カートン
【課題】カートン強度を低下させず、かつ弱化線に沿って確実に破断が伝播することができ、双方向から破断可能なジッパーを有するカートンを提供する。
【解決手段】 筒状構造を形成する底／側／頂壁を含む複数のパネルを備え、頂壁パネルは、カートン開封時に破断する１対の破断線で両側を区切られたジッパーを備え、各破断線は、Ｚ字／逆Ｚ字状のショートスリットを複数、１列に配列し、各ショートスリットのＺ字／逆Ｚ字状の３辺のうち両端２辺は、各破断線の延在方向に向けて延在し、各破断線は、それらの破断起点から互いに散開して延在する１対の散開部と、散開部の終端近傍から互いに並行に延在する１対の並行部と、並行部の終端近傍から破断終点まで互いに収束する１対の収束部とを有し、破断起点および破断終点と、散開部および収束部は、それぞれ互いに鏡像関係にあり、ジッパーは、破断起点および破断終点の両側から開封することができる。
【解決手段】 筒状構造を形成する底／側／頂壁を含む複数のパネルを備え、頂壁パネルは、カートン開封時に破断する１対の破断線で両側を区切られたジッパーを備え、各破断線は、Ｚ字／逆Ｚ字状のショートスリットを複数、１列に配列し、各ショートスリットのＺ字／逆Ｚ字状の３辺のうち両端２辺は、各破断線の延在方向に向けて延在し、各破断線は、それらの破断起点から互いに散開して延在する１対の散開部と、散開部の終端近傍から互いに並行に延在する１対の並行部と、並行部の終端近傍から破断終点まで互いに収束する１対の収束部とを有し、破断起点および破断終点と、散開部および収束部は、それぞれ互いに鏡像関係にあり、ジッパーは、破断起点および破断終点の両側から開封することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、缶などの複数の物品を収容するカートンに係り、特に、カートン開封時の利便性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、ソフトドリンク等の飲料用缶類、瓶類等の物品を複数収容して流通や消費者の使用に供されるカートンが提供されている。一般に、物品を収容するカートンには、頂壁パネル、底壁パネルおよび前後左右の側壁パネルからなる箱状のカートンや、箱状カートンの一部が切り抜かれて窓部を有することで内容物が確認できるカートンや、また、頂壁パネル、底壁パネルおよび一対の側壁パネルを備えて、前端と後端が開放された筒状構造を有し、内容物を確認することができるいわゆるラウンドアップカートンが知られている。さらに、ラウンドアップカートンの開口部に物品の脱落防止のために部分的に閉鎖構造（側壁パネル）を有するカートンや、物品の頂部のみを覆って把持するカートン等、数多くのカートンが知られている。これらカートンには、頂壁パネルの一端あるいは頂壁パネルの一部に把持部を有するものもあり、これによって持ち運びや陳列に供している。
【０００３】
消費者は、そのような物品をカートン単位で購入した際には、カートンの頂部に形成された把持手段によってカートンを持ち運び、物品を取り出す際は、例えばカートンの頂部に形成された切り取りパネル（ジッパー）を引っ張ってカートンを破断させるなどして、物品を取り出している。
【０００４】
開封手段としてジッパーを有するカートンにおいては、一般に、破断起点部から破断終点部にかけて打ち抜き形成されたミシン目等の弱化線が形成された帯状の切り取りパネル（ジッパー）を引っ張って破断させ、カートンを開封するが、通常、ジッパーの引張方向は、ジッパーや弱化線の形状に依って破断起点部と破断終点部が決まっており、破断終点部から破断起点部へジッパーを逆に破断させようとした場合、本来破断すべき弱化線が破断せずに、帯状のジッパーの中心部に向かって破断線が伝播してしまい、問題となっていた。
【０００５】
このような問題を解決するため、破断起点部および破断終点部が決まっておらず、双方向から開封することができる種々のカートンが提案されている。このようなカートンとして、例えば、カートン中に破断テープを埋設し、これを引っ張ることで破断テープに沿ってカートンを破断させることができるカートンブランクが開示されている（例えば、特許文献１参照）。また、ミシン目等の弱化線を連続的に設けてジッパー形成し、このジッパーの両端に破断起点部を有するカートンが開示されている（例えば、特許文献２〜４参照。）
【０００６】
【特許文献１】米国特許第３，１６７，２３７号
【特許文献２】米国特許第３，３６８，７３７号
【特許文献３】米国特許第５，５４２，５９８号
【特許文献４】米国特許第３，８６５，３６６号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、特許文献１のカートンにおいては、カートンブランクの打ち抜き形成に加えて破断テープを設ける付加的な工程が必要となり、コストの増大という問題があった。また、特許文献２〜４のカートンにおいては、ミシン目等の弱化線が直線状に配列しているので、一旦破断が弱化線から外れて起こってしまうと、隣接するミシン目に破断を伝播させることが困難となり、本来破断させるべきでない箇所が破断してしまうという問題があった。破断を弱化線に沿って確実に伝播させるには弱化の程度を大きくしなければならず、カートンの強度が低下することとなり、逆にカートンの強度を向上させるには弱化の程度を小さくしなければならず、破断の伝播がより困難になるという問題を有していた。
