集めている。テトラフェニルポルフィリン(TPP)は、典型的にポルフィリン環の5位、10位、15位及び20位に4個のフェニル基を含有する。TPPの利点は合成の容易さである。
【0008】
TPPの溶解性は一般的にフェニル位の置換基によって制御可能である。スルホネート又はカルボキシレート含有のTPPは水溶性である。しかしながら、カルボラン含有TPPのいくつかは高い親油性を有し、これによって動物への投与の前に多量の非水性賦形剤が必要となる可能性がある。多量の賦形剤は、例えば、細胞中に均質に分散される代わりに膜に結合するように腫瘍細胞内の微小局在を変化させることによってポルフィリンの生物学的効果を減少し得る。加えて、アミド、エステル又は尿素結合のようなより親水性の結合の使用は、炭素−炭素結合よりも著しく親水性であるが、多くの種類の状況下で加水分解することが既知である。カルボラニル基をポルフィリン分子に結合させるためにかかる親水性結合が利用される場合、標的に到達する前に加水分解がカルボニル基の損失を引き起こすため、かかる加水分解は特に問題となる。
【0009】
従って、化学安定性を損なうことなくTTPの親油性を減少させる努力が続いている。例えば、ビセンテ(Vicente)らによる国際公開第01/85736号パンフレットには、親水基を含有するテトラフェニルポルフィリン化合物の合成及び使用が記載されている。ビセンテ(Vicente)の化合物の顕著な特徴は、炭素−炭素結合のみによるフェニル基へのカルボラニル基の結合である。かかる炭素−炭素結合は加水分解又は他の化学的攻撃の傾向がないが、かかる結合は著しく疎水性である。
【0010】
またポルフィリンはその内部で金属イオンをキレート化する能力を有するという利点も有する。かかるキレート化ポルフィリンは付加的に、ポルフィリン濃度のリアルタイム監視用の視覚化手段及び/又は診断用薬剤として機能する。例えば、常磁性金属イオンにキレート化された場合、ポルフィリンは磁気共鳴画像(MRI)においてコントラスト剤として機能し得、そして放射性金属イオンにキレート化された場合、ポルフィリンは単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)用の画像化剤として機能し得る。
【0011】
加えて、BNCTにおいてキレート化されたホウ素含有ポルフィリンを使用することによって、照射治療容積内の腫瘍及び全組織中及びその周囲のホウ素濃度及び分布は、照射前及び間に非侵襲的に正確かつ迅速に決定することが可能である。かかる診断情報は、高レベルのホウ素を含有することが知られている組織領域における熱外中性子の暴露を低下することによって、BNCT治療をより迅速、正確かつ安全に実行することを可能にする。短時間の照射によって、リアクターポートにおいて長時間及びしばしば不恰好な頭部位置決めをする患者の不自由及び不快が取り除かれるだろう。しかしながら、加速器によって発生した中性子の予期された使用によって著しく低い線束を生じ、従ってより長い照射時間をもたらし、従ってより長い腫瘍保持時間を有する化合物が重要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、腫瘍中で長期保持時間を有し、そして正常組織に対しては最小の損傷をもたらすが、腫瘍細胞を選択的にターゲティングし及び破壊する新規化合物、特にホウ素含有ポルフィリンに関する要求が存在する。加えて、脳部、頭部及び首部並びに関連腫瘍のより有効な治療法、特により有効なBNCT治療及びそこで使用されるホウ素送達化合物に関する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は低毒性ホウ素化化合物、並びに腫瘍の治療、視覚化及び診断におけるそれらの使用法に関する。より特に、本発明は低毒性ホウ素化5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリン化合物、並びに特に脳部、頭部及び首部とその周辺組織の腫瘍の治療のためのホウ素中性子捕捉療法(BNCT)又は光線力学療法(PDT)におけるそれらの使用法に関する。
【0014】
特に、本発明は次式
【化1】

(式中、
1、Y2、Y3及びY4は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にあり、そして独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、あるいはヒドロキシ、アルコキシ、−C(O)OR5、−SOR6、−SO26、ニトロ、アミド、ウレイド、カルバマト、−SR7、−NR89又はポリアルキレンオキシドから選択される1〜4個の親水基によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル又はヘテロアリール基;あるいは次式
【化2】

によって表される置換基であり、式中、Dは、独立して、Z、水素又は次式
【化3】

によって表される置換基を表すが、ただし、Dの少なくとも1個がZであるか、又は式(3)によって表され;
式中、D’は、独立して、Z、水素又は次式
【化4】

によって表される置換基を表すが、ただし、qが0である場合、又はqがゼロではなく、そしてD’が単独で水素である場合、Dの少なくとも1個はZによって表されるか、あるいはqがゼロではなく、そしてD’が式(4)によって表され、そしてrがゼロである場合、Dの少なくとも1個はZによって表され;
5、Y6、Y7及びY8は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にあり、そして次式
【化5】

によって表され;
1、W2、W3、W4、W5及びW6は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にある親水基であり、そして独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、−C(O)OR5、−SOR6、−SO26、ニトロ、アミド、ウレイド、カルバマト、−SR7、−NR89又はポリアルキレンオキシドから選択され;
a、X1、X2、X3及びX4は、独立して、酸素又は硫黄であり;
a、Rb、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、独立して、水素及びC1〜C4アルキルから選択され;
Zは、かご型構造内に少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも3個のホウ素原子、又は少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも5個のホウ素原子を含んでなるカルボランクラスターであり;
n、p、s、t及びvは、独立して、0、又は1〜20の整数を表し;
mは、独立して、1、2又は3を表し;
q及びrは、独立して、0、1、2又は3を表し;
a、b、c及びdは、独立して、1又は2を表し;
k、l、u及びwは、独立して、0、1又は2を表し;
e、f、g、h、i及びjは、独立して、0、又は1〜5の整数を表すが;
ただし、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1個は式(2)を表し;a+e+k、b+f+l、c+g+u、h+d+w、q+i、r+jの各合計は、独立して、1〜5の整数を表し;k、l、u又はwのいずれかがゼロではない場合、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1個が式(2)を表し;そして
Mは、2個の水素イオン;単一の一価金属イオン;2個の一価金属イオン;二価金属イオン;三価金属イオン;四価金属イオン;五価金属イオン;六価金属イオン;ラジオアイソトープによって仲介される放射線療法において有用であるか、又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)若しくは陽電子放射型断層撮影(PET)によって画像化可能な放射性金属イオン;磁気共鳴画像(MRI)によって検出可能な常磁性金属イオン;ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)又は光線力学療法(PDT)に適切な金属イオン;あるいはそれらの組み合わせであり;単一の一価金属イオンから誘導されたポルフィリン金属錯体は対カチオンによって荷電平衡化され、そして三価、四価、五価、六価金属イオンから誘導されたポルフィリン金属錯体は適切な数の対アニオン、ジアニオン又はトリアニオンによって荷電平衡化される)のホウ素含有5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリンに関する。
【0015】
Zは、好ましくは、カルボラン−C2HB910又は−C2HB1010から選択され、−C2HB910はニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010はクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである。
【0016】
Mは、好ましくは、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、テクネチウム(Tc)、クロム(Cr)、白金(Pt)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)、金(Au)、バリウム(Ba)、タングステン(W)又はガドリニウム(Gd)である。もう1つの好ましい実施形態において、Mは銅(Cu)又はニッケル(Ni)である。
【0017】
一実施形態において、a、b、c及びdは1であり、そしてY1、Y2、Y3及びY4は式(2)によって表され;DはZであり;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;そしてmは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4は各フェニル環のメタ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基は各フェニル環の3位及び5位又は3位及び4位にあり、そしてe、f、g、h、k、l、u及びwは0である。
【0018】
もう1つの実施形態において、a、b、c、d、e、f、g及びhは1であり;k、l、u及びwは0であり;Y1、Y2、Y3及びY4は各フェニル環のパラ位にあり、W1、W2、W3及びW4は各フェニル環のメタ位にあり、W1、W2、W3及びW4は、独立して、ヒドロキシ又はアルコキシであり、そして−X2−(CR34p−D置換基は各フェニル環の3位及び5位又は3位及び4位にあり、そしてDはZである。好ましくは、アルコキシはメトキシである。
【0019】
もう1つの実施形態において、k、l、u及びwは1であり;a、b、c及びdは1であり、Y1、Y2、Y3及びY4は式(2)によって表され;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;そしてmは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4はフェニル環のメタ位にあり;Y5、Y6、Y7及びY8はフェニル環のパラ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基はフェニル環の3位及び5位又は3位及び4位にあり;DはZであり;XaはOであり;Ra及びRbはHであり;vは1であり、そしてe、f、g及びhは0である。
【0020】
なおもう1つの実施形態において、a、b、c及びdは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4は式(2)によって表され;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;mは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4は各フェニル環のメタ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基はフェニル環の3位及び5位又は3位及び4位にあり;DはZであり;k、l、u及びwは0であり;そしてe、f、g及びhは0である。
【0021】
なおもう1つの実施形態において、a、b、c及びdは1であり;e、f、g、h、k、l、u及びwは0であり;Y1、Y2、Y3及びY4は式(2)によって表され;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;mは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4は各フェニル環のメタ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基はフェニル環の3位及び5位又は3位及び4位にあり;Dは式(3)によって表され、X3はOであり、R10及びR11はHであり、sは1であり、D’はZであり、qは2であり、そしてiは0でありる。iが0であるため、W5は存在しない。
【0022】
なおもう1つの実施形態において、ポルフィリン化合物が対ジアニオンを必要とする場合、対ジアニオンは二価負電荷を含有するポルフィリン化合物である。二価負電荷を含有するポルフィリン化合物は本発明のカルボラン含有ポルフィリン化合物であり得るが、ただし、Mが存在しない。
【0023】
また本発明は、一種以上の上記ポルフィリン化合物を含んでなる組成物の患者への投与を必要とするSPECT、PET又はMRIによる腫瘍の画像化法、並びにBNCT及びPDTのような二項性の癌治療法も含む。好ましい実施形態において、組成物は本質的に一種以上の上記ポルフィリン化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は次式
【化6】

