説明

カロテノイド色素の退色防止方法及びその容器体

【課題】
テクスチャ、フレーバー変化、刺激性増大を生じさる原因である安定化剤等を添加することなく、カロテノイド色素の光退色を抑制できる方法、及びその退色抑制方法を利用した容器体並びにその容器体を用いた飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品の保存方法の提供を目的とする。
【解決手段】
波長535〜695nm領域全体のスペクトル平均透過率が0.01〜45.0%の容器体にカロテノイド色素を保存することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテノイド色素の光退色を抑制する方法、及びその退色抑制方法を利用した容器体、並びにその容器体を用いた飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品等の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイド色素は、動植物界に広く分布する黄色から赤色の色素であり、ニンジン、トマト、柑橘類、鮭、エビ、カニ、卵等、多くの食材に含有している。
また、種々の動植物から抽出されたカロテノイド色素は、合成品も含め、安全性も高いために、粘稠液体、ペーストもしくは粉末の形態で、種々の食品、いわゆる健康食品、化粧品、医薬品等の着色剤として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、カロテノイド色素は、その分子中に長い共役系を有するために、酸素や熱等に対する安定性、特に光に対する安定性が低いという欠点がある。
そのためカロテノイド色素を含有する着色剤は、特に光の影響により経時的に退色を起こし易いという問題がある。
ひとたび退色した着色剤は、種々の食品、いわゆる健康食品、化粧品、医薬品等の商品価値を著しく低下させる。
【0004】
カロテノイドは、溶媒や包接状態によって異なるが、ほぼ紫外線領域の波長250−300nm及び可視光域の420−480nmに極大吸収波長を有しており、これらの波長により共役二重結合部分が破壊されて退色するとされている(非特許文献1)。
カロテノイドのうちキサントフィルは、水溶媒系ではエステル体よりフリー体の方が安定であると言われている(非特許文献2)。
食品、飲料分野では光による劣化である過酸化度低減や合成着色料退色予防として容器の材質、紫外線吸収剤の利用などが報告されている(非特許文献3)。
【0005】
カロテノイド色素の退色防止としては、ヒマワリの種子又はその搾油粕を水もしくは含水アルコールで抽出して得られる有効成分を含有する退色防止剤(特許文献1)、可溶性卵殻膜と水溶性抗酸化剤とを有効成分含有する退色防止剤(特許文献2)、フェニルプロパノイド配糖体を有効成分として含有する退色防止剤(特許文献3)、370〜500nmの範囲の波長の光線を遮断する薬剤を添加することによってカロテノイドの退色を阻害すること(特許文献4)など、目的とする色素に抗酸化剤等の添加物を混合して光に対する退色を防止する方法が開示されている。
【0006】
しかし、カロテノイドの他に安定化剤を添加すると、これら混合物は種々の飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品等に使用した際に、テクスチャ、フレーバー変化、刺激性増大などの副作用を避けることができず、これら抗酸化剤等を配合することなく、色素を安定化させる方法が望まれている。
【0007】
前述のとおり、極大吸収波長付近の波長を抑制することによって、カロテノイド色素の退色を抑制することは知られてはいたが、カロテノイド色素及びその含有組成物において、極大吸収波長付近以外の波長領域の影響を調査した報告はない。
【0008】
【特許文献1】日本国特開平4−110391号公報
【特許文献2】日本国特開平11−215968号公報
【特許文献3】日本国特開2002−173608号公報
【特許文献4】日本国特開2005−002112号公報
【非特許文献1】天然色素に関する研究、愛知県食品工業試験所年報、41、1(1973)
【非特許文献2】岡山大学学位論文要旨集、岡山大学、2005、(第45号)学位番号 甲第2935号
【非特許文献3】食品の光劣化防止技術、サイエンスフォーラム(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、テクスチャ、フレーバー変化、刺激性増大を生じさる原因である安定化剤等を添加することなく、カロテノイド色素の光退色を抑制できる方法、及びその退色抑制方法を利用した容器体並びにその容器体を用いた飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品の保存方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカロテノイド色素の退色抑制方法は、波長535〜695nmのスペクトル平均透過率を制御することを特徴とする。
さらには、上記波長を制御する容器体を用いることによって、飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品等に含まれるカロテノイド色素の退色を防止できる。
本発明に係るカロテノイド色素の退色抑制方法を具体的に説明すると、波長535〜695nm領域全体のスペクトル平均透過率を45.0%以下の容器体にカロテノイド色素を保存することを特徴とする。
ここで、領域全体のスペクトル平均透過率とは、波長535〜695nmの範囲の一部において透過率が高い部分があっても、波長535〜695nmの領域全体の入射光に対しスペクトル平均透過率が45.0%以下であることを意味する。
スペクトル平均透過率を0.01%以上に設定したのは、飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品を容器体に保存する場合に、その内容物の量を外部から視認できるものが好まれるからである。
従って、本発明に係る容器体には金属製容器体のような完全に光を遮断するものを除く趣旨である。
よって、内容物の量を外部から視認しやすい点では、波長535〜695nmの領域のスペクトル平均透過率の下限は、0.01%以上である0.5%以上、あるいは1%以上であってもよい。
