説明

カレンダー加工用ポリエステル組成物

半結晶化時間が少なくとも5分及びインヘレント粘度が0.55〜0.75dL/gである分岐モノマーを含むポリエステル及び剥離剤から、カレンダー加工法において比較的大きい処理量を実現するポリエステル組成物を製造できる。このポリエステル組成物は、溶融破壊が起こる前に、より速いカレンダーライン速度を可能にする良好な剪断応答と優れた溶融強度との組合せを示す。また、前記組成物をカレンダー加工することによるフィルム又はシートの製造方法及びそれによって製造されるフィルム又はシートも開示される。このポリエステル組成物、フィルム又はシートは、また、それらの可撓性を増大させ且つ難燃性を必要とする商業的用途への使用を可能にするために可塑剤及び/又は難燃剤を含むことができる。このフィルム又はシートは優れた外観を有し、広範囲の装飾及び包装用途に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレンダー加工用ポリエステル組成物、更に詳しくは、カレンダー加工法においてより速い生産速度を可能にするポリエステル組成物に関する。本発明は更にこれらのポリエステル組成物のカレンダー加工法及びそれによって得られるポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
カレンダー加工は、可塑化及び硬質ポリ塩化ビニル(本明細書中において、「PVC」と略す)並びにポリプロピレン組成物のようなプラスチックからフィルム及びシートを製造するための経済的で効率の高い手段である。フィルム及びシートは通常、2mil(0.05mm)〜80mil(2.0mm)の厚さを有する。PVCカレンダードフィルム又はシートは、梱包材料、プールライナー、グラフィック・アート、トランザクションカード、セキュリティーカード、化粧板、壁装材、本の装丁、フォルダー、フロアタイル及び別の操作で印刷、装飾又は貼り合わせる製品を含む広範囲の用途に使用できる種々の形状に容易に熱成形される。カレンダー加工法に使用されるポリプロピレン樹脂組成物に関する更なる解説は特許文献1及び2に記載されている。
【0003】
これに対して、フィルム又はシートへのポリエステルの従来の加工は、フラットダイのマニホールドからのポリエステルメルトの押出を含む。材料のウェブ全体にわたって厚さを制御するために手動又は自動のダイリップ調整が用いられる。溶融ウェブを冷却し且つ平滑表面仕上げを与えるために、水冷チルロールが用いられる。押出法は優れた品質のフィルム及びシートを生成するが、押出方法はカレンダー加工法の処理量及び経済的利点を有さない。
【0004】
PVC組成物は、カレンダードフィルム及びシートビジネスの中で群を抜いて大きい部分である。少量の他の熱可塑性ポリマー、例えば熱可塑性ゴム、ある種のポリウレタン、タルク充填ポリプロピレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー(ABS樹脂)及び塩素化ポリエチレンも、場合によっては、カレンダー加工法で加工される。これに対して、ポリエステルポリマー、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(本明細書中で「PET」と略する)又はポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(本明細書中で「PBT」と略する)は、成功裡にカレンダー加工するのが難しい。例えば0.6デシリッター/グラム(本明細書中で「dL/g」と略する)のインヘレント粘度値を有するPETポリマーは、典型的には、カレンダーロール上で適切に機能するのに充分な溶融強度(melt strength)を有さない。溶融強度とは、ポリマーが溶融状態においてその重量を支持する能力と定義する。カレンダー加工において、溶融強度は、変形を伴わずにロールプロセスからフィルムを除去する能力に関係する。例えば、カレンダー加工時に、低溶融強度のポリマーはすぐに垂れ下がって、床に衝突するのに対して、高溶融強度のポリマーは、はるかに長時間その形状を保持し、更に加工可能である。従って、溶融強度は、「ドローダウン(drawdown)」の量及びカレンダー加工法の間にポリマーが遭遇する重力による垂れ下がりを最小にするのに重要である。「ドローダウン」は、カレンダー加工においては、カレンダーロールと引取システムとの間における厚さ減少量と定義され、フィルムが同一寸法でカレンダーロールから出る際の引取ロールにおける公称厚さ又は幅寸法の比で表される。また、PET及び他のポリエステルポリマーは、160℃〜180℃の典型的な加工温度において結晶化して、カレンダー軸受け上に強い力をもたらす不均一な塊を生じるおそれがある。加工温度が増加すると溶融粘度が低下し、加工性が向上する。しかし、温度が高いほど、例えば、熱分解、大気中の水分への暴露によるポリマーの加水分解及び色素体の形成などによってポリエステルが分解されるおそれが高い。典型的なPETポリマーは比較的高い加工温度においてはカレンダーロールに粘着する傾向もある。種々のポリエステル組成物のカレンダー加工及びこれらの問題へのいくつかのアプローチは、例えば特許文献3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及び14に記載されている。これらの問題のいくつかはポリマーの性質、添加剤及び加工条件を慎重に選択することによって回避できるが、速い生産速度でのポリエステルのカレンダー加工は困難である。
【0005】
通常はライン速度と称するカレンダー加工における生産速度は、いくつかの要因によって決定される。例えば、装置の設計及び能力は、カレンダー加工法の実施の速度及び効率に大きな影響を与える。しかし、装置に制限がない場合には、カレンダー加工法のライン速度及び効率は、送られる材料に大きく左右される。
【0006】
ライン速度が速いほど、溶融破壊が起こる可能性は大きい。溶融破壊は、材料に粗い、白い又は濁った外観を与えるが、これは、加工の間に適用される剪断力に材料が応答できない結果である。溶融破壊は、カレンダーロールに対する壁の剪断応力がある値(典型的には0.1〜0.2MPa)を超える場合には常に起こり、溶融破壊の開始はカレンダー加工の律速段階であることが多い。剪断応力は処理容量又はライン速度(剪断速度を決定する)並びにポリマーメルトの粘度によって制御される。ライン速度又は高剪断速度における粘度を低下させることによって、壁の剪断応力は低下し、溶融破壊の可能性は低下する。従って、剪断加工法のライン速度が増加する場合には、剪断応力の低下が溶融破壊の可能性を低下させるであろう。ポリエステルにおける剪断応力及び溶融破壊の低下については、押出法ではこれまで対処されていない。例えば、特許文献15は、ポリエステル組成物の加工性が分岐剤の添加によって改善され、その結果、溶融強度及び高剪断減粘性が増加する異形押出法を記載している。ポリエステル組成物は少なくとも0.65dL/gのインヘレント粘度を有する。しかし、例えば、PVC又はポリプロピレンのようなカレンダー加工によって典型的に加工されるポリマーに比較して、ポリエステルポリマーはカレンダー加工法において比較的フラットな剪断減粘応答(shear−thinning response)(即ち、低剪断速度と高剪断速度との間でポリマーの溶融粘度の変化がほとんどない)を示すことが多い。従って、充分な溶融粘度を得るために比較的高い溶融粘度を有するポリエステルを用いる場合には、不充分な剪断減粘が、カレンダー軸受けに許容され得ないほど大きい力をもたらすことが多い。加工温度の増加はカレンダー加工における溶融破壊の発生を減少させることができるが、前述のように、ポリマーの分解を引き起こし且つ不充分なポリマー溶融強度を生じるおそれもある。従って、剪断応答及び溶融強度によって示される問題は、最高の製品品質及び最低の生産コストを得ることができる速いライン速度及び/又は比較的低い加工温度においてはポリエステルポリマーのカレンダー加工を妨げる場合が多い。これらの問題に対処するために、速いライン速度及び/又は比較的低い加工温度においてカレンダー加工可能なポリエステルが必要とされている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−197213号
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第0 744 439 A1号
【特許文献3】米国特許第5,998,005号
【特許文献4】米国特許第6,068,910号
【特許文献5】米国特許第6,551,688号
【特許文献6】米国特許出願公開第10/086,905号
【特許文献7】特開平8−283547号
【特許文献8】特開平7−278418号
【特許文献9】特開2000−243055号
【特許文献10】特開平10−363908号
【特許文献11】特開2000−310710号
【特許文献12】特開2001−331315号
【特許文献13】特開平11−158358号
【特許文献14】国際出願公開第WO02/28967号
【特許文献15】米国特許第6,632,390号
【発明の開示】
【0008】
本発明者らは、インヘレント粘度と分岐の適正なバランスを有するポリエステルはカレンダー加工時に優れた加工特性を提供することを確認した。本発明者らは意外にも、半結晶化時間(crystallization half time)が少なくとも5分及びインヘレント粘度が0.55〜0.75デシリッター/グラム(dL/g)であって分岐モノマーを含むポリエステル及び剥離剤から、カレンダー加工法においてより大きい処理量を実現するポリエステル組成物を製造できることを見出した。従って、本発明は、(a)二酸残基、ジオール残基及び分岐モノマー残基を含むポリエステル(前記ポリエステルは、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも5分であり且つインヘレント粘度が0.55〜0.75dL/gのランダムコポリマーである)並びに(b)カレンダーロールへのポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤を含むカレンダー加工用ポリエステル組成物を提供する。本発明の新規ポリエステル組成物は、溶融破壊が起こる前において比較的速いカレンダー加工ライン速度を可能にする、優れた溶融強度と良好な剪断応答という意外な組合せを示す。この比較的速いカレンダー加工ライン速度が、更には、商業的用途におけるポリエステルシート又はフィルムのより経済的な生産を実現する。
【0009】
本発明はまた、
(a)(i)テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも80モル%含む二酸残基;
(ii)1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を、ジオール残基の総モルに基づき、10〜100モル%と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレングリコールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を0〜90モル%含むジオール残基;並びに