を有するホウ素含有5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリンに関する。
【0025】
1、Y2、Y3及びY4は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にあり、そしてa、b、c及びdは、独立して、1又は2を表す。Y1、Y2、Y3及びY4は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、あるいはヒドロキシ、アルコキシ、−C(O)OR5、−SOR6、−SO26、ニトロ、アミド、ウレイド、カルバマト、−SR7、−NR89又はポリアルキレンオキシドから選択される1〜4個の親水基によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル又はヘテロアリール基;あるいは次式
【化7】

によって表される置換基であるが、ただし、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1個は式(2)を表す。
【0026】
式(2)中、X1及びX2は、独立して、酸素又は硫黄であり、そしてR1、R2、R3及びR4は、独立して、R1、R2、R3及びR4に関するアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有することを除き、水素及び以下に定義されるアルキル基から選択される。下付き文字n及びpは、独立して、0、又は1〜20の整数を表し、そしてmは、独立して、1、2又は3を表す。
【0027】
D’は、独立して、Z、水素又は次式
【化8】

によって表される置換基を表すが、ただし、Dの少なくとも1個はZであるか、又は式(3)によって表される。
【0028】
式(3)中、X3は、独立して、酸素又は硫黄であり;R10及びR11は、独立して、R10及びR11に関するアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有することを除き、水素及び以下に定義されるアルキル基から選択され;sは、独立して、0、又は1〜20の整数を表し;そしてqは、独立して、0、1、2又は3を表すが、ただし、qが0である場合、又はqがゼロではなく、そしてD’が単独で水素である場合、Dの少なくとも1個はZによって表されるか、あるいはqがゼロではなく、そしてD’が式(4)によって表され、そしてrがゼロである場合、Dの少なくとも1個はZによって表される。
【0029】
D’は、独立して、Z、水素又は次式
【化9】

によって表される置換基を表す。
【0030】
式(4)中、X4は、独立して、酸素又は硫黄であり;R12及びR13は、独立して、R12及びR13に関するアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有することを除き、水素及び以下に定義されるアルキル基から選択され;tは、独立して、0、又は1〜20の整数を表し;そしてrは、独立して、0、1、2又は3を表す。
【0031】
Zは、かご型構造内に少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも3個のホウ素原子、又は少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも5個のホウ素原子を含んでなるカルボランクラスターである。カルボランクラスターのいくつかの例としては、クロソ構造としても既知である正多面体カルボランクラスター、並びにニド構造としても既知である多面クラスターのイオン化フラグメントが挙げられる。本発明の好ましいカルボランのいくつかの例としては−C2HB910又は−C2HB1010が挙げられ、−C2HB910がニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010がクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである。
【0032】
1、W2、W3、W4、W5及びW6は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にある親水基である。W1、W2、W3、W4、W5及びW6は、独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、−C(O)OR5、−SOR6、−SO26、ニトロ、アミド、ウレイド、カルバマト、−SR7、−NR89又はポリアルキレンオキシドから選択される。R5、R6、R7、R8、R9は、独立して、R5、R6、R7、R8、R9に関するアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有することを除き、水素及び以下に定義されるアルキル基から選択される。e、f、g、h、i及びjは、独立して、0、又は1〜5の整数を表す。
【0033】
5、Y6、Y7及びY8は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にあり、そして次式
【化10】

