説明

カルボン酸官能化重合体の調製方法

カルボキシル官能基を担持する、水溶性非ペプチド重合体、特にカルボン酸官能化ポリ(エチレングリコール) (PEG)重合体を調製するための方法、並びにこれらの方法の生成物が開示されている。一般に、エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、R’は第三級基であり、Rは官能基Xを含む)を、水溶性非ペプチド重合体POLY−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)と反応させて、該重合体の第三級エステルを形成し、次にそれを水溶液中で強塩基を用いて処理し、該重合体のカルボキシラートを形成させる。標準的には、次にこのカルボキシラートを水溶液中で無機酸を用いて処理して、該カルボキシラートをカルボン酸に転換させ、かくしてカルボン酸官能化重合体を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル官能基を担持する水溶性非ペプチド重合体、特にカルボン酸官能化ポリ(エチレングリコール) (PEG)重合体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
求電子基で活性化されたポリ(エチレングリコール)(PEG)誘導体は、アミノ基といった求核基に対して生物活性分子をカップリングする上で有用である。特に、PEGの活性エステル及びその他のカルボン酸誘導体は、アミノ基を支持するタンパク質に対してPEGを付着させるために用いられてきた。
【0003】
末端カルボキシメチル基を有するPEG分子は、例えば、Martinez et al.,米国特許第5,681,567号、Veronese et al.,Journal of Controlled Release 10:145−154(1989)、及びBuckmann et al., Makromol. Chem.182(5):1379−1384(1981)などにより記述されてきた。米国特許第5,672,662号(Harris et al)は、末端プロピオン酸又はブタン酸部分を有するPEG誘導体を開示している。かかる末端カルボキシル基PEGは、タンパク質又はアミノ基を支持するその他の分子に対する抱合に適した活性エステルを調製するために使用されている。
【0004】
しかしながら、カルボキシル官能化重合体の調製に付随する絶えざる問題は、充分に高い純度レベルで所望の重合体生成物を得るのが困難であるということにあった。例えば、前掲のVeronese et al.及びBuckmann et al.では、α−ハロエチルエステルとmPEG−OHの塩基触媒反応とそれに続く該エステルの塩基促進加水分解により、mPEG−OHをmPEGカルボン酸のエチルエステルに転換させる段階を含むmPEGカルボン酸の合成方法が用いられている。しかしながら、この手法は、純度が僅か約85%でしかないmPEG酸を提供し、主たる汚染物質は、沈殿、結晶化又は抽出といったような標準的な精製方法を用いてはmPEGカルボン酸から分離不能なmPEG−OHである。mPEG−OHの除去には、多大な時間と費用を要する分取イオン交換カラムクロマトグラフィの使用が必要である。商業的に得られるPEGカルボン酸は、PEG−OH残留量を含有していることが多く、これによりこれらの材料に基づく誘導体又は生物抱合体の調製が複雑になっている。
【0005】
米国特許第5,278,303号、第5、605,976号及び第5,681,567号は後に酸、好ましくはトリフルオロ酢酸(TFA)で加水分解される、第三級アルキルエステル官能化PEGを調製するために第三級アルキルハロ酢酸を用いることによる、出発材料(PEGアルコール)を僅かしか又は全く含まないPEGカルボン酸の調製について報告している。
【0006】
t−ブチルエステルといった第三級アルキルエステルが、エチルエステルといった一級アルキルエステルを加水分解するために標準的に 使用される弱塩基加水分解に対して安定であることを保護基の使用に関する様々な学術論文が指摘している。強塩基加水分解は、カルボン酸基の開裂を引き起こし得る。例えば、T. W. Greene、「有機化学における保護基」、第3版、1999、406頁;又はJ. Kociensky、「保護基」、1994、125頁を参照のこと。従って、これらの第三級アルキルエステルは、従来より酸、標準的にはTFAで開裂されている。
【0007】
しかしながら、トリフルオロ酢酸の使用は、精製及び生成物の安定性の問題を結果としてもたらす可能性がある。トリフルオロ酢酸、特に以上で指示されている特許中で示唆されているTFAの量は、最終カルボキシル官能化重合体から完全に除去することが困難である。残留トリフルオロ酢酸が存在するために、酸促進型自動酸化により引き起こされる重合体の分解に起因して低い生成物安定性が結果としてもたらされる。例えば、M. Donbrow、「非イオン性界面活性剤中のポリオキシエチレン鎖の安定性」:Physical Chemistry、M. J. Schick、ed., Marcel Dekker、1987、1011頁以下を参照のこと。この論文は、酸がヒドロペルオキシドの形成とヒドロペルオキシド破断を触媒し、ヒドロキシエチレン鎖の開裂を導くことを報告している。
【0008】
米国特許第5,605,976号は、重合体生成物から有機材料を分離するための手段として蒸留を示唆しているものの、沸点が非常に低い化合物でさえ、蒸留プロセスを用いて高分子量の重合体から除去するのが困難であり、この困難さは該重合体の分子量が増大するにつれて高くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当該技術分野では、高い収量でかつ有意な量の重合体汚染物質、特に有意な量の重合体出発材料を含まない状態でカルボン酸官能化重合体を調製するための代替的方法に対するニーズが存在する。同様に、当該技術分野では、最終重合体生成物からの除去が困難であるか又は生成物の安定性問題を引き起こすような試薬を利用しない代替的な合成方法に対するニーズも存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
1つの態様においては、該発明は、カルボキシル基で官能化された水溶性非ペプチド重合体を調製するための方法において、
(i)エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、R’は第三級基であり、Rは官能基Xを含む)を、水溶性非ペプチド重合体POLY−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)と反応させて、該重合体の第三級エステルを形成させる段階;及び
(i)重合体の第三級エステルを水溶液中でアルカリ金属水酸化物といった強塩基を用いて処理し、該重合体のカルボキシラートを形成させる段階を含んで成る方法を提供する。該方法はさらに、(iii)重合体のカルボキシラートを水溶液中で無機酸を用いて処理し、該カルボキシラートをカルボン酸に転換させ、かくしてカルボン酸官能化重合体を形成させる段階を含み得る。該カルボン酸官能化重合体を次に、適切な溶剤、好ましくは塩素化溶媒を用いて水溶液から抽出することができる。
【0011】
1つの実施形態において、Xは、ハロゲン化物又はスルホナートエステルといった離脱基でありかつYはヒドロキシル基である。Yがヒドロキシル基である場合、反応(i)は好ましくは塩基、例えばR’O−M+(なお式中M+はカチオンである)形態の塩基の存在下で行われる。
【0012】
反応(ii)中の強塩基を用いた処理は、好ましくは、約11〜13の反応pHを生成するのに有効である。ステップ(iii)の例えば鉱酸などの無機酸は、好ましくは、水溶液中で非求核性アニオンを生成する酸である。好ましい酸には、硫酸、硝酸、リン酸及び塩酸が含まれる。(iii)の酸処理は、好ましくは、約1〜3の反応pHを生成するのに有効である。
【0013】
反応(i)で利用されている第三級エステル試薬は、好ましくは、
【化1】


という構造を有している。構造(I)中、Xは離脱基であり;かつR1及びR2の各々は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル及びヘテロ環の中から独立して選択される。好ましくは、(CR12)基は、同一の炭素原子に付着された2つのヘテロ原子を含まない。例えば、同じ炭素原子上のR1及びR2は好ましくは両方共アルコキシではない。R3〜R5の各々は、低級アルキル、アリール、アラルキル及びシクロアルキルの中から独立して選択され、ここで、R3〜R5の任意のものと連結させて1つの環又はアダマンチルといった環系を形成させることができる。水素を除くR1〜R5のいずかを、低級アルキル、低級アルコキシ、C3−C6シクロアルキル、ハロ、シアノ、オキソ(ケト)、ニトロ及びフェニルの中から選択されている基で置換させることができる。変数nは1〜約24、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、そして最も好ましくは1又は2である。1つの実施形態において、nは1である。
【0014】
構造(I)の選択されている実施形態では、R1及びR2の各々は、独立して水素又は未置換低級アルキル、好ましくは水素又はメチルであり、かつR3〜R5の各々は独立して未置換低級アルキル又はフェニル、好ましくはメチル、エチル又はフェニルである。1つの実施形態において、R1及びR2の各々はHでありかつnは1である。
【0015】
構造(I)中の離脱基Xは、好ましくはハロゲン化物又はスルホン酸エステルである。1つの実施形態において、第三級エステル試薬は、t−ブチルハロ酢酸といった第三級アルキルハロ酢酸である。
【0016】
重合体は、好ましくはポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酢酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、及びそれらの共重合体又は三元重合体から成る群から選択される。1つの好ましい実施形態において、該重合体はポリ(エチレングリコール)である。ポリ(エチレングリコール)は線状であり、一方の末端において官能基Yで、かつ他方の末端においてもう1つの官能基Y’又はメトキシ基といったキャッピング基で終端されていてよい。代替的には、ポリ(エチレングリコール)は、有枝型、V(fork)型又は多腕型であってよい。
【0017】
該方法は、例えばN−スクシンイミジルエステル、o−、m−又はp−ニトロフェニルエステル、1−ベンゾトリアゾリルエステル、イミダゾリルエステル又はN−スルホスクシンイミジルエステルといったような活性化されたエステルである活性化されたカルボン酸誘導体にカルボン酸官能化重合体のカルボン酸を転換させる段階をさらに含み得る。次に、生物活性分子上の官能基好ましくはヒドロキシル、チオール又はアミノ基といった求核基とカルボン酸誘導体を反応させることによって、生物活性分子と重合体を抱合させることができる。好ましくは、該求核基はアミノ基である。
【0018】
該方法の1つの好ましい実施形態では、上述の通り、重合体はPEG重合体である。この態様においては、該発明は、カルボキシル基で官能化されたポリ(エチレングリコール)(PEG)を調製するための方法において、
i)第三級エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、R’は第三級アルキル基であり、Rは官能基Xを含む)を、重合体PEG−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)と反応させて、PEG第三級エステルを形成させる段階;及び
ii)PEG第三級エステルを水溶液中で、アルカリ金属水酸化物といった強塩基を用いて処理し、PEGカルボキシラートを形成させる段階を含んで成る方法を提供する。該方法はさらに、iii)PEGカルボキシラートを水溶液中で無機酸を用いて処理し、該カルボキシラートをカルボン酸に転換し、かくしてPEGカルボン酸を形成させる段階を含んで成る。該方法の好ましい実施形態は、上述のものに対応する。該方法はさらに、該PEG−カルボン酸を活性化されたエステルといった活性化されたカルボン酸誘導体に転換する段階、及びカルボン酸誘導体を生物活性分子上の官能基と反応させることによって、該分子に対して該重合体を抱合させる段階をさらに含んで成る。
【0019】
1つの実施形態において、ポリ(エチレングリコール)は線状であり、一方の末端において官能基Yで、かつ他方の末端においてもう1つの官能基Y’又はメトキシ基といったキャッピング基で終端されている。PEGの分子量は、好ましくは約100Da〜約100kDaの範囲内にあり、より好ましくは約300Da〜40、50又は60kDaの範囲内にある。その他の実施形態において、PEGは、さらに以下で記述されている通り、有枝型、V(fork)型又は多腕型である。
【0020】
関連する態様において、該発明は、本書中に開示されている方法によって作られたカルボン酸官能化重合体を含む単離された重合体生成物を提供し、ここで、該生成物は5重量%未満の出発材料、すなわちPOLY−Y又はPEG−Y重合体を含有し、残りは基本的にカルボン酸官能化重合体で構成されている。好ましくは、該単離された重合体生成物は、2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.5重量%未満のPOLY−Y又はPEG−Y重合体を含有する。さらに好ましい実施形態では、該単離された重合体生成物は、0.4重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満及び最も好ましくは0.2重量%未満のPOLY−Y又はPEG−Y重合体を含有する。