(iii)3個又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組合せを有する1種又はそれ以上のモノマーの残基を、ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜1重量%(wt%)含む分岐モノマー残基
を含むランダムコポリマーである、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも30分及びインヘレント粘度が0.55〜0.75dL/gのポリエステル;並びに
(b)カレンダーロールへの前記ポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤
を含むポリエステル組成物をカレンダー加工することを含んでなる、フィルム又はシートの製造方法を提供する。更に、本発明は、カレンダー加工法によって製造されるポリエステルフィルム又はシートを提供する。本発明のポリエステル組成物、フィルム又はシートは、それらの可撓性を増大し且つ難燃性を必要とする商業的用途への使用を可能にするために、可塑剤及び/又は難燃剤を含むこともできる。フィルム又はシートは、優れた外観、可撓性及び難燃性を有し、種々の装飾及び包装用途に使用できる。フィルム又はシートは、食品及び非食品の両者に独特の包装用途のために種々の形状に容易に熱成形される。これらは種々のインキで印刷可能であって、布又は他のプラスチックフィルム若しくはシートをインラインで又はオフラインで貼り合わせることができる。いくつかの具体的最終用途としては、グラフィックアート、トランザクションカード、セキュリティーカード、化粧板、壁装材、本の装丁、フォルダーなどが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ポリエステル組成物は、従来は典型的には、フィルム又はシートの製造のためのカレンダー加工法に組み入れることが難しかった。前述のように、ポリエステルにはこれまで、速いライン速度且つ比較的低温でカレンダー加工を可能にする溶融強度及び剪断減粘性の適切な組合せがなかった。従って、理想的なポリエステルは、垂れ下がり及び溶融破壊を起こさずに、有効な商業的カレンダー加工法に関連した速い速度でポリエステルを送ることができるように高い溶融強度及び高い剪断減粘性を有するものということになる。
【0011】
本発明は、高速のカレンダー加工法への使用を適当にする高い溶融強度及び高い剪断減粘度性を有するポリエステル組成物を提供する。従って、一般的な実施態様において、本発明は、(a)溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも5分及びインヘレント粘度が0.55〜0.75dL/gのランダムコポリマーである、二酸残基、ジオール残基及び分岐モノマー残基を含むポリエステル;並びに(b)カレンダーロールへのポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤を含んでなるカレンダー加工用のポリエステル組成物を提供する。このインヘレント粘度(以下、「I.V.」と略する)は分岐剤と組合さって比較的高い溶融強度及び比較的高い剪断減粘度を与えるので、本発明の新規ポリエステル組成物は、比較的低温及び速いライン速度で、得られるフィルム又はシートの過剰なドローダウンを生ずることなく、カレンダー加工可能である。ポリエステル組成物は、ポリエステルのカレンダードフィルムの可撓性及び軟度を増加させ、ポリエステルの加工を改善し且つカレンダーロールへのポリエステルの粘着防止を助けるために、1種又はそれ以上の可塑剤を含むこともできる。本発明は、新規ポリエステル組成物のカレンダー加工によるフィルム又はシートの製造方法及びこのようなカレンダー加工法によって得られるフィルム又はシートも提供する。このカレンダードフィルム又はシートは、典型的には、2mil(0.05mm)〜80mil(2mm)の範囲の厚さを有する。
【0012】
特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いる成分の量、性質、例えば分子量、反応条件などを表す全ての数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものと理解されたい。従って、特に断らない限り、以下の明細書及び添付した「特許請求の範囲」に記載した数値パラメーターは、本発明によって獲得しようとする望ましい性質に応じて異なり得る近似値である。最低限でも、各数値パラメーターは少なくとも、有効桁数を考慮に入れ且つ普通の丸めを適用することによって解釈すべきである。更に、本明細書の開示及び特許請求の範囲に記載した範囲は、端点だけでなく、全範囲を具体的に含むものとする。例えば、0〜10と記載された範囲は、0と10との間の全ての整数、例えば1、2、3、4など、0と10との間の全ての分数、例えば、1.5、2.3、4.57、6.1113など、及び端点0及び10を開示するものとする。また、化学置換基、例えば、「C1〜C5炭化水素」に関連した範囲は、C1炭化水素及びC5炭化水素並びにC2炭化水素、C3炭化水素及びC4炭化水素を具体的に含み且つ開示するものとする。
【0013】
本発明の広い範囲を記載する数値域及び数値パラメーターは近似値であるが、具体例に記載した数値は可能な限り正確に報告してある。しかし、いずれの数値も、個々の試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる若干の誤差を本質的に含む。
【0014】
本明細書中で使用する用語「ポリエステル」は、「コポリエステル」を含むものとし、1種又はそれ以上の二官能価カルボン酸と1種又はそれ以上の二官能価ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーを意味すると解する。典型的には、二官能価カルボン酸はジカルボン酸であり、二官能価ヒドロキシル化合物は二価アルコール、例えばグリコール及びジオールである。或いは、二官能価カルボン酸は、例えばp−ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸であることができ、二官能価ヒドロキシル化合物は、例えばヒドロキノンのような2個のヒドロキシル置換基を有する芳香核であることができる。本明細書中で使用する用語「残基」は、対応するモノマーを含む、重縮合反応によってポリマー又は可塑剤に組み込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書中で使用する「反復単位」は、カルボニルオキシ基によって結合されるジカルボン酸残基及びジオール残基を有する有機構造を意味する。従って、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー若しくはその関連する酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物から得ることができる。従って、本明細書中で使用する用語「ジカルボン酸」は、高分子量ポリエステルを製造するためのジオールとの重縮合法において有用なジカルボン酸及びその関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物又はそれらの混合物を含むジカルボン酸の任意の誘導体を含むものとする。
【0015】
本発明のポリエステル組成物は、ジカルボン酸残基、ジオール残基及び分岐モノマー残基を含むポリエステルから製造する。本発明のポリエステルは、反復単位の総モルが100モル%に等しくなるように実質的に等しい比で反応する実質的に等しいモル比の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)を含む。従って、本明細書の開示において示すモル%は、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル又は反復単位の総モルに基づくことができる。例えば、総酸残基に基づき、30モル%のイソフタル酸を含むポリエステルは、ポリエステルが合計100モル%の酸残基のうち30モル%のイソフタル酸残基を含むことを意味する。従って、酸残基100モル当たりイソフタル酸残基が30モル存在する。別の例において、総ジオール残基に基づき、30モル%のエチレングリコールを含むポリエステルは、合計100モル%のジオール残基のうち30モル%のエチレングリコール残基を含むことを意味する。従って、ジオール残基100モル当たりエチレングリコール残基が30モル%存在する。
【0016】
本発明のポリエステルは、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも5分である。半結晶化時間は、例えば少なくとも7分、少なくとも10分、少なくとも12分、少なくとも20分及び少なくとも30分であることができる。典型的には、少なくとも5分の半結晶化時間を示すポリエステルはコポリエステル又はランダムコポリマーである。本明細書中で使用する用語「ランダムコポリマー」は、ポリエステルが1種より多くのジオール及び/二酸残基を含み、異なるジオール又は二酸残基がポリマー鎖に沿ってランダムに分布していることを意味する。従って、本発明のポリエステルは、当業者にはわかるように、「ホモポリマー」又は「ブロックコポリマー」ではない。好ましくは、ポリエステルは実質的に非晶質の形態を有し、これは、ポリエステルが実質的に無秩序のポリマー領域を含むことを意味する。非晶質又は半結晶質ポリマーは典型的には、ガラス転移温度(本明細書中では「Tg」と略する)のみ又はガラス転移温度と融点(本明細書中では「Tm」と略する)を示し、これらは公知の方法、例えば示差走査熱量測定法(「DSC」)によって測定される。メルトからの所望の結晶化速度はまた、ポリマー添加剤、例えば、可塑剤の添加によって又はポリマーの分子量特性を変えることによって達成できる。本発明のポリエステルはまた、少なくとも5分の半結晶化時間を達成するのに必要な割合で組合された、実質的に非晶質のポリエステルとより結晶質のポリエステルとの混和性ブレンドであることができる。しかし、好ましい一実施態様においては、本発明のポリエステルはブレンドではない。
【0017】
本明細書中で使用する「ポリエステルの半結晶化時間」は、当業者によく知られた方法を用いて測定できる。例えば、半結晶化時間は、Perkin−Elmer Model DSC−2示差走査熱量計を用いて測定できる。半結晶化時間は以下の手法を用いて溶融状態から測定する:ポリエステルのサンプル15.0mgをアルミニウム皿中に密封し、320℃/分の速度で2分間290℃まで加熱する。次いで、サンプルを直ちにヘリウム存在下で約320℃/分の速度で所定の等温結晶化温度まで冷却する。等温結晶化温度は、最高の結晶化速度を生じる、ガラス転移温度と融解温度との間の温度である。等温結晶化温度は、例えばElias,H.Macromolecules,Plenum Press:NY,1977,p391に記載されている。半結晶化時間は等温結晶化温度に到達してから結晶化ピーク点までのDSC曲線上の時間長として求める。
