説明

カートリッジ及び画像形成装置

【課題】画像形成装置の小型化のために感光ドラム3を小径にし、且つ、クリーニング装置よりも感光ドラム3の回転方向上流側に導いても、LED基板31の導体部分と中間転写ベルト9との間で異常放電が発生することを防止する。
【解決手段】クリーニング装置5の感光ドラム3と反対側に、保持手段33を介してLED基板31を固定する。LED基板31の光は、クリーニング装置5と中間転写ベルト9との間を通るライトガイド32により、感光ドラム3の所定位置に導く。これにより、LED基板31を転写部から離すことができ、LED基板31の導体部分と中間転写ベルト9との間で異常放電が生じることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式によって可視画像を形成する複写機、プリンタなどの画像形成装置に使用され、メンテナンスや消耗品の交換のために画像形成装置の本体に着脱自在なカートリッジ、及び、このようなカートリッジを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、電子写真方式により記録材に画像を形成するものであり、装置の例としては、電子写真複写機、電子写真プリンタ(レーザービームプリンタおよびLEDプリンタなど)、ファクシミリ装置、およびワードプロセッサなどがある。また、このような画像形成装置のうち、感光体とその周辺部品を一体として、メンテナンスや消耗品の交換のために、画像形成装置の本体に着脱自在としたカートリッジを備えた構造がある。このようなカートリッジは、帯電手段、現像手段、クリーニング手段、回収トナー搬送手段と感光体との全て、又は一部をハウジングで保持し、本体に着脱できるユニット状態となっている。
【0003】
画像形成装置では、例えば、帯電手段によって一様に帯電された感光体に選択的な露光を行い、感光体表面に潜像を形成する。そして、現像手段から供給された現像剤(トナー)によって潜像を顕像化した後に中間転写ベルトに一次転写する。中間転写ベルトに転写されたトナー像は、記録材に二次転写され、更に熱や圧力などで記録材上に定着させる。なお、感光体表面に形成したトナー像を記録材搬送ベルトにより搬送される記録材に直接転写する構造もある。また、転写後に感光体上に残留したトナーは、クリーニングブレード等のクリーニング手段で除去され、回収トナー搬送手段により廃トナーボックスなどのクリーニング容器内に除去トナーとして収容される。これにより、感光体表面にトナーが残留しない状態で次の現像を行うことができる。
【0004】
上述の様な画像形成工程で、特に低温低湿環境下においては、感光体上の帯電電位の差によって生じるドラムゴーストと呼ばれる画像弊害が発生し、問題となることがある。このようなドラムゴーストを防止するには、帯電工程前に、感光ドラムに光を照射して残留電位を除電する除電露光手段を設けることが効果的であることが知られている(特許文献1ないし5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−198883号公報
【特許文献2】特開昭62−198889号公報
【特許文献3】特開2001−142365号公報
【特許文献4】特開2003−66797号公報
【特許文献5】特開2003−295717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、画像形成装置の小型化のために、感光体を小さくすることが行われている。また、カラー画像形成装置の高速化のために、複数の感光体を転写ベルトの回転方向に沿って並べて配置するタンデム型の構造も広く使用されている。このように装置の小型化と高速化とを満たすためには、小径の感光体を用いたり、複数の感光体同士のピッチを小さくしたりする必要がある。しかし、カートリッジ形式の構造の場合、感光体の周囲に現像手段、帯電手段、クリーニング装置等の多くの部品を近接して配置する必要があり、設計の自由度が低い。特に、上述のドラムゴーストを防止するためには、このような各部品に加えて除電露光手段も感光体の周囲に配置する必要があり、上述のような装置の小型化や高速化を満たすためには、これら各部品を感光体の周囲に適切に配置する必要がある。
【0007】
上述のように感光体の周囲に配置される各部品は、画像形成工程の順番によってそれぞれの配置位置が決まるが、除電露光手段は、除電した後の感光体の電位が落ち着く時間を確保するために、帯電手段とできるだけ離す必要がある。具体的には、印刷時の感光ドラムの回転方向に関し、除電露光手段、クリーニング装置、帯電手段、露光部分、現像手段、転写部の順番で配置することが考えられる。このように配置すれば、除電露光手段の光を、感光体の表面のうち、クリーニング装置よりも印刷時の感光体の回転方向上流部分に照射でき、除電露光手段と帯電手段との距離を離すことができる。
