説明

カルボン酸エステル色安定化フェノール樹脂結合砥粒製品及びその製造方法。

フェノール樹脂バインダー、色安定剤、着色剤、および砥粒を含む色安定砥粒物品が記載される。色安定剤は、少なくとも1種のカルボン酸エステルを含む。色安定砥粒物品は、レゾールと色安定剤とをブレンドして、レゾール組成物を形成する工程;複数の砥粒粒子をレゾール組成物と接触させる工程;およびレゾール組成物を硬化させて、色安定砥粒物品を作る工程を含む方法により形成される。したがって、色安定化フェノール樹脂結合研磨材、および長期にわたって、および高温への曝露後の色変化に耐え、フェノール樹脂の機械的強度を維持するような研磨材を製造する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年11月17日に出願された米国仮特許出願第61/199,472号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
「フェノール樹脂」という用語は、フェノール類とアルデヒド類との反応生成物から得られる幅広い種類の樹脂製品を意味する。フェノール類は、酸性および塩基性条件の両方の下でホルムアルデヒド類と反応する。塩基により触媒される、フェノールとホルムアルデヒドとの混合物が、フェノール1モル当たり1モルまたは複数モルのホルムアルデヒドを含有する場合、それは、熱硬化性(一段階)樹脂、すなわち「レゾール」を生成する。レゾール樹脂のための触媒として用いられる通常の塩基化合物には、アルカリ金属、例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウムの水酸化物が含まれる。アルカリ金属水酸化物により触媒されるフェノール樹脂は、商業的に有用であるが、それらは、老化する、加熱される又はそうでなければ硬化される場合、黒ずむという望ましくない傾向を有する。黒ずみの程度は、樹脂の硬化または使用温度、及びこのような温度に対する曝露時間に依存することが知られている。
【0003】
アルカリ金属水酸化物により触媒されるフェノール樹脂は通常、砥粒製品、例えば、研磨布紙、固定砥粒、および三次元の低密度砥粒製品の結合剤系の成分として使用される。樹脂の黒ずみ問題は、結合剤系が目視可能により多く存在するために、研磨布紙および三次元低密度砥粒製品において特に顕著である。また、黒ずみは温度および曝露時間とともに増加するので、製品の温度プロファイルのなんらかの変化は、その製品内に色変化をもたらす。色変化は、特に淡色製品に目立ち、このような製品を美観的または他の理由で受け入れ難くさせる。
【0004】
さらに、砥粒結合剤系は、製造者、製品の種類、用途などを識別するための着色剤を含み得る。樹脂の黒ずみは、所望の着色を妨げ、添加される着色剤と異なる色を最終製品にもたらすことがある。例えば、硬化後に通常黄色に変わる樹脂は、青色染料または顔料と組み合わせる場合、緑色に着色した製品を生じる。他方、同じ黄色の樹脂を緑色染料または顔料と組合せる場合、樹脂は通常、緑色のまったく別の色調をもたらす。
【0005】
フェノールレゾール樹脂に色安定性を与えるための公知の方法の一つは、メラミンホルムアルデヒド樹脂をその配合に添加することを含む。これは色安定性を達成する一方、脆弱性を与え、硬化させるのにより長い時間がかかり、機械的な弱さを生じ、したがって、最終製品において研削性能を低下させる。
【0006】
別の提案方法は、アンモニウム系塩をフェノールレゾール樹脂に添加することを含む。しかし、この方法は、薄青色およびオレンジ色の顔料または染料などの特定の着色剤を有するフェノール樹脂製品の色を安定化させるのに充分有効ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最終製品に望ましくない特性を与えることなく、上述の問題を軽減させる有効なフェノール樹脂色安定剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、フェノール樹脂バインダー;色安定剤、着色剤、および砥粒を含む色安定砥粒物品に関する。色安定剤は、少なくとも1種のカルボン酸エステル、エステル、カルボン酸、またはジオン基もしくはアクリル基を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、レゾールと色安定剤とをブレンドし、レゾール組成物を形成する工程;複数の砥粒粒子をレゾール組成物に接触させる工程;およびレゾール組成物を硬化させて、色安定砥粒物品を作る工程を含む、色安定砥粒物品を製造する方法に関する。色安定剤は、少なくとも1種のカルボン酸エステル、エステル、カルボン酸、またはジオン基もしくはアクリル基を含む。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、色安定砥粒物品を工作物表面に研磨運動を伴って適用し、工作物表面の一部を除去する段階を含む、工作物表面を研磨する方法に関する。砥粒製品は、フェノール樹脂を有するバインダー;少なくとも1種のカルボン酸エステル、エステル、カルボン酸、またはジオン基もしくはアクリル基を含む色安定剤;および砥粒を含む。