【0018】
ポリエステルの二酸残基は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも80モル%含む。ナフタレンジカルボン酸の種々の異性体又は異性体の混合物はいずれも使用できるが、1,4−、1,5−、2,6−及び2,7−異性体が好ましい。例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸は純粋なシス異性体若しくはトランス異性体として又はシス異性体とトランス異性体の混合物として存在できる。例えばポリエステルは、テレフタル酸からの二酸残基80〜100モル%及びイソフタル酸からの二酸残基0〜20モル%を含むことができる。
【0019】
ポリエステルは、また、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基10〜100モル%及び炭素数2〜20の1種又はそれ以上のジオールの残基0〜90モル%を含んでなることができるジオール残基を含む。本明細書中で使用する用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義であり、任意の二価アルコールを意味する。例えば、ジオール残基は、また、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を、ジオール残基の総モルに基づき、10〜100モル%並びにエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレングリコールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を0〜90モル%含むことができる。本発明のポリエステルに使用できるジオールの更なる例は、トリエチレングリコール;ポリエチレングリコール;2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;チオジエタノール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;p−キシレンジオール;ビスフェノールS;又はこれらのグリコールのうち1種若しくはそれ以上の組合せである。脂環式ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、それらの純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体とトランス異性体の混合物として存在できる。別の例において、ジオール残基は、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基10〜100モル%及びエチレングルコールの残基0〜90モル%を含むことができる。更なる例において、ジオール残基は、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基20〜80モル%及びエチレングルコールの残基20〜80モル%を含むことができる。別の例において、ジオール残基は、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基20〜70モル%及びエチレングルコールの残基80〜30モル%を含むことができる。更に別の例において、ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を20〜65モル%且つ二酸残基がテレフタル酸の残基を95〜100モル%を含むことができる。
【0020】
ポリエステルはまた、炭素数4〜40の1種又はそれ以上の改質用二酸の残基を0〜20モル%含むことができる。使用できる改質用ジカルボン酸の例としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又はこれらの酸の2種若しくはそれ以上の混合物が挙げられる。改質用ジカルボン酸の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。一種又はそれ以上の、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸又はスルホイソフタル酸。改質用ジカルボン酸の更なる例は、フマル酸;マレイン酸;イタコン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;ジグリコール酸;2,5−ノルボルナンジカルボン酸;フタル酸;ジフェン酸;4,4’−オキシジ安息香酸;及び4,4’−スルホニル安息香酸である。
【0021】
ポリエステルは、3個又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組合せを有する分岐モノマーの1種又はそれ以上の残基を、ポリエステルの総重量に基づき0.05〜1重量%(wt%)含む。分岐モノマーの例としては、多官能価酸又はグリコール、例えばトリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、分岐モノマー残基は、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸の1種又はそれ以上の残基を0.1〜0.7重量%含む。分岐モノマーは、ポリエステル反応混合物に添加することもできるし、又は例えば米国特許第5,654,347号及び同第5,696,176号に記載されたようにコンセントレートの形態でポリエステルとブレンドすることもできる。
【0022】
より良いカレンダー加工ライン速度を得るためには、本発明のポリエステルは好ましくは0.55〜0.75dL/gのインヘレント粘度を有する。インヘレント粘度(本明細書中では「I.V.」と略する)は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%から成る溶媒50mL当たりポリマー0.25gを用いて、25℃において測定したインヘレント粘度測定値を意味する。ポリエステル組成物が示すことができるI.V.値の他の例は、0.55〜0.70dL/g、0.55〜0.65dL/g及び0.60〜0.65dL/gである。
【0023】
ポリエステルの他に、前記ポリエステル組成物は、カレンダーロールへのポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤を含む。ここで使用する用語「有効な」とは、ポリエステルが、ロールの周囲に巻き付くことも、ロール表面にポリエステルの過剰な層を生じることもなく、カレンダーロール間を自由に通過することを意味する。ポリエステル樹脂組成物中に使用する添加剤の量は、典型的には、ポリエステル組成物の総重量%に基づき、0.1〜10重量%である。添加剤の最適使用量は、当業界でよく知られた要因によって決定され、装置、材料、プロセス条件及びフィルム厚の変動に左右される。添加剤レベルの更なる例は0.1〜5重量%及び0.1〜2重量%である。本発明の添加剤の例としては以下のものが挙げられる。脂肪酸アミド、例えばエルシルアミド及びステアロアミド;有機酸の金属塩、例えばステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛;脂肪酸、例えば、ステアリン酸、オレイン酸及びパルミチン酸;脂肪酸塩;脂肪酸エステル;炭化水素ワックス、例えばパラフィンワックス、燐酸エステル、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス;化学改質ポリオレフィンワックス;エステルワックス、例えばカルナバワックス;グリセリンエステル、例えばグリセロールモノ−及びジ−ステアレート;タルク;微晶質シリカ;並びにアクリルコポリマー(例えば、Rohm & Haasから入手可能なPARALOID(登録商標)K175)。典型的には、添加剤は以下の1種又はそれ以上を含む。エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、グリセロールモノステアレート、又はグリセロールジステアレート。
【0024】
使用できる別の添加剤は、炭素数18より多い脂肪酸又は脂肪酸塩並びに(ii)炭素数18より多い脂肪酸残基及び炭素数2〜28のアルコール残基を含むエステルワックスを含んでなる。エステルワックスに対する脂肪酸又は脂肪酸塩の比は、1:1又はそれ以上であることができる。この実施態様において、前記比の脂肪酸又は脂肪酸塩とエステルワックスとの組合せには、曇り価5%未満のフィルム又はシートを形成するという更なる利点がある。炭素数18又はそれ以下の脂肪酸成分を含む添加剤は、比較的低い分子量を有するので、ポリエステルと混和性になる。このような混和性添加剤は、界面移動性の比較的少ない表面品質を有し、従って、剥離が不充分であるか、又は曇り価を増加する。別の例においては、エステルワックスに対する脂肪酸又は脂肪酸塩の比は2:1又はそれ以上である。
【0025】
脂肪酸はモンタン酸を含むことができ、その場合は脂肪酸の塩は、モンタン酸のナトリウム塩、モンタン酸のカルシウム塩又はモンタン酸のリチウム塩のうち1種又はそれ以上を含むことができる。エステルワックスの脂肪酸残基はモンタン酸を含むことができる。エステルワックスのアルコール残基は炭素数が好ましくは2〜28である。アルコールの例としては、モンタニルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール及びペンタエリスリトールが挙げられる。添加剤はまた、例えば水酸化カルシウムのような塩基で部分鹸化されたエステルワックスを含むことができる。
【0026】
本発明のポリエステルは、適当なジカルボン酸、エステル、無水物若しくは塩、適当なジオール若しくはジオール混合物及び分岐モノマーから、典型的な重縮合反応条件を用いて容易に製造される。これらは、連続、半連続及び回分運転モードで行うことができ、種々の反応器型を使用できる。適当な反応器型の例としては、攪拌漕、連続攪拌漕、スラリー、円筒、ワイプトフィルム、流下フィルム又は押出反応器が挙げられるが、これらに限定するものではない。ここで使用する用語「連続」とは、連続的に反応体が投入されると同時に生成物が回収される方法を意味する。「連続」とは、方法が、「回分」法とは異なり、実質的又は完全に連続的に実施されることを意味する。「連続」は、例えば、始動、反応器のメインテナンス又は定期シャットダウン期間による、方法の連続性における正常な中断を妨げることは意味しない。ここで使用する用語「回分」法は、全ての反応体を反応器に添加してから、所定の反応過程に従って加工し、その間には反応器への材料の供給も除去も行わない方法を意味する。用語「半連続」は、反応体の一部を方法の最初に装入し且つ残りの反応体を反応の進行につれて連続的に供給する方法を意味する。或いは、半連続法はまた、反応の進行につれて1種又はそれ以上の生成物を連続的に除去する以外は、全ての反応体を方法の最初に添加する回分法と同様な方法を含むことができる。この方法は、経済的理由から、また、高温で過剰に長い時間反応器中に滞留させるとポリエステルは外観が悪化する可能性があるのでポリマーのより良い発色を生じるために、連続法として行うのが有利である。