【0008】
しかしながら、装置の小型化のために感光体を小径にした場合、クリーニング装置と中間転写ベルトとの間隔が小さくなるため、除電露光手段を上述のように配置しにくい。例えば、比較例を示す図10は、除電露光手段の光源として、基板上にLED(発光ダイオード)を複数並べたLED基板(光源部)31aを使用し、このLED基板31aをクリーニング装置5の底面に配置している。この場合、図からも明らかなように、LED基板31aが転写部に近い位置で、中間転写ベルト9と近接対向する。
【0009】
このように、転写部に近い位置でLED基板31aと中間転写ベルト9とを近接対向させると、LED基板31aの金属の突起部分などの導体部分と、転写の際に転写バイアスが印加され帯電した中間転写ベルト9との間で異常放電が発生する可能性がある。即ち、転写バイアスにより帯電する中間転写ベルト9は、転写部から離れるほど帯電量が減衰していくが、転写部に近い位置では帯電量が多く、この位置に上述のような導体部分が存在すると、この導体部分との間で放電が生じ易い。このような異常放電が発生した場合には、中間転写ベルト上のトナーが飛んでしまうなどの画像不良が発生する。
【0010】
そこで、装置の小型化のために感光体を小径にし、且つ、除電の光をクリーニング装置よりも感光体の回転方向上流部分に導いても、光源の導体部分と中間転写ベルトなどとの間で異常放電の発生を防止できるカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その表面に形成されたトナー像を転写バイアスを印加することにより中間転写ベルトに転写する感光体の周囲に配置され、該感光体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置と、トナー像を前記中間転写ベルトに転写した後の、前記感光体の表面に光を当てて除電する除電露光手段とを備えたカートリッジにおいて、前記除電露光手段は、前記クリーニング装置の前記感光体と反対側に配置される光源と、絶縁材料で形成され、前記光源の光を該クリーニング装置と前記中間転写ベルトとの間を通して前記感光体に導くように配置されたライトガイドとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光源を転写部から離すことができるため、装置の小型化のために感光体を小径にしても、光源の導体部分と、転写バイアスにより帯電した中間転写ベルトとの間で、異常放電の発生を防止できる。また、ライトガイドは絶縁材製であるため、ライトガイドが転写部の近くに存在しても、ライトガイドと中間転写ベルトとの間で異常放電が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置の概略図。
【図2】感光ドラムの周辺部分を抜き出して示す概略断面図。
【図3】カートリッジの一部を切断して示す斜視図。
【図4】ドラムゴースト電位と除電光量との関係を示す図。
【図5】除電光量を測定した装置を示す概略図。
【図6】カートリッジを装置本体に着脱するために前扉を開いた状態を示す斜視図。
【図7】カートリッジの装置本体への取り付け部を拡大して示す概略図。
【図8】4色のカートリッジを配置し、前扉を開いた状態を示す装置本体の正面概略図。
【図9】(A)は光源をライトガイドの端面に配置した構造を、(B)は複数の光源を感光ドラムの長手方向に沿って対向させて配置した構造を、それぞれ示す模式図。
【図10】本発明の比較例を示す、図2と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図8を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1ないし図3を用いて画像形成装置の全体概略を説明する。本実施の形態は、タンデム型のカラー画像形成装置に本発明を適用したものである。図1に示すように、画像形成装置本体(以下、装置本体)1内の上部には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計4色のカートリッジ2Y、2M、2C、2Kが配置されている。図2は、これら各カートリッジのうちの何れか1個のカートリッジ2部分を抜き出して示している。カートリッジ2は、それぞれ、感光体である感光ドラム3の周囲に、帯電手段である帯電ローラ4、クリーニング装置5、後述する除電露光手段6を配置してなる。なお、本実施の形態の場合、感光ドラム3、帯電ローラ4、クリーニング装置5、除電露光手段6をカートリッジ2として一体化(ドラムカートリッジと)し、このようなドラムカートリッジと寿命が異なる現像手段7を別体(トナーカートリッジ)としている。但し、カートリッジ2は、このような現像手段7と分割・結合可能とするなどして一体化し、所謂プロセスカートリッジとすることもできる。何れにしても、感光ドラム3の周囲に、印刷時の感光ドラムの回転方向(図2の矢印方向)に関し、帯電ローラ4、レーザ光などで露光する部分、現像手段7、転写部A、除電露光手段6、クリーニング装置5の順番で配置される。