本発明において、スペクトル平均透過率の上限を45.0%以下に設定したのは、カロテノイド色素の退色抑制が、従来の安定化剤添加品同等以上に認められたからである。
従って、カロテノイド色素の保存状態や保存期間によってはスペクトル平均透過率の上限を35.0%以下、好ましくは25.0%以下に設定してもよく、このスペクトル平均透過率の上限を15%以下に設定した場合には、実験により上記従来品に対して、指数値1.5倍以上の退色抑制効果が認められた。
また、波長535〜695nmの領域の中でも、535〜600nmの領域の影響が大きいことも後述する実験により明らかになり、容器体の外観色調の好みによっては、波長535〜600nmの領域のスペクトル平均透過率を0.01〜45.0%の範囲に制御するとよい。
この場合にも波長535〜600nmの領域であって、上限を35.0%以下、好ましくは25.0%以下、さらには15.0%以下にするとより長期保存が可能になる。
695nm以上の波長帯においては、カロテノイド色素の分解にほとんど影響を与えないので、透過率は高くても良く、また、その波長領域を完全に遮断してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、カロテノイド色素の退色抑制方法において、波長535〜695nmの領域のスペクトル平均透過率を制御することが効果であることを明らかにしたものである。
これは、従来のカロテノイド色素の極大吸収波長付近の波長域を制御すればよいとの考え方とは全く異にするものである。
本発明により、退色防止を目的とした安定化剤を添加することなく、カロテノイド色素を含有する飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品等を保存できるので、テクスチャ、フレーバー変化を生じさせることなく、刺激性増大などの副作用を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、前述のカロテノイド色素の分解波長と異なり、容器体などによって、波長535〜695nmの領域のスペクトル平均透過率を45.0%以下とすることによって、容器内部のカロテノイド色素の光退色を抑制する方法である。
本発明において、退色抑制とは、退色抑制のみではなく、退色防止を含むものとする。
【0013】
波長535〜695nmのスペクトル平均透過率を減少させる方法としては、特に535〜695nmの波長のスペクトル平均透過率を一定に制御できる容器体にカロテノイド色素を入れることによって行う。
本発明において、容器体とは、固形状の容器体のみではなく、包装物や被覆膜、液体層も含む。
容器体の種類は、カロテノイド色素を含有する組成物の形状によって、適宜選ぶことができる。
【0014】
容器体の材料としては、波長535〜695nmの全て又は一部において透過率を抑えることで波長535〜695nmの領域のスペクトル平均透過率を所定以下に制御する機能を有する物質を含有する組成物であれば、いずれのものも用いることができる。
容器体の材料の組成物としては、通常使われている容器の材質であればよく、例えば、セロハンなどセルロース系、ガラス、プラスチック、ゼラチンなどがあげられる。
【0015】
本発明においてカロテノイド色素としては、カロテン類、キサントフィルのいずれも含み、動植物から抽出、精製して得られたもの、発酵法あるいは合成法で得られたものなどが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
カロテン類としては例えばカロテン、リコペンなどが挙げられる。
【0016】
キサントフィルとは、例えば、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、ルテイン、ビオラキサンチン、クリプトキサンチンなどであり、好ましくはアスタキサンチンである。
これらのキサントフィルは、植物、動物、微生物などの天然物から抽出されたものや化学合成品を用いることができる。
天然物からの物質を抽出物は、その原料種類、産地及び製造方法は特に限定されない。
本発明の記載で、特に記載がない限り、キサントフィルはキサントフィル及び/又はそのエステル体を含む。
さらに、キサントフィルのエステルにはモノエステル体及び/又はジエステル体を含む。
【0017】
キサントフィルのモノエステルとしては、低級又は高級飽和脂肪酸、あるいは低級又は高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。
前記低級又は高級飽和脂肪酸、あるいは低級又は高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へプタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサオペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などをあげることができる。
また、カロテノイドのジエステルとしては前記脂肪酸からなる群から選択される同一又は異種の脂肪酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。
【0018】
さらに、キサントフィルのモノエステルとしては、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;酢酸、クエン酸などの一価又は多価カルボン酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類をあげることができる。
脂肪酸の誘導体としては、上記脂肪酸のリン脂質型、アルコール型、エーテル型、ショ糖エステル型、ポリグリセリンエステル型があげられる。
【0019】
キサントフィルのジエステルとしては、前記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、一価又は多価カルボン酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸及びグリセロリン酸からなる群から選択される同一又は異種の酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。
なお、考えられ得る場合は前記ジエステル類の塩も含む。