【0027】
本発明のポリエステルは当業者に知られた方法で製造する。ジオール、ジカルボン酸及び分岐モノマー成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて実施できる。例えば、エステル交換によって、即ちエステル型のジカルボン酸成分からポリエステルを製造する場合には、反応方法は2工程を含むことができる。第1工程においては、ジオール成分とジカルボン酸成分、例えばテレフタル酸ジメチルとを高温で、典型的には150℃〜250℃で、0.0kPaゲージ〜414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ,「psig」)の範囲の圧力において0.5〜8時間反応させる。好ましくは、エステル交換反応の温度は180℃〜230℃で1〜4時間であり、好ましい圧力は103kPaゲージ(15psig)〜276kPaゲージ(40psig)の範囲である。その後、反応生成物を比較的高温において減圧下で加熱して、ジオールを除去しながらポリエステルを形成する。ジオールはこれらの条件下で容易に揮発され、系から除去される。この第2の工程、即ち重縮合工程は、比較的高い真空下で一般には230℃〜350℃、好ましくは250℃〜310℃、最も好ましくは260℃〜290℃の範囲の温度において0.1〜6時間、好ましくは0.2〜2時間、インヘレント粘度によって測定される所望の重合度を有するポリマーが得られるまで続ける。重縮合工程は、53kPa(400トル)〜0.013kPA(0.1トル)の範囲の減圧下で実施できる。両段階において攪拌又は適当な条件を用いて、反応混合物の充分な熱伝達及び表面更新を保証する。両段階の反応速度は、適当な触媒、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキル錫化合物、金属酸化物などによって増加させる。米国特許第5,290,631号に記載されたのと同様な3段階製造法も、酸及びエステルの混合モノマー供給材料を使用する場合には特に使用できる。
【0028】
エステル交換反応によるジオール成分とジカルボン酸成分との反応の完了を保証するために、ジカルボン酸1モルに対して、ジオール成分1.05〜2.5モルを使用するのが場合によっては望ましい。しかし、当業者ならば、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比は一般には、反応法が行われる反応器の設計によって決定されることがわかるであろう。
【0029】
直接エステル化による、即ち酸型のジカルボン酸成分からのポリエステルの製造において、ポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物とジオール成分又はジオール成分の混合物及び分岐モノマー成分とを反応させることによって生成する。反応は7kPaゲージ(1psig)〜1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満の圧力において実施して、1.4〜10の平均重合度を有する低分子量ポリエステル生成物を生成する。直接エステル化反応において使用する温度は典型的には、180℃〜280℃、より好ましくは220℃〜270℃の範囲である。この低分子量ポリマーは次に、重縮合反応によって重合できる。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、
(a)(i)テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも90モル%含む二酸残基;
(ii)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール若しくはジエチレングリコールのうち1種若しくはそれ以上の残基を、ジオール残基の総モルに基づき、20〜70モル%とエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレングリコールから選ばれた1種若しくはそれ以上のジオールの残基を30〜80モル%含むジオール残基;並びに
(iii)トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン若しくはトリメシン酸の1種又はそれ以上の残基を、ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜0.7重量%(wt%)含む分岐モノマー残基
を含んでなるランダムコポリマーである、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも30分及びインヘレント粘度が0.55〜0.75dL/gのポリエステル;
(b)1種若しくはそれ以上の、脂肪酸アミド、有機酸の金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク若しくはアクリルコポリマーを含んでなる、カレンダーロールへのポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤、ポリエステル組成物の総重量に基づき、0.1重量%〜10重量%
を含んでなるカレンダー加工用ポリエステル組成物を提供する。ポリエステル組成物が示すことができるI.V.値の他の例は0.55〜0.65dL/g及び0.60〜0.65dL/gである。ナフタレンジカルボン酸の種々の異性体又は異性体混合物はいずれも使用できるが、1,4−、1,5−、2,6−及び2,7−異性体が好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体及びトランス異性体の混合物として存在できる。ランダムコポリマーであるポリエステルは少なくとも30分の半結晶化時間を有する。
【0031】
好ましい添加剤は、炭素数18より多い脂肪酸又は脂肪酸塩並びに(ii)炭素数18より多い脂肪酸残基及び炭素数2〜28のアルコール残基を含むエステルワックスを含んでなる。エステルワックスに対する脂肪酸又は脂肪酸塩の比は、1:1又はそれ以上であることができる。この実施態様において、前記比の脂肪酸又は脂肪酸塩とエステルワックスとの組合せには、曇り価5%未満のフィルム又はシートを形成するという更なる利点がある。別の例において、脂肪酸又は脂肪酸塩のエステルワックスに対する比は2:1又はそれ以上である。脂肪酸はモンタン酸を含むことができ、脂肪酸塩はモンタン酸のナトリウム塩、モンタン酸のカルシウム塩又はモンタン酸のリチウム塩の1種又はそれ以上を含むことができる。エステルワックスの脂肪酸残基はモンタン酸を含むことができる。エステルワックスのアルコール残基の例としては、モンタニルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール及びペンタエリスリトールの残基が挙げられる。添加剤はまた、例えば水酸化カルシウムのような塩基で部分鹸化されたエステルワックスを含むことができる。
【0032】
必須ではないが、本発明のポリエステル組成物は、また、可塑剤を含むこともできる。可塑剤の存在は、カレンダードフィルム又はシートの可撓性及び良好な機械的性質を向上させるために有用である。可塑剤はまた、ポリエステルの加工温度を低下させる助けになり、カレンダーロールへのポリエステル組成物の粘着の防止を助けることができる。可塑剤は典型的には、1個又はそれ以上の芳香環を含む。好ましい可塑剤は、必要があれば、160℃又はそれ以下の温度においてポリエステルの5mil(0.127mm)厚のフィルムを溶解させて透明な溶液を生成することによってポリエステル中に溶解できる。より好ましくは、可塑剤は、必要があれば、150℃又はそれ以下の温度においてポリエステルの5mil(0.127mm)厚のフィルムを溶解させて透明な溶液を生成せしめることによって、ポリエステル中に溶解できる。ポリエステルへの可塑剤の溶解度は以下のようにして求めることができる。
【0033】
1.5mil(0.127mm)の厚さ及びバイアルの幅にほぼ等しい幅を有する標準対照フィルムの1/2インチの切片を小バイアル中に入れる。
2.フィルムが完全に覆われるまで、バイアルに可塑剤を添加する。
3.フィルム及び可塑剤を含むバイアルを棚の上に置いて、1時間後と4時間後に観察する。フィルム及び液体の外観を記録する。
4.周囲の観察後、バイアルを加熱ブロック中に入れ、温度を1時間75℃に一定に保ち、フィルム及び液体の外観を観察する。
5.以下の温度、100℃、140℃、150℃及び160℃のぞれぞれについて、工程4を繰り返す。
【0034】
可塑剤の例及び前記試験によって求めたそれらの溶解度を表Iに記載する。その温度について4又はそれ以上の値は、この可塑剤が本発明に使用するための候補であることを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
キー:
0=可塑剤はこの温度で固体である。
1=可塑剤は液体であるが、フィルムにはまだ何も起こっていない。
2=フィルムは濁り始めた。
3=フィルムは膨潤した。
4=フィルムが崩れ去り且つ/又は液体が濁りながら、フィルムが変化し始めた。
5=フィルムはもはや存在せず、液体は濁っている。
6=液体は透明である。
【0040】
前記と同様な試験は、Society of Plastic Engineers/Wiley and Sons(New York)によって1982年に発行されたJ.Kern Sears及びJoseph R.DarbyによるThe Technology of Plasticizers,136〜137頁に記載されている。この試験においては、加熱された顕微鏡ステージ上の1滴の可塑剤中に1粒のポリマーを入れる。ポリマーが消失すれば、それは可溶化される。本発明のポリエステルの可溶化に最も有効な可塑剤は、表Iによって4より大きい溶解度を有すものであり、それはまた、それらの溶解度パラメーターに従って分類できる。可塑剤の溶解度パラメーター、又は凝集エネルギー密度の平方根は、Coleman et al..Polymer 31,1187(1990)によって記載された方法によって計算できる。最も好ましい可塑剤は、約9.5〜約13.0cal0.5cm-1.5の範囲の溶解度パラメーター(δ)を有する。一般的に、可塑剤の溶解度パラメーターはポリエステルの溶解度パラメーターの1.5単位以内でなければならないことが理解される。表IIのデータは、この範囲内の溶解度パラメーターを有する可塑剤はポリエステルを可溶化するが、この範囲外の溶解度パラメーターを有する可塑剤はそれほど有効でないことを示す。