【0015】
カートリッジ2を構成する感光ドラム3は、例えば、直径約30mmの円筒状に形成され、帯電ローラ4によって均一に帯電された後、表面にレーザ光(図2の破線)を照射され、静電潜像が形成される。帯電ローラ4は、例えば、外径14mmのローラ形状をしたもので、帯電ローラ4を構成する芯金の両端に総圧1kgの荷重で感光ドラム3に向けて加圧すると共に、−300V〜−1000VのDC電圧及び2700VのAC電圧を印加する。そして、感光ドラム3を均一に帯電させる。現像手段7は、図示しない補給手段により現像容器18内に充填されたトナーを、現像スリーブ8により静電潜像を形成した感光ドラム3上に供給してトナー像を形成する。補給手段は、現像容器18内の各色のトナー量が規定量を下回らないように、トナー消費量に応じてトナーを補給する。
【0016】
除電露光手段6は、トナー像を後述する中間転写ベルト9に転写した後に、感光ドラム3の表面のうち、クリーニング装置5よりも印刷時の感光ドラム3の回転方向上流部分に光を当てて除電する。除電露光手段6の詳しい構造については後述する。クリーニング装置5は、感光ドラム3上のトナー像を中間転写ベルト9に一次転写した後、感光ドラム3の表面に残留したトナーを除去するためのクリーニングブレード10を有する。また、クリーニング装置5は、クリーニングブレード10により回収されたトナーを装置本体1内の回収トナーボックスなどに搬送する回収トナー搬送手段である搬送スクリュー11も備える。
【0017】
本実施の形態の場合、感光ドラム3とクリーニング装置5とは、カートリッジハウジングであるハウジング30により保持し、除電露光手段6は、後述するように、ハウジング30に着脱自在に固定して、カートリッジ2を構成している。このようなカートリッジ2は、装置本体1内の所定部に対して、後述する所定の要領で挿入装着され、また反対に装置本体1から抜き外しできるようになっている。このようにカートリッジ2を装置本体1に着脱自在とすることにより、メンテナンスや消耗品の交換を行い易くして、製品の性能の維持を図っている。即ち、画像形成装置を長時間使用していると、各種部品が消耗して印字品質を低下させてしまうが、サービスマンやユーザーがカートリッジ2を取り外してメンテナンスをしたり交換することで、規定の性能を維持できる。
【0018】
また、装置本体1内の各カートリッジ2の図1、2の下側には、中間転写ベルト9を回転自在に張架している。即ち、中間転写ベルト9は、ポリイミドなどの合成樹脂製のベルトを無端状に形成したもので、図1に示すように、駆動ローラ12と、テンションローラ13と、二次転写内ローラ14とにより張架されている。駆動ローラ12は図示しないモータにより駆動され中間転写ベルト9を回転させる。テンションローラ13は、図示しない付勢手段により中間転写ベルト9に所定のテンションを付与して中間転写ベルト9の張力を調整し、負荷変動などによる中間転写ベルト9の撓みなどを防止する。二次転写内ローラ14は、二次転写外ローラ15と対向して配置され、中間転写ベルト9に形成されたトナー像を記録材に転写する。また、中間転写ベルト9内の各感光ドラム3と対向する位置には、それぞれ一次転写ローラ16を配置し、各感光ドラム3に形成されたトナー像を中間転写ベルト9にそれぞれ転写する転写部Aを構成する。
【0019】
原稿を印刷する場合には、原稿読取装置17で読み取った画像を画像データに変換し、この画像データに基づいて、帯電された感光ドラム3上にレーザを発光し、感光ドラム3上に静電潜像を描く。次に、現像手段7により静電潜像を形成した感光ドラム3上にトナーを供給してトナー像を形成する。そして、このトナー像を、一次転写ローラ16により中間転写ベルト9に一次転写する。この際、所定の転写バイアスを一次転写部に印加することにより、感光ドラム3上のトナー像を中間転写ベルト9上に転写する。具体的には、マイナスに帯電したトナーを移動させるため、転写バイアスとしてプラスの電圧を印加し、中間転写ベルト9をプラスに帯電させる。中間転写ベルト9に一次転写されたトナー像は、二次転写内、外ローラ14、15により構成される二次転写部で、次述するような記録材搬送手段により搬送された記録材Sに二次転写される。二次転写部で転写されずに残留したトナーは、転写ベルトクリーナ19によって回収される。
【0020】