によって表される。式(5)中、Xaは、独立して、酸素又は硫黄であり;Ra及びRbは、独立して、Ra及びRbに関するアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有することを除き、水素及び以下に定義されるアルキル基から選択され;vは、独立して、0、又は1〜20の整数を表し;そしてk、l、u及びwは、独立して、0、1又は2を表すが;ただし、a+e+k、b+f+l、c+g+u、h+d+w、q+i、r+jの各合計は、独立して、1〜5の整数を表し;k、l、u又はwのいずれかがゼロではない場合、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1個が式(2)を表す。
【0034】
1、Y2、Y3又はY4のいずれかがアルキルである場合、アルキルは、任意に3個までの二重又は三重結合を含む1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルキル基である。アルキル基のいくつかの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、第二級ブチル、第三級ブチル、プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−ブチニル、2−メチル−2−ブテニル、n−ペンチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びエイコシルが挙げられる。
【0035】
アルキル基は未置換であっても、又は1〜4個の置換基によって置換されていてもよい。適切な親水基のいくつかの例としては、ヒドロキシ、アルコキシ、−C(O)OR5、−SOR6、−SO26、ニトロ、アミド、ウレイド、カルバマト、−SR7、−NR89及びポリアルキレンオキシドが挙げられる。R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、R5、R6、R7、R8に関するアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有することを除き、水素及び以下に定義されるアルキル基から選択される。
【0036】
アルキル基の炭素原子は1〜4個のヘテロ原子によって置換されていてもよい。本明細書中、ヘテロ原子はO、N又はSである。ヘテロ原子は隣接せず、そして少なくとも1個の炭素原子によって分離されている。
【0037】
1、Y2、Y3又はY4のいずれかがシクロアルキルである場合、シクロアルキル環は4員、5員、6員又は7員シクロアルキル環である。環が置換されていてもよく、又は1〜4個の不飽和(すなわち、二重又は三重)結合を含有してもよい。飽和シクロアルキル環のいくつかの例としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロペンタン環が挙げられる。不飽和シクロアルキル環のいくつかの例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン及び1,3−シクロヘプタジエン環が挙げられる。
【0038】
シクロアルキル環は、任意に1〜4個のO、N又はSのヘテロ原子によって置換されていてもよい。ヘテロ原子によって置換されたシクロアルキル環のいくつかの例としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、フラン、チオフェン、1,3−オキサゾリジン、イミダゾール及びピロール環が挙げられる。シクロアルキル環は任意に上記で定義されたアルキル又は上記で定義された1〜4個の親水基によって置換されていてもよい。
【0039】
シクロアルキル環は、1〜3個の追加の4員、5員、6員又は7員シクロアルキル又はフェニル環に縮合されてもよい。縮合シクロアルキル環のいくつかの例は、ビシクロ[3.3.0]オクタン、ビシクロ[4.3.0]ノン−3−エン、トリフェニレン及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン環である。
【0040】
1、Y2、Y3又はY4のいずれかがアリールである場合、アリールは5員、6員又は7員芳香族環、好ましくはフェニル環である。アリール環は、任意に上記で定義されたアルキルによって置換されて、アルキルアリール又はアリールアルキル基を生成してもよい。アリール、アルキルアリール及びアリールアルキル基は、上記で定義された1〜4個の親水基によって置換されていてもよい。
【0041】
アリール環は、任意に1〜4個のO、N又はSのヘテロ原子によって置換されていてもよく、この場合、ヘテロアリール環が得られる。ヘテロアリール環のいくつかの例としては、チオフェン、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、オキサジン及びピラジン環が挙げられる。ヘテロアリール環は、上記で定義された1〜4個の親水基によって置換されていてもよい。
【0042】
またアリール環又はヘテロアリール環は、1〜3個の追加の5員、6員若しくは7員アリール環又はヘテロアリール環に縮合されてもよい。縮合アリール環及び縮合ヘテロアリール環のいくつかの例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、クリセン、インドリン、キノリン及びテトラアザナフタレン(プテリジン)環が挙げられる。
【0043】
本明細書中、アルコキシ基は、上記で定義されたアルキル部分を含有する。アルコキシ基のいくつかの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ及びドデシルオキシが挙げられる。
【0044】
ポリアルキレンオキシドは、式−(CH2d−O−[(CH2e−O−]x−[(CH2f−O−]y−(CH2g−OR’によって定義され、式中、独立して、dは、0、又は1〜10の整数であり、eは、0、又は1〜10の整数であり、fは1〜10であり、gは1〜10であり、x及びyは、それぞれ独立して1又は0であり、そしてR’はH又は上記で定義されたアルキル基であるが、ただし、eが0である場合、xは0であり;fが0である場合、yは0であり;eが0でない場合、xは1であり;そしてfが0でない場合、yは1である。
【0045】
本発明の好ましいポリアルキレンオキシドはポリエチレンオキシドである。ポリエチレンオキシドは、式−(CH2d−O−[(CH2e−O−]x−[(CH2f−O−]y−(CH2g−OR’によって定義され、式中、独立して、dは0又は2であり、eは0又は2であり、fは0又は2であり、gは2であり、x及びyは、それぞれ独立して1又は0であり、そしてR’はH又はエチル基であるが、ただし、eが0である場合、xは0であり;fが0である場合、yは0であり;eが0でない場合、xは1であり;そしてfが0でない場合、yは1である。
【0046】
式(1)中、Mは、2個の水素イオン、単一の一価金属イオン又は2個の一価金属イオンであってよい。適切な一価金属イオンのいくつかの例としては、Li+1、Na+1、K+1、Cu+1、Ag+1、Au+1及びTl+1が挙げられる。Mが単一の一価金属イオンである場合、得られるポルフィリン金属錯体アニオンは対カチオンによって荷電平衡化される。対カチオンのいくつかの例としては、上記一価金属イオン、並びにアンモニウム及びホスホニウムカチオン、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム及びテトラフェニルアルソニウムが挙げられる。対カチオンはポルフィリン金属錯体と何らかの形態で結合又は会合していてもよい。
【0047】
またMは二価金属イオンであってもよい。適切な二価金属イオンのいくつかの例としては、V+2、Mn+2、Fe+2、Ru+2、Co+2、Ni+2、Cu+2、Pd+2、Pt+2、Zn+2、Ca+2、Mg+2、Sr+2及びBa+2が挙げられる。
【0048】
あるいは、Mは、三価、四価、五価又は六価金属イオンであってもよい。適切な三価金属イオンのいくつかの例としては、Gd+3、Y+3、In+3、Cr+3、Ga+3、Al+3、Eu+3及びDy+3が挙げられる。適切な四価金属イオンのいくつかの例としては、Tc+4、Ge+4、Sn+4及びPt+4が挙げられる。適切な五価金属イオンの例はTc+5である。適切な六価金属イオンのいくつかの例としては、W+6、Tc+6及びMo+6が挙げられる。得られるポルフィリン金属錯体カチオンは適切な数の対アニオン、ジアニオン又はトリアニオンによって荷電平衡化される。例えば、三価金属イオンから誘導されるポルフィリン金属錯体カチオンは単一の対アニオンによって荷電平衡化されてよく、そして四価金属イオンから誘導されたかかる錯体は、例えば、単一の対ジアニオン又は2個の対アニオンによって荷電平衡化されてよい。
【0049】
適切な対アニオンのいくつかの例としては、クロリド、ペルクロレート、スルフェート、ニトレート及びテトラフルオロボレートが挙げられる。適切な対ジアニオンのいくつかの例としては、オキシド、スルフィド又は二価負電荷を含有するポルフィリン化合物が挙げられる。二価負電荷を含有するポルフィリン化合物は本発明のポルフィリン化合物であってよいが、ただし、Mが存在しない。適切な対トリアニオンの例としてはホスフェートが挙げられる。
【0050】
対アニオン、ジアニオン又はトリアニオンは、本発明のカルボラン含有ポルフィリン化合物と何らかの形態で結合又は会合していてもよい。またカルボラン含有ポルフィリン化合物は、溶媒、例えば水、アセトニトリル、メタノール等の分子のような中性電荷の分子と結合又は会合していてもよい。
【0051】
加えて、Mは、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)によって画像化可能な放射性金属イオンであってもよい。SPECTに適切な放射性金属のいくつかの例は、67Cu、99mTc、111Inであり、そしてPETに関しては64Cu、55Coが挙げられる。またMは治療用放射性薬品として有用な放射性金属であってもよい。かかる治療に適切な放射性金属のいくつかの例としては、90Y、188Re、67Cuが挙げられる。
【0052】
またMは磁気共鳴画像(MRI)によって検出可能な常磁性金属イオンであってもよい。かかる金属のいくつかの例としては、Mn、Fe、Co及びGdが挙げられる。
【0053】
加えて、Mは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)又は光線力学療法(PDT)に適切な金属イオン;あるいはそれらの組み合わせであってもよい。BNCTに適切な金属イオンとしては上記で記載されたものが挙げられるが、ただし、Zn及びSnのような光活性であるものを除く。かかる光活性金属及び特に永続的三重項状態を有するものは、PDTに関して望ましい。BNCTに関する適用量がPDTに関する適用量より100倍〜1000倍大きいため、BNCT中でかかる光活性金属が使用される場合、皮膚中の光活性金属の著しい蓄積が結果として生じ得る。光活性金属のかかる蓄積は生物学的損傷を引き起こし得る。