【0041】
【表5】

【0042】
一般に、カレンダー加工法における発煙と可塑剤の損失を防ぐためには、比較的高分子量の可塑剤が好ましい。可塑剤量の好ましい範囲は、基材ポリマー及び可塑剤の性質によって異なるであろう。詳細には、公知のFox式(T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.,1,123(1956))によって予測されるポリエステルのTgが減少するにつれて、満足できるようにカレンダー加工されることができるポリエステル組成物を得るのに必要な可塑剤の量も減少する。典型的には、可塑剤は、ポリエステル組成物の総重量に基づき、ポリエステル組成物の5〜50重量%を構成する。可塑剤レベルの他の例は、ポリエステル組成物の10〜40重量%、15〜40重量%及び15〜30重量%である。
【0043】
本発明に従って使用できる可塑剤の例は、(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸又は燐酸のうち1種又はそれ以上の残基を含む酸残基;及び(ii)炭素数20以下の脂肪族、脂環式又は芳香族アルコールのうち1種又はそれ以上の残基を含むアルコール残基を含んでなるエステルである。更に、可塑剤のアルコール残基の非限定的例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びジエチレングリコールが挙げられる。可塑剤は、また、1種又はそれ以上の安息香酸エステル、フタル酸エステル、燐酸エステル又はイソフタル酸エステルを含むことができる。別の例において、可塑剤はジエチレングリコールジベンゾエート(本明細書中では「DEGDB」と略する)を含んでなる。
【0044】
ポリエステル組成物はまた燐含有難燃剤を含むことができるが、難燃剤の存在は本発明には重要ではない。燐含有難燃剤は、ポリエステル又は可塑化ポリエステルと混和性でなければならない。ここで使用する「混和性」は、難燃剤と可塑化ポリエステルとが混ざり合って、加工条件又は使用条件下で多相に分離しない安定な混合物を形成することを意味する。従って、用語「混和性」は、難燃剤及び可塑化ポリエステルが真溶液を形成する「溶解性」混合物、及び難燃剤と可塑化ポリエステルとの混合物が必ずしも真溶液を形成するのではなく、安定なブレンドを単に形成することを意味する「相溶性」混合物の両者を含むものとする。好ましくは、燐含有化合物はハロゲン化されていない有機化合物、例えば、有機置換基を含む燐の酸のエステルである。難燃剤は公知の広範囲の燐化合物、例えば、ホスフィン類、亜燐酸エステル、亜ホスフィン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド、及び燐酸エステルを含んでなることができる。燐含有難燃剤の例としては以下のものが挙げられる。燐酸トリブチル、燐酸トリエチル、トリ−ブトキシエチルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、エチルジメチルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、トリベンジルホスフェート、フェニルエチルホスフェート、トリメチルチオノホスフェート、フェニルエチルチオノホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、ジエチルメチルホスホネート、ジエチルペンチルホスホネート、ジラウリルメチルホスホネート、ジフェニルメチルホスホネート、ジベンジルメチルホスホネート、ジフェニルクレジルホスホネート、ジメチルクレジルホスホネート、ジメチルメチルチオホスホネート、フェニルジフェニルホスフィネート、ベンジルジフェニルホスフィネート、メチルジフェニルホスフィネート、トリメチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリベンジルホスフィンオキシド、4−メチルジフェニルホスフィンオキシド、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリベンジルホスファイト、フェニルジエチルホスファイト、フェニルジメチルホスファイト、ベンジルジメチルホスファイト、ジメチルメチルホスホナイト、ジエチルペンチルホスホナイト、ジフェニルメチルホスホナイト、ジベンジルメチルホスホナイト、ジメチルクレジルホスホナイト、メチルジメチルホスフィナイト、メチルジエチルホスフィナイト、フェニルジフェニルホスフィナイト、メチルジフェニルホスフィナイト、ベンジルジフェニルホスフィナイト、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、及びメチルジフェニルホスフィン。
【0045】
本発明の燐含有難燃剤を記載するのに用いる用語「リンの酸」は、燐酸、炭素−燐直接結合を有する酸、例えばホスホン酸及びホスフィン酸のような鉱酸並びに少なくとも1つの残存非エステル化酸基を含む部分エステル化されたもの、例えば燐酸の一次及び二次エステルを含む。本発明に使用できる典型的なリンの酸としては以下のものが挙げられるが、これに限定するものではない。ジベンジル燐酸、ジブチル燐酸、ジ(2−エチルヘキシル)燐酸、ジフェニル燐酸、メチルフェニル燐酸、フェニルベンジル燐酸、ヘキシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、メチルヘキシルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルナフチルホスフィン酸、ジベンジルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸、フェニル亜ホスホン酸、トリル亜ホスホン酸、ベンジル亜ホスホン酸、ブチル燐酸、2−エチルヘキシル燐酸、フェニル燐酸、クレジル燐酸、ベンジル燐酸、フェニル亜リン酸、クレジル亜リン酸、ベンジル亜リン酸、ジフェニル亜リン酸、フェニルベンジル亜リン酸、ジベンジル亜リン酸、メチルフェニル亜リン酸、フェニルフェニルホスホン酸、トリルメチルホスホン酸、エチルベンジルホスホン酸、メチルエチル亜ホスホン酸、メチルフェニル亜ホスホン酸、及びフェニル=フェニル亜ホスホン酸。難燃剤は典型的には、1種又はそれ以上の燐酸のモノエステル、ジエステル又はトリエステルを含む。別の例において、難燃剤はレゾルシノールビス(ジフェンビルホスフェート)(ここでは「RDP」と略する)を含む。
【0046】
難燃剤は、ポリエステル組成物の総重量に基づき、5重量%〜40重量%の濃度でポリエステル組成物に添加することができる。難燃剤レベルの他の例は、7重量%〜35重量%、10重量%〜30重量%及び10重量%〜25重量%である。本発明の難燃性ポリエステル組成物は、UL94燃焼試験においてV2又はそれ以上の等級を示す。更に、本発明の難燃性ポリエステル組成物は、典型的には、Federal Motor Vehicle Safety Standard 302(典型的にはFMVSS 302と称される)において0の燃焼速度を示す。
【0047】
燐含有難燃剤はポリエステル用の可塑剤の役割を果たすこともできる。この実施態様において、難燃剤は、可塑剤としての難燃剤の有効性に応じて、ポリエステル組成物の可塑剤成分の一部又は全てと置き換えることができる。典型的には、可塑化難燃剤を用いる場合には、カレンダードフィルム若しくはシートの所望の燃焼速度若しくは難燃性を達成するのに必要な難燃剤の量を最初に求め、次いでフィルム若しくはシートの所望のTgを生じるのに必要な可塑剤の量を調整する。
【0048】
ロール上における溶融若しくは半溶融材料の加工時における酸化分解を防ぐために、酸化安定剤もまた本発明のポリエステルと共に使用できる。このような安定剤としては、エステル、例えばジステアリルチオジプロピオネート若しくはジラウリルチオジプロピオネート;フェノール系安定剤、例えばCiba−Geigy AGから入手可能なIRGANOX(登録商標)1010、Ethyl Corporationから入手可能なETHANOX(登録商標)330、及びブチル化ヒドロキシトルエン;並びに燐含有安定剤、例えばCiba−Geigy AGから入手可能なIRGAFOS(登録商標)及びGE Specialty Chemicalsから入手可能なWESTON(登録商標)が挙げられる。これらの安定剤は、単独でも組合せても使用できる。
【0049】
ポリエステルの溶融強度を所望のレベルまで増加させるのにスルホイソフタル酸のような助剤を用いることも可能である。更に、ポリエステル組成物は、必要に応じて、染料、顔料、充填剤、艶消剤、粘着防止剤、帯電防止剤、発泡剤、チョップトファイバー、ガラス、耐衝撃性改良剤、カーボンブラック、タルク、TiO2などを含むことができる。ポリエステル及び圧延製品に所望のニュートラルな色相及び/又は明度を与えるために、トナーと称することもある着色剤を添加することができる。
【0050】
例えば難燃剤、剥離剤、可塑剤及びトナーのようなポリエステル組成物の種々の成分は回分法、半連続法又は連続法でブレンドできる。小規模バッチは、カレンダー加工の前に、当業者によく知られた強力混合装置、例えばバンバリーミキサー中で容易に製造できる。成分はまた、適当な溶媒中に溶解してブレンドできる。溶融ブレンド法は、ポリエステル、可塑剤、難燃剤、添加剤及び任意の追加の非重合成分を、ポリエステルの溶融に充分な温度においてブレンドすることを含む。ブレンドは冷却して、更なる使用のためにペレット化することもできるし、或いはこの溶融ブレンドからフィルム又はシートに直接カレンダー加工することもできる。ここで使用する「溶融」は、ポリエステルを単に軟化することを含むが、これに限定するものではない。ポリマー業界で一般的に知られた溶融混合法については、”Mixing and Compounding of Polymers”(I.Manas−Zloczower & Z.Tadmor編,Carl Hanser Verlag Publisher,1994,New York,N.Y.)を参照されたい。着色シート又はフィルムが望ましい場合には、顔料又は着色剤は、ジオールとジカルボン酸との反応の間にポリエステル混合物中に組み込むこともできるし、或いは予備成形ポリエステルと溶融ブレンドすることもできる。着色剤を組み込む好ましい方法は、着色剤がポリエステル中に共重合され且つ組み込まれてポリエステルの色合いを向上させるように反応基を有する熱安定性有機着色化合物を有する着色剤を用いるものである。例えば、青色及び赤色置換アントラキノン類を含む(これらに限定されない)反応性ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を有する染料のような着色剤をポリマー鎖中に共重合させることができる。染料を着色剤として使用する場合には、エステル交換又は直接エステル化反応後にポリエステル反応プロセスに添加することができる。
【0051】
