説明

カルボン酸のアルカリ金属塩から純粋アルキルエステルを調製するプロセス

カルボン酸の脱水アルカリ金属塩を、メタノール、エタノールまたはブタノールなどのアルコールに溶解することにより、対応するアルコールの溶液を生成する。溶液アルコールをさらに、加圧下または大気圧下で150〜200℃の高温で二酸化炭素により処理する。カルボン酸は、対応するアルキルエステルと、副生成物としての炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムとに変換される。アルカリ金属塩のメタノール、エタノールまたはブタノール溶液としての乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムまたはサリチル酸ナトリウムは、加圧下または大気圧下で高温で二酸化炭素により処理されると、生成物としての乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、安息香酸メチルまたはサリチル酸メチルに変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純粋アルキルエステルを、二酸化炭素とアルコールとを用いて、対応するカルボン酸のアルカリ金属塩から調製するプロセスを提供する。アルカリ金属カルボン酸塩は、発酵プロセスまたは合成によって天然のソースから調製される。
【背景技術】
【0002】
高純度S−(−)−乳酸メチルは、産業レベルで興味深い適用の可能性を有する重要な生成物を構成する。薬剤および高純度乳酸の製造に用いることができる。このようにして製造された乳酸は、乳製品の製造、栄養分野での酸味剤として、可塑剤、接着剤および薬品の製造における中間物質として、乳酸塩の製造、ウールの染色における媒染剤として、および他の目的で用いることができる。同様に、高純度乳酸メチルから調製された高純度乳酸は、バッグ、アプリケーションフィルムの製造に有用な生体適合性および生物分解性を有するポリマーの製造分野、衛生および医療分野などの分野で産業的に発展することが大いに期待されている。
【0003】
従来技術で公知の乳酸メチルを製造する方法は概して2つの工程を含む。工程1では、アルカリ金属乳酸塩を濃縮または希釈硫酸と反応させる。アルカリ金属硫酸塩が副生成物として、乳酸の希釈水溶液と共に生成される。工程2では希釈乳酸溶液を、触媒を用いてメタノールで濃縮しエステル化する。得られた乳酸メチルとメタノールと水との混合物をさらに精製することにより生成物、すなわち乳酸メチルを得る。乳酸メチルの製造方法としては上記の大まかな方法に基づいて過去に種々の方法が示唆されており、以下の特許文献に記載されている米国特許第2290926号、第2406648号、第2390140号、第2334524号、第2350370号および第2434300号を参照し得る。これらの文献には乳酸メチルの製造方法が開示されているが、これらの方法は、生成物が純粋でない、生成物を分離するために高価でかなりのエネルギーを要するプロセスを必要とする、硫酸ナトリウムが残渣として出る、腐食する、その他いくつかを含む様々な欠点がある。
【0004】
米国特許第6,342,626号を参照し得る。ここでは乳酸メチルを、73%乳酸から2段階で200℃の高温かつ20kg/cm2の高圧で製造する方法が記載されている。このプロセスは2段階で行われる。第1段階では、報告されている乳酸の平衡変換は約80%であり、第1段階の副生成物を単離した後、第2段階で、乳酸の残りを変換する。欠点は、より高温および高圧を用いること、および乳酸が腐食する性質を有しているため、商業的製造を立ち上げるコストが上がることである。さらなる欠点は、乳酸はこのように非常に高温でラセミ化し得ることである(C.H.Holtan、Lactic Acid、properties and chemistry of lactic acid derivatives、(乳酸、乳酸誘導体の特性と化学的作用)Printer Oswald Schmidt KG Leipzig、1971、149頁)。さらに、乳酸メチルの光学純度および生成された乳酸メチルの化学純度は報告されていない。
【0005】
米国特許第5453365号を参照し得る。ここでは、糖を含む混合物の発酵により乳酸塩を調製し、発酵中に得られた乳酸をその塩に変換し、その後エステル化する連続的プロセスが開示されている。ここでは、
a)アルカリ土類金属炭酸塩または重炭酸塩を発酵液に添加することにより、得られた乳酸を少なくとも90モル%の度合いまで中和し、
b)NH3およびCO2の添加により、得られた発酵液をpH7〜13に調整し、得られた沈殿物を分離し、
c)得られた精製乳酸アンモニウム溶液をアルコールでエステル化する。
【0006】
従来技術で報告されている乳酸メチルの大まかな調整方法によると、アルカリ金属乳酸塩を酸性にすることにより粗乳酸と副生成物としてアルカリ金属硫酸塩とを生成し、その後反応性蒸留の並流方法により粗乳酸をエステル化する。反応性蒸留の並流方法では、反応性蒸留器を高温に維持することにより、生成物である乳酸メチルならびに副生成物である水および超過アルコールを反応性蒸留器から取り出す。これにより反応性蒸留器に酸性が蓄積され、ヒドロキシメチルフルフラル、2−ペンテン−1−オールなどの望ましくない副生成物が生成される。並流反応性蒸留から得られた、アルコールと水と乳酸メチルとの混合物中で、乳酸メチルが水と共沸混合物を生成すること、およびアルコールと水と乳酸メチルとの混合物から乳酸メチルを純粋無水物の形態で単離することは困難であることが公知である。報告されている従来技術では、生成物の不純物プロファイルおよびその光学純度については触れられていない。さらに、報告されている方法は、アルカリ金属乳酸塩を用いて粗乳酸を生成し、不要なアルカリ金属硫酸塩を生成している。報告されている方法のさらなる欠点は、アルカリ金属乳酸塩を硫酸と反応させた後に生成され非常に低いpH値に維持される粗乳酸は、非常に腐食し易い性質を有し、高温ではより腐食し易く、製造立ち上げおよびその構成原料は慎重に選択する必要があり、かなりの資本が必要だということである。これら報告されている方法のさらなる欠点は、アルカリ金属はアルカリ金属硫酸塩という形で廃棄物となり、アルカリは、アルカリ金属乳酸塩を生成する発酵セクションには再利用できないということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主要な目的は、メタノールまたはエタノールなどのアルコールと二酸化炭素を用いて、カルシウム、ナトリウムまたはカリウムのアルカリ金属カルボン酸塩を直接エステル化することにより純粋アルキルエステルを調製するプロセスを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、鉱酸を用いることなくアルキルエステルを調製するプロセスを提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウムまたは乳酸カリウムを直接エステル化することにより純粋乳酸メチルを提供し、反応の副生成物、すなわち重炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムをサトウキビ汁発酵プロセスで再利用することにより、対応するアルカリ金属乳酸塩を生成することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、硫酸カルシウム、硫酸ナトリムおよび硫酸カリウムを生成することなく純粋乳酸メチルおよび純粋乳酸を生成する汚染のないプロセスを提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、触媒を用いて又は用いないで加水分解可能することにより純粋乳酸を得ることができる純粋乳酸メチルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って本発明は、アルコールおよびCO2を用いてカルボン酸のアルカリ金属塩のエステル化を行うことにより光学的に純粋なアルキルエステルを調製する単一工程プロセスであって、