【０００８】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カートンの強度を低下させることなく、かつ弱化線に沿って確実に破断を伝播させることができる双方向から破断可能なジッパーを有するカートンおよびカートンブランクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明は、缶等の物品を複数保持するためのカートンであって、筒状構造を形成するための底壁パネル、側壁パネルおよび頂壁パネルを含む複数のパネルを備え、頂壁パネルは、カートンを開封する際に破断する２本１対の破断線によって両側を区切られたジッパーを備え、１対の破断線の各々は、Ｚ字状あるいは逆Ｚ字状のショートスリットを複数、少なくとも１列に配列してなり、各ショートスリットのＺ字状あるいは逆Ｚ字状をなす３辺のうち両端の２辺は、各破断線の延在方向に向けて延在してなり、１対の破断線は、それらの破断起点から互いに散開して延在する１対の散開部と、これら散開部の終端近傍から互いに並行に延在する１対の並行部と、これら並行部の終端近傍から破断終点にかけて互いに収束する１対の収束部とを有し、破断起点および破断終点と、散開部および収束部は、それぞれ互いに鏡像の関係にあり、ジッパーは、破断起点および破断終点のいずれの側からも開封することができることを特徴としている。
【発明の効果】
【００１０】
上記構成のカートンにあっては、破断線を構成するショートスリットの３辺のうちの２辺が破断線の延在方向に延在しているので、生じる破断を破断線方向に導くことができ、さらに、３辺のうち残りの１辺は、破断線方向とは一定の角をなして延在しており、すなわち、この１辺が破断線に対向する配置であるので、破断が破断線から外れて形成された場合も、破断がこの１辺によって受容され、元の破断線方向に導くことができる。
【００１１】
さらに、ジッパーの破断起点と破断終点が対称に形成されているので、破断起点および破断終点のいずれの側からもジッパーを破断させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図１には、缶などの物品を複数収容するためのカートンを形成するためのものであって、ボール紙またはそれに類する折曲げ自在なシート材から作成されたブランクが示されている。図１において、ブランク１０ａは、第１底壁パネル１１と、第１側壁パネル１２と、頂壁パネル１３と、第２側壁パネル１４と、第２底壁パネル１５とを備え、これらは折目線２１，２２，２３，２４によって折り曲げ自在に連続的に接続されている。これらパネル１１〜１５により矩形の筒状体が形成され、それらパネル１１〜１５の縁部には、以下に説明する各種のパネルおよびフラップが形成されている。
【００１３】
第１側壁パネル１２および第２側壁パネル１４のカートン前端側（図１において左側）および後端側（同右側）においては、複数の折込パネル３２が折目線２５を介して折り曲げ自在に形成されている。また、パネル１１〜１５のカートン前端側および後端側には、折目線２１，２２，２３，２４を跨いだ状態で物品支持パネル３３が折目線を介して折り曲げ自在に形成されている。これら物品支持パネル３３は、カートンが組み立てられた状態において、缶等の内容物の上端および下端に引っ掛かってこれを支持し、内容物がカートンから脱落するのを防ぐ。
【００１４】
第１底壁パネル１１には、カートンを組み立てる際に接合部となる複数の係合フラップ３１が打ち抜き形成され、かつ折目線を介して第１底壁パネル１１と折り曲げ自在に接続されており、第２底壁パネル１５には、それら係合フラップ３１を受容する複数の係合フラップ受容部４１が打ち抜き形成されている。
【００１５】
頂壁パネル１３には、破断起点部５１、Ｚ字状または逆Ｚ字状の複数のショートスリット５２および中央の仲介スリット５３からなる弱化線が両端に形成された切り取りパネル（ジッパー）１６が形成されている。これらのスリットは、破断起点部５１から互いに散開して延在する一対の散開部Ａと、散開部Ａ終端近傍から互いに並行に延在する一対の並行部Ｂと、並行部Ｂ終端近傍から破断終点部５４まで互いに収束して延在する収束部Ｃとを有する。なお、並行部Ｂの中央に形成された仲介スリット５３を介してジッパー１６は左右対称に形成されているので、散開部Ａと収束部Ｃおよび破断起点部５１と破断終点部５４はそれぞれ等価であり、これらを読み替えても良い。
【００１６】
