説明

カレンダー製膜用ポリウレタン系樹脂組成物及びポリウレタン系装飾用フィルム

【課題】曲面に貼り付けた時に長期間外観変化がなく意匠性を高める部材等に用いられ、耐ガソリン性、柔軟性、生産加工性に優れ、かつ長期間屋外で使用しても成分のブリードアウトによる外観不良が発生しない着色装飾フィルムに適したカレンダー製膜用樹脂組成物及び該樹脂組成物を製膜して得られる装飾用フィルムを提供すること。
【解決手段】ウレタン系樹脂100重量部に対して、染料を含み、23℃引張り弾性率が200〜700MPaのカレンダー製膜用ウレタン系着色樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色フィルムを製膜するためのポリウレタン系樹脂組成物および該組成物から製膜された装飾用フィルムに関するものであり、特に曲面に貼り付けた時に長期間外観変化がなく意匠性を高める部材等に用いられる着色装飾フィルムに適したカレンダー製膜用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
意匠性が求められる部材において、塗料を塗布する方法に代わって、部材表面に着色装飾用フィルムを被着する方法が広く行なわれている。装飾用フィルムは、部材表面を均一にムラなく容易に被覆することが可能であり、貼り付け作業に際しては、塗料の場合に問題となるような溶剤の揮散もないため、さまざまな分野において使用されている。
【0003】
これら装飾用フィルムとしては、一般に軟質フィルムと接着剤とを積層した構造のテープ状物が用いられるが、該軟質フィルムの基材として、従来は塩化ビニル系樹脂が広く用いられてきた。
【0004】
しかしながら、使用期間を過ぎた装飾用フィルムは貼り替えにより廃棄される場合が多く、廃棄物としての処理が大きな問題となっている。特に基材に塩化ビニル系樹脂を用いた装飾用フィルムは、廃棄する際、焼却すると塩素系ガスが発生するためそのままでは焼却することができず、焼却炉の塩素ガス除去用の装置を設ける必要がある。また、処理に際して、有害塩素含有有機化合物が副生することも社会的な問題となっている。
【0005】
そこで廃棄時に燃焼処理しても有害ガスを発生しない樹脂を使用した装飾用フィルム、例えばポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなる装飾用フィルム(特開2004−307532号公報;特許文献1)、(特開2003−225977号公報;特許文献2)、アクリル樹脂からなる装飾用フィルム(特開2004−291517号公報;特許文献3)、ポリウレタン樹脂からなる装飾用フィルム(特開平03−45672号公報;特許文献4)、(特開2005−97632号公報;特許文献5)、(特開2003−326629号公報等;特許文献6)等の非塩ビ系樹脂組成物から製膜された装飾用フィルムが各種提案されている。
【0006】
一般に樹脂をフィルム化する方法は種々知られているが、何本かのロールの間に溶融した樹脂を通してフィルム化するカレンダー製膜方法は、溶剤の揮散もなく大量生産にも適することから、広く行われているところである。
【0007】
しかしながら、フィルム用非塩ビ系樹脂は、フィルム化した成形品の外観、強度等の基本特性や、柔軟性は満足するものの、加工温度範囲が狭い等、カレンダー製膜における生産加工性が必ずしも十分ではなく、厚さが均一で表面状態の良いフィルムを安定して製膜することが困難なものが多かった。
【0008】
そのために、従来の非塩ビ系樹脂フィルムは、耐候性、耐ガソリン性、柔軟性、および生産加工性を確保するために、数種類の樹脂層を積層したものが多かった。たとえば、特許文献1、特許文献2に記載されたポリプロピレン系樹脂フィルムは耐ガソリン性を満足させるために表面にポリウレタン系樹脂の層を設けた積層フィルムとなっている。
【0009】
特許文献3等のアクリル系樹脂装飾用フィルムは脆くて柔軟性に欠け、また耐ガソリン性も不十分であり、特許文献4、特許文献5,特許文献6等は記載されたポリウレタン系樹脂組成物により、耐ガソリン性、柔軟性を向上させている。
【0010】
しかしながら、従来のポリウレタン系樹脂組成物は製造方法が煩雑であり、生産性に劣るものであり、本発明者らは特許文献7(特開2006−328272)において、ポリウレタン系樹脂と他の樹脂とを組み合わせた混合樹脂組成物から製膜された装飾フィルムを提案したが、該フィルムにおいて、過酷な条件下で長期間使用した場合、着色成分であるカーボンブラックや、顔料成分等の一部がブリードアウトし、装飾フィルムとしての外観を損なうという問題が発生した。
【特許文献1】特開2004−307532号公報
【特許文献2】特開2003−225977号公報
【特許文献3】特開2004−291517号公報
【特許文献4】特開平03−45672号公報
【特許文献5】特開2005−97632号公報
【特許文献6】特開2003−326629号公報
【特許文献7】特開2002−328272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、耐ガソリン性、柔軟性、生産加工性に優れ、かつ長期間屋外で使用しても成分のブリードアウトによる外観不良が発生しないポリウレタン系樹脂を主成分とするカレンダー製膜用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、研究を続けた結果ポリウレタン系樹脂と染料の組み合わせた高弾性率樹脂組成物、すなわち、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して染料0.2〜2重量部を含む弾性率200〜700MPaの着色樹脂組成物を見出した。