記録材搬送手段は、給紙カセット20から記録材Sを二次転写部まで搬送する。即ち、給紙カセット20からピックアップした記録材Sを、給紙部21から搬送パス22を通じて搬送方向下流に搬送し、レジストローラ対23により、最終的な記録材Sの斜行補正と、画像形成部での画像書き込みと記録材搬送のタイミング合わせを行う。そして、所定のタイミングで二次転写部に記録材Sを搬送する。記録材Sに転写されたトナー像は、定着器24により永久画像として記録材Sに定着される。定着器24の通過後、記録材Sは、排紙トレイ(フェイスダウン)25に排出する排紙パス26と、排紙トレイ(フェイスアップ)27に排出する排紙パス28との何れかに搬送される。排紙パス26と28との分岐点では、切替手段29により2つの搬送路が切り換えられ、排紙トレイ25または27に印刷された記録材Sが排出される。
【0021】
次に、図2、3を用いて、カートリッジ2に組み込まれる除電露光手段6について説明する。除電露光手段6は、光源部であるLED基板31と、ライトガイド32とを備える。このうちのLED基板31は、基板上に複数の光源であるLEDを、例えば、4mmピッチで、77個並べて配置したもので、保持手段33に保持されている。なお、LED基板に代えて複数のヒューズランプを並べたものを使用しても良い。このようなLED基板31は、ハウジング30のクリーニング装置5を設置している部分の、感光ドラム3と反対側の側面で、クリーニング装置5の中間転写ベルト9と対向する面(ハウジング30の底面)よりも中間転写ベルト9から離れた位置に配置される。また、LED基板31は、この位置に保持手段33を介して、ビス55により着脱自在に固定される。なお、ハウジング30に着脱自在に固定できれば、ビス55以外の着脱自在な固定手段を採用できる。
【0022】
即ち、保持手段33は、絶縁材料である合成樹脂製で、LED基板31を保持する本体部34と、本体部30のLED基板31を保持する側と反対側に延出された取付板部35と、本体部30の感光ドラム3と反対側から突出するガイド部43とからなる。そして、取付板部35をハウジング30にビス55により着脱自在に固定する。この結果、固定手段を中間転写ベルト9から離すことができ、金属製のビス55を使用しても、ビス55と中間転写ベルトとの間で異常放電が発生することはない。また、ガイド部43は、ライトガイド32よりも感光ドラム3と反対側に突出する位置に存在し、後述するように、装置本体1への挿入の際に、カートリッジ2を適正な状態で挿入を行うためのものである。
【0023】
また、保持手段33を介してハウジング30に固定された状態でLED基板31は、感光ドラム3の長手方向と平行に複数のLEDが並ぶように配置される。また、LED基板31は、カートリッジ2を画像形成装置本体1に取り付けた状態で、中間転写ベルト9と対向する位置に配置され、光を中間転写ベルト9側に向かって照射する。上述のようにハウジング30に着脱自在に固定されるLED基板31は、例えば、その寿命が、カートリッジ2内の感光ドラム3やクリーニング装置5の寿命である15万枚印字分に対し、600万枚の印字分と遥かに長い。このため、LED基板31を保持手段33と共に、使用後のカートリッジ2から取り外した後、新しいカートリッジに装着し、再度使用可能としている。このように高価なLED基板31の再利用を図ることにより、カートリッジの交換のコストを抑えられる。
【0024】
ライトガイド32は、光の透過率が高く絶縁材料であるポリカーボネートにより形成され、LED基板31の光を、クリーニング装置5と中間転写ベルト9との間を通して、感光ドラム3に導くように配置される。また、ライトガイド32は、LED基板31の全てのLEDの光を、感光ドラム3の表面のうちの回転方向所定位置の長手方向全面に共通に導く1個の部材からなる。また、ライトガイド32は、中間転写ベルト9からの異常放電を防ぐ為に、表面に鋭い凸形状がない。また、ライトガイド32は、略L字型の光透過部36と、光透過部36の感光ドラム3側の先端からハウジング30に沿って延出した延出部37とを備える。このうちの光透過部36は、LED基板31と対向する受光部38と、入射した光を全反射させて感光ドラム3の表面に導く反射面39と、感光ドラム3の表面に対向する発光部40とから構成される。
【0025】
ここで、受光部38は、入射光を反射面39に集め、ライトガイド32から光が漏れて光量が低下するのを防ぐため、レンズ形状となっている。また、反射面39は、入射した光が感光ドラム3の方向に向きを変えるため、入射光に対し45°の角度をなす。また、発光部40は、反射面39により向きを変えられた光を、感光ドラム3の表面のうち、クリーニング装置5よりも印刷時の感光ドラム3の回転方向上流部分に照射する。なお、光透過部36のうち、ハウジング30の底面を覆う部分は、厚さが2mm程度である。
【0026】