本発明はまた、
(a)(i)テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸のうち1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも80モル%含む二酸残基;
(ii)1,4−シクロヘキサンジメタノールを、ジオール残基の総モルに基づき、10〜100モル%とエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレングリコールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を0〜90モル%含むジオール残基;並びに
(iii)3個又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組合せを有するモノマーの1種又はそれ以上の残基を、ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜1重量%(wt%)含む分岐モノマー残基
を含むランダムコポリマーである、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも30分及びインヘレント粘度が0.55〜0.75dL/gのポリエステル;
(b)カレンダーロールへのポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤
を含むポリエステル組成物をカレンダー加工することを含んでなる、フィルム又はシートの製造方法を含む。ナフタレンジカルボン酸の種々の異性体又は異性体混合物はいずれも使用できるが、1,4−、1,5−、2,6−及び2,7−異性体が好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体及びトランス異性体の混合物として存在できる。ジオール、改質用二酸、分岐モノマー、可塑剤及び難燃剤の更なる例は、本発明のポリエステル組成物の他の実施態様に関して既に前述した。ポリエステルが示すことができるI.V.値の他の例は、0.55〜0.70dL/g、0.55〜0.65dL/g及び0.60〜0.65dL/gである。
【0052】
ジオール残基は、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基10〜100モル%及びエチレングリコールの残基0〜90モル%を含むことができる。別の例において、ジオール残基は、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基20〜80モル%及びエチレングリコールの残基20〜80モル%を含むことができる。更に別の例においては、ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を20〜65モル%且つ二酸残基がテレフタル酸の残基を95〜100モル%含むことができる。更に、ポリエステルは、本発明のポリエステル組成物に関して前述した炭素数4〜40の1種又はそれ以上の改質用二酸の残基0〜20モル%を更に含むこともできる。好ましくは、改質用ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸又はスルホイソフタル酸のうち1種又はそれ以上が挙げられるが、これらに限定するものではない。ポリエステルは、好ましくはトリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸のうち1種又はそれ以上の残基を0.1〜0.7重量%含む分岐モノマーの残基を含む。
【0053】
好ましい添加剤は、ポリエステル組成物の総重量に基づき、0.1重量%〜10重量%の、1種又はそれ以上の脂肪酸アミド、有機酸の金属塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク又はアクリルコポリマーを含む。カレンダーロールへのポリエステルの粘着を防止する添加剤の別の例としては、エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、グリセロールモノステアレート又はグリセロールジステアレートの1種又はそれ以上が挙げられる。
【0054】
前述のように、ポリエステル組成物は、フィルムの対象用途の必要に応じてそれぞれに見合った可塑剤及び難燃剤を含むこともできる。好ましい可塑剤は、必要があれば、160℃又はそれ以下の温度においてポリエステルの5mil(0.127mm)厚のフィルムを溶解させて透明な溶液を生成することによって、ポリエステル中に溶解できる。別の実施態様において、好ましい可塑剤は、必要があれば、150℃又はそれ以下の温度においてポリエステルの5mil(0.127mm)厚のフィルムを溶解させて透明な溶液を生成することによって、ポリエステル中に溶解できる。より好ましい可塑剤は、1個又はそれ以上の芳香環を含み、より好ましくは、1個又はそれ以上の安息香酸エステル、フタル酸エステル、燐酸エステル又はイソフタル酸エステルを含み、それらは例えば表Iに示してある。可塑剤の例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ブチルベンジルフタレート及びテキサノールベンジルフタレートが挙げられるが、これらに限定するものではない。典型的には、可塑剤は、ポリエステル組成物の総重量に基づき、ポリエステル組成物の5〜50重量%を構成する。可塑剤レベルの他の例は、ポリエステル組成物の10〜40重量%、15〜40重量%及び15〜30重量%である。最も好ましい可塑剤はジエチレングリコールジベンゾエートである。
【0055】
難燃剤は、ポリエステル組成物の総重量に基づき、5重量%〜40重量%の濃度でポリエステル組成物に添加できる。難燃剤レベルの他の例は、7重量%〜35重量%、10重量%〜30重量%、及び10〜25重量%である。好ましくは、難燃剤は1種又はそれ以上の燐酸のモノエステル、ジエステル又はトリエステルを含む。燐含有難燃剤は、また、ポリエステル用の可塑剤の役割を果たすこともできる。別の例において、可塑剤はジエチレングルコールジベンゾエートを含み、難燃剤はレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を含んでなる。難燃性フィルム又はシートは典型的には、UL94燃焼試験においてV2又はそれ以上の等級を示す。更に、本発明の難燃性フィルム又はシートは典型的にはFederal Motor vehicle Safety Standard 302(典型的にはFMVSS 302と称される)において0の燃焼速度を示す。
【0056】
従来のカレンダー加工法及び装置を用いて、ポリエステル組成物のカレンダー加工が可能である。本発明の方法において、ポリエステル組成物は溶融、ペレット又は粉末の形態をなすことができ、これを100℃〜200℃の温度において少なくとも2つのカレンダーロールの間の圧縮ニップに通す。典型的には、ポリエステルは可塑剤、難燃剤、添加剤及び他の成分とブレンドする。混合成分はニーダー又は押出機中で可塑化する。熱、剪断作用及び圧力によって、乾燥粉末を溶融させて、均一な溶融材料を形成する。押出機は、溶融材料を連続法でカレンダーラインのカレンダー部の上部の第1加熱カレンダーロールと第2加熱カレンダーロールとの間に供給する。典型的には、3つのニップ又は間隙を形成するには4つのロールを用いる。例えば、ロールはL字形、逆L字形又はZ配置で配置できる。ロールは、種々のフィルム幅に対応するように寸法が変化する。ロールは別個の温度制御及び速度制御を有する。材料は、供給ニップと称する、第1の2つのロール間のニップを通って進む。この2つのロールは、ロールの幅全体に材料を広げるのを助けるために、それぞれ反対の方向に回転する。材料は第1ロールと2ロールの間、第2ロールと第3ロールの間、第3ロールと第4ロールの間などを曲がりくねって進む。ロール間の間隙は、材料が進むにつれてロールセット間で薄くなるように、ロールのそれぞれの間で厚さが減少する。従って、得られるフィルム又はシートは、加熱ロール間の圧縮ニップにポリエステル組成物を通すことによって形成される均一な厚さを有する。実際には、ポリエステル組成物は、ロールを隔てるニップ間で締め付けられる。カレンダーロール間の連続ニップはそれぞれ、最終フィルム又はシートゲージが得られるまでフィルム厚を減少させる。
【0057】
ロールに典型的な加工温度は一般に80℃〜220℃、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは130℃〜180℃の範囲である。加水分解によって不安定な一部のポリエステルに関しては、加水分解によるポリマーの分解を防ぐために、ポリエステル樹脂組成物の予備乾燥又は加工中における過剰の水分のガス抜きするのが望ましい。カレンダー部を通過後、材料は別の一連のロールを通って進み、そこで引き伸ばされ且つ徐々に冷却されて、フィルム又はシートを形成する。材料はまた、冷却前にエンボス加工又はアニールすることもできる。次いで、冷却された材料はマスターロール上に巻き付ける。カレンダー加工方法の概要は、Jim Butschli,Packaging World,p.26〜28,June 1997及びW.V.Titow,PVC Technology,4th Edition,803〜848頁(1984),Elsevier Publishing Co.に開示されている。
【0058】
従って、本発明は更に、
(a)(i)テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも90モル%含む二酸残基;
(ii)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール若しくはジエチレングリコールの1種若しくはそれ以上の残基を、ジオール残基の総モルに基づき、10〜100モル%とエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレングリコールから選ばれたジオールの1種若しくはそれ以上の残基を0〜90モル%含むジオール残基;並びに
(iii)トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン若しくはトリメシン酸の1種又はそれ以上の残基を、ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜0.7重量%(wt%)含む分岐モノマー残基
を含むランダムコポリマーである、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも30分及びインヘレント粘度が0.55〜0.70dL/gのポリエステル;並びに
(b)脂肪酸アミド、有機酸の金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク若しくはアクリルコポリマーの1種若しくはそれ以上を含む、カレンダーロールへのポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤、ポリエステル組成物の総重量に基づき、0.1重量%〜10重量%