【0013】
より詳しくは、染料としてクロム錯塩系黒色染料が好適であり、さらにポリウレタン系樹脂が、ソフトセグメントとなるポリオール成分とハードセグメントとなるイソシアネート成分の比が0.5/1.0〜2.0/1.0(重量比)であるポリウレタン系着色樹脂組成物が本課題を解決することを見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物から製膜された装飾用フィルムは、廃棄処理に際して、有害塩素化合物が副生することがない非塩ビ系の樹脂組成物であって、カレンダー製膜性に優れ、フィルム化した成形物は強度、耐ガソリン性、柔軟性を満足し、かつ、過酷な長期間の屋外使用によっても外観不良が発生しない装飾用フィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のカレンダー製膜用樹脂組成物は、ポリオール成分をソフトセグメントとし、 イソシアネート成分をハードセグメントとする構造のポリウレタン系樹脂である。
【0016】
ソフトセグメントを形成するポリオール成分は、ポリウレタンの製造に際して従来から一般に使用されているモノマー状のジオール又はポリマー状のポリオールが同様に使用可能であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水添ビスフェノールA等のモノマージオール;ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ブタジエンポリオール、フェノーリックポリオール、エポキシポリオール等のポリマーポリオール等が挙げられ、該ポリマーポリオールの具体例としては、例えば開始剤として水、プロピレングリコール、エチレングリコール、水酸化カリウム、またはアルキレンオキサイドを用いて製造されるポリエーテルジオール、1,6−ヘキサンジオール、ホスゲン、エチレンカーボネ−ト、を用いて製造されるポリカーボネートジオール、アジピン酸とエチレングリコールを脱水縮合して製造されるポリエチレンアジペートを挙げることができる。
【0017】
また、かかる2官能性アルコールに加えて、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等の多官能性アルコールを使用することもできる。さらに、エチレン性不飽和結合を有するポリオール、例えば、エチレン性不飽和結合を有するポリカルボン酸、例えばマレイン酸、イタコン酸等をカルボン酸成分の一部として用いて合成されたポリエステルジオールを用いて、エチレン性不飽和結合を含有するポリウレタン樹脂をつくるようにしてもよい。
【0018】
中でも、本発明において好適に使用し得るポリオール成分は、耐ガソリン性、柔軟性、耐水性、耐薬品性、耐久性に優れる、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールであり、特にポリエステルポリオールが好適に使用される。
【0019】
一方、ハードセグメントとなるイソシアネート成分としても、ポリウレタンの製造において一般に使用されている脂肪族系、脂環式系、芳香族系、又はこれらの混合系のイソシアネート化合物を使用することができる。 具体的には、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定させるものではない。
【0020】
また、以上のイソシアネートの二量体(ウレチジオン)、三量体(イソシアヌレート)、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、ウレタン変性体等の変性体またはそのブロックイソシアネート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いることができ又は2種以上併用することもできる。
【0021】
中でも、本発明において好適に使用し得るイソシアネート成分は、耐ガソリン性、耐候性、耐熱性に優れる1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートであり、特にポリウレタン製造時の反応性がよい4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好適に使用される。
【0022】
以上述べたイソシアネート成分とポリオール成分からなるポリウレタン樹脂の製造はそれ自体既知の方法で行うことができる。
【0023】
ポリウレタン系樹脂のソフトセグメント(ポリオール成分)とハードセグメント(イソシアネート成分)は樹脂の弾性率や溶融粘度特性を考慮して選択することが望ましい。
【0024】
弾性率を制御し、溶融粘度特性を一定の範囲内に収めるために、ソフトセグメントとハードセグメントとを一定の重量比範囲にすることが望ましく、ソフトセグメント/ハードセグメント=0.5/1.0〜2.0/1.0(重量比)、好ましくはソフトセグメント/ハードセグメント=0.8/1.0〜1.9/1.0(重量比) とするのがよい。