【0021】
さらに好ましい態様においては、単離された重合体生成物は、低分子量有機酸を実質的に全く含有していない。1つの実施形態において、単離された重合体生成物は、トリフルオロ酢酸といった単量体有機カルボン酸を実質的に全く含有していない。
【0022】
該発明の重合体生成物の1つの実施形態において、カルボン酸官能化重合体はPEGカルボン酸である。例えば、カルボン酸官能化重合体は、mPEG−CH2−COOHであり、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは0.5重量%そして最も好ましくは0.2重量%未満のmPEG−OHを含有する。好ましくは、生成物はトリフルオロ酢酸を実質的に全く含有していない。
【0023】
該生成物のもう1つの実施形態においては、カルボン酸官能化重合体は、HOOC−CH2−PEG−CH2−COOHであり、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、そして最も好ましくは0.2重量%未満のHO−PEG−OHを含有する。好ましくは、生成物は、トリフルオロ酢酸を実質的に全く含有していない。
【0024】
生成物のさらなる実施形態において、カルボン酸官能化重合体は、xを3〜8として、PEG−(CH2−COOH)xで表わされる多官能性有枝又は多腕カルボン酸官能化PEGであり、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは0.5重量%、そして最も好ましくは0.2重量%未満のPEG−(OH)xを含有する。好ましくは、生成物は、トリフルオロ酢酸を実質的に全く含有していない。
【0025】
該発明はさらに、PEG第三級エステルを形成させるべく、第三級エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、R’は第三級アルキル基であり、Rは官能基Xを含む)と、重合体PEG−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)を反応させることによって、カルボキシル基で官能化されたポリ(エチレングリコール)(PEG)重合体を調製する方法における改良を提供している。該改良は、水溶液中で強塩基、好ましくはアルカリ金属水酸化物を用いてPEG第三級エステルを処理し、PEGカルボキシラートを形成させる段階を含んで成る。強塩基は、好ましくは水溶液中で、約11〜13の反応pHを生成するのに有効なものである。
【0026】
該改良型方法は、水溶液中で無機酸を用いてPEGカルボキシラートを処理して、カルボキシラートをカルボン酸に転換させ、かくしてPEGカルボン酸を形成させる段階をさらに含み得る。該無機酸は、好ましくは硫酸、硝酸、リン酸及び塩酸から成る群から選択されている鉱酸である。
【0027】
該発明のこれらの及びその他の目的並びに特長は、内含された図面と併せて該発明の下記の詳細な説明を読んだ場合に、より完全に明らかなものとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明について、さらに詳しく説明する。しかしながら本発明は、多くの異なる形態で実施され得、本書中で説明されている実施形態に制限されるものと解釈すべきでない。むしろこれらの実施形態は、本開示が徹底的でかつ完全なものとなり、当業者に対し該発明の範囲を完全に伝達することになるように提供されている。該発明は、本明細書中に記されている特定の重合体、合成技術、活性作用物質などに制限されず、添付のクレームにより実施される通りの該発明の範囲内で変動し得る。 本書中において使用されている専門用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的とするものであり、制限的意味を持つものではない。
【0029】
I.定義
本発明を記述しかつ請求する上で、下記の専門用語は、以下で記述する定義に従って用いられることになる。
【0030】
本明細書中で使用されている単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしている場合を除き複数形の概念も内含する。
【0031】
本書中で用いられている「非ぺプチド」は、ペプチド連結を実質的に含まない重合体を意味する。しかしながら、重合体は主鎖の長さに沿って間隔取りされた少数のペプチド連結、つまり例えば約50単量体ユニットあたりペプチド連結約1個以下といったペプチド連結を内含し得る。
【0032】
本書中で用いられている「PEG」又は「ポリ」エチレングリコールは、あらゆる水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含するように意図されている。標準的には、本発明で使用するためのPEGは、−O(CH2CH2O)m−又は−CH2CH2O(CH2CH2O)m−CH2CH2−という2つの構造(なお式中、mは一般に3〜約3000である)のうちの1つを含むことになる。より広義では、「PEG」は、−CH2CH2O−であるサブユニットの大半、すなわち50%超を含有する重合体を意味し得る。
【0033】
全体的なPEGの末端基及びアーキテクチャは変化し得る。PEGは、標準的に1〜20個の炭素で構成された炭素含有基であり、かつ好ましくはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロ及び前述のいすれかのものの置換形態の中から選択される1末端酸素上のエンドキャッピング基を含有し得る。該エンドキャッピング基は同様にシランであっても良い。最も好ましいのは、メチル、エチル又はベンジルといったアルキル(アルコキシ)又はアラルキル(アラルコキシ)キャッピング基である。
【0034】
該エンドキャッピング基は、有利には検出可能な標識も含み得る。かかる標識としては、制限的な意味なく、化学発光剤、酵素標識内で用いられる部分、比色試薬(例えば染料)、金属イオン、放射性部分などが含まれる。
【0035】
その他の(「エンドキャップされていない」)末端は、標準的にヒドロキシル、アミン又はさらなる化学修飾に付される可能性のある活性化された基である。
【0036】
該発明中で用いられる特定のPEG形態としては、多様な分子量、構造又は幾何形状(例えば、有枝、線状、V字、多腕)を有するPEGが含まれる。
【0037】
「多官能性」重合体は、同一又は異なるものであってよい3つ以上の官能基を有する。多官能性重合体は、標準的に約3〜100の官能基、又は3〜50官能基、又は3〜25の官能基、又は3〜15の官能基、又は3〜10の官能基を含有することになるか、或いは3、4、5、6、7、8、9又は10の官能基を含有することになる。
【0038】
「二官能性」重合体は、同一であるか(すなわちホモ二官能性)又は異なる(すなわちヘテロ二官能性)ものであってよい2つの官能基を内部に含有する。
【0039】
「分子質量」又は「分子量」は、標準的にサイズ排除クロマトグラフィ、光散乱法或いは1,2,4−トリクロロベンゼン中での固有速度決定により決定される重合体の平均分子質量を意味する。別段の指摘がある場合を除き、本書中では分子量はΣNiMi/ΣNi(式中、Niは、分子量がMiである重合体の分子数(又はこれらの分子のモル数)である)として定義される数平均分子量(Mn)として表現される。
【0040】
該発明の又は該発明中で利用される重合体は、標準的に多分散系である。すなわち重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は等しくない。数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量 (Mw)の比(Mw/Mn)として表現される多分散値は一般に低い。すなわち約1.2未満、好ましくは約1.15未満、より好ましくは約1.10未満、さらにより好ましくは約1.05、なお最も好ましくは約1.03未満そして最も好ましくは約1.025未満である。
【0041】
「活性化されたカルボン酸」というのは、特に求核性攻撃に関して親カルボン酸よりもさらに反応性の高いカルボン酸の官能性誘導体を意味する。活性化されたカルボン酸には酸ハロゲン化物(例えば酸塩化物)、無水物及びエステルが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0042】
より一般的には、「活性化された」又は「反応性」という用語は、特定の官能基と共に用いられた場合、反応するために強い触媒又は非実用的な反応条件を必要とする基(すなわち「非反応性」又は「不活性」基)と異なり、もう1つの分子上の求電子物質又は求核物質と容易に反応する官能基を意味する。
【0043】
「保護基(protecting group)」又は「保護基(protective group)」という用語は、或る反応条件下で1つの分子内の特定の化学反応性官能基の反応を防止又は遮断する分子を意味する。保護基は、保護対象の化学反応性基のタイプ、ならびに利用すべき反応条件及び、該当する場合には、分子内の付加的な反応性基又は保護基の存在によって変動することになる。当該技術分野で既知の保護基は、Greene, T. W., et al.,「有機合成における保護基」第3版、John Wiley & Sons, New York, NY (1999)の中に見い出すことができる。本書で使用される「官能基」という語又はそのあらゆる同義語は、その保護された形態を包含するように意図されている。
【0044】
「スペーサ」又は「スペーサ部分」という用語は、ここでは、水溶性重合体部分の末端及び求電子物質といったような相互接続部分を連結するのに用いられる原子又は原子集合体を意味するものとして用いられている。標準的なスペーサにはアルキレン(炭素−炭素)、エーテル、アミノ、アミド、エステル、カルバミン酸塩、尿素及びケト及びそれらの組合せの中から選択された結合が含まれる。1つのスペーサには以上で列挙した単数又は複数のタイプのヘテロ原子含有連結と交互になった又はそれによりフランキングされている短アルキレン部分が含まれる可能性がある。さまざまな例には、−CH2OCH2CH2CH2−、−CH2C(O)NHCH2−、−C(O)OCH2−、−OC(O)NHCH2CH2−、−CH2CH2NHCH2、−CH2CH2C(O)CH2CH2−、−CH2CH2CH2C(O)NHCH2CH2NH−、及び−CH2CH2CH2C(O)NHCH2CH2NHC(O)CH2CH2−が含まれる。該発明のスペーサ部分は加水分解安定性を有することができるか又は、生理学的に加水分解可能な又は酵素的に分解可能な連結(例えばエステル連結)を内含し得る。
【0045】
「アルキル」は、標準的に原子約1〜20個の範囲の長さをもつ炭化水素鎖を意味する。かかる炭化水素鎖は好ましくは飽和しており(ただし必ずしもというわけではない)、有枝又は好ましくは線状(非有枝)であってよい。アルキル基の例としては、エチル、プロピル、ブチル、ペンテル、2−メチルブチル、2−メチルプロピル(イソブチル)、3−フェニルペンテルなどが含まれる。本書で使用される「アルキル」という用語には、3個以上の炭素原子に言及されている場合シクロアルキルが含まれる。
【0046】
「低級アルキル」というのは、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルが例として挙げられるように、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0047】
「シクロアルキル」というのは、好ましくは3個〜約12個の炭素原子、より好ましくは3〜約8個の炭素原子から成る架橋、融合又はスピロ環式化合物を含む飽和又は不飽和環式単炭化素鎖を意味する。
【0048】
本書で使用される「アルケニル」という用語は、2〜15個の炭素原子を有し、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニルなどといった少なくとも1つの2重結合を含む有枝又は非有枝炭化水素を意味する。
【0049】
本書で用いる「アルキニル」という用語は、2〜15個の原子を有し、エチニル、n−プロピニル、イソペンチニル、n−ブチニル、オクチニル、デシニルなどといった少なくとも1つの3重結合を含む有枝又は非有枝炭化水素を意味する。
【0050】
「アルコキシ」という用語は、Rがアルキル又は置換アルキル、好ましくはC1−C20アルキル(例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど)、より好ましくは低級アルキル(例えばC1−C6)である−OR基を意味する。
【0051】
「アリール」は、単環(例えばフェニル)又は2つの縮合環又は融合環(例えばナフチル)を有する置換又は未置換一価芳香族ラジカルを意味する。多重アリール環は同様に、未融合であってもよい(例えばビフェニル)。この用語は、フリル、ピロール、ピリジル及びインドールといったような環内に単数又は複数の窒素、酸素又は硫黄原子をもつ芳香族環基であるヘテロアリール基を内含する。
【0052】
「アラルキル」というのは、アリール基でさらに置換されるアルキル、好ましくは低級(C1−C4、より好ましくはC1−C2)アルキル置換基を意味する。例としてはペンジル及びフェネチルがある。「アラルコキシ」というのは、Rがアラルキルである−OR形態の基を意味する。その一例はペンジルオキシである。
【0053】
