説明

カルボン酸アミドの製造方法

【課題】工業的に有利なカルボン酸アミドの製造方法を提供すること。
【解決手段】トリアリールカルベニウムカチオンと1価のアニオンとからなるトリアリールカルベニウム化合物の存在下に、カルボン酸とアミン(3級アミンを除く)とを反応させるカルボン酸アミドの製造方法。かかるトリアリールカルベニウム化合物としては、式(1)


(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を表し、Yはハロゲン化物イオン、置換されていてもよいアルキルスルホン酸イオン、置換されていてもよいアリールスルホン酸イオン、硫酸水素イオン、置換されていてもよいアルキルカルボン酸イオン、置換されていてもよいアリールカルボン酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、四ハロゲン化ホウ酸イオン、六ハロゲン化リン酸イオン、六ハロゲン化アンチモン酸イオン、五ハロゲン化スズ酸イオン等を表す。)
で示される化合物が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸アミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸アミドは、医農薬原体、電子材料をはじめとする各種化学製品およびそれらの合成中間体等として重要な化合物である(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。カルボン酸アミドの製造方法としては、一般的には、ハロゲン化剤を用いてカルボン酸を酸ハロゲン化物とした後に、アミンと反応させる方法が用いられている。しかし、この方法では、発生するハロゲン化水素の中和のために塩基を必要とし、廃棄物として大量の塩が発生するという点で問題があった。そこで、このような廃棄物を生じない、いわゆる環境調和型の反応として、カルボン酸とアミンとの直接アミド化反応が種々開発されている。
【0003】
かかる直接アミド化反応に用いる縮合剤としては、例えば、含フッ素フェニルホウ酸を用いる方法(例えば、特許文献1、非特許文献2参照。)、アンチモン酸化物と硫化リンとを用いる方法(例えば、非特許文献3参照。)等が知られている。しかしながら、これらの方法においては、縮合剤の活性や入手性に問題があったり、収率が十分ではなかったりする点で、工業的な製法として必ずしも満足できるものとはいえなかった。
【0004】
【特許文献1】特許第3589450号公報
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,118,1569(1996)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,61,4196(1996)
【非特許文献3】J.Org.Chem.,56,4076(1991))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、工業的により有利なカルボン酸アミドの製造方法を開発すべく、鋭意検討したところ、入手容易なトリアリールカルベニウム化合物を触媒として、カルボン酸とアミンとの反応を実施することにより、カルボン酸アミドが効率よく得られることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、トリアリールカルベニウムカチオンと1価のアニオンとからなるトリアリールカルベニウム化合物の存在下に、カルボン酸とアミン(3級アミンを除く)とを反応させるカルボン酸アミドの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、工業的に入手容易な触媒を用いて、カルボン酸アミドを効率よく製造することができるため、工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
トリアリールカルベニウム化合物としては、トリアリールカルベニウムカチオンと1価のアニオンとからなる化合物であれば、特に限定されず、例えば式(1)
【化1】