i.15分から30分の範囲の期間に亘って脱水粉末金属カルボン酸塩をメタノールと混合し、500〜1000rpmの範囲で攪拌することにより金属カルボン酸塩の5〜30重量%メタノール溶液を得る工程と、
ii.工程(i)で得た溶液を、20〜60.4kg/cm2の範囲で145〜165℃の範囲の温度で15分〜1時間の範囲の期間に亘って二酸化炭素により加圧することによりアルキルエステルおよび沈殿物として副生成物を得る工程と、
iii.工程(ii)で得た沈殿物を濾過により分離し、発酵セクションで再利用することによりグルコース源からアルカリ金属塩を得る工程と、
iv.アルカリ金属塩からアルキルエステルへの所望の変換がこれとは分離した副生成物と共に得られるまで、工程(i)、(ii)および(iii)を好ましくは3〜4回繰り返す工程と、
v.99.50〜99.8重量%の範囲の純度で蒸留することによりアルキルエステルを回収する工程であって、濾液の未反応メタノールから約0.03〜0.1重量%の水分を回収し再利用する工程と、
を含むプロセスを提供する。
【0013】
本発明の一実施形態では、上記副生成物は、対応するアルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、金属は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウムからなる群より選択される。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態では、金属のカルボン酸塩は、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩または安息香酸からなる群より選択される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、用いるアルコールは、メタノール、エタノールおよびブタノールからなる群より選択される。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態では、アルキルエステルの光学純度は、98〜99%の範囲である。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、プロセスは、バッチまたは連続モードで実施される。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態では、工程(b)でのプロセスに用いる再利用メタノールは、アルカリ金属塩に対して2.8:1〜4:1のモル比、好ましくは2.8対1のモル比を有する。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態では、金属カルボン酸塩からアルキルエステルへの変換パーセンテージは95〜99%の範囲である。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態では、反応の歩留まりは、90〜99.0%の範囲であり、アルキルエステルへの反応の選択性は99.0%の範囲である。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態では、アルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩が発酵セクションで再利用されることによりグルコース源からアルカリ金属カルボン酸塩が生成される。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態では、蒸留によるアルキルエステルの回収は必要に応じて真空を用いて行われる。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態では、アルカリおよびアルカリ土類金属塩は天然および必要に応じて非天然ソースから得られる。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態では、アルカリ金属カルボン酸塩は、発酵プロセスまたは合成によって天然のソースから調製される。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態では、アルキルエステルを調製するプロセスは鉱酸を用いることなく実施される。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態では、反応の副生成物、すなわち重炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムがサトウキビ汁発酵プロセスで再利用されることにより、対応するアルカリ金属乳酸塩が生成される。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明は、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウムを生成することなく純粋乳酸メチルおよび純粋乳酸を生成する汚染のないプロセスを提供する。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明は、触媒を用いて又は用いないで加水分解することにより純粋乳酸を得ることができる純粋乳酸メチルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】カルボン酸のアルカリ金属塩、アルコールおよびCO2ガスを高圧反応炉内で用いて、アルコールおよびCO2ガスの再利用が複数行われる、アルキルエステルの合成バッチプロセス。
【図2】カルボン酸のアルカリ金属塩、アルコールおよびCO2ガスを高圧反応炉内で用いる、アルキルエステルの合成バッチプロセス。
【図3】カルボン酸のアルカリ金属塩、アルコールおよびCO2ガスを高圧で用いる、アルキルエステルの合成連続プロセス。
【図4】アルカリ金属乳酸塩のメタノール無水溶液を生成するプロセス。
【図5】標準的炭酸カルシウムサンプルおよび、CO2とアルコールとを用いてカルボン酸のアルカリ金属塩をエステル化することにより調製した炭酸カルシウムサンプルのXRDパターン。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のプロセスは、二酸化炭素およびアルコール、好ましくはメタノールを用いて脱水アルカリ金属カルボン酸塩を直接エステル化することにより光学的に純粋なアルキルエステルを得る単一の工程を含む。このプロセスは、脱水アルカリ金属カルボン酸塩を、約1時間に亘って環流しながら反応させた後に蒸留することにより、純度約99.8重量%、水分0.03〜0.1重量%の所望の純粋アルキルエステルを調製する手順を含む。未反応のメタノールは回収され再利用される。