【0054】
本発明は腫瘍の治療法にも関する。好ましい実施形態において、悪性腫瘍、特に脳腫瘍の治療法はBNCTを介する。BNCTは、ホウ素−10又は10Bとして既知のホウ素の安定核種の腫瘍中での選択的蓄積と、それに続く熱化中性子による腫瘍の照射をベースとする二項性の癌治療である。熱化中性子はホウ素−10に衝突し、核分裂反応を引き起こす。核分裂によって高い線エネルギー付与(LET)放射の形態で多量のエネルギーの高局在性放出が引き起こされ、これによってX線のような低LET放射よりも有効に細胞を殺すことが可能である。
【0055】
ホウ素−10は、熱中性子によって捕捉された時、以下の核反応をもたらす。
10B+n → 11
11B → 7Li+4He+γ(478keV)
【0056】
この核反応において、ホウ素−10核は、2.34MeVの平均の全運動エネルギーを一緒にを有する4He及び7Li粒子へと自発的及びほぼ即座に分解する準安定核種11Bを形成する中性子を捕捉する。これらの2個のイオン化粒子は、軟組織中の反対方向でそれぞれ約9μm及び5μm(7±2μm)移動する。
【0057】
4He及び7Li粒子が移動する距離は、多くの腫瘍及び腫瘍関連細胞の直径に相当する。従ってBNCTの有効性は、腫瘍内での高局在化、高LET電離性放射線の生成にある。従ってターゲティングされた腫瘍は多量の放射線を受けるが、周囲の正常組織には損傷を与えない。
【0058】
脳腫瘍の場合、ホウ素化合物の投与後、患者の頭部は、入射光線又は熱外(0.5eV〜10keV)中性子の場によって脳腫瘍の一般領域で照射を受ける。中性子が頭部中により深く貫通すると、それらは次第に熱化される(平均エネルギー約0.04eV)。中性子が熱化されると、捕捉横断面は中性子の速度に逆比例するため、それらは腫瘍細胞及び/又は腫瘍支持組織において濃縮したホウ素−10によってより容易に捕捉される。
【0059】
本発明の方法に従う悪性脳腫瘍のBNCTにおいて、患者は最初に、ホウ素−10が高度に濃縮された式(1)のカルボラン含有ポルフィリンの注入を受ける。次いでカルボラン含有ポルフィリンは、有効照射容積内で脳腫瘍において優先的に濃縮される。有効照射容積は、脳腫瘍に関して、脳の実質的な部分であり得る。例えば、脳の一半球のほとんど、又は全て、及び対側半球のいくらか、又は全てに位置する腫瘍は、ホウ素化ポルフィリンを蓄積可能である。
【0060】
次いで、腫瘍領域を熱化中性子で照射する(一次照射)。熱化中性子のいくつかは、腫瘍中で濃縮されたホウ素−10によって捕捉される。動きの遅い熱中性子がホウ素−10核種によって捕捉されることの条件つき確率は、腫瘍組織中のホウ素−10濃度が30μg/gより高いことを条件として、哺乳類の組織中に通常存在する他の核種の全てによる捕捉の確率と比較して高い。
【0061】
中性子の捕捉直後に腫瘍中及び周辺のホウ素−10核のごく少量の割合が核反応を受けるため、BNCTに関して臨床的に有効となるように、ターゲティングされた組織中で高濃度のホウ素−10が必要である。したがって、ターゲティングされた組織中でのホウ素−10の濃度を最大化するために、カルボランクラスターはホウ素−10において高度に濃縮される。具体的には、カルボランクラスター中のホウ素は、ホウ素−10中で少なくとも95原子%まで濃縮される。
【0062】
癌治療に関する従来技術以上の本発明の利点は、本発明のホウ素含有ポルフィリンは他の既知のホウ素含有化合物よりも好ましい比率で腫瘍中に選択的に蓄積するということである。
【0063】
加えて、生体内で試験された本発明のポルフィリン化合物は、理論上の治療有効量では非毒性である。本発明のカルボラン含有ポルフィリンのより高い選択性及びより低い毒性によって、照射時に正常組織及び組織機能の破壊が最小でありながら、腫瘍組織の選択的破壊が可能である。
【0064】
本発明のカルボラン含有ポルフィリンのもう1つの利点は、それらの増加する極性であり、これは、親水基W1、W2、W3、W4、W5及びW6及び/又はエーテル結合によって与えられる。かかる基のより高い極性によって、テトラフェニルポルフィリン化合物はより親油性が低くなり、それによって投与間の乳化補助溶媒の量の減少が生じる。従って、腫瘍細胞内の微小局在が改善され、より高い生物学的効果比を生じ得る。
【0065】
加えて、本発明のカルボラン含有ポルフィリンにおけるエーテル結合は、例えば、より容易に加水分解してホウ素官能性の喪失を引き起し得るエステル又はアミド結合よりも化学的安定性を提供する。実際に、エーテル結合は、炭素−炭素結合とほぼ同様の加水分解及び他の形式の化学的攻撃に対する耐性を有する。
【0066】
本発明の好ましいカルボラン含有ポルフィリンのいくつかが8個のカルボランクラスター(80個のホウ素原子)より多くを含有することは重要である。実際に、本発明は16個、32個又は64個のカルボランクラスターを含有するカルボラン含有ポルフィリン分子を提供する。これは、現在既知のいずれのカルボラン含有ポルフィリンよりも高い。
【0067】
かかる高いカルボラン含有ポルフィリン分子がより多くのホウ素を標的に送達し、すなわち、より有効であるため、それらは従来技術のポルフィリン化合物と比較して、ポルフィリンのより低い必要モル用量を可能にする。カルボラン含有ポルフィリンのより低いモル用量は、血液ポルフィリン濃度を中毒性閾値下に保ちながら、標的におけるホウ素量を著しく増加させる。
【0068】
腫瘍中で本発明の化合物の必要量を蓄積するため、一般的に製薬上許容できる担体中で、体重kgあたり約10〜50ミリグラムのホウ素−10の全身注射又は注入量を患者に投与する。担体としては、クレモフォル(Cremophor)EL、プロピレングリコール、トウィーン(Tween)80、ポリエチレングリコール又はリポソームのような市販品として入手可能な溶媒が挙げられる。化合物は1以上の用量で投与され、最終用量は熱外中性子照射の約1時間前と1週間前との間で投与される。
【0069】
中性子暴露のタイミングは血液中ポルフィリン濃度に依存し、これは時間が経つとともに腫瘍中のポルフィリン濃度よりも迅速に低下する。また中性子暴露のタイミングは、臨床BNCTの当業者に周知である他の要因にも依存する。これらの他の要因としては、化合物の薬物動態学的挙動、(例えば、腫瘍及び腫瘍脈管構造中への化合物の吸収速度)、並びに化合物を吸収する腫瘍及び様々な他の組織における化合物の排出速度及び/又は代謝が挙げられる。
【0070】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明の悪性腫瘍の治療法はPDTを介する。PDTは、腫瘍中のポルフィリンの選択的蓄積と、それに続くレーザー赤色光による腫瘍の照射をベースとする二項性の癌治療である。光による活性化時、ポルフィリンの電子は一重項基底状態から一重項励起状態まで励起する。次いで電子は一重項基底状態に戻り、光の放射によって蛍光を生じるか、又は三重項状態への項間交差を介してスピンを変化することが可能である。基底状態一重項まで戻る三重項の減衰において、高度に反応性の一重項酸素を形成する基底状態三重項ジオキシゲンへとエネルギーを転送することが可能である。一重項酸素と最も容易に反応する生体分子としては、不飽和脂質及びアルファ−アミノ酸残基が挙げられる。これらは両方とも生物膜の主要構成要素である。特定の可逆性又は修正可能な閾値を越えて、膜、特に内皮細胞膜への損傷は、局所性脈管血栓症及び血液循環の閉鎖を導き得る。
【0071】
本発明におけるPDTの使用に関して、最初に、式(1)の光増感性カルボラン含有ポルフィリンの注射又は注入が患者に与えられる。次いで腫瘍組織を照射するために、光ファイバー調査が使用される。悪性腫瘍に関して、PDT光増感剤が、腫瘍の深さに対して最大貫通のために十分に長い波長において光吸収ピークを有することが好ましい。
【0072】
好ましい実施形態において、悪性腫瘍の治療はSPECT又はPETの使用によって拡張される。SPECTにおいて、最初に、Mがガンマ−放射性の放射性金属イオンである式(1)の化合物の注入又は注射が患者に与えられる。次いで患者の頭部を非観血的にスキャンし、そして脳又は脳腫瘍組織を表示する各ピクセル又はボクセルで、放射性核種濃度、従って間接的に平均ホウ素濃度が画像化される。それによって脳の各画像上で、等しいホウ素−10濃度の領域を表す等高線を描写可能である。
【0073】
脳のSPECTは、従来のX線撮影又はコンピュータ化されたX線断層撮影よりも少なくとも1桁の大きさで同位体トレーサーに対して感度が高い。加えて、SPECTの結果は、従来のX線撮影からの結果とは反対に、BNCT治療計画及び実施に関連するホウ素の濃度について、脳像の画定された容積又はボクセルの量的情報を提供するために分析可能である。SPECTスキャンは患者における腫瘍の存在、並びに脳中又は身体のいずれかの他の部分におけるその場所を示すことができる。SPECTスキャンは非観血的であり、迅速で都合がいい。
【0074】
しかしながら、PET画像化可能なラジオアイソトープCu−64を放射する陽電子は、SPECTで使用されるCu−67よりも容易に入手可能である。Cu−64のより高い入手可能性のため、Cu−64で標識されたポルフィリンを使用して前臨床PET研究を実行した。
【0075】
もう1つの好ましい実施形態において、悪性腫瘍の治療はMRIの使用によって拡張される。MRIにおいて、最初に、適切な常磁性金属イオンにキレート化された式(I)のカルボラン含有ポルフィリンを含有する溶液の注入又は注射が患者に与えられる。脳腫瘍に関して、次いで患者の頭部をスキャンし、そして脳中の常磁性金属イオン濃度、従ってホウ素濃度は画像化され、そして定量される。本発明の化合物を利用するMRIは、ホウ素化化合物が血液、腫瘍及び健康な組織において再分配される場合、注入前、間及び後のBNCTにおける中性子照射に関して急速に増加されたターゲティング及び治療計画を可能にする。
【0076】
本発明のカルボラン含有ポルフィリンは、一連の別々の工程を通して合成される。以下に提供されるものは、本発明の好ましいカルボラン含有ポルフィリンの調製に必要とされる第1の合成工程の要約である。合成の要約は、本発明の化合物の合成に関する一般的な方法を提供し、従って各化合物の合成に関する多数の方法を包含する。例えば、同一生成物を合成するために異なる出発材料が使用されてもよく、そして各出発材料が、温度、反応時間、溶媒及び抽出及び精製手順のような反応条件の異なる組み合わせを必要としてもよい。
【0077】
具体例によって、本発明の化合物を合成するための好ましい方法を説明する。本発明の範囲は、いずれの形態に関しても、本明細書で明らかにされる例によって限定されない。例えば、非対称カルボランを含有するテトラフェニルポルフィリン化合物は、異なるベンズアルデヒド又はジベンズアルデヒド出発材料の混合物を使用し、そして反応スキーム8に示されるものと同様の合成反応による手順によって合成可能である。
【0078】
反応スキーム1
【化11】

