説明

カートリッジタンクの給油口蓋

【課題】 不十分な状態での取付けや締めすぎをなくして、確実に装着できる給油口蓋の構造に関する。
【解決手段】 給油口蓋2の外周面2aを囲む筒状の操作部5を設け、給油口蓋2の外周面2aと操作部5の内周面5aとの間の空間6内には固定リング7と駆動リング8とバネ9を取り付ける。固定リング7の上面と駆動リング8の下面には一定の間隔D毎に係止溝7aと係止片8aを設け、バネ9の力によって駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7aに係合する。給油口蓋2を給油口3aに装着時には、給油口蓋2の締め付け位置で給油口蓋2の回動が停止するとバネ9に抗して駆動リング8が持ち上がって係止片8aが係止溝7aから外れ、駆動リング8と操作部5が回動するときに係止片8aが固定リング7の上面を滑りながら移動し、係止片8aが係止溝7aと係合するときに音と抵抗を発生して取扱者に給油口蓋2の締め付け位置を知らせるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石油燃焼器などに用いられるカートリッジタンクの給油口蓋の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
石油燃焼器のカートリッジタンクは給油口に開閉弁を備えた給油口蓋を着脱自在に取り付けており、給油口蓋が外された給油口から燃料である油を注入し、給油口に給油口蓋を締めてから給油口部分を下に向けて石油燃焼機に装着して使用するものであり、石油燃焼機では開閉弁を介してタンク内に流入した空気に代わってタンク内の油が石油燃焼機の油受皿内に供給される給油システムが用いられている。
【0003】
カートリッジタンクの給油口と給油口蓋の着脱機構としてねじ式のものが知られているが、給油口蓋の先端には油が付着しており、カートリッジタンクへの給油の際に、給油口蓋を給油口に装着するときに手が給油口蓋に付着した油で滑ったり、手の汚れを気にして強い力が出せなかったりして、給油口蓋を十分締め付けできないときがある。ねじ式の着脱機構は締め付け位置がわかりにくいため、取扱者が給油口蓋の締め付け不足に気付かないことがあり、石油燃焼器にカートリッジタンクを装着しようとしたときに給油口蓋が外れ、カートリッジタンクの油が流出して重大なトラブルを発生させる恐れがある。
【0004】
また、給油口蓋の締め付け位置がわかりにくいため、力の強い人が給油作業を行なったときに給油口蓋を強く締めすぎてしまうことがあり、次に力の弱い人が給油作業を行なうときには給油口蓋を取外すことができなくなってしまうという課題もあった。
【0005】
このようなトラブルを防ぐため、給油口蓋の外周に操作部を設け、給油口蓋と操作部との間にラチェット機構を備えた構造の給油口蓋が提案されている。この構造は、給油口蓋の締め付け位置から締め付ける力がかかるとラチェット機構が作動し、操作部が空回りするときに音が発生して取扱者に締め付け位置を知らせることができ、また操作部が空回りすることで給油口蓋の締めすぎを防止することができるものとなっている。
【特許文献1】特開2000−240934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構造は、給油口蓋の形状が大きくなるため、給油口蓋を装着する石油燃焼器の油受皿や油受けの形状も大幅な設計変更が必要となる。また、給油口蓋の構造が複雑となって部品点数も多くなるため、生産性が悪くなってしまう。また、ラチェット機構の歯の噛合わせに寸法精度が要求されるため、寸法管理が難しく、生産コストが上昇してしまうという問題が発生した。
【0007】
また、ラチェット機構は給油口蓋の締め付け位置からすぐに連続音を発生させる構造であるため、取扱者は一般的に締め付け位置から何回か音を発生させるものであるが、ラチェットが駆動するときはラチェット同士の摩擦によって摩耗が起こるため、ラチェットの駆動回数が多くなるとラチェットが摩耗しやすくなるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記の課題を解決するもので、開閉弁1を内装した給油口蓋2と、カートリッジタンク3の給油口3aとの間に着脱機構4を設け、着脱機構4によって給油口蓋2を給油口3aに着脱自在に取り付けるカートリッジタンクにおいて、前記給油口蓋2の外周面2aを囲む筒状の操作部5を設け