【0032】
プロセスは以下の工程を含む。
(a)脱水粉末アルカリ金属カルボン酸塩をメタノールと所望の化学量論比で反応させて5〜30%のメタノール溶液を得、145〜160℃の温度範囲で最長1時間に亘って二酸化炭素により20〜60kg/cm2の範囲で加圧することにより、アルキルエステルおよび沈殿物として対応するアルカリ金属炭酸塩または重炭素塩を得る工程、
(b)アルカリ金属炭酸塩または重炭素塩の上記沈殿物を濾過により分離し、これを発酵セクションで再利用することによりグルコース源からアルカリ金属塩を得る工程、
(c)アルカリ金属塩からアルキルエステルへの所望の変換が、これとは分離したアルカリ炭酸塩または重炭酸塩沈殿物と共に得られるまで、工程(a)および(b)に記載の手順を好ましくは3〜4回繰り返す工程、
(d)上記工程で得た濾液から合理的な度合いで純粋なアルカリエステル(<99.5%)を回収する工程。
【0033】
このようにして得た純粋アルキルエステルを必要に応じて加水分解することにより純粋乳酸を得てもよい。
【0034】
本発明のプロセスは必要に応じてバッチまたは連続モードで実施可能である。
【0035】
アルカリ金属は、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムなどから選択される。
【0036】
アルカリ金属塩は、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩および安息香酸などから選択される。
【0037】
蒸留によるアルキルエステルの回収は必要に応じて真空を用いて行われる。
【0038】
工程(b)のプロセスのために用いる再利用メタノールは、アルカリ金属塩に対して2.8:1〜4:1、好ましくは2.8対1のモル比を有する。
【0039】
得られるアルキルエステルの純度は、99.50〜99.8重量%の範囲であり、0約0.03〜0.1重量%が水分である。
【0040】
反応の歩留まりは99.0%より高く、アルキルエステルへの反応の選択性は99.0%よりも高い。
【0041】
本発明によって得られるアルキルエステルの光学純度は、99.0%よりも高い。
【0042】
アルカリおよびアルカリ土類金属塩は天然資源から得られる。本発明の一実施形態では、非天然ソースからも得られ得る。
【0043】
このようにして本発明のプロセスによって得られた高純度乳酸は、ポリ乳酸生成用のモノマーとして、生物分解性ポリマー調製用のモノマーとして、酸味剤として、食品添加物として、および乳酸メチルが溶剤として使用可能な薬剤分野で用いられ、薬剤分野でも適用される。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は説明のためにのみ記載するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
(高圧での乳酸カルシウムの直接エステル化)
(実施例1)
(粉末乳酸カルシウムの脱水)
サトウキビ汁発酵または他のいずれかのショ糖源から得た粉末乳酸カルシウムを、真空乾燥機を用いて真空中(50mbar)で80℃の温度で24時間、乾燥させた。乳酸カルシウム中の初期水分含有率は30%であり、乳酸カルシウム中の水分は1.5重量%まで低下した。この乾燥粉末乳酸カルシウムを以下に述べる実施例で用いた。
【0046】
(実施例2)
(反応用原料溶液の調製)
容量5Lの軟鋼製高圧反応炉に実施例1で述べた乾燥粉末乳酸カルシウム250gを純粋メタノール2250gと共に入れて最終的に10重量%となる乳酸カルシウムの純粋メタノール溶液を得た。その後この材料を、攪拌器を用いて15分間、周囲温度で750rpmで連続的に混合することにより、乳酸カルシウムのメタノール溶液を得た。この粗乳酸カルシウムのメタノール溶液を以下の実施例で原料溶液として用いた。
【0047】
(実施例3)
(二酸化炭素による、165℃、高圧での乳酸カルシウムのメタノール溶液の直接エステル化)(図1)
実施例2で説明したように調製した乳酸カルシウムの10重量%(1100g)希釈メタノール(2)溶液(1)を、容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素(3)ガスを反応炉内で加圧して、初期圧力20kg/cm2を得た。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は60.4kg/cm2に戻る。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。遠心分離器から得た炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器から回収した濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてメチルエステルおよびメタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。濾液中のメチルエステル濃度は7.5重量%であることがわかり、メタノール濃度は92.4重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は1.1重量%であった。所望の操作時間後、反応炉(4)の内部圧力をベント(10)を通して抜き、蒸気を分離器(11)まで送って二酸化炭素ガス(13)を別の揮発性反応混合液(12)から分離した。二酸化炭素ガスは(4)で再利用可能であり、別の揮発性反応混合液は(4)で再利用した。
【0048】
第2段階では、上記遠心分離器から得た濾液(9)を再び同じ軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて15分間、750rpmで連続的に攪拌した。再び、二酸化炭素ガス(13)を反応炉内で泡立てることにより反応炉の内圧を40kg/cm2にした。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は59.0kg/cm2まで上昇する。その後反応物質を25℃まで冷却し、その後反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。遠心分離器(5)から得た炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン内で110℃で乾燥させ(7)、貯蔵した(8)。遠心分離器からの回収濾液(9)をメチルエステル、メタノールおよび水分の含有率について上記のように分析した。濾液中のメチルエステル濃度は9.3重量%であることがわかり、メタノール濃度は90.1重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は1.0重量%であった。所望の操作時間後、反応炉(4)の内部圧力をベント(10)を通して抜き、蒸気を分離器(11)まで送って二酸化炭素ガス(13)を別の揮発性反応混合液(12)から分離した。このように分離した二酸化炭素は(4)で再利用可能であり、混合液は(4)で再利用可能である。