ソフトセグメントが多すぎると弾性率が低く、溶融粘度も下がるため製膜加工性に劣り、少なすぎても熱溶融時の樹脂粘度のばらつきが発生する等、製膜加工性が劣るため好ましくない。
【0025】
さらに、本発明の配合樹脂には意匠性を高めるため着色剤として染料が含有される。
【0026】
着色樹脂層に対する染料の添加比率は、所望の色彩、着色剤の種類によって好適な範囲を選択すればよいが、一般に0.2〜2重量%の染料を含有するのがよい。染料の添加量が0.2重量%未満では上記着色樹脂層の着色性に劣るため好ましくなく、2重量%を超えると染料の染み出しによる外観不良、ゴミ等の付着、ブロッキング、染料の転着等々、不具合が発生しやすくなるため好ましくない。
【0027】
使用可能な染料としては、屋外においても長期間使用可能な耐候性のある染料が好ましく、具体的には、直接染料、建染染料、硫化染料、ナフトール染料、反応染料、酸性染料、酸性媒染染料、金属錯塩酸性染料、分散染料、カチオン染料等が挙げられ、耐候性を満足する範囲で、これらの染料を単体で使用しても2種類以上の染料を用いて所望の色彩に調色して使用してもよい。
【0028】
中でもポリウレタン樹脂への着色性、耐候性の点から、金属錯塩酸性染料のクロム錯塩系染料が特に好ましい。
【0029】
さらに、前記着色樹脂層には、装飾用フィルムの耐候性等を改善するために、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を添加することが好ましい。
【0030】
該紫外線吸収剤は、紫外線吸収能や使用するポリウレタン樹脂との相容性等を考慮して広範囲の種類の中から1種類または数種類組み合わせて適宜選択使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば下記の如きものが挙げられる。
【0031】
ハイドロキノン系;ハイドロキノン、ハイドロキノンジサリチレ−ト等
サリチル酸系;フエニルサリチレ−ト、パラオクチルフエニルサリチレ−ト等
【0032】
ベンゾフエノン系;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2´−カルボキシベンゾフエノン、2,4−ヒドロキシベンゾフエノン、2,2´−ヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフエノン、2,2´−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフエノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフエノン、2,2´−ヒドロキシ−4,4´−ジメトキシ−5−ナトリウムスルホベンゾフエノン、4−ドテシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフエノン、2−ハイドロキシ−5−クロルベンゾフエノン等
【0033】
ベンゾトリアゾ−ル系;2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5−カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−第3ブチルフエニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−アミルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)−5−メトキシベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−メチル−4´−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ステアリルオキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5−カルボン酸フエニル)ベンゾトリアゾ−ルエチルエステル、2−(2´−ヒドロキシ−3´−メチル−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メトキシフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−フエニルフエニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−シクロヘキシルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−4´,5´−ジメチルフエニル)−5−カルボン酸ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジクロルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−4´,5´−ジクロルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−フエニルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−4´−オクトキシフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メトキシフエニル)−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5−カルボン酸エステルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−アセトキシ−5´−メチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル等