グリセロリン酸のジエステルとしては、グリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、又は高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などをあげることができる。
【0020】
以下、キサントフィルの具体例として、アスタキサンチンを上げて説明するが、その他のキサントフィルにも適応する。
【0021】
アスタキサンチンとは、天然物由来のもの又は合成により得られるものを意味する。
天然物由来のものとしては、例えば、緑藻ヘマトコッカスなどの微細藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、エビ、オキアミ、カニ、ミジンコなどの節足動物類の甲殻、イカ、タコなどの軟体動物類の内臓や生殖巣、種々の魚介類の皮、ナツザキフクジュソウなどのフクジュソウ属の花弁、Paracoccus sp. N81106、Brevundimonas sp. SD212、Erythrobacter sp. PC6などのα−プロテオバクテリア類、Gordonia sp. KANMONKAZ−1129などのゴードニア属、Schizochytriuym sp. KH105などのラビリンチュラ類(特にヤブレツボカビ科)やアスタキサンチン産生遺伝子組み換え生物体などから得られるものをあげることができる。
天然からの抽出物及び化学合成品は市販されており、入手は容易である。
【0022】
アスタキサンチンは、3,3’−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4’−ジオンであり、立体異性体を有する。
具体的には、(3R,3’R)−アスタキサンチン、(3R,3’S)−アスタキサンチン及び(3S,3’S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明にはそのいずれも用いることができる。
本発明はこれらアスタキサンチン異性体のモノエステル及びジエステルを含む。
【0023】
本発明において、アスタキサンチンの脂肪酸エステルは、天然物由来のもの又は合成により得られるもののいずれも用いることができるが、体内での吸収からアスタキサンチンエステルが各種の油脂に溶解した天然物由来が好ましい。
天然物由来には、例えば、オキアミ抽出物、ファフィア酵母抽出物、ヘマトコッカス藻抽出物があるが、特に好ましいのはアスタキサンチンの安定性とアスタキサンチンのエステルの種類によりヘマトコッカス藻抽出物である。
【0024】
アスタキサンチンの脂肪酸エステルは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることが知られて、食品添加物として広く用いられている(高橋二郎ほか:ヘマトコッカス藻アスタキサンチンの毒性試験―Ames試験、ラット単回投与毒性試験、ラット90日反復経口投与性毒性試験―,臨床医薬,20:867−881,2004)。
【0025】
カロテノイド色素を含む各種組成物中を本発明の容器体で遮光することによって、その組成物中のカロテノイド色素の退色を抑制することができる。
カロテノイド色素含有組成物の形態としては、液体、固体、気体、それらの混合体のいずれでもよい。
カロテノイド色素含有組成物の液体形態としては、カロテノイド色素を含有するエマルジョンも含む。
カロテノイド色素含有組成物の気体形態としては、カロテノイド色素を含有するエアロゾルも含む。
カロテノイド色素含有組成物の固体形態としては、カロテノイド色素を含有するマイクロカプセル、ハードカプセル、ソフトカプセルも含む。
1000μm以下のサイズのエマルジョン滴やマイクロカプセルにおいては、その外層部分やその外層の水層に本発明の遮光効果を有するようにする。
【0026】
本発明の退色防止方法はカロテノイド色素及びそれを含有する組成物に用いることができ、カロテノイド色素を含有する組成物としては、例えば、医薬品、化粧品、食品、飲料などがあげられる。
【0027】
本発明の組成物を医薬品の形態で用いる場合、経口又は非経口で投与することがでる。
経口用の剤形としては、例えば、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態で投与される。
非経口の剤形としては、点鼻剤、貼付剤、軟膏剤、坐剤の形態で投与される。
なお、ここで医薬品には医薬部外品もふくまれる。
【0028】
本発明の退色防止方法を医薬品の形態で用いる場合、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでいてもよい。
このような添加剤として、例えば賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。
賦形剤としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などの無機化合物などがあげられる。
結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えばデンプン、寒天、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、F−MELT(商標、富士化学工業株式会社製)などがあげられる。
酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などがあげられる。
発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
香料としては、例えばレモン油、オレンジ油、メントールなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。
安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、トコフェロール、シクロデキストリン等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。
界面活性剤として、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどがあげられる。
アスタキサンチンやトコトリエノールの吸収や製剤化を良くするためには粉末状態にすることができる。
【0029】
シロップ、ドリンク剤、懸濁液などの液剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。
懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。
溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。
安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。
防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0030】
皮膚外用剤の形態には、医薬品用の皮膚外用剤や化粧品の形態を含み、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、分散液、洗浄料、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品等の化粧品や、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等の医薬品などとすることができる。
上記成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、各種皮膚栄養成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、色剤、水、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0031】
本発明の退色防止方法を食品の形態に用いる場合は、サプリメント、健康食品、栄養機能食品や特定保健用食品などの保健機能食、特別用途食品、一般食品、医薬部外品さらにはスポーツ用のサプリメントとして用いることができ、摂取のしやすさや摂取量が決めやすいことから、サプリメント、スポーツ用のサプリメント、保健機能食、特別用途食品が好ましく、前述医薬品と同様の形態、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投与形態、液剤、ドリンク、シロップ及び懸濁液のような液体投与形態で摂取することができる。
上記医薬品用製剤で用いる成分のうち、食品で使用可能なものを選択でき、その他に乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、又は、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。
また、ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料及び色素などを配合してもよい。
本発明の飲食物の形態は、これらに限定されるものではない。
【0032】
一般食品、すなわち飲食物の形態例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、漬け物、フライドポテト、ポテトチップス、スナック菓子、かきもち、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、パン、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカー、マカロニ、パスタ、ラーメン、蕎麦、うどん、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなどの一般食品への添加例を挙げることができる。
【0033】
本発明の退色防止方法を飲料の形態に用いる場合は、通常の形態で市販されているものに応用することができる。
例えば、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料又は非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコール又はリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などである。
飲料や皮膚外用剤の形態には、カロテノイドを予めエマルジョンの形態で色素製剤化したものを用いるのが好適であり、本出願人が提案した特願2000−133985などの方法による液体色素製剤(アスタリール水溶液)を用いることができる。
【0034】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されるわけではない。
【0035】
[波長制御フィルターのスペクトル透過率測定]
各フィルターのスペクトル透過率曲線を図1に示す。
透過率は、それぞれの制御フィルターと非制御フィルターのスペクトル比を百分率で表したものである。
スペクトル測定は、下記の機材を用い、図2に示す構成にて実施した。
図2中、符号1は制御フィルターの場合、符号2は非制御フィルターの場合を示し、符号3は受光部、符号4は検出部を示す。
<機材>
1)光源:空冷式キセノンランプ
機器:SOLARBOX 1500e COFOMEGRA社製(設定値550W/mにて測定)
2)波長測定機:ラジオメーター(ソーラテスタSCR−200型 分光計器社製)
3)非制御フィルター:クリスタルボックス(V・W−1 HEIKO社製)
4)制御フィルター:カラーセロファン(株式会社トーヨー社製)
F1:青色単色セロファン,F2:緑色単色セロファン,F3:黄色単色セロファン,F4:赤色単色セロファン
【0036】
[試料調製]
表1の処方に示すように、1〜5および6〜7を各々混合溶解したものを混合して均一にし、試料としてテスト品(以下Tと略す)、および従来技術である比較品(以下Cと略す)を得た。
アスタキサンチンエステルは富士化学工業株式会社製 アスタリールオイル50F(ヘマトコッカス藻色素、ミックストコフェロールはタマ化学株式会社製 天然ビタミンE、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)は日光ケミカルズ株式会社製 NIKKOL HCO60を用いた。
【表1】

【0037】
[実験1]
図1に示す制御フィルター4種および非制御フィルターと各試料を組み合わせて安定性試験を実施した結果を表2に示す。
安定性試験とは、調製した試料を無色透明ガラス瓶(ガラス規格容器 No.4K透明)に入れ、そのガラス瓶全体をフィルターで被覆し、太陽光18時間曝露後のアスタキサンチンエステル残存率を測定した。
残存指数は、各フィルター被覆試料(T)太陽光18時間曝露後の480nm吸光度と試料(T)製造直後の480nm吸光度の比と従来技術のそれの比を指数で表した。