【0049】
第3段階では、上記第2段階の遠心分離器から得た濾液を再び同じ軟鋼製高圧反応炉(4)に入れた。他の操作手順およびパラメータは第1および第2段階と同じであった。反応炉内で得た最終圧力は55kg/cm2であることがわかった。遠心分離器(5)から得た濾液(9)中のメチルエステル濃度は10.4重量%であることがわかり、メタノール濃度は89.4重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は1.0重量%であった。所望の操作時間後、反応炉(4)の内部圧力をベント(10)を通して抜き、蒸気を分離器(11)まで送って二酸化炭素ガス(13)を別の揮発性反応混合液(12)から分離した。二酸化炭素ガスは(4)で再利用可能であり、別の揮発性反応混合液は(4)で再利用した。
【0050】
第4段階では、上記第3段階の遠心分離器から得た濾液を再び同じ軟鋼製高圧反応炉(4)に入れた。他の操作手順およびパラメータは第1、第2および第3段階と同じであった。反応炉内で得た最終圧力は54.5kg/cm2であることがわかった。遠心分離器(5)から得た濾液(9)中のメチルエステル濃度は11.6重量%であることがわかり、メタノール濃度は87.7重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は1.0重量%であった。所望の操作時間後、反応炉(4)の内部圧力をベント(10)を通して抜き、蒸気を分離器(11)まで送って二酸化炭素ガス(13)を別の揮発性反応混合液(12)から分離した。二酸化炭素ガスは(4)で再利用可能であり、別の揮発性反応混合液は(4)で再利用した。
【0051】
所望の段階の後、(4)で得た未変換のメタノール、メチルエステルおよび水分がある場合は水分を、リボイラを備えたタワー分別蒸留アセンブリ(14)に送って回収した。リボイラ内に安定化剤として1重量%のメチルエステル重炭素ナトリウムを加えた。分別蒸留アセンブリ(14)内で真空を用いて又は用いないで純粋メチルエステル(15)をメタノール(16)から分離し、別に貯蔵した。得られた純粋メタノールを(1)で再利用した。高純度メタノールエステル留分を回収した。これはGC分析で99.8重量%の純度を示し、水分含有率は0.03%であった。メチルエステル純液の光学回転を偏光計で測定し、(−)8.43であった。
【0052】
このように4段階で、乳酸カルシウムからメチルエステルへの97%を超える変換が観察された。
【0053】
(実施例4)
(トリエタノールアミンを用いた、二酸化炭素による、165℃、高圧での乳酸カルシウムのメタノール溶液の直接エステル化)(図1)
実施例1で述べた乾燥乳酸カルシウム(1)110gと、純粋メタノール(2)794gと、トリエタノールアミン(2a)110gとを、容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素ガス(3)を用いて反応炉を加圧して、初期圧力20kg/cm2を得た。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は61.2kg/cm2まで上昇する。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。炭酸カルシウムを含むウェットケーキをオーブン内で110℃で乾燥させ(7)、貯蔵した(8)。遠心分離器(5)から回収した濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてメチルエステルおよびメタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。濾液中のメチルエステル濃度は9.3重量%であることがわかり、メタノール濃度は89.9重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は0.5重量%であった。反応炉(4)の内部圧力をベント(10)を通して抜き、蒸気を分離器(11)まで送って二酸化炭素ガス(13)を分離した。二酸化炭素ガスは(4)で再利用可能である。別の揮発性反応混合液(12)は(4)で再利用した。
【0054】
第2段階では、上記遠心分離器(5)から得た濾液を再び同じ軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。再び二酸化炭素ガス(3)を用いて反応炉を加圧して20kg/cm2にした。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は59.0kg/cm2まで上昇した。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器(5)からの回収濾液(9)を、メチルエステル、メタノールおよび水分の含有率について上記のように分析した。濾液中のメチルエステル濃度は10.4重量%であることがわかり、メタノール濃度は89.1重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は0.6重量%であった。反応炉(4)の内部圧力をベント(10)を通して抜き、蒸気を分離器(11)まで送って二酸化炭素ガス(13)を別の揮発性反応混合液(12)から分離した。二酸化炭素ガスは(4)で再利用可能である。別の揮発性反応混合液(12)は(4)で再利用した。
【0055】
(実施例5)
(コントロール実験:165℃、高圧での乳酸カルシウムのメタノール溶液の反応)(図1)
実施例2で説明した方法で調製した乳酸カルシウムのメタノール溶液(10重量%)1100gを、容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧を20.2kg/cm2となった。その後反応物質を25℃まで冷却し、バスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。反応生成物中に沈殿は観察されなかった。反応炉底部から回収した反応生成物(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてメチルエステルおよびメタノールの含有率について分析した。濾液中のメチルエステル濃度は0重量%であることがわかり、メタノール濃度は100重量%であった。このように、二酸化炭素がない場合、メチルエステルは生成されないことがわかった。
【0056】
(高圧での乳酸ナトリウムの直接エステル化)
(実施例6)
(乳酸ナトリウム水溶液の脱水)(図4)