式中、XはO又はSであり、溶媒Aは、好ましくはアセトンのような極性非プロトン性溶媒であり、そしてRはハロゲン、好ましくはClである。カップリング剤は、フェノール又はチオフェノールとハロゲン化アルキルとをカップリングしてエーテルを生成可能であるいずれかの化合物、混合物又は化合物の配列である。いくつかのカップリング剤は還流条件又は極性非プロトン性溶媒を必要としない。好ましくは、カップリング剤は炭酸カリウムとヨウ化カリウムとの混合物である(K2CO3/KI)。
【0079】
反応スキーム2
【化12】

式中、XはO又はSであり、そして無水物上のR基は同一であっても異なってもよく、アルキル、シクロアルキル又はアリールから選択される。好ましい無水物は、Rがメチルである酢酸無水物である。酸触媒はいずれのブロンステッド−ローリー(Bronsted−Lowry)(プロトン供与)酸であってもよく、これはアルコールからエステル生成物への変換を干渉しない。好ましくは、酸触媒はスルホン酸、H2SO4である。
【0080】
反応スキーム3
【化13】

式中、XはO又はSであり、溶媒Bは、好ましくは極性非プロトン性溶媒、好ましくはアセトニトリルであり、そしてRはスキーム2に定義された通りである。ボランクラスターは、かご型構造内に少なくとも3個のホウ素原子を含んでなるいずれかのクラスターである。例えば、ボランクラスターはデカボラン、B1014であり得る。ボランクラスターはプロパルギル出発材料の三重結合と反応し、カルボラニル生成物を形成する。従って、デカボランの場合、Zはカルボラン−C2HB1010を表す。Zは、かご型構造内に少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも3個のホウ素原子、又は少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも5個のホウ素原子を含んでなるいずれかのカルボランクラスターを表す。例えば、カルボランクラスターは−C2HB910又は−C2HB1010であり得、−C2HB910はニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010はクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである。
【0081】
反応スキーム4
【化14】

式中、X、R及びZは上記で定義された通りである。プロトン化剤は、エステルをアルコール生成物へと変換可能であるいずれかの酸、酸混合物又は酸付加物の配列である。好ましくは、プロトン化剤は濃HClである。プロトン性溶媒は、例えばメタノールのようなアルコールであってよい。
【0082】
反応スキーム5
【化15】

式中、X及びZは上記で定義された通りであり、そしてDはハロゲンである。ハロゲン化剤は出発材料のヒドロキシ置換基をハロゲンへと変換可能であるいずれかの試薬である。好ましくは、ハロゲン化剤は四臭化炭素とトリフェニルホスフィンとの1:1混合物であり、この場合、Dは臭化物となる。反応は、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル溶媒中で実行される。
【0083】
反応スキーム6
【化16】

式中、X、Z及びDは上記で定義された通りである。溶媒Cは、好ましくはアセトンのような極性非プロトン性溶媒である。カップリング剤は、フェノール又はチオフェノールとハロゲン化アルキルとをカップリングしてエーテルを生成可能であるいずれかの化合物、混合物又は化合物の配列である。いくつかのカップリング剤は還流条件又は極性非プロトン性溶媒を必要としない。好ましくは、カップリング剤は炭酸カリウムとヨウ化カリウムとの混合物である(K2CO3/KI)。
【0084】
反応スキーム7
【化17】

式中、X及びZは上記で定義された通りである。酸化剤は第一級アルコールをアルデヒド、好ましくは、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1.4−ベンゾキノン(DDQ)又はクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)へと選択的に変換可能であるいずれかの酸化化合物である。溶媒Dは非極性非プロトン性溶媒、好ましくはジクロロメタンである。
【0085】
反応スキーム8
【化18】

式中、Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ
【化19】

によって表される。X及びZは上記で定義された通りである。カップリング系は、好ましくは、ピロールから中間体ポルフィリノゲンを形成する三フッ化ホウ素(BF3)又はトリフルオロ酢酸(TFA)のようなルイス酸(電子受容体)、並びにポルフィリノゲンをポルフィリンへと酸化するベンズアルデヒド及び2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)のような酸化剤を含んでなる。溶媒Eは非極性非プロトン性溶媒、好ましくはジクロロメタンである。
【0086】
反応スキーム9
【化20】

式中、Y1、Y2、Y3及びY4は上記で定義された通りである。好ましい実施形態において、Mは、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、テクネチウム(Tc)、クロム(Cr)、白金(Pt)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)、金(Au)、バリウム(Ba)、タングステン(W)及びガドリニウム(Gd)よりなる群から選択される。より好ましい実施形態において、Mは銅(Cu)又はニッケル(Ni)である。使用される金属塩は、ポルフィリンにキレート化された金属イオンMを含有する。例えば、Mが銅であることが望ましい化合物に関して、酢酸銅、すなわち、Cu(OAc)2・H2Oが金属塩として使用されてよい。溶媒Fはポルフィリン及び金属塩を少なくとも部分的に可溶化可能であって、ポルフィリンへの金属の組み入れに干渉しないいずれかの溶媒又は溶媒混合物である。
【0087】
例えばスキーム1〜8を使用して、そして例1〜8を参照し、8−カルボラン含有ポルフィリン、すなわち、ポルフィリン(VIII)が調製される。ポルフィリンVIIIは以下の構造を有する。
【化21】

ポルフィリンVIIIは上記に示される。この場合、a、b、c及びdは1であり、Y1、Y2、Y3及びY4は式(2)によって表され;DはZであり、Zは−C2HB1010カルボランであり;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;mは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4はフェニル環のメタ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基はフェニル環の3位及び5位にあり、そしてe、f、g、h、k、l、u及びwは0である。
【0088】
上記で示されたものと同様の反応スキームを使用して、以下に示されるポルフィリンA、B、C及びDの容易な合成が予想される。実際に、これらのポルフィリン化合物のそれぞれに関する出発材料は容易に合成されるか、又は合成の工程に存在する。
【0089】
ポルフィリンA、親水基W1、W2、W3及びW4を含有する8−カルボラン含有ポルフィリン:
【化22】


上記ポルフィリンAの場合、a、b、c、d、e、f、g及びhは1であり;k、l、u及びwは0であり;Y1、Y2、Y3及びY4(すなわち、O−Ar)は各フェニル環のパラ位にあり、親水基W1、W2、W3及びW4は各フェニル環のメタ位にあり、W1、W2、W3及びW4はメトキシであり;−X2−(CR34p−D置換基はArフェニル環の3位及び5位にあり;DはZであり、Zは−C2HB1010カルボランである。
【0090】
ポルフィリンB、12−カルボラン含有ポルフィリン:
【化23】

上記ポルフィリンBの場合、k、l、u及びwは1であり;a、b、c及びdは1であり、Y1、Y2、Y3及びY4は式(2)によって表され;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;mは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4(すなわち、O−Ar)は各フェニル環のメタ位にあり;Y5、Y6、Y7及びY8(この場合、O−CH2−C2HB1010)は各フェニル環のパラ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基はArフェニル環の3位及び5位にあり;DはZであり、Zは−C2HB1010カルボランであり;XaはOであり;Ra及びRbはHであり;vは1であり、そしてe、f、g及びhは0である。
【0091】
ポルフィリンC、8−カルボラン含有ポルフィリン:
【化24】

上記ポルフィリンCの場合、a、b、c及びdは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4(すなわち、O−Ar)は式(2)によって表され;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;mは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4は各フェニル環の2個のメタ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基はArフェニル環の3位及び5位にあり;DはZであり、Zは−C2HB1010カルボランであり;k、l、u及びwは0であり;そしてe、f、g及びhは0である。
【0092】
ポルフィリンD、16−カルボラン含有ポルフィリン:
【化25】

上記ポルフィリンDの場合、a、b、c及びdは1であり;e、f、g、h、k、l、u及びwは0であり;Y1、Y2、Y3及びY4は式(2)によって表され;X1及びX2はOであり;R1、R2、R3及びR4はHであり;n及びpは1であり;mは2であり;Y1、Y2、Y3及びY4(すなわち、O−Ar)は各フェニル環のメタ位にあり;−X2−(CR34p−D置換基はフェニル環の3位及び5位にあり;Dは式(3)で表され、X3はOであり、R10及びR11はHであり、sは1であり、D’はZであり、Zは−C2HB1010カルボランであり;qは2であり、そしてiは0である。
【0093】
上記16−カルボラン含有ポルフィリン(ポルフィリンD)の合成のために現在利用されている反応スキームを以下に示す。
【化26】