散開部Ａを構成する複数のショートスリット５２は、逆Ｚ字状に打ち抜き形成されており、それぞれ三辺を有する。ショートスリット５２の逆Ｚ字状を構成する三辺のうち二辺５２ａおよび５２ｂは、破断線方向に配向している。並行部Ｂを構成する複数のショートスリット５２も同様に逆Ｚ字状およびＺ字状を有しており、三辺のうち二辺５２ｃおよび５２ｄは、破断線方向に配向している。並行部Ｂの中央には五辺からなる仲介スリット５３が打ち抜き形成されており、散開部Ａに近い５３ａおよび収束部Ｃに近い５３ｂおよび中央の一辺は、破断線方向に配向している。さらに、収束部Ｃを構成する複数のショートスリット５２は、Ｚ字状に打ち抜き形成されており、それぞれ三辺を有する。ショートスリット５２のＺ字状を構成する三辺のうち二辺５２ｅおよび５２ｆは、破断線方向に配向している。
【００１７】
ジッパー１６のカートン前端部（図１で左側）には、カートンを開封するための破断起端となる指掛けタブ３５ａが形成されており、カートン後端部（図１で右側）には、カートンを逆側から開封する場合の指掛けタブ３５ｂが形成されている。さらに、ジッパー１６の中心部には把持手段３４が打ち抜き形成されており、一辺は折目線を介してジッパー１６と折り曲げ自在に接続されている。使用者は、この把持手段３４に指を挿入して把持し、カートンを持ち運ぶことができる。
【００１８】
図１に示すブランクからカートンを組み立てるために、連続的な折り曲げ作業が行われる。折り曲げ作業は、直線状の機械ラインでブランクないしカートンを反転または回転させることなく行われる。以下はその手順を示すものであるが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【００１９】
まず、水平に置かれた頂壁パネル１３上に例えば缶等の物品を載置する。この時、缶の上端部を下にして頂壁パネル１３上に載置するのが通常であるが、特に限定されない。次に、折目線２５に沿って折込パネル３２をカートン内方に１８０度折り曲げて側壁パネルに密着させながら、折目線２２および２３に沿って第１側壁パネル１２および第２側壁パネル１４を垂直上方に折り曲げ、これら側壁パネル１２，１３を収容する物品の側面に密着させる。続いて、折目線２１および２４に沿って第１底壁パネル１１および第２底壁パネル１５をそれぞれ第１側壁パネル１２および第２側壁パネル１４に対して９０度に折り曲げ、缶の下端部に、第２底壁パネル１５、第１底壁パネル１１の順に重ね合わせ、両端が開口した矩形筒状体を形成する。第１底壁パネル１１に形成された係合フラップ３１を例えば指などで押圧して係合フラップ３１を係合フラップ受容部４１に挿入し、第１底壁パネル１１および第２底壁パネル１５を接合する。なお、係合フラップ３１による接合に代えて、例えば糊付け等、接合方法は任意に選択可能である。こうして図２に示すカートンに複数の缶が荷積みされたパッケージが完成する。
【００２０】
このカートンから缶を取り出すには、ジッパー１６に形成された指掛けタブ３５ａを把持し、上方またはカートン後端部へ向けて引く。これにより、指掛けタブ３５ａの両端の破断起点部５１から破断が生じ、この破断は、破断起点部５１から最も近くに形成されたショートスリット５２、特に、辺５２ａに伝播する。指掛けタブ３５ａのさらなる引き裂きに伴って、このショートスリット５２が裂け、スリット５２の後端部（カートンの後端側、図１において右側）の辺５２ｂから破断が生じる。この破断は第２のショートスリット５２の特に辺５２ａに伝播し、以下同様にして、破断が隣接するショートスリット間を順次伝播していき、散開部Ａが破断する。続いて、散開部Ａの最後のスリット５２の辺５２ｂからの破断が並行部Ｂの最初のスリット５２の辺５２ｃに伝播し、同様にしてスリット間を破断が伝播して並行部Ｂおよび収束部Ｃが破断し、カートンが開封される。
【００２１】
一般に、指掛けタブを上方に引いてジッパーを開封しようとする際、破断はジッパー内方に伝播する傾向があるので、例えば上記特許文献２〜４に開示された従来のカートンにおいては、スリットが直線状に配列しているので、ジッパーを破断させる際に破断が隣接するスリットに伝播せずに内方へ向かってしまい、ジッパーが破損するという問題があった。一方、本発明においては、スリット５２の辺５２ｂから生じた破断がジッパー内方へ向かったとしても、隣接するスリット５２の三辺のうちの中央の辺が、破断線方向よりも内方に位置し、かつ破断線方向と角をなしているので、内方へ向かった破断を受け止めることができる。また、隣接するスリット５２の辺５２ａは、中央の辺よりもさらにジッパー内方へ延在しているため、この辺５２ａも、破断を受け止めることができる。以下同様にして、ジッパーを破損することなく破断が順次隣接するスリット５２を伝播していく。
【００２２】
従来のジッパーにおいてはスリットが直線状に配列しているため、一つのスリットから次のスリットへ破断を一直線上に的確に伝播させなければならず、これにはスリット間距離を短くするなど弱化線の弱化の程度を大きくしたり、カートン材を破断しやすいものにするなど、カートン強度の低下を招くという問題があったが、本発明においては、一つのスリットから生じた破断を隣接するスリットの中央の辺あるいは内方の辺全体で受け止めるため、破断が必ずしも一直線状に伝播しなくとも、破断伝播方向にある程度の幅が許容され、カートン強度を保ったまま破断の伝播を的確に行うことができる。