を含んでなるカレンダー加工法によって製造されたフィルム又はシートを提供する。フィルム又はシートは、更に、種々の実施態様、種々の濃度範囲並びに本発明のポリエステル組成物及びカレンダー加工法に関して前述したジオール、改質用二酸、分岐ポリマー、可塑剤及び難燃剤の種々の組合せを包含することができる。本発明を更に、以下の実施例によって例証し、説明する。
【実施例】
【0059】
例1〜5:非可塑化ポリエステルのカレンダー加工
溶融状態からの半結晶化時間が>1000分である、31モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む分岐及び非分岐ペレット化PETGの5つのサンプルを、軸受け圧力、バンク温度及び回転抵抗を測定するための機器を搭載したDr.Collin二本ロール機上でカレンダー加工した。各サンプルに関するI.V.及び分岐モノマーの量を表IIIに示す。分岐モノマーとしてはトリメリット酸無水物を用いた。ペレットにモンタンワックス剥離剤0.75重量%を被覆し、それを加熱ロールに直接加え、メルトに加工した。加工ロールの整定値温度は145〜175℃であった。軸受け圧力(即ち、ロール間の間隙において衝突する際に、ロールを隔てるためにメルトが及ぼす圧力)、ロール抵抗(即ち、ロールを回転されるのに必要なトルク)及びバンク温度(間隙に入る前に混じり合う際のメルトの温度の目安)によって示されるカレンダーライン速度に対するI.V.及び分岐モノマーのカレンダーライン速度の影響を測定するために、5〜20rpmのロール速度で各サンプルをレンダー加工した。結果を表IV〜表VIIに示す。
【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
表IVのデータによって示されるように、分岐モノマーの存在はより速いカレンダーロール速度においてロール抵抗を低下させた。より低いI.V.もまた、ロール抵抗を低下させた。しかし、低I.V.及び分岐モノマーの組合せは、最も低いロール抵抗をもたらした(例5)。例3及び4は、他のサンプルと同じ温度ではカレンダー加工しなかった。例3の溶融粘度は170℃で加工するには高すぎ、175℃のより高い温度を必要とした。これに対して、例4の溶融強度は170℃では不充分であり、160℃のより低い温度における加工を必要とした。
【0063】
以下の表Vのデータは、例5のよって示される比較的低いI.V.及び分岐モノマーの組合せが各ロール速度においてカレンダーロール間の軸受け圧力を低下させたことを示す。
【0064】
【表8】

【0065】
カレンダーミル上で加工されているポリマーは、加工ロールの上に材料のバンクを形成するであろう。従って、このバンクの温度は、ポリエステルの剪断加熱及び剪断減粘に関連する。5rpmのより遅い加工速度においては、高温金属ロールからの通常の熱伝達プロセスが、材料を加熱する。ロール速度を増加させると、材料の内部粘度(internal viscosity)及び剪断減粘特性はバンク温度に強い影響を与える。表VIのデータは、160℃で得た例4を除いて、170℃のロール温度で得た。例5(IV=0.65,分岐0.20%)は、ロール速度を増加させた際に最も低い温度増加を示し、従ってこの材料が剪断減粘性を増加させたことを示した。この増加した剪断減粘性のため、例5の組成物はより大きい処理量及びより低い加工温度で加工できるであろう。例3に関しては5RPMのロール速度におけるデータを得なかった。これは、ポリエステル組成物が均一なメルトを形成しなかったためである。
【0066】
【表9】

【0067】
表VIIは、カレンダードフィルム内の溶融破壊の発生をロール速度の関数として示す。溶融破壊は、シート中の粗い、濁った又は白い外観によって視覚的に確認した。表VIIにおいて、「MF」は明確な又はひどい溶融破壊を示し、「わずか」は、若干の濁りが観察されたことを示す。「透明」と表示された実験に関しては、溶融破壊は観察されなかった。表VIIのデータからわかるように、より低いI.V.(例4)又はより低いI.V.と分岐との組合せを有するポリエステルのみが、比較的高いロール速度において溶融破壊を示さなかった。
【0068】
【表10】

【0069】
例6〜9:可塑化ポリエステルのカレンダー加工
例1及び例3〜5のポリエステルを可塑化して、可撓性ポリエステル組成物を形成した。PETGサンプルを、Tsunami(登録商標)Copolyester GS−2中に予め配合されたモンタンワックスの混合物約15重量%を含む剥離剤コンセントレート(Eastman Chemical Companyから入手可能なTsunami(登録商標)ADD2)と溶融ブレンドした。最終組成物は剥離剤0.9重量%及びジエチレングリコールジベンゾエート(DEGDB)可塑剤(Velsicol Chemical Corporationから入手)15重量%を含んでいた。カレンダー加工前の各サンプルの組成を表VIIIに示す。表VIII中のI.V.データは、添加剤及び可塑剤の溶融ブレンド前のPETGポリエステルについて測定した。溶融ブレンド及びカレンダー加工前に、ポリエステルは乾燥させなかった。ポリエステル組成物を、Haake−Buchler Rheocord(登録商標)System 40でボウル装入材料375g、ボウル温度130℃及びブレード速度100rpmを用いて製造した。各サンプルに関して、LabView(登録商標)コンピューターシステムを用いて、トルク及び温度を時間の関数として記録した。混合ボウルのトルクがそのピーク値に達した後、溶融温度が150℃に達するまで混合を続けさせてから、バッチを終了させ、混合ボウルの内容物を除去した。
【0070】
【表11】

【0071】
カレンダー加工の結果を表IX〜表XIに示す。非可塑化サンプルに関して観察された同じ傾向の多くが、可塑化材料についても当てはまる。しかし、加工に対する可塑剤の効果のため、加工挙動の差は若干小さかった。可塑化組成物はより低温でカレンダー加工できた。より低い加工温度でも、より低いI.V.を有する分岐組成物(例9)は、より高いI.V.の非分岐材料に比べて、より低い軸受け圧力及びより低い回転力を示した。可塑化組成物に関するバンク温度についてのデータを表XIに示す;バンク温度の有意差は観察されなかった。表IX及び表X中の例9のデータは、不良な流れ特性を生じた低い加工温度のため、若干一貫性がなかった。例7の組成物は、ローラーの回転速度が20rpmに増加されるまではよく流れなかった。より低いI.V.の分岐材料(例9)は、同じ加工温度でより低い回転抵抗及び軸受け圧力を示した。例9が示したより低い回転抵抗及び軸受け圧力が、この組成物をより速く且つ/又は低い温度でのカレンダー加工を可能にすることが予想される。
【0072】
【表12】

【0073】
【表13】

【0074】
【表14】

【0075】
例10〜13:
I.V.値が0.60〜0.74dL/g及び溶融状態からの半結晶化時間が>1000分の、1,4−シクロヘキサンジメタノール50モル%及びトリメリット酸無水物0.2重量%を含む分岐PETGの4つのサンプルに、モンタンワックス剥離剤0.75重量%を被覆し、例1〜5に記載した手法を用いて20RPMのロール速度でカレンダー加工した。カレンダー加工の結果を表XIIに示す。ロール抵抗、軸受け圧力及びバンク温度によって示された最良の加工特性は、I.V.が0.65dL/gの組成物(例12)から得られたが、例11の組成物は実験の条件下で満足のいく結果を示した。例13は、実験カレンダー加工条件下では加工できなかった。
【0076】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも5分であり且つインヘレント粘度が0.55〜0.75デシリッター/グラム(dL/g)のランダムコポリマーである、二酸残基、ジオール残基及び分岐モノマー残基を含むポリエステル;並びに
(b)カレンダーロールへの前記ポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤
を含んでなるカレンダー加工用ポリエステル組成物。
【請求項2】
(i)前記二酸残基が、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも80モル%含み;そして(ii)前記ジオール残基が、1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を、ジオール残基の総モルに基づき、10〜100モル%及びエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA又はポリアルキレングリコールの1種又はそれ以上の残基を0〜90モル%含む請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
前記ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基10〜100モル%及びエチレングリコールの残基0〜90モル%を含む請求項2に記載のポリエステル組成物。
【請求項4】
前記二酸残基が炭素数4〜40の改質用二酸の1種又はそれ以上の残基0〜20モル%を更に含む請求項3に記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
前記改質用二酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸又はスルホイソフタル酸の1種又はそれ以上を含む請求項4に記載のポリエステル組成物。
【請求項6】
前記分岐モノマー残基が、3個又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組合せを有するモノマーの1種又はそれ以上の残基を、前記ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜1重量%(wt%)含む請求項5に記載のポリエステル組成物。
【請求項7】
前記分岐モノマー残基が、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸の1種又はそれ以上の残基を前記ポリエステルの総重量に基づき0.1〜0.7重量%含んでなる請求項6に記載のポリエステル組成物。
【請求項8】
前記添加剤が、脂肪酸アミド、有機酸の金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク若しくはアクリルコポリマーの1種又はそれ以上を、前記ポリエステル組成物の総重量に基づき、0.1〜10重量%含む請求項7に記載のポリエステル組成物。
【請求項9】
前記添加剤が、エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、グリセロールモノステアレート又はグリセロールジステアレートの1種又はそれ以上を含む請求項8に記載のポリエステル組成物。