「複素環」というのは、炭素、窒素、酸素及び硫黄から成る群から選択された環原子をもつ環、好ましくは5〜7員環を意味する。好ましくは、環原子は3〜6個の炭素原子を内含する。芳香族複素環(ヘテロアリール)の例が以上で示されている。非芳香族複素環には、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルフォリンが含まれる。
【0054】
「置換」基又は部分は、好ましくは不干渉置換基である非水素原子又は基で水素原子が置き換えられた基又は部分である。
【0055】
「不干渉置換基」というのは、1つの分子内に存在する場合標準的にその分子内に含まれたその他の官能基と反応しない基である。これらには、低級アルキル、アルケニル、又はアルキニル;低級アルコキシ;C3−C6シクロアルキル;ハロ、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード;シアノ;オキソ(ケト);ニトロ;及びフェニルが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0056】
「第三級基」というのは、各々のRが炭素原子を介してCに連結されている有機部分である−CR3形態の基である。各々のRは、例えば置換又は未置換のアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり得る。第三級基の例としては、各Rがメチルであるt−ブチル;各Rがフェニルであるトリフェニルメチル(トリチル);そして2つのRがp−メトキシフェニルで1つがフェニルであるジメトキシトリチル(DMT)が含まれる。同様に内含されるのは、単数又は複数のRがアダマンチルといった環または環系を形成する基である。
【0057】
「第三級エステル」というのは、そのアルコール部分として第三級基を有するエステル。すなわち、CR3が以上で定義づけした「第三級基」でありR1が該エステルの酸部分であるものとしてR1−(C=O)−OCR3である。
【0058】
本書で使用する「カルボキシル基」というのは、M+がアルカリ金属イオン(カルボキシラート基)といった正荷電イオンである、−C(=O)O-+又は−C(=O)OH(カルボン酸)基を意味する。
【0059】
「低分子量」有機酸というのは、約400未満、好ましくは約300未満、そしてさらに好ましくは約200未満の分子量を有する酸性有機化合物を意味する。この用語は標準的には非重合体及び非オリゴマー酸を意味し、一般的に、試薬として用いられる酸を意味する。その例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、及びp−トルエンスルホン酸が含まれる。
【0060】
「求電子物質」というのは、求電子中心すなわち電子を求める又は求核物質と反応する能力をもつ中心を有する原子又は原子集合体である。
【0061】
「求核物質」というのは、求核中心すなわち求電子中心を求める又は求電子物質と反応する能力をもつ中心を有する原子又は原子集合体を意味する。
【0062】
「生理学的に開裂可能な」又は「加水分解可能な」又は「分解可能な」結合というのは、生理学的条件下で水と反応する(すなわち加水分解される)比較的弱い結合である。1つの結合の水中で加水分解する傾向は、2つの中心原子を結ぶ連結の一般的タイプのみならずこれらの中心原子に付着された置換基にも左右されることになる。適切な加水分解的に不安定であるか又は弱い連結としては、カルボキシラートエステル、ホスファートエステル、無水物、アセタール、ケタル、アシルオキシアルキルエーテル、イミン及びオルトエステルが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0063】
「酵素的に分解可能な連結」というのは、単数又は複数の酵素による分解を受ける連結である。
【0064】
「加水分解的に安定な」連結又は結合というのは、水中で実質的に安定している化学結合、標準的には共有結合を意味する。すなわち、それは長時間にわたって何らかの評価可能な程度まで生理学的条件下で加水分解を受けることがない。一般に、加水分解的に安定な連結というのは、生理学的条件下で一日あたり約1〜2%未満の加水分解速度を示す連結である。加水分解的に安定な連結の例としては、炭素−炭素結合、エーテル、アミン及びアミドが含まれる。代表的な化学的結合の加水分解速度は、大部分の標準的に化学教本中に見い出すことができる。
【0065】
特定された成分を「実質的に全く含まない」生成物は、該特定された成分を全く含まないか又は該生成物の従来の分析方法によって検出できないかつ/又は該生成物の特性又は安定性に対して検出可能な効果を全く有していない。例えば、故意に又は意図的に特定の物質に暴露された又はそれと接触させられたことがない生成物は、該物質を実質的に全く含まないとみなされることになる。
【0066】
本書で使用された場合、「薬物」、「生物活性分子」、「生物活性部分」及び「生物活性作用物質」という用語の各々は、ウイルス、細菌、真菌、植物、動物及びヒトの中から選択され得る生物学的生体の任意の物理的又は生化学特性に影響を及ぼし得るあらゆる物質を意味する。特に、本書で使用される生物活性分子には、ヒト又はその他の動物の体内の疾病の診断、苦痛軽減、治療又は予防向けに意図されるか又はヒト又は動物の肉体的又は精神的健康をその他の形で増強するように意図されたあらゆる物質が含まれる。生物活性分子の例としてはペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬物、染料、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウイルス、リポソーム、微粒子及びミセルが含まれるがこれらに制限されるわけではない。該発明で使用するのに適した生物活性作用物質のクラスとしては、抗生物質、防かび剤、抗ウイルス薬、抗炎症剤、抗腫瘍剤、心臓血管剤、抗不安剤、ホルモン、成長因子、ステロイド剤などが含まれるが、これらに制限されるわけではない。同じく含まれるのは、食物、食物サプリメント、栄養物、栄養補給食品、薬物、ワクチン、抗体、ビタミン及びその他の有益な作用物質である。
【0067】
「抱合体」という用語は、好ましくはポリ(エチレングリコール)といった反応性重合体分子に対し例えば生物活性分子といった分子が共有結合により付着した結果として形成される実体を意味する。
【0068】
「薬学的に受容可能な賦形剤」又は「薬学的に受容可能な担体」という用語は、該発明の組成物中に内含され得、患者に対する有意な不利な毒物学的効果を全くひき起こさない賦形剤を意味する。
【0069】
「薬学的に有効な量」、「生理学的に有効な量」及び「治療上有効な量」は、本書では、血流中又は標的組織中で所望のレベルの有効作用物質及び/又は抱合体を提供するのに必要とされる薬学調製物中に存在する重合体−活性作用物質抱合体の量を意味する。精確な量は数多くの因子、例えば薬学調製物の特定の有効作用物質、成分及び物理学特性、対象とされた患者集団、患者考慮事項などにより左右されることになり、本書で提供されている及び関連文献中で入手可能である情報に基づいて、当業者により容易に決定され得るものである。
【0070】
「患者」という用語は、生物学的活性作用物質又はその抱合体の投与により予防又は治療されうる身体条件を患う又はその傾向をもつ生きた生体を意味し、ヒト及び動物の両方を内含する。
【0071】
II.カルボン酸官能化重合体の調製方法
A.概要
本発明は、1つの態様において、カルボキシラート塩又はカルボン酸といったカルボキシル基で官能化された水溶性非ペプチド重合体の調製方法を提供する。該方法には、第三級エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、上述のとおりR’は第3級基であり、Rは官能基Xを含む)を水溶性非ペプチド重合体POLY−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)と反応させて、POLY−R−(C=O)OR’として表わすことのできる該重合体の第三級エステルを形成させる段階が関与している。POLYとRの間の連結の性質は、官能基Y及びXによって左右される。
【0072】
POLY−Y、又は重合体がポリエチレングリコールである場合にはPEG−Yによって表わされる反応の出発材料は、さまざまな立体配置で複数の官能基を内含し得る。例としては、以下でさらに詳しく論述する通り多重ヒドロキシル基を含有する線状、有枝及び多腕PEGが含まれる。反応生成物すなわちカルボキシル官能化重合体は、出発材料中の官能基Yの数に等しい数のカルボキシル基(又は出発材料が既存のカルボキシル基を有する場合にはYより多い)を含有する。
【0073】
好ましくは、重合体の官能基Yはヒドロキシル基又はその他の求核基であり、第三級エステル試薬の官能基Xは、Yにより変位させられる能力をもつ離脱基である。その他の考えられる官能基組合せについて以下で記述されている。
【0074】
第三級エステル基がひとたび重合体に付着したならば、それは水溶液中での塩基加水分解によってカルボキシラートに転換させられ、その後好ましくは酸性化が続いてカルボン酸を生成する。驚くべきことに、第三級エステルは、初期求核置換反応で使用される塩基の存在下で安定しているものの、塩基促進型加水分解により除去され得る。上述のように、t−ブチルエステルといった第三級アルキルエステルは従来、塩基加水分解に対する耐性をもつと考えられている。
【0075】
以下の一般的反応スキームは、該発明の方法の好ましい実施形態を描いており、式中YはヒドロキシルでありXは離脱基であり、エステル試薬は(I)として示されている構造を有する。
【化2】

【0076】
B.反応成分
好ましいエステル試薬(I)においては、R1及びR2の各々は、H、低級アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル及びヘテロ環の中から独立して選択されており;各々上述の定義通りR3〜R5の各々は、低級アルキル、アリール、アラルキルの中から独立して選択されている。好ましくは、(CR12n基は、同じく炭素原子に付着された2つのヘテロ原子を内含せず、例えば同じ炭素原子上のR1及びR2は好ましくは両方共がアルコキシではない。水素を除くR1〜R5のいずれかは、上述の通り不干渉性置換体で置換され得る。
【0077】
好ましくは、R1及びR2の各々は独立して水素又は未置換低級アルキルであり、R3〜R5の各々は独立して未置換低級アルキル又はフェニルである。選択された実施形態においては、R1及びR2の各々は独立して水素又はメチル、より好ましくは水素であり、R3〜R5の各々は独立してメチル、エチレン又はフェニルである。
【0078】
変数nは1から約24、好ましくは1から約12である。選択された実施形態において、nは1又は2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、1〜8、1〜9、1〜11、1〜12、1〜13、1〜14、1〜15、1〜16、1〜17、1〜18、1〜19、1〜20、1〜21、1〜22又は1〜24である。さらなる選択された実施形態においては、nは1〜6であり;好ましくはnは1〜4であり;より好ましくはnは1又は2である。nが1より大きい場合、部分−(CR12)n−は好ましくは、多くとも2個、より好ましくは、多くとも1個のR1又はR2非水素実施形態を内含する。
【0079】
さらなる実施形態においてはnは1であり、R1及びR2は独立して水素又はメチルである。1つのこのような実施形態においては、R1及びR2の両方が水素である場合、生成物(IV)はカルボキシメチル基を含有する。
【0080】
好ましくは、エステル試薬(II)上の官能基Xは、例えばクロロ又はブロモなどのハロ、又はp−トルエンスルホニル(トシル)、メタンスルホニル(メシル)、トリフルオロスルホニル、又はトリフルオロエチルスルホニル(トレシル)といったスルホナートエステルといった離脱基である。しかしながら、共有結合連結を形成するべく重合体上の官能基と反応する能力をもつその他の官能基も同様に使用可能である。好ましくは、重合体上の官能基は、アミン、ヒドラシド(−C(=O)NHNH2)、又はチオールといった求核基であり、エステル試薬上の官能基Xは求電子基である。上述のもののような離脱基に加えて、求電子基にはイミドエステル、オルトエステル、カルボナート、イソシアナート、イソチオシアナート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、チオスルホナート、シラン、アルコキシシラン、ハロシラン及びホスホルアミダートを含めたカルボン酸エステルが含まれる。これらの基のより特定的な例としては、スクシンイミジルエステル又はカルボナート、イミダゾリルエステル又はカルボナート、ベンゾトリアゾールエステル又はカルボナート、p−ニトロフェニルカルボナート、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサル及びジオンが含まれる。同様に含まれるのは、その他の活性化されたカルボン酸誘導体ならびに上述の部分のいずれかの水和物又は保護誘導体である(例えばアルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)。好ましい求電子基には、スクシンイミジルカルボナート、スクシンイミジルエステル、マレイミド、ベンゾトリアゾールカルボナート、グリシジルエーテル、イミダゾイルエステル、p−ニトロフェニルカルボナート、アクリラート、アルデヒド、及びオルトピリジルジスルフィドが含まれる。
【0081】