ガラス容器を備えた容量5Lのタワーアセンブリ(3)に、LACTOCHEM(インド、チェンナイ)製純粋乳酸ナトリウム水溶液(1)2500g(濃度70重量%)を、純粋トルエン(2)1000gと共に入れた。その後この材料を、攪拌器を用いて250rpmで連続的に混合した。この反応炉内の物質を、電気ヒータを用いて加熱した。物質を収容したタワーから水蒸気がトルエンと共に上がり上部で濃縮(6)され、2層を留出物として得た。上部の軽量有機層を連続的に再利用し、底部の水層は、完全に枯渇して留出物中に水層が見えなくなるまで連続的に除去した。上部の温度は操作終了時には85〜105℃に達し、底部の反応炉温度は99〜105℃の範囲であった。トルエン中の脱水乳酸ナトリウムを分離器(4)に移した。その後、このようにして得たトルエン中の脱水乳酸ナトリウムをゆっくりと40℃まで冷却した。上部トルエン層を分離器(4)から吸い上げることにより除去した。反応炉底部で得た乳酸ナトリウム結晶を純粋メタノール2500g中に溶解することにより、混合器(5)内で乳酸ナトリウムの40重量%メタノール溶液を生成した。乳酸ナトリウムのメタノール溶液を25℃まで冷却し、貯蔵した。この水分非含有乳酸ナトリウムのメタノール溶液を以下に述べる実施例で用いた。
【0057】
(実施例7)
(二酸化炭素による、165℃、高圧での乳酸ナトリウムのメタノール溶液の直接エステル化)(図1)
実施例6で説明した方法で調製した水分非含有乳酸ナトリウムのメタノール(2)溶液(1)1100g(40重量%)を容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素ガス(3)を用いて反応炉を加圧して、初期圧力28.7kg/cm2を得た。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は53.5kg/cm2まで上昇した。その後反応物質を25℃まで冷却し、バスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。炭酸ナトリウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器(5)からの回収濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてメチルエステルおよびメタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。濾液中のメチルエステル濃度は20.3重量%であることがわかり、メタノール濃度は76.9重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は0.5重量%であった。所望の操作時間後、反応炉(4)の内部圧力をベント(10)を通して抜き、蒸気を分離器(11)まで送って二酸化炭素ガス(13)を別の揮発性反応混合液(12)から分離した。二酸化炭素ガスは(4)で再利用可能であり、別の揮発性反応混合液は(4)で再利用した。(4)で得た未変換のメタノール、メチルエステルおよび水分がある場合は水分を、リボイラを備えたタワー分別蒸留アセンブリ(14)に送って回収した。リボイラ内に安定化剤として1重量%のメチルエステル重炭素ナトリウムを加えた。分別蒸留アセンブリ(11)内で真空を用いて又は用いないで純粋メチルエステル(15)をメタノール(16)から分離し、別に貯蔵した。得られた純粋メタノールは(4)で再利用可能である。
【0058】
(実施例8)
(トリエタノールアミンを用いた、二酸化炭素による、165℃、高圧での乳酸ナトリウムのメタノール溶液の直接エステル化)(図2)
実施例6で説明した水分非含有乳酸ナトリウムのメタノール(2)溶液(1)を蒸留することにより超過メタノールを除去して、最終乳酸ナトリウム濃度50重量%を得た。残りはメタノールおよび微量のトルエンであった。この溶液(1)1300gを容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素ガス(3)を用いて反応炉内で加圧して、初期圧力20kg/cm2を得た。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は56kg/cm2となった。その後反応物質を25℃まで冷却し、その後反応炉底部から除去し、次いでバスケット型遠心分離器(5)で濾過した。その後濾液(9)をロータリーエバポレータ内でフラッシュ蒸留して、最大量の揮発性物質を留出物として除去した。蒸留後、ロータリーエバポレータ内で回収した残渣を軟鋼製反応炉内で純粋メタノール(2)900gと共に再利用した。反応炉底部のサンプルを、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてメチルエステルおよびメタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応炉底部のサンプル中のメチルエステル濃度は15.6重量%であることがわかり、メタノール濃度は69.8重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は0.5重量%であった。
【0059】
第2段階では、上記のように得た原料を、同じ軟鋼製高圧反応炉(4)内で処理し、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。再び二酸化炭素ガス(3)を反応炉内で加圧して20kg/cm2にした。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は46.5kg/cm2となった。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応炉底部から除去した後にバスケット型遠心分離器(5)で濾過した。その後、濾液(9)をロータリーエバポレータ内でフラッシュ蒸留して、最大量の揮発性物質を留出物として除去した。蒸留物と残渣とを別々に回収した。蒸留物と反応炉底部のサンプルとを、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いて水分非含有ベースで、メチルエステルおよびメタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応炉底部のサンプル中のメチルエステル濃度は17.1重量%であることがわかり、メタノール濃度は67.1重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は0.55重量%であった。蒸留物中のメチルエステル濃度は40.2重量%であることがわかり、メタノール濃度は58.7重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は0.5重量%であった。
【0060】
このように、乳酸ナトリウムは、メタノールおよび二酸化炭素ガスを用いて高圧反応および高温でメチルエステルに直接変換することができることがわかった。
【0061】
(実施例9)
(メチルエステル(乳酸メチル)の存在下においてメタノールおよび二酸化炭素を用いた、165℃、高圧での乳酸ナトリウムの直接エステル化)(図2)