【0011】
したがって、色安定化フェノール樹脂結合研磨材、および時間経過にわたる、および高温への暴露後の色変化に耐え、フェノール樹脂の機械的強度を維持するような研磨材を製造する方法が提供される。
【0012】
以上は、添付の図面に示されるとおり、本発明の実施例の実施形態の以下のより詳細な説明から明らかであろう。図面中、同様の参照文字は、異なる図を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも一律の縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の実施形態の説明に強調が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の研磨布紙工具の一実施形態の断面図の概略図である。
【図2】本発明の研磨布紙工具の別の実施形態の断面図の概略図である。
【図3】色安定剤を含まない硬化フェノール樹脂試料と、本発明の色安定剤を含む試料とを比較する写真を含む。
【図4】本発明の実施形態と対照との硬化時の時間経過にわたる色変化を比較する写真を含む。
【図5】図4の試料における色変化を時間経過にわたってグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で引用される特許、公開された出願および参考文献のすべての教示は、それらの全体が参照により組み込まれる。特に、その出願が本出願と同時に出願されている、Wijayaの「アクリレート色安定化フェノール樹脂結合砥粒製品およびその製造方法(Acrylate Color−Stabilized Phenolic Bound Abrasive Products and Methods for Making the same)」と表題された米国特許出願第61/199,471号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本発明は、少なくとも1種のカルボン酸エステルにより色安定化されるフェノール樹脂バインダーを含む砥粒物品に関する。この色安定化砥粒物品は、着色剤および砥粒をさらに含む。本明細書で用いられる場合、砥粒物品または樹脂が、約235°Fで硬化2時間後に示すのと本質的に同じ色を約235°Fで硬化8時間後に示す場合、「色安定性」であるとみなされる。
【0016】
「フェノール樹脂」という用語は、フェノール、例えば、フェノール、レゾルシノール、アルキル置換フェノール、例えば、クレゾール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノールなど、およびp−フェニルフェノールなどと、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドおよびフルフルアルデヒドなどとの任意の樹脂性反応生成物を指す。「アルカリ金属水酸化物により触媒される色安定化フェノール樹脂」は、色安定剤により色安定化される硬化したアルカリ金属水酸化物フェノール樹脂を指す。
【0017】
砥粒製品は、フェノール樹脂バインダー、1種または複数種のカルボン酸エステル色安定剤、1種または複数種の任意選択による着色剤、砥粒、支持部材または裏当て材を有することを特徴とし、硬化剤、非反応性熱可塑性樹脂、充填剤、研削助剤、および他の添加剤をさらに含み得る。
【0018】
砥粒物品の構造、および製造方法
一実施形態では、色安定砥粒物品は、フェノール樹脂バインダー、色安定剤、および砥粒物質を含む。色安定砥粒物品は、固定砥粒、構造化砥粒、または研磨布紙であることができる。
【0019】
本発明の研磨布紙工具は、基材、砥粒物質、および砥粒物質を基材に保持するための少なくとも1種のフェノール樹脂バインダーを含み得る。本明細書で用いられる場合、「研磨布紙工具」は、不織布研磨工具を包含する。砥粒、その粒子または凝集体などの砥粒物質は、研磨布紙工具の1層(例えば、樹脂−砥粒層)または2層(例えば、メークコート(make coat)およびサイズコート(size coat))に存在し得る。本発明の方法で製造され得るこのような研磨布紙工具の例は、図1および図2に示される。図1を参照すると、研磨布紙工具10において、基材12は、任意選択によるバックサイズコート(backsize coat)16および、任意選択によるプレサイズコート(presize coat)18で処理される。任意選択によるプレサイズコート18の上を覆うのは、砥粒または砥粒粒子などの砥粒物質14が施されるメークコート20である。サイズコート22は、メークコート20および砥粒物質14の上に、任意選択によって施される。サイズコート22を覆うのは、任意選択によるスーパーサイズコート(supersize coat)24である。