、給油口蓋2の外周面2aと筒状の操作部5の内周面5aとの間に空間6を形成し、前記空間6内には、給油口蓋2の外周面2a下部に取り付けた固定リング7と、操作部5の内周面5aに取り付けた駆動リング8とを設け、固定リング7の上面と駆動リング8の下面とが向かい合うと共に、空間6内の駆動リング8の上部には駆動リング8を固定リング7に押し付けるバネ9を取り付け、前記固定リング7の上面と前記駆動リング8の下面には一定の間隔D毎に配置した複数の係止溝7aと係止片8aをそれぞれ設け、前記着脱機構4によって給油口蓋2をカートリッジタンク3の給油口3aに装着時には、バネ9の力によって前記駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7aと係合した状態で給油口蓋2と操作部5が一緒に回動すると共に、給油口蓋2が回動を停止後は前記バネ9に抗して駆動リング8が持ち上がって係止片8aが係止溝7aから外れ、駆動リング8と操作部5が回動するときに係止片8aが固定リング7の上面を滑りながら移動し、係止片8aが係止溝7aと係合するときに音と抵抗を発生することを特徴とするものである。
【0009】
また、前記固定リング7の上面に設けた係止溝7aの回転方向の長さ寸法L1を、駆動リング8の下面に設けた係止片8aの回転方向の長さ寸法L2よりも大とし、給油口蓋2の着脱時に係止片8aが係止溝7aの内縁と接触しない位置では給油口蓋2が回動せず、係止片8aが係止溝7aの内縁に接触したときに給油口蓋2が操作部5と一緒に回動することにより、操作部5が回動しても係止片8aが係止溝7aと接触する位置までは給油口蓋2が回動することはなく、給油口蓋2を緩めることがなくなった。
【0010】
また、前記給油口蓋2の外周面2aの下端には複数個の突部2bを設け、前記固定リング7の内周面7bには複数の凹部7cを形成し、前記操作部5の内周面5aの途中には上部を縮径する段部5bを設け、固定リング7の凹部7cが給油口蓋2の突部2bと係合すると共に、操作部5の段部5bが固定リング7の上面に接触し、固定リング7の抜け止めと円周方向の移動を防止することにより、簡単な構造で確実に固定リング7を空間6内に固定できる。
【0011】
また、前記操作部5の内周面5aには複数個の案内溝部5cを形成し、前記駆動リング8の外周面8bには複数の突起8cを形成し、駆動リング8の突起8cが操作部5の案内溝部5bに嵌合し、駆動リング8の駆動時に突起8cが案内溝部5cに沿って上下方向に移動すると共に駆動リング8の円周方向の移動を防止し、操作部5と駆動リング8が一緒に回動することにより、簡単な構造で確実に駆動リング8を保持でき、駆動リング8が確実に駆動するものである。
【0012】
また、前記操作部5の内周面5aの下部には係合部5dを設け、前記給油口蓋2の下部には操作部5の係合部5dと係合するリング状の固定部材10を設け、前記操作部5と固定リング7と駆動リング8とバネ9を給油口蓋2の上部から取り付けると共に、前記固定部材10を給油口蓋2の下部から取り付け、操作部5の係合部5dと固定部材10とが係合して操作部5を給油口蓋2の外周面2aに回動可能に取り付けることにより、組立工程が簡略化できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、給油口蓋2の外周面2aを囲む筒状の操作部5を設け、給油口蓋2と操作部5との空間6内に固定リング7と駆動リング8とバネ9を備えており、固定リング7の上面と駆動リング8の下面には一定の間隔D毎に係止溝7aと係止片8aをそれぞれ配置している。そして、バネ9の力によって駆動リング8が固定リング7に押し付けられ、駆動リング8の下面に設けた係止片8aと固定リング7の上面に設けた係止溝7aが係合している。
給油口蓋2をカートリッジタンク3の給油口3aに装着するときは、給油口蓋2の締め付け位置までは給油口蓋2と操作部5が一緒に回転し、給油口蓋2の締め付け位置で一旦回転が停止する。この締め付け位置から更に操作部5を回動すると、駆動リング8がバネ9に抗して持ち上がって係止片8aが係止溝7aから外れるので、給油口蓋2と固定リング7はそれ以上回転せず操作部5と駆動リング8が回動する。駆動リング8の係止片8aは固定リング7の上面を滑りながら移動し、再び係止片8aが係止溝7aと係合するときに駆動リング8がバネ9の力で下方に移動するので、このときカチッという音が発生すると共に、係止片8aが係止溝7aに接触して抵抗が変化することで、取扱者に給油口蓋2の締め付け位置を知らせることができる。