(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を表し、Yはハロゲン化物イオン、置換されていてもよいアルキルスルホン酸イオン、置換されていてもよいアリールスルホン酸イオン、硫酸水素イオン、置換されていてもよいアルキルカルボン酸イオン、置換されていてもよいアリールカルボン酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、四ハロゲン化ホウ酸イオン、六ハロゲン化リン酸イオン、六ハロゲン化アンチモン酸イオン、五ハロゲン化スズ酸イオンまたは置換されていてもよいテトラアリールボレートを表す。)
で示されるトリアリールカルベニウム化合物が挙げられる。
【0010】
式中、Arで示されるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。これらのアリール基上に有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基等の置換されていてもよいアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の置換されていてもよいアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0011】
式中、Yで表されるハロゲン化物イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンが挙げられる。置換されていてもよいアルキルスルホン酸イオンとしては、例えばメタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸イオン等が挙げられる。置換されていてもよいアリールスルホン酸イオンとしては、例えばp−トルエンスルホン酸イオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。置換されていてもよいアルキルカルボン酸イオンとしては、例えば酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等が挙げられる。置換されていてもよいアリールカルボン酸イオンとしては、例えば安息香酸イオン等が挙げられる。四ハロゲン化ホウ酸イオンとしては、例えば四フッ化ホウ酸イオン、四塩化ホウ酸イオン等が挙げられる。六ハロゲン化リン酸イオンとしては、例えば六フッ化リン酸イオン等が挙げられる。六ハロゲン化アンチモン酸イオンとしては、例えば六フッ化アンチモン酸イオン、六塩化アンチモン酸イオン等が挙げられる。五ハロゲン化スズ酸イオンとしては、例えば五フッ化スズ酸イオン、五塩化スズ酸イオン等が挙げられる。
【0012】
置換されていてもよいテトラアリールボレートとしては、例えば、テトラフェニルボレート;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のフッ素原子で置換されたテトラアリールボレート;テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等のトリフルオロメチル基で置換されたテトラアリールボレート;等が挙げられる。Yとして好ましくは、フッ素原子で置換されたテトラアリールボレートまたはトリフルオロメチル基で置換されたテトラアリールボレートであり、より好ましくはフッ素原子で置換されたテトラアリールボレートである。
【0013】
トリアリールカルベニウム化合物としては、例えば、トリフェニルカルベニウムクロライド、トリフェニルカルベニウムブロマイド、トリフェニルカルベニウムヨーダイド、トリフェニルカルベニウムバイスルフェート、トリフェニルカルベニウムメタンスルフォネート、トリフェニルカルベニウムトリフルオロメタンスルフォネート、トリフェニルカルベニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルカルベニウムナイトレート、トリフェニルカルベニウムパークロレート、トリフェニルカルベニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルカルベニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルカルベニウムヘキサクロロアンチモネート、トリフェニルカルベニウムペンタクロロスタネート、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(4−クロロフェニル)カルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウム テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリ(4−メトキシフェニル)カルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(4−メチルフェニル)カルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。好ましくは、トリフェニルカルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0014】
かかるトリアリールカルベニウム化合物は、市販のものを用いてもよいし、例えば特開平9−295984等に記載の公知の方法により製造することもできる。
【0015】
次に、トリアリールカルベニウム化合物の存在下における、カルボン酸とアミンとのアミド化反応について説明する。
【0016】
本発明に用いるカルボン酸は、分子内にカルボニル基を1以上有する有機化合物であれば特に限定されず、その代表例としては、式(2)
【化2】

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。)
で示されるカルボン酸(以下、カルボン酸(2)と略記する。)が挙げられる。また、例えば、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸等も挙げられる。かかるカルボン酸は、市販のものを用いてもよいし、任意の公知方法により製造したものを用いてもよい。
【0017】
式(2)において、Rで示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等のアリールオキシ基;エテニル基、1−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−デセニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、3−オキソブチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、ベンジル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロピル基、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロピル基等が挙げられる。
【0018】
アルケニル基としては、例えばエテニル基、1−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−デセニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。これらのアルケニル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等のアリールオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルケニル基の具体例としては、3−フルオロ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−フェノキシ−1−ブテニル基、スチリル基等が挙げられる。
【0019】
アリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。これらのアリール基上に有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換されていてもよいアルキル基;前記置換されていてもよいアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−アセチルフェニル基等が挙げられる。
【0020】
かかるカルボン酸(2)としては、例えば酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ピバル酸、tert−ブチル酢酸、アクリル酸、ピルビン酸、桂皮酸、フェニル酢酸、安息香酸、2−フルオロ安息香酸、2−クロロ安息香酸、2−ブロモ安息香酸、3−フルオロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、3−ブロモ安息香酸、4−フルオロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−ブロモ安息香酸、2,4−ジフルオロ安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、3,5−ジフルオロ安息香酸、3−フェノキシ安息香酸、4−メチル安息香酸、3−トリフルオロメチル安息香酸、2−メトキシ安息香酸、1−ナフトエ酸、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
アミンとしては、分子内にアミノ基を1以上有しており、少なくとも1つのアミノ基が水素原子と結合している有機化合物であれば特に限定されず、その代表例としては、式(3)
【化3】