【００２３】
また、本発明においては、仲介スリット５３に関してジッパーが左右対称に形成されているので、図１において、上記の説明とは逆に、指掛けタブ３５ｂを上方に引き、破断終点部５４を破断させ、収束部Ｃ→並行部Ｂ→散開部Ａ→破断起点部５１と破断を伝播させてカートンを開封することができ、使用者の利便性が向上している。そのような双方向からの開封状況を示す模式図を図３に示す。
【００２４】
上述のように、ショートスリット５２どうしの形成間隔を狭くすることによってショートスリット間の破断の伝播が確実になり、ジッパー１６の開封が円滑に行えるので好ましい反面、頂壁パネルの強度が低下して開封前のカートンが意図せずに破壊されてしまうなどの問題がある。逆に形成間隔を広くした場合、カートンの強度は向上する反面、ショートスリット間において破断が良好に伝播せず、ジッパー以外の箇所が破断してしまい、好ましくない。実用的には、ジッパーの破断およびカートンの強度を考慮して適宜選択される。
【００２５】
本発明は、実施形態として例示したような、頂壁パネルを一直線状に横断してジッパーを除去するカートンに限定されず、任意のジッパー形状とすることができる。例えば、一対のジッパーが並行部より後端側において互いに接近するようにカーブを描き、互いにジッパー終端で接続されて、ジッパー除去後も頂壁パネルが後端部において接続されたままであるカートン（Ｕ字型ジッパー）に応用することも可能である。
【００２６】
上記の説明で使用した頂、底、端、先、後、内側、および外側などの方向を表わす用語は、それぞれのパネルをそのような方向に限定するものではなく、単にパネルどうしを互いに区別するためのものにすぎない。折目線という用語は必ずしも単一の折目線を指すものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、１または複数の刻み線や、例えばミシン目やプレス型押しで薄くした線等の容易に折れたり曲がったりする線であっても良い。また、本発明は、発明の範囲から逸脱することなく、種々の配列の物品のカートンに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【００２７】
以上説明したように、本発明によれば、カートンの強度を低下させることなく、かつ弱化線に沿って確実に破断を伝播させることができ、さらに双方向から破断可能なジッパーを有する利便性の向上した物品収納用のカートンおよびカートンブランクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２８】
【図１】本発明のカートンを形成するためのカートンブランクの平面図である。
【図２】物品を収納した状態の本発明のカートンを示す斜視図である。
【図３】図２のカートンの開封方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００２９】
１０ａ カートンブランク
１１ 第１底壁パネル
１２ 第１側壁パネル
１３ 頂壁パネル
１４ 第２側壁パネル
１５ 第２底壁パネル
１６ 切り取りパネル
２１，２２，２３，２４，２５ 折目線
３１ 係合フラップ
３２ 折込パネル
３３ 物品支持パネル
３４ 把持手段
３５ａ，ｂ 指掛けタブ
４１ 係合フラップ受容部
５１ 破断起点部
５２ Ｚ字状（逆Ｚ字状）ショートスリット
５２ａ，ｂ ショートスリットの一辺（散開部Ａ）
５２ｃ，ｄ ショートスリットの一辺（並行部Ｂ）
５２ｅ，ｆ ショートスリットの一辺（収束部Ｃ）
５３ 仲介スリット
５３ａ，ｂ 仲介スリットの一辺（並行部Ｂ）
５４ 破断終点部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、缶などの複数の物品を収容するカートンに係り、特に、カートン開封時の利便性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、ソフトドリンク等の飲料用缶類、瓶類等の物品を複数収容して流通や消費者の使用に供されるカートンが提供されている。一般に、物品を収容するカートンには、頂壁パネル、底壁パネルおよび前後左右の側壁パネルからなる箱状のカートンや、箱状カートンの一部が切り抜かれて窓部を有することで内容物が確認できるカートンや、また、頂壁パネル、底壁パネルおよび一対の側壁パネルを備えて、前端と後端が開放された筒状構造を有し、内容物を確認することができるいわゆるラウンドアップカートンが知られている。さらに、ラウンドアップカートンの開口部に物品の脱落防止のために部分的に閉鎖構造（側壁パネル）を有するカートンや、物品の頂部のみを覆って把持するカートン等、数多くのカートンが知られている。これらカートンには、頂壁パネルの一端あるいは頂壁パネルの一部に把持部を有するものもあり、これによって持ち運びや陳列に供している。