それらの特定の用途に依存して、研磨布紙工具10は、バックサイズコート16および/またはプレサイズコート18を含んでも、含まなくてもよい。また、それらの特定の用途に依存して、研磨布紙工具10は、メークコート22および/またはスーパーサイズコート24を含んでも、含まなくてもよい。本発明の方法で形成され得る研磨布紙工具の例は図2に示され、ここで、研磨布紙工具30は、砥粒物質および固着剤(バインダー−砥粒層)32からなる単一層ならびに任意選択によって、バックサイズコート16を含む。任意選択によって、図1に示されるように、プレサイズコート18、メークコート22およびスーパーサイズコート24を研磨布紙工具30に含めることができる。研磨布紙物品は、バインダー−砥粒層、バックサイズコート、プレサイズコート、メークコート、サイズコート、およびスーパーサイズコートからなる群から選択される少なくとも1層に、色安定フェノール樹脂バインダーを含むことができる。
【0020】
図1に示されるような、サイズコートおよびスーパーサイズコートを含む実施形態において、砥粒物質は、重力、静電析出法、空気流によって、またはポリウレタン接着剤組成物と一緒のスラリーとして別個に施すことができる。メークコート20は、砥粒物質を基材の表面に固着させ、支持基材を、砥粒を含まないフェノール樹脂バインダーに含浸させることにより形成され得る。
【0021】
図2の実施形態において、支持基材は、砥粒物質と、フェノール樹脂バインダーおよび色安定剤を含む樹脂組成物とを含む樹脂/砥粒スラリーに含浸させて、バインダー/砥粒層32を形成し得る。
【0022】
一実施形態では、色安定砥粒物品を製造する方法は、以下を含む:レゾールと、少なくとも1種のカルボン酸エステルを含む色安定剤とをブレンドして、レゾール組成物を形成する工程;複数の砥粒粒子をレゾール組成物と接触させる工程;およびレゾール組成物を硬化させて、色安定砥粒製品を作る工程。上記研磨布紙に加えて、本方法で形成される色安定砥粒物品は、例えば、構造化砥粒および固定砥粒を含む。
【0023】
構造化砥粒に関して、本物品は、砥粒構造が硬化前に形成される当技術分野で公知の技術のいずれかによって形成される。このような技術は、例えば、エンボス加工技術を含む。例えば、一実施形態では、フェノール樹脂バインダーと、カルボン酸エステル、エステル、カルボン酸、ジオンを含む化合物、アクリル基を含む化合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、任意選択による着色剤と、砥粒とを含む混合物を、裏当て材および生産工具と接触させ、ここで、混合物は裏当て材の一面に固着する。このようにして、生産工具の内側の形状を有する砥粒構造が形成される。
【0024】
固定砥粒物品は、フェノール樹脂バインダーと、カルボン酸エステル、エステル、カルボン酸、ジオン基を含む化合物、アクリル基を含む化合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、任意選択による着色剤と、砥粒とを含む凝集体を調製することにより形成され得る。次いで、凝集体は、固定砥粒を調製するための当技術分野で公知の技術のいずれかを用いて形状化される。固定砥粒を調製するための適当な技術は、例えば、Wuの米国特許第5,738,696号明細書、Wuらの米国特許第5,738,697号明細書;およびBrightらの米国特許第6,679,758号明細書;ならびにSimonの米国特許公開第2003/0192258A1号明細書にさらに記載されており、これらのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
工作物表面は、色安定砥粒物品を工作物表面に研磨運動を伴って適用し、工作物表面の一部を除去することによって研磨される。
【0026】
フェノール樹脂バインダー
本発明で用いられる通常のフェノール樹脂は、レゾールであり、これはフェノール:ホルムアルデヒドのモル比約1:1〜約1:3、およびフェノール:アルカリ金属水酸化物のモル比約1:1〜約100:1でフェノールとホルムアルデヒドとのアルカリ金属水酸化物により触媒される反応から得られる。このようなレゾール、すなわち塩基により触媒されるフェノール樹脂の色は、1種または複数種のカルボン酸エステルの添加により安定化される。Durez Corporationにより製造されるDurez Varcum Resin No.94908は、バインダーとして用いることができる水性の一段式液体フェノール樹脂の一例である。
【0027】
色−安定剤
本明細書で用いられる色−安定剤には、カルボン酸エステル類、エステル類、カルボン酸類、ジオン基を含有する化合物、アクリル基を含有する化合物、およびそれらの混合物が含まれる。例えば、適当な化合物には、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸ブチル、乳酸2−エチルヘキシル、ヘプタン酸、乳酸、アセト酢酸エチル、2,2,5−トリメチル−1−3−ジオキサン−4−6−ジオン、および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