【0094】
例示の目的のため、そして現時点での本発明の最良の形態を説明するために以下に例を明らかにする。本発明の範囲は、本明細書に明らかにされる例によっていずれかの様式に限定されない。
【0095】
例1
3,5−ジプロパルギルオキシベンジルアルコール(I)の合成
微細粉末状のK2CO3、14グラム(0.10モル)及びKl、17グラム(0.10モル)を500mL丸底フラスコ中に加え、そして200mLアセトンを添加した。次いで、窒素雰囲気下、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール、4.2グラム(0.03モル)及び塩化プロパルギル、5.3グラム(0.07モル)を添加した。得られた混合物を一晩還流した。薄層クロマトグラフィの結果は、新たな化合物の存在と同様に出発材料(3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール)を示さなかった。溶液を濾過し、そして濾過された固体をアセトンで洗浄した。得られた濾液のアセトンをロータリーエバポレーションによって除去し、そして有機残渣が残った。ジクロロメタン(50mL)を添加して有機残渣を溶解し、そしてこれを水(30mL×2)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。有機相を濾過後、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去すると黄色油状物が残り、これは静置時に凝固した。6.3gの生成物が得られた。これは収率97%と一致する。
【0096】
この生成物は79〜80℃の融点を有し、そして(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:2.52(三重線,2H,アルキニル);2.15(広域一重線,1H,ヒドロキシル);4.65(二重線,4H,ArOCH2);4.60(一重線,2H,ArCH2);6.52(一重線,1H,アリール);6.60(一重線,2H,アリール)。この生成物は(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン−デカップルド(proton−decoupled)炭素−13核磁気共鳴(13C NMR)スペクトルが得られた:56.1(ArOCH2);65.1(ArCH2);75.9(アルキニル);78.6(アルキニル);101.6(アリール);106.4(アリール);143.8(アリール);159.0(アリール)。質量スペクトル(FAB)によって217.5の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。
【0097】
例2
3,5−ジプロパルギルオキシベンジルアセテート(II)の合成
3,5−ジプロパルギルオキシベンジルアルコール(I)、6.3グラム(0.029モル)を7mL(0.07モル)の無水酢酸中で撹拌した。次いで、濃硫酸2滴を溶液に添加した。溶液を90〜100℃の温度範囲で3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィの結果は、新たな化合物の存在と同様に出発材料(I)を示さなかった。次いで溶液を氷水50mL中へ注入した。溶液のpHが少なくとも8となるまで、飽和炭酸ナトリウム水溶液をゆっくり添加した。この時点で二酸化炭素物のさらなる放出はなかった。水溶液を50mL×2のジクロロメタンで抽出し、そして有機相は水(50mL×2)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。焼結ガラスロート中でシリカのパッドを使用して所望の生成物を精製し、次いでシリカのパッドを200mLジクロロメタンで洗浄した。濾液のジクロロメタンをロータリーエバポレーションによって除去すると黄色油状物が残り、これは静置時に凝固した。7.2gの生成物が得られた。これは収率96%と一致する。
【0098】
この生成物は65〜66℃の融点を有し、そして(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:2.11(一重線,3H,CH3);2.54(三重線,2H,アルキニル);4.67(二重線,4H,ArOCH2);5.05(一重線,2H,ArCH2);6.58(一重線,1H,アリール);6.61(一重線,2H,アリール)。この生成物は(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトンデカップルド13C NMRスペクトルが得られた:21.3(CH3);56.0(ArOCH2);66.2(ArCH2);76.2(アルキニル);78.6(アルキニル);102.3(アリール);108.0(アリール);138.8(アリール);159.0(アリール);171.1(CO)。質量スペクトル(FAB)によって259.5の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。
【0099】
例3
3,5−o−ジカルボラニルメトキシルベンジルアセテート(III)の合成
200mL丸底フラスコ中で80mLの乾燥トルエン中にデカボラン、2.70グラム(0.022モル)を溶解し、そして窒素雰囲気下の室温で撹拌した。アセトニトリル、12mL(0.22モル)をシリンジで溶液に添加した。次いで溶液を3時間撹拌した。次いで、80mLのトルエン中に2.84グラム(0.011モル)の3,5−ジプロパルギルオキシベンジルアセテート(II)からなる溶液をシリンジで溶液に添加した。得られた混合物を80〜90℃までゆっくり加熱し、そして2日間その温度範囲で撹拌した。薄層クロマトグラフィの結果は、新たな化合物の存在と同様に出発材料(II)を示さなかった。次いで溶媒をロータリーエバポレーションによって除去すると、有機残渣が残った。有機残渣を約50mLのメタノールで溶解し、そして1時間還流下で撹拌して過剰量のデカボランを分解した。次いで、メタノールをロータリーエバポレーションによって除去した。有機残渣を50mLのジクロロメタン中に溶解し、次いで焼結ガラスロート中のシリカのパッドを使用して精製した。シリカのパッドを200mLの追加のジクロロメタンで洗浄した。濾液のジクロロメタンをロータリーエバポレーションによって除去すると黄色油状物が残り、これは静置時に凝固した。4.40グラムの生成物が得られた。これは収率81%と一致する。
【0100】
この生成物は122〜123℃の融点を有し、そして(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:2.12(一重線,3H,CH3);4.06(一重線,2H,CCHB1010);4.39(一重線,4H,ArOCH2);5.01(一重線,2H,ArCH2);6.32(一重線,1H,アリール);6.52(一重線,2H,アリール)。この生成物は(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトンデカップルド13C NMRスペクトルが得られた:21.4(CH3);58.3(ArOCH2);65.8(ArCH2);69.6(−CCHB1010);71.5(−CCHB1010);102.3(アリール);108.5(アリール);139.8(アリール);158.6(アリール);171.0(CO)。質量スペクトル(FAB)によって496.0の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。
【0101】
例4
3,5−o−ジカルボラニルメトキシルベンジルアルコール(IV)の合成
濃塩酸、4.0mLを、60mLのメタノール中の4.0グラム(8.0ミリモル)の3,5−o−ジカルボラニルオキシメチルベンジルアセテート(III)からなる溶液に添加した。混合物を2時間還流し、その後、薄層クロマトグラフィの結果は、新たな化合物の存在と同様に出発材料(III)を示さなかった。次いで溶媒をロータリーエバポレーションによって除去すると黄色油状物が残った。3.4グラムの生成物が得られた。これは収率93%と一致する。
【0102】
この生成物は267〜269℃の融点を有し、そして(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:2.54(広域一重線,1H,ヒドロキシル);4.04(一重線,2H,CCHB1010);4.40(一重線,4H,ArOCH2);4.65(一重線,2H,ArCH2);6.28(一重線,1H,アリール);6.54(一重線,2H,アリール)。この生成物は(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトンデカップルド13C NMRスペクトルが得られた:58.0(ArOCH2);64.7(ArCH2);69.4(−CCHB1010);71.3(−CCHB1010);101.5(アリール);106.6(アリール);144.7(アリール);158.5(アリール)。質量スペクトル(FAB)によって453.0の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。
【0103】
例5
3,5−o−ジカルボラニルメトキシルベンジルブロミド(V)の合成
3.5−ジカルボラニルメトキシルベンジルアルコール(IV)、0.454グラム(1.0ミリモル)及び四臭化炭素、0.398グラム(1.2ミリモル)を約2mLの乾燥テトラヒドロフラン中に溶解した。トリフェニルホスフィン、0.314グラム(1.2ミリモル)を混合物に添加し、そして得られた混合物をアルゴン雰囲気下で20分間撹拌した。次いで混合物を水中に注入し、そして生成物をジクロロメタン(7mL×3)で抽出した。ジクロロメタン抽出物を無水炭酸カリウムで乾燥させ、次いでシリカパッドを使用して精製した。追加のジクロロメタンでシリカパッドを洗浄した。ジクロロメタン濾液をエバポレーションして乾燥させると、白色固体が残った。0.485グラムの生成物が得られた。これは収率92%と一致する。
【0104】
この生成物は230〜232℃の融点を有し、そして(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:4.02(一重線,2H,CCHB1010);4.37(一重線,2H,CH2Br);4.39(一重線,4H,ArOCH2);6.26(一重線,1H,アリール);6.55(一重線,2H,アリール)。この生成物は(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトンデカップルド13C NMRスペクトルが得られた:32.4(CH2Br);58.0(ArOCH2);69.5(−CCHB1010);71.1(−CCHB1010);102.3(アリール);109.2(アリール);141.2(アリール);158.4(アリール)。質量スペクトル(FAB)によって516.9の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。
【0105】
例6
3−[3,5−o−ジカルボラニルメトキシベンジルオキシ]ベンジルアルコール(VI)の合成
2CO3、0.210グラム(1.5ミリモル)及びKI、0.25グラム(1.5ミリモル)を50mL丸底フラスコに加えた。次いで、3,5−ジカルボラニル−メトキシルベンジルブロミド(V)、0.410グラム(0.80ミリモル)、3−ヒドロキシベンジルアルコール、0.100グラム(0.80ミリモル)及び20mLのアセトンを添加した。混合物をアルゴン雰囲気下で24時間還流した。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去すると、有機残渣が残った。10mLのジクロロメタンで残渣を抽出し、そして分液ロート中で有機相を水で洗浄した。次いで有機相を無水炭酸カリウムで乾燥させた。ジクロロメタンをロータリーエバポレーションによって除去すると、白色固体が残った。0.430グラムの生成物が得られた。これは収率96%と一致する。
【0106】
この生成物は259〜261℃の融点を有し、そして(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:1.70(一重線,1H,ヒドロキシル);4.04(一重線,2H,CCHB1010);4.40(一重線,4H,CH2CCHB1010);4.67(一重線,2H,ArCH2OH);5.00(一重線,2H,ArCH2OAr);6.31(一重線,1H,アリール);6.60(一重線,2H,アリール);6.87(多重線,1H,アリール);7.00(多重線,2H,アリール);7.26(多重線,1H,アリール)。この生成物は(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトンデカップルド13C NMRスペクトルが得られた:58.2(CH2CCHB1010);65.5(ArCH2OH);69.6(−CCHB1010);71.4(−CCHB1010);102.0(アリール);107.4(アリール);113.6(アリール);114.3(アリール);120.2(アリール);130.2(アリール);141.2(アリール);143.1(アリール);158.7(アリール);158.8(アリール)。質量スペクトル(FAB)によって559.0の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。
【0107】
例7
3−[3,5−o−ジカルボラニルメトキシベンジルオキシ]ベンズアルデヒド(VII)の合成
クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、0.172グラム(0.80ミリモル)を10mLのジクロロメタン中に溶解した。氷水浴中で得られた溶液を冷却した。10mLのジクロロメタン中に溶解された0.223グラム(0.40ミリモル)の3−[3,5−ジカルボラニルメトキシベンジル]ベンジルアルコール(VI)の溶液をPCC溶液に滴下した。混合物を2時間撹拌した。薄層クロマトグラフィの結果は、新たな化合物の存在と同様に出発材料(VI)を示さなかった。厚さ2センチメートルのシリカの層を含有する焼結ガラスロートを使用して、主生成物を精製した。フラスコ及びシリカの層を過剰量のジクロロメタンで完全に洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去すると白色固体が残った。0.220グラムの生成物が得られた。これは収率99%と一致する。
【0108】
この生成物は263〜265℃の融点を有し、そして(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:4.04(一重線,2H,CCHB1010);4.42(一重線,4H,ArOCH2);5.00(一重線,2H,ArCH2O);6.33(一重線,1H,アリール);6.61(一重線,2H,アリール);7.23(一重線,1H,アリール);7.44(多重線,1H,アリール);7.50(多重線,2H,アリール);9.98(一重線,1H,CHO)。この生成物は(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトンデカップルド13C NMRスペクトルが得られた:58.0(CH2CCHB1010);69.5(−CCHB1010);69.7(ArCH2OAr);71.2(−CCHB1010);102.0(アリール);107.4(アリール);112.8(アリール);122.4(アリール);124.8(アリール);130.6(アリール);138.1(アリール);138.4(アリール);140.3(アリール);158.6(アリール);192.1(CHO)。質量スペクトル(FAB)によって558.0の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。
【0109】
例8
メソ−5,10,15,20−テトラキス[3−(3,5−o−ジカルボラニルメトキシベンジルオキシ)フェニル]ポルフィリン(VIII)の合成
3−[3,5−o−ジカルボラニルメトキシベンジルオキシ]ベンズアルデヒド(VII)、337ミリグラム(0.60ミリモル)、100mLのジクロロメタン及び420マイクロリットル(0.60ミリモル)の新しい蒸留ピロールを連続的に乾燥300mL丸底フラスコに移し入れた。15〜20分間撹拌しながら、溶液中にアルゴン気体を直接的にバブリングすることによって溶液を脱酸素した。次いで、BF3・Et2O、72マイクロリットルの1Mジクロロメタン溶液(0.072ミリモル)を添加した。溶液をアルゴン雰囲気下で一晩撹拌し、その後、溶液は赤茶色になった。次いで、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1.4−ベンゾキノン(DDQ)、150ミリグラム(0.60ミリモル)を添加し、これは直後に非常に暗色の溶液へと変化した。この溶液を1時間還流下で撹拌した。次いで、約40mLのシリカを含有する60mL焼結ガラスロートを使用して、溶液中の主生成物を精製した。得られた暗色の濾液をロータリーエバポレーションし、乾燥させた。薄層クロマトグラフィの結果によって、新たな紫色生成物並びにいくらかの汚染物質の存在を確認した。固体をジクロロメタン中に再溶解し、次いでもう1本の短いシリカカラムを使用して、ジクロロメタンとヘキサンとの1:1の溶媒混合物を使用して溶出させて再精製した。薄層クロマトグラフィの結果によって汚染物質が存在しないことを確認した。得られた暗色の濾液をロータリーエバポレーションし、乾燥させ、紫色生成物が得られた。78ミリグラムの生成物が得られた。これは収率22%と一致する。
【0110】
この生成物では(CDCl3溶媒中)ppmで以下のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルが得られた:−2.84(一重線,2H,NH);3.97(一重線,8H,CCHB1010);4.35(一重線,16H,ArOCH2);5.19(一重線,8H,ArCH2);6.31(一重線,4H,アリール);6.65(一重線,8H,アリール);7.40(一重線,4H,アリール);7.70(多重線,4H,アリール);7.79(多重線,4H,アリール);7.86(多重線,4H,アリール);8.84(一重線,8H,ピロール−H)。質量スペクトル(FAB)によって2418.3の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。生成物の紫外−可視吸収スペクトル(ジクロロメタン)によってナノメートルで以下の波長ピークが示された:420、516、550、589及び645。
【0111】
例9
銅メソ−5,10,15,20−テトラキス[3−(3,5−o−ジカルボラニルメトキシベンジルオキシ)フェニル]ポルフィリン(IX)の合成
5mLメタノール中のCu(OAc)2・H2O(6ミリグラム、0.030ミリモル)の溶液をポルフィリン化合物(VIII)の溶液(60ミリグラム、20mLジクロロメタン中0.025ミリモル)中に添加した。混合物を20分間撹拌した。次いで溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。得られた残渣をジクロロメタン中で溶解し、水で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤を濾過除去した。濾液の溶媒をロータリーエバポレーションによって除去すると、赤色固体残渣が残った。この固体をジクロロメタン中に再溶解し、そしてシリカパッドを使用し、ヘキサンとジクロロメタンとの1:1の溶媒混合物によって溶出して精製した。ロータリーエバポレーションによって溶媒を除去すると赤色の銅ポルフィリン化合物、57ミリグラムの生成物が残った。これは収率92%と一致する。
【0112】
質量スペクトル(FAB)によって2479.9の親イオンピークが示され、これは化合物の分子量に一致する。生成物の紫外−可視吸収スペクトルによってナノメートルで以下の波長ピークが示された(ジクロロメタン溶媒中):416、539。
【0113】
例10
ホウ素化ポルフィリン溶液の調製
食塩水中9%クレモフォル(Cremophor)EL及び18%プロピレングリコールにポルフィリン化合物(IX)を乳化し、約2.9mg/mLのポルフィリン化合物濃度を得た。9%クレモフォル(Cremophor)EL(CRM)及び18%プロピレングリコール(PRG)中で約2.9mg/mLまでのポルフィリン溶液を調製するために、ポルフィリンをテトラヒドロフラン(THF)(総体積1.5%)に溶解し、次いで15分間40℃まで加熱した。次いでCRM(総体積9%)を添加し、そして混合物を2時間60℃まで加熱することによって、ほとんどのTHFを除去した。室温まで冷却後、PRG(総体積18%)を添加し、続いて急速に撹拌しながら食塩水(総体積71.5%)をゆっくり滴下した。真空(約30mmHg)下で30〜60分間撹拌することによって溶液を脱気し、次いで濾過した(ミリポア(Millipore)、8μm)。
【0114】
例11
EMT−6癌腫を有するマウスにおけるポルフィリンIXの生体分布
背側胸郭で皮下移植されたEMT−6乳癌を有するBALB/cマウスに、8時間かけて3回の腹腔内(i.p.)注射で体重1キログラムあたり総用量87ミリグラムのポルフィリン化合物(IX)(30mg B/kg)を与えた。最後の注射から2日及び4日後、マウスを安楽死させ、そして腫瘍、血液、脳及び肝臓を取り出してホウ素分析した。最初に、ホウ素に関して分析する前に血液学的パラメーターに関して血液を分析したところ、毒性が示された。以下の表1に、体重1キログラムあたりのポルフィリン化合物(IX)のミリグラムで、5個体のBALB/cマウスの異なる種類の組織に関する平均ホウ素濃度を示す。
【0115】
【表1】