このため、取扱者は給油口蓋2の締め付け時に確実に音がする位置まで操作するものとなるから、給油口蓋2を確実に締め付けることができ、また、給油口蓋2の締め付け位置からは必要以上の力がかからず給油口蓋2を締めすぎることがないから、取扱者の力に関係なく常に同じ締め付け力となり、着脱時の操作性が向上できた。
【0014】
また、固定リング7の係止溝7aを間隔D毎に配置しているから、給油口蓋2の締め付け位置から操作部5を回転させたときにすぐに音が発生するのではなく、操作部5が間隔Dの分だけ回転する毎に音が発生するものとなる。このため、取扱者は1〜2回の音と抵抗の変化で給油口蓋2の締め付けが完了したことを確認して操作を終了するものであり、取扱者が必要以上に給油口蓋2の締め付け操作を繰り返すことがなくなるから、係止溝7aと係止片8aの駆動回数を少なくでき、係止溝7aと係止片8aの消耗を抑えることができるものとなった。
また、給油口蓋2を組立てたときに固定リング7の係止溝7aと駆動リング8の係止片8aが全て正確に係合する必要があるが、係止溝7aと係止片8aを一定の間隔D毎に配置することで係止溝7aと係止片8aの個数が少なくできるから、寸法管理が容易になり生産コストが低減できるものである。
【0015】
また、固定リング7の係止溝7aの回転方向の長さ寸法L1を、駆動リング8の係止片8aの回転方向の長さ寸法L2よりも大として、係止片8aが係止溝7a内を移動する構成としている。このようにすると、係止片8aが係止溝7aの内縁から離れているときは係止片8aが係止溝7a内を移動するため、操作部5を回転しても給油口蓋2は回転しない。一方、係止片8aが係止溝7aの一方の内縁に接触したときは給油口蓋2が操作部5と一緒に回動するものである。このため、給油口蓋2の締め付け位置で操作部5が回転しても係止片8aが係止溝7aの内縁と接触するまでは給油口蓋2が回転しないから、カートリッジタンク3を石油燃焼器に装着するときなどに取扱者が操作部5に触れても、給油口蓋2を容易に緩めることはなく、安全性が向上できた。
【0016】
また、給油口蓋2の外周面2a下部には複数個の突部2bを設け、固定リング7の内周面7bには複数の凹部7cを形成し、固定リング7の凹部7cが給油口蓋2の突部2bと係合して、固定リング7の下方への抜け止めと円周方向の移動を防止している。また、操作部5の内周面5aの途中に設けた段部5bが固定リング7の上面に位置して固定リング7の上方への移動を防止するので、簡単な構造で確実に固定リング7が固定できるものとなった。
【0017】
また、操作部5の内周面5aには複数個の案内溝部5bを形成し、駆動リング8の外周面8bには複数の突起8cを形成し、駆動リング8の突起8cが操作部5の案内溝部5bに嵌合する構成としたから、駆動リング8は突起8cが案内溝部5bに沿って上下方向へ移動するが、駆動リング8の円周方向への移動を防止することができる。このため、給油口蓋2の給油口3aへの着脱操作時に駆動リング8が確実に駆動するものであり、給油口蓋2を確実に装着できるものである。
【0018】
また、操作部5と固定リング7と駆動リング8とバネ9は給油口蓋2の上部から取り付け、給油口蓋2の下部からはリング状の固定部材10を取り付け、操作部5の下部に設けた係合部5dと固定部材10が係合することで操作部5を回動可能に固定することができるから、給油口蓋2の組立作業が容易であり、生産性が向上して生産コストが低減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、3は石油燃焼器へ装着し燃料を供給するカートリッジタンク、3aはカートリッジタンク3へ燃料の補給と流出を行う給油口、2は給油口3aに着脱自在に装着する給油口蓋、11は給油口蓋2内に備えたパッキング、1は給油口蓋2に取り付けた開閉弁、4は給油口蓋2と給油口3との間にねじで形成した着脱機構である。
【0020】
12は石油燃焼器のバーナへ燃料を供給する油受皿、13は油受皿12の上部開口に取り付けた油受け、14は油受け13に形成した突起である。
カートリッジタンク3を給油口蓋2を下向きにして油受皿12の油受け13に装着すると、突起14が開閉弁1を押し開き、カートリッジタンク3の油が油受け13を介して油受皿12に供給される。そして、石油燃焼器が燃焼を行って油が使われると、油受皿12の油面が下がり、開閉弁1からカートリッジタンク3内に空気が入り、代わってカートリッジタンク3内の油が油受皿12内に流出し、開閉弁1の位置で一定油面を保持している。