【0034】
これらの紫外線吸収剤のうち、ベンゾフエノン系及びベンゾトリアゾール系のものが耐候性改善には好適であり、ベンゾフエノン系では、2,3´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフエノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン及び2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフエノン:ベンゾトリアゾ−ル系では2−(2´−ハイドロキシ−5´−メチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、
【0035】
2−(2´−ヒドロキシ−3´−メチル−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´ジ第3ブチルフエニル)−5−クロル−ベンゾトリアゾール及び2−(2´−ヒドロキシ−5´−フエニルフエニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジターシャリブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2− (2´−ヒドロキシ−5´−オクトキシフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、等が特に有効である。
【0036】
紫外線吸収剤は0.05〜3.0重量%添加することが好ましい。紫外線吸収剤をこの範囲内で添加すれば、紫外線(380nm)のカット率は90%以上であり、屋外で暴露した場合でも1〜2年(サンシャインウエザオメーター1,000時間相当)後においても90%以上のカット率を維持する事ができる。この範囲より多い場合はフィルムの白化、フィルム表面への噴き出し等が起り外観に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。
【0037】
光安定剤としてはビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系光安定剤等が使用できる。
【0038】
本発明の配合樹脂は、溶剤を使用せず、特に大量に連続製膜可能で生産性・環境汚染性に優れるカレンダー製膜法において加工しやすく、かつ、得られるシートは単層であり、自動車用装飾用フィルムとして必要とされる外観、弾性率、寸法安定性、耐ガソリン性、耐候性等、十分な必要特性を有していることを特徴とする。
【0039】
また、前記配合樹脂組成物には、必要に応じて配合樹脂をフィルム化する際の加工性改良、特にカレンダー加工時の成形性改良を目的として、長鎖脂肪酸エステルやグリセリンエステル等を主成分とする滑剤、炭酸カルシウム等の加工助剤、熱安定剤等の添加剤も添加することができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、カレンダー製膜加工において加工温度範囲が広く、安価でかつ大量にフィルムを製造することができるものである。 該フィルムは、柔軟で耐候性がよいことから、特に幅狭の曲面に貼りつける用途に適しているものであって、さらに、フィルム廃棄の際にも有害な塩素化合物を発生することはない。
【実施例】
【0041】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における評価方法、ならびに測定方法は下記のとおりである。
【0042】
(1)カレンダー加工適正
加工温度幅
試験装置として、ミキシングロール(日本ロール製造株式会社製 ロールサイズφ200mm×L500mm)を用い、ロール回転速度が14rpm/11rpm、ロール間隙は出来上がったフィルム厚みが100μmになるように設定し、樹脂組成物をロールに巻きつけながら溶融混練し、5分後に練り上ったシートをサンプリングした。サンプリングの際に、溶融樹脂がロールに付着して剥離不能となった温度をカレンダー加工の上限温度、シート表面が滑らかな鏡面状態とならず、面状態が不良となった温度をカレンダー加工の下限温度とした。このカレンダー加工の上限温度と下限温度の幅を△Tとし、この△Tが5℃以上あれば、カレンダー加工に適すると判断した。
【0043】
(2)フィルム外観
出来上がったフィルムの面状態を目視で評価した。
○:シート表面が滑らかで鏡面状態
△:シート表面にごく一部にフローマークが見られる
×:シート表面全体にフローマークが見られる
【0044】
(3)フィルムの弾性率の測定
試料を一号ダンベル(10mm巾)で10mm幅のテープ状にカットし、23℃雰囲気下で引張試験機を用い、つかみ間隔50mm、引張速度200mm/minで引っ張り試験を行い、弾性率を求めた。
なお、弾性率の適性範囲は、200〜700MPaである。