ある種の実施形態では、色−安定剤は、フェノール樹脂の重量で約1%〜約40%の量で存在する。他の実施形態では、色−安定剤は、フェノール樹脂の重量で約4%〜約10%の量で存在する。
【0029】
乳酸エチルは、特に有効であることが見いだされた。例えば、本発明の一実施形態は以下を含む:
【0030】
【表1】

【0031】
ヘプタン酸、乳酸、アセト酢酸エチル、2,2,5−トリメチル−1−3−ジオキサン−4−6−ジオン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートは、樹脂の総重量の5%または10%程度の少ない量で添加される場合、有効な色安定剤作用物質であることが実証された。
【0032】
着色剤
砥粒製品は、着色剤、例えば、染料または顔料を含む。一般に、着色剤の一部は、硬化樹脂を通して目視できる。一部の実施形態では、着色剤の一部は、硬化樹脂、任意選択による支持基材、および/または任意選択による支持基材と硬化樹脂との間のコーティングに含まれる。特定の実施形態では、着色剤には、有機多環状染料、有機モノアゾ染料、有機ジアゾ染料、有機金属錯体、無機顔料、例えば、金属酸化物または錯体などが含まれ得る。染料は、ペリノン、アントラキノン、アゾ染料錯体およびチオインジゴイドであることができる。
【0033】
蛍光着色剤は、蛍光有機分子を含有する染料または顔料である。蛍光着色剤の詳細な説明は、Zollinger,H.、「Color Chemistry:Synthesis, Properties, and Applications of Organic Dyes and Pigments」、第2版、VCH、New York、1991年に見いだすことができ、これの全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で用いられる場合、蛍光着色剤は、例えば、キサンテン、チオキサンテン、フルオレン(例えば、フルオレセイン類、ローダミン類、エオシン類、フロキシン類、ウラニン類、スクシネイン類、サッカレイン類、ローザミン類、およびロドール類)、ナフチルアミン、ナフチルイミド、ナフトラクタム、アザラクトン、メチン、オキサジン、チアジン、ベンゾピラン、クマリン、アミノケトン、アントラキノン、イソビオラントロン、アントラピリドン、ピラニン、ピラゾロン、ベンゾチアゼン、ペリレン、またはチオインジゴイドであることができる。より好ましくは、蛍光着色剤は、キサンテン類、チオキサンテン類、ベンゾピラン類、クマリン類、アミノケトン類、アントラキノン類、イソビオラントロン類、アントラピリドン類、ピラニン類、ピラゾロン類、ベンゾチアゼン類、チオインジゴイド類およびフルオレン類からなる群から選択される。最も好ましくは、蛍光着色剤は、チオキサンテンまたはチオキサンテンである。
【0034】
当業者は、多くの市販の着色剤について、クラス、例えば、チオキサンテン誘導体の範囲内の個々の誘導体の具体的な化学構造は公に利用され得ないことを理解する。したがって、具体的な蛍光着色剤は通常、「Colour Index International」、第4版、American Association of Textile Chemists and Colorists、Research Triangle Park、NC、2002年に定義されたとおりの色指数(Colour Index)(C.I.)名で呼ばれる。色指数は、www.colour−index.org.においてオンラインで入手もできる。この色指数の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
好ましい蛍光着色剤の例には、C.I.Solvent Orange 63(Hostasol Red GG、Hoechst AG(Frankfurt,Germany))、C.I.Solvent Yellow 98(Hostasol Yellow 3G、Hoechst AG(Frankfurt,Germany))、およびC.I.Solvent Orange 118(FL Orange SFR、Keystone Aniline Corporation(Chicago,Illinois))が含まれる。
【0036】
用いることのできる着色剤の量は、意図される使用の細目、着色剤の特性、組成物中の他の成分などに依存する。当業者は、特定の使用に対する着色剤の量を決定するためにこれらの詳細を判断する仕方を知っている。通常、着色剤の量は、全組成物の、約0.01〜約2%、より好ましくは約0.05〜約0.5%、最も好ましくは約0.2%重量分率である。
【0037】