一般に、試薬上の官能基Xは、官能基Yが試薬のt−ブチルエステル部分と反応することになるよりもはるかに容易にそれが重合体上の官能基Yと反応するような形で選択される。重合体官能基Yはヒドロキシルといったような求核物質であり、Xは最も適切にはハロ又はスルホナートエステルといった優れた離脱基である。
【0082】
特に好ましいエステル試薬は、t−ブチルハロアセタート、例えばt−ブチルブロモ酢酸、t−ブチルクロロ酢酸及びt−ブチルヨード酢酸を内含する。かかるt−ブチルハロアセタートは例えばSigma Chemical Co, ミズーリ州セントルイスから入手可能である。
【0083】
スキームIでは、POLY−OHは、例えばmPEG−OHといったような水溶性非ペプチド重合体である。一般に、重合体は、以下でさらに論述するように、利用可能なあらゆる幾何的立体配置(例えば線状、有枝、V型など)を有するあらゆる水溶性非ペプチド重合体であり得る。単純さを期して、上述の反応スキームは、単一のヒドロキシル基を伴う重合体を利用している。しかしながら、当業者であればわかるように、重合体は、1〜約25個のヒドロキシル基(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のヒドロキシル基)といったような複数のヒドロキシル基を含み得る。同様に、ヒドロキシル基は、第三級エステル試薬上の官能基Xと反応性あるあらゆる求核性官能基で置換可能である。このような求核性官能基には、チオール、アミン及び安定化されたカルバニオンが含まれる。
【0084】
C.反応プロセス
上述のスキームIの例の最上列で示されている該プロセスの第1段階については、成分は好ましくはt−ブタモール、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などといったような適切な有機溶媒中に溶解させられる。
【0085】
スキームIにより表わされる該発明の実施形態に示されている通り、第三級エステル試薬と重合体ヒドロキシル基の反応は、標準的に1つの塩基の存在下で実施される。塩基の例としては、カリウムt−ブトキシド、ブチルリチウム、ナトリウムアミド、及びナトリウム水素化物が含まれる。その他の強い塩基も同様に使用可能である。
【0086】
反応は、標準的に約0〜120℃、好ましくは約20〜80℃、より好ましくは約25〜50℃の温度で実施されるが、反応条件は、反応している重合体と官能基に基づいて変動することになる。以下で提示されている例に示されるように、t−ブチルブロモアセタートとヒドロキシ含有PEGの反応は、室温から約40℃の間の温度を有効に実施された。
【0087】
反応時間は標準的に約0.5時間〜約24時間;例えば約1〜20、3〜18、4〜12、又は6〜8時間である。以下の例に示されているようにt−ブチルブロモアセタートとヒドロキシル化重合体の反応のための標準的反応時間は12〜20時間の範囲内にある。該反応は、標準的方法に従って完了について監視可能である。好ましくは、反応は、窒素又はアルゴンといったような不活性雰囲気下で実施される。
【0088】
反応は好ましくは、重合体出発材料の完全な転換が確実に達成されるようにするため、モル過剰のエステル試薬を利用する(例えば2倍、3倍、6倍、10倍、又は20倍、最高約30倍モル過剰)。反応のこの段階の後、有機溶媒は、標準的には蒸発又は精製によって除去される。
【0089】
エステル含有生成物(III)は、エステル含有化合物が水溶液中で水酸化物といった強塩基での処理により塩基促進型加水分解を受ける該プロセスの第2段階のために、水好ましくは蒸留水又は脱イオン水の中で溶解させられる。塩基加水分解は標準的には、約9以上、好ましくは約10以上、そしてより好ましくは約11以上(例えば約11〜約13)までのpHで実施される。従って塩基は、水溶液中でこの範囲内のpHを生成するのに充分強い塩基である。1つの実施形態においては、pHは約12〜約12.5の範囲内に入るように調整される。好ましくは、この範囲内にpHを維持するべく反応全体を通して必要なだけ塩基が添加される。塩基は、残留するあらゆるエステル試薬を加水分解するためにも有効である。
【0090】
塩基は、加水分解に後続する段階で酸で中和された時点で水溶性のきわめて高い塩を生成するはずである。好ましいのは、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)といったアルカリ金属水酸化物である。
【0091】
蒸留水又は脱イオン水、又はカルシウム及びマグネシウムイオンといったような2価カチオンを検出可能なレベルで有していない水の使用も同様に好まれる。塩基加水分解段階は標準的には、約0〜50℃、好ましくは約10〜30℃の温度で行なわれる。反応時間は標準的には約12〜36時間、例えば約18〜24時間である。
【0092】
塩基加水分解により生成された重合体カルボキシラート塩は、塩として単離及び保管され得、又好ましくはそれは以下で記述されるように酸での処理によりカルボン酸に直接転換させられる。一般に、カルボン酸は、カルボキシラート塩よりもさらなる誘導体化に適している。
【0093】
カルボキシラート含有重合体は、塩を遊離酸形態に転換するべく水性酸で処理される。酸は好ましくは、水溶液中で非求核アニオンを生成する酸である。硫酸、硝酸、リン酸、塩酸などといった鉱酸(すなわち無機酸)が好ましい。標準的には、重合体カルボキシラート塩を遊離酸形態に転換させるのに有効である約1〜3、より好ましくは約2〜3まで溶液のpHを調整するため、ならびに溶液中に残留するあらゆる塩基を中和する(かつ自由に水溶性である塩に転換させる)ために充分な酸が添加される。酸性化段階は標準的に、約0°〜約50℃、好ましくは約10°〜約30℃の温度で実施される。
【0094】
カルボン酸含有重合体はこのとき、従来の有機抽出段階を用いて、好ましくはジクロロメタン又はクロロホルムといったようなハロゲン化溶媒を利用して分離される。重合体生成物は、有機相内に抽出され、一方あらゆる加水分解済み試薬及び余剰鉱酸又はその塩は水性相中にとどまる。かくして、重合体生成物からの鉱酸の分離は比較的単純である。
【0095】
有機抽出物は乾燥され濃縮され、重合体生成物は次に標準的方法を用いて精製される。例えば、重合体は沈殿とそれに続くろ過及び乾燥により単離され得る。沈殿用溶媒の選択は重合体の性質に左右されることになる。PEG重合体については、以下の実施例で記述されているように、エチルエーテルが適切な沈殿用溶媒である。酢酸エチル又はエタノールといったような溶媒からの再結晶化も、精製のために使用可能である。
【0096】
D.反応生成物
該発明の方法を用いて、カルボキシ官能化重合体が、高純度で、標準的には少なくとも約95重量%、好ましくは少なくとも約96重量%、97重量%又は98重量%、より好ましくは少なくとも約99重量%そして最も好ましくは少なくとも約99.5重量%の純度で生成される。選択された実施形態においては、重合体生成物は、所望のカルボキシル官能化重合体を少なくとも約99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%又は99.9重量%含有する。従って、本書に開示されている合成方法の生成物は、出発重合体(例えばmPEG−OH、PEGジオール、又は多官能PEGポリオール)又はその他の重合体不純物を5重量%未満、好ましくは4重量%、3重量%又は2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、そして最も好ましくは0.5重量%未満しか含有しない。選択された実施形態では、生成物は0.4重量%、0.3重量%、0.2重量%又は0.1重量%の重合体出発材料(例えばmPEG−OH)又はその他の重合体不純物しか含まない。
【0097】
「生成物」又は「重合体生成物」というのは、溶媒の抽出、沈殿及び除去といったような日常的練成手順を含めた以上で開示された合成プロセスを実施することによって得られた材料を意味する。以下の実施例で示されているように、本書で開示されている方法の生成物を含有する反応混合物は、塩素系溶媒での抽出とそれに続くエチルエーテルからの生成物の沈殿によって、練成された。これらの生成物のイオン交換クロマトグラフィ分析は、出発材料又はその他の重合体不純物が検出可能な量で全く存在しない状態で、基本的に100%の所望のPEG−カルボン酸生成物を示した。従って、以上で開示した純度をもつ重合体生成物が、出発材料といったような重合体不純物の除去を全く必要とせずに得られる。これらの生成物は往々にして、以下で記述する通り、さらなる誘導体化及び/又は抱合のために直接使用できる。このプロセスのさらなる利点は、それが、高価で残留量の重合体ヒドロキシル化合物をも含有することが多い傾向にある市販の重合体カルボン酸の使用と異なり、mPEG−OHといったような安価な出発材料から出発してmPEGカルボン酸といったような高純度の重合体カルボン酸を提供する、という点にある。
【0098】
上述の通り、本書に開示されている合成プロセスにおいて利用される試薬は、重合体生成物から容易に除去される。特に、プロセス中ではTFAといったような低分子量の有機酸は全く使用されない。従って、本発明のカルボキシル含有重合体生成物は、このような試薬を利用する加水分解プロセスを用いて作られた重合体カルボン酸において一般に発生することになるような、微量のTFAといったような低分子量有機酸を全く含有しない。従って当該生成物は、上述のような残留酸の存在に付随する安定性低下という欠点に悩まされることがない。例えば、以下の実施例4に記述されている重合体は、−20℃で8カ月保管した後(GPC分析により)いかなる分解の兆候も示さなかった。
【0099】
III.適切な水溶性非ペプチド重合体
本発明では、さまざまな非ペプチド水溶性重合体のいずれのものでも使用することができる。重合体は、非毒性で生体適合性を有するべきであり、このことは、有害性なく生きた組織又は生体と共存する能力を有するということを意味している。適切な重合体の例としては、その全体が本書に参考として内含されている米国特許第5,629,384号に記述されているようなポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酢酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)及びその共重合体、ターポリマー及びその混合物が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0100】
重合体の分子量は、所望の利用分野、重合体構造の立体配置、分岐度などに応じて変動することになる。一般的には、約100Da〜約100,000Da、好ましくは約200Da〜約60,000Daそしてより好ましくは約300Da〜約40,000Daの分子量を有する重合体が本発明において有用である。重合体実施形態の例は、約200Da、350Da、550Da、750Da、1,000Da、2,000Da、3,000Da、4,000Da、5,000Da、7,500Da、10,000Da、15,000Da、20,000Da、25,000Da、30,000Da、35,000Da、40,000Da、50,000Da、55,000Da、及び60,000Daの分子量を有している。
【0101】
重合体は好ましくは、求核性置換反応において本書で記述されているように離脱基を担持する第三級エステル試薬と反応する能力をもつ少なくとも1つのヒドロキシル基を含む。しかしながら、第三級エステル試薬の官能基と反応する能力をもつその他の官能基も同様に使用可能である。これらには、アミン、ヒドラジド(−C(=O)NHNH2)及びチオールといったようなその他の求核基;そしてイミドエステル、オルトエステル、カルボナート、イソシアナート、イソチオシアナート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホナート、チオスルホナート、シラン、アルコキシシラン、ハロシラン及びホスホルアミダートを含めたカルボン酸エステルといった求電子基が含まれる。これらの基のさらに特定的な実施例にはスクシンイミジルエステル又はカルボナート、イミダゾリルエステル又はカルボナート、ベンゾトリアゾールエステル又はカルボナート、p−ニトロフェニルカルボナート、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサル、ジオン、メシラート、トシラート及びトレシラートが含まれる。同様に含まれるのは、その他の活性化カルボン酸誘導体ならびに上述の部分(例えばアルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタールのいずれかの水和物又は保護された誘導体である。好ましい求電子基には、スクシンイミジルカルボナート、スクシンイミジルエステル、マレイミド、ベンゾトリアゾールカルボナート、グリシジルエーテル、イミダゾイルエステル、p−ニトロフェニルカルボナート、アクリラート、トレシラート、アルデヒド、及びオルトピリジルジスルフィドが含まれる。
【0102】
官能基は、第三級エステル試薬上の求電子基と重合体上の求核基が反応するか又はその反対となるような形で選択される。2つの官能基の間の反応は好ましくは、求核基による離脱基の変位反応であるが、例えば縮合又は添加反応でもあり得る。
【0103】
重合体は好ましくはヒドロキシル基といったような少なくとも1つの球核基を含む。参照を容易にするため、以下ではヒドロキシ基について論述されているが、その他の官能基も使用可能である。重合体には同じ分子内で異なる官能基も内含され得る。好ましくはこれらは、ヒドロキシル基とアミノ基といったような両方共求核性の類似の官能性を有している。
【0104】