(式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または水素原子を表す。ここで、RとRとが互いに結合し、その結合窒素原子とともに環を形成していてもよい。)
で示されるアミン(以下、アミン(3)と略記する。)が挙げられる。また、例えば、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサンなどのジアミン類等も挙げられる。かかるアミンは、市販のものを用いてもよいし、任意の公知方法により製造したものを用いてもよい。
【0022】
式(3)において、RおよびRで示される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基および置換されていてもよいアリール基としては、Rとして前述したものと同様の置換基が例示される。
【0023】
とRとが互いに結合し、その結合窒素原子とともに形成する環としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、インドリン環、イソインドリン環、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン環等が挙げられる。
【0024】
かかるアミン(3)としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、n−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、イソアミルアミン、1−メチルブチルアミン、2−メチルブチルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロドデシルアミン、ベンジルアミン、1−フェニルエチルアミン、2−フェニルエチルアミン、1−(4−クロロフェニル)エチルアミン、1−(3−メトキシフェニルエチル)アミン、1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチルアミン、1−フェニルプロピルアミン、1−フェニル−2−メチルプロピルアミン、1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ブチルアミン、1−フェニル−2−(4−メチルフェニル)エチルアミン、1−ナフチルエチルアミン、アニリン、2−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、4−ブロモアニリン、2−シアノアニリン、3−シアノアニリン、4−シアノアニリン、2−アミノ安息香酸メチル、3−アミノ安息香酸メチル、4−アミノ安息香酸メチル、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2−トルイジン、3−トルイジン、4−トルイジン、2−アニシジン、3−アニシジン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジ(n−プロピル)アミン、N,N−ジ(n−ブチル)アミン、N,N−ジ(n−アミル)アミン、N,N−ジ(n−ヘキシル)アミン、N,N−ジ(n−ヘプチル)アミン、N,N−ジ(n−オクチル)アミン、N,N−ジ(n−ノニル)アミン、N,N−ジ(n−デシル)アミン、N,N−ジ(n−ドデシル)アミン、N,N−ジイソプロピルアミン、N,N−ジイソブチルアミン、N,N−ジ(sec−ブチル)アミン、N,N−ジイソアミルアミン、N−エチル−tert−ブチルアミン、N,N−ジベンジルアミン、N−ベンジル−tert−ブチルアミン、N−ベンジルアニリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、6,7−メチレンジオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、2−メトキシカルボニルピロリジン、3,4−ジメトキシピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、2−カルボメトキシピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン等が挙げられる。
【0025】
アミンの使用量は特に限定されず、通常、カルボン酸の反応を所望するカルボキシ基1モルに対して、アミンの反応を所望するアミノ基が1モル存在する量を用いれば、本発明の目的を達成できるが、反応性や経済性等の観点により、溶媒を兼ねて、どちらか一方を過剰量用いてもよい。アミンの使用量の好ましい範囲は、カルボン酸の反応を所望するカルボキシ基1モルに対して、アミンの反応を所望するアミノ基が0.5〜2モルの範囲である。
【0026】
本反応は、有機溶媒の存在下に実施することもできるし、有機溶媒の非存在下に実施することもできる。
【0027】
有機溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;等が挙げられる。また、水と共沸する溶媒の存在下、副生物である水を共沸により連続的に除去しながら実施することもできる。
【0028】
有機溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、カルボン酸に対して、通常100重量倍以下である。反応温度は、通常−20〜200℃の範囲である。
【0029】
トリアリールカルベニウム化合物の使用量は、カルボン酸の反応を所望するカルボキシ基1モルに対して、通常、0.001〜0.05モルの範囲である。
【0030】
反応試剤の混合順序は特に制限されず、通常、カルボン酸、アミンおよびトリアリールカルベニウム化合物ならびに必要により有機溶媒および/または有機塩基を任意の順序で混合し、次いで反応温度を調整することにより実施される。反応温度条件下で混合する場合は、カルボン酸、トリアリールカルベニウム化合物ならびに必要により有機溶媒および/または有機塩基を任意の順序で混合し、該混合物中にアミンを加えていくことが好ましい。
【0031】
本反応は、常圧条件下で実施してもよいし、減圧条件あるいは加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0032】
反応終了後、晶析処理や蒸留処理等を行ったり、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理したりすることにより、目的のカルボン酸アミドを得ることができる。得られたカルボン酸アミドは、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段によりさらに精製してもよい。
【0033】
ここで、水に不溶の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;等が挙げられる。
【0034】
本反応により得られるカルボン酸アミドは、カルボン酸の反応を所望するカルボキシ基と、アミンの反応を所望するアミノ基とが、脱水縮合し、アミド結合を形成することにより得られる化合物である。例えば、カルボン酸としてカルボン酸(2)を用い、アミンとしてアミン(3)を用いた場合、得られるカルボン酸アミドは、式(4)
【化4】