具体的な実施形態では、着色剤は、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青色、藍色、または紫色の着色剤である。具体的な実施形態では、着色剤は、蛍光、例えば、蛍光赤色、蛍光オレンジ色(ブレーズオレンジ(blaze orange))、蛍光黄色、蛍光緑色などである。
【0038】
適当な着色剤の例には、Elcoment Orange GS(Blaze);Elcoment Green Nort Liq.;および特に、Elcoment Blue RS(これらのすべては、Greenville,SCに位置するGreenville Colorantsから市販されている);およびAkrosperse E5137(これは、Akron,OHに位置するAkrochem Corp.から入手できる)が含まれる。
【0039】
着色剤は、砥粒製品を識別するために、例えば、商業的ブランド設定、使用法表示、例えば、湿潤、乾燥、木材、金属など、またはグリットサイズの識別などのために使用され得る。
【0040】
砥粒物質
砥粒は、限定されるものではないが、シリカ、アルミナ(溶融または焼結)、ジルコニア、ジルコニア/アルミナ酸化物、炭化ケイ素、ガーネット、ダイヤモンド、立方晶系窒化ホウ素(CBN)、窒化ケイ素、セリア、二酸化チタン、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、酸化スズ、炭化タングステン、炭化チタン、酸化鉄、クロミア、フリント、およびエメリーを含む粒子のいずれか1種または組合せを含み得る。例えば、砥粒は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ガーネット、ダイヤモンド、共溶融アルミナジルコニア、セリア、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、フリント、エメリー、窒化アルミナ、およびそれらのブレンドからなる群から選択され得る。一部の場合に、アルファ−アルミナおよび/またはガンマアルミナから主として構成される高密度の砥粒が使用され得る。
【0041】
砥粒は、凝集砥粒としても知られている砥粒凝集粒子も含み得る。砥粒凝集粒子は、粒子バインダー材料により一緒に固着した砥粒粒子を含む。砥粒凝集粒子に存在する砥粒粒子は、研磨工具における使用について知られている砥粒、例えば、シリカ、アルミナ(溶融または焼結)、ジルコニア、ジルコニア/アルミナ酸化物、炭化ケイ素、ガーネット、ダイヤモンド、立方晶系窒化ホウ素(CBN)、窒化ケイ素、セリア、二酸化チタン、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、酸化スズ、炭化タングステン、炭化チタン、酸化鉄、クロミア、フリント、エメリー、およびそれらの組合せの1種または複数種を含み得る。砥粒粒子は、任意の大きさまたは形状のものであり得る。砥粒凝集粒子は、粒子バインダー材料、例えば、金属材料、有機材料、もしくはガラス質材料など、またはこのような材料の組合せによって一緒に固着され得る。本発明における使用のために適した砥粒凝集粒子は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Knappらの米国特許第6,797,023号明細書にさらに記載されている。
【0042】
砥粒は、1種または複数種の特定の形状を有し得る。このような特定の形状の例には、棒状、三角形、角錐、円錐、充実球、中空球などが含まれる。あるいは、砥粒は不規則に形状化され得る。
【0043】
通常、砥粒は、2000ミクロン以下、例えば、約1500ミクロン以下の平均粒度を有する。別の例では、砥粒粒度は、約750ミクロン以下、例えば、約350ミクロン以下である。一部の実施形態では、砥粒粒度は、少なくとも0.1ミクロン、例えば、約0.1ミクロン〜約1500ミクロン、より典型的には、約0.1ミクロン〜約200ミクロン、または約1ミクロン〜約100ミクロンであり得る。砥粒の粒度は、砥粒の最長寸法であるように通常特定される。一般に、粒度の範囲分布がある。一部の場合に、粒度分布は、厳重に調節される。
【0044】
支持部材/裏当て材
砥粒物品は、支持部材、または裏当て材を含み得る。裏当て材は、柔軟または剛性であり得る。裏当て材は、研磨布地の製造における裏当て材として従来使用されるものを含む任意の数の種々の材料から作られ得る。適当な裏当て材には、ポリマーフィルム(例えば、プライマー処理フィルム)、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、二軸配向ポリプロピレンを含むポリプロピレン)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミドフィルム、またはセルロースエステルフィルム;金属箔;メッシュ;フォーム(例えば、天然スポンジ材またはポリウレタンフォーム);布(例えば、織布、不織布、起毛布、ステッチボンデッド布、もしくはキルト布、またはポリエステル、ナイロン、絹、綿、ポリエステル−綿もしくはレーヨンからなる繊維もしくは糸からできている布);紙;加硫紙;バルカンゴム;バルカンファイバー;不織布材料;それらの処理された裏当て材;またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0045】