実施例6で説明した水分非含有乳酸ナトリウムのメタノール溶液を蒸留することにより超過メタノールを除去して、最終乳酸ナトリウム濃度50重量%とメタノール濃度50重量%とを得た。同量のPURAC Inc.(米国)製純粋メチルエステル(乳酸メチル)を添加して、重量比でメチルエステル50%と水分非含有乳酸ナトリウム(1)25%とメタノール(2)25%とを含む原料組成を得た。この混合物を容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素ガス(3)を反応炉内で加圧して、初期圧力20kg/cm2を得た。その後反応材料を165℃まで加熱し、1時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は56.3kg/cm2となった。その後反応物質を25℃まで冷却し、その後反応炉底部から除去した。反応炉底部のサンプルを、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてメチルエステルおよびメタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応炉底部のサンプル中のメチルエステル濃度は58.4重量%であることがわかり、メタノール濃度は40.2重量%であり、カールフィッシャー法による水分含有率は0.7重量%であった。このように、乳酸ナトリウムは、メチルエステルに直接変換することができ、変換率は37〜40%であることがわかった。
【0062】
(高圧での乳酸カルシウムの直接エステル化)
(実施例9)
(種々の攪拌速度における乳酸カルシウムのエチル化)(図2)
乳酸カルシウム溶液(1)(10重量%)100gとエタノール(2)とを容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて300、600および1000rpmの範囲の攪拌速度で連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素ガス(3)を反応炉内で加圧して、初期圧力25kg/cm2を得た。その後反応材料を200℃まで加熱し、8時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は72〜80kg/cm2に上昇する。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。遠心分離器から得た炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器から回収した濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてエチルエステルおよびエタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応中のエチルエステル濃度プロファイルは表1に示す通りであった。反応終了時の平均水分含有率は7.5重量%の範囲であることがわかった。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例10)
(種々のCO2圧力における乳酸カルシウムのエチル化)(図2)
乳酸カルシウム溶液(1)(10重量%)100gとエタノール(2)とを容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて攪拌速度1000rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素ガス(3)を反応炉内で加圧して、初期圧力5、15および25kg/cm2を得た。その後反応材料を200℃まで加熱し、8時間この温度に保持した。初期圧力5、10および15kg/cm2でのエチル化反応中、反応中の反応炉の全体的圧力はそれぞれ39、59および80kg/cm2に上昇する。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。遠心分離器から得た炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器から回収した濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてエチルエステルおよびエタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応中のエチルエステル濃度プロファイルは表2に示す通りであった。反応終了時の水分含有率は7.8重量%の範囲であることがわかった。
【0065】
【表2】

【0066】
(実施例11)
(CO2およびエタノールを用いた、種々の初期乳酸カルシウム濃度における乳酸カルシウムのエチル化)(図2)
実施例2で説明した方法で乳酸カルシウム(1)50、100および150gをエタノール(2)に溶解することにより、初期濃度5%、10%および15%を有する乳酸カルシウム溶液を調製し、これを容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて攪拌速度900rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素(3)ガスを反応炉内で加圧して、初期圧力25kg/cm2を得た。その後反応材料を200℃まで加熱し、8時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は72〜80kg/cm2に上昇する。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。遠心分離器から得た炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器から回収した濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてエチルエステルおよびエタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応中のエチルエステル濃度プロファイルは表3に示す通りであった。反応終了時の水分含有率は6.2重量%の範囲であることがわかった。
【0067】
【表3】

【0068】
(実施例12)
(種々の温度における乳酸カルシウムのエチル化)(図2)
まず、実施例2で説明した方法で粉末乳酸カルシウム(1)100gをエタノール(2)に溶解することにより、乳酸カルシウムの濃度10%溶液を調製し、これを容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて攪拌速度1000rpmで連続的に攪拌した。シリンダからの二酸化炭素(3)ガスを反応炉内で加圧して、初期圧力25kg/cm2を得た。反応材料を190℃、200℃および210℃まで加熱し、8時間この温度に保持した。190℃、200℃および210℃での反応中、反応炉の操作内圧はそれぞれ72、79.6および80kg/cm2に上昇する。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。遠心分離器から得た炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器から回収した濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてエチルエステルおよびエタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応中のエチルエステル濃度プロファイルは表4に示す通りであった。反応終了時の水分含有率は9重量%の範囲であることがわかった。
【0069】
【表4】