【０００３】
消費者は、そのような物品をカートン単位で購入した際には、カートンの頂部に形成された把持手段によってカートンを持ち運び、物品を取り出す際は、例えばカートンの頂部に形成された切り取りパネル（ジッパー）を引っ張ってカートンを破断させるなどして、物品を取り出している。
【０００４】
開封手段としてジッパーを有するカートンにおいては、一般に、破断起点部から破断終点部にかけて打ち抜き形成されたミシン目等の弱化線が形成された帯状の切り取りパネル（ジッパー）を引っ張って破断させ、カートンを開封するが、通常、ジッパーの引張方向は、ジッパーや弱化線の形状に依って破断起点部と破断終点部が決まっており、破断終点部から破断起点部へジッパーを逆に破断させようとした場合、本来破断すべき弱化線が破断せずに、帯状のジッパーの中心部に向かって破断線が伝播してしまい、問題となっていた。
【０００５】
このような問題を解決するため、破断起点部および破断終点部が決まっておらず、双方向から開封することができる種々のカートンが提案されている。このようなカートンとして、例えば、カートン中に破断テープを埋設し、これを引っ張ることで破断テープに沿ってカートンを破断させることができるカートンブランクが開示されている（例えば、特許文献１参照）。また、ミシン目等の弱化線を連続的に設けてジッパー形成し、このジッパーの両端に破断起点部を有するカートンが開示されている（例えば、特許文献２〜４参照。）
【０００６】
【特許文献１】米国特許第３，１６７，２３７号
【特許文献２】米国特許第３，３６８，７３７号
【特許文献３】米国特許第５，５４２，５９８号
【特許文献４】米国特許第３，８６５，３６６号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、特許文献１のカートンにおいては、カートンブランクの打ち抜き形成に加えて破断テープを設ける付加的な工程が必要となり、コストの増大という問題があった。また、特許文献２〜４のカートンにおいては、ミシン目等の弱化線が直線状に配列しているので、一旦破断が弱化線から外れて起こってしまうと、隣接するミシン目に破断を伝播させることが困難となり、本来破断させるべきでない箇所が破断してしまうという問題があった。破断を弱化線に沿って確実に伝播させるには弱化の程度を大きくしなければならず、カートンの強度が低下することとなり、逆にカートンの強度を向上させるには弱化の程度を小さくしなければならず、破断の伝播がより困難になるという問題を有していた。
【０００８】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カートンの強度を低下させることなく、かつ弱化線に沿って確実に破断を伝播させることができる双方向から破断可能なジッパーを有するカートンおよびカートンブランクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明は、缶等の物品を複数保持するためのカートンであって、筒状構造を形成するための底壁パネル、側壁パネルおよび頂壁パネルを含む複数のパネルを備え、頂壁パネルは、カートンを開封する際に破断する２本１対の破断線によって両側を区切られたジッパーを備え、１対の破断線の各々は、Ｚ字状あるいは逆Ｚ字状のショートスリットを複数、少なくとも１列に配列してなり、各ショートスリットのＺ字状あるいは逆Ｚ字状をなす３辺のうち両端の２辺は、各破断線の延在方向に向けて延在してなり、１対の破断線は、それらの破断起点から互いに散開して延在する１対の散開部と、これら散開部の終端近傍から互いに並行に延在する１対の並行部と、これら並行部の終端近傍から破断終点にかけて互いに収束する１対の収束部とを有し、破断起点および破断終点と、散開部および収束部は、それぞれ互いに鏡像の関係にあり、ジッパーは、破断起点および破断終点のいずれの側からも開封することができることを特徴としている。
【発明の効果】
【００１０】
上記構成のカートンにあっては、破断線を構成するショートスリットの３辺のうちの２辺が破断線の延在方向に延在しているので、生じる破断を破断線方向に導くことができ、さらに、３辺のうち残りの１辺は、破断線方向とは一定の角をなして延在しており、すなわち、この１辺が破断線に対向する配置であるので、破断が破断線から外れて形成された場合も、破断がこの１辺によって受容され、元の破断線方向に導くことができる。
【００１１】
さらに、ジッパーの破断起点と破断終点が対称に形成されているので、破断起点および破断終点のいずれの側からもジッパーを破断させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図１には、缶などの物品を複数収容するためのカートンを形成するためのものであって、ボール紙またはそれに類する折曲げ自在なシート材から作成されたブランクが示されている。図１において、ブランク１０ａは、第１底壁パネル１１と、第１側壁パネル１２と、頂壁パネル１３と、第２側壁パネル１４と、第２底壁パネル１５とを備え、これらは折目線２１，２２，２３，２４によって折り曲げ自在に連続的に接続されている。これらパネル１１〜１５により矩形の筒状体が形成され、それらパネル１１〜１５の縁部には、以下に説明する各種のパネルおよびフラップが形成されている。