【0021】
カートリッジタンク3が空になると、石油燃焼器からカートリッジタンク3を取り出して給油場所まで運び、給油口蓋2を取外してサイフォンポンプなどで給油を行うが、給油口蓋2の先端は油が付着しており給油口蓋2の着脱時に油で手が汚れ、非常に嫌われるものである。また、給油口蓋2に油が付着していると、給油後に再び給油口蓋2を取り付けるときに手が油で滑ったり、汚れを気にして強い力が出せなかったりして、給油口蓋2を十分締め付けできないときがあり、この場合、石油燃焼器にカートリッジタンク3を装着しようとしたときに給油口蓋2が外れ、油が石油燃焼器にかかって火災事故などの重大なトラブルを発生させる恐れがある。
【0022】
また、ねじ式の着脱機構4の場合、給油口蓋2の適切な締め付け位置がわかにくいため、給油作業を行なったときに給油口蓋2を強い力で締め過ぎてしまうときがあり、この場合、次に給油作業を行う人が力の弱い作業者であると給油口蓋2を簡単に取外すことができず、給油作業が非常にやりにくくなってしまうこともある。
【0023】
この発明は不十分な締め付けによる給油口蓋の緩みや、給油口蓋の締めすぎをなくすため、誰が操作しても常に適切な締め付け位置で確実に給油口蓋の締め付けができる構造を提案するものであり、2aは給油口蓋2の外周面、5は給油口蓋2の外周面2aを囲むように取り付けた操作部、5aは操作部5の内周面、6は給油口蓋2の外周面2aと操作部5の内周面5aとの間に形成される空間である。
7は給油口蓋2の外周面2aに取り付けた固定リング、7aは固定リング7の上面に設けた複数の係止溝であり、固定リング7は空間6内の下部に配置されている。8は操作部5の内周面5aに取り付ける駆動リング、8aは駆動リング8の下面に設けた複数の係止片であり、駆動リング8は空間6内の固定リング7の上部に配置されている。
【0024】
5eは操作部5の上部を内側に向けて形成した鍔部、9は操作部5の鍔部5eと駆動リング8の上面との間に装着したネジであり、空間6内には下から固定リング7・駆動リング8・ネジ9の順に取り付けられており、駆動リング8はネジ9によって固定リング7に押し付けられ、駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7aに係合している。
また、固定リング7の係止溝7aと駆動リング8の係止片8aは着脱機構4のねじ締め方向に傾斜面を形成し、取外し方向に垂直面を形成している。
【0025】
Dは固定リング7の上面に設けた係止溝7aの間の間隔であり、係止溝7aは一定の間隔D毎に配置されている。また、駆動リング8の係止片8aも同様に一定の間隔D毎に配置されている。
【0026】
給油口蓋2をカートリッジタンク3の給油口3aに取り付けるときは、操作部5を持って回転して給油口蓋2の締め付け操作を行うものであり、給油口蓋2はバネ9によって駆動リング8が固定リング7に押し付けられ、係止片8aと係止溝7aの傾斜面同士が接触しているから、操作部5を回転すると駆動リング8が固定リング7を駆動して給油口蓋2が一緒に回転する。
【0027】
操作部5と給油口蓋2は給油口蓋2の締め付け位置までは一緒に回転するが、締め付け位置まで回転すると給油口蓋2の回転が停止し、この位置から給油口蓋2を締め付け方向に回転させようとして操作部5に力を加えると、駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7aの傾斜面を滑り始め、バネ9の力に抗して駆動リング8が持ち上がって係止片8aが係止溝7aから外れて固定リング7の上面に移動し、給油口蓋2と固定リング7は回転せず操作部5と駆動リング8だけが回転する。
そして、そのまま操作部5を回転すると係止片8aが固定リング7の上面を滑りながら移動し、再び係止溝7aと係合するときにバネ9の力で駆動リング8が下方に移動するので、このときカチッという音が発生すると共に抵抗が変化する。
【0028】
このように、給油口蓋2の締め付け位置から操作部5だけが回転し、操作部5が回転するときの音と抵抗の変化によって給油口蓋2の締め付け位置が確認できるので、取扱者が給油口蓋2を給油口3aに取り付けるときには、給油口蓋2からカチッという音がするまでは必ず操作部5の操作を行うものとなる。また、給油口蓋2の締め付け位置かは操作部5が空回りするだけであり給油口蓋2を締めすぎることがないから、適切な力で確実に給油口蓋2の締め付けができるものとなった。