また、延出部37は、ハウジング30の形状に沿って形成し、ライトガイド32をハウジング30に対しがたつきなく位置決めする効果を有する。また、後述するスクイシートステイ53が金属などの導体により形成されている場合に、延出部37によりスクイシートステイ53の感光ドラム3側の先端部の中間転写ベルト9に対向する面を覆って、この部分で異常放電が発生するのを防止する。但し、ライトガイド32の位置決めを他の手段で図れたり、スクイシートステイ53が絶縁材製であれば、延出部37を省略しても良い。
【0027】
また、ライトガイド32の材質としてポリカーボネートを使用した理由は、ポリカーボネートは帯電系列がプラス傾向にあり、プラスの電荷がかかる中間転写ベルト9からの異常放電を避ける点で有利だからである。なお、ここで言う帯電系列がプラスとは、空気の流れとの摩擦によりプラスに帯電すると言う意味である。したがって、ライトガイド32の材質として、ポリカーボネートの他に光透過性を有し帯電系列がプラスとなる材料が、好ましく使用できる。また、中間転写ベルト9に印加する転写バイアスがマイナスである場合には、ライトガイド32として帯電系列がマイナスとなる材料を使用する。要するに、ライトガイド32の材質は、転写バイアスにより中間転写ベルト9が帯電する電荷と同極の帯電系列を有する材料とすることが好ましい。
【0028】
上述のように構成されるライトガイド32は、接着などによりハウジング30の中間転写ベルト9と対向する底面に固定する。具体的には、ライトガイド32を、クリーニングブレード10により除去したトナーをすくい取るスクイシート52を取り付けたスクイシートステイ53の底面に接着などにより固定する。スクイシートステイ53は、ハウジング30と一体に固定され、ハウジング30の一部を構成している。なお、ライトガイド32を、LED基板31を保持する保持手段33と共にハウジング30に着脱自在としても良いし、スクイシートステイ53と共にハウジング30に着脱自在としても良い。何れにしても、ライトガイド32をハウジング30に固定した状態で、ライトガイド32によりLED基板31及びハウジング30の中間転写ベルト9に対向する面を覆う。このように、ライトガイド32とLED基板31とを同じハウジング30に固定することにより、LED基板31とライトガイド32との位置精度を高くして、効率良く光を感光ドラム3に照射できる。
【0029】
即ち、ライトガイド32をハウジング30に固定した状態で、受光部38をLED基板31のLEDに対し所定の間隔をあけて配置する。ここで、LEDと受光部38との距離が変わると、レンズ形状とした受光部38に集まる光の量と、感光ドラム3表面までの光路長が変わるため、ドラム表面での光量が変化する。例えば、ライトガイド32の受光部38とLEDとの距離が1mmから3mmの領域では、LEDが受光部38から1mm離れると、約10%光量がダウンする。本実施の形態では、受光部38とLEDとの距離は2mmとなるように設定している。このために、LED基板31とライトガイド32とを同じハウジング30に固定して、両者の位置精度を高くしている。また、ライトガイド32の受光部38に隣接した位置に設けられ、所定量突出した位置決め突部41を、保持手段33のLED基板31を保持する部分から外れた平滑面である底面に当接させている。位置決め突部41の突出量を適切に規制すれば、受光部38とLEDとの距離を容易に、上述のように規制できる。
【0030】
これに対して、例えば、LED基板31を装置本体1に固定し、ライトガイド2をカートリッジ2側に固定した場合、両者の位置精度を確保しにくいだけではなく、複雑な機構が必要になる。即ち、カートリッジ2のライトガイド32と、装置本体1のLED基板31とを高精度に近接させて配置する事と、カートリッジ2の着脱を円滑に行うこととを両立させるためには、カートリッジ2の着脱時にLED基板31を退避させる必要がある。このようにLED基板31を退避させるためには、例えば、装置本体1のカートリッジ2に隣接する部分に、LED基板31を保持しつつカートリッジ2に対し退避可能な複雑な機構を設ける必要がある。したがって、本実施の形態のように、LED基板31とライトガイド32とを同じカートリッジ2のハウジング30に配置すると、上述のような複雑な機構が不要になり、スペース効率が高められると共に、装置の低コスト化も図れる。
【0031】
上述のように、LED基板31とライトガイド32と、所定の位置関係でカートリッジ2のハウジング30に固定することにより、LED基板31から照射される光が、図2の破線Lで示す光路により照射される。そして、この光が、この感光ドラム3の表面に除電光として、感光ドラム3の長手方向に所定の幅をもって照射され、感光ドラム3の除電を行い、ドラムゴーストを防止する。
【0032】