【００１３】
第１側壁パネル１２および第２側壁パネル１４のカートン前端側（図１において左側）および後端側（同右側）においては、複数の折込パネル３２が折目線２５を介して折り曲げ自在に形成されている。また、パネル１１〜１５のカートン前端側および後端側には、折目線２１，２２，２３，２４を跨いだ状態で物品支持パネル３３が折目線を介して折り曲げ自在に形成されている。これら物品支持パネル３３は、カートンが組み立てられた状態において、缶等の内容物の上端および下端に引っ掛かってこれを支持し、内容物がカートンから脱落するのを防ぐ。
【００１４】
第１底壁パネル１１には、カートンを組み立てる際に接合部となる複数の係合フラップ３１が打ち抜き形成され、かつ折目線を介して第１底壁パネル１１と折り曲げ自在に接続されており、第２底壁パネル１５には、それら係合フラップ３１を受容する複数の係合フラップ受容部４１が打ち抜き形成されている。
【００１５】
頂壁パネル１３には、破断起点部５１、Ｚ字状または逆Ｚ字状の複数のショートスリット５２および中央の仲介スリット５３からなる弱化線が両端に形成された切り取りパネル（ジッパー）１６が形成されている。これらのスリットは、破断起点部５１から互いに散開して延在する一対の散開部Ａと、散開部Ａ終端近傍から互いに並行に延在する一対の並行部Ｂと、並行部Ｂ終端近傍から破断終点部５４まで互いに収束して延在する収束部Ｃとを有する。なお、並行部Ｂの中央に形成された仲介スリット５３を介してジッパー１６は左右対称に形成されているので、散開部Ａと収束部Ｃおよび破断起点部５１と破断終点部５４はそれぞれ等価であり、これらを読み替えても良い。
【００１６】
散開部Ａを構成する複数のショートスリット５２は、逆Ｚ字状に打ち抜き形成されており、それぞれ三辺を有する。ショートスリット５２の逆Ｚ字状を構成する三辺のうち二辺５２ａおよび５２ｂは、破断線方向に配向している。並行部Ｂを構成する複数のショートスリット５２も同様に逆Ｚ字状およびＺ字状を有しており、三辺のうち二辺５２ｃおよび５２ｄは、破断線方向に配向している。並行部Ｂの中央には五辺からなる仲介スリット５３が打ち抜き形成されており、散開部Ａに近い５３ａおよび収束部Ｃに近い５３ｂおよび中央の一辺は、破断線方向に配向している。さらに、収束部Ｃを構成する複数のショートスリット５２は、Ｚ字状に打ち抜き形成されており、それぞれ三辺を有する。ショートスリット５２のＺ字状を構成する三辺のうち二辺５２ｅおよび５２ｆは、破断線方向に配向している。
【００１７】
ジッパー１６のカートン前端部（図１で左側）には、カートンを開封するための破断起端となる指掛けタブ３５ａが形成されており、カートン後端部（図１で右側）には、カートンを逆側から開封する場合の指掛けタブ３５ｂが形成されている。さらに、ジッパー１６の中心部には把持手段３４が打ち抜き形成されており、一辺は折目線を介してジッパー１６と折り曲げ自在に接続されている。使用者は、この把持手段３４に指を挿入して把持し、カートンを持ち運ぶことができる。
【００１８】
図１に示すブランクからカートンを組み立てるために、連続的な折り曲げ作業が行われる。折り曲げ作業は、直線状の機械ラインでブランクないしカートンを反転または回転させることなく行われる。以下はその手順を示すものであるが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【００１９】
まず、水平に置かれた頂壁パネル１３上に例えば缶等の物品を載置する。この時、缶の上端部を下にして頂壁パネル１３上に載置するのが通常であるが、特に限定されない。次に、折目線２５に沿って折込パネル３２をカートン内方に１８０度折り曲げて側壁パネルに密着させながら、折目線２２および２３に沿って第１側壁パネル１２および第２側壁パネル１４を垂直上方に折り曲げ、これら側壁パネル１２，１３を収容する物品の側面に密着させる。続いて、折目線２１および２４に沿って第１底壁パネル１１および第２底壁パネル１５をそれぞれ第１側壁パネル１２および第２側壁パネル１４に対して９０度に折り曲げ、缶の下端部に、第２底壁パネル１５、第１底壁パネル１１の順に重ね合わせ、両端が開口した矩形筒状体を形成する。第１底壁パネル１１に形成された係合フラップ３１を例えば指などで押圧して係合フラップ３１を係合フラップ受容部４１に挿入し、第１底壁パネル１１および第２底壁パネル１５を接合する。なお、係合フラップ３１による接合に代えて、例えば糊付け等、接合方法は任意に選択可能である。こうして図２に示すカートンに複数の缶が荷積みされたパッケージが完成する。
【００２０】