好ましくは、該重合体はポリ(エチレングリコール)(すなわちPEG)重合体である。上述のように、PEGという用語は、線状形態、有枝又は多腕形態(例えばV型PEG又はポリオールコアに付着したPEG)、ペンダントPEG又は分解可能な連結を内部に有するPEGを含め、一定数の幾何形状又は形態のうちのいずれかの形をしたポリ(エチレングリコール)を内含する。
【0105】
重合体により担持されるヒドロキシル基(及び/又は官能基)の数及び位置は変動し得る。標準的には、重合体は1〜約25個のヒドロキシル基、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のヒドロキシル基を含む。線状PEG重合体といったような線状重合体は、標準的に各々重合体鎖の末端で位置づけされた1つ又は2つのヒドロキシル基を含んでいる。PEG重合体が単官能性(すなわちmPEG)である場合、該重合体は単一のヒドロキシル基を内含する。PEG重合体が2官能性である場合には、重合体は、重合体鎖の各末端に1つずつの2つのヒドロキシル基を含有するか、又は、反対側の末端に異なる官能基及び単一のヒドロキシル基を含有している。多腕又は有枝重合体は、より多くのヒドロキシル基を含み得る。
【0106】
多腕又は有枝PEG分子が、例えばその全体が本書に参考として内含されている米国特許第5,932,462号の中で記述されている。一般的に言うと、多腕又は有枝重合体は、好ましくは加水分解的に安定である連結構造を含む中央分岐点から延びる2つ以上の重合体の「腕」を有している。有枝PEG重合体の例は、メトキシポリ(エチレングリコール)2置換リジンである。
【0107】
もう1つの多腕実施形態においては、重合体はポリオール又はポリアミンから誘導された中央コア分子を含み、この中央コア分子は、多腕重合体構造を形成するべくコア分子に対して重合体の腕を共有結合で付着させるのに適した複数の付着部位を提供している。望ましい重合体の腕数に応じて、ポリオール又はポリアミンは標準的に、3〜約25個、好ましくは3〜約10個、最も好ましくは3〜約8個(例えば3、4、5、6、7又は8個)のヒドロキシ又はアミノ基を含むことになる。
【0108】
多腕重合体についてはさらに、例えば本書に参考として内含されている共同所有の米国特許第2002/0156047号及び2002/0156047号の中で記述されている。
【0109】
PEG重合体は代替的にはV形PEGを含み得る。一般的に言うと、V形構造をもつ重合体は、重合体内の加水分解的に安定した分岐点から延びる共有結合連結を介して2つ以上の官能基に付着した重合体鎖を有するものとして特徴づけされる。その内容が本書に参考として内含されている米国特許第6,362,254号は本発明で使用することのできるさまざまなV形PEG構造を開示している。
【0110】
PEG重合体は同様に、PEG鎖の末端においてよりもむしろPEG主鎖の長さに沿って共有結合により付着された反応基(例えばヒドロキシ基)を有するペンダントPEG分子でもあり得る。ペンダント反応基は、アルキレン基といったような連結用部分を通してか又は直接PEG主鎖に付着され得る。
【0111】
同じ重合体主鎖内に異なる重合体を取込むことが可能である。例えば、上述の有枝構造内のPEG分子のうちの単数又は複数のものを異なる重合体タイプで置換えることが可能である。
【0112】
重合体を、重合体主鎖内に単数又は複数の加水分解的に安定した又は分解可能な連結を伴って調製することもできる。例えば、加水分解を受ける重合体主鎖内のエステル連結を伴ってPEG調製することが可能である。取込むことのできる加水分解により分解可能なその他の連結としては、カルボナート、イミン、ホスファートエステル、ヒドラゾン、アセタール、オルトエステル及びホスホアミダート連結が含まれる。
【0113】
ポリ(エチレングリコール)又はPEGという用語には、上述の変形形態のいずれか又は全てが含まれている。一般に好ましいPEG構造としては、線状単官能、有枝単官能及び線状、有枝又はV形2官能又は3官能PEGが含まれる。
【0114】
mPEG(メトキシ−PEG)又はbPEG(ベンジルオキシ−PEG)といったようなエンドキャッピングされたポリエチレングリコール出発材料はPEGジオール不純物を検出可能な量含有し、往々にして分析又は分離し難い副産物を導く可能性があることから、PEG出発材料は、1つの好ましい実施形態において、共同所有の米国特許第6,448,369号に記述されている通りジオールを含まないベンジルオキシ−PEGである。
【0115】
IV.カルボン酸官能化重合体のさらなる誘導体化及び抱合
A.概要
望まれる場合、該発明の方法により調製されたカルボン酸官能化重合体は、当該技術分野において既知の方法を用いさらに修飾を受けてカルボン酸の有用な反応性誘導体を形成することができる。このような誘導体の調製は、例えばTFAといった残留試薬及び/又は残留出発材料などを含有する先行技術の生成物に比べて、該発明のカルボン酸感応化重合体の純度が高いことによって容易になっている。これは、かかる汚染物質の存在及び量が非常に可変的でありかくして該生成物の再現が不可能となることから、特に薬学的生成物にとって有意な利点である。
【0116】
従って、カルボン酸感応化重合体を調製する該発明の方法にはさらに(i)カルボン酸を修飾して反応性誘導体を形成する段階及び(ii)対応する反応性官能基を有する薬学的に関連性ある分子に対して反応性誘導体を抱合する段階が含まれ得る。段階(i)及び(ii)はインサイチュで実施され得、ここでカルボン酸は、当該技術分野において既知の数多くの活性化試薬のうちの1つを用いて活性化された誘導体へと転換させられる。
【0117】
カルボン酸は誘導体化されて例えばハロゲン化アシル、偽ハロゲン化アシル、例えばシアン化アシル、イソシアン酸アシル及びアシルアジド、中性塩例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(例えばカルシウム、ナトリウム又はバリウム塩)、エステル、無水物、アミド、イミド、ヒドラシドなどを形成することができる。好ましい実施形態においては、酸はエステル化されて、N−スクシンイミジルエステル、o−、m−又はp−ニトロフェニルエステル、1−ベンゾトリアゾリルエステル、イミダゾリルエステル又はN−スルホスクシンイミジルエステルなどといった活性エステルを形成する。
【0118】
1つの実施形態においては、さらなる誘導体化重合体は、R1、R2及びnが上述のとおりであるものとして、
【化3】


という構造をもつPEG重合体である。部分Zは好ましくはハロ、アミノ、置換アミノ、−NCO、−NCS、N3、−CN及び−OR’から成る群から選択され、ここでR’はN−スクシンイミジル、ニトロフェニル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾリル、N−スルホスクシンイミジル、N−フタルイミジル、N−グルタルイミジル、N−テトラヒドロフタルイミジル、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジル及びヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾリルから選択される。
【0119】
該発明の方法により生成されたカルボキシル含有重合体又はその反応性誘導体は、生物活性分子特にアミノ、ヒドロキシ又はメルカプト(チオール)基といったような求核官能基を担持する生物活性分子と抱合体を形成するために使用可能である。
【0120】
往々にして、抱合対象の分子はタンパク質である。タンパク質は、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、N−末端アミノ基、及びC−末端カルボン酸といったような反応性アミノ酸を介して抱合される。グリコシル化タンパク質上の炭水化物部分は同様に抱合部位としても利用可能である。活性化されたカルボン酸との反応のために最も適した基は、N末端アミノ酸、リジン、ヒスチジン及びアルギニン上のアミン含有側鎖、セリン、トレオニン及びチロシン上のヒドロキシ含有側鎖、及びシステイン上のチオール側鎖である。
【0121】
該発明のカルボキシル含有重合体の好ましい抱合方法は、抱合対象の分子上の求核基と反応する活性化されたカルボン酸誘導体を利用するが、任意のさまざまな官能基を含有するべく末端カルボキシル基を誘導体化することも同様に可能である。例えば、1つの実施形態においては、上述の構造(V)内の部分Zは、−NHR6という構造を有し、ここでR6は反応性官能基(例えばアルデヒド、マレイミド、メルカプト、ヒドロキシル、アミノなど)を含有する有機基であり、該官能基(単複)はアルキレン鎖(例えばC1−6)そして任意には短PEG鎖ともう1つのアルキレン鎖(例えばアルキレン−PEG−アルキレン)といった付加的なリンカーによって窒素原子から分離されている。
【0122】
B.抱合方法の例
かかる重合体抱合体は、生物活性剤に対する活性化PEGといったような活性化された重合体の共有結合による付着のための既知の技術を用いて形成可能である。例えば、ポリ(エチレングリコール):化学及び生物学的応用」、J, M. Harris及びS. Zalipsky, 編、American Chemical Society, Washington, DC (1997)又は「生物抱合体技術」、 G. T. Hermanson, Academic Press (1996)を参照のこと。一般に、抱合反応は、標準的に、室温又は室温に近い温度でリン酸又は酢酸緩衝液といったような緩衝液の中で実施されるが、条件は、実施中の特定の反応によって左右されることになる。標準的には、余剰の重合体試薬が活性作用物質と組合わされる。しかしながら一部のケースでは、重合体試薬上及び活性作用物質上に化学量論的量の反応基を有することが好ましい。
【0123】
抱合反応の進捗は、SDS−PAGE、MALDI−TOF質量分析法又はその他の適切なあらゆる分析方法によって監視可能である。形成された抱合体の量又は残っている未抱合重合体の量に関して平坦域にひとたび達した時点で、反応は完了したものと推測される。必要とあらば生成物混合物は、既知の方法を用いて、余剰の試薬、未抱合反応物質(例えば活性作用物質)、望ましくない多重抱合種及び/又は未反応重合体を分離するべく精製される。
【0124】
例えば、異なる分子量をもつ抱合体をゲルろ過クロマトグラフィを用いて分離することが可能である。画分は、例えば(i)タンパク質含有量についての280nmでのOD、(ii)BSAタンパク質分析、(iii)PEG含有量についてのヨウ素試験(Sims et al., Anal. Biochem. 107:60-63, 1980)又は(iv)SDS−PAGEとそれに続くヨウ化バリウムでの染色、といった一定数の異なる方法によって分析可能である。
【0125】
位置異性体(すなわち分子上の異なる位置に付着された重合体を有する同じ又は実質的に同じ分子量をもつ抱合体)の分離を、逆相HPLC又はイオン交換クロマトグラフィにより実施することができる。
【0126】
抱合された生成物を、残留緩衝液と共に又はそれを含まずに、保管のために凍結乾燥させることができる。一部の例では、凍結乾燥中に容易に除去され得る炭酸アンモニウム又は酢酸アンモニウムといった揮発性緩衝液で酢酸ナトリウムといったような抱合用に用いられる緩衝液を交換することが好ましい。代替的には、凍結乾燥された抱合体が、処方緩衝液に戻すためそして究極的には哺乳動物に投与するために適した形態となるように、処方緩衝液を使用して緩衝液交換段階を用いることが可能である。
【0127】
C.抱合用作用物質の例
該発明の方法により形成された重合体に対するカップリングにおいて使用するための生物活性作用物質は、以下のもののうちの任意の単数又は複数のものであり得る。適切な作用物質は、例えば睡眠薬及び鎮静剤、精神賦活剤、精神安定剤、呼吸器薬、抗けいれん剤、筋弛緩剤、抗パーキンソン病薬(ドーパミン拮抗薬)、鎮痛剤、抗炎症剤、抗不安薬(不安緩解剤)、食欲抑制剤、片頭痛薬、筋肉収縮剤、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌剤、ワクチン)抗関節炎薬、抗マラリア薬、制吐薬、抗てんかん薬、気管支拡張薬、サイトカイン、成長因子、抗ガン剤、抗血栓剤、降圧剤、心臓脈管薬、不整脈治療剤、酸化防止剤、抗ぜん息薬、避妊薬を含むホルモン剤、交換神経刺激薬、利尿薬、脂質調節剤、抗アシドロゲン剤、駆虫薬、抗凝固剤、新生物薬、抗新生物薬、血糖降下薬、栄養剤及びサプリメント、成長サプリメント、抗腸炎剤、ワクチン、抗体、診断薬及び造影剤の中から選択可能である。
【0128】
より特定的には、活性作用物質は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、多糖類、ステロイド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、電解質などを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)一定数の構造クラスの1つに入る可能性がある。好ましくは、該発明のカルボキシル含有重合体にカップリングするための活性作用物質は、未変性アミノ、ヒドロキシル、又はチオール基を含有するか又は少なくとも1つのこのような基を含有するべく修飾される。
【0129】