裏当て材は、サチュラント(saturant)、プレサイズ層またはバックサイズ層の少なくとも1つを有し得る。これらの層の目的は通常、裏当て材を目止めするか、または裏当て材の糸もしくは繊維を保護することである。裏当て材が布材料である場合、これらの層の少なくとも1つが通常用いられる。プレサイズ層またはバックサイズ層の追加は、裏当て材の前面または裏面に「より平滑な」表面をさらにもたらし得る。当技術分野で知られている他の任意選択による層も用いることができる(例えば、タイ層(tie layer);Stoetzelらの米国特許第5,700,302号明細書(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)参照)。
【0046】
一部の実施形態では、砥粒物品は、微細な研削材としての使用が意図され、したがって、非常に平滑な表面が好まれることがある。このような平滑表面の裏当て材の例には、微細にカレンダー加工された紙、平滑な表面コーティングを有するプラスチックフィルムまたはファブリックが含まれる。
【0047】
裏当て材は、静電防止特性を有し得る。静電防止剤の追加により、木材または木材様材料をサンディングするときに、砥粒物品が静電気を蓄積する傾向が減少し得る。静電防止裏当て材および裏当て材処理に関するさらなる詳細は、例えば、Buchananらの米国特許第5,108,463号明細書;Buchananらの米国特許第5,137,542号明細書;Buchananの米国特許第5,328,716号明細書;およびBuchananらの米国特許第5,560,753号明細書に見いだすことができ、それらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
裏当て材は、例えば、Stoutらの米国特許第5,417,726号明細書に記載されたような繊維強化熱可塑性物質、または、例えば、Benedictらの米国特許第5,573,619号明細書に記載されたとおりのエンドレススプライスレスベルトを含み得、それらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。同様に、裏当て材は、例えば、Chesleyらの米国特許第5,505,747号明細書(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたもののような、突出しているフッキングステムを有するポリマー基材を含み得る。同様に、裏当て材は、例えば、Follettらの米国特許第5,565,011号明細書(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたもののようなループファブリックを含み得る。
【0049】
他の成分
本発明の砥粒物品は、例えば、硬化添加剤、非反応性熱可塑性樹脂、充填剤、研削助剤;および他の添加剤などの種々の他の成分も含み得る。
【0050】
一部の実施形態では、砥粒物品は、硬化添加剤、例えば光開始剤を含み、それが放射線、例えば、UV線に曝露されるとき、フリーラジカルが発生する。フリーラジカル発生剤には、有機過酸化物、アゾ化合物、キノン類、ベンゾフェノン類、ニトロソ化合物、アクリルハロゲン化物、ヒドロゾン類、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、トリアクリルイミダゾール類、ビスイミダゾール類、クロロアルキルトリアジン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、チオキサントン類およびアセトフェノン類が、このような化合物の誘導体を含めて、含まれ得る。これらの中で、最も普通に用いられる光開始剤は、ベンジルケタール類、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(IRGACURE(登録商標)651の商標の下でCiba Specialty Chemicalsから入手できる)およびアセトフェノン誘導体、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン(「DEAP」、これは、First Chemical Corporationから市販されている)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(「HMPP」、これは、DAROCUR(登録商標)1173の商標の下で、Ciba Specialty Chemicalsから市販されている)、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(これは、IRGACURE(登録商標)369の商標の下で、Ciba Specialty Chemicalsから市販されている);および2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE(登録商標)907の商標の下で、Ciba Specialty Chemicalsから入手できる)である。