【0029】
給油口蓋2の締め付け位置から操作部5が回転するときの力は、係止片8aと係止溝7aの傾斜面の角度とバネ9の弾性力によって決定するものであり、傾斜面の角度がきつくバネの力が強くなると係止片8aと係止溝7aの係合が外れにくく、給油口蓋2の締め付け力は強くなり、傾斜面の角度が緩くバネの力が弱くなると係止片8aと係止溝7aの係合が外れやすく、給油口蓋2の締め付け力が弱くなる。このため、給油口蓋2の締め付け力が最適となるように係止溝7aと係止片8aの傾斜面の角度とバネ9の力を設定することができる。
【0030】
また、間隔Dは給油口蓋2の締め付け位置から操作部5が空回りするときの回転量となり、間隔Dを変更すると給油口蓋2の締め付け位置から操作部5が回転するときの音が発生するまでの回転量も変わるものである。このため、係止溝7aの個数を多くして間隔Dを狭くすれば操作部5の回転量が少なく音の発生回数が多くなり、係止溝7aの個数を少なくして間隔Dを広くすれば操作部5の回転量が多く音の発生回数が少なくなる。
係止溝7aと係止片8aの間隔Dは任意であるが、間隔Dを狭くしすぎると給油口蓋2が締め付け位置で停止してから操作部5が回転するときにすぐに音が発生し、狭い回転範囲で連続して何回も音が発生して係止溝と係止片の駆動回数が多くなる。一方、間隔Dが広くなりすぎると、給油口蓋2が締め付け位置で停止してから音が発生するまでの操作部5の回転量が多くなり、操作部5の操作量が多くなって操作性が悪くなる。
【0031】
図に示す実施例では間隔Dを45度に設定したものであり、係止溝7aと係止片8aはそれぞれ固定リング7と駆動リング8の全周に45度間隔で配置している。この実施例では給油口蓋2が締め付け位置で停止してから操作部5が回転するときにすぐに音が発生することはなく、給油口蓋2の締め付け位置から操作部5が45度回転する毎に音が発生するものとなっている。この操作部5の回転量であれば、取扱者は操作部5の操作が行いやすく、また、取扱者は操作部5を45度ずつ回転して1〜2回音が鳴れば給油口蓋2の締め付けを確認して操作を終了するものとなる。
【0032】
このため、取扱者は給油口蓋2の締め付け位置から必要以上に操作部5を回転させることはなくなり、係止溝7aと係止片8aの駆動回数が少なくなり、係止溝7aと係止片8aは駆動時の摩擦による摩耗を抑えることができ、摩耗による給油口蓋2の締め付け力の低下を防ぐことができ、長期間にわたって安全性を確保できるものとなった。
また、係止溝7aと係止片8aを全周に多数配置するときには、全ての係止溝7aと係止片8aが確実に係合するために寸法精度が要求され、寸法管理が大変であったが、この発明では係止溝7aと係止片8aの個数を少なくできるから、寸法管理が容易になりコストの低減が期待できる。
【0033】
図5及び図6において、L1は固定リング7の係止溝7aの円周方向の長さ寸法、L2は駆動リング8の係止片8aの円周方向の長さ寸法であり、固定リング7の係止溝7aの円周方向の長さ寸法L1を駆動リング8の係止片8aの円周方向の長さ寸法L2よりも大きく設定し、駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7a内を移動する構成となっている。
【0034】
この実施例の給油口蓋2を給油口3aに装着するときの固定リング7と駆動リング8の動作状態を図7で説明しており、給油口蓋2を給油口3aに装着するときは、係止溝7aと係止片8aの傾斜面同士が接触して駆動リング8と固定リング7が一緒に回転し、操作部5と給油口蓋2が一緒に回動する。給油口蓋2の締め付け位置で給油口蓋2の回転が停止すると、駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7aの傾斜面を滑りながら駆動リング8が持ち上がり、係止片8aが係止溝7aから外れて固定リング7の上面に移動する。駆動リング8の係止片8aは固定リング7の上面を滑りながら移動して操作部5と駆動リング8だけが回動し、再び係止片8aが係止溝7aに係合したときに音が発生すると共に抵抗が変化し、係止片8aと係止溝7aの傾斜面が接触して操作部5の回転が停止する。