活性作用物質の特定的例としては、アスパラギナーゼ、アムドキソビル(DAPD)、アンチド、ベカプレルミン、カルシトニン、シアノビリン、デニロイキンジフチトクス、エリスロポイエチン(EPO)、EPOアゴニスト(例えば、長さが約10〜40アミノ酸で国際公開第96/40749号に記述されているような1つの特定的コア配列を含んで成るペプチド)、ドルナーゼアルファ、赤血球生成促進タンパク質(NESP)、凝血因子、例えば第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XII因子、第XIII因子、フォンウィレブランド因子;セレダーゼ、セレザイム、アルファグリコシダーゼ、コラーゲン、シクロスポリン、アルファデフェンシン、ベータデフェンシン、エキセジン−4、顆粒球コロニー刺戟因子(GCSF)、トロンボポイエチン(TPO)、アルファ−1プロテイナーゼ阻害物質、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺戟因子(GMCSF)、フィブリノーゲン、フィルグラスチム、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン(hGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、GRO−ベータ、GRO−ベータ抗体、骨形態形成因子タンパク質、例えば骨形態形成因子タンパク質−2、骨形態形成因子タンパク質−6、OP−1;酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、CD−40リガンド、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロンオメガ、インターフェロンタウ、コンセンサスインターフェロン;インターロイキン及びインターロイキン受容体、例えばインターロイキン−1受容体、インターロイキン−2、インターロイキン−2融合タンパク質、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−4受容体、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターロイキン−13受容体、インターロイキン−17受容体;黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、インシュリン、プロ−インシュリン、インシュリン類似体(例えば、米国特許第5,922、675号に記述されているようなモノアシル化インシュリン)、アミリン、C−ペプチド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチン類似体、バソプレシン、卵胞刺戟ホルモン(FSH)、インフルエンザワクチン、インシュリン様成長因子(IGF)、インシュリントロピン、マクロファージコロニー刺戟因子(M−CSF)、プラスミノーゲン活性化因子、例えばアルテプラーゼ、ウロキナーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、パミテプラーゼラ、ラノテプラーゼ及びテネテプラーゼ;神経成長因子(NGF)、オステオプロテゲリン、血小板由来成長因子、組織成長因子、形質転換成長因子―1、血管内皮成長因子、白血病阻害因子、ケラチノサイト成長因子(KGF)、グリア成長因子(GGF)、T細胞受容体、CD分子/抗原、腫瘍壊死因子(TNF)、単球走化性タンパク質−1;内皮成長因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン様ペプチド、ソマトトロピン、チモシンアルファ1、チモシンアルファ1 IIb/IIIa阻害物質、チモシンベータ10、チモシンベータ9、チモシンベータ4、アルファ−1アンチトリプシン、ホスホジエステラ−ゼ(PDE)化合物、VLA−4(最晩期抗原−4)、VLA−4阻害物質、ビスホスホナート、呼吸器合胞体ウイルス抗体、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)、及び抗−CMV抗体が含まれるがこれらに制限されるわけではない。モノクローナル抗体の例としては、エタネルセプト(IgG1のFc部分に連結されたヒト75kDTNFレセプタの細胞外リガンド結合部分から成る2量体融合タンパク質)、アブシキシマブ、アフェリオモマブ、バシリキシマブ、デクリズマブ、インフリキシマブ、イブリツモマブ、チウエキセタン、ミツモバブ、ムロモナブ−CD3、ヨウ素131トシツモマブ抱合体、オリズマブ、リツキシマブ及びトラスツヅマブ(ヘルセプチン)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0130】
重合体に対する共有結合による付着に適した付加的作用物質としてはアミホスチン、アミオダロン、アミノカプロン酸、アミノ馬尿酸ナトリウム、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アミノサリチル酸、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、アントラシクリン、ベキサロテン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カベルゴリン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシン、シラスタチンナトリム、シスプラチン、クラドリビン、クロドロナート、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、カンポテシン、13−シスレチノイン酸、オールトランス型レチノイン酸;ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デフェロキサミン、デキサメタゾン、ジクロフェナク、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エプルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フェクソフェナジン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、エピネフェリン、L−ドーパ、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、イリノテカン、イトラコナゾール、ゴセレリン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミソール、リシノプリル、ロボチロキシンナトリウム、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、重酒石酸メタラミノール、メトトレキサート、メトクロプラミド、メキシレチン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ナロキソン、ニコチン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロナート、ペントスタチン、ピルカマイシン、ポルフィマー、プレドニゾン、プロカルバジン、プロクロルペラジン、オンダンセトロン、ラルチトレキセド、シロリマス、ストレプトゾシン、タクロリマス、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、テトラヒドロカンナビノール、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレチノイン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドラステロン、グラニセトロン;フォルモテロール、フルチカゾン、ロイプロリド、ミダゾラム、アルプラゾラム、アンフォテリシンB、ポドフィロトキシン、ヌクレオシド抗ウイルス薬、アロイルヒドラゾン、スマトリプタン;エリスロマイシン、オレアドマイシン、トレアンドロマイシン、ロキシトロマイシン、クラリトロマイシン、ダベルシン、アジトロマイシン、フルリトロマイシン、ジリトロマイシン、ジョサマイシン、スピロマイシン、ミデカマイシン、ロイコマイシン、ミオカマイシン、ロキタマイシン、アンダジトロマイシン及びスウィノリドAといったマクロリド;シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、アラトロフロキサシン、モキシフロキシシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、フレロキサシン、トスフロキサシン、プルリフロキサシン、イルロキサシン、パズフロキサシン、クリナフロキサシン及びシタフロキサシンといったフルオロキノロン;ゲンタマイシン、ネチルマシシン、パラメシン、トブラマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン及びストレプトマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ランポラニン、ミデプラニン、コリスチン、ダプトマイシン、グラミシジン、コリスチメタートといったアミノグリコシド;ポリミキシンB、カプレオマイシン、バシトラシン、ペネムといったポリミキシン;ペニシリナーゼ感受性作用物質を含むペニシリン、例えばペニシリンG、ペニシリンV;ペニシリナーゼ耐性作用物質、例えばメチシリン、オキアシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、ナフチリン;グラム陰性微生物活性作用物質、例えばアンピシリン、アモキシシリン及びヘタシリンン、シリン及びガラムピシリン;抗シュードモナスペニシリン、例えばカルベニシリン、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン及びピペラシリン;セファロスポリン、例えばセフポドキシム、セフプロジル、セフトブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラドリン、セフォキシチン、セファマンドール、セファゾリン、セファロリジン、セファクロール、セファドロキシル、セファログリシン、セフロキシム、セフォラニド、セフォタキシム、セファトリジン、セファセトリル、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォテタン、セフメタゾール、セフタジディム、ロラカルベフ及びモキサラクタム;モノバクタム例えばアズトレオナム;及びカルバペネム、例えばイミペネム、メロペネム、ペンダミジンisethiouate、硫酸アルブテロール、リドカイン、硫酸メタプロテレノール、ジプレピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド、フルチカゾン、臭化イプラトロピウム、フルニソリド、クロモリンナトリウム、及び酒石酸エルゴタミン;パクリタキセルといったテクサン;SN−38、及びトリホスチンが含まれる。
【0131】
上述の生物活性作用物質の例は、該当する場合、その類似体、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害物質、異性体及び薬学的に受容可能な形態を包含するように意図されている。ペプチド及びタンパク質に関しては、該発明は、合成、組換え型、未変性、グリコシル化及び非グリコシル化形態ならびにその生物活性フラグメントを包含するように意図されている。上述の生物活性タンパク質は、さらに、結果として得られる変異体が親(未変性)タンパク質の活性を少なくとも或る程度有しているかぎりにおいて、例えば単数又は複数のアミノ酸が置換された(例えばシステイン)又は欠失したものといった変異体を包含するように意図されている。
【0132】
V.薬学組成物及び投与方法
本発明は同様に、薬学賦形剤と組合わせた形で本書に提供されているような抱合体を含む薬学調製物をも内含している。賦形剤の例としては、制限的な意味なく、炭水化物、抗菌剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝液及びそれらの組合せが含まれる。
【0133】
糖といった炭水化物、アルジトールといった誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖及び/又は糖重合体が賦形剤として存在し得る。特定的炭水化物賦形剤には、例えば単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなど;2糖類例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、でんぷんなど;及びアルジトール例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシートールなどが含まれる。
【0134】
賦形剤は同様に無機塩又は緩衝液例えばクエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム及びその組合せをも内含し得る。
【0135】
調製物は、微生物の成長を防止又は阻止するための抗菌剤も含み得る。該発明に適した抗菌剤の制限的意味のない例としては塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルゾル及びそれらの組合せが含まれる。
【0136】
調製物中には酸化防止剤が存在し得る。酸化防止剤は、酸化を防ぎかくして抱合剤又は調製物のその他の成分の分解を防ぐ。本発明の中で使用するための適切な酸化防止剤としては、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及びそれらの組合せが含まれる。
【0137】