【0070】
(実施例13)
(種々の水分含有率における乳酸カルシウムのエチル化)(図2)
乳酸カルシウムおよびエタノール中の水分を調整および分析することにより、反応系内の水分含有率%を1.5%から23%まで変化させた。乳酸カルシウムは概して30℃で23%の水分を含む。まず、実施例2で説明した方法で乳酸カルシウム(100g)をエタノール(2)に溶解(1)し、これを容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(4)に入れ、攪拌器を用いて攪拌速度1000rpmで連続的に攪拌した。
【0071】
【表5】

【0072】
シリンダからの二酸化炭素ガス(3)を反応炉内で加圧して、初期圧力25kg/cm2を得た。反応材料を200℃まで加熱し、7〜8時間この温度に保持した。操作中、反応炉の内圧は72〜80kg/cm2まで上昇する。その後反応物質を25℃まで冷却し、反応混合物をバスケット型遠心分離器(5)により3000rpmで濾過した。遠心分離器から得た炭酸カルシウムを含むウェットケーキ(6)をオーブン(7)内で110℃で乾燥させ、貯蔵した(8)。遠心分離器から回収した濾液(9)を、Shimadzu製GC−MSモデルQP5000を用いてエチルエステルおよびエタノールの含有率について分析した。水分は、Lab India製カールフィッシャー自動水分計により測定した。反応中のエチルエステル濃度プロファイルは表5に示す通りであった。反応終了時の水分含有率は6〜15重量%の範囲であることがわかった。
【0073】
(大気圧での乳酸カルシウムの連続エステル化)
(実施例14)
(メタノール、二酸化炭素および加熱媒体として酸化ジフェニルを用いた、165℃、大気圧での乳酸ナトリウムの直接エステル化)(図3)
ガラス容器を備えた容量5Lのタワーアセンブリに、LACTOCHEM(インド、チェンナイ)製純粋乳酸ナトリウム水溶液3300g(濃度70重量%)を、純粋トルエン1200gと共に入れた。その後この材料を、攪拌器を用いて250rpmで連続的に混合した。この反応炉内の物質を、電気ヒータを用いて加熱した。物質を収容したタワーから水蒸気がトルエンと共に上がり上部で濃縮され、2層を留出物として得た。上部の軽量有機層を蒸留器まで連続的に再利用し、底部の水層は、留出物中に水層の痕跡がなくなるまで連続的に除去した。上部の温度は操作終了時には105℃に達し、底部の反応炉温度は105℃であった。その後トルエン中に脱水乳酸ナトリウムを得、これをその後ゆっくりと60℃まで冷却した。その後上部トルエン層を吸い上げることにより除去した。反応炉底部に乳酸ナトリウム結晶を得た。脱水乳酸ナトリウム(1)を微量のトルエンおよび酸化ジフェニル(2)800gと共に、容量5Lの軟鋼製高圧反応炉(3)に入れ、攪拌器を用いて750rpmで連続的に攪拌した。その後反応物質を165℃まで加熱し、反応全体を通してこの温度に保持した。純粋メタノール(4)を速度200g/hで反応炉底部の散布器に通した。同様に、二酸化炭素ガス(5)も同時に反応炉底部から速度40L/hで別体の気体散布器に通した。未反応のメタノール、生成されたメチルエステルおよび未反応の二酸化炭素ガスの蒸気が反応炉から上がった。メチルエステルおよびメタノールをコンデンサ(7)で濃縮し、レシーバ(8)で蒸留物として回収した。この操作を5時間継続した。回収した蒸留物を、GC−MSでメチルエステルについて分析した。蒸留物は、24.5重量%のメチルエステルを示した。
【0074】
(実施例15)
(メタノールおよび二酸化炭素を用いた、170℃、高圧での酢酸ナトリウムからの酢酸メチルの調製)
無水酢酸ナトリウム(テクニカルグレード)82グラムをオートクレーブに入れ、これにメタノール1200グラムを添加した。反応混合物を二酸化炭素により210psigまで加圧した。反応混合物を130℃まで加熱し、8時間この温度に保持した。反応混合物の圧力は620psigまで上昇し、570psigまで下降した。その後、反応混合物を二酸化炭素により620psigまで加圧し、その後反応混合物を170℃まで加熱し、さらに8時間この温度に保持し、その後冷却した。反応混合物の重量は1215グラムであった。ガスクロマトグラフ−質量分光光度計による分析を行った結果、反応混合物中に酢酸メチル60グラムが示された。
【0075】
(実施例16)
(メタノールおよび二酸化炭素を用いた、170℃、高圧での安息香酸ナトリウムからの安息香酸メチルの調製)
無水安息香酸ナトリウム(テクニカルグレード)250グラムをオートクレーブに入れ、これにメタノール1500グラムを添加した。反応混合物を二酸化炭素により250psigまで加圧した。反応混合物を170℃まで加熱し、8時間この温度に保持した。反応混合物の圧力は950psigまで上昇し、反応終了時には850psigまで下降した。反応物質を室温まで冷却すると、圧力は120psigまで下降した。反応混合物の重量は1450グラムであった。ガスクロマトグラフ−質量分光光度計による分析を行った結果、反応混合物中に安息香酸メチル140グラムが示された。
【0076】
(実施例17)
(メタノール、二酸化炭素および加熱媒体として酸化ジフェニルを用いた、170℃、大気圧(1.03kg/cm2)での安息香酸ナトリウムからの安息香酸メチルの連続的生成)
無水安息香酸ナトリウム576グラムを酸化ジフェニル1500グラムと共に5リットルSSオートクレーブに入れた。反応混合物を、窒素流下120℃で3時間加熱することにより微量の水分を除去した。その後反応混合物を165〜170℃に加熱し、120ml/hの速度でこれにメタノールを添加した。同時に40L/hの速度で二酸化炭素を添加した。蒸留物を生成物と共に水冷コンデンサで冷却し、回収した。メタノールの総添加量は746グラムであり、二酸化炭素の添加量は約8時間で約352グラムであった。回収した蒸留物の重量は約650グラムであり、安息香酸メチル195グラムを示した(ガスクロマトグラフ−質量分析法による)。
【0077】
(実施例18)
(メタノールおよび二酸化炭素を用いた、170℃、高圧でのサリチル酸ナトリウムからのサリチル酸メチルの調製)
無水サリチル酸ナトリウム(テクニカルグレード)80グラムをオートクレーブに入れ、これにメタノール1500グラムを添加した。反応混合物を二酸化炭素により260psigまで加圧した。反応混合物を170℃まで加熱し、8時間この温度に保持した。反応混合物の圧力は955psigまで上昇し、900psigまで下降した。反応物質を冷却し、二酸化炭素により250psigまで加圧し、さらに8時間に亘って170℃で加熱した。反応混合物を冷却した。操作後の反応混合物1457グラムに対し、ガスクロマトグラフ−質量分光光度計による分析を行った。反応混合物はサリチル酸メチル42グラムおよび副生成物としてフェノール4グラムを示した。
【0078】
(副生成物炭酸カルシウムの特徴づけ)(図5)