次に、このドラムゴースト防止のため、除電に使用する除電露光手段6の必要設定光量範囲について説明する。図4は、感光ドラム3の表面に照射される除電光量とドラムゴースト電位との関係を示した図である。ここで、ドラムゴースト電位は、ベタ画像を形成したドラム1周(画像形成工程を一巡させた)後にハーフトーン潜像を形成したときのそのハーフトーン電位と、白地部のドラム1周後にハーフトーン潜像を形成したときのハーフトーン電位との差分と定義する。このように定義した理由は、ゴースト画像は、例えばパッチ画像のドラム1周後のハーフトーン画像に、そのパッチ部分が濃くなって現れる現象であり、パッチ部とパッチ周囲の電位の差が生じることによるものだからである。
【0033】
図4から明らかなように、20μW以上の光量がなければドラムゴーストが発生することになる。したがって、カートリッジ2の使用末期においても、ドラム面照射光量を20μW以上維持する必要がある。一方、光量設定の上限については、耐久使用による感光ドラム3の暗減衰やLEDの性能により制約されるが、その制約の中で、ライトガイド32の発光部40の汚れを考慮して、最大の光量設定にしておけばよい。このため、本実施の形態では、初期の除電光量(発光部40から照射される光量)を60μWに設定した。なお、この場合、LED基板31を、ライトガイド32を用いずに感光ドラム3に対し直線的に、且つ、上述のようにライトガイド32を用いた場合と同じ光学距離となる位置に配置した場合の光量は、100μWであった。また、このような照射光量は、図5に示す様に、株式会社エーディーシー製8230Eの光パワーメータ42を、感光ドラム3が受光する部分に相当する位置に配置して、測定したものである。
【0034】
次に、カートリッジ2を装置本体1に着脱する部分の構造及び着脱方法について、図6及び図7により説明する。まず、カートリッジ2を装置本体1から取り外す場合には、図6に示すように、装置本体1の前扉44を開く。すると、カートリッジ2を装着する部分が露出する。カートリッジ2は、装置本体1内に設けられたガイドレール45に抱えられるように、感光ドラム3の長手方向に移動自在に保持されている。このために、カートリッジ2のハウジング30の現像手段7と反対側部分に、感光ドラム3の長手方向に亙って突出した突部46を設け、この突部46をガイドレール45の図7の右側の折り返し部分により支持している。一方、ガイドレール45の図7の左側の折り返し部分は、現像手段7に設けた突部47を支持している。カートリッジ2(ドラムカートリッジ)と現像手段7(トナーカートリッジ)とは、分離可能に結合、或は、所定の位置関係となるように互いに位置決めされているため、上述の構成により、ガイドレール45に保持される。
【0035】
上述のように、カートリッジ2はガイドレール45に感光ドラム3の長手方向に移動自在に保持されているため、使用後のカートリッジ2を取り外す際には、このカートリッジ2の一部を掴み、ガイドレール45に沿って図6の手前側に引き出す。この際、前扉44の内側面(開いた場合には上面)に設けた位置決め部である前扉ガイドレール48に、前述した保持手段33のガイド部43が載置される。ガイド部43は、ライトガイド32よりも感光ドラム3と反対側に突出した位置に存在するため、カートリッジ2を装置本体1から引き出す際に、カートリッジ2の下面に設けたライトガイド32の光透過部36が前扉44と擦れて損傷することを防止できる。これにより、ライトガイド32を再利用する場合には、光透過部36に損傷がない状態で、次のカートリッジに取り付けられる。一方、現像手段7も同時に引き出す場合には、現像手段7の下面が前扉ガイドレール48に載置される。何れにしてもこの状態で、カートリッジ2を更に引き出すと、装置本体1からカートリッジ2を完全に取り出すことができる。
【0036】
なお、本実施の形態の場合、このような引き出し作業を行う前に、中間転写ベルト9を装置本体1の図7の下側に退避させ、中間転写ベルト9が引き出し作業の邪魔になることを防止している。後述するカートリッジ2の取り付け作業後には、中間転写ベルト9を所定の位置に復帰させる。
【0037】
上述のように装置本体1から取り出した使用後のカートリッジ2に固定されたLED基板31は、再利用するためにこのカートリッジ2から取り外す。この取り外しは、LED基板31を保持する保持手段33と共に行う。この点について、図3も参照して説明する。まず、LED基板31から伸びているコネクタ49を、カートリッジ2の中継コネクタ50から外す。次に、保持手段33をカートリッジ2のハウジング30に固定しているビス55を外すことで、保持手段33と共にLED基板31をカートリッジ2から外す。このように取り外したLED基板31は、新しいカートリッジ2に取り付ける。この際、保持手段33の取付板部35をこのカートリッジ2のハウジング30にビス55により固定する。そして、LED基板31のコネクタ49を新しいカートリッジ2の中継コネクタ50に差し込むことで、LED基板31の移し変えが完了する。