界面活性剤が賦形剤として存在することもできる。界面活性剤の例としては、ポリソルベート例えば「Tween20」及び「Tween80」といった、及びプルロニック、例えばF68及びF88(両方ともニュージャージー州マウントオリーブのBASFから入手可能);ソルビタンエステル;脂質、例えばリン脂質、例えばレシチン及びその他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(但し望ましくはリポゾーム形態でない)、脂肪酸及び脂肪酸エステル;ステロイド、例えばコレステロール;及びキレート化剤、例えばEDTA、亜鉛及びその他のこのような適切なカチオンが含まれる。
【0138】
酸又は塩基も、調製物中の賦形剤として存在し得る。使用可能な酸の制限的でない例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸及びそれらの組合せから成る群から選択された酸が含まれる。適切な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム及びそれらの組合せから成る群から選択された塩基が含まれる。
【0139】
薬学調製物には全てのタイプの処方、特に例えば再構成可能な粉末ならびに懸濁液又は溶液といった注射に適した処方が包含される。組成物中の抱合剤(すなわち、本書で記述されている重合体及び活性作用物質の間で形成される抱合剤)の量は、一定数の因子によって左右されることになるが、単位用量容器(例えばバイアル)内に組成物が保管されている場合、最適には治療上有効な用量となる。さらに、該薬学調製物を注射器の中に収容することも可能である。治療上有効な量は、どの量が臨床的に望まれる評価項目を生み出すかを決定するために抱合剤を漸増量反復投与することによって実験的に決定することができる。
【0140】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、組成物の特定のニーズ及び賦形剤の活性によって変動することになる。標準的には、任意の個々の賦形剤の最適量は、変動する量の賦形剤(高から低までの範囲)を含有する組成物を調製すること、安定性及びその他のパラメータを検査することそして次に、いかなる不利な効果もなく最適な性能が達成される範囲を決定することによって、定期的実験を通して決定される。しかしながら、一般的に、賦形剤は組成物中に約1重量%〜約99重量%、好ましくは約5重量%〜約98重量%、より好ましくは約15〜95重量%で存在することになり、30重量%重量未満の濃度が最も好ましい。
【0141】
以上の薬学賦形剤その他については、Remington: The Science & Practice of Pharmacy, 第19版、Williams & Williams, (1995), 「医師の処方医薬品情報事典」、第52版、Medical Economics, Montvale, NJ (1998), 及びKibbe, A. H., 「医薬品添加物事典」、第3版、American Pharmaceutical Association, Washington, D. C., 2000中に記述されている。
【0142】
本発明の薬学調製物は、必ずしもというわけではないが標準的には注射を介して投与され、従って一般に投与直前には液体溶液又は懸濁液である。該薬学調製物は同様にシロップ、クリーム、軟こう、錠剤、粉末などといったその他の形態をとることもできる。肺、直腸、経皮、経粘膜、経口、髄腔内、皮下、動脈内などといったその他の投与様式も同様に内含される。非経口投与のための適切な処方タイプとしては、なかでも直ちに注射可能な溶液、使用前に溶媒と組合わせるための粉末、直ちに注射可能な懸濁液、使用前にビヒクルと組合わせるための乾燥不溶性組成物そして、投与前に希釈するための液体濃縮物が含まれる。
【0143】
該発明は同様に、当業者によって決定されるように、抱合剤での治療に対し応答性のある身体条件を患う患者に対し、本書で提供されているような抱合剤を投与するための方法をも提供する。該方法は、一般に注射により、好ましくは1つの薬学調製物の一部として提供される治療上有効量の抱合剤を投与する段階を含んで成る。
【0144】
投与すべき実際の用量は、対象の年令、体重及び全身的状態ならびに治療中の身体条件の重症度、医療専門家の判断及び投与中の抱合剤によって変動することになる。特定の薬物の治療上有効量は、当業者にとって既知であり、かつ/又は関係する参考文献及び文献の中で記述されている。一般に抱合剤の治療上有効量は一日あたり約0.001mg〜100mg、好ましくは0.01mg〜75mgの用量、より好ましくは0.10mg〜50mgの用量内となる。任意の既定の抱合剤(ここでも又薬学調製物の一部として提供されるもの)の単位投薬量は、臨床医の判断、患者のニーズなどに応じてさまざまな投薬計画の中で投与可能である。
【実施例】
【0145】
以下の実施例は該発明を例示するために提供されているが、該発明を制限する意味で考慮されるべきものではない。例えば、実施例ではPEGが使用されているが、上述の通り該発明ではその他の水溶性非ペプチド重合体の使用も包含されている。
【0146】
これらの実施形態中で言及されている全てのPEG試薬は、Nektar AL, アリゾナ州ハンツビルから入手可能である。全てのNMRデータはBrukerによって製造される300又は400MHzのNMR分光計によって生成された。
【0147】
実施例1は、第3ブチルエステル終端重合体を形成するための1つの塩基の存在下での第3ブチルブロモアセタートとmPEG−OHの反応を例示している。その後、該重合体は塩基としてNaOHを用いる塩基促進型加水分解を受け、その後リン酸を用いて酸性化され、最終的カルボン酸終端型重合体を形成する。
【0148】
実施例2及び3は、2官能性PEG出発材料(PEGジオール;HO−PEG−OH)の類似の反応を例示している。実施例4は、各PEG「腕」の末端に1つずつの4つの反応性ヒドロキシルを有しペンタエリスリトールコアに基づく多官能性で4腕のPEG出発材料の反応を例示している。
【0149】
実施例1:mPEG(30,000)−カルボン酸
トルエン(600ml)中のmPEG−30,000(50g、0.00167モル)(NOF Corporation)の溶液を、300mlのトルエンを蒸留することによって共沸乾燥させた。t−ブタノール(70ml)、カリウムtert−ブトキシド(95%、1.75g、0.0148モル、8.9倍余剰)及びtert−ブチルブロモアセタート(3.3g、0.0169モル、10.1倍余剰)を添加し、混合物をアルゴン雰囲気下で45℃で一晩攪拌した。溶媒を減圧下で蒸留させ、残渣を蒸留水(1000ml)中で溶解させた。
【0150】
水溶液のpHを1Mの水酸化ナトリウムで12に調整し、溶液を18時間攪拌し、pHは1Mの水酸化ナトリウムを定期的に添加することによって12に保った。
【0151】
5%のリン酸でpHを3に調整し、生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させエチルエーテルを添加した。沈殿生成物をろ過し、減圧下で乾燥させて、46.6gの収量を得た。
NMR(d6−DMSO):3.24ppm(s、−OCH3)、3.51ppm(s、PEG主鎖)、4.01ppm(s、−CH2−COO−)。
アニオン交換クロマトグラフィ分析:mPEG(30,000)−カルボン酸100%。この分析は、エーテル沈殿した生成物中には基本的に出発材料又はその他の重合体不純物が全く存在しないことを示した。
【0152】
実施例2:PEG(10,000)−2カルボン酸
トルエン(600ml)中にPEG−10,000(35.25g、0.00705当量)(NOF Corporation)(両端がヒドロキシで終端)を溶解させ、トルエンを蒸発することにより共沸乾燥させた。残渣を無水トルエン(500ml)中に溶解させた。tert−ブタノール(40ml)、カリウムtert−ブトキシド(4g、0.0356モル、5.1倍余剰)及び無水トルエン(40ml)を組合わせ、上述の反応混合物に添加しその後約3.5時間攪拌した。t−ブチルブロモアセタート(7ml、0.0474モル、6.7倍余剰)を添加し、混合物をアルゴン雰囲気下で40℃で一晩攪拌した。溶媒を減圧下で蒸留し、残渣を蒸留水(1000ml)中で溶解させた。
【0153】
水溶液のpHを1Mの水酸化ナトリウムで12.1に調整し、溶液を一晩攪拌し、1Mの水酸化ナトリウムの定期的添加によりpHを12.1に保った。
【0154】
1Mの塩酸でpHを1.0に調整し、生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、エチルエーテルに添加した。沈殿した生成物をろ過し、減圧下で乾燥させて33gの収量を得た。
NMR(d6−DMSO):3.51ppm(s、PEG主鎖)、4.01ppm(s、−CH2−COO−)。
アニオン交換クロマトグラフィ分析:PEG(10,000)−2カルボン酸100%。
【0155】
実施例3:PEG(5,000)−2カルボン酸
アセトニトリルを蒸留することによりアセトニトリル(800ml)中のPEG−5,000(35g、0.01400当量)(NOF Corporation)の溶液を共沸乾燥させ、残渣を無水トルエン(300ml)中に再溶解させた。t−ブタノール(50ml)、カリウムtert−ブトキシド(4.7g、0.0419モル、2.99倍余剰)及び無水トルエン(50ml)を組合せ、上述の反応混合物に添加し、その後約3.5時間攪拌した。t−ブチルブロモアセタート(7.2ml、0.0488モル、3.48倍余剰)を添加し、混合物をアルゴン雰囲気下で室温で20時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸留させ、残渣を蒸留水(1000ml)中で溶解させた。
【0156】
水溶液のpHを1Mの水酸化ナトリウムで12.0に調整し、溶液を一晩攪拌し、1Mの水酸化ナトリウムを定期的に添加することでpHを12に保った。
【0157】
1Mの塩酸でpHを2.0に調整し、生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、エチルエーテルに添加した。沈殿した生成物をろ過し、減圧下で乾燥させて33gの収量を得た。
NMR(d6−DMSO):3.51ppm(s、PEGI主鎖)、4.01ppm(s、−CH2−COO−)アニオン交換クロマトグラフィ分析:PEG(5,000)−2カルボン酸100%。
【0158】
実施例4:4−腕−PEG(10,000)−4カルボン酸
トルエン(2300ml)中の多腕PEG(4−腕)、分子量10kDa(Nektar, アリゾナ州ハンツビル)(160g、0.064当量)の溶液を減圧下で80℃で1000mlのトルエンを蒸留することによって共沸乾燥させた。もう1つの容器の中で、tert−ブタノール(17.3ml)及びカリウムtert−ブトキシド(7.18g、0.148モル、2.00倍余剰)を混合し、その後以上からの乾燥済みトルエン溶液に添加した。結果として得た溶液を45℃で約3.5時間攪拌した。t−ブチルブロモアセタート(20.8ml、0.141モル、2.20倍余剰)を添加し、混合物をアルゴン雰囲気下で45℃で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を蒸留水(1.600ml)中で溶解させた。
【0159】
水溶液のpHを1Mの水酸化ナトリウムで12.0に調整し、溶液を17時間攪拌し、その間1Mの水酸化ナトリウムを定期的に添加することでpHを12に保った。
【0160】
その後1Mのリン酸でpHを1.5に調整し、生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、エチルエーテルに添加した。沈殿した生成物をろ過し、減圧下で乾燥させて15.5gの収量を得た。
NMR(d6−DMSO):3.51ppm(s、PEGI主鎖)、4.01ppm(s、−CH2−COO−)、置換100%。
【0161】
−20℃で8カ月保管した後、GPC分析はもとの生成物と同一であった。従って、保管中には検出可能な分解は全く発生しなかった。
【0162】
本発明が関与する技術の当業者であれば、以上の記述中で提示された教示の利点を有する該発明の数多くの修正及びその他実施形態を思いつくことであろう。従って該発明は、開示された特定の実施形態に制限されるものではなく、修正及びその他の実施形態が添付のクレームの範囲内に内含されるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基で官能化された水溶性非ペプチド重合体を調製するための方法において、
i) エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、R’は第三級基であり、Rは官能基Xを含む)を、水溶性非ペプチド重合体POLY−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)と反応させて、該重合体の第三級エステルを形成させる段階;及び
ii) 重合体の第三級エステルを水溶液中で強塩基を用いて処理し、該重合体のカルボン酸塩を形成させる段階、
を含んで成る方法。
【請求項2】