図8は給油口蓋2を給油口3aから取外すときの固定リング7と駆動リング8の動作状態を説明しており、給油口蓋2を給油口3aから取外すときは、操作部5を回転しても係止片8aが係止溝7a内を移動するだけで給油口蓋2が回動せず、係止片8aと係止溝7aの垂直面同士が接触すると駆動リング8と固定リング7が一緒に回転を始めるので、操作部5と給油口蓋2が一緒に回転するものであり、給油口蓋2を取外すことができるものである。
【0035】
この構成では、給油口蓋2を給油口3aに装着したときは係止片8aと係止溝7aの傾斜面同士が接触する位置にあるから、カートリッジタンク3を石油燃焼器に装着するときなどに給油口蓋2の操作部5に触れても、駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7a内を移動して操作部5だけが回転し、給油口蓋2が回転することはないから、容易に給油口蓋2を緩めてしまうことはなくなり、安全性が向上できた。
【0036】
また、2bは給油口蓋2の外周面2aの下部に形成した複数個の突部、7bは固定リング7の内周面、7cは固定リング7の内周面7bに形成した複数個の凹部であり、固定リング7を給油口蓋2の上部から挿通して取り付けると、固定リング7の凹部7cが給油口蓋2の突部2bと嵌合する。突部2bと凹部7cが係合することによって、固定リング7が下方へ抜け落ちたり固定リング7が回転したりすることはなく、固定リング7を確実に給油口蓋2に取り付けることができる。
【0037】
5bは操作部5の内周面5aの途中に形成した段部、5cは段部5bと鍔部5eとの間の内周面5aに形成した複数個の案内溝部であり、操作部5の内周面5aは段部5bより上部の内径が下部の内径より細くなっており、細くなった内周面5aに案内溝部5cが形成されている。
【0038】
8bは駆動リング8の外周面、8cは駆動リング8の外周面8bに形成した複数個の突起であり、駆動リング8の外径は操作部5の内周面5aの上部の内径と一致しており、操作部5の下部からバネ9と駆動リング8を挿入し、駆動リング8の突起8cが操作部5の案内溝部5cと嵌合するように取り付ける。
【0039】
そして、操作部5にバネ9と駆動リング8を取り付け、給油口蓋2に固定リング7を取り付けた状態で、操作部5を給油口蓋2の上部から取り付けると、操作部5の段部5bの下面が固定リング7の上面に接触する。固定リング7の係止溝7aと駆動リング8の係止片8aは段部5bより内側に位置しており、駆動リング8はバネ9の力で固定リング7に押し付けられ、固定リング7の係止溝7aと駆動リング8の係止片8aが係合する。
【0040】
5dは操作部5の内周面5aの下部に設けた係合部であり、操作部5の係合部5dは給油口蓋2の下端より下方に位置している。10は給油口蓋2の下部に取り付けるリング状の固定部材、10aは操作部5の係合部5dと係合する固定部材10の外周縁に設けた係合突起であり、固定部材10を給油口蓋2の下側から取り付けて固定部材10の係合突起10aを操作部5の係合部5dと係合すると、操作部5を給油口蓋2の外周面2aに回動可能に取り付けることができる。
【0041】
この構成によって、固定リング7は凹部7cが給油口蓋2の突部2bに係合すると共に、固定リング7の上面に操作部5の段部5bが接触しているので、固定リング7は空間6内の給油口蓋2の下部に確実に固定することができたものである。
【0042】
また、駆動リング8は外周面8bの突起8cが操作部5の案内溝部5cと嵌合しているから、給油口蓋2の着脱時に駆動リング8が上下に駆動するときに突起8cが案内溝部5cに沿って移動するが、駆動リング8の円周方向への移動は阻止するので、駆動リング8が操作部5と一緒に回動し、給油口蓋2の着脱時に固定リング7と駆動リング8が確実に動作するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施例を示すカートリッジタンクの使用状態を示す要部断面図である。
【図2】この発明の実施例を示す給油口蓋の装着時の状態を示す断面図である。
【図3】この発明の実施例を示す給油口蓋の要部断面図である。
【図4】この発明の実施例を示す給油口蓋の要部斜視図である。
【図5】この発明の実施例を示す固定リングの平面図である。
【図6】この発明の実施例を示す駆動リングの底面図である。
【図7】この発明の実施例を示す給油口蓋の装着時の動作状態を説明する要部断面図である。
【図8】この発明の実施例を示す給油口蓋の取外し時の動作状態を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 開閉弁