このカートンから缶を取り出すには、ジッパー１６に形成された指掛けタブ３５ａを把持し、上方またはカートン後端部へ向けて引く。これにより、指掛けタブ３５ａの両端の破断起点部５１から破断が生じ、この破断は、破断起点部５１から最も近くに形成されたショートスリット５２、特に、辺５２ａに伝播する。指掛けタブ３５ａのさらなる引き裂きに伴って、このショートスリット５２が裂け、スリット５２の後端部（カートンの後端側、図１において右側）の辺５２ｂから破断が生じる。この破断は第２のショートスリット５２の特に辺５２ａに伝播し、以下同様にして、破断が隣接するショートスリット間を順次伝播していき、散開部Ａが破断する。続いて、散開部Ａの最後のスリット５２の辺５２ｂからの破断が並行部Ｂの最初のスリット５２の辺５２ｃに伝播し、同様にしてスリット間を破断が伝播して並行部Ｂおよび収束部Ｃが破断し、カートンが開封される。
【００２１】
一般に、指掛けタブを上方に引いてジッパーを開封しようとする際、破断はジッパー内方に伝播する傾向があるので、例えば上記特許文献２〜４に開示された従来のカートンにおいては、スリットが直線状に配列しているので、ジッパーを破断させる際に破断が隣接するスリットに伝播せずに内方へ向かってしまい、ジッパーが破損するという問題があった。一方、本発明においては、スリット５２の辺５２ｂから生じた破断がジッパー内方へ向かったとしても、隣接するスリット５２の三辺のうちの中央の辺が、破断線方向よりも内方に位置し、かつ破断線方向と角をなしているので、内方へ向かった破断を受け止めることができる。また、隣接するスリット５２の辺５２ａは、中央の辺よりもさらにジッパー内方へ延在しているため、この辺５２ａも、破断を受け止めることができる。以下同様にして、ジッパーを破損することなく破断が順次隣接するスリット５２を伝播していく。
【００２２】
従来のジッパーにおいてはスリットが直線状に配列しているため、一つのスリットから次のスリットへ破断を一直線上に的確に伝播させなければならず、これにはスリット間距離を短くするなど弱化線の弱化の程度を大きくしたり、カートン材を破断しやすいものにするなど、カートン強度の低下を招くという問題があったが、本発明においては、一つのスリットから生じた破断を隣接するスリットの中央の辺あるいは内方の辺全体で受け止めるため、破断が必ずしも一直線状に伝播しなくとも、破断伝播方向にある程度の幅が許容され、カートン強度を保ったまま破断の伝播を的確に行うことができる。
【００２３】
また、本発明においては、仲介スリット５３に関してジッパーが左右対称に形成されているので、図１において、上記の説明とは逆に、指掛けタブ３５ｂを上方に引き、破断終点部５４を破断させ、収束部Ｃ→並行部Ｂ→散開部Ａ→破断起点部５１と破断を伝播させてカートンを開封することができ、使用者の利便性が向上している。そのような双方向からの開封状況を示す模式図を図３に示す。
【００２４】
上述のように、ショートスリット５２どうしの形成間隔を狭くすることによってショートスリット間の破断の伝播が確実になり、ジッパー１６の開封が円滑に行えるので好ましい反面、頂壁パネルの強度が低下して開封前のカートンが意図せずに破壊されてしまうなどの問題がある。逆に形成間隔を広くした場合、カートンの強度は向上する反面、ショートスリット間において破断が良好に伝播せず、ジッパー以外の箇所が破断してしまい、好ましくない。実用的には、ジッパーの破断およびカートンの強度を考慮して適宜選択される。
【００２５】
本発明は、実施形態として例示したような、頂壁パネルを一直線状に横断してジッパーを除去するカートンに限定されず、任意のジッパー形状とすることができる。例えば、一対のジッパーが並行部より後端側において互いに接近するようにカーブを描き、互いにジッパー終端で接続されて、ジッパー除去後も頂壁パネルが後端部において接続されたままであるカートン（Ｕ字型ジッパー）に応用することも可能である。
【００２６】
上記の説明で使用した頂、底、端、先、後、内側、および外側などの方向を表わす用語は、それぞれのパネルをそのような方向に限定するものではなく、単にパネルどうしを互いに区別するためのものにすぎない。折目線という用語は必ずしも単一の折目線を指すものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、１または複数の刻み線や、例えばミシン目やプレス型押しで薄くした線等の容易に折れたり曲がったりする線であっても良い。また、本発明は、発明の範囲から逸脱することなく、種々の配列の物品のカートンに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【００２７】
以上説明したように、本発明によれば、カートンの強度を低下させることなく、かつ弱化線に沿って確実に破断を伝播させることができ、さらに双方向から破断可能なジッパーを有する利便性の向上した物品収納用のカートンおよびカートンブランクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２８】