【0038】
このように、新しいカートリッジ2にLED基板31を移し変えたならば、現像手段7と結合してから、或は、単独で、装置本体1に新しいカートリッジ2を取り付ける。カートリッジ2の装置本体1への挿入の際には、装置本体1側の前扉ガイドレール48に、保持手段33に形成したガイド部43を載置する。ここで、ガイド部43を載置した状態で、ライトガイド32の側面が前扉ガイドレール48の側面に当接或は近接して、図7の左右方向の位置決めを行う。そして、ガイド部43を前扉ガイドレール48に沿わせるように、カートリッジ2を装置本体1内に挿入する。これに対して、LED基板31を保持する保持手段33を新しいカートリッジ2に付け忘れると、前扉ガイドレール48からカートリッジ2が脱落するため、装置本体1に取り付けにくくなる。このように、保持手段33にガイド部43を設けることにより、カートリッジ2の装置本体1への取り付け時に、このカートリッジ2を取り付け易い適正な状態で挿入できると共に、LED基板31の付け忘れを防止できる。なお、現像手段7は、カートリッジ2と反対側に位置する角部を、前扉ガイドレール48に設けた切り欠き54内に載置することにより、図7の左右方向の位置決めを図りつつ、装置本体1への取り付けを案内される。
【0039】
上述のように構成される本実施の形態によれば、LED基板31を一次転写部及び中間転写ベルト9から離すことができる。このため、画像形成装置の小型化のために感光ドラム3を小径にしても、LED基板31の導体部分と中間転写ベルト9との間で異常放電が発生することを防止できる。また、ライトガイド32は、感光ドラム3の表面に近接した位置まで延出され、導いた光を照射するため、先端部が転写部に近い位置に存在するが、絶縁材製であるため、やはり、異常放電が生じることはない。
【0040】
特に、本実施の形態のように、クリーニング装置5が回収トナー搬送手段である搬送スクリュー11を備えている場合、感光ドラム3を小径にするとクリーニング装置5と中間転写ベルト9との間隔が小さくなる。本実施の形態の場合、LED基板31を、クリーニング装置5の感光ドラム3と反対側に配置し、LED基板31の光をクリーニング装置5と中間転写ベルト9との間を通るライトガイド32により導いている。このため、クリーニング装置5と中間転写ベルト9との間には、絶縁材製のライトガイド32のみが存在し、クリーニング装置5と中間転写ベルト9との間隔が小さくても、異常放電が生じることはない。
【0041】
また、LED基板31の中間転写ベルト9と対向する面は、ライトガイド32で覆われているため、転写時に印加される転写バイアスにより帯電する中間転写ベルト9との間で異常放電が発生することを、より確実に防止できる。このように異常放電を防止できれば、中間転写ベルト9上のトナーが飛んでしまうなどの画像不良が発生することを防止できる。また、本実施の形態の場合、LED基板31とライトガイド32とを上述したような位置関係に配置して、異常放電を防止しつつ感光ドラム3を小径にできる。このため、図8に示すように、各カートリッジ2Y、2M、2C、2K同士の間隔を小さくでき、画像形成装置の小型化に寄与できる。
【0042】
また、本実施の形態の場合、除電露光手段の光源部として、感光ドラム3の長手方向と平行に複数の光源を有するLED基板31を使用し、ライトガイド32を介して除電光を照射している。このため、除電の光量を多くでき、ドラムゴーストが生じることをより確実に防止できる。即ち、画像形成装置の高速化を図ると、感光ドラム3の回転速度が速くなるため、確実にドラムゴーストを防止するためには、除電光量を多くする必要がある。例えば、図9(A)に示すように、ライトガイド32aの端面に光源51を設け、感光ドラム3に照射する構造があるが、この場合、感光ドラム3の長手方向に亙って感光ドラム3に照射する光量を多くしにくい。光量を確保するためには、図9(B)に示すように、複数の光源51を感光ドラム3の長手方向に沿って対向させて配置すれば良い。
【0043】
このような観点から、本発明者が本発明を導き出す過程で考案した構造を、比較例として図10に示す。この比較例の場合、複数のLEDを感光ドラム3の長手方向と平行に配置したLED基板31aを、カートリッジ2の下面に固定している。そして、LED基板31aと感光ドラム3との距離を小さくしている。これにより、ドラムゴーストを防止するための光量は確保し易くなったが、LED基板31aと中間転写ベルト9との距離が転写部に近い位置で短くなるため、異常放電が生じやすくなった。特に、装置の小型化のために感光ドラム3を小径とした場合、カートリッジ2と中間転写ベルト9との距離が近くなることが避けられないため、比較例のように、異常放電がより生じやすくなった。これに対して本実施の形態の場合には、LED基板31とライトガイド32とを、前述した位置関係に配置することにより、LED基板31からの除電光量を確保しつつ、異常放電を防止できる。