【表2】

【0038】
[各制御フィルターの紫外光線平均透過率及び可視光線平均透過率の測定]
太陽光における各フィルターの紫外光線平均透過率および可視光線平均透過率を表3に示す。
紫外光線平均透過率および可視光線平均透過率はそれぞれの制御フィルターを通した紫外線領域放射測定量および可視光線領域照射測定量と非制御フィルターのそれの比を百分率で表したものである。
測定は、下記の機材を用い、図2に示す構成にて実施した。
<機材>
1)紫外線測定:デジタル紫外線強度計 マザーツール株式会社製 型式:UV−340
2)可視光測定:光部分離型デジタル照度計 コニカミノルタセンシング株式会社製 型式:T−10M
3)非制御フィルター:クリスタルボックス(V.W−1 HEIKO社製)
4)制御フィルター:F1,F2,F5:紫外線遮断フィルム(サンカットワンタッチマジックフィルム、F6:UVカットワンタッチフィルム 大橋産業株式会社製)
【表3】

【0039】
[実験2]
表3に示す制御フィルター4種および非制御フィルターと各試料を組み合わせて安定性試験を実施した。
試験結果を表4に示す。
【表4】

【0040】
表2に示す通り、比較例1(従来技術)を残存指数100.0とした場合に、従来技術を用いない比較例2であれば40.5であることに対し、実施例1および2では157.3〜171.0となる。
また、比較例3、比較例4ではいずれも従来技術より残存指数が低い。
尚、図1に示すとおり実施例1(F1)は、アスタキサンチンエステルの極大吸収波長領域である480nm付近の透過率が高いにも関わらず退色抑制効果が高く、逆にこの領域で透過率の低い比較例3および4(F3、F4)において同効果が低いことからも、535〜695nmのスペクトル平均透過率を制御することにより得られる退色抑制効果は大きく、非常に驚くべき結果であることがわかる。
【0041】
表3、表4に示す通り、比較例1(従来技術)を残存指数100.0とした場合に、従来技術を用いない比較例2であれば27.7であることに対し、可視光線平均透過率を制御した比較例5で非常に高い退色抑制効果が得られ、逆に可視光線平均透過率を制御せず、紫外線平均透過率のみを制御した比較例4では効果が得られなかった。
このことから、アスタキサンチンエステルの退色抑制には紫外光線よりも可視光線が大きく関与していることがわかる。
また、実施例1および2のように、535〜695nmのスペクトル平均透過率を45.0%以下の2.82,11.76%に制御することによって高い退色抑制効果が得られた。
535〜695nmを制御することによって得られる効果は可視光線全域の透過率を制御して得られる効果の、実に71.7〜77.5%となり、可視光線領域の中でもとりわけ535〜695nm領域のスペクトル平均透過率を制御することがアスタキサンチンエステルの安定化要素の大部分を占めることがわかる。
以上の結果から、従来からアスタキサンチンの光安定性に関与すると言われているは紫外線領域や極大波長480nm域の透過率を制御するよりも、535〜695nm範囲のスペクトル平均透過率を制御することが光安定性をはるかに向上させる事が判明した。
また、制御フィルターF3とF4の残存指数を比較すると、表2に示すようにF4の残存指数の方が大きく、その残存指数の差91.5−68.5=23.0と大きい。
図1のグラフからするとF3とF4とでは600nmを超えた範囲では透過率に差がないことから、535〜695nmの中でも535〜600nmの波長領域の影響が大きいことも推定される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】各制御フィルターのスペクトル透過率曲線(対照:非制御フィルター)を示す。
【図2】試験装置の構成例を示す。
【0043】
1 制御フィルター
2 被制御フィルター
3 受光部
4 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長535〜695nm領域全体のスペクトル平均透過率が0.01〜45.0%の容器体にカロテノイド色素を保存することを特徴とするカロテノイド色素の退色抑制方法。
【請求項2】
波長535〜695nm領域全体のスペクトル平均透過率が0.01〜35.0%の容器体にカロテノイド色素を保存することを特徴とするカロテノイド色素の退色抑制方法。
【請求項3】
波長535〜695nm領域全体のスペクトル平均透過率が0.01〜25.0%の容器体にカロテノイド色素を保存することを特徴とするカロテノイド色素の退色抑制方法。
【請求項4】
波長535〜695nm領域全体のスペクトル平均透過率が0.01〜15.0%の容器体にカロテノイド色素を保存することを特徴とするカロテノイド色素の退色抑制方法。
【請求項5】
カロテノイド色素がキサントフィルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカロテノイド色素の退色抑制方法。
【請求項6】
カロテノイド色素がアスタキサンチンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のカロテノイド色素の退色抑制方法。
【請求項7】
カロテノイド色素がヘマトッコッカス色素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカロテノイド色素の退色抑制方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のカロテノイド色素の退色抑制方法に用いる容器体。
【請求項9】
請求項8に記載の容器体に収納されたことを特徴とする飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品の保存方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−132760(P2010−132760A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309351(P2008−309351)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【特許番号】特許第4409617号(P4409617)
【特許公報発行日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】