2 給油口蓋
2a 外周面
2b 突部
3 カートリッジタンク
3a 給油口
4 着脱機構
5 操作部
5a 内周面
5b 段部
5c 案内溝部
5d 係合部
6 空間
7 固定リング
7a 係止溝
7b 内周面
7c 凹部
8 駆動リング
8a 係止片
8b 外周面
8c 突起
9 バネ
10 固定部材
D 間隔
L1 係止溝7aの長さ寸法
L2 係止片8aの長さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉弁1を内装した給油口蓋2と、カートリッジタンク3の給油口3aとの間に着脱機構4を設け、着脱機構4によって給油口蓋2を給油口3aに着脱自在に取り付けるカートリッジタンクにおいて、
前記給油口蓋2の外周面2aを囲む筒状の操作部5を設け、給油口蓋2の外周面2aと筒状の操作部5の内周面5aとの間に空間6を形成し、
前記空間6内には、給油口蓋2の外周面2a下部に取り付けた固定リング7と、操作部5の内周面5aに取り付けた駆動リング8とを設け、固定リング7の上面と駆動リング8の下面とが向かい合うと共に、
空間6内の駆動リング8の上部には駆動リング8を固定リング7に押し付けるバネ9を取り付け、
前記固定リング7の上面と前記駆動リング8の下面には一定の間隔D毎に配置した複数の係止溝7aと係止片8aをそれぞれ設け、
前記着脱機構4によって給油口蓋2をカートリッジタンク3の給油口3aに装着時には、バネ9の力によって前記駆動リング8の係止片8aが固定リング7の係止溝7aと係合した状態で給油口蓋2と操作部5が一緒に回動すると共に、
給油口蓋2が回動を停止後は前記バネ9に抗して駆動リング8が持ち上がって係止片8aが係止溝7aから外れ、駆動リング8と操作部5が回動するときに係止片8aが固定リング7の上面を滑りながら移動し、係止片8aが係止溝7aと係合するときに音と抵抗を発生することを特徴とするカートリッジタンクの給油口蓋。
【請求項2】
前記固定リング7の上面に設けた係止溝7aの回転方向の長さ寸法L1を、駆動リング8の下面に設けた係止片8aの回転方向の長さ寸法L2よりも大とし、給油口蓋2の着脱時に係止片8aが係止溝7aの内縁と接触しない位置では給油口蓋2が回動せず、係止片8aが係止溝7aの内縁に接触したときに給油口蓋2が操作部5と一緒に回動することを特徴とする請求項1に記載したカートリッジタンクの給油口蓋。
【請求項3】
前記給油口蓋2の外周面2aの下端には複数個の突部2bを設け、前記固定リング7の内周面7bには複数の凹部7cを形成し、前記操作部5の内周面5aの途中には上部を縮径する段部5bを設け、
固定リング7の凹部7cが給油口蓋2の突部2bと係合すると共に、操作部5の段部5bが固定リング7の上面に接触し、固定リング7の抜け止めと円周方向の移動を防止することを特徴とする請求項1または2に記載したカートリッジタンクの給油口蓋。
【請求項4】
前記操作部5の内周面5aには複数個の案内溝部5cを形成し、前記駆動リング8の外周面8bには複数の突起8cを形成し、
駆動リング8の突起8cが操作部5の案内溝部5bに嵌合し、駆動リング8の駆動時に突起8cが案内溝部5cに沿って上下方向に移動すると共に駆動リング8の円周方向の移動を防止し、操作部5と駆動リング8が一緒に回動することを特徴とする請求項1または2に記載したカートリッジタンクの給油口蓋。
【請求項5】
前記操作部5の内周面5aの下部には係合部5dを設け、前記給油口蓋2の下部には操作部5の係合部5dと係合するリング状の固定部材10を設け、
前記操作部5と固定リング7と駆動リング8とバネ9を給油口蓋2の上部から取り付けると共に、前記固定部材10を給油口蓋2の下部から取り付け、
操作部5の係合部5dと固定部材10とが係合して操作部5を給油口蓋2の外周面2aに回動可能に取り付けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載したカートリッジタンクの給油口蓋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−107155(P2010−107155A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281670(P2008−281670)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】