【図１】本発明のカートンを形成するためのカートンブランクの平面図である。
【図２】物品を収納した状態の本発明のカートンを示す斜視図である。
【図３】図２のカートンの開封方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００２９】
１０ａ カートンブランク
１１ 第１底壁パネル
１２ 第１側壁パネル
１３ 頂壁パネル
１４ 第２側壁パネル
１５ 第２底壁パネル
１６ 切り取りパネル
２１，２２，２３，２４，２５ 折目線
３１ 係合フラップ
３２ 折込パネル
３３ 物品支持パネル
３４ 把持手段
３５ａ，ｂ 指掛けタブ
４１ 係合フラップ受容部
５１ 破断起点部
５２ Ｚ字状（逆Ｚ字状）ショートスリット
５２ａ，ｂ ショートスリットの一辺（散開部Ａ）
５２ｃ，ｄ ショートスリットの一辺（並行部Ｂ）
５２ｅ，ｆ ショートスリットの一辺（収束部Ｃ）
５３ 仲介スリット
５３ａ，ｂ 仲介スリットの一辺（並行部Ｂ）
５４ 破断終点部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
缶等の物品を複数保持するためのカートンであって、
上記カートンは、筒状構造を形成するための底壁パネル、側壁パネルおよび頂壁パネルを含む複数のパネルを備え、
上記頂壁パネルは、上記カートンを開封する際に破断する２本１対の破断線によって両側を区切られたジッパーを備え、
上記１対の破断線の各々は、Ｚ字状あるいは逆Ｚ字状のショートスリットを複数、少なくとも１列に配列してなり、
各ショートスリットのＺ字状あるいは逆Ｚ字状をなす３辺のうち両端の２辺は、各破断線の延在方向に向けて延在してなり、
上記１対の破断線は、それらの破断起点から互いに散開して延在する１対の散開部と、これら散開部の終端近傍から互いに並行に延在する１対の並行部と、これら並行部の終端近傍から破断終点にかけて互いに収束する１対の収束部とを有し、
上記破断起点および上記破断終点と、上記散開部および上記収束部は、それぞれ互いに鏡像の関係にあり、
上記ジッパーは、破断起点および破断終点のいずれの側からも開封することができることを特徴とするカートン。
【請求項２】
前記カートンは、前記１対の並行部の中央部分に５辺からなる仲介スリットを備え、
上記仲介スリットの５辺のうちの両端２辺および中央１辺は、前記破断線の延在方向に向けて延在してなり、
上記１対の仲介スリットに関して前記ジッパーが対称であることを特徴とする請求項１に記載のカートン。
【請求項１】
缶等の物品を複数保持するためのカートンであって、
上記カートンは、筒状構造を形成するための底壁パネル、側壁パネルおよび頂壁パネルを含む複数のパネルを備え、
上記頂壁パネルは、上記カートンを開封する際に破断する２本１対の破断線によって両側を区切られたジッパーを備え、
上記１対の破断線の各々は、Ｚ字状あるいは逆Ｚ字状のショートスリットを複数、少なくとも１列に配列してなり、
各ショートスリットのＺ字状あるいは逆Ｚ字状をなす３辺のうち両端の２辺は、各破断線の延在方向に向けて延在してなり、
上記１対の破断線は、それらの破断起点から互いに散開して延在する１対の散開部と、これら散開部の終端近傍から互いに並行に延在する１対の並行部と、これら並行部の終端近傍から破断終点にかけて互いに収束する１対の収束部とを有し、
上記破断起点および上記破断終点と、上記散開部および上記収束部は、それぞれ互いに鏡像の関係にあり、
上記ジッパーは、破断起点および破断終点のいずれの側からも開封することができることを特徴とするカートン。
【請求項２】
前記カートンは、前記１対の並行部の中央部分に５辺からなる仲介スリットを備え、
上記仲介スリットの５辺のうちの両端２辺および中央１辺は、前記破断線の延在方向に向けて延在してなり、
上記１対の仲介スリットに関して前記ジッパーが対称であることを特徴とする請求項１に記載のカートン。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２００８−１３２００（Ｐ２００８−１３２００Ａ）
【公開日】平成２０年１月２４日（２００８．１．２４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１８５１３７（Ｐ２００６−１８５１３７）
【出願日】平成１８年７月５日（２００６．７．５）
【出願人】（５０３１８５１０５）ミードウエストベコ パッケージングシステムズ エル・エル・シー (5)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１月２４日（２００８．１．２４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年７月５日（２００６．７．５）
【出願人】（５０３１８５１０５）ミードウエストベコ パッケージングシステムズ エル・エル・シー (5)
【Ｆターム（参考）】
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