【0051】
砥粒物品は、非反応性熱可塑性樹脂、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリオキシプロピレン−ポリオキシエテン(polyoxyethene)ブロックコポリマーなどを含み得る。
【0052】
充填剤には、有機充填剤、無機充填剤、およびナノ−充填剤が含まれる。適当な充填剤の例には、金属炭酸塩(炭酸カルシウムおよび炭酸ナトリウムなど);シリカ(石英、ガラスビーズ、ガラス気泡など);ケイ酸塩(タルク、クレー、メタケイ酸カルシウムなど);金属硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなど);金属酸化物(酸化カルシウム、酸化アルミニウムなど);アルミニウム三水和物、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
砥粒物品は、研削効率および切断速度を増加させるための研削助剤を含み得る。有用な研削助剤は、無機系、例えば、ハロゲン化物塩(例えば、ナトリウムクリオライトおよびテトラフルオロホウ酸カリウム)など;または有機系、例えば、塩素化ロウ(例えば、ポリ塩化ビニル)などであり得る。特定の一実施形態では、砥粒物品は、約1ミクロン〜約80ミクロン、最も典型的には約5ミクロン〜約30ミクロンの範囲の粒径を有するクリオライトおよびテトラフルオロホウ酸カリウムを含む。メークコートにおける研削助剤の濃度は一般に、約50重量%以下であり、例えば、研削助剤の濃度は、しばしば約0.1重量%〜50重量%、最も典型的には約10重量%〜30重量%(すべて、砥粒を含むメークコート重量に基づく重量%)である。
【0054】
さらなる添加剤の例には、カップリング剤、例えば、シランカップリング剤(例えば、Osi Specialties, Inc.から入手できるA−174およびA−1100)、チタン酸塩、およびジルコアルミネート(zircoalurminates)など;静電防止剤、例えば、黒鉛、カーボンブラックなど;懸濁化剤、例えば、フュームドシリカ(例えば、Cab−O−Sil M5、Aerosil 200)など;目詰まり防止剤(ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムなど);潤滑剤(ロウ、PTFE粉末、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリシロキサンなど);湿潤剤;顔料;分散剤;および消泡剤が含まれる。
【実施例】
【0055】
実施例1
本発明はこれから、限定的であることを意図しない以下の実施例によってさらにおよび具体的に説明される。
【0056】
以下の化合物を色安定剤作用物質としての性能について試験した:ヘプタン酸、乳酸、アセト酢酸エチル、2,2,5−トリメチル−1−3−ジオキサン−4−6−ジオン、および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート。正味のフェノール樹脂および色安定剤作用物質(樹脂重量当たり4%〜10%)を含む配合物を調製し、180℃で12時間硬化させ;ヘプタン酸は、250°Fで6時間硬化させた。硬化試料を図3に示す。
【0057】
実施例2
乳酸エチルをフェノール樹脂サイズコート配合物中の色安定剤作用物質として試験し、乳酸エチルを含まない対照配合物と比較した。配合物は以下に記載する:
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
これらの配合物の両方を、予め作った研磨布紙試料に塗布した。試料は、メークコートおよび粒子が、通常の製造工程中に通常のサイズコートが塗布される前に被覆され、通常の程度まで硬化させてある裏当て材を含んだ。
【0061】
2種類のサイズコートを予め作った研磨布紙に塗布し、標準的なサイズ硬化を与えた後に、それぞれの5試料を235°Fのオーブン中に入れ、単一の試料を滞留時間2、4、6、8および24時間後にオーブンから引き出し、「後硬化」工程を模倣した。色ずれの目視比較を図4に示す。
【0062】
色ずれのこの定性的比較に加えて、より定量的な測定を、HunterLabにより供給されるMiniScan XE Plus Colorimeterを使用して行い、結果を図5に提供する。
【0063】
図5は、乳酸エチルの使用による、合計の色ずれ、デルタEの減少を示す。後硬化の通常の処理条件は、4〜8時間である。この場合、この時間の間の非色安定サイズの実測可能なデルタEは、11.14から17.18に増加し、6.04の差を生じた。樹脂の5重量%の乳酸エチルの使用によって、デルタEは6.12から8.31に増加したのみで、2.19の差を生じ、したがって、色ずれの顕著な減少を示した。