【0044】
また、本実施の形態のように、LED基板31とライトガイド32とをカートリッジ2のハウジング30に所定の位置関係で固定すれば、装置本体1に複雑な機構を設けたりする必要がなく、低コスト化を図れ、装置本体1の設計の自由度を損なうことがない。また、ハーフトーン画像などで発生する横スジ、ドラムゴーストなどの画像弊害を防止し、良好な画像が得られる。この点に関し、本実施の形態により除電を行った場合と、除電を行わなかった場合とで画像の比較を行った。この結果、除電を行わなかった場合、印刷初期よりハーフトーン画像上に横スジ及び感光ドラムゴーストが発生し、印字枚数が増すに連れてドラムゴーストのレベルも悪化した。これに対し、本実施の形態により除電を行った場合、上述のような画像弊害は発生せず、印刷初期より良好な画像が得ることができた。
【0045】
なお、本実施の形態の場合、中間転写ベルトを供えた画像形成装置、及び、このような画像形成装置に着脱するカートリッジに本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、記録材搬送ベルトを備えた構造にも適用可能である。
【0046】
また、本実施の形態では、カラー画像形成装置について説明したが、カートリッジが1個である単色の画像形成装置にも、勿論、適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・画像形成装置本体、2・・・カートリッジ、3・・・感光ドラム、4・・・帯電ローラ、5・・・クリーニング装置、6・・・除電露光手段、7・・・現像手段、9・・・中間転写ベルト、31,31a・・・LED基板、32,32a・・・ライトガイド、33・・・保持手段、36・・・光透過部、39・・・反射面、43・・・ガイド部、48・・・前扉ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に形成されたトナー像を転写バイアスを印加することにより中間転写ベルトに転写する感光体の周囲に配置され、該感光体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置と、トナー像を前記中間転写ベルトに転写した後の、前記感光体の表面に光を当てて除電する除電露光手段とを備えたカートリッジにおいて、
前記除電露光手段は、前記クリーニング装置の前記感光体と反対側に配置される光源と、絶縁材料で形成され、前記光源の光を該クリーニング装置と前記中間転写ベルトとの間を通して前記感光体に導くように配置されたライトガイドとを備えることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
前記ライトガイドは、前記光源の前記中間転写ベルトに対向する面を覆うように配置されることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記除電露光手段は、前記感光体の長手方向と平行に複数の光源を配置した光源部と、前記クリーニング装置の前記中間転写ベルトに対向する面を覆うように配置され、前記各光源の光を共通に導く1個のライトガイドとを備えたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記クリーニング装置は、除去したトナーを回収して搬送する回収トナー搬送手段を備えたことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記光源を保持する保持手段を備え、前記光源は、該保持手段を介して前記クリーニング装置を保持するカートリッジハウジングの一部に着脱自在に固定されていることを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記保持手段は、前記ライトガイドよりも前記感光体と反対側に突出する位置に、画像形成装置本体に設けた位置決め部に載置されるガイド部を備えることを特徴とする、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記中間転写ベルトに対向して配置される、請求項1ないし6のうちの何れか1項のカートリッジを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−271408(P2010−271408A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121179(P2009−121179)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】