(式中、R、RおよびRは、それぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示されるカルボン酸アミドである。
【0035】
かかるカルボン酸アミドとしては、例えばエタンアミド、プロパンアミド、n−ブタンアミド、n−ペンタンアミド、N−メチル−エタンアミド、N−メチル−プロパンアミド、N−メチル−n−ブタンアミド、N−メチル−n−ペンタンアミド、N−エチル−エタンアミド、N−エチル−プロパンアミド、N−エチル−n−ブタンアミド、N−エチル−n−ペンタンアミド、N−ブチル−(n−ヘキサン)アミド、N−オクチル−n−ヘプタンアミド、N−デシル−n−オクタンアミド、N−ヘキシル−シクロヘキサンカルボキサミド、N−イソプロピル−ピバロイルアミド、N−tert−ブチルピバロイルアミド、2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキサミド、N−シクロヘキシル−4−フェニルブチルアミド、N−シクロヘキシル−クロトンアミド、N,N’−ジメチル−ヘキサンジアミド、N,N’−ジフェニル−ヘキサンジアミド、N−ヘキシルシンナムアミド、N−オクチルシンナムアミド、4−フェニル−N−オクチル−3−ブテンアミド、N−フェニル−ベンズアミド、N−[1−(4−クロロフェニル)エチル]ベンズアミド、N−[1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]ベンズアミド、N,N−ジメチル−プロパンアミド、N,N−ジエチル−ブタンアミド、N,N−ジブチル−n−ヘキサンアミド、N,N−ジブチル−ベンゼンブタンアミド、3,5−ジメチル−1−(1−オキソ−3−フェニル−2−プロピル)ピペリジン、3,5−ジメチル−1−(1−オキソ−4−フェニルブチル)ピペリジン、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキサミド、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキサミド、ブタンジアニリド、ヘキサンジアニリド、N,N’−ジ−n−ヘキシルアジピン酸アミド、N,N’−ジ−n−ブチルアジピン酸アミド、N,N’−テトラメチレンビスアセトアミド等が挙げられる。
【0036】
また、カルボン酸としてカルボキシ基を2以上有する多価カルボン酸と、アミンとしてアミノ基を2以上有する多価アミンとを用いて反応を行えば、ポリアミドを得ることができる。カルボキシ基を2つ有するジカルボン酸と、アミノ基を2つ有するジアミンとを用いることが好ましい。かかるポリアミドとしては、例えば、グルタル酸と1,4−ブタンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とエチレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸と1,3−プロパンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸と1,4−ブタンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸と1,6−ヘキサンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とp−フェニレンジアミンとから得られるポリアミド、テレフタル酸と1,4−ブタンジアミンとから得られるポリアミド、テレフタル酸とp−フェニレンジアミンとから得られるポリアミド、マレイン酸とエチレンジアミンとから得られるポリアミド等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0038】
実施例1
還流冷却管を付した50mLフラスコに、4−フェニルブタン酸1.64g、3,5−ジメチルピペリジン1.13g、トリフェニルカルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート45mgおよびキシレン3gを仕込み、145℃で4時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、反応液をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、3,5−ジメチル−1−(1−オキソ−4−フェニルブチル)ピペリジンの収率は98%(4−フェニルブタン酸基準)であった。
【0039】
実施例2
還流冷却管を付した50mLフラスコに、桂皮酸1.48g、n−ヘキシルアミン 1.01g、トリフェニルカルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート45mgおよびキシレン3gを仕込み、145℃で4時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、反応液をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、N−ヘキシルシンナムアミドの収率は99%(桂皮酸基準)であった。
【0040】
実施例3
還流冷却管を付した50mLフラスコに、アジピン酸730mg、アニリン930mg、トリフェニルカルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート45mgおよびトルエン3gを仕込み、6時間加熱還流下に攪拌した。室温まで冷却すると、結晶が析出した。トルエン5gを加えて濾過した後、得られた固体を乾燥することにより、白色結晶1.45gを得た。この結晶をガスクロマトグラフィー(面積百分率法)にて分析したところ、ヘキサンジアニリドの純度は88%であった。収率86%(アジピン酸基準)
【0041】
実施例4
還流冷却管を付した50mLフラスコに、アジピン酸730mg、1−ヘキシルアミン1.01g、トリフェニルカルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート45mgおよびトルエン3gを仕込み、6時間加熱還流下に攪拌した。室温まで冷却後、反応液をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、N,N’−ジ−n−ヘキシルアジピン酸アミドの収率は96%(アジピン酸基準)であった。
【0042】
実施例5
還流冷却管を付した50mLフラスコに、4−フェニルブタン酸820mg、シクロヘキシルアミン495mg、トリアニシルカルベニウムクロライド9mgおよびキシレン3gを仕込み、6時間加熱還流下に攪拌した。室温まで冷却後、反応液をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、N−シクロヘキシル−4−フェニルブチルアミドの収率は66%(4−フェニルブタン酸基準)であった。原料の4−フェニルブタン酸は30%残存していた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、医農薬原体、電子材料をはじめとする各種化学製品およびそれらの合成中間体等として重要なカルボン酸アミドの環境調和型の製造方法として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアリールカルベニウムカチオンと1価のアニオンとからなるトリアリールカルベニウム化合物の存在下に、カルボン酸とアミン(3級アミンを除く)とを反応させるカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項2】
トリアリールカルベニウム化合物が、式(1)
【化1】