【0116】
例12
ポルフィリン(IX)からの重量変化及び血液学的パラメーター
【0117】
【表2】

【0118】
予備的な生体分布研究の結果から、腫瘍ホウ素濃度は特に2日の時点で治療に適切であることが示された。腫瘍対血液のホウ素比は極めて高くて80:1以上より高く、そして腫瘍対脳の比率はさらに高い。血小板のデータは、溶媒のみが投与されたマウスと比較して、ポルフィリンが投与されたマウスにおいて2日の時点で小さいが著しい減少を示す。しかしながら、4日の時点までに、血小板の数は溶媒のみの群からのものよりも高いレベルまで回復している。体重のデータは、ポルフィリンが注射されたマウスと溶媒が注射されたマウスとの間では差異がないため、毒性のレベルが存在するとしても非常に低いことを示す。従って、毒性に影響することなく用量を著しく増加させることが可能である。
【0119】
本発明の好ましい実施形態が記載されているが、当業者は、本発明の趣旨から逸脱することなく、本明細書で明らかにされた請求の範囲内に入る全てのかかるさらなる変更及び変形を含む他の実施形態を実行することが可能であることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化1】

(式中、
1、Y2、Y3及びY4は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にあり、そして独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、あるいはヒドロキシ、アルコキシ、−C(O)OR5、−SOR6、−SO26、ニトロ、アミド、ウレイド、カルバマト、−SR7、−NR89又はポリアルキレンオキシドから選択される1〜4個の親水基によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル又はヘテロアリール基;あるいは次式
【化2】