【請求項10】
前記ポリエステルの半結晶化時間が少なくとも12分である請求項9に記載のポリエステル組成物。
【請求項11】
前記半結晶化時間が少なくとも30分である請求項10に記載のポリエステル組成物。
【請求項12】
前記ポリエステルの、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも30分及びインヘレント粘度が0.55〜0.70dL/gであり;
前記二酸残基が、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも90モル%含み;
前記ジオール残基が、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール又はジエチレングリコールの1種又はそれ以上の残基を、ジオール残基の総モルに基づき、20〜70モル%、そしてエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA又はポリアルキレングリコールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を、30〜80モル%含み;
前記分岐モノマー残基が、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸の1種又はそれ以上の残基を、前記ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜0.7重量%含み;そして
前記ポリエステル組成物が、カレンダーロールへの前記ポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤を、前記ポリエステルの総重量に基づき、0.1重量%〜10重量%含み、前記添加剤が、脂肪酸アミド、有機酸の金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク若しくはアクリルコポリマーの1種又はそれ以上を含む
請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項13】
前記添加剤が、(i)炭素数18より多い脂肪酸又は脂肪酸塩及び(ii)炭素数18より多い脂肪酸残基と炭素数2〜28のアルコール残基とを共に含むエステルワックスを含み、前記脂肪酸又は前記脂肪酸塩の、前記エステルワックスに対する比が1:1又はそれ以上である請求項12に記載のポリエステル組成物。
【請求項14】
前記脂肪酸がモンタン酸を含み:前記脂肪酸塩がモンタン酸のナトリウム塩、モンタン酸のカルシウム塩又はモンタン酸のリチウム塩の1種又はそれ以上を含み;そして前記エステルワックスの脂肪酸残基がモンタン酸を含む請求項13に記載のポリエステル組成物。
【請求項15】
1個又はそれ以上の芳香環を含む可塑剤を更に含み、前記可塑剤が前記ポリエステルの5mil(0.127mm)厚のフィルムを160℃又はそれ以下の温度で溶解して透明な溶液を生成する請求項12に記載のポリエステル組成物。
【請求項16】
前記可塑剤がジエチレングリコールジベンゾエートを含む請求項15に記載のポリエステル組成物。
【請求項17】
前記ポリエステル組成物の総重量の5〜40重量%の、燐酸の1種又はそれ以上のモノエステル、ジエステル又はトリエステルを含む難燃剤を更に含み、前記難燃剤が前記ポリエステルと混和性である請求項12に記載のポリエステル組成物。
【請求項18】
前記難燃剤がレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を含む請求項17に記載のポリエステル組成物。
【請求項19】
(a)(i)テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも80モル%含む二酸残基;
(ii)1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を、ジオール残基の総モルに基づき、10〜100モル%、そしてエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びポリアルキレングリコールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を0〜90モル%含むジオール残基;並びに
(iii)3個又はそれ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組合せを有する1種又はそれ以上のモノマーの残基を、ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜1重量%(wt%)含む分岐モノマー残基
を含むランダムコポリマーである、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも30分及びインヘレント粘度が0.55〜0.75dL/gのポリエステル;並びに
(b)カレンダーロールへの前記ポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤
を含んでなるポリエステル組成物をカレンダー加工することを含んでなるフィルム又はシートの製造方法。
【請求項20】
前記分岐モノマー残基が、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸の1種又はそれ以上の残基を、前記ポリエステルの総重量に基づき、0.1〜0.7重量%含み、且つ前記ポリエステル組成物が0.55〜0.7dL/gのインヘレント粘度を有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基10〜100モル%及びエチレングリコールの残基0〜90モル%を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基20〜80モル%及びエチレングリコールの残基20〜80モル%を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記二酸残基がテレフタル酸の残基95〜100モル%を含み、そして前記ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基20〜65モル%を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記二酸残基が炭素数4〜40の改質用二酸の1種又はそれ以上の残基0〜20モル%を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記改質用二酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸又はスルホイソフタル酸の1種又はそれ以上を含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記添加剤が、脂肪酸アミド、有機酸の金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク若しくはアクリルコポリマーの1種又はそれ以上を、前記ポリエステル組成物の総重量に基づき、0.1〜10重量%含む請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記添加剤が、エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、グリセロールモノステアレート又はグリセロールジステアレートの1種又はそれ以上を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1個又はそれ以上の芳香環を含む可塑剤を更に含み、前記可塑剤が前記ポリエステルの5mil(0.127mm)厚のフィルムを160℃又はそれ以下の温度で溶解して透明な溶液を生成する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記可塑剤がジエチレングリコールジベンゾエートを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリエステル組成物の総重量に基づき、5〜40重量%の、燐酸の1種又はそれ以上のモノエステル、ジエステル又はトリエステルを含む難燃剤を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記難燃剤がレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(a)(i)テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はイソフタル酸の1種又はそれ以上の残基を、二酸残基の総モルに基づき、少なくとも90モル%含む二酸残基;
(ii)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール若しくはジエチレングリコールのうち1種若しくはそれ以上の残基を、ジオール残基の総モルに基づき、10〜100モル%、そしてエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及ポリアルキレングリコールから選ばれたジオールの1種若しくはそれ以上の残基を0〜90モル%含むジオール残基;並びに
(iii)トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン若しくはトリメシン酸の1種又はそれ以上の残基を、前記ポリエステルの総重量に基づき、0.05〜0.7重量%(wt%)含む分岐モノマー残基
を含んでなるランダムコポリマーである、溶融状態からの半結晶化時間が少なくとも30分及びインヘレント粘度が0.55〜0.70dL/gのポリエステル;並びに
(b)前記ポリエステル組成物の総重量に基づき0.1重量%〜10重量%の、脂肪酸アミド、有機酸の金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク若しくはアクリルコポリマーの1種若しくはそれ以上を含む、カレンダーロールへの前記ポリエステルの粘着を防止するのに有効な添加剤、
を含んでなるカレンダー加工によって製造されたフィルム又はシート。
【請求項33】
請求項21、22又は25〜31のいずれか1項の方法によって製造されたフィルム又はシート。

【公表番号】特表2007−512421(P2007−512421A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541327(P2006−541327)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/038419
【国際公開番号】WO2005/054354
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】