(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を表し、Yはハロゲン化物イオン、置換されていてもよいアルキルスルホン酸イオン、置換されていてもよいアリールスルホン酸イオン、硫酸水素イオン、置換されていてもよいアルキルカルボン酸イオン、置換されていてもよいアリールカルボン酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、四ハロゲン化ホウ酸イオン、六ハロゲン化リン酸イオン、六ハロゲン化アンチモン酸イオン、五ハロゲン化スズ酸イオンまたは置換されていてもよいテトラアリールボレートを表す。)
で示されるトリアリールカルベニウム化合物である請求項1に記載のカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項3】
式(1)におけるYが、フッ素原子で置換されたテトラアリールボレートまたはトリフルオロメチル基で置換されたテトラアリールボレートである請求項1または2に記載のカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項4】
式(1)で示されるホウ素化合物が、トリフェニルカルベニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項1または2に記載のカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項5】
トリアリールカルベニウム化合物の使用量が、カルボン酸の反応を所望するカルボキシ基1モルに対して、0.001〜0.05モルの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
カルボン酸が、式(2)
【化2】

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。)
で示されるカルボン酸であり、
アミンが、式(3)
【化3】

(式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または水素原子を表す。ここで、RとRとが互いに結合し、その結合窒素原子とともに環を形成していてもよい。)
で示されるアミンであり、
カルボン酸アミドが、式(4)
【化4】

(式中、R、RおよびRは、それぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示されるカルボン酸アミドである請求項1〜5のいずれかに記載のカルボン酸アミドの製造方法。

【公開番号】特開2007−137871(P2007−137871A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273768(P2006−273768)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】