【0064】
評価
本発明をその実施例の実施形態を参照して特に示し、かつ説明してきたが、形態および詳細における様々な変化が、添付の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱することなく、そこにおいて行われ得ることが当業者に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フェノール樹脂を含むバインダー;
b)少なくとも1種のカルボン酸エステルを含む色安定剤;および
c)砥粒
を含む、色安定砥粒物品。
【請求項2】
前記色安定剤が、カルボン酸エステル類、エステル類、カルボン酸類、ジオン基を含む化合物、アクリル基を含む化合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物を含む、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項3】
前記色安定剤が乳酸エステルを含む、請求項2に記載の色安定砥粒物品。
【請求項4】
前記色安定剤が、ヘプタン酸、乳酸、アセト酢酸エチル、2,2,5−トリメチル−1−3−ジオキサン−4−6−ジオン、乳酸エチル、および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項2に記載の色安定砥粒物品。
【請求項5】
前記フェノール樹脂がレゾールである、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項6】
前記色安定剤が、前記フェノール樹脂の重量で約1%〜約40%の量で存在する、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項7】
前記色安定剤が、前記フェノール樹脂の重量で約4%〜約10%の量で存在する、請求項6に記載の色安定砥粒物品。
【請求項8】
支持部材をさらに含む、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項9】
共溶媒をさらに含む、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項10】
前記共溶媒がグリコールである、請求項9に記載の色安定砥粒物品。
【請求項11】
硬化添加をさらに含み、前記硬化添加剤が、過酸化物およびUV光開始剤の群から選択される1種または複数種の添加剤を含む、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項12】
約235°Fで硬化約2時間後の同じ物品と比べて、約235°Fで硬化約8時間後に目視で認知できる色変化をまったく有しない、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項13】
前記フェノール樹脂バインダーおよび色安定剤が、バインダー−砥粒層、バックサイズコート、プレサイズコート、メークコート、サイズコート、およびスーパーサイズコートからなる群から選択される少なくとも1層に存在する、請求項1に記載の色安定砥粒物品。
【請求項14】
色安定砥粒物品を製造する方法であって、
a)レゾールと、少なくとも1種のカルボン酸エステルを含む色安定剤とをブレンドして、レゾール組成物を形成する工程;
b)複数の砥粒粒子を前記レゾール組成物と接触させる工程;および
c)前記レゾール組成物を硬化させて、前記色安定砥粒物品を作る工程
を含む、方法。
【請求項15】
工作物表面を研磨する方法であって、
色安定砥粒物品を工作物表面に研磨運動を伴って適用し、前記工作物表面の一部を除去する工程を含み、前記砥粒製品が、
a)フェノール樹脂を含むバインダー;
b)カルボン酸エステル類、エステル類、カルボン酸類、ジオン基を含む化合物、アクリル基を含む化合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物を含む色安定剤;ならびに
c)砥粒
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509195(P2012−509195A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536553(P2011−536553)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/064546
【国際公開番号】WO2010/057075
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510197324)サンゴバン アブレシブ インコーポレーティド (3)
【出願人】(509257662)
【Fターム(参考)】