CO2およびアルコールを用いた乳酸カルシウムの直接エステル化により、高純度アルキルエステルおよび副生成物として炭酸カルシウムが生成される。合成された副生成物、すなわち炭酸カルシウムサンプルを、結晶性、表面積および孔容積で特徴づけた。このルートの長所は、合成された副生成物を発酵器に循環し再利用して、対応するアルカリ金属乳酸塩を生成できること、または細かく沈殿した炭酸カルシウムをその他の様々な適用に用いることができることである。超過のアルコールを添加することにより未反応の乳酸カルシウムを除去し、得られた固体をオーブンで100℃で乾燥させた。炭酸カルシウムの乾燥重量を測定し、その後反応物の材料バランスも確かめた。実験誤差は±5%以内であることがわかった。図4は、標準的炭酸カルシウムサンプルおよび、CO2とアルコールとを用いて乳酸カルシウムのエステル化により調製した炭酸カルシウムサンプルのXRDパターンを示す。この図からわかるように、合成した炭酸カルシウムの相は八角形構造を有する十分に結晶化した方解石(JCPDS83−0577および83−1762)であり、真性炭酸カルシウムサンプルに合致する。マルチポイント吸収法により得たBET表面積および孔容積の結果を表6に示す。これらの結果は、本発明によるプロセスで調製した炭酸カルシウム(CaCO3synthesized)は市場入手可能な炭酸カルシウム(CaCO3commercial)よりも広い比表面積を有することを示す。このことは、本研究で合成した炭酸カルシウムの粒径が、市場入手可能な炭酸カルシウムの粒径よりもはるかに小さいことを示している。CaCO3synthesizedは、CaCO3commercialに比べて、高い孔容積および高い平均孔サイズを示す。
【0079】
【表6】

【0080】
(本発明の利点)
本発明で報告する直接エステル化反応方法は、乳酸カルシウムまたはナトリウムからメチルエステルへの反応であり、従って、従来の方法で得られる硫酸カルシウムまたは硫酸ナトリウムの好ましくない汚染物質を生成しない。
【0081】
本発明では、反応中にメチルエステルと共に副生成物として炭酸または重炭酸カルシウムまたはナトリウムが生成され、これらは発酵セクションまで循環され再利用可能である。
【0082】
本発明による新規な方法では、超過の未反応メタノールおよび得られた二酸化炭素は容易に分離可能であり、操作中に再利用可能である。
【0083】
本発明で報告する、トリエタノールアミンなどの試薬の使用は、乳酸ナトリウムまたはカルシウムからメチルエステルへの変換を増加させる。
【0084】
本発明では、副生成物の生成はない。
【0085】
反応炉底部に供給される超加熱メタノール蒸気は、水分がある場合に水分の除去を補助し、反応炉上部に生成されるメチルエステルの除去を補助し、従って可逆反応を阻止し、よって大気圧での連続的操作における、乳酸ナトリウムからメチルエステルへの前方反応の促進を補助する。上記操作の正味の効果は、乳酸ナトリウムからメチルエステルへの変換がより高い割合で達成されることである。
【0086】
本発明で報告する連続的方法は、モル比8を許容する。本発明で生成されるメチルエステルは、GC−MSによると99.5〜99.8重量%の純度を有し、水分含有率は0.03〜0.5重量%と非常に低い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明で報告する新規の方法は、商業的に実施可能である。本発明で報告するプロセスは、操作が容易であり大規模での制御が容易であり、従って商業的に実施可能である。よって本発明の方法では、通常の従来の方法に比べて、非常に高品質な製品が高い歩留まりで得られ、高純度メチルエステルが生成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールおよびCO2を用いてカルボン酸のアルカリ金属塩のエステル化を行うことにより光学的に純粋なアルキルエステルを調製する単一工程プロセスであって、
i.15分から30分の範囲の期間に亘って脱水粉末金属カルボン酸塩をアルコールと混合し、500〜1000rpmの範囲で攪拌することにより金属カルボン酸塩の5〜30重量%アルコール溶液を得る工程と、
ii.工程(i)で得た溶液を、5〜60.4kg/cm2の範囲で145〜210℃の範囲の温度で15分〜1時間の範囲の期間に亘って二酸化炭素により加圧することによりアルキルエステルを得る工程であって、副生成物は沈殿物としてアルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩からなる群から選択される、工程と、
iii.工程(ii)で得た沈殿物を濾過により分離し、発酵セクションで再利用することによりグルコース源からアルカリ金属塩を得る工程と、
iv.アルカリ金属塩からアルキルエステルへの所望の変換がこれとは分離した副生成物と共に得られるまで、工程(i)、(ii)および(iii)を好ましくは3〜4回繰り返す工程と、
v.99.50〜99.8重量%の範囲の純度で蒸留することによりアルキルエステルを回収する工程であって、濾液の未反応アルコールから約0.03〜0.1重量%の水分を回収し工程iv.で再利用する工程と、
を含むプロセス。
【請求項2】
用いるアルコールは、メタノール、エタノールおよびブタノールからなる群より選択される、請求項1の工程(i)に記載のプロセス。
【請求項3】
金属は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウムからなる群より選択される、請求項1の工程(i)に記載のプロセス。
【請求項4】
金属のカルボン酸塩は、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩または安息香酸からなる群より選択される、請求項1の工程(i)に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルキルエステルの光学純度は、98〜99%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
鉱酸がない状態でバッチまたは連続モードで実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
工程(iv)でのプロセスに用いる再利用アルコールは、アルカリ金属塩に対して2.8:1〜4:1のモル比、好ましくは2.8対1のモル比を有する、請求項1の工程(v)に記載のプロセス。
【請求項8】
前記金属カルボン酸塩から前記アルキルエステルへの変換パーセンテージは95〜99%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応の歩留まりは、90〜99.0%の範囲であり、アルキルエステルへの反応の選択性は99.0%よりも高い、請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−503917(P2013−503917A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528462(P2012−528462)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002203
【国際公開番号】WO2011/027211
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511219191)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (2)
【Fターム(参考)】