iii) 重合体のカルボン酸塩を水溶液中で無機酸を用いて処理し、該カルボン酸塩をカルボン酸に転換し、かくしてカルボン酸官能化重合体を形成させる段階、をさらに含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが離脱基でありかつYがヒドロキシル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記強塩基がアルカリ金属水酸化物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記強塩基を用いた処理段階が、約11〜13の反応pHを生成するのに有効である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記無機酸が、水溶液中で非求核性アニオンを生成する酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記酸が、硫酸、硝酸、リン酸及び塩酸から成る群から選択されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第三級エステル試薬が、
【化1】

という構造を有し、式中、
− Xが離脱基であり;
− R1及びR2の各々が、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル及びヘテロ環の中から独立して選択されており;
− R3〜R5の各々が、低級アルキル、アリール、アラルキル及びシクロアルキルの中から独立して選択されており(なお、任意のR3〜R5を連結させて1つの環又は環系を形成させることができる);
− 水素を除く任意のR1〜R5を、低級アルキル、低級アルコキシ、C3−C6シクロアルキル、ハロ、シアノ、オキソ(ケト)、ニトロ及びフェニルの中から選択された基で置換させることができ;かつ
− nは1〜約24である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記nが1〜6である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記nが1又は2である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記R1及びR2の各々が独立して水素又は未置換低級アルキルであり、かつR3〜R5の各々が独立して未置換低級アルキル又はフェニルである、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記R1及びR2の各々が独立して水素又はメチルであり、かつR3〜R5の各々が独立してメチル、エチル又はフェニルである、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記R1及びR2の各々がHでありかつnが1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第三級エステル試薬がt−ブチルハロ酢酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記重合体が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酢酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、及びそれらの共重合体又は三元重合体から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
前記重合体が、ポリ(エチレングリコール)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリ(エチレングリコール)が線状であって、一方の末端において前記官能基Yで、かつ他方の末端においてもう1つの官能基Y’又はキャッピング基で終端している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボン酸を活性化されたカルボン酸誘導体に転換させる段階をさらに含んで成る、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記誘導体が活性化されたエステルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カルボン酸誘導体を生物活性分子上の官能基と反応させることによって、前記分子と前記重合体を抱合させる段階をさらに含んで成る、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記カルボン酸誘導体が活性化されたエステルであり、前記分子上の官能基が求核基である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記求核基がアミノ基、ヒドロキシル基又はチオールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
カルボキシル基で官能化されたポリ(エチレングリコール)(PEG)を調製するための方法において、
i) 第三級エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、R’は第三級アルキル基であり、Rは官能基Xを含む)を、重合体PEG−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)と反応させて、PEG第三級エステルを形成させる段階;及び
ii) PEG第三級エステルを水溶液中で強塩基を用いて処理し、PEGカルボン酸塩を形成させる段階、
を含んで成る方法。
【請求項24】
iii) PEGカルボン酸塩を水溶液中で無機酸を用いて処理し、該カルボン酸塩をカルボン酸に転換させ、かくしてPEGカルボン酸を形成させる段階、をさらに含んで成る請求項23又は24に記載の方法。
【請求項25】
前記Xが離脱基でありかつYがヒドロキシル基である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記強塩基がアルカリ金属水酸化物である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記酸が、硫酸、硝酸、リン酸及び塩酸から成る群から選択されている、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第三級エステル試薬が、
【化2】

という構造を有し、式中、
− Xが離脱基であり;
− R1及びR2の各々が、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル及びヘテロ環の中から独立して選択されており;
− R3〜R5の各々が、低級アルキル、アリール、アラルキル及びシクロアルキルの中から独立して選択されており(なお、任意のR3〜R5を連結させて1つの環又は環系を形成させることができる);
− 水素を除く任意のR1〜R5を、低級アルキル、低級アルコキシ、C3−C6シクロアルキル、ハロ、シアノ、オキソ(ケト)、ニトロ及びフェニルの中から選択されている基で置換させることができ;かつ
− nは1〜約24である、
請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記nが1〜6である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記nが1又は2である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記R1及びR2の各々が独立して水素又は未置換低級アルキルであり、かつR3〜R5の各々が独立して未置換低級アルキル又はフェニルである、請求項28〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記R1及びR2の各々がHでありかつnが1である、請求項28〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記第三級エステル試薬がt−ブチルハロ酢酸である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリ(エチレングリコール)が線状であって、一方の末端において前記官能基Yで、かつ他方の末端においてもう1つの官能基Y’又はキャッピング基で終端している、請求項23,24又は33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記PEGが、約100〜約100,000Daの分子量を有している、請求項23,24又は33に記載の方法。
【請求項36】
前記PEGが、約300〜約60,000Daの分子量を有している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記PEGカルボン酸を活性化されたカルボン酸誘導体に転換させる段階をさらに含んで成る、請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記誘導体が活性化されたエステルである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記カルボン酸誘導体を生物活性分子上の官能基と反応させることによって、前記分子と前記PEGを抱合させる段階をさらに含んで成る、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記生成物が5重量%未満の前記POLY−Y重合体を含有し、残りは、基本的に前記カルボン酸官能化重合体で構成されている、請求項2に記載の方法によって作られたカルボン酸官能化重合体を含んで成る、単離された重合体生成物。
【請求項41】
2重量%未満の前記POLY−Y重合体を含んで成る、請求項40に記載の重合体生成物。
【請求項42】
0.5重量%未満の前記POLY−Y重合体を含んで成る請求項40に記載の重合体生成物。
【請求項43】
低分子量有機酸を実質的に全く含有していない、請求項40〜42のいずれかに記載の重合体生成物。
【請求項44】
単量体有機カルボン酸を実質的に全く含有していない、請求項40〜42のいずれかに記載の重合体生成物。
【請求項45】
トリフルオロ酢酸を実質的に全く含有していない、請求項40〜42のいずれかに記載の重合体生成物。
【請求項46】
前記カルボン酸官能化重合体がPEGカルボン酸である、請求項40に記載の重合体生成物。
【請求項47】
前記カルボン酸官能化重合体がmPEG−CH2−COOHであり、かつ前記重合体生成物が5重量%未満のmPEG−OHを含有する、請求項46に記載の重合体生成物。
【請求項48】
2重量%未満のmPEG−OHを含んで成る、請求項47に記載の重合体生成物。
【請求項49】
0.5重量%未満のmPEG−OHを含んで成る、請求項48に記載の重合体生成物。
【請求項50】
トリフルオロ酢酸を実質的に全く含有していない、請求項47〜49のいずれかに記載の重合体生成物。
【請求項51】
前記カルボン酸官能化重合体がHOOC−CH2−PEG−CH2−COOHであり、かつ前記生成物が5重量%未満のHO−PEG−OHを含有する、請求項46に記載の重合体生成物。
【請求項52】
0.5重量%未満のOH−PEG−OHを含んで成る、請求項51に記載の重合体生成物。
【請求項53】
トリフルオロ酢酸を実質的に全く含有していない、請求項51又は52に記載の重合体生成物。
【請求項54】
前記カルボン酸官能化重合体が、xを3〜8として、PEG−(CH2−COOH)xで表わされる多官能性有枝又は多腕カルボン酸官能化PEGであり、かつ前記生成物が5重量%未満のPEG−(OH)xを含有する、請求項46に記載の重合体生成物。
【請求項55】
トリフルオロ酢酸を実質的に含有していない、請求項54に記載の重合体生成物。
【請求項56】
PEG第三級エステルを形成させるべく、第三級エステル試薬R(C=O)OR’(なお式中、R’は第三級アルキル基であり、Rは官能基Xを含む)を重合体PEG−Y(なお式中、YはXと反応して共有結合を形成する官能基である)と反応させて、カルボキシル基で官能化されたポリ(エチレングリコール)(PEG)重合体を調製する方法において、水溶液中で強塩基を用いてPEG第三級エステルを処理して、PEGカルボン酸塩を形成させる段階を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項57】
前記方法が、水溶液中で無機酸を用いてPEGカルボン酸塩を処理し、該カルボン酸をカルボン酸に転換し、かくしてPEGカルボン酸を形成させる段階をさらに含んで成ることを特徴とする、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記強塩基がアルカリ金属水酸化物であることを特徴とする、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
強塩基を用いた前記処理段階が約11〜13の反応pHを生成するのに有効であることを特徴とする、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記酸が、硫酸、硝酸、リン酸及び塩酸から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項57に記載の方法。

【公表番号】特表2007−510800(P2007−510800A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539659(P2006−539659)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/036850
【国際公開番号】WO2005/047366
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(503197027)ネクター セラピューティクス アラバマ,コーポレイション (16)
【Fターム(参考)】