によって表される置換基であり、式中、Dは、独立して、Z、水素又は次式
【化3】

によって表される置換基を表すが、ただし、Dの少なくとも1個がZであるか、又は式(3)によって表され;
式中、D’は、独立して、Z、水素又は次式
【化4】

によって表される置換基を表すが、ただし、qが0である場合、又はqがゼロではなく、そしてD’が単独で水素である場合、Dの少なくとも1個はZによって表されるか、あるいはqがゼロではなく、そしてD’が式(4)によって表され、そしてrがゼロである場合、Dの少なくとも1個はZによって表され;
5、Y6、Y7及びY8は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にあり、そして次式
【化5】

によって表され;
1、W2、W3、W4、W5及びW6は、独立して、フェニル環のオルト、メタ又はパラ位にある親水基であり、そして独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、−C(O)OR5、−SOR6、−SO26、ニトロ、アミド、ウレイド、カルバマト、−SR7、−NR89又はポリアルキレンオキシドから選択され;
a、X1、X2、X3及びX4は、独立して、酸素又は硫黄であり;
a、Rb、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、独立して、水素及びC1〜C4アルキルから選択され;
Zは、かご型構造内に少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも3個のホウ素原子、又は少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも5個のホウ素原子を含んでなるカルボランクラスターであり;
n、p、s、t及びvは、独立して、0、又は1〜20の整数を表し;
mは、独立して、1、2又は3を表し;
q及びrは、独立して、0、1、2又は3を表し;
a、b、c及びdは、独立して、1又は2を表し;
k、l、u及びwは、独立して、0、1又は2を表し;
e、f、g、h、i及びjは、独立して、0、又は1〜5の整数を表すが;
ただし、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1個は式(2)を表し;a+e+k、b+f+l、c+g+u、h+d+w、q+i、r+jの各合計は、独立して、1〜5の整数を表し;k、l、u又はwのいずれかがゼロではない場合、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1個が式(2)を表し;そして
Mは、2個の水素イオン;単一の一価金属イオン;2個の一価金属イオン;二価金属イオン;三価金属イオン;四価金属イオン;五価金属イオン;六価金属イオン;ラジオアイソトープによって仲介される放射線療法において有用であるか、又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)若しくは陽電子放射型断層撮影(PET)によって画像化可能な放射性金属イオン;磁気共鳴画像(MRI)によって検出可能な常磁性金属イオン;ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)又は光線力学療法(PDT)に適切な金属イオン;あるいはそれらの組み合わせであり;単一の一価金属イオンから誘導されたポルフィリン金属錯体は対カチオンによって荷電平衡化され、そして三価、四価、五価、六価金属イオンから誘導されたポルフィリン金属錯体は適切な数の対アニオン、ジアニオン又はトリアニオンによって荷電平衡化される)の化合物。
【請求項2】
Zがカルボラン−C2HB910又は−C2HB1010から選択され、−C2HB910がニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010がクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Mがバナジウム、マンガン、鉄、ルテニウム、テクネチウム、クロム、白金、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、イットリウム、金、バリウム、タングステン又はガドリニウムである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
a、b、c及びdが1であり、そしてY1、Y2、Y3及びY4
【化6】

によって表される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
DがZであり、Zがカルボラン−C2HB910又は−C2HB1010から選択され、−C2HB910がニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010がクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Mがバナジウム、マンガン、鉄、ルテニウム、テクネチウム、クロム、白金、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、イットリウム、金、バリウム、タングステン又はガドリニウムである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
1及びX2がOであり;R1、R2、R3及びR4がHであり;n及びpが1であり;そしてmが2である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
1、Y2、Y3及びY4が各フェニル環のメタ位にある請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
−X2−(CR34p−D置換基が各フェニル環の3位及び5位にある請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
−X2−(CR34p−D置換基がフェニル環の3位及び4位にある請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
e、f、g、h、k、l、u及びwが0である請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
e、f、g及びhが1であり、そしてk、l、u及びwが0である請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
1、W2、W3及びW4が、独立して、ヒドロキシ又はアルコキシである請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
1、W2、W3及びW4がアルコキシである請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
アルコキシがメトキシである請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
1、Y2、Y3及びY4が各フェニル環のパラ位にある請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
1、W2、W3及びW4が各フェニル環のメタ位にある請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
−X2−(CR34p−D置換基が各フェニル環の3位及び5位にある請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
−X2−(CR34p−D置換基がフェニル環の3位及び4位にある請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
k、l、u及びwが1である請求項9に記載の化合物。
【請求項21】
5、Y6、Y7及びY8が各フェニル環のパラ位にある請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
−Xa−(CRabv−Z置換基が各フェニル環の3位及び5位にある請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
−Xa−(CRabv−Z置換基がフェニル環の3位及び4位にある請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
aがOであり;Ra及びRbがHであり;vが1であり、そしてZがカルボラン−C2HB910又は−C2HB1010から選択され、−C2HB910がニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010がクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである請求項22又は23に記載の化合物。
【請求項25】
e、f、g及びhが0である請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
a、b、c及びdが2であり、そしてY1、Y2、Y3及びY4
【化7】

によって表される請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
DがZであり、そしてZがカルボラン−C2HB910又は−C2HB1010から選択され、−C2HB910がニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010がクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
Mがバナジウム、マンガン、鉄、ルテニウム、テクネチウム、クロム、白金、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、イットリウム、金、バリウム、タングステン又はガドリニウムである請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
1及びX2がOであり;R1、R2、R3及びR4がHであり;n及びpが1であり;そしてmが2である請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
1、Y2、Y3及びY4が各フェニル環の2個のメタ位にある請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
−X2−(CR34p−D置換基が各フェニル環の3位及び5位にある請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
−X2−(CR34p−D置換基がフェニル環の3位及び4位にある請求項30に記載の化合物。
【請求項33】
k、l、u及びwが0である請求項31又は32に記載の化合物。
【請求項34】
e、f、g及びhが0である請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
1及びX2がOであり;R1、R2、R3及びR4がHであり;n及びpが1であり;mが2であり、そしてDが
【化8】

によって表される請求項4に記載の化合物。
【請求項36】
3がOであり、R10及びR11がHであり、sが1であり、D’がZであり、qが2であり、そしてiが0であり、Zがカルボラン−C2HB910又は−C2HB1010から選択され、−C2HB910がニド・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランであり、そして−C2HB1010がクロソ・オルト−、メタ−又はパラ−カルボランである請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
請求項1に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の画像化とを含んでなる患者の腫瘍及び周辺組織の画像化法。
【請求項38】
請求項11に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の画像化とを含んでなる患者の腫瘍及び周辺組織の画像化法。
【請求項39】
請求項18に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の画像化とを含んでなる患者の腫瘍及び周辺組織の画像化法。
【請求項40】
請求項25に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の画像化とを含んでなる患者の腫瘍及び周辺組織の画像化法。
【請求項41】
請求項34に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の画像化とを含んでなる患者の腫瘍及び周辺組織の画像化法。
【請求項42】
請求項36に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の画像化とを含んでなる患者の腫瘍及び周辺組織の画像化法。
【請求項43】
前記画像化が磁気共鳴画像(MRI)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)法から選択される方法による請求項37、38、39、40、41又は42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の照射とを含んでなる患者の二項性の癌治療法。
【請求項45】
請求項11に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の照射とを含んでなる患者の二項性の癌治療法。
【請求項46】
請求項18に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の照射とを含んでなる患者の二項性の癌治療法。
【請求項47】
請求項25に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の照射とを含んでなる患者の二項性の癌治療法。
【請求項48】
請求項34に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の照射とを含んでなる患者の二項性の癌治療法。
【請求項49】
請求項36に記載の化合物を含んでなる組成物の患者への投与と、前記患者の照射とを含んでなる患者の二項性の癌治療法。
【請求項50】
前記照射が熱中性子若しくは熱外中性子、又はレーザー赤色光を利用する方法による請求項44、45、46、47、48又は49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記二項性の癌治療がホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を含んでなる請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記二項性の癌治療が光線力学療法(PDT)を含んでなる請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記二項性の癌治療が単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)を利用し、MがSPECT−及び/又はPET−画像化可能な放射性金属イオンである請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記二項性の癌治療が磁気共鳴画像(MRI)を利用し、Mが常磁性金属イオンである請求項44に記載の方法。
【請求項55】
対ジアミンが二価負電荷を含有するポルフィリン化合物である請求項1に記載の化合物。
【請求項56】
二価負電荷を含有するポルフィリン化合物が請求項1に記載の化合物であるが、ただし、Mが存在しない請求項55に記載の化合物。

【公表番号】特表2008−504365(P2008−504365A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519285(P2007−519285)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/022061
【国際公開番号】WO2006/012140
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(501050830)ブルックヘヴン サイエンス アソシエイツ (9)
【Fターム(参考)】