【0045】
(4)寸法安定性試験
10cm角に調製されたフィルム試料を、80℃の乾燥機中に剥離紙を剥がした状態で0.5時間放置した後に取り出し、収縮率を測定した。
○:0.5%以下
×:0.5%以上
【0046】
(5)耐ガソリン性試験
試験片を室温にてJIS一号ガソリンに30分に浸せきさせた後に取り出し、外観を目視で評価した。
○:試料に外観変化が見られない。
△:試料にわずかに外観変化が見られる。
×:試料に明らかな外観異常が発生する。
【0047】
(6)耐候性試験
試験片をサンシャインウエザオメーター(スガ試験機株式会社製、ブラックパネル温度63℃)で3,000時間照射した後にフィルム表面のグロスを測定し、試験前のグロスからの変化率を算出した。
さらに、フィルムの耐褪色性を目視で評価した。
なお、 耐褪色性の評価は以下の基準による
○:試料に褪色が見られない。
△:試料にわずかに褪色が見られる。
×:試料に明らかな褪色が見られる。
【0048】
製造例1
1Lのフラスコにポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製 商品名:PCDL T5651) 150gとジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製 商品名:ミリオネートMT) 70g、および溶媒としてDMFを200g加えて、窒素気流下で攪拌し、混合溶液を得た。
次に、該混合溶液をオイルバスを用いて80℃まで昇温した後、重合触媒としてジブチルチンラウレート(DBTL)を0.25g加えて1時間反応させた。
その後、1,4−ブタンジオール(三菱化学(株)製 商品名:1,4−BG) 14gを加えて、さらに2時間反応させた。
最後に室温まで冷却した後、得られたウレタン樹脂溶液を取り出し、これをn−ヘキサンで沈殿精製して沈殿物を乾燥し、ソフトセグメント/ハードセグメント=1.8/1.0のウレタン樹脂の塊を得た。
【0049】
製造例2〜4
ソフトセグメントとハードセグメントの比率を変えた以外は、製造例1と同様にして表1に示すウレタン樹脂を作製した。
【0050】
実施例1
製造例1で得たウレタン樹脂の塊を冷凍粉砕して粒状のウレタン樹脂とし、以下の比率で配合した混合物を次に示す方法により厚さ約100μmのフィルム状試料を作製した。
配合1
ウレタン樹脂 100重量部
紫外線吸収剤 0.3重量部
酸化防止剤 0.4重量部
光安定剤 0.3重量部
ワックス 0.5重量部
【0051】
フィルム状試料の作製
フィルム状試料は、以下に述べるようなカレンダー製膜条件により製膜したフィルムの片面に粘着剤層を設けたものを使用した。
【0052】
カレンダー製膜条件
No1ロール温度=202℃ No2ロール温度=202℃
No3ロール温度=198℃ No4ロール温度=198℃
No5ロール温度=196℃ No6ロール温度=193℃
【0053】
粘着剤層の形成
アクリル系粘着剤(日本カーバイド工業株式会社製 KP−2279)100重量部にイソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン製 コロネートL)1.5重量部を混合、攪拌したものを、剥離紙(リンテック株式会社製 E−KB)にドライ厚み35μmになるようにコーティング、乾燥し、この粘着剤面をフィルムの片面に貼り合わせた。
【0054】
実施例2〜実施例6
使用するウレタン樹脂、染料、および各種配合を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムは表2で示すとおり、フィルム外観、寸法安定性、耐ガソリン性、耐候性に優れたものであり、弾性率も適性範囲であった。
【0055】
比較例1〜4
実施例1において、使用するウレタン樹脂、染料等を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムは表2に示すとおりのものであり、実用的に不適切なものであった。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン系樹脂100重量部に対して、染料0.2〜2重量部を含み、23℃引張り弾性率が200〜700MPaのカレンダー成膜用ウレタン系着色樹脂組成物。
【請求項2】
染料がクロム錯塩系黒色染料である請求項1に記載のウレタン系着色樹脂組成物。
【請求項3】
ウレタン系樹脂が、アルキレンジオールをソフトセグメントとし、アルキレンジイソシアネートをハードセグメントとする構造のポリカーボネート系ウレタン系樹脂であって、ソフトセグメント/ハードセグメント=0.5/1.0〜2.0/1.0(重量比)である請求項1または請求項2いずれかに記載のウレタン系着色樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3いずれかに記載のウレタン系着色樹脂組成物をカレンダー法によって製膜して得られるウレタン系装飾用フィルム。

【公開番号】特開2009−108244(P2009−108244A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283603(P2007−283603)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】